(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145145
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】放射線分析装置、放射線分析方法及び放射線分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/223 20060101AFI20241004BHJP
G01B 15/02 20060101ALI20241004BHJP
G01T 1/36 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N23/223
G01B15/02 D
G01T1/36 A
G01T1/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057394
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】青山 朋樹
【テーマコード(参考)】
2F067
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067BB16
2F067BB17
2F067EE03
2F067EE04
2F067HH04
2F067JJ03
2F067KK01
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001JA04
2G001JA06
2G001JA09
2G001KA01
2G001KA11
2G001MA05
2G001PA11
2G188BB03
2G188CC28
2G188DD19
2G188EE01
(57)【要約】
【課題】二次放射線を発生させる複数の層を有するワークを分析する放射線分析装置において、分析対象ではない層から発生する二次放射線の影響を低減する。
【解決手段】一次放射線が照射されて二次放射線を発生する互いに離間した複数の層を備えるワークを分析する放射線分析装置であって、前記複数の層に対して交差する方向から前記ワークの表面に向けて、所定の放射角度で拡がる一次放射線を照射する放射線源と、前記ワークの表面を向き、前記ワークから発生する二次放射線を検出する放射線検出器とを備え、前記放射線源及び前記放射線検出器から視て、前記複数の層のうち所定の分析対象層で発生した二次放射線が前記放射線検出器に入射し、かつ前記分析対象層よりも奥側に位置する少なくとも1つの非分析対象層で発生した二次放射線が前記放射線検出器に入射しないように、前記放射線源と前記放射線検出器とが配置されている放射線分析装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次放射線が照射されて二次放射線を発生する互いに離間した複数の層を備えるワークを分析する放射線分析装置であって、
前記複数の層に対して交差する方向から前記ワークの表面に向けて、所定の放射角度で拡がる一次放射線を照射する放射線源と、
前記ワークの表面を向き、前記ワークから発生する二次放射線を検出する放射線検出器とを備え、
前記放射線源及び前記放射線検出器から視て、前記複数の層のうち所定の分析対象層で発生した二次放射線が前記放射線検出器に入射し、かつ前記分析対象層よりも奥側に位置する少なくとも1つの非分析対象層で発生した二次放射線が前記放射線検出器に入射しないように、前記放射線源と前記放射線検出器とが配置されている放射線分析装置。
【請求項2】
前記分析対象層において、前記放射線源による一次放射線の照射領域と、前記放射線検出器による二次放射線の検出可能な検出領域とが重複し、
前記非分析対象層において、前記照射領域と前記検出領域とが重複しない請求項1に記載の放射線分析装置。
【請求項3】
前記放射線検出器が、前記二次放射線を検出する検出素子と、当該検出素子の前方に配置され、当該検出素子により前記二次放射線を検出可能な視野角を制限する視野角制限素子と、を備えるものである請求項1又は2に記載の放射線分析装置。
【請求項4】
前記放射線源が、前記一次放射線の放射角を制限する放射角制限素子を備えるものである請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線分析装置。
【請求項5】
前記ワークが、所定の搬送方向に沿って搬送されるものである請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線分析装置。
【請求項6】
前記ワークが、間隙をおいて向かい合うシート状をなす複数のシート部を有するものであり、
前記分析対象層が、前記放射線源及び前記放射線検出器から視て、当該複数のシート部のうち最も手前に位置する手前側シート部の表面に形成されており、
前記非分析対象層が、前記複数のシート部のうち前記手前側シート部よりも奥側に位置する奥側シート部の表面に形成されている請求項1~5のいずれか一項に記載の放射線分析装置。
【請求項7】
前記放射線源が前記一次放射線としてX線を放射するものであり、
