(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145235
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】化学蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
F28D20/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057502
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】中井 淳也
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 宏太
(57)【要約】
【課題】蓄熱体の流出を抑制可能な化学蓄熱装置を提供することを課題とする。
【解決手段】化学蓄熱装置1は、収容部22を内部に区画する筒状の内側容器2と、収容部22に配置される蓄熱体4と、蓄熱体4の内部に配置され、熱媒体が通過する熱媒体流路52を内部に区画する伝熱部材5と、内側容器2を外側から覆い、自身の内面と、内側容器の外面204と、の間に反応媒体が流動する外側流路32を区画する筒状の外側容器3と、を備える。内側容器2の側周壁部20において、法線方向Y1が重力方向の成分Y2Bを含まない区間を第一区間20A、法線方向Y1が重力方向の成分Y2Bを含む区間を第二区間20B、とする。内側容器2の軸方向は、重力方向Y2Bに対して交差している。側周壁部20は、外側流路32と収容部22とを連通する複数の貫通孔201を有する。第一区間20Aは、第二区間20Bよりも、貫通孔201の開口率が高い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を内部に区画する筒状の内側容器と、
前記収容部に配置される蓄熱体と、
前記蓄熱体の内部に配置され、前記蓄熱体と熱の授受を行う熱媒体が通過する熱媒体流路を内部に区画する伝熱部材と、
前記内側容器を外側から覆い、自身の内面と、前記内側容器の外面と、の間に反応媒体が流動する外側流路を区画する筒状の外側容器と、
を備え、
前記内側容器の側周壁部の外面に垂直な方向のうち、前記側周壁部の内側から外側に向かう方向を法線方向、
前記内側容器の筒軸が延在する方向を軸方向、
重力が作用する方向を重力方向、
前記側周壁部において、前記法線方向が前記重力方向の成分を含まない区間を第一区間、前記法線方向が前記重力方向の成分を含む区間を第二区間、
として、
前記軸方向は、前記重力方向に対して交差しており、
前記側周壁部は、前記外側流路と前記収容部とを連通する複数の貫通孔を有し、
前記第一区間は、前記第二区間よりも、前記貫通孔の開口率が高い化学蓄熱装置。
【請求項2】
前記側周壁部の前記外面に占める前記開口率は2%以上である請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項3】
複数の前記貫通孔は、前記側周壁部に直接開設される請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項4】
前記側周壁部は、取付孔が開設された壁部本体と、前記取付孔に取り付けられ複数の前記貫通孔が開設された有孔部材と、を有する請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項5】
前記壁部本体は、金属製であり、
前記有孔部材は、金属製のエッチングフィルタ、金網、パンチングメタル、多孔質体、汎用フィルタから選ばれる請求項4に記載の化学蓄熱装置。
【請求項6】
前記蓄熱体は、前記反応媒体との反応により、前記伝熱部材に向かって膨張可能である請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項7】
前記外側容器に対する、前記内側容器の配置数は、単一または複数である請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項8】
前記内側容器に対する、前記伝熱部材の配置数は、単一または複数である請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項9】
前記蓄熱体に対する、前記伝熱部材のパス数は、一回または複数回である請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学反応熱を利用して可逆的に蓄熱、放熱を行うことができる化学蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、箱型の化学蓄熱反応器が開示されている。同文献の化学蓄熱装置は、蓄熱体と反応容器とを備えている。蓄熱体は、反応容器の内部に収容されている。蓄熱体は、円柱状の蓄熱成形体と、円筒状の蓄熱材拘束カバーと、を備えている。蓄熱材拘束カバーは、蓄熱成形体の外周面を全周的に覆っている。蓄熱材拘束カバーは、エッチングフィルタ製である。蓄熱材拘束カバーの全面には、多数の微小貫通孔が形成されている。蓄熱材拘束カバーは、蓄熱成形体を構成する蓄熱材の平均粒径よりも小さい濾過精度を有している。このため、蓄熱材拘束カバーは、水蒸気の通過を許容する一方、平均粒径よりも大きい蓄熱材の通過を制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄放熱に伴う体積変化(膨張、収縮)により、蓄熱体の少なくとも一部は微粉化する。微粉化した蓄熱材は、自重により、蓄熱材拘束カバー内部を流下する。ここで、蓄熱材拘束カバー(エッチングフィルタ)は、平均粒径よりも大きい蓄熱材の通過を制限する一方、平均粒径よりも小さい蓄熱材の通過を許容しやすい。このため、微粉化した蓄熱材は、蓄熱材拘束カバーの下側部分を介して、外部に流出しやすい。よって、畜熱密度が低下してしまう。そこで、本開示は、収容部から蓄熱体が流出するのを抑制可能な化学蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するため、本開示の化学蓄熱装置は、収容部を内部に区画する筒状の内側容器と、前記収容部に配置される蓄熱体と、前記蓄熱体の内部に配置され、前記蓄熱体と熱の授受を行う熱媒体が通過する熱媒体流路を内部に区画する伝熱部材と、前記内側容器を外側から覆い、自身の内面と、前記内側容器の外面と、の間に反応媒体が流動する外側流路を区画する筒状の外側容器と、を備え、前記内側容器の側周壁部の外面に垂直な方向のうち、前記側周壁部の内側から外側に向かう方向を法線方向、前記内側容器の筒軸が延在する方向を軸方向、重力が作用する方向を重力方向、前記側周壁部において、前記法線方向が前記重力方向の成分を含まない区間を第一区間、前記法線方向が前記重力方向の成分を含む区間を第二区間、として、前記軸方向は、前記重力方向に対して交差しており、前記側周壁部は、前記外側流路と前記収容部とを連通する複数の貫通孔を有し、前記第一区間は、前記第二区間よりも、前記貫通孔の開口率が高いことを特徴とする。
【0006】
ここで、第一区間の貫通孔の開口率とは、第一区間の外面の総面積を100%とした場合の、同区間の外面の全貫通孔の総開口面積の割合をいう。同様に、第二区間の貫通孔の開口率とは、第二区間の外面の総面積を100%とした場合の、同区間の外面の全貫通孔の総開口面積の割合をいう。
【0007】
内側容器は、重力方向に対して交差する方向に延在している。内側容器の内部には、収容部が区画されている。収容部には、蓄熱体が配置されている。内側容器の側周壁部は、第一区間と第二区間とを備えている。第一区間の法線方向は、重力方向の成分を含まない。このため、収容部の蓄熱体は、膨張、収縮による微粉化後に自重が作用しても、第一区間の貫通孔から流出しにくい。他方、第二区間の法線方向は、重力方向の成分を含む。このため、収容部の蓄熱体は、膨張、収縮による微粉化後に自重が作用すると、第二区間の貫通孔から流出しやすい。本開示の化学蓄熱装置によると、第一区間は、第二区間よりも、貫通孔の開口率が高い。このため、貫通孔を介して収容部から蓄熱体が流出するのを、抑制することができる。したがって、蓄熱密度の低下を抑制することができる。
【0008】
(1-1)上記(1)の構成において、前記第二区間には、前記貫通孔が配置されない構成とする方がよい。本構成によると、より確実に、収容部から蓄熱体が流出するのを抑制することができる。
【0009】
(1-2)上記いずれかの構成において、前記第一区間に配置された前記貫通孔の孔軸方向は、前記重力方向の成分を含まない構成とする方がよい。本構成によると、より確実に、収容部から蓄熱体が流出するのを抑制することができる。
【0010】
(1-3)上記いずれかの構成において、前記蓄熱体の内部には、反応媒体が通過し前記蓄熱体に向かって開口する反応媒体流路を内部に区画する流路部材が、配置されていない構成とする方がよい。本構成によると、流路部材が配置されていない分だけ、畜熱密度を大きくすることができる。また、化学蓄熱装置の部品点数を削減し、構造を簡単にすることができる。また、収容部に流路部材が配置されている場合と比較して、収容部の形状を単純にすることができる。このため、蓄熱体を、収容部の隅々にまで充填することができる。したがって、収容部にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。
【0011】
(1-4)上記いずれかの構成において、前記貫通孔の配置数および断面積(孔軸方向に直交する方向の断面積)のうち少なくとも一方を調整することにより、前記第一区間の前記貫通孔の前記開口率を、前記第二区間の前記貫通孔の前記開口率よりも、高くする方がよい。本構成によると、簡単に第一区間と第二区間との間に開口率差を設定することができる。
【0012】
(2)上記いずれかの構成において、前記側周壁部の前記外面に占める前記開口率は2%以上である構成とする方がよい。本構成によると、開口率が2%以上に設定されている。このため、収容部からの蓄熱体の流出抑制と、反応媒体と蓄熱体との反応促進と、を両立させることができる。なお、開口率を2%以上としたのは、2%未満の場合、収容部からの蓄熱体の流出をさらに抑制できる一方、反応媒体と蓄熱体との反応性が低下するからである。
