IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 関西電力株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧

特開2024-144950ガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備
<>
  • 特開-ガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備 図1
  • 特開-ガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備 図2
  • 特開-ガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備 図3
  • 特開-ガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備 図4
  • 特開-ガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備 図5
  • 特開-ガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144950
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備
(51)【国際特許分類】
   F02C 3/22 20060101AFI20241004BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20241004BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20241004BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20241004BHJP
   F02C 6/18 20060101ALI20241004BHJP
   F01D 25/10 20060101ALI20241004BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F02C3/22
C01B3/02 Z
F02C7/22 B
F02C6/00 E
F02C6/18 Z
F01D25/10 Z
F23K5/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057144
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】品川 竜也
(72)【発明者】
【氏名】有野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】平岩 千尋
(72)【発明者】
【氏名】安達 修平
(72)【発明者】
【氏名】岸本 史直
【テーマコード(参考)】
3K068
4G140
【Fターム(参考)】
3K068AA05
3K068AB36
3K068CA01
4G140BA03
4G140BB03
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、水素の収率の向上、及び、ガスタービン等の負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができるガスタービン設備等を提供する。
【解決手段】ガスタービン10と、ガスタービン10に水素f2を供給する水素供給設備100と、を備えるガスタービン設備1であって、水素供給設備100は、反応器120と、反応器120内に配置される触媒150であって、反応器120に注入された化合物f3を分解して、水素f2を発生する触媒150と、触媒150にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置130と、触媒150が生成した水素f2をガスタービン10に供給する供給装置140と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、前記ガスタービンに水素を供給する水素供給設備と、を備えるガスタービン設備であって、
前記水素供給設備は、
反応器と、
前記反応器内に配置される触媒であって、前記反応器に注入された化合物を分解して、水素を発生する触媒と、
前記触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、
前記触媒が生成した水素を前記ガスタービンに供給する供給装置と、を有する
ガスタービン設備。
【請求項2】
前記水素供給設備は、液体状態の前記化合物を加熱して、前記反応器に注入する気体の前記化合物を発生させる蒸発器をさらに有し、
前記蒸発器は、前記ガスタービンからの熱で、前記液体状態の前記化合物を加熱する
請求項1に記載のガスタービン設備。
【請求項3】
前記供給装置は、前記反応器から発生する水素を冷却する冷却器を有し、
前記冷却器は、前記水素からの熱で、前記ガスタービンに供給される流体を加熱する
請求項1または2に記載のガスタービン設備。
【請求項4】
前記水素供給設備は、前記ガスタービンの発電出力の変化に応じて、前記供給装置が前記ガスタービンに供給する水素の量を変化させる制御装置をさらに有する
請求項1または2に記載のガスタービン設備。
【請求項5】
ガスタービンに水素を供給する水素供給設備であって、
反応器と、
前記反応器内に配置される触媒であって、前記反応器に注入された化合物を分解して、水素を発生する触媒と、
前記触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、
前記触媒が生成した水素を前記ガスタービンに供給する供給装置と、
を備える水素供給設備。
【請求項6】
ガスタービンに水素を供給する水素供給方法であって、
マイクロ波照射装置によって反応器内に配置される触媒にマイクロ波を照射して、前記反応器に注入された化合物を分解して、水素を発生し、
前記触媒が生成した水素を前記ガスタービンに供給する
