(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014527
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ゲームシステム、無線捕捉装置、及びゲームの制御方法
(51)【国際特許分類】
A63F 13/21 20140101AFI20240125BHJP
A63F 13/42 20140101ALI20240125BHJP
【FI】
A63F13/21
A63F13/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117425
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508236240
【氏名又は名称】公立大学法人公立はこだて未来大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 信也
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】石田 繁巳
(57)【要約】
【課題】本開示はゲームシステムに関し、ゲームを行うユーザの位置の自由度を高くすることができ、コントローラへのバッテリー搭載が不要となるゲームシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示のゲームシステムは、2以上のアンテナを有する第一無線装置と、第一無線装置と無線通信を行う第二無線装置と、これらの無線装置間の無線信号を捕捉し、無線通信エリア内のユーザの動作またはコントローラの動きを検出する無線捕捉装置と、ゲーム機とを備える。無線捕捉装置は、無線伝搬路の情報を含む無線フレームを捕捉し、無線伝搬路の情報を抽出し、無線通信エリア内でユーザが行ったゲーム操作、またはコントローラ操作を判定する処理を行う。また判定された操作内容をラベルデータとしてゲーム機に伝送する。ゲーム機は、無線捕捉装置から伝送されたラベルデータに基づきゲームを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を利用してユーザの動作またはコントローラの動きを検出するゲームシステムであって、
2以上のアンテナを有する第一無線装置と、
前記第一無線装置と無線通信を行う第二無線装置と、
前記無線通信の信号を捕捉し、前記無線通信のエリア内のユーザの動作またはコントローラの動きを検出する無線捕捉装置と、
前記無線捕捉装置から伝送される、ゲーム操作を示すラベルデータに基づきゲームを制御するゲーム機と、
を備え、
前記第一無線装置は、前記アンテナから既知の無線フレームを含む無線信号を送信する処理を実行するように構成され、
前記第二無線装置は、
前記既知の無線フレームから、前記第一無線装置と前記第二無線装置間の無線伝搬路の情報を計算する処理と、
前記無線伝搬路の情報を含む無線フレームを前記第一無線装置に返す処理と、
を実行するように構成され、
前記無線捕捉装置は、
前記無線伝搬路の情報を含む無線フレームを捕捉する処理と、
前記無線伝搬路の情報を抽出する処理と、
前記無線伝搬路の情報から、前記無線通信のエリア内でユーザが行ったゲーム操作、またはコントローラ操作を判定する操作判定処理と、
ユーザが行った前記ゲーム操作、または前記コントローラ操作を、ラベルデータとして前記ゲーム機に伝送する処理と、
を実行するように構成され、
前記ゲーム機は、前記無線捕捉装置から伝送された前記ラベルデータに基づき、ゲームを制御する処理を実行するように構成されるゲームシステム。
【請求項2】
前記ゲーム機は、
ユーザに動作を指示する処理と、
ユーザに指示した前記動作を示すラベルデータを前記無線捕捉装置に送信する処理と、
を実行するように構成され、
前記無線捕捉装置は、前記ゲーム機から前記ラベルデータが入力されている場合には、前記無線伝搬路の情報と前記ラベルデータとを対応させた教師データを作成する処理を実行するように構成される請求項1に記載のゲームシステム。
【請求項3】
前記無線捕捉装置は、前記操作判定処理においては、前記教師データを使用した機械学習による判定を行う処理を含む請求項2に記載のゲームシステム。
【請求項4】
前記第二無線装置を複数備える請求項1に記載のゲームシステム。
【請求項5】
前記第一無線装置と前記第二無線装置がカバーする無線通信のエリア内に、障害物をさらに備える請求項4に記載のゲームシステム。
【請求項6】
他の無線装置から発せられる無線伝搬路の情報を含む無線フレームを捕捉する処理と、
前記無線伝搬路の情報を抽出する処理と、
前記無線伝搬路の情報から、ユーザが行ったゲーム操作、またはコントローラ操作を判定する処理と、
ユーザが行った前記ゲーム操作、または前記コントローラ操作を、ラベルデータとして、ゲーム機に伝送する処理と、
を実行するように構成される無線捕捉装置。