【0013】
(3)上記いずれかの構成において、複数の前記貫通孔は、前記側周壁部に直接開設される構成とする方がよい。本構成によると、後述の(4)の構成と比較して、内側容器の部品点数が少なくなる。また、内側容器の強度を確保しやすい。
【0014】
(4)上記(1)ないし(2)のいずれかの構成において、前記側周壁部は、取付孔が開設された壁部本体と、前記取付孔に取り付けられ複数の前記貫通孔が開設された有孔部材と、を有する構成とする方がよい。本構成によると、(3)の構成と比較して、内側容器に、直接、複数の貫通孔を開設する必要がない。このため、内側容器を簡単に製造することができる。
【0015】
(5)上記(4)の構成において、前記壁部本体は、金属製であり、前記有孔部材は、金属製のエッチングフィルタ、金網、パンチングメタル、多孔質体、汎用フィルタから選ばれる構成とする方がよい。エッチングフィルタ、金網、パンチングメタルは、いずれも金属製である。並びに、壁部本体も金属製である。このため、有孔部材として、エッチングフィルタ、金網、パンチングメタルを用いると、壁部本体との接合が容易になる。また、エッチングフィルタ、パンチングメタルを用いると、金網を用いる場合と比較して、貫通孔が目開きしにくい。また、貫通孔がほつれにくい。多孔質体は、内部に様々な孔を有している。孔は、三次元的に延在している。このため、有孔部材として多孔質体を用いると、すなわち多孔質体の孔を貫通孔として利用すると、貫通孔の孔路に冗長性を確保することができる。したがって、より確実に、収容部から蓄熱体が流出するのを抑制することができる。有孔部材として汎用フィルタを用いると、所望の特性(長寿命、安価、メンテナンス容易など)に応じた有孔部材を、簡単に確保することができる。
【0016】
(6)上記いずれかの構成において、前記蓄熱体は、前記反応媒体との反応により、前記伝熱部材に向かって膨張可能である構成とする方がよい。本構成によると、蓄熱体と伝熱部材とを密着させやすい。このため、蓄熱体と熱媒体との間の熱交換効率を向上させることができる。
【0017】
(6-1)上記いずれかの構成において、前記外側容器は、円筒状または多角形筒状を呈する構成とする方がよい。外側容器を円筒状または多角形筒状とし、かつ内側容器の軸直断面形状を外側容器の軸直断面形状と相似形にすると、外側容器内のデッドスペースを減少させることができる。
【0018】
外側容器を円筒状にすると、外側容器が多角形筒状である場合と比較して、局所的な応力集中を抑制することができるため、外側容器の耐圧性を向上させることができる。したがって、外側容器の壁部の厚さを減少することができる。このため、畜熱密度を大きくすることができる。
【0019】
外側容器を多角形筒状にすると、外側容器が円筒状である場合と比較して、外側容器と隣接装置との間の隙間が大きくなりにくい。このため、化学蓄熱装置の設置場所(例えば工場など)のデッドスペースを減少させることができる。
【0020】
(7)上記いずれかの構成において、前記外側容器に対する、前記内側容器の配置数は、単一または複数である構成とする方がよい。外側容器に対する内側容器の配置数が単一の場合、内側容器の配置数が複数の場合と比較して、内側容器同士の隙間が発生しない。このため、外側容器内のデッドスペースを減少させることができる。
【0021】
外側容器に対する内側容器の配置数が複数の場合、内側容器の配置数が単一の場合と比較して、複数の内側容器に蓄熱体を分配することができる。このため、蓄熱体に対する反応媒体の拡散性を向上させることができる。
【0022】
(8)上記いずれかの構成において、前記内側容器に対する、前記伝熱部材の配置数は、単一または複数である構成とする方がよい。内側容器に対する伝熱部材の配置数が単一の場合、伝熱部材の配置数が複数の場合と比較して、蓄熱体に対する反応媒体の拡散性が伝熱部材により阻害されにくい。このため、反応媒体の拡散性を向上させることができる。
【0023】
外側容器の内部に複数の内側容器を配置し、各々の内側容器の収容部に伝熱部材を配置する場合(内側容器に対する伝熱部材の配置数が単一の場合)を想定する。この場合、隣り合う内側容器間にデッドスペースが発生してしまう。これに対して、外側容器の内部に単一の内側容器を配置し、当該内側容器の収容部に複数の伝熱部材を配置する場合を想定する。この場合、上記デッドスペースに対応する部分に、蓄熱体を充填することができる。したがって、収容部におけるデッドスペースを減少させることができる。
【0024】
(9)上記いずれかの構成において、前記蓄熱体に対する、前記伝熱部材のパス数は、一回または複数回である構成とする方がよい。蓄熱体に対する伝熱部材のパス数が一回の場合、伝熱部材のパス数が複数回の場合と比較して、熱媒体流路が湾曲しにくい。このため、熱媒体の圧力損失を低減することができる。また、熱媒体が相変化する場合(一例として、熱媒体が水(液体)から水蒸気(気体)に相変化する場合)、熱媒体の逆流を抑制することができる。
【0025】
蓄熱体に対する伝熱部材のパス数が複数の場合、伝熱部材のパス数が一回の場合と比較して、熱媒体流路が湾曲しやすい。また、蓄熱体の内部における熱媒体流路の流路長が長くなりやすい。このため、本構成の化学蓄熱装置は、長時間に亘って安定した出力が要求される用途に適している。
【発明の効果】
【0026】
本開示の化学蓄熱装置によると、収容部からの蓄熱体の流出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、第一実施形態の化学蓄熱装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、同化学蓄熱装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同化学蓄熱装置の部分透過斜視図である。
【
図4】
図4は、同化学蓄熱装置の前後方向断面図である。
【
図8】
図8は、第二実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図である。
【
図9】
図9は、第三実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図である。
【
図10】
図10は、第四実施形態の化学蓄熱装置の斜視図である。
【
図13】
図13は、同化学蓄熱装置の複数の内側容器、伝熱部材、複数の間接支持部材の分解斜視図である。
【
図17】
図17は、第五実施形態の化学蓄熱装置の前後方向断面図である。
【
図18】
図18は、第六実施形態の化学蓄熱装置の前後方向断面図である。
【
図20】
図20は、第七実施形態の化学蓄熱装置の前後方向断面図である。
【
図21】
図21(A)~
図21(D)は、その他の実施形態(その1~その4)の化学蓄熱装置の軸直方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の化学蓄熱装置の実施の形態について説明する。以降の図において、前後方向は、内側容器、外側容器の軸方向(筒軸の延在方向)に対応している。上下方向のうち、上側から下側に向かう方向は、重力方向に対応している。上下方向のうち、下側から上側に向かう方向は、反重力方向に対応している。上下方向および左右方向のうち少なくとも一方は、内側容器、外側容器の軸直方向(軸方向に対して直交する方向。横断面方向。径方向)に対応している。
【0029】
<第一実施形態>
図1に、本実施形態の化学蓄熱装置の斜視図を示す。
図2に、同化学蓄熱装置の分解斜視図を示す。
図3に、同化学蓄熱装置の部分透過斜視図を示す。
図4に、同化学蓄熱装置の前後方向(軸方向)断面図を示す。
図5に、
図4の枠V内の拡大図を示す。
図6に、
図4のVI-VI方向(軸直方向)断面図を示す。
図7に、
図6の枠VII内の拡大図を示す。なお、
図4は、
図6のIV-IV方向断面に対応する。
【0030】
図1においては、外側容器3の内部の内側容器2、伝熱部材取付板81、間接支持部材87を点線で示す。
図2においては、内側容器2の貫通孔201を省略して示す。また、第一区間20Aと第二区間20Bとを互いに異なる方向の点線ハッチングで示す。
図3においては、内側容器2、伝熱部材取付板81、間接支持部材87を透過して、内側容器2の内部(収容部22)の部材(伝熱部材5、直接支持部材7)を示す。また、貫通孔201、蓄熱体4を省略して示す。
【0031】
[化学蓄熱装置の構成]
まず、本実施形態の化学蓄熱装置1の構成について説明する。
図1~
図7に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は、内側容器2と、外側容器3と、蓄熱体4と、複数の伝熱部材5と、複数の直接支持部材7と、反応媒体給排管80と、伝熱部材取付板81と、熱媒体給排筒82と、隔壁83と、熱媒体供給管84と、熱媒体排出管85と、端板86と、複数の間接支持部材87と、二つの脚部88と、を備えている。
【0032】
(内側容器2)
図2、
図4、
図6に示すように、内側容器(反応器)2は、金属製であって、前後方向(水平方向)に延在し、前側に開口する有底円筒状を呈している。すなわち、内側容器2の筒軸A1(
図4、
図6参照)は、前後方向(重力方向に対して、直交(交差)する方向)に延在している。
【0033】
内側容器2は、側周壁部20と、端壁部21と、収容部22と、を備えている。側周壁部20は、前後方向に延在する円筒状を呈している。端壁部21は、側周壁部20の後端開口を封止している。収容部22は、内側容器2の内部に区画されている。
【0034】
(第一区間20A、第二区間20B)
図6、
図7に示すように、側周壁部20は、第一区間20Aと、第二区間20Bと、を備えている。第一区間20Aは、側周壁部20の上半分に配置されている。側周壁部20の外周面204(詳しくは外周面204の接線方向)に垂直な方向(筒軸A1を中心とする円の径方向)のうち、側周壁部20の内側(収容部22側)から外側に向かう方向を法線方向Y1とする。外周面204は、本開示の「外面」の概念に含まれる。第一区間20Aは、側周壁部20において、法線方向Y1が、重力方向成分Y2Bを含まない区間である。また、第一区間20Aは、法線方向Y1が、反重力方向成分Y2Aおよび水平方向成分Y3のうち、少なくとも一方を含む区間である。