水素供給方法。
【請求項7】
前記ガスタービンの発電出力の変化に応じて、前記ガスタービンに供給する水素の量を変化させる
請求項6に記載の水素供給方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の水素供給方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
ボイラと、前記ボイラに水素を供給する水素供給設備と、を備えるボイラ設備であって、
前記水素供給設備は、
反応器と、
前記反応器内に配置される触媒であって、前記反応器に注入された化合物を分解して、水素を発生する触媒と、
前記触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、
前記触媒が生成した水素を前記ボイラに供給する供給装置と、を有する
ボイラ設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素を製造する設備が知られている。例えば、特許文献1には、原料であるアンモニアを水素と窒素とに分解する分解反応の触媒が充填された反応器と、原料が触媒に流入する前に、アンモニア濃度が原料よりも低い希釈ガスと原料とが混合するように、希釈ガスを供給するための希釈ガス供給ラインと、アンモニアの一部を燃焼させるアンモニア燃焼器と、を備えるアンモニア分解装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-109069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたアンモニア分解装置では、以下の効果を奏することとしている。アンモニア濃度が原料よりも低い希釈ガスと原料とを混合することで、反応器内のアンモニア濃度が希釈ガスによって低下するため、反応器の材料の窒化を抑制できる。また、アンモニアの一部を燃焼させることで、触媒が加熱されるため、触媒を加熱するための装置を不要とすることができる。さらに、反応器の内面を耐火材で覆うことで、当該内面の温度上昇を抑制し、反応器の材料の窒化を抑制できる。
【0005】
しかしながら、反応器内のアンモニア濃度が希釈ガスによって低下することにより、製造できる水素の量(収率)が低下する。また、触媒を加熱するために、アンモニアの一部を燃焼させる必要がある。さらに、反応器の内面を耐火材で覆う必要がある。このように、アンモニア分解装置では、水素の収率が低下するとともに、構成が複雑である。
【0006】
特に、製造した水素をガスタービンに用いる場合、ガスタービンの発電出力の変動(負荷変動運転)に応じて水素の製造量を増減させる(応答性を高める)ことも必要となるが、上記アンモニア分解装置では、当該負荷変動運転に対応した応答性を発揮するのは困難なおそれがある。製造した水素をボイラに用いる場合も同様である。
【0007】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、簡易な構成で、水素の収率の向上、及び、ガスタービンやボイラの負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができるガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るガスタービン設備は、ガスタービンと、前記ガスタービンに水素を供給する水素供給設備と、を備えるガスタービン設備であって、前記水素供給設備は、反応器と、前記反応器内に配置される触媒であって、前記反応器に注入された化合物を分解して、水素を発生する触媒と、前記触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、前記触媒が生成した水素を前記ガスタービンに供給する供給装置と、を有する。
【0009】
これによれば、ガスタービン設備において、水素供給設備は、反応器と、反応器に注入された化合物を分解して水素を発生する触媒と、触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、反応器にて発生した水素をガスタービンに供給する供給装置と、を有している。このように、当該ガスタービン設備は、希釈ガスと原料とを混合して反応器内の原料濃度を低下させたり、原料の一部を燃焼させたり、反応器の内面を耐火材で覆ったりという複雑な構成ではなく、反応器内の触媒にマイクロ波を照射するという簡易な構成である。この構成により、反応器内の触媒にマイクロ波を照射することで、触媒を局所的に加熱できるため、反応器が加熱されるのを抑制でき、反応器の材料の窒化を抑制できる。また、反応器内の触媒にマイクロ波を照射することで、触媒を比較的高温に加熱できるため、水素の収率を向上させることができる。さらに、反応器内の触媒にマイクロ波を照射することで、比較的短時間で触媒を加熱して水素を発生させることができるため、ガスタービンの負荷変動運転に対応した応答性の実現を図ることができる。これらにより、ガスタービン設備によれば、簡易な構成で、水素の収率の向上、及び、ガスタービンの負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【0010】
また、前記水素供給設備は、液体状態の前記化合物を加熱して、前記反応器に注入する気体の前記化合物を発生させる蒸発器をさらに有し、前記蒸発器は、前記ガスタービンからの熱で、前記液体状態の前記化合物を加熱する、としてもよい。
【0011】
これによれば、水素供給設備において、蒸発器は、ガスタービンからの熱で、液体状態の化合物を加熱して気体の化合物を発生させる。このように、ガスタービンからの熱を利用して、反応器に注入する気体の化合物を発生させることができる。
【0012】
また、前記供給装置は、前記反応器から発生する水素を冷却する冷却器を有し、前記冷却器は、前記水素からの熱で、前記ガスタービンに供給される流体を加熱する、としてもよい。
【0013】