【請求項7】
無線通信を利用してユーザの動作またはコントローラの動きを検出するゲームの制御方法であって、
第一無線装置は、2以上のアンテナを有し、前記アンテナから既知の無線フレームを含む無線信号を送信する処理を実行し、
第二無線装置は、
前記第一無線装置から送信された前記既知の無線フレームから、前記第一無線装置と前記第二無線装置間の無線伝搬路の情報を計算する処理と、
前記無線伝搬路の情報を含む無線フレームを前記第一無線装置に返す処理と、
を実行し、
無線捕捉装置は、
前記無線伝搬路の情報を含む無線フレームを捕捉する処理と、
前記無線伝搬路の情報を抽出する処理と、
前記無線伝搬路の情報から、前記第一無線装置と前記第二無線装置の無線通信のエリア内でユーザが行ったゲーム操作、またはコントローラ操作を判定する処理と、
ユーザが行った前記ゲーム操作、または前記コントローラ操作を、ラベルデータとして、ゲーム機に伝送する処理と、
を実行し、
前記ゲーム機は、前記無線捕捉装置から伝送された前記ラベルデータに基づき、ゲームを制御する処理を実行するゲームの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線装置間で通信される無線信号の伝搬路情報から、通信エリア内のユーザの動作またはコントローラの動きを検出して、ゲーム機を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲーム機の制御を行う方法には、ゲーム機に有線で接続されたコントローラを用いる方法、ゲーム機に無線で接続されたコントローラを用いる方法等が知られる。さらに、非特許文献1には、ゲーム機にカメラを接続し、カメラの前でユーザがジェスチャを行うことによりゲーム機の制御を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】Kinectの仕組みとナチュラルユーザインターフェース、映像情報メディア学会誌、Vol.66,No.9,pp.755-759(2012).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ゲーム機に有線で接続されたコントローラを用いる方法、およびカメラの前でユーザがジェスチャを行う方法において、ユーザはゲーム機からある一定の範囲内にいる必要があり、位置の自由度が低いという課題があった。
【0005】
また、ゲーム機に無線で接続されたコントローラを用いる方法では、ユーザの位置の自由度は高くなるものの、コントローラにバッテリーが必要となるという課題があった。
【0006】
本開示は上述の問題を解決するためになされたものであり、ゲームを行うユーザの位置の自由度を高くすることができ、コントローラへのバッテリー搭載が不要となるゲームシステムを提供することを第一の目的とする。
【0007】
更に、本開示は、ゲームを行うユーザの位置の自由度を高くすることができ、コントローラへのバッテリー搭載が不要となる無線捕捉装置を提供することを第二の目的とする。
【0008】
更に、本開示は、ゲームを行うユーザの位置の自由度を高くすることができ、コントローラへのバッテリー搭載が不要となるゲームの制御方法を提供することを第三の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第一の態様は、無線通信を利用してユーザの動作またはコントローラの動きを検出するゲームシステムであって、
2以上のアンテナを有する第一無線装置と、
前記第一無線装置と無線通信を行う第二無線装置と、
前記無線通信の信号を捕捉し、前記無線通信のエリア内のユーザの動作またはコントローラの動きを検出する無線捕捉装置と、
前記無線捕捉装置から伝送される、ゲーム操作を示すラベルデータに基づきゲームを制御するゲーム機と、
を備え、
前記第一無線装置は、前記アンテナから既知の無線フレームを含む無線信号を送信する処理を実行するように構成され、
前記第二無線装置は、
前記既知の無線フレームから、前記第一無線装置と前記第二無線装置間の無線伝搬路の情報を計算する処理と、
前記無線伝搬路の情報を含む無線フレームを前記第一無線装置に返す処理と、
を実行するように構成され、
前記無線捕捉装置は、
前記無線伝搬路の情報を含む無線フレームを捕捉する処理と、
前記無線伝搬路の情報を抽出する処理と、
前記無線伝搬路の情報から、前記無線通信のエリア内でユーザが行ったゲーム操作、またはコントローラ操作を判定する操作判定処理と、
ユーザが行った前記ゲーム操作、または前記コントローラ操作を、ラベルデータとして前記ゲーム機に伝送する処理と、
を実行するように構成され、
前記ゲーム機は、前記無線捕捉装置から伝送された前記ラベルデータに基づき、ゲームを制御する処理を実行するように構成されることが望ましい。
【0010】
また、第二の態様は、他の無線装置から発せられる無線伝搬路の情報を含む無線フレームを捕捉する処理と、
