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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145055
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】偏光板セット、液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241004BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241004BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057290
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】山口 智之
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB02
2H149AB19
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA12
2H149FA03W
2H149FA08X
2H149FA12X
2H149FA12Z
2H149FD05
2H149FD28
2H149FD35
2H149FD46
2H149FD47
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA94X
2H291FA94Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FB02
2H291FB05
2H291FC05
2H291FC08
2H291FC09
2H291LA27
2H291PA62
2H291PA65
2H291PA79
(57)【要約】
【課題】虹ムラを抑制するとともに、これを液晶セルに貼合してなる積層構造体の耐熱環境下での反りを低減することができる偏光板セットを提供する。
【解決手段】液晶セル2に配置する長方形の一対の偏光板セット3であって、視認側偏光板3A及びバックライト側偏光板3Bはいずれも、偏光子層6A,6Bと保護フィルム5A,5Bとを有し、視認側偏光板3Aが有する保護フィルム5Aの面内位相差値が6000nm以上であり、視認側偏光板3Aが有する偏光子層6Aの吸収軸が、長方形の長辺方向を向いている。視認側偏光板3Aが有する保護フィルム5Aは、長辺方向の剛性に対する短辺方向の剛性の比が2.0以上である。保護フィルム5Aの長辺方向の剛性と、保護フィルム5Bの長辺方向の剛性との差の絶対値が90mm・MPa以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶セルの視認側に配置する視認側偏光板と、前記液晶セルのバックライト側に配置するバックライト側偏光板との一対の偏光板セットであって、
前記視認側偏光板及び前記バックライト側偏光板はいずれも、長方形であり、
前記視認側偏光板及び前記バックライト側偏光板はいずれも、偏光子層と保護フィルムとを有し、
前記視認側偏光板が有する前記保護フィルムの面内位相差値が6000nm以上であり、
前記視認側偏光板が有する偏光子層の吸収軸が、前記長方形の長辺方向を向いており、
前記視認側偏光板及び前記バックライト側偏光板は、それぞれが有する偏光子層の吸収軸が互いに直交するように配置され、
前記視認側偏光板が有する前記保護フィルムは、前記長方形の長辺方向の剛性に対する前記長方形の短辺方向の剛性の比が2.0以上であり、
前記視認側偏光板が有する前記保護フィルムの前記長辺方向の剛性と、前記バックライト側偏光板が有する前記保護フィルムの前記長辺方向の剛性との差の絶対値が90mm・MPa以下である、偏光板セット。
【請求項2】
前記視認側偏光板が有する前記偏光子層の前記長辺方向の収縮力に対する、前記バックライト側偏光板が有する前記偏光子層の前記長辺方向の収縮力の比が、0.3以上である、請求項1記載の偏光板セット。
【請求項3】
前記視認側偏光板が有する前記偏光子層の厚さに対する、前記バックライト側偏光板が有する前記偏光子層の厚さの比が、0.6以上である、請求項1記載の偏光板セット。
【請求項4】
前記バックライト側偏光板が有する前記偏光子層の厚さが、0.015mm以上である、請求項1記載の偏光板セット。
【請求項5】
前記バックライト側偏光板が有する前記偏光子層の前記長辺方向の収縮力が、0.8N/2mm以上である、請求項1記載の偏光板セット。
【請求項6】
前記視認側偏光板が有する前記保護フィルムの厚さが0.06mm以上であり、
前記バックライト側偏光板が有する前記保護フィルムの厚さが0.06mm以下である、請求項1記載の偏光板セット。
【請求項7】
前記視認側偏光板及び前記バックライト側偏光板が有する偏光子層はいずれも、ポリビニルアルコールの延伸フィルムである、請求項1記載の偏光板セット。
【請求項8】
前記視認側偏光板及び前記バックライト側偏光板はいずれも、前記偏光子層の前記保護フィルム側とは反対側の面に、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを有している、請求項1記載の偏光板セット。
【請求項9】
前記視認側偏光板及び前記バックライト側偏光板はいずれも、前記保護フィルム側が前記液晶セルから遠い側となるように配置される、請求項8記載の偏光板セット。
【請求項10】
前記視認側偏光板及び前記バックライト側偏光板はいずれも、前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの前記偏光子層とは反対側の面に、粘着剤層を有している、請求項8記載の偏光板セット。
【請求項11】
液晶セルと、請求項1~10のいずれか一項記載の偏光板セットとを備える、液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板セット及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その表示原理から、液晶セルを中心としてその視認側とバックライト側とにそれぞれ偏光板が配置されている。それぞれの偏光板は、少なくとも偏光子層と、これを保護する保護フィルムとを備える積層体である(例えば、特許文献1参照)。保護フィルムとしては、機械特性(低透湿性や耐衝撃性)に優れる二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-123402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
視認側偏光板の構成要素として、二軸延伸のポリエステル系樹脂フィルムのように位相差値が低い保護フィルムを用いた場合、その低位相差により虹色の色ムラ(以下「虹ムラ」と呼ぶ。)が強く発生する。ここで、虹ムラを抑制するために位相差値が高い保護フィルム(例えば一軸延伸のポリエステル系樹脂フィルム)を用いると、虹ムラを抑制することができる。しかしながら、当該保護フィルムを有する偏光板をガラスの両面に貼合して作製した積層構造体を80℃耐熱環境に晒すと、積層構造体全体が大きく反ってしまう。
【0005】
そこで本発明は、虹ムラを抑制するとともに、これを液晶セルに貼合してなる積層構造体の耐熱環境下での反りを低減することができる偏光板セットを提供することを目的とする。また、この偏光板セットを備える液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