これによれば、水素供給設備において、供給装置の冷却器は、反応器から発生する水素を冷却した際の水素からの熱で、ガスタービンに供給される流体を加熱する。このように、水素供給設備によって発生する水素からの熱を利用して、ガスタービンに供給される流体を加熱することができる。
【0014】
また、前記水素供給設備は、前記ガスタービンの発電出力の変化に応じて、前記供給装置が前記ガスタービンに供給する水素の量を変化させる制御装置をさらに有する、としてもよい。
【0015】
これによれば、水素供給設備において、制御装置は、ガスタービンの発電出力の変化に応じて、ガスタービンに供給する水素の量を変化させる。これにより、ガスタービンの負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る水素供給設備は、ガスタービンに水素を供給する水素供給設備であって、反応器と、前記反応器内に配置される触媒であって、前記反応器に注入された化合物を分解して、水素を発生する触媒と、前記触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、前記触媒が生成した水素を前記ガスタービンに供給する供給装置と、を備える。
【0017】
これによれば、ガスタービンに水素を供給する水素供給設備は、反応器と、反応器に注入された化合物を分解して水素を発生する触媒と、触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、触媒が生成した水素をガスタービンに供給する供給装置と、を有している。この水素供給設備によれば、上述したガスタービン設備の場合と同様に、簡易な構成で、水素の収率の向上、及び、ガスタービンの負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る水素供給方法は、ガスタービンに水素を供給する水素供給方法であって、マイクロ波照射装置によって反応器内に配置される触媒にマイクロ波を照射して、前記反応器に注入された化合物を分解して、水素を発生し、前記触媒が生成した水素を前記ガスタービンに供給する。
【0019】
これによれば、ガスタービンに水素を供給する水素供給方法では、反応器内に配置される触媒にマイクロ波を照射して、反応器に注入された化合物を分解して水素を発生し、発生した水素をガスタービンに供給する。この水素供給方法によれば、上述したガスタービン設備または水素供給設備の場合と同様に、簡易な構成で、水素の収率の向上、及び、ガスタービンの負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【0020】
また、前記ガスタービンの発電出力の変化に応じて、前記ガスタービンに供給する水素の量を変化させる、としてもよい。
【0021】
これによれば、水素供給方法において、ガスタービンの発電出力の変化に応じて、ガスタービンに供給する水素の量を変化させることで、ガスタービンの負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【0022】
また、本発明は、水素供給方法をコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、当該プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能なCD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)などの記録媒体として実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD-ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができる。また、本発明は、ガスタービン設備または水素供給設備に含まれる処理部(制御装置)を備える集積回路としても実現することができる。
【0023】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るボイラ設備は、ボイラと、前記ボイラに水素を供給する水素供給設備と、を備えるボイラ設備であって、前記水素供給設備は、反応器と、前記反応器内に配置される触媒であって、前記反応器に注入された化合物を分解して、水素を発生する触媒と、前記触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、前記触媒が生成した水素を前記ボイラに供給する供給装置と、を有する。
【0024】
これによれば、ボイラ設備においても、上述したガスタービン設備と同様に、簡易な構成で、水素の収率の向上、及び、ボイラの負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明におけるガスタービン設備等によれば、簡易な構成で、水素の収率の向上、及び、ガスタービン等の負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施の形態に係るガスタービン設備の概略構成を示す模式図である。
図2】実施の形態に係る水素供給設備の構成を示す模式図である。
図3】実施の形態に係る水素供給設備が備える反応器、マイクロ波照射装置及び触媒の構成を示す模式図である。
図4】実施の形態に係る水素供給設備が備える制御装置を示すブロック図である。
図5】実施の形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態に係る制御装置が行う処理(水素供給方法)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係るガスタービン設備、水素供給設備、水素供給方法、及び、ボイラ設備について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、処理部(制御装置)での各処理、各処理の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図は、模式図であり、寸法、形状等は厳密に図示したものではない。
【0028】
(実施の形態)
[1 ガスタービン設備1の全般的な説明]