前記無線伝搬路の情報を抽出する処理と、
前記無線伝搬路の情報から、ユーザが行ったゲーム操作、またはコントローラ操作を判定する処理と、
ユーザが行った前記ゲーム操作、または前記コントローラ操作を、ラベルデータとして、ゲーム機に伝送する処理と、
を実行するように構成される無線捕捉装置であることが望ましい。
【0011】
また、第三の態様は、無線通信を利用してユーザの動作またはコントローラの動きを検出するゲームの制御方法であって、
第一無線装置は、2以上のアンテナを有し、前記アンテナから既知の無線フレームを含む無線信号を送信する処理を実行し、
第二無線装置は、
前記第一無線装置から送信された前記既知の無線フレームから、前記第一無線装置と前記第二無線装置間の無線伝搬路の情報を計算する処理と、
前記無線伝搬路の情報を含む無線フレームを前記第一無線装置に返す処理と、
を実行し、
無線捕捉装置は、
前記無線伝搬路の情報を含む無線フレームを捕捉する処理と、
前記無線伝搬路の情報を抽出する処理と、
前記無線伝搬路の情報から、前記第一無線装置と前記第二無線装置の無線通信のエリア内でユーザが行ったゲーム操作、またはコントローラ操作を判定する処理と、
ユーザが行った前記ゲーム操作、または前記コントローラ操作を、ラベルデータとして、ゲーム機に伝送する処理と、
を実行し、
前記ゲーム機は、前記無線捕捉装置から伝送された前記ラベルデータに基づき、ゲームを制御する処理を実行することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の第一から第三の態様によれば、ゲームを行うユーザの位置の自由度を高くすることができ、コントローラへのバッテリー搭載が不要となるゲームシステム、無線捕捉装置、及びゲームの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る、ゲームシステムの構成例である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る、無線センシングデバイスとゲーム機の構成例である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る、APとSTA間における無線通信のシーケンス例である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係る、無線センシングデバイスが機械学習で用いる教師データを作成するためのフローチャートである。
【
図5】本開示の実施の形態1に係る、ユーザの動作またはコントローラの動きをもとにゲーム機がゲームを制御するまでのフローチャートである。
【
図6】本開示の実施の形態2に係る、ゲームシステムの構成例である。
【
図7】本開示の実施の形態3に係る、ゲームシステムの構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
図1は、本開示の実施の形態1に係るゲームシステムの構成例である。
【0015】
無線LAN AP(以下、APと称する)101は、無線LAN規格のIEEE802.11ac/axに基づく無線LAN通信を行う。AP101は2以上のアンテナ105(1)、105(2)、・・・105(n)を備える。AP101はこれらのアンテナを同時に使用して、無線LAN端末(以下、STAと称する)102との間でMIMO(Multi-Input Multi-Output)通信を行う。
【0016】
AP101は、STA102に対し既知のフレームを含む無線信号を送信する。また、AP101は、STA102から返された無線信号を、アンテナ105を介して受信する。
【0017】
STA102は、AP101からの無線信号を受信する。STA102は、受信した無線信号をもとに既知のフレームとの差分を計算し、圧縮されたチャネル状態情報を導出する。尚、圧縮されたチャネル状態情報(Channel State Information、CSI)とは、無線伝搬路の情報のことである。さらに、STA102は、圧縮されたCSIの情報をCompressed Beamforming Report(CBFR)フレームに格納してAP101のアンテナ105にフィードバックする。
【0018】
無線センシングデバイス103は、STA102からAP101へフィードバックされる無線パケットを捕捉する。さらに無線センシングデバイス103は、捕捉したパケットからIEEE802.11ac/axの方式に基づき、圧縮されたCSIを抽出する。さらに、圧縮されたCSIをもとにゲームの操作内容を解析し、操作内容を示すラベルデータをゲーム機104に出力する。
【0019】
ゲーム機104は、無線センシングデバイス103から出力されたラベルデータをもとにゲームの制御を行う。
【0020】
尚、
図1の例において、無線センシングデバイス103は、AP101とSTA102の中間位置に配置されているが、STA102から送信される無線パケットを捕捉できる位置であればどこに配置してもよい。