前記放射線検出器が、前記二次放射線として蛍光X線を検出するものであり、
前記分析対象層から発生する蛍光X線を検出して、当該分析対象層に含まれる元素の定量分析を行う請求項1~6のいずれか一項に記載の放射線分析装置。
【請求項8】
前記ワークを分析して前記分析対象層の膜厚又は堆積量を測定する請求項1~7のいずれか一項に記載の放射線分析装置。
【請求項9】
一次放射線が照射されて二次放射線を発生する互いに離間した複数の層を備えるワークを分析する放射線分析方法であって、
前記複数の層に対して交差する方向から前記ワークの表面に向けて、所定の放射角度で拡がる一次放射線を放射線源から照射し、
前記ワークから発生する二次放射線を、前記ワークの表面を向く放射線検出器により検出し、
前記放射線源及び前記放射線検出器から視て、前記複数の層のうち所定の分析対象層で発生した二次放射線を前記放射線検出器に入射させ、かつ前記分析対象層よりも奥側に位置する少なくとも1つの非分析対象層で発生した二次放射線を前記放射線検出器に入射させないように、前記放射線源と前記放射線検出器を配置する放射線分析方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の放射線分析装置と、
前記ワークを所定の搬送方向に沿って搬送する搬送装置とを備える放射線分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線分析装置、放射線分析方法及び放射線分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばワークの表面に形成された被覆層の膜厚等を測定するのに、蛍光X線分析装置が利用されている(例えば特許文献1)。この蛍光X線分析装置を用いて、被膜層に一次X線を照射するとともに、被覆層から発生した蛍光X線(二次X線)を検出器にて検出し、検出した蛍光X線のスペクトル分布に基づいて、被覆層の定量分析、定性分析又は膜厚の測定等することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一次放射線が照射されて二次放射線を発生させる被覆層をワークが複数備え、またワークの基材が放射線を透過させる材質からなる場合には、上述した蛍光X線分析装置等の放射線分析装置を用いて目的とする被覆層の膜厚を測定しようとすると、複数の被覆層から発生した二次放射線が検出器にて検出されてしまい対象とする被覆層の膜厚を正確に測定できない、という問題が生じ得る。
【0005】
本発明は上述した問題を一挙に解決すべくなされたものであり、二次放射線を発生させる複数の層を有するワークを分析する放射線分析装置において、分析対象ではない層から発生する二次放射線の影響を低減することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る放射線分析装置は、一次放射線が照射されて二次放射線を発生する互いに離間した複数の層を備えるワークを分析するものであって、前記複数の層に対して交差する方向から前記ワークの表面に向けて、所定の放射角度で拡がる一次放射線を照射する放射線源と、前記ワークの表面を向き、前記ワークから発生する二次放射線を検出する放射線検出器とを備え、前記放射線源及び前記放射線検出器から視て、前記複数の層のうち所定の分析対象層で発生した二次放射線が前記放射線検出器に入射し、かつ前記分析対象層よりも奥側に位置する少なくとも1つの非分析対象層で発生した二次放射線が前記放射線検出器に入射しないように、前記放射線源と前記放射線検出器とが配置されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成であれば、互いに離間した複数の層のうち所定の分析対象層(例えば最も手前に位置する層等)で発生する二次放射線を放射線検出器に入射させ、かつ分析対象層よりも奥側に位置する少なくとも1つの非分析対象層で発生した二次放射線を放射線検出器に入射させないようにできるので、分析対象ではない層から発生する二次放射線が検出されるのを防ぎ、その悪影響を低減することができる。なお本明細書でいう「複数の層が互いに離間している」とは、複数の層がその厚み方向において互いに距離を置いている状態を意味している。
【0008】
複数の層のうち特定の分析対象層の分析のみを行う手段としては、放射線源と放射線検出器の両方にポリキャピラリーX線レンズ等を取付けて、その焦点を分析対象層上で一致させるいわゆる共焦点型蛍光X線分析法が考えられる。しかしながら、この共焦点型蛍光X線分析法では、例えばワークが搬送される等して、分析対象層と、放射線源及び放射線検出器との位置関係が僅かにでもずれると、放射線源と放射線検出器の焦点が分析対象層から外れてしまい、当該分析対象層の分析を行うことが出来なくなる。これに対して本願発明によれば、所定の放射角度で拡がる一次放射線を分析対象層に広範囲で照射するとともに、放射線源と放射線検出器の配置により特定の分析対象層で発生した二次放射線だけが放射線検出器に入射するようにしているので、例えばワークが搬送される等して、分析対象層と、放射線源及び放射線検出器との位置関係が僅かにずれたとしても、放射線検出器において分析対象層からの二次放射線を検出することができ、その分析を行うことが可能である。