【0035】
第二区間20Bは、側周壁部20の下半分に配置されている。第二区間20Bは、側周壁部20において、法線方向Y1が、重力方向成分Y2Bを含む区間である。また、第二区間20Bは、法線方向Y1が、重力方向成分Y2Bおよび水平方向成分Y3のうち、少なくとも一方を含む区間(ただし、水平方向成分Y3のみを含む区間を除く)である。
【0036】
図1、
図4、
図6、
図7に示すように、側周壁部20は、複数の貫通孔201を備えている。貫通孔201は、内側容器2の外部(後述する外側流路32)と収容部22とを連通している。貫通孔201の大きさ(口径)は、水蒸気が通過可能であって、蓄熱体4の蓄熱材粒子が通過しにくい大きさに設定されている。複数の貫通孔201は、側周壁部20の前後方向全長に亘って、配置されている。全ての貫通孔201は、第一区間20Aの全体に亘って、開設されている。すなわち、第一区間20Aは、全体的にパンチングメタル状を呈している。第二区間20Bには、貫通孔201が開設されていない。
【0037】
ここで、第一区間20Aの貫通孔201の開口率とは、第一区間20Aの外周面204の総面積を100%とした場合の、同区間の外周面204の全ての貫通孔201の総開口面積の割合をいう。同様に、第二区間20Bの貫通孔201の開口率とは、第二区間20Bの外周面204の総面積を100%とした場合の、同区間の外周面204の全ての貫通孔201の総開口面積の割合をいう。
図6に示すように、第一区間20Aは、第二区間20Bよりも、貫通孔201の開口率が高い。
【0038】
図6、
図7に示すように、第一区間20Aにおいて、貫通孔201の孔軸方向(筒軸A1を中心とする円において、径方向内側から径方向外側に向かう方向)は、法線方向Y1と一致している。孔軸方向は、重力方向成分Y2Bを含んでいない。孔軸方向は、反重力方向成分Y2Aおよび水平方向成分Y3のうち、少なくとも一方を含んでいる。
【0039】
(外側容器3、脚部88)
図1、
図2、
図4、
図6に示すように、外側容器3は、金属製であって、前後方向に延在し、前側に開口する有底円筒状を呈している。すなわち、外側容器3の筒軸A2(
図4、
図6参照)は、前後方向に延在している。外側容器3は、内側容器2を、外側(筒軸A1、A2を中心とする径方向外側および後側(軸方向一方))から覆っている。筒軸A1と筒軸A2とは一致している。すなわち、外側容器3は、内側容器2と同軸上に配置されている。
【0040】
外側容器3は、側周壁部30と、端壁部31と、を備えている。側周壁部30は、前後方向に延在する円筒状を呈している。端壁部31は、側周壁部30の後端開口を封止している。端壁部31は、取付孔310を備えている。取付孔310は、端壁部31の径方向中心を、筒軸A2に沿って、前後方向に貫通している。
【0041】
外側容器3は、外側流路32を区画している。具体的には、外側流路32は、外側容器3の内面と、内側容器2の外面と、の間に区画されている。
図6に示すように、軸直方向断面において、外側流路32は、筒軸A2を中心とする円環状を呈している。
【0042】
図1に示すように、二つの脚部88は、外側容器3の前後両端部に配置されている。二つの脚部88は、工場の床面(図略)に立設されている。二つの脚部88は、外側容器3つまり化学蓄熱装置1を下側から支持している。
【0043】
(蓄熱体4)
図4、
図6、
図7に示すように、蓄熱体4は、収容部22に充填されている。蓄熱体4は、化学蓄熱材(脱水後は酸化カルシウム、水和後は水酸化カルシウム)製の蓄熱材粒子と、粘土鉱物と、を含んでいる。蓄熱体4は、水蒸気(H
2O)との化学反応(水和反応、脱水反応)により膨張、収縮可能である。水蒸気は、本開示の「反応媒体」の概念に含まれる。
【0044】
収容部22(詳しくは、収容部22のうち、部材(複数の伝熱部材5、複数の直接支持部材7)が配置されていない部分)の容積は、水和反応による膨張後の蓄熱体4の体積よりも、小さい。このため、膨張後(水和反応後)において、蓄熱体4は、内側容器2の内面(収容部22を区画する面)、後述する複数の伝熱部材5の外面、複数の直接支持部材7の外面に圧接している。言い換えると、蓄熱体4は、これらの部材により拘束されている。
【0045】
(伝熱部材5)
図3~
図6に示すように、伝熱部材5は、金属製であって、U字の円管状を呈している。すなわち、伝熱部材5は、二つの直管部50と、曲管部51と、を備えている。直管部50は、前後方向に延在している。二つの直管部50は、上下方向に対向して配置されている。曲管部51は、後側に膨らむC字状に延在している。曲管部51は、二つの直管部50の後端部同士を連結している。
【0046】
伝熱部材5は、前端部(後述する伝熱部材取付板81の取付孔810に固定されている部分)を除いて、収容部22に収容されている。伝熱部材5は、蓄熱体4の内部に配置されている。伝熱部材5の外面は、蓄熱体4に当接している。伝熱部材5は、内部に熱媒体流路52を区画している。熱媒体は、熱媒体流路52を流動可能である。熱媒体は、伝熱部材5の壁部を介して、蓄熱体4と熱の授受を行う。
図6に示すように、収容部22において、複数の伝熱部材5の直管部50は、上下左右方向に並んでいる。
図4に示すように、複数の伝熱部材5は、収容部22(つまり蓄熱体4)の全体に配置されている。
【0047】
(直接支持部材7)
図3、
図4、
図6に示すように、直接支持部材7は、金属製であって、上下左右方向(垂直方向)に延在する円板状を呈している。直接支持部材7は、収容部22に配置されている。直接支持部材7の外周面は、内側容器2の側周壁部20の内周面(収容部22を区画する面)に当接している。
【0048】
図4に示すように、複数の直接支持部材7は、所定間隔ずつ離間して、前後方向に並置されている。複数の直接支持部材7は、収容部22を、前後方向に並ぶ複数の部屋220に仕切っている。直接支持部材7は、複数の支持孔70を備えている。支持孔70は、直接支持部材7を前後方向に貫通している。支持孔70には、伝熱部材5の直管部50が挿通されている。支持孔70つまり直接支持部材7は、伝熱部材5を、直接支持している。また、直接支持部材7は、伝熱部材5を、直接位置決めしている。
【0049】
(反応媒体給排管80)
図1、
図2、
図4に示すように、反応媒体給排管80は、金属製であって、短軸円管状を呈している。反応媒体給排管80は、外側容器3の端壁部31の取付孔310に取り付けられている。反応媒体給排管80を介して、外側容器3の外部から外側流路32に、水蒸気が供給される。また、反応媒体給排管80を介して、外側流路32から外側容器3の外部に、水蒸気が排出される。
【0050】
(伝熱部材取付板81)
図1~
図4に示すように、伝熱部材取付板81は、金属製であって、上下左右方向に延在する円板状を呈している。伝熱部材取付板81は、内側容器2および外側容器3の前側に配置されている。伝熱部材取付板81は、内側容器2および外側容器3の前側開口を封止している。伝熱部材取付板81は、複数の取付孔810を備えている。取付孔810は、伝熱部材取付板81を前後方向に貫通している。取付孔810には、伝熱部材5の直管部50の前端部が取り付けられている。取付孔810つまり伝熱部材取付板81は、伝熱部材5を支持している。また、伝熱部材取付板81は、伝熱部材5を固定している。
【0051】
(熱媒体給排筒82)
図1、
図2、
図4に示すように、熱媒体給排筒82は、金属製であって、前後方向に延在する短軸円筒状を呈している。熱媒体給排筒82は、伝熱部材取付板81の前側に配置されている。伝熱部材取付板81は、熱媒体給排筒82の後端開口を封止している。熱媒体給排筒82は、筒軸A1、A2上に配置されている。熱媒体給排筒82は、二つの取付孔820を備えている。取付孔820は、熱媒体給排筒82の壁部を上下方向に貫通している。二つの取付孔820は、上下方向に対向して配置されている。
【0052】
(隔壁83)
図2、
図4に示すように、隔壁83は、金属製であって、前後左右方向(水平方向)に延在する平板状を呈している。隔壁83は、熱媒体給排筒82の内部空間を、下側の供給室830と、上側の排出室831と、に仕切っている。供給室830は下側の取付孔820に、排出室831は上側の取付孔820に、各々連通している。伝熱部材5の熱媒体流路52の一端(上流端)は、供給室830に連通している。伝熱部材5の熱媒体流路52の他端(下流端)は、排出室831に連通している。
【0053】
(熱媒体供給管84、熱媒体排出管85、端板86)
図1、
図2、
図4に示すように、熱媒体供給管84は、金属製であって、短軸円管状を呈している。熱媒体供給管84は、熱媒体給排筒82の下側の取付孔820に取り付けられている。熱媒体供給管84を介して、熱媒体給排筒82の外部から供給室830に、熱媒体が供給される。熱媒体排出管85は、金属製であって、短軸円管状を呈している。熱媒体排出管85は、熱媒体給排筒82の上側の取付孔820に取り付けられている。熱媒体排出管85を介して、排出室831から熱媒体給排筒82の外部に、熱媒体が排出される。端板86は、金属製であって、上下左右方向に延在する円板状を呈している。端板86は、熱媒体給排筒82の前端開口を封止している。
【0054】
(間接支持部材87)
図1~
図3、
図4~
図6に示すように、間接支持部材87は、金属製であって上下左右方向に延在する歯車円環状を呈している。間接支持部材87は、内側容器2の側周壁部20の外周面204と、外側容器3の側周壁部30の内周面と、の間に配置されている。間接支持部材87により、内側容器2の側周壁部20の外周面204と、外側容器3の側周壁部30の内周面と、の間に外側流路32が確保されている。複数の間接支持部材87は、前後方向に、所定間隔ずつ離間して配置されている。間接支持部材87の外周面には、径方向内側に凹む複数の開口部870が配置されている。複数の開口部870は、周方向に所定間隔ずつ離間して配置されている。開口部870を介して、外側流路32の各部は、前後方向に互いに連通している。間接支持部材87は、内側容器2を支持している。また、間接支持部材87は、内側容器2を位置決めしている。また、間接支持部材87は、内側容器2、直接支持部材7を介して、伝熱部材5を間接的に支持している。また、間接支持部材87は、内側容器2、直接支持部材7を介して、伝熱部材5を間接的に位置決めしている。