【0021】
また、
図1の例において、ゲーム機104には表示用ディスプレイ等が付属していてもよい。
【0022】
AP101とSTA102が無線通信を行う範囲において、ユーザ106は、ジェスチャ、位置の変更、姿勢の変更等の動作、またはゲーム機104のコントローラ107のボタンの押下等を用いてゲームの操作を行う。ただし、ユーザ106がジェスチャ等によりゲームを操作する場合には、コントローラ107は使用しなくとも良い。
【0023】
AP101とSTA102の無線通信のエリア内において、ユーザ106が行った動作等は、AP101とSTA102の間で送受信される、圧縮されたCSIを用いて測定される。この圧縮されたCSIの情報を含む無線パケットを、無線センシングデバイス103が捕捉することで、ユーザ106の動作等を検出することができる。
【0024】
図2は、本開示の実施の形態1に係る、無線センシングデバイスとゲーム機の構成例である。
【0025】
無線インターフェース部110は、IEEE802.11ac/ax(Wi-Fi5/Wi-Fi6)標準仕様に従って無線フレームの送受信を行う。キャプチャ部111は、無線インターフェース部110で受信したフレームを取得し、フィルタリング部112に出力する。
【0026】
フィルタリング部112は、キャプチャ部111で取得された無線フレームについて、所定の条件に合致したフレームのみを抽出部113に出力する。なお、所定の条件とは、たとえば送信元無線端末局が、対象とするSTA102であること、および送信先無線端末局が、対象とするAP101であること等である。また所定の条件は、無線フレームの種類が、対象のCSIを含んだフレーム、すなわちCBFRフレームであること、等もさらに含む。
【0027】
抽出部113は、フィルタリング部112から出力されたCBFRフレームから、圧縮されたCSIを取り出す。前処理部114は、圧縮されたCSIを計算し、その時間変化を検出する。圧縮されたCSIに時間変化が検出された場合、前処理部114は圧縮されたCSIのデータを振り分け部115に出力する。
【0028】
振り分け部115は、圧縮されたCSIのデータを、機械学習のフェーズに応じて、機械学習部116内の教師データ作成部117または判定部118に出力する。機械学習のフェーズは、ラベルデータがゲーム機104から振り分け部115に入力されているか否かで判断される。ラベルデータが入力されている場合、振り分け部115は、圧縮されたCSIの情報を教師データ作成部117に振り分ける。一方、ラベルデータが入力されていない場合は、判定部118に振り分ける。
【0029】
機械学習部116は、教師データを用いた機械学習を行う。教師データ作成部117は、機械学習部116が学習フェーズにある場合は、機械学習で用いる教師データを作成する。具体的には、振り分け部115から出力された圧縮されたCSIのデータと、ゲーム機104から出力されたラベルデータとを対応させた、教師データを作成する。
【0030】
一方、教師データ作成部117は、機械学習部116が判定フェーズにある場合には、機械学習で使用する教師データを判定部118に提供する。
【0031】
判定部118は、機械学習部116が判定フェーズにある場合に、振り分け部115から出力された圧縮されたCSIのデータに対し、機械学習による判定を行う。具体的には、教師データ作成部117から提供された圧縮されたCSIの教師データを使用し、ユーザ106が行ったゲーム操作、またはコントローラ107の操作を判定する。さらに判定部118は、判定した操作内容を示すラベルデータをゲーム機104に伝送する。
【0032】
ゲーム機104内のセンサ結果入力部119は、無線センシングデバイス103の判定部118から出力されたラベルデータを受信するインターフェースである。センサ結果入力部119には、たとえばユーザ106の位置、ジェスチャ、姿勢、コントローラ107のボタンの押下状態、ユーザ106の指の状態などに相当するラベルデータが入力される。
【0033】
コントローラ通信部120は、センサ結果入力部119から出力されたラベルデータを、ゲーム機104が有するコントローラ107の動きに変換して、ゲーム制御部121に出力する。コントローラ107の動きとは、例えば、ある特定のボタンが押された等の動きである。ゲーム制御部121は、コントローラ107の入力信号を制御するゲーム機104内のブロックである。ゲーム本体122は、通常のゲーム機である。ラベル作成部123は、教師データ作成部117において教師データを作成するためにユーザ106に行わせたい動作を、ラベルデータとして無線センシングデバイス103に出力する。
【0034】