「視認側偏光板/液晶セル/バックライト側偏光板」という積層構成を備える積層構造体は、液晶表示装置としての原理から通常、各偏光板が備える偏光子層の吸収軸が互いに直交している。偏光子層は吸収軸を有していることから異方性があり、これに起因して、耐熱環境下に晒したときの収縮の程度にも異方性がある。したがって、上記積層構造体は、視認側偏光板が備える偏光子層とバックライト側偏光板が備える偏光子層との収縮の程度差によって、全体に反りが生じる。各偏光板が備えている保護フィルムが剛性の高いものである場合は、偏光子層の収縮を抑制して積層構造体全体の反りを幾分解消することができるが、そのバランスが難しい。本発明者らは、長方形の各偏光板が備える保護フィルムの剛性を所定の関係とすることで、耐熱環境下での積層構造体の反りを低減することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、液晶セルの視認側に配置する視認側偏光板と、液晶セルのバックライト側に配置するバックライト側偏光板との一対の偏光板セットであって、視認側偏光板及びバックライト側偏光板はいずれも、長方形であり、視認側偏光板及びバックライト側偏光板はいずれも、偏光子層と保護フィルムとを有し、視認側偏光板が有する保護フィルムの面内位相差値が6000nm以上であり、視認側偏光板が有する偏光子層の吸収軸が、長方形の長辺方向を向いており、視認側偏光板及びバックライト側偏光板は、それぞれが有する偏光子層の吸収軸が互いに直交するように配置され、視認側偏光板が有する保護フィルムは、長方形の長辺方向の剛性に対する長方形の短辺方向の剛性の比が2.0以上であり、視認側偏光板が有する保護フィルムの長辺方向の剛性と、バックライト側偏光板が有する保護フィルムの長辺方向の剛性との差の絶対値が90mm・MPa以下である、偏光板セットを提供する。
【0008】
本発明の偏光板セットは、以下に列挙する特徴の一つ又は複数を備えていてもよい。
【0009】
視認側偏光板が有する偏光子層の長辺方向の収縮力に対する、バックライト側偏光板が有する偏光子層の長辺方向の収縮力の比が、0.3以上であってもよい。
【0010】
視認側偏光板が有する偏光子層の厚さに対する、バックライト側偏光板が有する偏光子層の厚さの比が、0.6以上であってもよい。
【0011】
バックライト側偏光板が有する偏光子層の厚さが、0.015mm以上であってもよい。
【0012】
バックライト側偏光板が有する偏光子層の長辺方向の収縮力が、0.8N/2mm以上であってもよい。
【0013】
視認側偏光板が有する保護フィルムの厚さが0.06mm以上であってもよく、バックライト側偏光板が有する保護フィルムの厚さが0.06mm以下であってもよい。
【0014】
視認側偏光板及びバックライト側偏光板が有する偏光子層はいずれも、ポリビニルアルコールの延伸フィルムであってもよい。
【0015】
視認側偏光板及びバックライト側偏光板はいずれも、偏光子層の保護フィルム側とは反対側の面に、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを有していてもよい。
【0016】
視認側偏光板及びバックライト側偏光板はいずれも、保護フィルム側が液晶セルから遠い側となるように配置されていてもよい。
【0017】
視認側偏光板及びバックライト側偏光板はいずれも、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの偏光子層とは反対側の面に、粘着剤層を有していてもよい。
【0018】
また、本発明は、液晶セルと上記偏光板セットとを備える液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、虹ムラを抑制するとともに、これを液晶セルに貼合してなる積層構造体の耐熱環境下での反りを低減することができる偏光板セットを提供することができる。また、この偏光板セットを備える液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態の積層構造体を示す図である。
図2】本発明の一実施形態の要部を示す図である。
図3】反り量の測定点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、液晶表示装置の構成部材であって、液晶セルの視認側に配置する視認側偏光板と、バックライト側に配置するバックライト側偏光板との一対の偏光板セットである。また、本発明は、一対の偏光板セットを備える液晶表示装置である。以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
<積層構造体>
図1に示されているとおり、液晶表示装置1は、液晶セル2と、液晶セル2をその両面側から挟むようにして配置された一対の偏光板セット3とを備えてなっている。一対の偏光板セット3は、液晶セル2の一方の側に配置された視認側偏光板3Aと、他方の側に配置されたバックライト側偏光板3Bとからなる。ここで「視認側」及び「バックライト側」の語句は、液晶表示装置1の構成から導かれる呼び名である。なお、図1は、液晶表示装置1のうち本実施形態の偏光板セット3の説明のために光学系の部分を示したものであり、「視認側偏光板3A/液晶セル2/バックライト側偏光板3B」という積層構成を備える構造体の部分のみを示している。以下、この積層構成を備える構造体を「積層構造体」(符号10)と呼ぶ。
【0023】
視認側偏光板3Aは、液晶セル2から遠い側から順に、第一の保護フィルム5A、第一の偏光子層6A、及び第二の保護フィルム7Aが積層されている。これら各層は接着剤層8によって互いに接着されている。バックライト側偏光板3Bは、液晶セル2から遠い側から順に、第三の保護フィルム5B、第二の偏光子層6B、及び第四の保護フィルム7Bが積層されている。これら各層は接着剤層8によって互いに接着されている。
【0024】
視認側偏光板3A及びバックライト側偏光板3Bはいずれも、後述する粘着剤層9を更に有しており、これを介してそれぞれ液晶セル2に貼合されている。液晶セル2、視認側偏光板3A、及びバックライト側偏光板3Bはいずれも長方形であり、その長辺方向が互いに一致するように貼合されている。以下、本明細書ではこの長方形を基にして「長辺方向」、「短辺方向」の語句を用いる。
【0025】
視認側偏光板3A及びバックライト側偏光板3Bの長方形の縦横比に関し、長辺方向の長さは短辺方向の長さの1.2倍~3.0倍であってもよく、1.3倍~2.5倍であってもよく、1.4倍~1.9倍であってもよい。
【0026】
図2は、積層構造体10を分解して本実施形態の要部に係る部材のみを抽出して描いた図であり、図示左右方向を長辺方向として描いている。図2に示されているとおり、視認側偏光板3Aは、第一の偏光子層6Aの吸収軸P1が長辺方向を向いている。他方、バックライト側偏光板3Bは、第二の偏光子層6Bの吸収軸P2が第一の偏光子層6Aの吸収軸P1と直交する方向、すなわちバックライト側偏光板3Bの短辺方向を向いている。
【0027】
<保護フィルム>
視認側偏光板3A及びバックライト側偏光板3Bにおいて、第一の保護フィルム5A及び第三の保護フィルム5Bはそれぞれ第一の偏光子層6A及び第二の偏光子層6Bよりも液晶セル2から遠い側に位置している。他方、第二の保護フィルム7A及び第四の保護フィルム7Bはそれぞれ第一の偏光子層6A及び第二の偏光子層6Bよりも液晶セル2から近い側に位置している。これらのうち、特に第一の保護フィルム5A及び第三の保護フィルム5Bが第一の偏光子層6A及び第二の偏光子層6Bの収縮抑制に寄与している。
【0028】
(第一の保護フィルム及び第三の保護フィルム)
第一の保護フィルム5Aは、光学的に透明な熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;セルロース系樹脂(セルロースエステル系樹脂等);ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等);ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;ポリスルホン系樹脂、又はこれらの混合物、共重合物等が挙げられる。なかでも、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0029】
ポリエステル系樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートである。
【0030】
第一の保護フィルム5Aの厚さは10μm~200μmであってもよく、30μm~120μmであることが好ましく、40μm~100μmであることがより好ましく、50μm~90μmであることがさらに好ましく、60μm~85μmであることが特に好ましい。第一の保護フィルム5Aの厚さが10μm以上であると、フィルムのウェブハンドリング性が高い傾向にある。一方で、その厚さが200μm以下であると、偏光板の薄膜化の観点から好ましい。
【0031】