まず、ガスタービン設備1の概略構成について、説明する。図1は、本実施の形態に係るガスタービン設備1の概略構成を示す模式図である。
【0029】
ガスタービン設備1は、ガスタービンを用いた発電設備であり、図1に示すように、発電部2と、水素供給設備100と、を備えている。発電部2は、ガスタービン10、排熱回収ボイラ20、蒸気タービン30、及び、発電機40等を有している。つまり、ガスタービン設備1は、本実施の形態では、コンバインドサイクル発電方式の火力発電設備である。これらの各構成要素について、以下に具体的に説明する。
【0030】
ガスタービン10は、空気を圧縮する圧縮機11と、圧縮された空気を燃料とともに燃焼する燃焼器12と、燃焼ガスによって回転するタービン13と、を有している。具体的には、圧縮機11は、空気a1(本実施の形態では、外気)を吸い込んで圧縮する。つまり、ガスタービン10は、吸い込んだ空気a1を圧縮機11で高圧空気に圧縮し、燃焼器12で当該高圧空気に燃料を噴射して、燃焼させる。そして、高温高圧となった燃焼ガスが、タービン13を回転軸14まわりに回転させる。これにより、ガスタービン10は、発電機40に回転軸14まわりの回転力を与え、電力を発生させる。また、タービン13は、圧縮機11にも回転軸14まわりの回転力を与える。そして、タービン13を回転させた燃焼ガスは、排熱回収ボイラ20に排出される。
【0031】
排熱回収ボイラ20は、内部に、内部配管21を有している。内部配管21には、水(純水)が供給され、ガスタービン10から排出される燃焼ガスによって当該水が加熱されて蒸気となり、当該蒸気は、蒸気配管22を通って、蒸気タービン30に供給される。また、ガスタービン10から排出された燃焼ガスは、内部配管21内の流体を加熱した後に、排ガス配管23を通って、煙突24から排出される。なお、当該燃焼ガスは、煙突24から排出されるまでに、脱硝装置等(図示せず)によって不要な物質が除去される。
【0032】
蒸気タービン30は、排熱回収ボイラ20で生成された蒸気が供給され、当該蒸気のエネルギーで駆動(回転軸14まわりに回転)するタービンである。なお、蒸気タービン30の構成は特に限定されず、1つのタービンで構成されていてもよいし、高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービン等の複数のタービンを有していてもよい。また、蒸気タービン30を出た蒸気は、復水器31に送られ、復水器31で海水等の冷媒によって冷やされて水になり、給水配管32を通って排熱回収ボイラ20の内部配管21に送られる。
【0033】
発電機40は、ガスタービン10及び蒸気タービン30によって発電する発電機である。つまり、発電機40は、ガスタービン10及び蒸気タービン30に同軸(回転軸14)で接続されており、ガスタービン10及び蒸気タービン30が回転することで、発電機40が回転し、発電が行われる。このように、発電機40は、ガスタービン10及び蒸気タービン30の回転力を電力に変換することによって発電を行うタービン発電機である。発電機40が発電した電力は、電力ケーブル41を通って開閉所50に送られ、さらに、電力ケーブル51を通って送電鉄塔52に送られる。
【0034】
水素供給設備100は、ガスタービン10に水素を供給する設備である。具体的には、水素供給設備100は、化合物f1から水素f2を生成し、生成した水素f2をガスタービン10の燃焼器12に供給する。そして、燃焼器12は、空気a1が圧縮された高圧空気を水素f2とともに燃焼する。この水素供給設備100の具体的な構成について、以下に詳細に説明する。
【0035】
[2 水素供給設備100の構成の説明]
図2は、本実施の形態に係る水素供給設備100の構成を示す模式図である。図3は、本実施の形態に係る水素供給設備100が備える反応器120、マイクロ波照射装置130及び触媒150の構成を示す模式図である。
【0036】
図2及び図3に示すように、水素供給設備100は、蒸発器110と、反応器120と、マイクロ波照射装置130と、供給装置140と、触媒150と、を備えている。これらの各構成要素について、以下に具体的に説明する。
【0037】
蒸発器110は、液体状態の化合物f1を加熱して、反応器120に注入する気体の化合物f3を発生させる装置である。本実施の形態では、蒸発器110は、ガスタービン10からの熱で、液体状態の化合物f1を加熱する。つまり、蒸発器110は、液体状態の化合物f1と、ガスタービン10からの熱が蓄熱された流体b1との熱交換を行う熱交換器である。蒸発器110は、流体b1によって液体状態の化合物f1を加熱して気体の化合物f3を発生させるとともに、流体b1を冷却する。蒸発器110の構成は特に限定されないが、例えば、配管の中を化合物f1及び流体b1の一方が流れ、その周囲を他方が通過することで、化合物f1を加熱するとともに流体b1を冷却する構成を採用できる。このように、蒸発器110には、液体状態の化合物f1が供給されて、気体の化合物f3が排出される。
【0038】
気体の化合物f3は、分解されて水素を発生する化合物であり、本実施の形態では、水、アンモニア、ギ酸、アルコール、炭化水素、及び、硫化水素から選ばれる少なくとも1種を含む化合物である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられ、炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。液体状態の化合物f1は、当該化合物f3が液化されたものである。例えば、化合物f3はアンモニアであり、化合物f1は液体アンモニアである。化合物f3(化合物f1)は、分解されて水素を発生する化合物であれば、上記のものには限定されず、どのようなものでもよい。
【0039】
ガスタービン10からの熱が蓄熱された流体b1は、ガスタービン10の燃焼器12における燃焼で生じた熱が蓄熱された気体または液体である。流体b1は、例えば、蒸気配管22から取り出された蒸気(抽気)、排ガス配管23から取り出された排ガス、または、蒸気タービン30を出た蒸気等である。また、流体b1は、圧縮機11が発生する熱、または、混焼の場合には液化天然ガス(LNG)等の燃料に含まれる熱等、ガスタービン10からの熱を含む流体であってもよい。つまり、流体b1は、発電部2で発生する熱を含む流体である。