【0055】
(反応媒体ルートR1、熱媒体ルートR2)
図4~
図7に示すように、化学蓄熱装置1の外部と、収容部22の蓄熱体4と、の間には、外部から蓄熱体4に向かって、反応媒体給排管80、外側流路32、貫通孔201を経由する、水蒸気用の反応媒体ルートR1が設定されている。
【0056】
図4に示すように、熱媒体供給管84と熱媒体排出管85との間には、熱媒体供給管84から熱媒体排出管85に向かって、供給室830、熱媒体流路52、排出室831を経由する、熱媒体用の熱媒体ルートR2が設定されている。
【0057】
[化学蓄熱装置の動き]
次に、本実施形態の化学蓄熱装置1の動きについて説明する。前述したように、蓄熱体4は、化学蓄熱材(脱水後は酸化カルシウム、水和後は水酸化カルシウム)製の蓄熱材粒子と、粘土鉱物と、を含んでいる。ここで、複数の蓄熱材粒子を含む造粒体を「蓄熱材顆粒」とする。また、収容部22に伝熱部材5が配置された状態で、収容部22に収容された蓄熱体4が未だ一度も水和反応していない状態を「初期状態」とする。
【0058】
(放熱時、水和反応時)
初期状態における蓄熱体4の蓄熱材顆粒中の蓄熱材粒子は、酸化カルシウム製である。放熱時においては、
図4~
図6に示す反応媒体ルートR1を介して、蓄熱体4の全体に水蒸気を供給する。水蒸気の供給により、蓄熱体4の化学蓄熱材(酸化カルシウム)は、以下の水和反応により、放熱し、水酸化カルシウムとなる。なお、Q1は放熱量である。
CaO+H
2O→Ca(OH)
2+Q1
水和反応により、蓄熱体4は膨張し、内側容器2の内面(収容部22を区画する面)、伝熱部材5の外面、直接支持部材7の外面に圧接する。すなわち、蓄熱体4は、これらの部材により拘束される。
【0059】
水和反応により発生した熱Q1は、蓄熱体4、直接支持部材7、伝熱部材5の壁部を介して、熱媒体流路52の熱媒体に移動する。熱Q1により加熱された熱媒体は、熱媒体ルートR2を介して、外部に流出する。
【0060】
(蓄熱時、脱水反応時)
蓄熱時においては、
図4~
図6に示す熱媒体ルートR2に高温の熱媒体を流動させる。熱媒体の熱は、伝熱部材5の壁部、直接支持部材7を介して、蓄熱体4に移動する。当該熱により加熱された蓄熱体4の化学蓄熱材(水酸化カルシウム)は、以下の脱水反応により、蓄熱し、酸化カルシウムとなる。なお、Q2は蓄熱量である。
Ca(OH)
2+Q2→CaO+H
2O
脱水反応により発生した水蒸気(H
2O)は、反応媒体ルートR1(
図4、
図5に示す矢印方向と反対方向)を介して、化学蓄熱装置1の外部に排出される。
【0061】
[作用効果]
次に、本実施形態の化学蓄熱装置1の作用効果について説明する。
図1、
図5~
図7に示すように、内側容器2の側周壁部20の第一区間20Aには、貫通孔201が開設されている。貫通孔201は、収容部22の蓄熱体4に向かって開口している。このため、貫通孔201を介して、蓄熱体4の外面に水蒸気を供給することができる。また、貫通孔201を介して、蓄熱体4の外面から水蒸気を回収することができる。
【0062】
複数の貫通孔201は、第一区間20Aの全体に亘って、所定間隔ずつ離間して、分布している。このため、水蒸気を蓄熱体4の全体に拡散させやすい。また、蓄熱体4の全体から水蒸気を回収しやすい。
【0063】
図7に示すように、第一区間20Aの法線方向Y1は、重力方向成分Y2Bを含まない。このため、蓄熱体4は、膨張、収縮による微粉化後に、自重が作用しても、第一区間20Aの貫通孔201から流出しにくい。他方、第二区間20Bの法線方向Y1は、重力方向成分Y2Bを含む。このため、仮に第二区間20Bに貫通孔201が開設されている場合、蓄熱体4は、膨張、収縮による微粉化後に、自重が作用すると、第二区間20Bの貫通孔201から流出しやすい。この点、
図6に示すように、第一区間20Aは、第二区間20Bよりも、貫通孔201の開口率が高い。このため、貫通孔201を介して収容部22から蓄熱体4が流出するのを、抑制することができる。したがって、収容部22における蓄熱密度の低下を抑制することができる。
【0064】
図6、
図7に示すように、第二区間20Bには、貫通孔201が配置されていない。このため、より確実に、収容部22から蓄熱体4が流出するのを抑制することができる。
図7に示すように、第一区間20Aに配置された貫通孔201の孔軸方向は、重力方向成分Y2Bを含んでいない。このため、より確実に、収容部22から蓄熱体4が流出するのを抑制することができる。
【0065】
図4、
図6に示すように、蓄熱体4の内部には、水蒸気が通過し蓄熱体4に向かって開口する反応媒体流路を内部に区画する流路部材(例えば、内部に水蒸気用の反応媒体流路を有し、側周壁部に開設された多数の開口部を介して、水蒸気を蓄熱体4に供給する管状流路部材)が、配置されていない。このため、収容部22内の蓄熱密度を大きくすることができる。また、化学蓄熱装置1の部品点数を削減し、構造を簡単にすることができる。また、収容部22に流路部材が配置されている場合と比較して、収容部22の形状を単純にすることができる。このため、蓄熱体4を、収容部22の隅々にまで充填することができる。したがって、収容部22にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。
【0066】
側周壁部20の外周面204に占める貫通孔201の開口率は2%以上である。このため、収容部22からの蓄熱体4の流出抑制と、水蒸気と蓄熱体4との反応促進と、を両立させることができる。複数の貫通孔201は、側周壁部20に直接開設されている。このため、内側容器2の部品点数が少なくなる。また、内側容器2の強度を確保しやすい。
【0067】
蓄熱体4は、水和反応により、伝熱部材5に向かって膨張可能である。このため、蓄熱体4と伝熱部材5とを密着させやすい。したがって、蓄熱体4と、熱媒体流路52の熱媒体と、の間の熱交換効率を向上させることができる。
図4~
図6に示す収容部22の容積は、水和反応による膨張後の蓄熱体4の体積よりも、小さい。このため、収容部22にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。
【0068】
図6に示すように、外側容器3は、円筒状または多角形筒状を呈しており、また外側容器3と内側容器2とは互いに相似形であるため、外側容器3内のデッドスペースを減少させることができる。また、外側容器3を円筒状にすると、外側容器3が多角形筒状である場合と比較して、局所的な応力集中を抑制することができるため、外側容器3の耐圧性を向上させることができる。したがって、外側容器3の壁部(側周壁部30、端壁部31)の厚さを減少することができる。
【0069】
内側容器2の配置数によらず、蓄熱体4の体積が一定の場合を想定する。
図1に示すように、外側容器3に対する内側容器2の配置数は単一である。このため、内側容器2の配置数が複数の場合と比較して、内側容器2の壁部(側周壁部20、端壁部21)の体積を小さくすることができる。したがって、外側容器3内のデッドスペースを減少させることができる。
【0070】
外側容器3の内部に複数の内側容器2を配置し、各々の内側容器2の収容部22に伝熱部材5を配置する場合(内側容器2に対する伝熱部材5の配置数が単一の場合)を想定する。この場合、隣り合う内側容器2間にデッドスペースが発生してしまう。これに対して、
図3~
図6に示すように、内側容器2に対する、伝熱部材5の配置数は、複数である。このため、上記デッドスペースに対応する部分に、蓄熱体4を充填することができる。したがって、収容部22におけるデッドスペースを減少させることができる。また、伝熱部材5の配置数が単一の場合と比較して、伝熱部材5の表面積を広くすることができる。したがって、熱媒体と蓄熱体4との間の熱交換効率を高くすることができる。
【0071】
図3~
図7に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は、蓄熱体4の内部に、直接支持部材7を備えている。直接支持部材7は、伝熱部材5を直接支持している。このため、伝熱部材5が変形しにくい。具体的には、伝熱部材5が、前端部(伝熱部材取付板81に固定されている部分)を支点に、片持ち梁状に下側に湾曲しにくい。したがって、蓄熱体4に対する伝熱部材5の位置が変化しにくく、蓄熱体4と伝熱部材5との間に隙間が発生しにくい。よって、放熱時において、蓄熱体4の全体から伝熱部材5に、熱を回収しやすい。また、蓄熱時において、伝熱部材5から蓄熱体4の全体に、熱を供給しやすい。このように、本実施形態の化学蓄熱装置1によると、蓄放熱時における伝熱効率を高くすることができる。
【0072】
図1~
図6に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は、内側容器2と外側容器3との間に、間接支持部材87を備えている。間接支持部材87は、内側容器2を支持している。このため、内側容器2が変形しにくい。具体的には、内側容器2が、前端部(伝熱部材取付板81に固定されている部分)を支点に、片持ち梁状に下側に湾曲しにくい。したがって、
図6に示す環状の外側流路32の流路面積がばらつく(上側部分が広くなり、下側部分が狭くなる)のを、抑制することができる。
【0073】
図4、
図5に示すように、間接支持部材87は、内側容器2、直接支持部材7を介して、伝熱部材5を間接的に支持している。このため、蓄熱体4に対する伝熱部材5の位置が変化しにくい。よって、放熱時において、蓄熱体4の全体から伝熱部材5に、熱を回収しやすい。また、蓄熱時において、伝熱部材5から蓄熱体4の全体に、熱を供給しやすい。よって、蓄放熱時における伝熱効率を高くすることができる。また、間接支持部材87と直接支持部材7とは、側周壁部20を介して、径方向に並んでいる。このため、伝熱部材5の位置決め精度が高い。
【0074】