以上の構成により、無線センシングデバイス103は、捕捉した無線パケットから圧縮されたCSIの情報を抽出し、ユーザ106の動作等の時間変化を検出することができる。また、機械学習を用いて、ユーザ106が行ったゲーム操作、またはコントローラ107の操作を判定することができる。さらに、無線センシングデバイス103が判定した操作内容を、ラベルデータとしてゲーム機104に伝送することで、ゲーム機104はゲームを制御することができる。
【0035】
図3は、本開示の実施の形態1に係る、APとSTA間における無線通信のシーケンス例である。AP101は、アンテナ105(1)、105(2)、・・・105(n)からそれぞれ既知のNDP(Null Data Packet)フレーム130(1)、130(2)、・・・130(n)を送信する。
【0036】
ここで、NDPフレーム130は定期的に送信することを想定しているが、NDPフレーム130のデータ量は大きくないため、AP101とSTA102との間の本来の通信を阻害する可能性は低い。また、例えばWi-Fiであれば、対応周波数が複数あるため、本来の通信とは異なる周波数帯あるいは周波数チャンネルを利用してNDPフレーム130を送信することで、本来の通信への影響を回避できる。なお、Wi-Fiの対応周波数としては、2.4GHz帯、5GHz帯に加えて、今後利用が見込まれる6GHz帯の3種類がある。また、2.4GHz帯では最大3ch、5GHz帯では最大20ch、6GHz帯では最大25chを利用可能である。
【0037】
STA102は、すべてのアンテナ105からのNDPフレーム130(1)、130(2)、・・・130(n)を受信すると、IEEE802.11ac/axで規定された手法に従い、NDPフレーム130から、圧縮されたCSIを計算する。
【0038】
STA102は、計算した圧縮されたCSIの情報をCBFRフレーム131に格納し、AP101にフィードバックする。
【0039】
AP101は、STA102からフィードバックされた圧縮されたCSIの情報に基づいて、それぞれのアンテナ105(1)、105(2)、・・・105(n)とSTA102との間の無線伝搬路の情報を取得する。AP101は、その情報をもとにアンテナ105の制御を行い、アンテナ105が送信する無線信号の振幅や位相を調整することで、無線通信の効率をさらに向上させる。
【0040】
このように、IEEE802.11ac/ax規格に基づくAP101とSTA102間の無線通信シーケンスを利用することで、通信エリア内のユーザの動作またはコントローラの動きを測定するのに必要な無線信号を効率よく伝送することができる。
【0041】
以上、
図2及び
図3を用いて説明したように、AP101とSTA102がカバーする無線通信のエリアにおいて、ユーザ106が行った動作等は、圧縮されたCSIを用いて測定される。無線センシングデバイス103が無線通信エリア内のCBFRフレーム131を捕捉し、圧縮されたCSIを抽出することにより、ユーザ106が行ったゲーム操作等を解析することができる。
【0042】
図4は、本開示の実施の形態1に係る、無線センシングデバイスが機械学習で用いる教師データを作成するためのフローチャートである。
【0043】
まず、ユーザ106はゲーム内のチュートリアルを開始する(ステップ140)。チュートリアルは、ゲーム本編の開始前に、ゲーム内でユーザ106に操作を覚えてもらうためのモード等として行うものである。
【0044】
次に、ゲーム機104が、ユーザ106に行わせたい動作の情報を、ラベルデータとして無線センシングデバイス103に出力する(ステップ141)。さらにゲーム機104はその動作を行うようにユーザ106に指示を与える(ステップ142)。ユーザ106はステップ142の指示通りの動作を行う(ステップ143)。
【0045】
さらに、ユーザ106の動作をAP101とSTA102間の無線信号に含まれる圧縮されたCSIを用いて測定する(ステップ144)。さらに無線センシングデバイス103が、圧縮されたCSIが格納されたCBFRフレーム131を含むパケットを捕捉する(ステップ145)。
【0046】
無線センシングデバイス103は、圧縮されたCSIのデータを抽出する(ステップ146)。加えて、ゲーム機104からラベルデータが入力されているかの判定を行う(ステップ147)。ラベルデータが入力されていれば、抽出したCSIの情報とラベルデータとを用いて教師データを作成する(ステップ148)。最後に、ユーザ106はゲーム内のチュートリアルを終了する(ステップ149)。
【0047】
このように、チュートリアルとしてユーザ106にあらかじめ決められた動作等を行わせることで、その動作等に対応する圧縮されたCSIの情報と、ゲームの操作内容を示すラベルデータとを対応させた教師データを作成することができる。
【0048】
図5は、本開示の実施の形態1に係る、ユーザの動作またはコントローラの動きをもとにゲーム機がゲームを制御するまでのフローチャートである。
【0049】
まず、ユーザ106はゲームの本編を開始する(ステップ150)。つぎにユーザ106が任意の動作を実施する(ステップ151)。