【0040】
反応器120は、内部に触媒150を収容する容器(反応管)である。本実施の形態では、反応器120は、マイクロ波を閉じ込める容器でもある。具体的には、マイクロ波照射装置130から発振されたマイクロ波は、反応器120内で繰り返し反射し、一定の電磁界または定在波を形成する。反応器120として、例えば、金属製の円筒形または角筒形等の空胴容器を用いることができる。言い換えれば、空胴容器自体が反応管として機能する。反応器120には、蒸発器110から排出された気体の化合物f3が供給される。そして、反応器120内で、化合物f3の少なくとも一部が、マイクロ波が照射され触媒150によって、水素に分解される。そして、反応器120から、水素を含むガスf4が排出される。つまり、ガスf4は、化合物f3が分解されて生成された水素と、水素の生成時に発生した物質と、分解されなかった化合物f3の残りと、を含んでいる。例えば、化合物f3がアンモニアの場合、ガスf4は、アンモニアが分解されて生成された水素及び窒素と、分解されなかったアンモニアと、を含んでいる。
【0041】
触媒150は、反応器120内に配置され、反応器120に注入された化合物f3を分解して、水素を発生する。具体的には、触媒150は、加熱されると、化合物f3を分解して水素を発生する。本実施の形態では、触媒150は、反応器120に充填されている。触媒150は、例えば、コバルト、ニッケル、鉄、タングステン、モリブデン、バナジウム、クロム、マンガン、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銅、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、炭素、及び、セリウムから選ばれる少なくとも1種を含む触媒である。触媒150は、熱によって化合物f3を分解して水素を発生できるものであれば、材質は特に限定されない。
【0042】
マイクロ波照射装置130は、触媒150にマイクロ波を照射する装置である。マイクロ波は、真空中での波長が数ミリメートルから数十センチメートル(周波数が数十MHz~数十GHz)程度の電磁波である。マイクロ波照射装置130は、マイクロ波を発振し、発振したマイクロ波を反応器120内に進入させて、触媒150にマイクロ波を照射する。この際、反応器120内部でマイクロ波が散乱・反射し、触媒150が加熱される。本実施の形態では、マイクロ波照射装置130は、触媒150に局所的にマイクロ波を照射し、触媒150のうちのマイクロ波が照射された部分で化合物f3が分解されて、水素が発生する。マイクロ波照射装置130は、化合物f3中の加熱したい物質が大きな誘電正接を有する振動数(例えば、2.4GHz~2.5GHz。水であれば2.45GHzなど)のマイクロ波を発振し、化合物f3を加熱する。マイクロ波照射装置130としては、マイクロ波を発振できるものであれば適宜公知のものを採用できるが、例えば、マグネトロン方式や誘電体共振方式等のマイクロ波発振器を用いることができる。
【0043】
供給装置140は、触媒150が生成(発生)した水素をガスタービン10に供給する装置である。具体的には、供給装置140には、反応器120から排出された水素を含むガスf4が供給され、供給装置140内でガスf4が冷却されて水素が分離され、分離された水素f2が供給装置140から排出されることで、水素f2がガスタービン10に供給される。供給装置140は、冷却器141と、分離精製設備142と、を有している。
【0044】
冷却器141は、反応器120から発生する水素を冷却する装置である。具体的には、冷却器141は、反応器120内で触媒150が分解した水素を含むガスf4を冷却する。さらに具体的には、冷却器141は、水素からの熱(水素を含むガスf4に蓄熱された熱)で、ガスタービン10に供給される流体を加熱する。つまり、冷却器141は、ガスf4と、ガスタービン10に供給される流体b2との熱交換を行う熱交換器である。冷却器141は、流体b2によってガスf4を冷却して冷却後のガスf5を排出するとともに、流体b2を加熱する。冷却器141の構成は特に限定されないが、例えば、配管の中をガスf4及び流体b2の一方が流れ、その周囲を他方が通過することで、ガスf4を冷却するとともに流体b2を加熱する構成を採用できる。このように、冷却器141には、「水素を含むガスf4」が供給されて冷却され、冷却後の「水素を含むガスf5」が排出される。
【0045】
ガスタービン10に供給される流体b2は、ガスタービン10が発電するのに加熱が必要な気体または液体である。流体b2は、例えば、ガスタービン10に吸気される空気a1、ガスタービン10(燃焼器12)に供給される燃料、または、ガスタービン10の補機を加熱するための流体等である。ガスタービン10(燃焼器12)に供給される燃料としては、本実施の形態では水素f2であるが、混焼の場合には、水素f2の他、天然ガス等の他燃料、または、それらの混合物等が挙げられる。なお、冷却器141には、流体b2に加えて、蒸発器110において化合物f1を加熱する流体b1が供給されてもよい。つまり、冷却器141と蒸発器110とで熱交換されてもよい。流体b1がガスタービン10に供給される場合には、流体b1が、ガスタービン10に供給される流体b2に相当する。
【0046】
分離精製設備142は、水素を含むガスf5から水素を分離する装置である。具体的には、分離精製設備142には、冷却器141から排出された水素を含むガスf5が供給され、分離精製設備142内でガスf5から水素f2が分離され、分離された水素f2が分離精製設備142から排出されることで、水素f2がガスタービン10に供給される。また、ガスf5のうちの水素f2が分離された残りのガスf6は、分離精製設備142から排出されて、化合物f3と混合され、化合物f3とともに反応器120に供給される。例えば、化合物f3がアンモニアの場合、ガスf6は、反応器120で未反応だったアンモニアと、窒素とを含んでいる。分離精製設備142は、水素を分離できるものであれば、適宜公知のものを採用できる。