第一の保護フィルム5Aは、弾性率が所定の範囲内にあることが好ましい。長辺方向(第一の偏光子層6Aの吸収軸P1と平行な方向でもある。)の弾性率は、1400MPa~2300MPaであってもよく、1500MPa~2200MPaであることが好ましく、1600MPa~1900MPaであることがより好ましくい。短辺方向(第一の偏光子層6Aの吸収軸P1と直交する方向でもある。)の弾性率は、3600MPa~4600MPaであってもよく、3800MPa~4400MPaであることが好ましく、3950MPa~4200MPaであることがより好ましい。ここで弾性率とは、80℃における引張弾性率である。所定の長さの長方形に切り出した試験片を引張試験機で長辺方向に引っ張り、得られる応力-ひずみ曲線における初期の直線の傾きから引張弾性率を算出することができる。
【0032】
第一の保護フィルム5Aの面内位相差値は6000nm以上である。この面内位相差値は7000nm以上であることが好ましく、8000nm以上であることがより好ましく、10000nm以上であることがさらに好ましい。このように面内位相差値が高いと、可視光波長領域における透過率スペクトルのピーク及びバレイ数が多くなることから、当該波長領域におけるほぼすべての波長の光が透過する。したがって、透過光が白色光に近くなるため虹ムラが低減される。
【0033】
第一の保護フィルム5Aの面内位相差値は、延伸倍率や延伸温度、フィルム厚さを適宜設定することで特定範囲に制御することができる。例えば、延伸倍率を高くする、延伸温度を低くする、フィルムの厚さを厚くする等により高い位相差値を得やすい。面内位相差値は、加工に必要な物性等を勘案し、上記条件から製膜条件及び厚さを選択することで、設定することができる。
【0034】
第一の保護フィルム5Aは、単層であってもよく、複数層からなっていてもよい。複数層からなるフィルムは共押出しにより製造することができる。また、第一の保護フィルム5Aは、弾性率を上記の数値範囲に高める観点から、及び、位相差を上記数値の程度に高める観点から、一軸延伸フィルムであることが好ましい。図2に示されているとおり、積層構造体10において、第一の保護フィルム5Aの延伸方向Q1は短辺方向となっていることが好ましい。
【0035】
第一の保護フィルム5Aは、第一の偏光子層6Aとは反対側の面に反射防止層を備えていてもよい。反射防止層の表面反射率は、5.7%以下であることが好ましい。反射防止層の表面反射率が5.7%以下であると、虹ムラが視認されにくい傾向にある。これは、理由は明確ではないが、反射防止層を含む第一の保護フィルム5Aと空気との界面反射率が低下するためと推定される。反射防止層の表面反射率は、5.0%以下であることがより好ましく、3.5%以下であることがさらに好ましく、2.0%以下であることが特に好ましい。反射防止層の表面反射率の下限は、特に制限されないが、例えば0.01%であればよい。反射率は、任意の方法で測定できる。例えば、第一の保護フィルム5A単体の反射防止層側とは反対面で粘着剤を介して黒アクリル板に貼合された第一の保護フィルム5Aについて、分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製、CM-2600d)を用い、波長550nmにおける光線反射率を反射防止層側の表面から測定することができる。
【0036】
反射防止層は単層であってもよく多層であってもよい。反射防止層として、表面に微細な凹凸形状を有し、外光の映り込みを防止する防眩性のハードコート層等が挙げられる。防眩性ハードコート層は、ハードコート層の内部にフィラーを分散させて表面凹凸形状を形成するもの、またハードコート層にエンボス法等で表面凹凸形状を形成するもの等がある。例えば紫外線硬化性樹脂を用いて防眩性ハードコート層を形成する場合、紫外線硬化性樹脂にフィラーを分散してなる樹脂組成物を第一の保護フィルム5Aに塗布し、紫外線を照射してもよいし、紫外線硬化性樹脂を第一の保護フィルム5Aに塗布し、その塗膜を金型の凹凸面に密着させた状態で、紫外線を照射してもよい。
【0037】
反射防止層の他の形態として、反射防止層が単層の場合、第一の保護フィルム5Aより低屈折率の材料からなる低屈折率層の厚さを光波長の1/4波長あるいはその奇数倍になるよう形成すれば、反射防止効果が得られる。また、反射防止層が多層の場合には、低屈折率層と高屈折率層を交互に2層以上にし、かつ各層の厚さを適宜制御して積層すれば、反射防止効果が得られる。また、必要に応じて反射防止層と第一の保護フィルム5Aの間にハードコート層を積層することもできる。
【0038】
反射防止層は、公知のものを使用することができる。反射防止層としては、第一の保護フィルム5A若しくは第一の保護フィルム5A上に積層するハードコート層等よりも低屈折率である有機薄膜を一層コーティングしたものであることが好ましい。
【0039】
第一の保護フィルム5Aは、長辺方向の剛性に対する短辺方向の剛性の比が2.0以上である。この比の値は、2.1以上であることが好ましく、2.2以上であることがより好ましく、2.3以上であることがさらに好ましい。この比の上限値としては、5.0、4.0、3.0が挙げられる。ここで剛性とは、弾性率とフィルムの厚さとの積である。例えば弾性率が1705MPa、厚さが0.08mm(80μm)のフィルムの剛性は、これらの積で136.4(単位は「mm・MPa」)と表される。
【0040】
第一の保護フィルム5Aは、長辺方向の剛性が60mm・MPa~200mm・MPaであってもよく、80mm・MPa~180mm・MPaであることが好ましく、100mm・MPa~160mm・MPaであることがより好ましい。短辺方向の剛性は100mm・MPa~400mm・MPaであってもよく、130mm・MPa~360mm・MPaであることが好ましく、160mm・MPa~340mm・MPaであることがより好ましい。
【0041】
第三の保護フィルム5Bは、第一の保護フィルム5Aとともに、積層構造体10の反りを低減するために重要な役割を果たす。すなわち、第一の保護フィルム5A及び第三の保護フィルム5Bは、それぞれ第一の偏光子層6A及び第二の偏光子層6Bの収縮を抑制する働きをする。液晶セル2の両面から各偏光子層の収縮を抑制する観点から、第三の保護フィルム5Bは以下の性質を有している。
【0042】
第三の保護フィルム5Bを構成する材料としては、第一の保護フィルム5Aを構成する熱可塑性樹脂と同様のものであってよい。第三の保護フィルム5Bを構成する熱可塑性樹脂は、第一の保護フィルム5Aを構成する熱可塑性樹脂と同種であってもよく、異種であってもよい。
【0043】
第三の保護フィルム5Bの厚さは、第一の保護フィルム5Aの剛性とのバランスを考慮して、10μm~100μmであってもよく、20μm~80μmであることが好ましく、25μm~70μmであることがより好ましく、30μm~65μmであることがさらに好ましく、35μm~60μmであることが特に好ましい。
【0044】
第三の保護フィルム5Bは、弾性率が所定の範囲内にあることが好ましい。長辺方向(第二の偏光子層6Bの吸収軸P2と直交する方向でもある。)の弾性率は、2000MPa~4500MPaであってもよく、2200MPa~4300MPaであることが好ましく、2400MPa~4100MPaであることがより好ましい。短辺方向(第二の偏光子層6Bの吸収軸P2と平行な方向でもある。)の弾性率は、1800MPa~3200MPaであってもよく、2000MPa~3000MPaであることが好ましく、2200MPa~2800MPaであることがより好ましい。
【0045】
第三の保護フィルム5Bの面内位相差値は、第一の保護フィルム5Aの面内位相差と同程度に高いものである必要はない。第三の保護フィルム5Bが、虹ムラが発生する性状であったとしても、第三の保護フィルム5Bに由来する虹ムラは液晶表示装置1では視認され難い。これは、第三の保護フィルム5Bにバックライトが発する無偏光の光が通過するため、本実施形態の偏光板セット3が奏するべき効果にとって特段の影響が小さいと推定される。第三の保護フィルム5Bは一軸延伸フィルムであっても二軸延伸フィルムであってもよい。
【0046】
第三の保護フィルム5Bは、長辺方向の剛性が60mm・MPa~300mm・MPaであってもよく、80mm・MPa~250mm・MPaであることが好ましく、100mm・MPa~200mm・MPaであることがより好ましく、短辺方向の剛性が60mm・MPa~200mm・MPaであってもよく、70mm・MPa~170mm・MPaであることが好ましく、80mm・MPa~135mm・MPaであることがより好ましい。
【0047】