【0050】
次に、ユーザ106の動作をAP101とSTA102間の無線信号に含まれる圧縮されたCSIを用いて測定する(ステップ152)。さらに無線センシングデバイス103が、圧縮されたCSIが格納されたCBFRフレーム131を含むパケットを捕捉する(ステップ153)。
【0051】
無線センシングデバイス103は、圧縮されたCSIのデータを抽出する(ステップ154)。さらに、圧縮されたCSIのデータから、ユーザ106が行ったゲーム操作を機械学習により判定する(ステップ155)。さらに、判定されたゲーム操作を、ラベルデータとしてゲーム機104に伝送する(ステップ156)。ゲーム機104は、ラベルデータをもとにゲームを制御する(ステップ157)。これにより、ユーザ106はさらにステップ151を行い、ゲームを進行することができる。
【0052】
このように、ユーザ106が行った任意の動作に対して、ゲーム機104はゲームの制御をすることができる。
【0053】
以上説明した通り、本実施形態のゲームシステム100において、ユーザ106が行うジェスチャ等の動作、またはコントローラ107のボタンの押下等は、AP101とSTA102の無線通信により測定され、無線センシングデバイス103により解析される。したがって、AP101とSTA102の無線通信がカバーする範囲内であれば、ユーザ106はどこでもゲームを実施することが可能である。
【0054】
加えて、本実施形態に係るゲームシステム100においては、コントローラ107を有線または無線によりゲーム機104に接続する必要がない。したがって、コントローラ107にバッテリーを搭載する必要もない。
【0055】
ここで、本開示において無線センシングデバイス103が行う処理は、CPUとメモリを備え、メモリにプログラムを格納したコンピュータを用いて、プログラムで実行するようにしてもよい。もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を用いて、プログラムで実行するようにしてもよい。尚、プログラムは、記憶媒体に記録して提供されてもよいし、ネットワークを通して提供されてもよい。尚、この点は以下の実施形態のすべてにおいて共通である。
【0056】
[請求項で使用する用語との対応関係の説明]
本実施形態において説明された、無線LAN AP101を第一無線装置と名付ける。同様に、無線LAN端末102を第二無線装置と名付ける。さらに、無線センシングデバイス103を、無線捕捉装置と名付ける。
【0057】
実施の形態2
図6は、本開示の実施の形態2に係るゲームシステムの構成例である。ゲームシステム200は、実施の形態1のゲームシステムと共通の構成であるが、STAが複数存在する。
【0058】
図6の例では、無線通信により複数のユーザ106(1)、106(2)、106(3)の動作等を測定できるように、複数のSTA202(1),202(2)を設置する。尚、
図6の例ではSTAは2台であるが、数が多いほど好ましい。
【0059】
このように複数のSTA202を配置することで、無線のカバーエリアを広げることができる。それにより、複数のユーザ106による同時のゲーム操作、またはユーザ106の歩行と停止などを組み込んだ、よりダイナミックな動作によるゲーム操作が可能となる。
【0060】
実施の形態3
図7は、本開示の実施の形態3に係るゲームシステムの構成例である。ゲームシステム300は、実施の形態2の構成例に、障害物308が加わった構成を有する。障害物308は、複数のユーザ106(1)、106(2)同士で互いの動作が見えないように配置されている。
【0061】
複数の無線LAN端末202(1)、202(2)を、障害物308を挟んだ位置にそれぞれ配置することで、障害物308の両側に存在するユーザ106(1)、106(2)の動作をそれぞれ測定することができる。これにより、ユーザ106が互いの動作を開示しないような状態でゲームを操作するような利用の仕方が可能となる。
【符号の説明】
【0062】
100・・・ゲームシステム;101・・・無線LAN AP;102・・・無線LAN端末;103・・・無線センシングデバイス;104・・・ゲーム機;105・・・アンテナ;106・・・ユーザ;107・・・コントローラ;110・・・無線インターフェース部;111・・・キャプチャ部;112・・・フィルタリング部;113・・・抽出部;114・・・前処理部;115・・・振り分け部;116・・・機械学習部;117・・・教師データ作成部;118・・・判定部;119・・・センサ結果入力部;120・・・コントローラ通信部;121・・・ゲーム制御部;122・・・ゲーム本体;123・・・ラベル作成部;130・・・NDPフレーム;131・・・CBFRフレーム;200・・・ゲームシステム;202・・・無線LAN端末;300・・・ゲームシステム;308・・・障害物