また、内側容器2には、多数の貫通孔201が開設されている。このため、内側容器2の第一区間20Aは、第二区間20Bに比べて、強度が低い。したがって、蓄放熱に伴う蓄熱体4の体積変化(膨張、収縮)、蓄熱体4の自重、内側容器2の自重などにより、経時的に内側容器2が変形しやすい。内側容器2が変形すると、蓄熱体4に対する伝熱部材5の位置が変化してしまう。この点、内側容器2は、間接支持部材87により補強、支持されている。このため、内側容器2が変形しにくい。したがって、蓄熱体4に対する伝熱部材5の位置が変化しにくい。よって、蓄放熱時における反応効率を高くすることができる。
【0075】
図1、
図2、
図4~
図6に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は外側容器3を備えている。このため、内側容器2の外面を利用して、外側流路32を区画することができる。すなわち、内側容器2の壁部(側周壁部20、端壁部21)を隔てて、内側に収容部22を、外側に外側流路32を区画することができる。このため、省スペース性に優れている。
【0076】
図3に示すように、内側容器2の内部(収容部22)には、複数の伝熱部材5、複数の直接支持部材7が、入り組んで配置されている。このため、収容部22の形状は複雑である。この点、初期状態における蓄熱体4は、蓄熱材顆粒の集合体(粉状体)である。このため、初期状態から初回の放熱時(水和反応時)において蓄熱体4が膨張する際、蓄熱材顆粒は、適度に解砕しながら(例えば、蓄熱材顆粒は、塊状体(複数の蓄熱材粒子の結合体)や蓄熱材粒子などに、崩壊しながら)、収容部22の形状に沿って、収容部22の隅々にまで行き渡ることができる。したがって、収容部22の形状が複雑であるにもかかわらず、収容部22にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。
【0077】
また、蓄熱体4が適度に解砕しながら膨張するため、蓄熱体4が成形体(蓄熱材粒子や蓄熱材顆粒のプレス成形体を焼成したもの。本開示の「蓄熱体」の概念には、当該成形体も含まれる。)である場合と比較して、膨張圧を小さくすることができる。したがって、内側容器2や収容部22に配置されている各部材(伝熱部材5、直接支持部材7)に過度な耐圧構造(例えば、壁部の壁厚増加、補強、材料変更など)を付与する必要がない。
【0078】
<第二実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、内側容器が二部品構造を呈している点である。ここでは、主に相違点について説明する。
図8に、本実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図を示す。なお、
図6と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0079】
内側容器2の側周壁部20は、壁部本体20Cと、有孔部材20Dと、を備えている。壁部本体20Cには、取付孔200Cが開設されている。前出の
図4を参照して、取付孔200Cの前後両端は、側周壁部20自体の前後両端に対応している。
図8に示すように、取付孔200Cの周方向両端は、側周壁部20の上半分に含まれている。
【0080】
取付孔200Cには、有孔部材20Dが取り付けられている。有孔部材20Dは、パンチングメタルである。すなわち、有孔部材20Dには、複数の貫通孔201が開設されている。
【0081】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本開示の化学蓄熱装置1によると、内側容器2に、直接、複数の貫通孔201を開設する必要がない。このため、内側容器2を簡単に製造することができる。
【0082】
壁部本体20C、有孔部材20Dは、共に金属製である。このため、壁部本体20Cと有孔部材20Dとの接合が容易である。また、有孔部材20Dは、パンチングメタルである。このため、有孔部材20Dとして金網を用いる場合と比較して、貫通孔201が目開きしにくい。
【0083】
<第三実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、第一区間のみならず、第二区間にまで、貫通孔が配置されている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
図9に、本実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図を示す。なお、
図6と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0084】
図9に示すように、第二区間20Bには、複数の貫通孔201が開設されている。なお、第二区間20Bの貫通孔201の形状(孔軸方向形状、孔断面方向形状)は、第一区間20Aの貫通孔201の形状と、同一である。
【0085】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。第二区間20Bは、第一区間20Aよりも、貫通孔201の開口率が低い。このため、第二区間20Bの貫通孔201の開口率が、第一区間20Aの貫通孔201の開口率と同じ場合と比較して、貫通孔201を介して収容部22から蓄熱体4が流出するのを、抑制することができる。したがって、蓄熱密度の低下を抑制することができる。
【0086】
また、第一区間20Aに加えて、第二区間20Bにも、複数の貫通孔201が開設されている。第二区間20Bの貫通孔201は、収容部22の蓄熱体4に向かって開口している。このため、第二区間20Bの貫通孔201を介して、蓄熱体4の外面に水蒸気を供給することができる。また、第二区間20Bの貫通孔201を介して、蓄熱体4の外面から水蒸気を回収することができる。
【0087】
また、複数の貫通孔201は、第一区間20A、第二区間20Bの全体に亘って、所定間隔ずつ離間して、分布している。このため、水蒸気を蓄熱体4の全体に拡散させやすい。また、蓄熱体4の全体から水蒸気を回収しやすい。
【0088】
本実施形態の化学蓄熱装置1のように、第一区間20Aおよび第二区間20Bに、同一の断面積を有する貫通孔201を配置してもよい。そして、第一区間20Aと第二区間20Bとの間で、貫通孔201の配置数に差を設けることにより、第一区間20Aの開口率を、第二区間20Bの開口率よりも、高くしてもよい。
【0089】
また、本実施形態の化学蓄熱装置1において、側周壁部20の上端から下端に向かって、貫通孔201の配置数を、徐々に減少させてもよい。この場合であっても、第一区間20Aの開口率を、第二区間20Bの開口率よりも、高くすることができる。
【0090】
<第四実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、外側容器の内部に、複数の内側容器が配置されている点である。また、直接支持部材が配置されていない点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0091】
図10に、本実施形態の化学蓄熱装置の斜視図を示す。
図11に、同化学蓄熱装置の分解斜視図を示す。
図12に、同化学蓄熱装置の部分透過斜視図を示す。
図13に、同化学蓄熱装置の複数の内側容器、伝熱部材、複数の間接支持部材の分解斜視図を示す。
図14に、同化学蓄熱装置の前後方向断面図を示す。
図15に、
図14のXV-XV方向断面図を示す。
図16に、
図15の枠XVI内の拡大図を示す。なお、
図14は、
図15のXIV-XIV方向断面に対応する。
【0092】
これらの図において、
図1(
図10に対応)、
図2(
図11に対応)、
図3(
図12に対応)、
図4(
図14に対応)、
図6(
図15に対応)と対応する部位については、同じ符号で示す。また、
図10においては、外側容器3の内部の内側容器2、伝熱部材5、伝熱部材取付板81、間接支持部材87を点線で示す。
図11、
図13においては、第一区間20Aと第二区間20Bとを互いに異なる方向の点線ハッチングで示す。
図12においては、伝熱部材取付板81、間接支持部材87を透過して、内側容器2を示す。また、蓄熱体4を省略する。
【0093】
[化学蓄熱装置の構成]
まず、本実施形態の化学蓄熱装置1の構成について説明する。
図10~
図16に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は、複数の内側容器2と、外側容器3と、蓄熱体4と、伝熱部材5と、反応媒体給排管80と、伝熱部材取付板81と、熱媒体給排筒82と、隔壁83と、熱媒体供給管84と、熱媒体排出管85と、端板86と、複数の間接支持部材87と、二つの脚部88と、を備えている。
【0094】
(内側容器2)
図10~
図16に示すように、内側容器2は、金属製であって、前後方向(水平方向)に延在する有底円筒状を呈している。すなわち、内側容器2の筒軸A1(
図15、
図16参照)は、前後方向に延在している。複数の内側容器2は、前後方向に所定間隔ずつ離間して、後述する伝熱部材5の直管部50に環装されている。内側容器2は、側周壁部20と、前後二つの端壁部21と、収容部22と、を備えている。側周壁部20は、前後方向に延在する円筒状を呈している。端壁部21は、上下左右方向(垂直方向)に拡がる円板状を呈している。前側の端壁部21は側周壁部20の前端開口を、後側の端壁部21は側周壁部20の後端開口を、各々封止している。端壁部21の径方向中央には、後述する伝熱部材5が挿通されている。内側容器2の壁部(側周壁部20、前後二つの端壁部21)の内部には、収容部22が区画されている。
【0095】
図12、
図15、
図16に示すように、側周壁部20は、第一区間20Aと、第二区間20Bと、を備えている。第一区間20A、第二区間20Bの構成、配置は、前出の
図6、
図7同様である。すなわち、
図7に示すように、第一区間20Aは、側周壁部20において、法線方向Y1が、重力方向成分Y2Bを含まない区間である。第二区間20Bは、側周壁部20において、法線方向Y1が、重力方向成分Y2Bを含む区間である。
【0096】
側周壁部20は、複数の貫通孔201を備えている。複数の貫通孔201は、側周壁部20の前後方向全長に亘って、配置されている。全ての貫通孔201は、第一区間20Aの全体に亘って、開設されている。第二区間20Bには、貫通孔201が開設されていない。したがって、第一区間20Aは、第二区間20Bよりも、貫通孔201の開口率が高い。