第一の保護フィルム5Aの長辺方向の剛性と、第三の保護フィルム5Bの長辺方向の剛性との差の絶対値は、90mm・MPa以下である。この差の絶対値は、70mm・MPa以下であることが好ましく、50mm・MPa以下であることがより好ましく、30mm・MPa以下であることがさらに好ましい。
【0048】
(第二の保護フィルム及び第四の保護フィルム)
第二の保護フィルム7A及び第四の保護フィルム7Bは、その構成材料としては、第一の保護フィルム5Aを構成する熱可塑性樹脂と同様のものであってよい。なかでも、機械的性質、透明性、コスト等に優れる(メタ)アクリル系樹脂又はセルロースエステル系樹脂が好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0049】
(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル由来の構成単位を主体とする(例えばこれを50質量%以上含む)重合体であることができ、これに他の共重合成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル由来の構成単位を2種以上含んでいてもよい。具体的に、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1~8程度である。また、(メタ)アクリル酸エステルと共重合し得る重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルスチレン等のスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル等の単官能モノマー、さらには、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタリル等の不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;マレイン酸ジアリル等の二塩基酸のジアルケニルエステル;アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル等の多官能モノマーが挙げられる。また、(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を2種類以上含んでいてもよい。また、(メタ)アクリル系樹脂は、必要に応じて添加される添加剤が混合された樹脂組成物とされていてもよい。
【0050】
(メタ)アクリル系樹脂として、環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることができる。環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、また無水グルタル酸構造や、グルタルイミド構造等を有する(メタ)アクリル系樹脂等を挙げることができる。環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、高い耐熱性、高い耐湿熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械強度を有するからである。
【0051】
ラクトン環構造等の環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報に記載のものが挙げられる。
【0052】
無水グルタル酸構造や、グルタルイミド構造等を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開平6-256537号公報、特開平6-11615号公報、特開2009―203348公報記載のものが挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリル系樹脂から形成されるフィルムは、未延伸の状態では、位相差は生じ難いが、延伸すると位相差が生じるため、(メタ)アクリル系樹脂に位相差低減剤として機能するものを配合して、延伸したとしても位相差が生じないようにすることができる。位相差低減剤としてスチレン-アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。位相差値は、延伸倍率、位相差低減剤の配合量により制御することができる。
【0054】
(メタ)アクリル系樹脂は、フィルムの耐衝撃性や製膜性の観点で、アクリルゴム粒子を含有することが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂に含まれ得るアクリルゴム粒子の量は、(メタ)アクリル系樹脂とアクリルゴム粒子との合計量100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。アクリルゴム粒子の量の上限は臨界的ではないが、アクリルゴム粒子の量があまり多いと、フィルムの表面硬度が低下し、またフィルムに表面処理を施す場合、表面処理剤中の有機溶剤に対する耐溶剤性が低下する。したがって、(メタ)アクリル系樹脂に含まれ得るアクリルゴム粒子の量は、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下である。
【0055】
セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルが挙げられる。中でも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
【0056】
第二の保護フィルム7A及び第四の保護フィルム7Bを構成する熱可塑性樹脂は、第一の保護フィルム5Aを構成する熱可塑性樹脂と同種であってもよく、異種であってもよい。
【0057】
第二の保護フィルム7A及び第四の保護フィルム7Bの厚さはいずれも、1μm~150μmであってもよく、5μm~100μmであることが好ましく、10μm~60μmであることがより好ましい。当該厚さは、50μm以下であることがより好ましく、さらには30μm以下であることが特に好ましい。第二の保護フィルム7A及び第四の保護フィルム7Bの厚さを小さくすることは、視認側偏光板3A及びバックライト側偏光板3Bの薄膜化に有利となる。
【0058】
第二の保護フィルム7A及び第四の保護フィルム7Bはいずれも、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0059】
<偏光子層>
第一の偏光子層6A及び第二の偏光子層6Bは、いずれも偏光子を含んでなる。第一の偏光子層6A及び第二の偏光子層6Bは、偏光子そのものであってもよい。
【0060】
偏光子は、その吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有するフィルムである。偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたフィルムであってもよく、重合性液晶化合物に二色性色素を配向させ、重合性液晶化合物を重合させた硬化膜であってもよい。
【0061】
偏光子は、吸収型偏光子(上記のように自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を吸収する)、反射型偏光子(もう一方向の直線偏光を反射する)、散乱型偏光子(もう一方向の直線偏光を散乱する)のいずれであっても構わないが、偏光板を液晶表示装置等に適用したときの視認性に優れる点から吸収型偏光子が好ましい。中でも、偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂で構成されるポリビニルアルコール系偏光子であることがより好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性色素を吸着・配向させたポリビニルアルコール系偏光子であることがさらに好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着・配向させたポリビニルアルコール系偏光子であることが特に好ましい。
【0062】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得ることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な単量体と酢酸ビニルとの共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な単量体としては、不飽和カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。
