(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024144979
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】二酸化炭素含有ガスの製造方法及び二酸化炭素の濃縮システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20241004BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20241004BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20241004BHJP
【FI】
B01D53/04
B01J20/18 B
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057188
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】引間 脩
(72)【発明者】
【氏名】大西 良治
(72)【発明者】
【氏名】武脇 隆彦
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012CA03
4D012CB01
4D012CD07
4D012CD10
4D012CE03
4D012CF04
4D012CF05
4D012CG01
4G066AA61B
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA03
4G066GA01
4G146JA02
4G146JC08
4G146JC18
4G146JC20
4G146JC27
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、大気のような二酸化炭素濃度の低いガスから二酸化炭素を濃縮する、二酸化炭素含有ガスの製造方法を提供することである。
【解決手段】
二酸化炭素濃度が1%以下であるガスを、吸着温度として、二酸化炭素の昇華温度を超え、かつ5℃以下の温度でアルミノフォスフェートゼオライトに二酸化炭素を吸着させ、吸着した二酸化炭素を放出温度として、前記吸着温度を超える温度で放出させる、二酸化炭素含有ガスの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素濃度が1%以下であるガスを、吸着温度として、二酸化炭素の昇華温度を超え、かつ5℃以下の温度でアルミノフォスフェートゼオライトに二酸化炭素を吸着させ、吸着した二酸化炭素を放出温度として、前記吸着温度を超える温度で放出させる、二酸化炭素含有ガスの製造方法。
【請求項2】
前記放出温度が20℃以上である、請求項1に記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
【請求項3】
前記ガス中の二酸化炭素濃度が1000ppm以下である、請求項1に記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
【請求項4】
前記アルミノフォスフェートゼオライトが8員環を有するゼオライトである、請求項1に記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
【請求項5】
前記アルミノフォスフェートゼオライトが、シリコアルミノフォスフェートゼオライトである、請求項1に記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
【請求項6】
前記アルミノフォスフェートゼオライトがAEI型、CHA型、又はAFX型である、請求項1に記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
【請求項7】
前記吸着温度は、前記ガス及びアルミノフォスフェートゼオライトの少なくとも一方を二酸化炭素の昇華温度以上、5℃以下に冷却することにより得る、請求項1に記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
【請求項8】
液化天然ガス又は液体水素の冷熱によって対象ガスを冷却するための冷却用熱交換器と、前記対象ガスに含まれる二酸化炭素を分離して吸着するための吸着剤を有する吸脱着モジュールと、前記冷却用熱交換器において冷却された前記対象ガスを前記吸脱着モジュールに導入するためのガス導入装置と、吸脱着モジュールにおける吸着と脱着を交互に行うように制御する制御装置とを有する二酸化炭素の濃縮システムであって、前記吸着剤がアルミノフォスフェートゼオライトであり、吸着温度が二酸化炭素の昇華温度を超え、かつ5℃以下の温度であり、脱着温度が20℃以上であり、かつ前記対象ガス中の二酸化炭素濃度が1%以下であることを特徴とする、二酸化炭素の濃縮システム。
【請求項9】
請求項1に記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法により製造される、二酸化炭素濃度が1%を超えたガスから、さらに二酸化炭素を濃縮する、二酸化炭素含有ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素含有ガスの製造方法及び二酸化炭素の濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料の燃焼後に生じる排ガス、大気等に含まれる二酸化炭素は、地球温暖化の要因とされており、地球温暖化を防止するために、排ガス、大気等から二酸化炭素を分離して回収する技術が開発されている。二酸化炭素を分離して回収する技術の一つとして、排ガス、大気等の対象ガスから二酸化炭素を分離して吸着剤に吸着させた後、温度又は圧力を変化させて吸着剤から二酸化炭素を回収する技術がある。