【0047】
ここで、水素供給設備100は、水素供給設備100が備える上記の各装置を制御する制御装置160をさらに備えている。以下に、水素供給設備100が備える制御装置160の構成、及び、制御装置160が行う処理(水素供給方法)について、詳細に説明する。
【0048】
[3 水素供給設備100の制御装置160、及び、水素供給方法の説明]
図4は、本実施の形態に係る水素供給設備100が備える制御装置160を示すブロック図である。図5は、本実施の形態に係る制御装置160の機能構成を示すブロック図である。図6は、本実施の形態に係る制御装置160が行う処理(水素供給方法)を示すフローチャートである。
【0049】
図4に示すように、制御装置160は、発電部2に関するデータに基づいて、水素供給設備100が備える各装置を制御する。つまり、制御装置160は、発電部2に関するデータを取得し、取得したデータから制御値を算出し、水素供給設備100が備える各装置に制御指示を行う。制御装置160は、各種処理を行う専用のコンピュータであってもよいし、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータに組み込まれていてもよいし、発電部2を制御する他の制御装置に組み込まれていてもよい。
【0050】
例えば、制御装置160は、蒸発器110に供給される化合物f1の流量(蒸発器110から排出される化合物f3の流量)を制御したり、流体b1の流量を調整して蒸発器110の温度(化合物f3の温度)を制御する。制御装置160は、マイクロ波照射装置130のマイクロ波の照射強度、照射時間、照射範囲等を調整して、反応器120で分解される水素の流量を制御する。制御装置160は、流体b2の流量を調整して冷却器141の温度を制御し、冷却器141から排出されるガスf5の温度を制御する。制御装置160は、分離精製設備142を制御し、ガスタービン10に供給する水素f2の流量を制御する。
【0051】
これにより、制御装置160は、反応器120内に配置される触媒150にマイクロ波を照射し、反応器120に注入された化合物f3を分解して水素を発生するように、マイクロ波照射装置130を制御する。制御装置160は、触媒150が生成(発生)した水素f2をガスタービン10に供給するように制御する。具体的には、制御装置160は、ガスタービン10の発電出力の変化に応じて、供給装置140がガスタービン10に供給する水素f2の量を変化させる。
【0052】
図5に示すように、制御装置160は、取得部161と、算出部162と、指示部163と、記憶部164と、を備えている。制御装置160は、データを入力するキーボード、マウス若しくはタッチパネル等の入力部、及び、データを表示するディスプレイ等の表示部等も備えていてもよい。
【0053】
取得部161は、発電部2及び水素供給設備100に関する各種データを取得する処理部である。取得部161は、発電部2から、発電部2に指示を与える他の制御装置から、または、ユーザの入力により、発電部2に関するデータを取得する。発電部2に関するデータとしては、例えば、ガスタービン10若しくは発電部2全体の発電出力、または、その発電出力の指令値、蒸発器110に供給する流体b1についての情報(温度、圧力、流量等)、冷却器141に供給する流体b2についての情報(温度、圧力、流量等)等が挙げられる。また、取得部161は、水素供給設備100が備える各装置から、水素供給設備100に関するデータを取得する。水素供給設備100に関するデータとしては、化合物f1、f3、ガスf4、f5、f6、水素f2についての情報(温度、圧力、流量等)、マイクロ波照射装置130が照射するマイクロ波についての情報(照射強度、照射時間、照射範囲等)等が挙げられる。
【0054】
算出部162は、取得部161が取得したデータから、水素供給設備100が備える各装置を制御する制御値を算出する処理部である。算出部162は、取得部161が取得した各種データに基づいて、例えば、化合物f1、f3、ガスf4、f5、f6、水素f2についての制御値(流量等)、マイクロ波照射装置130が照射するマイクロ波についての制御値(照射強度、照射時間、照射範囲等)等を算出する。
【0055】
指示部163は、算出部162が算出した制御値を用いて、水素供給設備100が備える各装置に制御指示を行う処理部である。つまり、指示部163は、水素供給設備100における各装置の状態が、算出部162が算出した制御値になるように、水素供給設備100が備える各装置に制御指示を行う。例えば、指示部163は、化合物f1、f3、ガスf4、f5、f6、水素f2が制御値通りの流量等になるように、水素供給設備100が備える各装置に制御指示を行う。指示部163は、マイクロ波照射装置130が照射するマイクロ波が制御値通りの照射強度、照射時間、照射範囲等になるように、マイクロ波照射装置130に制御指示を行う。
【0056】
記憶部164は、制御装置160に含まれる各処理部が行う処理に必要なデータを記憶しているメモリである。記憶部164は、例えば、取得部161が取得した各種データ、及び、算出部162が算出した制御値等を記憶している。取得部161は、取得したデータを記憶部164に書き込み、算出部162は、記憶部164からデータを読み出して制御値を算出し、算出した制御値を記憶部164に書き込む。指示部163は、記憶部164から制御値を読み出して、水素供給設備100が備える各装置に制御指示を行う。
【0057】
このような構成において、制御装置160は、ガスタービン10に水素f2を供給する水素供給方法を実行する。
【0058】
具体的には、図6に示すように、取得部161は、発電部2及び水素供給設備100に関する各種データを取得する(S1:データ取得ステップ)。例えば、取得部161は、ガスタービン10の発電出力の指令値を取得する。
【0059】
