IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図1
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図2
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図3
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図4
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図5
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図6
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図7
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145467
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20241004BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057831
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】バス トウヒン シュブラ
(72)【発明者】
【氏名】藤川 尋斗
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 圭太
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 由裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA04
4K030AA06
4K030AA11
4K030BA29
4K030BB05
4K030CA04
4K030EA03
4K030KA04
5F045AA06
5F045AB04
5F045AC01
5F045AC07
5F045AF03
5F045BB17
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EC02
5F045EE11
5F045EE12
5F045EF03
5F045EK06
5F045EM10
(57)【要約】
【課題】シリコン膜に含まれる欠陥を低減できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による成膜方法は、基板にシリコン膜を成膜する成膜方法であって、前記基板にシラン系ガスと終端ガスとを同時に供給する工程を有し、前記終端ガスは、水素より電気陰性度が小さい元素を含み、前記同時に供給する工程は、前記シリコン膜における珪素の未結合手を前記元素で終端することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にシリコン膜を成膜する成膜方法であって、
前記基板にシラン系ガスと終端ガスとを同時に供給する工程を有し、
前記終端ガスは、水素より電気陰性度が小さい元素を含み、
前記同時に供給する工程は、前記シリコン膜における珪素の未結合手を前記元素で終端することを含む、
成膜方法。
【請求項2】
前記終端ガスは、ハロゲン化水素ガスである、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記終端ガスは、フッ化水素ガスである、
請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記シラン系ガスは、ジシランガスである、
請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記基板に前記終端ガスを供給することなく前記シラン系ガスを供給する工程を有する、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記同時に供給する工程の前に、前記基板にアミノシラン系ガスを供給し、前記基板の上にシード層を形成する工程を有する、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項7】
基板にシリコン膜を成膜する成膜装置であって、
前記基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内にシラン系ガス及び終端ガスを供給するガス供給部と、
制御部と、
を備え、
前記終端ガスは、水素よりも電気陰性度が小さい元素を含み、
前記制御部は、前記基板に前記シラン系ガスと前記終端ガスとを同時に供給する工程を行うよう前記ガス供給部を制御するように構成され、
前記同時に供給する工程は、前記シリコン膜における珪素の未結合手を前記元素で終端することを含む、