例えば、吸着剤の温度をスイングさせるTSA(Temperature Swing Adsorption)法、吸着剤が配置された分離装置の圧力をスイングさせて、吸着剤に対する二酸化炭素の吸着及び脱着を行うPSA(Pressure Swing Adsorption)法等が知られている。
【0003】
TSA法では、一般に、常温(20℃±15℃)において、吸着剤に二酸化炭素を吸着させ、常温よりも高い温度で、吸着剤から二酸化炭素を脱着させる方法がとられる。また、PSA法は、吸着剤が配置された分離装置の圧力をスイングさせて、吸着剤に対する二酸化炭素の吸着及び脱着を行う方法である。
【0004】
従来のTSA法、特にゼオライトを用いた場合においては、対象ガスを高温にする際に多くのエネルギーを必要とするという問題があり、PSA法においても圧力を変動させるために多くのエネルギーを必要とする。さらに加えてTSA法、PSA法ともに、分離装置へ供給される排ガスを乾燥させる必要があるという問題がある。
【0005】
以上のような状況下、特許文献1には、液化天然ガス又は液体水素の冷熱によって対象ガスを冷却するための冷却用熱交換器と、前記対象ガスに含まれる二酸化炭素を分離して吸着するための吸着剤を有する吸脱着モジュールと、前記冷却用熱交換器において冷却された前記対象ガスを前記吸脱着モジュールに導入して、5℃よりも低く二酸化炭素の昇華点よりも高い吸着温度において前記吸着を行う吸着工程と、前記吸着温度よりも高い脱着温度において、前記吸着剤に吸着された二酸化炭素を脱着して回収する脱着工程とを交互に行うよう制御する制御装置と、を備える二酸化炭素の分離・回収システムが開示される。
また、対象ガスを加圧するための加圧装置と、液化天然ガス又は液体水素の冷熱によって前記対象ガスを冷却するための冷却用熱交換器と、前記対象ガスに含まれる二酸化炭素を分離して吸着するための吸着剤を有する吸脱着モジュールと、前記吸脱着モジュール内を減圧するための減圧装置と、前記加圧装置によって加圧されるとともに前記冷却用熱交換器において冷却された前記対象ガスを前記吸脱着モジュールに導入して、5℃よりも低く二酸化炭素の昇華点よりも高い吸着温度において前記吸着を行う吸着工程と、前記減圧装置によって前記吸脱着モジュール内のガスを吸引し、前記吸着剤に吸着された二酸化炭素を脱着して回収する脱着工程を交互に行うよう制御する制御装置と、を備える二酸化炭素の分離・回収システムが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される技術は、排ガスのような二酸化炭素濃度の高いガスから、二酸化炭素を濃縮、除去することに適した方法ではあるが、大気中に400ppm程度しかない濃度の低い二酸化炭素を吸着し、これを高濃度の二酸化炭素として放出させることはできていないのが現状である。
そこで、本発明は、大気のような二酸化炭素濃度の低いガスから二酸化炭素を濃縮する、二酸化炭素含有ガスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定の吸着材を用い、かつ特定の吸着条件を選択することによって、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供するものである。
【0009】
[1]二酸化炭素濃度が1%以下であるガスを、吸着温度として、二酸化炭素の昇華温度を超え、かつ5℃以下の温度でアルミノフォスフェートゼオライトに二酸化炭素を吸着させ、吸着した二酸化炭素を放出温度として、前記吸着温度を超える温度で放出させる、二酸化炭素含有ガスの製造方法。
[2]前記放出温度が20℃以上である、上記[1]に記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
[3]前記ガス中の二酸化炭素濃度が1000ppm以下である、上記[1]又は[2]に記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
[4]前記アルミノフォスフェートゼオライトが8員環を有するゼオライトである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
[5]前記アルミノフォスフェートゼオライトが、シリコアルミノフォスフェートゼオライトである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
[6]前記アルミノフォスフェートゼオライトがAEI型、CHA型、又はAFX型である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
[7]前記吸着温度は、前記ガス及びアルミノフォスフェートゼオライトの少なくとも一方を二酸化炭素の昇華温度以上、5℃以下に冷却することにより得る、上記[1]~[6]のいずれかに記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法。
[8]液化天然ガス又は液体水素の冷熱によって対象ガスを冷却するための冷却用熱交換器と、前記対象ガスに含まれる二酸化炭素を分離して吸着するための吸着剤を有する吸脱着モジュールと、前記冷却用熱交換器において冷却された前記対象ガスを前記吸脱着モジュールに導入するためのガス導入装置と、吸脱着モジュールにおける吸着と脱着を交互に行うように制御する制御装置とを有する二酸化炭素の濃縮システムであって、前記吸着剤がアルミノフォスフェートゼオライトであり、吸着温度が二酸化炭素の昇華温度を超え、かつ5℃以下の温度であり、脱着温度が20℃以上であり、かつ前記対象ガス中の二酸化炭素濃度が1%以下であることを特徴とする、二酸化炭素の濃縮システム。