【0009】
また前記放射線分析装置は、前記分析対象層において、前記放射線源による一次放射線の照射領域と、前記放射線検出器による二次放射線の検出可能な検出領域とが重複し、前記非分析対象層において、前記照射領域と前記検出領域とが重複しないのが好ましい。
このようにすれば、非分析対象層において、放射線検出器の検出領域からは二次放射線が発生しないので、非分析対象層から生じる二次放射線が放射線検出器に入射するのをより確実に防止できる。
【0010】
また前記放射線分析装置は、前記放射線検出器が、前記二次放射線を検出する検出素子と、当該検出素子の前方に配置され、当該検出素子により前記二次放射線を検出可能な視野角を制限する視野角制限素子と、を備えるのが好ましい。
このようにすれば、放射線検出器において検出可能な視野角を制限することで、非分析対象層において照射領域と検出領域とがより重複しにくくなり、放射線源と放射線検出器の配置の自由度をより高めることができる。
【0011】
また放射線分析装置は、前記放射線源が、前記一次放射線の放射角を制限する放射角制限素子を備えるのが好ましい。
このようにすれば、一次放射線の方射角を制限することで、非分析対象層において照射領域と検出領域とがより一層重複しにくくなり、放射線源と放射線検出器の配置の自由度をより一層高めることができる。
【0012】
前記放射線分析装置の具体的態様としては、前記ワークが、所定の搬送方向に沿って搬送されるものが挙げられる。
【0013】
また本発明の効果がより顕著になる前記放射線分析装置の具体的態様としては、前記ワークが、間隙をおいて向かい合うシート状をなす複数のシート部を有するものであり、前記分析対象層が、前記放射線源及び前記放射線検出器から視て、当該複数のシート部のうち最も手前に位置する手前側シート部の表面に形成されており、前記非分析対象層が、前記複数のシート部のうち前記手前側シート部よりも奥側に位置する奥側シート部の表面に形成されているものが挙げられる。
【0014】
前記放射線分析装置の具体的態様としては、前記放射線源が前記一次放射線としてX線を放射するものであり、前記放射線検出器が、前記二次放射線として蛍光X線を検出するものであり、前記分析対象層から発生する蛍光X線を検出して、当該分析対象層に含まれる元素の定量分析を行うものが挙げられる。
【0015】
また前記放射線分析装置の具体的態様として、前記ワークを分析して前記分析対象層の膜厚又は堆積量を測定するものが挙げられる。
【0016】
また本発明の放射線分析方法は、一次放射線が照射されて二次放射線を発生する互いに離間した複数の層を備えるワークを分析する方法であって、前記複数の層に対して交差する方向から前記ワークの表面に向けて、所定の放射角度で拡がる一次放射線を放射線源から照射し、前記ワークから発生する二次放射線を、前記ワークの表面を向く放射線検出器により検出し、前記放射線源及び前記放射線検出器から視て、前記複数の層のうち所定の分析対象層で発生した二次放射線を前記放射線検出器に入射させ、かつ前記分析対象層よりも奥側に位置する少なくとも1つの非分析対象層で発生した二次放射線を前記放射線検出器に入射させないように、前記放射線源と前記放射線検出器を配置することを特徴とする。
このような放射線分析方法であれば、上記した本発明の放射線分析装置と同様の効果を奏し得る。
【0017】
また本発明の放射線分析システムは、前記した放射線分析装置と、前記ワークを所定の搬送方向に沿って搬送する搬送装置とを備えることを特徴とする。
このような放射線分析システムであれば、上記した本発明の放射線分析システムと同様の効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0018】
以上に述べた本発明によれば、二次放射線を発生させる複数の層を有するワークを分析する放射線分析装置において、分析対象ではない層から発生する二次放射線の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る放射線分析システムの全体構成を示す図。
【
図2】他の実施形態の放射線分析システムの全体構成を示す図。
【
図3】他の実施形態の放射線分析システムの全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る放射線分析装置100を備える放射線分析システム300について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態の放射線分析システム300は、
図1に示すように、所定の搬送方向に沿ってワークWを搬送する搬送装置200と、搬送されるワークWに向けて放射線(一次放射線ともいう)を照射し、当該ワークWから発生する放射線(二次放射線ともいう)を検出することでワークWを分析する放射線分析装置100と、を備えるものである。
【0022】