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下地上にシード層及びアモルファスシリコン膜をこの順に形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-249764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、シリコン膜に含まれる欠陥を低減できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜方法は、基板にシリコン膜を成膜する成膜方法であって、前記基板にシラン系ガスと終端ガスとを同時に供給する工程を有し、前記終端ガスは、水素より電気陰性度が小さい元素を含み、前記同時に供給する工程は、前記シリコン膜における珪素の未結合手を前記元素で終端することを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、シリコン膜に含まれる欠陥を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図2】実施形態に係る成膜方法を示すシーケンス図である。
図3】実施形態に係る成膜方法を示す断面図である。
図4】シリコン膜形成工程におけるシリコン膜の表面状態を示す図である。
図5】実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図6】アモルファスシリコン膜のPLスペクトルを示す図(1)である。
図7】アモルファスシリコン膜のPLスペクトルを示す図(2)である。
図8】アモルファスシリコン膜のPLスペクトルを示す図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔成膜方法〕
図1から図4を参照し、実施形態に係る成膜方法について説明する。図1に示されるように、実施形態に係る成膜方法は、準備工程S10と、シード層形成工程S20と、シリコン膜形成工程S30と、を有する。
【0010】
準備工程S10は、図3(a)に示されるように、基板101を準備することを含む。基板101は、例えばシリコンウエハ等の半導体ウエハであってよい。準備工程S10は、図2に示されるように、基板101を第1温度T1に維持することを含む。第1温度T1は、例えば380℃である。
【0011】
シード層形成工程S20は、準備工程S10の後に行われる。シード層形成工程S20は、図2に示されるように、基板101を第1温度T1に維持することを含む。シード層形成工程S20では、時刻t1において基板101へのDIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)ガスの供給を開始し、時刻t2までDIPASガスの供給を継続し、時刻t2においてDIPASガスの供給を停止する。すなわち、シード層形成工程S20は、時刻t1から時刻t2までの間、基板101にDIPASガスを供給することを含む。これにより、図3(b)に示されるように、基板101上にシード層102が形成される。DIPASガスは、アミノシラン系ガスの一例である。なお、シード層形成工程S20は省略してもよい。
【0012】
シリコン膜形成工程S30は、シード層形成工程S20の後に行われる。シリコン膜形成工程S30は、図2に示されるように、基板101を第1温度T1に維持することを含む。シリコン膜形成工程S30では、時刻t2において基板101へのジシラン(Si)ガスの供給を開始し、時刻t5までジシランガスの供給を継続し、時刻t5においてジシランガスの供給を停止する。シリコン膜形成工程S30では、時刻t3において基板101へのフッ化水素(HF)ガスの供給を開始し、時刻t4までフッ化水素ガスの供給を継続し、時刻t4においてジシランガスの供給を停止する。すなわち、シリコン膜形成工程S30では、時刻t2から時刻t3までと時刻t4から時刻t5までの間、基板101にフッ化水素ガスを供給することなくジシランガスを供給し、時刻t3から時刻t4までの間、ジシランガスとフッ化水素ガスとを同時に供給する。これにより、図3(c)に示されるように、シード層102上にアモルファスシリコン(a-Si)膜103が形成される。アモルファスシリコン膜103を形成する際には、図4(a)に示されるように、水素で終端されていない未結合手(ダングリングボンド)DBを有する珪素(Si)が存在しうる。そこで、シリコン膜形成工程S30の少なくとも一部の期間においてジシランガスとフッ化水素ガスとを同時に供給することで、図4(b)に示されるように、アモルファスシリコン膜103における珪素の未結合手DBをフッ化水素ガスのフッ素(F)で終端する。これにより、アモルファスシリコン膜103に含まれる欠陥を低減できる
なお、シリコン膜形成工程S30は、全期間においてジシランガスとフッ化水素ガスとを同時に供給してもよい。また、シリコン膜形成工程S30では、全期間の前半においてフッ化水素ガスを供給することなくジシランガスを供給し、全期間の後半においてジシランガスとフッ化水素ガスとを同時に供給してもよい。また、シリコン膜形成工程S30では、全期間の前半においてジシランガスとフッ化水素ガスとを同時に供給し、全期間の後半においてフッ化水素ガスを供給することなくジシランガスを供給してもよい。
【0013】
以上に説明したように、実施形態に係る成膜方法によれば、シリコン膜形成工程S30において、基板101にジシランガスとフッ化水素ガスとを同時に供給し、アモルファスシリコン膜103における珪素の未結合手DBをフッ化水素ガスのフッ素で終端する。これにより、アモルファスシリコン膜103に含まれる欠陥を低減できる。
【0014】