【0097】
(外側容器3)
図10、
図11、
図14、
図15に示すように、外側容器3は、全ての内側容器2を、外側(筒軸A2を中心とする径方向外側および後側(軸方向一方))から覆っている。外側容器3は、側周壁部30と、端壁部31と、を備えている。側周壁部30は、前後方向に延在する円筒状を呈している。外側容器3は、外側流路32を区画している。具体的には、外側流路32は、外側容器3の内面と、複数の内側容器2の外面と、の間に区画されている。
【0098】
(伝熱部材5)
図10~
図16に示すように、伝熱部材5は、前端部(後述する伝熱部材取付板81の取付孔810に固定されている部分)を除いて、外側容器3に収容されている。伝熱部材5は、金属製であって、U字の円管状を呈している。すなわち、伝熱部材5は、二つの直管部50と、曲管部51と、を備えている。前述したように、直管部50には、複数の内側容器2が環装されている。
【0099】
(間接支持部材87)
図10~
図16に示すように、複数の間接支持部材87は、内側容器2の側周壁部20と、外側容器3の側周壁部30と、の間に配置されている。間接支持部材87により、側周壁部20と側周壁部30の間に外側流路32が確保されている。複数の間接支持部材87は、前後方向に、所定間隔ずつ離間して配置されている。間接支持部材87は、金属製であって、上下左右方向(垂直方向)に延在する円板状を呈している。
図11、
図13、
図15に示すように、間接支持部材87は、左右二つの開口部870と、上下二つの支持孔871と、を備えている。二つの開口部870、二つの支持孔871は、各々、間接支持部材87を前後方向に貫通している。開口部870を介して、外側流路32の各部は、前後方向に互いに連通している。支持孔871には、内側容器2の側周壁部20が挿通されている。支持孔871つまり間接支持部材87は、側周壁部20を支持している。また、間接支持部材87は、側周壁部20を位置決めしている。また、間接支持部材87は、内側容器2を介して、伝熱部材5を間接的に支持している。また、間接支持部材87は、内側容器2を介して、伝熱部材5を間接的に位置決めしている。
【0100】
(反応媒体ルートR1、熱媒体ルートR2)
図14、
図15に示すように、化学蓄熱装置1の外部と、収容部22の蓄熱体4と、の間には、外部から蓄熱体4に向かって、反応媒体給排管80、外側流路32、貫通孔201を経由する、水蒸気用の反応媒体ルートR1が設定されている。
【0101】
熱媒体供給管84と熱媒体排出管85との間には、熱媒体供給管84から熱媒体排出管85に向かって、供給室830、熱媒体流路52、排出室831を経由する、熱媒体用の熱媒体ルートR2が設定されている。
【0102】
[作用効果]
次に、本実施形態の化学蓄熱装置1の作用効果について説明する。本実施形態の化学蓄熱装置1と第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。
【0103】
図10に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1によると、単一の外側容器3に対して、複数の内側容器2が配置されている。このため、内側容器2の配置数が単一の場合と比較して、複数の内側容器2に蓄熱体4を分配することができる。したがって、蓄熱体4に対する水蒸気の拡散性を向上させることができる。
【0104】
図16に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1によると、単一の内側容器2に対して、単一の伝熱部材5が配置されている。このため、伝熱部材5の配置数が複数の場合と比較して、蓄熱体4に対する水蒸気の拡散性が伝熱部材5により阻害されにくい。したがって、水蒸気の拡散性を向上させることができる。
【0105】
図14、
図15に示すように、間接支持部材87は、内側容器2、蓄熱体4を介して、伝熱部材5を間接的に支持している。言い換えると、間接支持部材87は、内側容器2を介して、蓄熱体4および伝熱部材5を間接的に支持している。このため、蓄熱体4に対する伝熱部材5の位置が変化しにくい。よって、蓄熱体4の全体から伝熱部材5に、熱を回収しやすい。また、伝熱部材5から蓄熱体4の全体に、熱を供給しやすい。
【0106】
<第五実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、伝熱部材が、蓄熱体を、前後方向に二回通過している点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0107】
図17に、本実施形態の化学蓄熱装置の前後方向(軸方向)断面図を示す。なお、
図4と対応する部位については、同じ符号で示す。また、内側容器2を部分断面図で示す。第一区間20Aには、全体に亘って、複数の貫通孔201が配置されている。第二区間20Bには、貫通孔201が配置されていない。
【0108】
伝熱部材5の直管部50は、内側容器2の後端部から、後側(外側流路32)に突出している。このため、伝熱部材5の一対の直管部50は、各々、前後方向に蓄熱体4を貫通している。すなわち、伝熱部材5は、合計二回、蓄熱体4を通過している。
【0109】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の化学蓄熱装置1のように、任意の単一の伝熱部材5が、合計二回、蓄熱体4を通過してもよい。すなわち、蓄熱体4に対する伝熱部材5のパス数を、複数回に設定してもよい。
【0110】
<第六実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、伝熱部材が、U字管状ではなく、直管状を呈している点である。また、反応媒体給排管の代わりに、反応媒体供給管および反応媒体排出管が配置されている点である。また、熱媒体給排筒の代わりに、熱媒体供給筒および熱媒体排出筒が配置されている点である。また、前出の
図9に示すように、第一区間のみならず、第二区間にも、貫通孔が配置されている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0111】
図18に、本実施形態の化学蓄熱装置の前後方向(軸方向)断面図を示す。なお、
図4と対応する部位については、同じ符号で示す。また、内側容器2を部分断面図で示す。
図19に、
図18の枠XIX内の拡大図を示す。第一区間20A、第二区間20Bには、全体に亘って、複数の貫通孔201が配置されている。第一区間20Aの貫通孔201は、第二区間20Bの貫通孔201よりも、断面積(開口面積)が大きい。第一区間20Aと第二区間20Bとの間で、貫通孔201の配置数は同一である。
【0112】
外側容器3は、金属製であって、前後方向に延在する円筒状を呈している。外側容器3は、前後方向に開口している。外側容器3の前後両端部の開口は、各々、伝熱部材取付板81a、81bにより、封止されている。
【0113】
側周壁部30の前端部の下側部分には、第一の取付孔300が開設されている。取付孔300には、短軸円管状の反応媒体供給管80aが取り付けられている。反応媒体供給管80aを介して、外側容器3の外部から外側流路32に、水蒸気が供給される。
【0114】
側周壁部30の後端部の上側部分には、第二の取付孔300が開設されている。取付孔300には、短軸円管状の反応媒体排出管80bが取り付けられている。反応媒体排出管80bを介して、外側流路32から外側容器3の外部に、水蒸気が排出される。
【0115】
熱媒体排出筒82aは、金属製であって、前後方向に延在する短軸円筒状を呈している。熱媒体排出筒82aは、前側の伝熱部材取付板81aの前側に配置されている。伝熱部材取付板81aは、熱媒体排出筒82aの後端開口を封止している。端板86aは、熱媒体排出筒82aの前端開口を封止している。
【0116】
熱媒体排出筒82aの内部には、排出室831が区画されている。熱媒体排出筒82aの上側部分には、取付孔820aが開設されている。取付孔820aには、熱媒体排出管85が取り付けられている。熱媒体排出管85を介して、排出室831から熱媒体排出筒82aの外部に、熱媒体が排出される。
【0117】
熱媒体供給筒82bは、金属製であって、前後方向に延在する短軸円筒状を呈している。熱媒体供給筒82bは、後側の伝熱部材取付板81bの後側に配置されている。伝熱部材取付板81bは、熱媒体供給筒82bの前端開口を封止している。端板86bは、熱媒体供給筒82bの後端開口を封止している。
【0118】
熱媒体供給筒82bの内部には、供給室830が区画されている。熱媒体供給筒82bの下側部分には、取付孔820bが開設されている。取付孔820bには、熱媒体供給管84が取り付けられている。熱媒体供給管84を介して、熱媒体供給筒82bの外部から供給室830に、熱媒体が供給される。
【0119】
伝熱部材5は、直管状を呈している。伝熱部材5の前端(下流端)は、前側の伝熱部材取付板81aに取り付けられている。伝熱部材5の後端(上流端)は、後側の伝熱部材取付板81bに取り付けられている。伝熱部材5は、蓄熱体4を経由して、後側の供給室830と、前側の排出室831と、を連通している。伝熱部材5は、前後方向に蓄熱体4を一回だけ貫通している。
【0120】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の化学蓄熱装置1のように、任意の単一の伝熱部材5が、一回だけ蓄熱体4を通過してもよい。すなわち、蓄熱体4に対する伝熱部材5のパス数を、一回に設定してもよい。
【0121】
本実施形態の化学蓄熱装置1のように、反応媒体供給管80a、外側流路32、第二区間20Bの複数の貫通孔201、収容部22の蓄熱体4、第一区間20Aの複数の貫通孔201、外側流路32、反応媒体排出管80bを経由する、水蒸気用の反応媒体ルートR1を設定してもよい。
【0122】
放熱時(水和反応時)において、水蒸気は、反応媒体供給管80a、外側流路32、第二区間20Bの複数の貫通孔201を介して、外部から蓄熱体4に供給される。蓄熱時(脱水反応時)において、水蒸気は、第一区間20Aの複数の貫通孔201、外側流路32、反応媒体排出管80bを介して、蓄熱体4から外部に排出される。このように、一方通行式の反応媒体ルートR1を設定してもよい。