[9]上記[1]に記載の二酸化炭素含有ガスの製造方法により製造される、二酸化炭素濃度が1%を超えたガスから、さらに二酸化炭素を濃縮する、二酸化炭素含有ガスの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二酸化炭素濃度の低いガスから二酸化炭素を濃縮する、二酸化炭素含有ガスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の二酸化炭素の濃縮システムを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
[二酸化炭素含有ガスの製造方法]
本発明の二酸化炭素含有ガスの製造方法(以下、「本製造方法」と記載することがある。)は、アルミノフォスフェートゼオライトを吸着材として用い、特定の吸着条件、脱着条件によって、二酸化炭素を効果的に濃縮する、二酸化炭素含有ガスの製造方法である。
【0013】
<アルミノフォスフェートゼオライト>
アルミノフォスフェートゼオライトとは、骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素、アルミニウム(Al)、リン(P)を含むものであり、これらの原子の一部が他の原子(Me)で置換されていてもよい。他の原子(Me)としては、例えば周期表の2A族、3A族、4A族、5A族、7A族、8族、1B族、2B族、アルミニウム以外の3B族及び4B族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の原子が挙げられる。中でも、リン原子がヘテロ原子(Me1:但し、Me1は周期表の4B族元素)で置換されたMe1-アルミノフォスフェートゼオライト(以下、「ALPO」と記載することがある。)が好ましい。
【0014】
Me1は、1種含まれていても、2種以上含まれていてもよい。好ましいMe1は、ケイ素またはゲルマニウムであり、更に好ましくはケイ素である。すなわちケイ素で置換されたアルミノフォスフェートであるシリコアルミノフォスフェートゼオライト(以下、「SAPO」と記載することがある。)がより好ましい。
ALPOの骨格構造を構成しているMe1、Al及びPの構成割合(モル比)は、特に限定されるものではないが、Me1、Al、Pの合計に対するMe1のモル比をx1、Alのモル比をy1、Pのモル比をz1とすると、x1は、通常0以上であり、好ましくは0.01以上であり、通常0.3以下である。
また前記のy1は、通常0.2以上であり、好ましくは0.3以上であり、通常0.6以下であり、好ましくは0.5以下である。
また前記のz1は、通常0.3以上であり、好ましくは0.4以上であり、通常0.6以下であり、好ましくは0.5以下である。
【0015】
本発明において用いられるゼオライトが、SAPOの場合、ゼオライト中のアルミニウム原子、リン原子およびケイ素原子の存在割合は、下記式(I)、(II)および(III)を満たすことが好ましい。
0.01≦x1≦0.2 ・・・(I)
(式中、x1は骨格構造のケイ素とアルミニウムとリンの合計に対するケイ素のモル比を示す)
0.3≦y1≦0.6 ・・・(II)
(式中、y1は骨格構造のケイ素とアルミニウムとリンの合計に対するアルミニウムのモル比を示す)
0.3≦z1≦0.6 ・・・(III)
(式中、z1は骨格構造のケイ素とアルミニウムとリンの合計に対するリンのモル比を示す)
【0016】
すなわち、SAPO中の骨格構造に含まれるケイ素原子、アルミニウム原子、リン原子の合計に対するケイ素原子の存在割合をx1、アルミニウム原子の存在割合をy1、リン原子の存在割合をz1としたとき、x1が通常0.01以上0.2以下、かつy1が通常0.3以上、0.6以下であり、かつz1が通常0.3以上、0.6以下であるゼオライトであることが好ましいことを意味する。
また、x1は好ましくは0.05以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.07以上、より更に好ましくは0.075以上であり、好ましくは0.11以下、より好ましくは0.105以下、更に好ましくは0.100以下、より更に好ましくは0.095以下である。
【0017】
また、本発明におけるALPOのゼオライト骨格内には他の元素が含まれていてもよい。他の元素としては、リチウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、スズ、カルシウム、硼素などが挙げられる。好ましくは、鉄、銅、ガリウムが挙げられる。他の元素は、1種単独でもよいが、2種以上であってもよい。
他の元素の含有量はゼオライト骨格中にケイ素とアルミニウムとリンの合計に対するモル比で、0.3以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1以下である。
なお、上記の元素の割合は元素分析により決定するが、本発明における元素分析は、試料を塩酸水溶液で加熱溶解させ、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、以下ICP)発光分光分析により行ったものである。
【0018】
本発明に係るALPOは、IZA(International Zeolite Association)によって定義された結晶構造を有するゼオライトであればよく、好ましくは結晶構造中に8員環を有するゼオライト、更に好ましくは、AEI型、CHA型、AFX型、RHO型であり、特に好ましくはAEI型、CHA型又はAFX型である。
【0019】
<二酸化炭素の吸着>
二酸化炭素の吸着工程においては、吸着温度として、二酸化炭素の昇華温度を超え、かつ5℃以下の温度でALPOに二酸化炭素を吸着させることが肝要である。この温度範囲であると、二酸化炭素が効率的にALPOに吸着する。