【0063】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたフィルムである偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する染色工程、染色工程後のフィルムを、架橋剤を含む架橋浴で処理する架橋工程、及びフィルムを一軸延伸する延伸工程、を経て製造することができる。
【0064】
偏光子の製造方法には、上記以外の他の工程をさらに含むことができる。他の工程としては染色工程の前にフィルムを膨潤させる膨潤工程、架橋工程の後にフィルム表面を洗浄する水洗工程、架橋工程後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに乾燥処理を施す乾燥工程、架橋工程の後にフィルムに対して電磁波照射を行う電磁波照射工程、架橋工程の後でフィルムに色相調整を施す補色工程、及び架橋工程後のフィルムに高温高湿処理を施す高温高湿工程等が挙げられる。
【0065】
延伸工程、即ちポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、上記に示す他の何れかの工程処理と同時に行われてもよい。
【0066】
偏光子の製造方法に含まれる各種の処理工程は、偏光子製造装置のフィルム搬送経路に沿って原反フィルムであるポリビニルアルコール系樹脂フィルムを連続的に搬送させることによって連続的に実施できる。フィルム搬送経路は、上記各種の処理工程を実施するための設備(処理浴や炉等)を、それらの実施順に備えている。処理浴とは、膨潤浴、染色浴、架橋浴、洗浄浴等のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して処理を施す処理液を収容する浴をいう。
【0067】
第一の偏光子層6Aの厚さは、5μm~40μmであってもよく、10μm~35μmであることが好ましく、15μm~25μmであることがより好ましい。第二の偏光子層6Bの厚さは、5μm~50μmであってもよく、10μm~40μmであることが好ましく、15μm~30μmであることがより好ましい。第一の偏光子層6Aの厚さに対する、第二の偏光子層6Bの厚さの比(第二の偏光子層6Bの厚さ/第一の偏光子層6Aの厚さ)は、0.6以上であってもよく、0.7以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。
【0068】
第一の偏光子層6Aは、長辺方向(吸収軸P1と平行な方向でもある。)の収縮力が2.0N/2mm~6.0N/2mmであってもよく、3.0N/2mm~5.0N/2mmであることが好ましい。第二の偏光子層6Bは、長辺方向(吸収軸P2と直交する方向でもある。)の収縮力が0.8N/2mm~3.0N/2mmであってもよく、1.5N/2mm~2.5N/2mmであることが好ましい。ここで収縮力とは、所定の長さの長方形に切り出した試験片を機械に保持し、寸法が維持されるように80℃で4時間保持したときに発生する長辺方向の収縮力である。なお、第一の偏光子層6A、また第二の偏光子層6Bの収縮力は、未延伸の原反フィルムの厚さ、偏光子を製造する際の架橋浴に含まれるホウ素量、架橋液への浸漬時間、架橋浴の温度、原反フィルムを基準とする総延伸倍率等の製造条件を調整することで、所望の収縮力を得ることができる。
【0069】
第一の偏光子層6Aの長辺方向の収縮力に対する、第二の偏光子層6Bの長辺方向の収縮力の比(第二の偏光子層6Bの長辺方向の収縮力/第一の偏光子層6Aの長辺方向の収縮力)は、0.3以上であってもよく、0.4以上であることが好ましい。この比の上限値としては、1.0以下であってもよく、0.8以下であることが好ましく、0.6であることがより好ましい。
【0070】
<接着剤層>
各偏光子層と各保護フィルムとを互いに接着している接着剤層8としては、水系接着剤や、加熱又は紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性接着剤を用いることができる。
【0071】
水系接着剤の組成物としては、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を水に溶解したもの、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を水に分散させたものが挙げられる。水系接着の剤組成物は、さらに、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキサール化合物、水溶性エポキシ樹脂等の硬化性成分や架橋剤を含有していてもよい。水系接着剤の組成物としては、例えば、特開2010-191389号公報に記載の接着剤組成物、特開2011-107686号公報に記載の接着剤組成物、特開2020-172088号公報に記載の組成物、特開2005-208456号公報に記載の組成物等が挙げられる。
【0072】
硬化性接着剤の組成物としては、主成分として硬化性(重合性)化合物を含み、活性エネルギー線照射により硬化する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤組成物としては、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を含むカチオン重合型接着剤組成物、硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合型接着剤組成物、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物との両方を含むハイブリッド型接着剤組成物等が挙げられる。
【0073】
カチオン重合性化合物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりカチオン重合反応が進行して硬化する化合物又はオリゴマーであり、具体的にはエポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物(脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物);ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物(分子内に芳香族環とエポキシ基とを有する化合物);2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物(脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に少なくとも1個有する化合物)等が挙げられる。オキセタン化合物としては、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン等の分子内に1個以上のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。
【0074】
カチオン重合型接着剤組成物としては、例えば、特開2016-126345号公報、特開2021-113969号公報に記載のカチオン重合性組成物等が挙げられる。
【0075】
ラジカル重合性化合物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりラジカル重合反応が進行して硬化する化合物又はオリゴマーであり、具体的にはエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物、分子内に1個以上のビニル基を有するビニル化合物等が挙げられる。
【0076】
ラジカル重合型接着剤組成物としては、例えば、特開2016-126345号公報、特開2016-153474号公報、国際公開第2017/183335号に記載のラジカル重合性組成物等が挙げられる。
【0077】