そして、算出部162は、取得部161が取得したデータから、水素供給設備100が備える各装置を制御する制御値を算出する(S2:制御値算出ステップ)。例えば、算出部162は、ガスタービン10の発電出力の指令値に基づいて、化合物f1、f3、ガスf4、f5、f6、水素f2の流量、マイクロ波照射装置130が照射するマイクロ波の照射強度、照射時間及び照射範囲等の制御値を算出する。
【0060】
そして、指示部163は、算出部162が算出した制御値を用いて、水素供給設備100が備える各装置に制御指示を行う(S3:制御指示ステップ)。例えば、指示部163は、化合物f1、f3、ガスf4、f5、f6、水素f2の流量、マイクロ波照射装置130が照射するマイクロ波の照射強度、照射時間及び照射範囲等が制御値通りになるように、水素供給設備100が備える各装置に制御指示を行う。
【0061】
このように、水素供給方法では、マイクロ波照射装置130によって反応器120内に配置される触媒150にマイクロ波を照射して、反応器120に注入された化合物f3を分解して、水素を発生し、触媒150が生成(発生)した水素f2をガスタービン10に供給する。さらに、水素供給方法では、ガスタービン10の発電出力の変化に応じて、ガスタービン10に供給する水素f2の量を変化させる。本実施の形態では、制御装置160は、ガスタービン10の負荷変動運転に、ガスタービン10の発電出力が1分以内に定格出力時の10%(最大)で変化可能なように(10%/分以上変化可能なように)制御する。
【0062】
[4 効果の説明]
以上のように、本実施の形態に係るガスタービン設備1によれば、水素供給設備100は、反応器120と、反応器120に注入された化合物f3を分解して水素を発生する触媒150と、触媒150にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置130と、反応器120にて発生した水素f2をガスタービン10に供給する供給装置140と、を有している。このように、ガスタービン設備1は、希釈ガスと原料とを混合して反応器120内の原料濃度を低下させたり、原料の一部を燃焼させたり、反応器120の内面を耐火材で覆ったりという複雑な構成ではなく、反応器120内の触媒150にマイクロ波を照射するという簡易な構成である。この構成により、反応器120内の触媒150にマイクロ波を照射することで、触媒150を局所的に加熱できるため、反応器120が加熱されるのを抑制でき、反応器120の材料の窒化を抑制できる。また、反応器120内の触媒150にマイクロ波を照射することで、触媒150を比較的高温で加熱できるため、水素f2の収率を向上させることができる。さらに、反応器120内の触媒150にマイクロ波を照射することで、比較的短時間で触媒150を加熱して水素f2を発生させることができるため、ガスタービン10の負荷変動運転に対応した応答性の実現を図ることができる。これらにより、ガスタービン設備1によれば、簡易な構成で、水素f2の収率の向上、及び、ガスタービン10の負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【0063】
水素供給設備100において、蒸発器110は、ガスタービン10からの熱で、液体状態の化合物f1を加熱して気体の化合物f3を発生させる。このように、ガスタービン10からの熱を利用して、反応器120に注入する気体の化合物f3を発生させることができる。
【0064】
水素供給設備100において、供給装置140の冷却器141は、反応器120から発生する水素を冷却した際の水素からの熱で、ガスタービン10に供給される流体b2を加熱する。このように、水素供給設備100によって発生する水素からの熱を利用して、ガスタービン10に供給される流体b2を加熱することができる。
【0065】
水素供給設備100において、制御装置160は、ガスタービン10の発電出力の変化に応じて、ガスタービン10に供給する水素f2の量を変化させる。これにより、ガスタービン10の負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【0066】
ガスタービン10に水素f2を供給する水素供給設備100は、反応器120と、反応器120に注入された化合物f3を分解して水素を発生する触媒150と、触媒150にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置130と、触媒150が生成(発生)した水素f2をガスタービン10に供給する供給装置140と、を有している。この水素供給設備100によれば、上述したガスタービン設備1の場合と同様に、簡易な構成で、水素f2の収率の向上、及び、ガスタービン10の負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【0067】
ガスタービン10に水素f2を供給する水素供給方法では、反応器120内に配置される触媒150にマイクロ波を照射して、反応器120に注入された化合物f3を分解して水素を発生し、発生した水素f2をガスタービン10に供給する。この水素供給方法によれば、上述したガスタービン設備1または水素供給設備100の場合と同様に、簡易な構成で、水素f2の収率の向上、及び、ガスタービン10の負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【0068】
水素供給方法において、ガスタービン10の発電出力の変化に応じて、ガスタービン10に供給する水素f2の量を変化させることで、ガスタービン10の負荷変動運転に対応した応答性の向上を図ることができる。
【0069】
[5 変形例の説明]
以上、本実施の形態に係るガスタービン設備1、水素供給設備100及び水素供給方法について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0070】