二酸化炭素の昇華温度は常圧では約-79℃であることから、上記温度範囲は、常圧では-79~5℃の範囲となる。より効果的に二酸化炭素を吸着させるためには、―79~―5℃の範囲であることが好ましく、―79~―10℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0020】
上記吸着温度を達成するための冷却方法としては、特に制限はないが、対象となるガスを冷却する方法、または吸着材であるALPOを冷却する方法、及び両方を冷却する方法が挙げられる。冷却効率を考慮すると、両者を冷却することが好ましい。
【0021】
<二酸化炭素の放出>
二酸化炭素の放出温度としては、吸着温度よりも高い温度であることが必要であり、具体的には、20℃以上であることが好ましい。20℃以上であると、効率的に二酸化炭素を放出することができる。
また、吸着温度と放出温度の温度差は25℃以上であることが好ましい。該温度差が大きいほど放出効率が高くなる。以上の点から、該温度差は30℃以上であることがさらに好ましい。
なお、本発明において、放出温度と脱着温度は同義である。
【0022】
<ガス中の二酸化炭素濃度>
本発明では、対象となるガス中の二酸化炭素濃度が1%以下である。本発明の目的は前述のように、大気などの二酸化炭素濃度の低いガスから、二酸化炭素を回収して濃縮する方法である。したがって、対象となるガス中の二酸化炭素濃度は1%以下であり、さらには1000ppm以下であるガスを対象にすることにより、より効果が発揮されるものである。
【0023】
[二酸化炭素の濃縮システム]
本発明の二酸化炭素の濃縮システム10は、例えば
図1に示すように、冷却用熱交換器11、吸脱着モジュール13、ガス導入装置12を有する装置を用いるシステムである。
冷却用熱交換器11は、対象ガスを冷却するための装置であり、例えば液化天然ガス(LNG)や液化水素と熱交換することで、対象ガスを冷却するものである。該冷却には、熱交換器のみではなく、その他の冷却方法を併せて使用することもできる。
【0024】
吸脱着モジュール13は、対象ガスに含まれる二酸化炭素を分離して吸着するための吸着剤を有する。本発明では、吸着剤としてアルミノフォスフェートゼオライトを用いることが特徴である。アルミノフォスフェートゼオライトについては、前述の通りである。
本発明では、上述のように、対象ガスを冷却用熱交換器等で冷却するが、吸脱着モジュール13も冷却することが、二酸化炭素の吸着を効率的にすることから好ましい。
上記ガス導入装置12は、冷却用熱交換器等で冷却された二酸化炭素を含む対象ガスを吸脱着モジュールに導入する機能を有するものである。
【0025】
また、本発明のシステムでは、吸脱着モジュール13における吸着と脱着を交互に行うように制御する制御装置14を備えていてもよく、TSA若しくはPSA法を達成するための機能を有するものである。なお、吸着と脱着を交互に行う機構および制御方法については、従来公知の方法を用いることができる。
本発明のシステムでは、吸着に関しては、上述のように、二酸化炭素の昇華温度を超え、かつ5℃以下の温度となるように制御し、脱着温度(放出温度)は20℃以上となるように制御する。
対象ガスについては、二酸化炭素濃度が1%以下のガスを用いる。
そして上述の製造方法(濃縮方法)や濃縮システムには、得られた二酸化炭素濃度が1%を超えるガスを、既存の方法によりさらに二酸化炭素濃度を高め、二酸化炭素濃度が80%以上、好ましくは90%以上である二酸化炭素含有ガスを製造したり、製造できるシステムとすることができる。二酸化炭素濃度が1%を超えるようなガスから二酸化炭素を濃縮することは、種々の公知の方法にて可能であるため、任意の方法でさらなる濃縮をして二酸化炭素含有ガスを製造できる。
【実施例0026】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
吸着剤としてSAPO-CHAを用いて、-77℃及び30℃におけるCO2吸着等温線を測定した。-77℃、0.04kPaにおけるCO2吸着量は0.95mmol/gであり、また、30℃の等温線において、10kPaにおけるCO2吸着量は0.47 mmol/gであった。
これらの結果から全圧100kPaでCO2を400ppm含むガスの-77℃~30℃におけるTSAを考えると、SAPO-CHAを吸着材として用いてCO2濃度10%まで濃縮した場合は、その有効吸着量は+0.48mmol/gであり、10%まで濃縮可能である。
なお、ここでSAPO-CHAとは、CHA型の結晶構造を有するSAPOを意味する。また、ここで述べる有効吸着量とはー77℃、0.04kPaにおけるCO2吸着量から30℃、10kPaにおけるCO2吸着量を引いた値である。
【0028】
実施例2
実施例1において、吸着剤としてSAPO-CHAに代えて、SAPO-AFXを用いたこと以外は実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。なお、SAPO-AFXは、AFX型の結晶構造を有するSAPOを意味する。
【0029】
実施例3
実施例1において、吸着剤としてSAPO-CHAに代えて、SAPO-AEIを用いたこと以外は実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。なお、SAPO-AEIは、AEI型の結晶構造を有するSAPOを意味する。
【0030】
比較例1
実施例1において、吸着剤としてSAPO-CHAに代えて、FAU型の結晶構造を有するアルミノシリケートゼオライト粉末である13Xを用いたこと以外は実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0031】
本発明によれば、大気等の二酸化炭素濃度の低いガスから二酸化炭素を濃縮することができるため、温暖化ガスである二酸化炭素の低減に寄与し得る産業上価値の高い技術である。