【0123】
本実施形態の化学蓄熱装置1のように、熱媒体の供給系(熱媒体供給筒82b、供給室830、熱媒体供給管84)と排出系(熱媒体排出筒82a、排出室831、熱媒体排出管85)とを、別々に配置してもよい。
【0124】
本実施形態の化学蓄熱装置1のように、第一区間20Aおよび第二区間20Bに、異なる断面積(開口面積)を有する貫通孔201を配置してもよい。そして、第一区間20Aと第二区間20Bとの間で、貫通孔201の配置数を同一にすることにより、第一区間20Aの開口率を、第二区間20Bの開口率よりも、高くしてもよい。
【0125】
また、本実施形態の化学蓄熱装置1において、側周壁部20の上端から下端に向かって、貫通孔201の断面積を、徐々に減少させてもよい。この場合であっても、第一区間20Aの開口率を、第二区間20Bの開口率よりも、高くすることができる。
【0126】
<第七実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、内側容器が、直筒状ではなく、U字筒状を呈している点である。また、直接支持部材が配置されていない点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0127】
図20に、本実施形態の化学蓄熱装置の前後方向(軸方向)断面図を示す。なお、
図4と対応する部位については、同じ符号で示す。また、内側容器2を部分断面図で示す。また、第一区間20Aと第二区間20Bとを互いに異なる方向の点線ハッチングで示す。第一区間20Aには、全体に亘って、複数の貫通孔201(前出の
図1、
図5~
図7参照)が配置されている。第二区間20Bには、貫通孔201が配置されていない。
【0128】
内側容器2は、金属製であって、U字の円筒状を呈している。すなわち、内側容器2の側周壁部20は、二つの直筒部23と、曲筒部24と、を備えている。直筒部23は、前後方向に延在している。二つの直筒部23は、上下方向に対向して配置されている。曲筒部24は、後側に膨らむC字状に延在している。曲筒部24は、二つの直筒部23の後端部同士を連結している。
【0129】
第一区間20Aは、上側の直筒部23の上半分、下側の直筒部23の上半分、曲筒部24の上半分の外側部分(曲筒部24の曲率中心A4を中心とする円の径方向外側部分)、曲筒部24の下半分の内側部分(曲筒部24の曲率中心A4を中心とする円の径方向内側部分)に配置されている。
【0130】
第二区間20Bは、側周壁部20における、第一区間20A以外の部分に配置されている。すなわち、第二区間20Bは、上側の直筒部23の下半分、下側の直筒部23の下半分、曲筒部24の上半分の内側部分、曲筒部24の下半分の外側部分に配置されている。
【0131】
伝熱部材5は、U字の円管状を呈している。伝熱部材5は、前端部(伝熱部材取付板81の取付孔810に固定されている部分)を除いて、収容部22に収容されている。伝熱部材5は、内側容器2つまり蓄熱体4の内部に配置されている。複数の間接支持部材87は、前後方向に、所定間隔ずつ離間して配置されている。間接支持部材87は、上下二つの支持孔871を備えている。支持孔871は、間接支持部材87を前後方向に貫通している。二つの支持孔871には、内側容器2の二つの直筒部23が挿通されている。二つの支持孔871つまり間接支持部材87は、二つの直筒部23を支持している。また、間接支持部材87は、二つの直筒部23を位置決めしている。また、間接支持部材87は、内側容器2を介して、伝熱部材5を間接的に支持している。また、間接支持部材87は、内側容器2を介して、伝熱部材5を間接的に位置決めしている。
【0132】
化学蓄熱装置1の外部と、収容部22の蓄熱体4と、の間には、外部から蓄熱体4に向かって、反応媒体給排管80、外側流路32、貫通孔201(前出の
図1、
図5~
図7参照)を経由する、水蒸気用の反応媒体ルートR1が設定されている。
【0133】
熱媒体供給管84と熱媒体排出管85との間には、熱媒体供給管84から熱媒体排出管85に向かって、供給室830、熱媒体流路52、排出室831を経由する、熱媒体用の熱媒体ルートR2が設定されている。
【0134】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。収容部22には、
図4に示す直接支持部材7が配置されていない。このため、収容部22内の蓄熱密度を大きくすることができる。また、化学蓄熱装置1の部品点数を削減し、構造を簡単にすることができる。
【0135】
また、収容部22に直接支持部材7が配置されている場合と比較して、収容部22の形状を単純にすることができる。このため、蓄熱体4を、収容部22の隅々にまで充填することができる。したがって、収容部22にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。
【0136】
本実施形態の化学蓄熱装置1のように、内側容器2の側周壁部20がU字状を呈している場合、第一区間20A、第二区間20Bの配置が、曲筒部24の曲率中心A4を基準に、外周面204の途中で上下反転してもよい。
【0137】
<その他>
以上、本開示の化学蓄熱装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0138】
図21(A)~
図21(D)に、その他の実施形態(その1~その4)の化学蓄熱装置の軸直方向断面図を示す。なお、
図6と対応する部位については、同じ符号で示す。また、側周壁部20の外周面204において、第一区間20Aを太線で示す。外周面204における太線以外の部分は、第二区間20Bである。第一区間20Aには、全体に亘って、複数の貫通孔201(前出の
図1、
図5~
図7参照)が配置されている。第二区間20Bには、貫通孔201が配置されていない。
【0139】
図21(A)に示すように、内側容器2の側周壁部20、外側容器3の側周壁部30は、各々、四角形筒状であってもよい。第一区間20Aは、側周壁部20の上壁、左壁、右壁に配置されている。第二区間20Bは、側周壁部20の下壁に配置されている。収容部22には、複数の伝熱部材5が配置されている。
【0140】
図21(B)に示すように、内側容器2の側周壁部20、外側容器3の側周壁部30は、各々、八角形筒状であってもよい。第一区間20Aは、側周壁部20の上壁、左壁、右壁、左上壁、右上壁に配置されている。第二区間20Bは、側周壁部20の下壁、左下壁、右下壁に配置されている。収容部22には、複数の伝熱部材5が配置されている。
【0141】
図21(C)に示すように、内側容器2の側周壁部20は、楕円筒状であってもよい。外側容器3の側周壁部30は、四角形筒状であってもよい。すなわち、側周壁部20の形状と側周壁部30の形状とは、一致(相似)していても、異なっていてもよい。第一区間20Aは、側周壁部20の上半分に配置されている。第二区間20Bは、側周壁部20の下半分に配置されている。収容部22には、複数の伝熱部材5が配置されている。
【0142】
図21(D)に示すように、内側容器2の側周壁部20、外側容器3の側周壁部30は、各々、角部に面取部を有する、四角形筒状であってもよい。第一区間20Aは、側周壁部20の上壁、左壁、右壁、左上壁(面取部)、右上壁(面取部)に配置されている。第二区間20Bは、側周壁部20の下壁、左下壁(面取部)、右下壁(面取部)に配置されている。収容部22には、単一の伝熱部材5が配置されている。
【0143】
図21(A)~
図21(D)に示すように、側周壁部20、30の形状は特に限定しない。側周壁部20、30は、円形(真円形、楕円形)、多角形(三角形、四角形、六角形、八角形など)などであってもよい。側周壁部20、30の形状は、同一(つまり相似形)であっても、異なっていてもよい。収容部22における伝熱部材5の配置数は、単一であっても、複数であってもよい。
【0144】
[初期状態について]
前述のとおり、初期状態とは、収容部22に伝熱部材5が配置された状態で、収容部22に収容された蓄熱体4が未だ一度も水和反応していない状態をいう。収容部22に伝熱部材5が配置される前の状態における、蓄熱体4の水和反応履歴は特に限定しない。収容部22に伝熱部材5が配置される前に、蓄熱体4を水和反応させてもよい。
【0145】
[構造]
上述の実施形態の化学蓄熱装置1のうち、任意の実施形態の化学蓄熱装置1の部材は、他の実施形態の化学蓄熱装置1に、組み込むことができる。例えば、
図9に示す第二区間20Bを、
図6、
図8、
図16、
図17、
図20、
図21(A)~
図21(D)のいずれかに示す内側容器2に組み込んでもよい。すなわち、これらの内側容器2の第二区間20Bに、貫通孔201を配置してもよい。
図8に示す有孔部材20Dを、
図6、
図9、
図16~
図21(D)のいずれかに示す内側容器2に組み込んでもよい。
【0146】
(内側容器2、外側容器3)
内側容器2の形状は特に限定しない。直筒状(I字筒状)、曲筒状(C字筒状、S字筒状など)、直筒部と曲筒部とを適宜組み合わせた形状(J字筒状、U字筒状など)であってもよい。円(真円形、楕円形など)筒状、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形など)筒状であってもよい。内側容器2が直筒状の場合、内側容器2の軸方向は特に限定しない。水平方向、垂直方向(重力方向)、水平方向および垂直方向に対して傾斜する方向であってもよい。内側容器2に関する上述の事項は、外側容器3についても同様である。
【0147】
側周壁部20に対する貫通孔201の形成方法は特に限定しない。エッチング、パンチングなどにより形成してもよい。有孔部材20Dの種類は特に限定しない。金属製のエッチングフィルタ、金網、パンチングメタル、多孔質体(例えばセラミック製)、汎用フィルタ、不織布(例えば樹脂製)などであってもよい。有孔部材20Dは、取付孔200Cにはめ込まれていてもよい。有孔部材20Dは、取付孔200Cを覆うように、壁部本体20Cの外周面204に巻装されていてもよい。有孔部材20Dにおける複数の貫通孔201の配置は特に限定しない。有孔部材20Dの全体に複数の貫通孔201が配置されていてもよい。有孔部材20Dの一部(例えば、第一区間20Aに対応する部分)だけに、複数の貫通孔201が配置されていてもよい。取付孔200C(つまり有孔部材20D)は、側周壁部20の上半分のみならず下半分にまで延在していてもよい。