実施形態に係る成膜方法は、3次元NANDメモリのチャネル層を形成する際に好適に用いられる。3次元NANDメモリのチャネル層を形成する場合には、アモルファスシリコン膜103を熱処理することで結晶粒の大きな多結晶シリコン膜を形成することで、チャネル層の移動度が向上する。しかし、アモルファスシリコン膜103の膜厚が薄い場合等の特定のプロセスにおいては、結晶粒の大きさを無限に大きくできない。そこで、実施形態に係る成膜方法によって、アモルファスシリコン膜103に含まれる欠陥を低減することで、チャネル層の電子移動度が向上する。
【0015】
〔成膜装置〕
図5を参照し、実施形態に係る成膜装置1について説明する。図5に示されるように、成膜装置1は、複数の基板Wに対して一度に処理を行うバッチ式の装置である。
【0016】
成膜装置1は、処理容器10と、ガス供給部30と、排気部40と、加熱部50と、制御部80とを備える。
【0017】
処理容器10は、内部を減圧可能である。処理容器10は、内部に基板Wを収容する。処理容器10は、内管11と、外管12とを有する。内管11及び外管12は、下端が開放された有天井の円筒形状を有する。外管12は、内管11の外側を覆う。内管11及び外管12は、同軸状に配置された2重管構造を有する。内管11及び外管12は、石英等の耐熱材料により形成される。
【0018】
内管11の天井は、例えば平坦であってよい。内管11の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガスノズルを収容する収容部13が形成される。例えば、内管11の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部14を形成し、凸部14内を収容部13として形成している。
【0019】
収容部13に対向させて内管11の反対側の側壁には、その長手方向(上下方向)に沿って矩形状の開口15が形成される。
【0020】
開口15は、内管11内のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。開口15の長さは、ボート16の長さと同じであるか、又は、ボート16の長さよりも長く上下方向へそれぞれ延びるようにして形成される。
【0021】
処理容器10の下端は、円筒形状のマニホールド17によって支持される。マニホールド17は、例えばステンレス鋼により形成される。マニホールド17の上端には、フランジ18が形成される。フランジ18は、外管12の下端を支持する。フランジ18と外管12との下端との間には、Oリング等のシール部材19が設けられる。これにより、外管12内が気密に維持される。
【0022】
マニホールド17の上部の内壁には、円環状の支持部20が設けられる。支持部20は、内管11の下端を支持する。マニホールド17の下端の開口には、蓋体21がOリング等のシール部材22を介して気密に取り付けられる。これにより、処理容器10の下端の開口、すなわち、マニホールド17の開口が気密に塞がれる。蓋体21は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0023】
蓋体21の中央部には、磁性流体シール23を介して回転軸24が貫通させて設けられる。回転軸24の下部は、ボートエレベータよりなる昇降機構25のアーム25Aに回転自在に支持される。
【0024】
回転軸24の上端には、回転プレート26が設けられる。回転プレート26上には、石英製の保温台27を介して基板Wを保持するボート16が載置される。ボート16は、回転軸24を回転させることにより回転する。ボート16は、昇降機構25を昇降させることによって蓋体21と一体として上下動する。これにより、ボート16は処理容器10内に対して挿脱される。ボート16は、処理容器10内に収容可能である。ボート16は、複数(例えば50~150枚)の基板Wを上下方向に間隔を有して略水平に保持する。
【0025】
ガス供給部30は、前述した成膜方法で用いられる各種の処理ガスを内管11内に導入可能に構成される。ガス供給部30は、DIPAS供給部31と、ジシラン供給部32と、フッ化水素供給部33とを含む。
【0026】
DIPAS供給部31は、処理容器10内にDIPAS供給管31aを備えると共に、処理容器10の外部にDIPAS供給経路31bを備える。DIPAS供給経路31bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、DIPAS供給源31c、マスフローコントローラ31d、バルブ31eが設けられる。これにより、DIPAS供給源31cのDIPASガスは、バルブ31eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ31dにより所定の流量に調整される。DIPASガスは、DIPAS供給経路31bからDIPAS供給管31aに流入して、DIPAS供給管31aから処理容器10内に吐出される。
【0027】
ジシラン供給部32は、処理容器10内にジシラン供給管32aを備えると共に、処理容器10の外部にジシラン供給経路32bを備える。ジシラン供給経路32bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、ジシラン源32c、マスフローコントローラ32d、バルブ32eが設けられる。これにより、ジシラン源32cのジシランガスは、バルブ32eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ32dにより所定の流量に調整される。ジシランガスは、ジシラン供給経路32bからジシラン供給管32aに流入して、ジシラン供給管32aから処理容器10内に吐出される。