例えば、上記実施の形態では、ガスタービン10には、水素供給設備100から水素が供給されて、燃焼器12では水素を燃焼(専焼)することとした。しかし、ガスタービン10に水素以外の燃料も供給されて、燃焼器12では当該燃料と水素とを混焼することにしてもよい。例えば、燃焼器12では、液化天然ガス(LNG)が気化した天然ガス(NG)と水素とを混焼することにしてもよいし、その他の燃料と水素とを混焼することにしてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態では、ガスタービン設備1は、ガスタービン10と蒸気タービン30とが同軸(回転軸14)で接続された一軸式のコンバインドサイクル発電方式の火力発電設備であることとした。しかし、ガスタービン設備1は、ガスタービン10と蒸気タービン30とが直結されていない(同軸ではない)多軸式のコンバインドサイクル発電方式であることにしてもよい。また、ガスタービン設備1は、蒸気タービンを有さないガスタービン発電方式の火力発電設備であることにしてもよい。または、ガスタービン設備1は、発電設備以外の、ガスタービンを備える設備であってもよい。
【0072】
または、ガスタービン設備1に代えて、ボイラ設備が設けられてもよい。つまり、発電部2は、ガスタービン10及び排熱回収ボイラ20に代えて、ボイラを有していてもよい。具体的には、ボイラ設備は、水素供給設備100から供給される水素f2をボイラで燃焼し、当該ボイラで蒸気を発生させて蒸気タービン30を回転し、発電機40で発電を行うコンベンショナル発電方式の火力発電設備等であってもよい。または、当該ボイラ設備は、発電設備以外の、ボイラを備える設備であってもよい。ボイラで燃焼する燃料は、水素のみでもよいし、水素とその他の燃料との混焼でもよい。このように、当該ボイラ設備は、ボイラと、ボイラに水素f2を供給する水素供給設備100と、を備えるボイラ設備であって、水素供給設備100は、反応器120と、反応器120内に配置される触媒150であって、反応器120に注入された化合物f3を分解して、水素f2を発生する触媒150と、触媒150にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置130と、触媒150が生成した水素f2をボイラに供給する供給装置140と、を有することにしてもよい。当該ボイラ設備におけるその他の構成は、上述したガスタービン設備1における構成と同様である。つまり、当該ボイラ設備は、上述したガスタービン設備1におけるカスタービン10(及び排熱回収ボイラ20)をボイラに変更することで実現できる。例えば、蒸発器110は、ボイラからの熱で化合物f1を加熱する。冷却器141は、水素からの熱で、ボイラに供給される流体を加熱する。制御装置160は、ボイラによって発電する発電出力の変化に応じて、供給装置140がボイラに供給する水素の量を変化させる。ボイラに水素を供給する水素供給方法においては、マイクロ波照射装置130によって反応器120内に配置される触媒150にマイクロ波を照射して、反応器120に注入された化合物を分解して、水素を発生し、触媒150が生成した水素をボイラに供給する。
【0073】
また、上記実施の形態では、蒸発器110は、液体状態の化合物f1を加熱して気体の化合物f3を発生させることとした。しかし、蒸発器110は、気体の(気化された)化合物f1を加熱して、化合物f1よりも高温の気体の化合物f3を発生させることにしてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態では、蒸発器110は、ガスタービン10からの熱で化合物f1を加熱することとした。しかし、蒸発器110は、発電機40が発生する熱で化合物f1を加熱してもよいし、反応器120が発生する熱等、水素供給設備100で発生する熱で化合物f1を加熱してもよい。
【0075】
また、上記実施の形態において、水素供給設備100は、全ての装置を備えていなくてもよい。例えば、水素供給設備100に化合物f3が直接供給される場合には、水素供給設備100は、蒸発器110を備えていなくてもよい。反応器120から排出されるガスf4を冷却する必要がない場合には、水素供給設備100(供給装置140)は、冷却器141を備えていなくてもよい。水素を分離させることなくガスタービン10に供給できる場合には、水素供給設備100(供給装置140)は、分離精製設備142を備えていなくてもよい。
【0076】
また、本発明は、水素供給方法をコンピュータ(プロセッサ)に実行させるプログラムとして実現したり、当該プログラムが記録されたコンピュータ(プロセッサ)読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ、フラッシュメモリ、磁気記憶装置、光ディスク、紙テープなどあらゆる媒体として実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD-ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができる。また、本発明は、ガスタービン設備1または水素供給設備100(若しくは、ボイラ設備)に含まれる処理部(制御装置160)を備える集積回路としても実現することができる。
【0077】
また、上記実施の形態及び上記変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、ガスタービン等と水素供給設備とを備えるガスタービン設備等に適用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 ガスタービン設備
2 発電部
10 ガスタービン
11 圧縮機
12 燃焼器
13 タービン
14 回転軸
20 排熱回収ボイラ
21 内部配管
22 蒸気配管
23 排ガス配管
24 煙突
30 蒸気タービン
31 復水器
32 給水配管
40 発電機
41、51 電力ケーブル
50 開閉所
52 送電鉄塔
100 水素供給設備
110 蒸発器
120 反応器
130 マイクロ波照射装置
140 供給装置
141 冷却器
142 分離精製設備
150 触媒
160 制御装置
161 取得部
162 算出部
163 指示部
164 記憶部
a1 空気
b1、b2 流体
f1、f3 化合物
f2 水素
f4、f5、f6 ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6