本実施形態のワークWはシート状をなすものであり、一次放射線を生じさせにくい材料(例えば樹脂等)からなるシート状の基材aと、基材aの一方の表面に形成された、一次放射線を照射されることで二次放射線を発生させる材料(例えば金属等)からなる被覆層bとを備えている。
【0023】
搬送装置200は、例えば複数のドラムロール210を用いてワークWを搬送するロール・トゥ・ロール式のものであるがこれに限らない。本実施形態では、ワークWがドラムロール210で折り返されるようにして搬送されることで、間隙をおいて向かい合う第1シート部w1と第2シート部w2が互いに逆方向に移動される。そしてこの搬送されている状態において、第1シート部w1と第2シート部w2のそれぞれの表面に形成された計2つの被覆層b1,b2が、互いに平行に、かつ厚み方向に離間して形成されている。
【0024】
本実施形態の放射線分析装置100は、一次放射線としてX線をワークWに照射し、二次放射線としてワークWから発生する蛍光X線を検出することで、当該ワークWに含まれる元素の定性分析及び定量分析を行う蛍光X線分析装置100である。具体的にこの放射線分析装置100は、
図1に示すように、ワークWに一次放射線を照射する放射線源1(具体的にはX線管)と、ワークWから発生する二次放射線を検出する放射線検出器2(具体的にはX線検出器)と、放射線検出器2からの出力に基づいてワークWを分析する分析部3と備えている。本実施形態の放射線分析装置100では、放射線源1及び放射線検出器2は、いずれもワークWの第1シート部w1の表面を向くように配置されている。
【0025】
放射線源1は、複数の被覆層b1,b2に対して交差する方向から、第1シート部w1の表面に向けて、放射状の一次放射線を照射する。この放射線源1は、出射される一次放射線の放射角θ1を制限する放射角制限素子11を備えており、この放射角制限素子11により、出射された一次放射線は所定の放射角θ1で拡がるようにされている。本実施形態の放射線源1は、放射する一次放射線の中心軸1aと、第1シート部w1の表面とのなす角度φ1が90°未満となるように(すなわち第1シート部w1の表面に対して斜めになるように)配置されている。放射線源1から放射された一次放射線は、第1シート部w1及び第2シート部w2のそれぞれの基材aを透過し、第1シート部w1及び第2シート部w2のそれぞれの表面に形成された計2つの被覆層b1,b2の全てに照射される。
【0026】
放射線検出器2は、ワークWから発生する二次放射線を検出するものである。具体的にこの放射線検出器2は、例えば検出素子としてSi素子等の半導体検出素子を用いて構成されたシリコンドリフト検出器であり、検出した二次放射線のエネルギーに比例した電流を出力する。
【0027】
この放射線検出器2は、二次放射線を検出する検出素子と、検出素子の前方に配置され、当該検出素子により二次放射線を検出可能な視野角θ2を制限する視野角制限素子21とを備えるものである。この視野角制限素子21は、二次放射線を検出可能な視野角θ2が所定範囲に設定されており、その視野内から発生する二次放射線を検出することができる。視野角制限素子21は、放射線(具体的にはX線)の透過率が低い重元素からなるリング状をなすものであり、いわゆるコリメータである。放射線検出器2は、その検出視野の中心軸2aと第1シート部w1の表面とのなす角度φ2が90°となるように(すなわち第1シート部w1の表面に対して直交するように)配置されている。
【0028】
本実施形態では、放射線検出器2の検出視野の中心軸2aと、放射線源1から放射される一次放射線の中心軸1aとが第1シート部w1の表面で交差するように、放射線検出器2と放射線源1の向きが設定されている。また放射線源1と放射線検出器2は、それぞれの中心軸1a、2aを含む平面の面内方向が、搬送装置200の移動方向と略平行になるように配置されている。
【0029】
分析部3は、放射線検出器2が出力した電流を受け付けて、二次放射線のスペクトルを取得するとともに、この取得したスペクトルに基づいて、二次放射線を発生させた元素の定性分析及び定量分析、含有元素の特定、異物の分析、被覆層の厚みや堆積量の測定等を行うものである。
【0030】
しかして本実施形態の放射線分析システム300では、放射線源1及び放射線検出器2から視て、複数の被覆層b1,b2のうち最も手前に位置する被覆層b1で発生した二次放射線が放射線検出器2に入射し、かつ当該被覆層よりも奥側に位置する少なくとも1つの被覆層で発生した二次放射線が放射線検出器2に入射しないように、放射線源1と放射線検出器2とが配置されている。具体的には、放射線源1と放射線検出器2は、第1シート部w1の表面(外向きの表面)に形成された被覆層b1(分析対象層という)で発生した二次放射線が放射線検出器2に入射し、かつ第2シート部w2の表面(外向きの表面)に形成された被覆層b2(非分析対象層という)で発生した二次放射線が放射線検出器2に入射しないように配置されている。
【0031】