【0028】
フッ化水素供給部33は、処理容器10内にフッ化水素供給管33aを備えると共に、処理容器10の外部にフッ化水素供給経路33bを備える。フッ化水素供給経路33bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、フッ化水素源33c、マスフローコントローラ33d、バルブ33eが設けられる。これにより、フッ化水素源33cのフッ化水素ガスは、バルブ33eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ33dにより所定の流量に調整される。フッ化水素ガスは、フッ化水素供給経路33bからフッ化水素供給管33aに流入して、フッ化水素供給管33aから処理容器10内に吐出される。
【0029】
各ガス供給管(DIPAS供給管31a、ジシラン供給管32a、フッ化水素供給管33a)は、マニホールド17に固定される。各ガス供給管は、例えば石英により形成される。各ガス供給管は、内管11の近傍位置を鉛直方向に沿って直線状に延在すると共に、マニホールド17内においてL字状に屈曲して水平方向に延在することで、マニホールド17を貫通する。各ガス供給管同士は、内管11の周方向に沿って並んで設けられ、互いに同じ高さに形成される。
【0030】
DIPAS供給管31aにおいて内管11内に位置する部位には、複数のDIPAS吐出口31fが設けられる。ジシラン供給管32aにおいて内管11内に位置する部位には、複数のジシラン吐出口32fが設けられる。フッ化水素供給管33aにおいて内管11内に位置する部位には、複数のフッ化水素吐出口33fが設けられる。
【0031】
各吐出口(DIPAS吐出口31f、ジシラン吐出口32f、フッ化水素吐出口33f)は、それぞれのガス供給管の延在方向に沿って所定の間隔ごとに形成される。各吐出口は、水平方向に向けてガスを放出する。各吐出口同士の間隔は、例えばボート16に保持される基板Wの間隔と同じに設定される。各吐出口の高さ方向の位置は、上下方向に隣り合う基板W間の中間位置に設定されている。これにより、各吐出口は隣り合う基板W間の対向面にガスを効率的に供給できる。
【0032】
ガス供給部30は、複数種類のガスを混合して1つのガス供給管から混合したガスを吐出してもよい。各ガス供給管(DIPAS供給管31a、ジシラン供給管32a、フッ化水素供給管33a)は、互いに異なる形状や配置であってもよい。成膜装置1は、DIPASガス、ジシランガス、フッ化水素の他に、別のガスを供給するガス供給管を更に備えてもよい。
【0033】
排気部40は、内管11内から開口15を介して排出され、内管11と外管12との間の空間P1を介してガス出口41から排出されるガスを排気する。ガス出口41は、マニホールド17の上部の側壁であって、支持部20の上方に形成される。ガス出口41には、排気通路42が接続される。排気通路42には、圧力調整弁43及び真空ポンプ44が順次介設されて、処理容器10内を排気できるようになっている。
【0034】
加熱部50は、外管12の周囲に設けられている。加熱部50は、例えばベースプレート28上に設けられている。加熱部50は、外管12を覆うように円筒形状を有する。加熱部50は、例えば発熱体を含み、処理容器10内の各基板Wを加熱する。
【0035】
制御部80は、成膜装置1の各部の動作を制御する。制御部80は、例えばコンピュータであってよい。成膜装置1の各部の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体90に記憶されている。記憶媒体90は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0036】
〔成膜装置の動作〕
成膜装置1において実施形態に係る成膜方法を実施する場合の動作について説明する。
【0037】
まず、制御部80は、昇降機構25を制御して、複数の基板Wを保持したボート16を処理容器10内に搬入し、蓋体21により処理容器10の下端の開口を気密に塞ぎ、密閉する。続いて、制御部80は、排気部40を制御して処理容器10内を減圧し、加熱部50を制御して基板Wの温度を第1温度T1に調整する。各基板Wは、前述の基板101であってよい。
【0038】
続いて、制御部80は、シード層形成工程S20を実行するように、ガス供給部30、排気部40及び加熱部50を制御する。具体的には、まず、制御部80は、加熱部50を制御して基板Wの温度を第1温度T1に維持した状態で、ガス供給部30を制御して処理容器10内にDIPASガスを供給すると共に、排気部40を制御して処理容器10内を処理圧力に維持する。これにより、基板101上にシード層102が形成される。
【0039】
続いて、制御部80は、シリコン膜形成工程S30を実行するように、ガス供給部30、排気部40及び加熱部50を制御する。具体的には、まず、制御部80は、加熱部50を制御して基板Wの温度を第1温度T1に維持した状態で、ガス供給部30を制御して処理容器10内にジシランガスを供給すると共に、排気部40を制御して処理容器10内を処理圧力に維持する。このとき、制御部80は、ガス供給部30を制御して処理容器10内にジシランガスを供給している少なくとも一部の期間において処理容器10内にフッ化水素ガスを供給する。これにより、シード層102上にアモルファスシリコン膜103が形成される。このとき、アモルファスシリコン膜103における珪素の未結合手DBがフッ化水素ガスのフッ素(F)で終端される。これにより、アモルファスシリコン膜103に含まれる欠陥を低減できる。