接着剤層が水系接着剤組成物から形成される場合、その厚さは、例えば5μm以下であってよく、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上であってよく、0.05μm以上であることが好ましい。接着剤層が硬化性接着剤組成物(好ましくは活性エネルギー線硬化型接着剤組成物)から形成される場合、その厚さは、例えば、15μm以下であってよく、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上であってもよく、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。
【0078】
<粘着剤層>
視認側偏光板3A及びバックライト側偏光板3Bは、いずれも粘着剤層9によって液晶セル2に貼合されている。粘着剤層9は、例えば、粘着成分を溶剤に溶解又は分散して粘着剤組成物とし、これを離型フィルム上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。これを視認側偏光板3Aの第二の保護フィルム7A側、及び、バックライト側偏光板3Bの第四の保護フィルム7B側にそれぞれ貼合し、離型フィルムを剥がして液晶セル2に貼合する。
【0079】
粘着剤層9を構成する粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂等をベースポリマーとして含む粘着剤組成物等が挙げられる。なかでも、透明性、粘着力、信頼性、耐熱性、リワーク性等の観点から、(メタ)アクリル系樹脂を含む(メタ)アクリル系粘着剤組成物が好ましい。
【0080】
粘着剤層9の厚さは、接着力等に応じて決定されるが、例えば1μm以上50μm以下であり、2μm以上40μm以下であることが好ましく、3μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0081】
<液晶セル>
液晶セル2としては従来公知のものを用いることができる。液晶セル2の厚さは、0.2mm~20mmであってもよく、0.4mm~10mmであることが好ましく、0.6~5mmであることがより好ましいく、0.8~3mmであることがさらに好ましい。
【0082】
<効果>
一般に、液晶表示装置の一部として構成された「視認側偏光板/液晶セル/バックライト側偏光板」の積層構造体は通常、長方形であり、視認側偏光板及びバックライト側偏光板も長方形である。そして、視認側偏光板が備える偏光子層の吸収軸が長辺方向を向くようにして積層構造体全体が設計されることが多い。この場合、積層構造体は視認側偏光板側が凹面となるようにして反りが発生する。ここで「反り」とは、積層構造体の製造後の経時変化として、又は、積層構造体の試験としての耐熱環境下で発生する反りをいう。
【0083】
反りの発生原因は、視認側偏光板が備える偏光子層とバックライト側偏光板が備える偏光子層の収縮の程度差によるものと考えられる。偏光子は一般に、分子構造中に架橋構造が形成されている場合は、製造後の経時変化として更なる架橋が進む。また、偏光子が延伸されてなる場合は、延伸前の状態に戻ろうとする力が働く。これらによって両偏光子層が収縮し、その収縮の程度差が積層構造体全体としての反りに繋がる。
【0084】
本実施形態では、第一の保護フィルム5A及び第三の保護フィルム5Bが剛性に関して上述した関係性を有しているので、第一の偏光子層6Aと第二の偏光子層6Bの収縮の程度をうまくバランスされ、収縮差が小さくなっている。このため、積層構造体10全体の反りを低減することができる。また、第一の保護フィルム5Aの面内位相差値が6000nm以上であることから、虹ムラが抑制されている。
【0085】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、視認側偏光板3A及びバックライト側偏光板3Bのいずれも、偏光子層とその両面に接着剤で貼合された保護フィルムを備える態様を示したが、視認側偏光板3A及びバックライト側偏光板3Bが液晶セル2に近い側に位相差層等の他の機能層を更に備えていてもよい。あるいは、第二の保護フィルム7A及び第四の保護フィルム7Bが位相差層を兼ねる態様であってもよい。
【実施例0086】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、記載中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0087】
<各部材の製造、及び、物性測定>
(製造例1:偏光子1の製造)
長尺のポリビニルアルコールフィルム(平均重合度:約2400、ケン化度:99.9モル%以上、厚さ:60μm)を連続的に搬送し、20℃の純水からなる膨潤浴に滞留時間31秒で浸漬させた(膨潤工程)。その後、膨潤浴から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/水が2/100(質量比)であるヨウ素を含む30℃の染色浴に滞留時間122秒で浸漬させた(染色工程)。次いで、染色浴から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が12/4.1/100(質量比)である56℃の架橋浴に滞留時間70秒で浸漬させ、続いて、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が9/2.9/100(質量比)である40℃の架橋浴に滞留時間13秒で浸漬させた(架橋工程)。染色工程及び架橋工程において、浴中でのロール間延伸により縦一軸延伸を行った。原反フィルムを基準とする総延伸倍率は5.5倍とした。次に、架橋浴から引き出したフィルムを5℃の純水からなる洗浄浴に滞留時間3秒で浸漬させた後(洗浄工程)、80℃の乾燥炉に滞留時間190秒で導入し乾燥を行うことにより(乾燥工程)、偏光子を得た。以上により得られた偏光子(以下「偏光子1」と呼ぶ。)の厚さは24μmであった。
【0088】
(製造例2:偏光子2の製造)
長尺のポリビニルアルコールフィルムの厚さを45μmとしたこと以外は製造例1と同様にして、偏光子を製造した。得られた偏光子(以下「偏光子2」と呼ぶ。)の厚さは18μmであった。
【0089】
(製造例3:偏光子3の製造)
長尺のポリビニルアルコールフィルムの厚さを30μmとしたこと以外は製造例1と同様にして、偏光子を製造した。得られた偏光子(以下「偏光子3」と呼ぶ。)の厚さは12μmであった。
【0090】
(製造例4:ポリエチレンテレフタレート樹脂(1)の製造)
エステル化反応缶を200℃まで昇温させながら、テレフタル酸を86.4部及びエチレングリコール64.6部をエステル化反応缶に仕込み、混合物を得た。得られた混合物を撹拌しながら、得られた混合物に、触媒として三酸化アンチモンを0.017部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064部、トリエチルアミン0.16部を加えた。エステル化反応缶内のゲージ圧を0.34MPaとし、さらに240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014部を添加した。その後、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012部を添加し、混合物を得た。得られた混合物を15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、さらに15分後に、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で重縮合反応を行った。
【0091】
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットし、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下「PET(1)」と呼ぶ。)を得た。
【0092】
(製造例5:ポリエチレンテレフタレート樹脂(2)の製造)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2´-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジン-4-オン)10部と、製造例4で得られたPET(1)90部とを混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(2)(以下「PET(2)」と呼ぶ。)を得た。
【0093】
(製造例6:易接着層形成用塗布液の調整)
テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%、及び、5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%からなるジカルボン酸成分と、エチレングリコール50モル%、及び、ネオペンチルグリコール50モル%からなるグリコール成分とを常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。
【0094】
次いで、水51.4部、イソプロピルアルコール38部、n-ブチルセルソルブ5部、及び、ノニオン系界面活性剤0.06部を混合し、混合物を得た。得られた混合物を77℃まで加熱撹拌しながら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5部を加え、樹脂の固まりがなくなるまで撹拌し続け、樹脂水分散液を得た。得られた樹脂水分散液を25℃まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。
【0095】
凝集体シリカ粒子3部を水50部に分散させ、凝集体シリカ粒子の水分散液を得た。上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46部に凝集体シリカ粒子の水分散液0.54部を加えて、撹拌しながら、さらに水20部を加えて、易接着層形成用塗布液を得た。
【0096】
(製造例7:保護フィルム1の製造)
二つの押出機を用いてA層、B層、C層の三層からなるフィルムを作製すべく、PET(1)を乾燥して押出機1(外層A層および外層C層用)にそれぞれ供給した。また、製造例4で製造したPET(1)90部と製造例5で製造したPET(2)10部とを混合したPET(3)を135℃で6時間減圧乾燥した後、押出機2(中間層B層用)に供給した。押出機1に供給したPET(1)と押出機2に供給したPET(3)とをそれぞれ285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm、粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸PETフィルムを作った。この時、A層、B層、C層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0097】
次いで、得られた未延伸PETフィルムの両面に、リバースロール法にて乾燥後の塗布量が0.08g/mになるように、上記易接着層形成用塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。この塗布層を形成した未延伸PETフィルムを、テンター延伸機にて、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンで、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、10秒間で処理し、さらに幅方向に3.0%の緩和処理を行い、フィルム厚さ約80μmの易接着層が形成された一軸延伸PETフィルム(以下「保護フィルム1」と呼ぶ。)を得た。
【0098】
(製造例8:保護フィルム2の製造)
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂90部とアクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂10部の混合物(ラクトン環含有率:28.5%)を押出成形し、縦2.0倍、横2.4倍に延伸した厚さ40μmのアクリル系樹脂フィルム(以下「保護フィルム2」と呼ぶ。)を得た。
【0099】
(製造例9:粘着剤層付き偏光板1の製造)
製造例7で得られた保護フィルム1及び製造例8で得られた保護フィルム2の片面にそれぞれコロナ処理を施し、当該コロナ処理面に、エポキシ系紫外線硬化性接着剤を、接着剤塗工装置を用いることにより塗工した。次いで塗工層面に上記製造例1で得た厚さ24μmの偏光子1を重ね、続いて貼合ロールを用いて押圧及び貼合することにより偏光板前駆体を得た。この偏光板前駆体に対し、保護フィルム2側からベルトコンベア付の紫外線照射装置(ランプは、アイグラフィックス社製のメタルハライドランプ)を用いて積算光量が200mJ/cm(UVB)となるように紫外線を照射し、上記接着剤を硬化させて偏光板を得た。以上から、保護フィルム1(ポリエステル系樹脂フィルム)/接着剤層/偏光子1/接着剤層/保護フィルム2((メタ)アクリル系樹脂フィルム)を有する偏光板1を得た。偏光板1は、保護フィルム1の一軸延伸方向と偏光子の吸収軸方向(偏光子の延伸方向)が直交する形態である。
【0100】
次に、(メタ)アクリル系粘着剤層(厚さ20μm)を離型フィルムの離型処理面に有する離型フィルム付粘着剤層を準備した。当該離型フィルム付粘着剤層を、上記偏光板の(メタ)アクリル系樹脂フィルム側に、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの表面をコロナ処理した上で積層することにより粘着剤層付き偏光板1を得た。当該粘着剤層付き偏光板は、保護フィルム1(ポリエステル系樹脂フィルム)/接着剤層/偏光子1/接着剤層/保護フィルム2((メタ)アクリル系樹脂フィルム)/粘着剤層/離型フィルムの構造を有する。
【0101】
(製造例10:粘着剤層付き偏光板2の製造)
製造例7で得られた保護フィルム1に代えて、厚さ38μmのポリエステル系樹脂からなる2軸延伸のポリエチレンテレフタレート(PET)の保護フィルム(三菱化学社製)を用いたこと以外は同様にして、製造例9と同様に偏光板を得た。以上から、保護フィルム(厚さ38μmの2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、三菱化学社製)/接着剤層/偏光子1/接着剤層/保護フィルム2((メタ)アクリル系樹脂フィルム)を有する偏光板2を得た。
【0102】
そして、製造例9と同様にして粘着剤層及び離型フィルムを積層することにより、粘着剤層付き偏光板2を得た。当該粘着剤層付き偏光板は、保護フィルム(厚さ38μmの2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、三菱化学社製)/接着剤層/偏光子/接着剤層/保護フィルム2((メタ)アクリル系樹脂フィルム)/粘着剤層/離型フィルムの構造を有する。
【0103】
(製造例11:粘着剤層付き偏光板3の製造)
粘着剤層付き偏光板2について、厚さ38μmのポリエステル系樹脂からなる2軸延伸のポリエチレンテレフタレート(PET)の保護フィルム(三菱化学社製)に代えて、厚さ38μmのポリエステル系樹脂からなる2軸延伸のポリエチレンテレフタレート(PET)の保護フィルム(東レ社製、製品名:ルミラー T60)を用いたこと以外は製造例10と同様にして、粘着剤層付き偏光板3を得た。当該粘着剤層付き偏光板は、保護フィルム(厚さ38μmの2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、東レ社製、製品名:ルミラー T60)/接着剤層/偏光子1/接着剤層/保護フィルム2((メタ)アクリル系樹脂フィルム)/粘着剤層/離型フィルムの構造を有する。
【0104】
(製造例12:粘着剤層付き偏光板4の製造)
粘着剤層付き偏光板2について、製造例1で作製した24μmの偏光子1に代えて、製造例2で作製した18μmの偏光子2を用いたこと以外は製造例10と同様にして、粘着剤層付き偏光板4を得た。当該粘着剤層付き偏光板は、保護フィルム(厚さ38μmの2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、三菱化学社製)/接着剤層/偏光子2/接着剤層/保護フィルム2((メタ)アクリル系樹脂フィルム)/粘着剤層/離型フィルムの構造を有する。
【0105】
(製造例13:粘着剤層付き偏光板5の製造)
粘着剤層付き偏光板2について、厚さ38μmのポリエステル系樹脂からなる2軸延伸のポリエチレンテレフタレート(PET)の保護フィルム(三菱化学社製)に代えて、厚さ50μmのポリエステル系樹脂からなる2軸延伸のポリエチレンテレフタレート(PET)の保護フィルム(東レ社製、製品名:ルミラー T60)を用いたこと以外は製造例10と同様にして、粘着剤層付き偏光板5を得た。当該粘着剤層付き偏光板は、保護フィルム(厚さ50μmの2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、東レ社製、製品名:ルミラー T60)/接着剤層/偏光子1/接着剤層/保護フィルム2((メタ)アクリル系樹脂フィルム)/粘着剤層/離型フィルムの構造を有する。