より具体的に説明すると、この放射線分析システム300では、分析対象層b1において、放射線源1による一次放射線の照射領域と、放射線検出器2による二次放射線の検出可能な検出領域とが重複しており、一方で非分析対象層b2においては、放射線源1による照射領域と放射線検出器2による検出領域とが重複しないように構成されている。なお放射線源1と放射線検出器2のそれぞれの中心軸1a、2aに直交する方向から視て、分析対象層b1における照射領域の長さは検出領域の長さよりも小さくなるように、放射線源1及び放射線検出器2は配置されている。
【0032】
この放射線源1と放射線検出器2の配置は、分析対象層b1と非分析対象層b2との間の距離Xに基づいて設定されている。具体的には、分析対象層b1と非分析対象層b2との間の距離をX、放射線源1の中心軸1aと第1シート部w1の表面に直交する垂線とのなす角度をφ3(=90°-φ1)、放射線源1と放射線検出器2のそれぞれの中心軸1a、2aに直交する方向から視た非分析対象層b2における照射領域の長さをdirr2、非分析対象における検出領域の長さをddet2とし、以下の式(1)を満たすように、放射線源1と放射線検出器2が配置されている。
【0033】
X・tanφ3-dirr2/2>ddet2/2 (1)
【0034】
このような式(1)を満たすように放射線源1と放射線検出器2を配置することで、第1シート部w1に形成された分析対象層b1で発生した二次放射線が放射線検出器2に入射し、かつ第2シート部w2に形成された非分析対象層b2で発生した二次放射線が放射線検出器2に入射しないようにできる。
【0035】
このように構成した本実施形態の放射線分析システム300によれば、複数の層のうち最も手前に位置する分析対象層b1で発生する二次放射線を放射線検出器2に入射させ、かつ分析対象層b1よりも奥側に位置する少なくとも1つの非分析対象層b2で発生した二次放射線を放射線検出器2に入射させないようにできるので、分析対象ではない層から発生する二次放射線が検出されるのを防ぎ、その悪影響を低減することができる。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、他の実施形態では、
図2に示すように、放射線検出器2は、検出視野の中心軸2aと第1シート部w1の表面とのなす角度φ
2が90°となるように配置されていなくてもよく、検出視野の中心軸2aが第1シート部w1の表面に対して斜めになるよう配置されていてもよい。
【0037】
また他の実施形態では、放射線源1は放射角制限素子11を備えていてなくてもよく、放射線検出器2は視野角制限素子21を備えていなくてもよい。
【0038】
また前記実施形態では、放射線源1と放射線検出器2は、それぞれの中心軸1a、2aを含む平面の面内方向が、搬送装置200の移動方向と略平行になるように配置されていたがこれに限らない。他の実施形態では、放射線源1と放射線検出器2は、それぞれの中心軸1a、2aを含む平面の面内方向が、搬送装置200の移動方向に対して交差するように配置されていてもよい。放射線源1と放射線検出器2は、移動するワークWの第1シート部w1及び第2シート部w2との間の距離が大きく変動しない向きで配置されていればよい。
【0039】
また他の実施形態の放射線分析システム300は、搬送装置200より搬送されない(移動しない)ワークWを分析するものであってもよい。
【0040】
さらに前記実施形態では、ワークWはシート状をなすものであったがこれに限らない。他の実施形態では、ワークWは複数の層が積層された積層体であってもよい。
【0041】
また前記実施形態では、ワークWは基材aの一方の表面にのみ被覆層が形成されていたがこれに限らない。他の実施形態では、例えば
図3に示すように、ワークWは、基材aの一方の表面と他方の表面(裏面)の両方に被覆層が形成されたものであってもよい。この場合には、放射線源1と放射線検出器2は、ワークWの一方の表面(放射線源1及び放射線検出器2に対向する表面)に形成された被覆層b(分析対象層)で発生した二次放射線が放射線検出器2に入射し、かつ他方の表面(すなわち裏面)に形成された被覆層c(非分析対象層)で発生した二次放射線が放射線検出器2に入射しないように配置されていればよい。
【0042】
また他の実施形態では、ワークWは、一次放射線が照射されても二次放射線を発生させない材料からなる被覆層を1又は複数備えていてもよい。このような二次放射線を発生させない被覆層が分析対象層の上に形成されていても、本発明の効果を発揮できる。
【0043】
また他の実施形態の基材aは、一次放射線を生じさせにくい材料からなるものに限らない。他の実施形態の基材aは、例えばメッシュ状をなしており、一次放射線を構造的に透過させるように構成されたものであってもよい。
【0044】
また他の実施形態の放射線分析装置100は、一次放射線として電子線を照射し、二次放射線として特性X線を検出するように構成されていてもよい。
【0045】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0046】
100・・・放射線分析装置
1 ・・・放射線源
2 ・・・放射線検出器
W ・・・ワーク
b1 ・・・分析対象層
b2 ・・・非分析対象層