【0148】
貫通孔201の形状等(孔軸方向形状、孔断面方向形状、サイズなど)は特に限定しない。孔軸方向形状は、直線状、曲線状、これらを組み合わせた形状であってもよい。孔断面方向(孔軸方向に対して直交する方向)形状は、円形(真円形、楕円形)、多角形(三角形、四角形、六角形、八角形など)などであってもよい。
【0149】
第一区間20Aの全部に貫通孔201が開設されていてもよい。勿論、第一区間の一部に貫通孔201が開設されていてもよい。複数の貫通孔201間において、形状等(孔軸方向形状、孔断面方向形状、サイズなど)は、同一であっても、異なっていてもよい。側周壁部20の外周面204に占める貫通孔201の開口率は、2%以上であっても、2%未満であってもよい。第一区間20Aに関する上述の事項は、第二区間20Bについても同様である。また、第一区間20Aと第二区間20Bとの間において、貫通孔201の形状等は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0150】
貫通孔201の開口率について、第一区間20Aの開口率を、第二区間20Bの開口率よりも、高くする方法は特に限定しない。例えば、
図9に示すように、第一区間20Aおよび第二区間20Bに、同一の断面積を有する貫通孔201を配置してもよい。そして、第一区間20Aと第二区間20Bとの間で、貫通孔201の配置数に差を設けることにより、第一区間20Aの開口率を、第二区間20Bの開口率よりも、高くしてもよい。また、側周壁部20の上端から下端に向かって、貫通孔201の配置数を、徐々に減少させてもよい。
【0151】
また、
図18に示すように、第一区間20Aおよび第二区間20Bに、異なる断面積(開口面積)を有する貫通孔201を配置してもよい。そして、第一区間20Aと第二区間20Bとの間で、貫通孔201の配置数を同一にすることにより、第一区間20Aの開口率を、第二区間20Bの開口率よりも、高くしてもよい。また、側周壁部20の上端から下端に向かって、貫通孔201の断面積を、徐々に減少させてもよい。
【0152】
このように、貫通孔201の配置数、断面積のうち少なくとも一方を調整することにより、第一区間20Aの開口率を、第二区間20Bの開口率よりも、高くしてもよい。
図9に示す化学蓄熱装置1と
図18に示す化学蓄熱装置1との間で、第一区間20A、第二区間20Bにおける貫通孔201の配置パターンを置換してもよい。勿論、
図9、
図18に示す貫通孔201の配置パターンを、他の図に示す化学蓄熱装置1に組み込んでもよい。
【0153】
外側容器3の形状と内側容器2の形状とは、同一であっても異なっていてもよい。例えば、外側容器3が多角形筒状、内側容器2が円筒状であってもよい。あるいは、その逆であってもよい。また、外側容器3と内側容器2とは、同軸上に配置されていても、配置されていなくてもよい。すなわち、外側容器3の筒軸A2と内側容器の筒軸A1とは、一致していても異なっていてもよい。互いの筒軸A1、A2が異なる場合、二つの筒軸A1、A2は、平行に配置されていても、互いに交差する方向に配置されていてもよい。外側容器3に対する内側容器2の配置数は特に限定しない。単一の外側容器3に対して、単一または複数の内側容器2を配置してもよい。
【0154】
(伝熱部材5)
伝熱部材5の形状は特に限定しない。伝熱部材5が管状である場合、直管状(I字管状)、曲管状(C字管状、S字管状など)、直管部と曲管部とを適宜組み合わせた形状(J字管状、U字管状など)であってもよい。円形管状、多角形管状であってもよい。伝熱部材5は、内部に熱媒体流路52を区画し、外面が蓄熱体4に当接する中空板状であってもよい。また、伝熱部材5は、内部に環状の熱媒体流路52を区画し、外面および内面が蓄熱体4に当接する二重管状(外周壁部の形状と内周壁部の形状とは、同一でも異なっていてもよい)であってもよい。伝熱部材5が直管状、平板状の場合、伝熱部材5の軸方向は特に限定しない。水平方向、垂直方向、水平方向および垂直方向に対して傾斜する方向であってもよい。また、蓄熱体4の内部における伝熱部材5の配置数は特に限定しない。単一でも複数でもよい。また、蓄熱体4の内部に対する伝熱部材5のパス数は特に限定しない。単一でも複数でもよい。また、蓄熱体4の内部における伝熱部材5の位置は特に限定しない。また、伝熱部材5の外面(蓄熱体4に当接する面)および内面(熱媒体に当接する面)のうち少なくとも一方に、伝熱面積拡張部材(フィンなど)を配置してもよい。
【0155】
(支持部材)
直接支持部材7の形状は特に限定しない。板状、棒状などであってもよい。収容部22における直接支持部材7の配置数は特に限定しない。単一でも複数でもよい。直接支持部材7は、内側容器2と別部材であってもよい。また、直接支持部材7は、内側容器2と一体化されていてもよい。伝熱部材5の配置数と、直接支持部材7の配置数と、は同一でも異なっていてもよい。単一の伝熱部材5を複数の直接支持部材7で支持してもよい。複数の伝熱部材5を単一の直接支持部材7で支持してもよい。複数の伝熱部材5を複数の直接支持部材7で支持してもよい。収容部22における直接支持部材7の位置は特に限定しない。伝熱部材5の軸方向長さ、強度、複数の部屋220の容積などを考慮して、直接支持部材7の位置を決めればよい。化学蓄熱装置1に、直接支持部材7が配置されていなくてもよい。
【0156】
間接支持部材87の形状は特に限定しない。板状、棒状などであってもよい。外側流路32における間接支持部材87の配置数は特に限定しない。単一でも複数でもよい。間接支持部材87は、内側容器2、外側容器3と別部材であってもよい。間接支持部材87は、内側容器2または外側容器3と一体化されていてもよい。内側容器2の配置数と、間接支持部材87の配置数と、は同一でも異なっていてもよい。単一の内側容器2を複数の間接支持部材87で支持してもよい。複数の内側容器2を単一の間接支持部材87で支持してもよい。複数の内側容器2を複数の間接支持部材87で支持してもよい。外側流路32における間接支持部材87の位置は特に限定しない。内側容器2の軸方向長さ、強度などを考慮して、間接支持部材87の位置を決めればよい。化学蓄熱装置1に、間接支持部材87が配置されていなくてもよい。開口部870の形状、配置数、位置などは特に限定しない。外側流路32の全体が、開口部870を介して、連通すればよい。
【0157】
[材料]
化学蓄熱装置1を構成する各部材(内側容器2、外側容器3、伝熱部材5、直接支持部材7、間接支持部材87、反応媒体給排管80、反応媒体供給管80a、反応媒体排出管80b、伝熱部材取付板81、81a、81b、熱媒体給排筒82、熱媒体排出筒82a、熱媒体供給筒82b、隔壁83、熱媒体供給管84、熱媒体排出管85、端板86、86a、86b)の材質は特に限定しない。強度、比熱、作動温度などを考慮して、金属(例えば、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、鉄など)、セラミック、樹脂などを用いればよい。
【0158】
蓄熱体4の蓄熱材粒子に用いられる化学蓄熱材の種類は特に限定しない。例えば、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Baなど)の化合物(酸化物、水酸化物、炭酸化物、塩化物、硫酸化物など)であってもよい。化合物は、アルカリ土類金属を一種以上含んでいればよい。具体的には、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、マグネシウムとカルシウムの複合水酸化物、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、マグネシウムとカルシウムの複合酸化物などであってもよい。
【0159】
蓄熱材粒子の平均一次粒子径は特に限定しない。例えば、0.1μm以上10μm以下であればよい。平均一次粒子径は、例えば、レーザー回折法により求められる蓄熱材粒子の粒度分布(粒径分布)のメディアン径である。
【0160】
蓄熱体4に含まれる粘土鉱物の種類は特に限定しない。例えば、セピオライト、アタパルジャイト、カオリナイト、ベントナイトなどであってもよい。これらの粘土鉱物は、単体で、あるいは二種以上混合して、用いることができる。粘土鉱物の繊維径は特に限定しない。
【0161】
蓄熱体4の形態は特に限定しない。粉体状であっても、塊状であってもよい。塊状の場合、成形体(蓄熱材粒子や蓄熱材顆粒のプレス成形体を焼成したもの)であってもよい。反応媒体の種類は特に限定しない。化学蓄熱材の種類に応じて、例えば、水蒸気(水)、アンモニアなどを用いることができる。熱媒体の種類は特に限定しない。例えば、水蒸気(水)、オイル(シリコンオイルなど)、空気、溶融塩などを用いることができる。反応媒体、熱媒体は、気体でも液体でもよい。流動性を有していればよい。
【符号の説明】
【0162】
1:化学蓄熱装置、2:内側容器、20:側周壁部、20A:第一区間、20B:第二区間、20C:壁部本体、20D:有孔部材、200C:取付孔、201:貫通孔、204:外周面(外面)、21:端壁部、22:収容部、220:部屋、23:直筒部、24:曲筒部、3:外側容器、30:側周壁部、31:端壁部、32:外側流路、300:取付孔、310:取付孔、4:蓄熱体、5:伝熱部材、50:直管部、51:曲管部、52:熱媒体流路、7:直接支持部材、70:支持孔、80:反応媒体給排管、80a:反応媒体供給管、80b:反応媒体排出管、81:伝熱部材取付板、81a:伝熱部材取付板、81b:伝熱部材取付板、810:取付孔、82:熱媒体給排筒、82a:熱媒体排出筒、82b:熱媒体供給筒、820:取付孔、820a:取付孔、820b:取付孔、83:隔壁、830:供給室、831:排出室、84:熱媒体供給管、85:熱媒体排出管、86:端板、86a:端板、86b:端板、87:間接支持部材、870:開口部、871:支持孔、88:脚部、A1:筒軸、A2:筒軸、A4:曲率中心、R1:反応媒体ルート、R2:熱媒体ルート、Y1:法線方向、Y2A:反重力方向成分、Y2B:重力方向成分、Y3:水平方向成分