【0106】
(製造例14:粘着剤層付き偏光板6の製造)
粘着剤層付き偏光板2について、製造例1で作製した24μmの偏光子1に代えて、製造例3で作製した12μmの偏光子3を用いたこと以外は製造例10と同様にして、粘着剤層付き偏光板6を得た。当該粘着剤層付き偏光板は、保護フィルム(厚さ38μmの2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、三菱化学社製)/接着剤層/偏光子3/接着剤層/保護フィルム2((メタ)アクリル系樹脂フィルム)/粘着剤層/離型フィルムの構造を有する。
【0107】
(ポリエステル系樹脂フィルムの面内位相差値の測定)
製造例7で得られた保護フィルム1及び厚さ38μmの2軸延伸のポリエチレンテレフタレート(PET)の保護フィルム(三菱化学社製)の面内位相差値を、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-HB-RESPC)を用いて波長587nmで測定した。
【0108】
(保護フィルムの80℃における弾性率測定)
上記で得られた保護フィルムを長さ100mm×幅10mmの長方形に切り出した。次いで、引張試験機(オートグラフ AG-1S試験機、株式会社島津製作所製)の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が50mmとなるように上記試験片の長辺方向の両端部を挟み、80℃の環境下、引張速度50mm/分で試験片を長辺方向に引っ張り、得られる応力-ひずみ曲線における初期の直線の傾きから、80℃での樹脂フィルムの引張弾性率(MPa)を算出した。
【0109】
該試験片は、保護フィルムを偏光子に貼合した際に偏光子の吸収軸(偏光子の延伸方向、MD方向)と平行な方向が長辺方向であり、偏光子の吸収軸と直行する方向(TD方向)が幅方向であるもの(試験片1とする)と、保護フィルムを偏光子に貼合した際に偏光子の吸収軸と直行する方向(TD方向)が長辺方向であり、偏光子の吸収軸(偏光子の延伸方向、MD方向)と平行な方向が幅方向であるもの(試験片2とする)を準備した。
試験片1からは、保護フィルムを偏光子に貼合した際に偏光子の吸収軸(偏光子の延伸方向、MD方向)と平行な方向の引張弾性率が得られ、試験片2からは保護フィルムを偏光子に貼合した際に偏光子の吸収軸と直行する方向(TD方向)の引張弾性率が得られる。
【0110】
(偏光子の収縮力)
製造例1で得られた偏光子1から延伸方向(MD、吸収軸方向)を長辺とする幅2mm、長さ10mmの長方形の試験片を切り出した(試験片3とする)。製造例1から製造例3で得られた偏光子から延伸方向と直行する方向(TD、透過軸方向)を長辺とする幅2mm、長さ10mmの長方形の試験片を切り出した(試験片4とする)。この試料をエスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の熱機械分析装置(TMA)「EXSTAR-6000」にセットし、寸法を一定に保持したまま、80℃で4時間保持したときに発生する長辺方向の収縮力を測定した。試験片3からは、偏光子の吸収軸方向の収縮力が得られ、試験片4からは偏光子の吸収軸方向と直交する方向の収縮量が得られる。
【0111】
<実施例1>
視認側偏光板として粘着剤層付き偏光板1を、バックライト側偏光板として粘着剤層付き偏光板2を準備した。視認側偏光板である粘着剤層付き偏光板1は、長辺方向が偏光板の吸収軸と平行な方向になるようにカットした。また、バックライト側偏光板である粘着剤層付き偏光板2は、長辺方向が偏光板の吸収軸と直交する方向になるようにカットした。カットした偏光板のサイズは、150mm×90mmであった。粘着剤層付き偏光板1から離型フィルムを剥離後、粘着剤層を無アルカリガラス基板(厚さ0.2mm、コーニング社製「Eagle XG」、160mm×102mm)の片面に貼合した。さらに前記ガラス基板の偏光板貼合面とは異なる面に、実際の液晶表示装置の積層状態を再現するため、粘着剤層付き偏光板2を、ガラス基板20(図3)を挟んで2つの偏光板の吸収軸が直交するよう貼合してガラス貼合光学積層体を得た。
【0112】
(反り評価)
上記の方法で得られたガラス貼合光学積層体を、温度80℃環境下で48時間静置し、温度23℃相対湿度55%の環境に取り出してから2時間後の反り状態を評価した。粘着剤層付き偏光板1(視認側偏光板)が上側となるよう、二次元測定器(株式会社ニコン製、NEXIV(商品名) MR-12072)の測定台上に置いた。次いで、測定台の表面に焦点を合わせ、そこを基準とし、サンプル面上の25点にそれぞれ焦点を合わせ、基準とした焦点からの高さを測定した。25点の測定点における高さの最大値と最小値との差を反り量とした。具体的には、図3に示す点(符号30)を測定点とした。図3で示される25個の点は、偏光板の端部から5mm内側の領域における点であり、短辺方向は約20mm間隔で、長辺方向は約35mm間隔で設けられた。反り評価の判断基準は以下のとおりである。
◎:非常に小さい(0.4mm以下のもの)
○:小さい(0.4mmを超えて0.7mm以下のもの)
△:大きい(0.7mmを超えて1.0mm以下のもの)
×:非常に大きい(1.0mmを超えるもの)
【0113】
(虹ムラ評価)
視認側偏光板である粘着剤層付き偏光板1、及びバックライト側偏光板である粘着剤層付き偏光板2を長辺方向が偏光板の吸収軸と平行な方向になるようにカットした。カットした偏光板のサイズは、150mm×90mmであった。粘着剤層付き偏光板1から離型フィルムを剥離後、粘着剤層を無アルカリガラス基板(厚さ0.2mm、コーニング社製「Eagle XG」、160mm×102mm)の片面に貼合した。さらに前記ガラス基板の偏光板貼合面とは異なる面に、実際の液晶表示装置の表示状態を再現するため、粘着剤層付き偏光板2を、ガラス基板20(図3)を挟んで2つの偏光板の吸収軸が平行(透過軸が平行)となるよう貼合してガラス貼合光学積層体を得た。
【0114】
バックライト光源の上に、前記のガラス貼合光学積層体を、粘着剤層付き偏光板2が光源側になるよう配置し、粘着剤層付き偏光板1のポリエステル系樹脂フィルム側から斜め方向に偏光板の目視観察を行い、虹ムラの視認性を確認し、ムラの色付きの程度等から、以下の基準により評価を行った。
〇:虹ムラが弱い
×:虹ムラが強い
【0115】
<実施例2~5、比較例1~2>
無アルカリガラス基板の両面に貼合する粘着剤層付き偏光板を、表1に示したとおりの組み合わせで選択し、実施例1と同様の手順にて実施例2~5及び比較例1~2のガラス貼合光学積層体を得た。各ガラス貼合光学積層体について、反り評価及び虹ムラ評価を行った。
【0116】
<結果>
実施例1~5の偏光板セットは、[1]視認側偏光板が備える外側保護フィルム(第一の保護フィルム)の長辺方向の剛性に対する短辺方向の剛性の比(b/a)が2.0以上であること、及び、[2]視認側偏光板が備える外側保護フィルム(第一の保護フィルム)の長辺方向の剛性とバックライト側偏光板が備える外側保護フィルム(第三の保護フィルム)の長辺方向の剛性との差の絶対値が90mm・MPa以下であること、の両方を満たすものである。この場合、反り評価も虹ムラ評価も良好である。これに対し、上記[1]又は[2]のいずれかを満たしていない比較例1及び2の偏光板セットは、反り評価又は虹ムラ評価が不良である。
【0117】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、液晶表示装置の構成部材として利用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1…液晶表示装置、2…液晶セル、3…偏光板セット、3A…視認側偏光板、3B…バックライト側偏光板、5A…第一の保護フィルム、5B…第三の保護フィルム、6A…第一の偏光子層、6B…第二の偏光子層、7A…第二の保護フィルム、7B…第四の保護フィルム、8…接着剤層、9…粘着剤層、10…積層構造体、20…ガラス基板、30…測定点、P1…第一の偏光子層の吸収軸、P2…第二の偏光子層の吸収軸、Q1…第一の保護フィルムの延伸方向、Q2…第三の保護フィルムの延伸方向。

図1
図2
図3