【0040】
続いて、制御部80は、処理容器10内を大気圧に昇圧すると共に、処理容器10内を搬出温度に降温させた後、昇降機構25を制御してボート16を処理容器10内から搬出する。
【0041】
〔実施例〕
実施形態に係る成膜方法によりアモルファスシリコン膜に含まれる欠陥を低減できることを確認した実施例について説明する。
【0042】
実施例では、シリコン酸化膜(熱酸化膜)を表面に有するシリコンウエハを準備し、準備したシリコンウエハを前述の成膜装置1の処理容器10内に収容し、以下に示される条件A、条件B及び条件Cによりシリコン酸化膜の上にアモルファスシリコン膜を形成した。続いて、フォトルミネッセンス(PL:Photoluminescence)法により、各条件で形成したアモルファスシリコン膜のPL強度を測定した。
【0043】
(条件A)
条件Aでは、準備した基板に対して、ジシランガスの供給とフッ化水素ガスの供給とを同時に行うことにより、シリコン酸化膜の上に30nmのアモルファスシリコン膜を形成した。
【0044】
(条件B)
条件Bでは、準備した基板に対して、ジシランガスの供給とフッ化水素ガスの供給とを交互に行うことにより、シリコン酸化膜の上に30nmのアモルファスシリコン膜を形成した。
【0045】
(条件C)
条件Cでは、準備した基板に対して、フッ化水素ガスを供給することなくジシランガスを供給することにより、シリコン酸化膜の上に30nmのアモルファスシリコン膜を形成した。
【0046】
図6から図8は、アモルファスシリコン膜のPLスペクトルを示す図である。図6から図8において、横軸は波長[nm]及びエネルギー[eV]を示し、縦軸はPL強度[a.u.]を示す。図6から図8では、上側のグラフから順に条件A、条件B及び条件Cの結果を示す。
【0047】
図6に示されるように、条件B及び条件Cでは1.14eVにおいてPL強度のピークが検出されているのに対し、条件Aでは1.14eVにおけるPL強度のピークが消失していることが分かる。図7に示されるように、条件B及び条件Cでは1.034eVにおいてPL強度のピークが検出されているのに対し、条件Aでは1.034eVにおけるPL強度のピークが消失していることが分かる。これらの結果から、ジシランガスの供給とフッ化水素ガスの供給とを同時に行うことにより、アモルファスシリコン膜に含まれる一部の欠陥が消失したと考えられる。
【0048】
図8に示されるように、条件B及び条件Cでは1.09eVにおいてPL強度のピークが検出されていないのに対し、条件Aでは1.09eVにおいてPL強度のピークが検出されていることが分かる。1.09eVにおけるPL強度のピークは、珪素と結合したフッ素に起因する発光であると考えられる。
【0049】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0050】
上記の実施形態では、アミノシラン系ガスがDIPASガスである場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。アミノシラン系ガスは、例えば3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)ガス、BTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)、2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンガスであってもよい。
【0051】
上記の実施形態では、シラン系ガスがジシランガスである場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。シラン系ガスは、例えばSiHガス、Siガス、Si10ガスであってもよい。
【0052】
上記の実施形態では、終端ガスがフッ化水素ガスである場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。終端ガスは、水素(H)より電気陰性度が小さい元素を含んでいればよい。水素より電気陰性度が小さい元素は、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲンであってよい。水素より電気陰性度が小さい元素は、酸素(O)であってもよい。終端ガスは、例えばHClガス、HBrガス、HIガス等のHFガス以外のハロゲン化水素ガスであってもよい。この場合、シリコン膜における珪素(Si)の未結合手がハロゲンで終端される。終端ガスは、NOガスであってもよい。この場合、シリコン膜における珪素(Si)の未結合手が酸素(O)で終端される。
【0053】
上記の実施形態では、成膜装置が複数の基板に対して一度に処理を行うバッチ式の装置である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、成膜装置は基板を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってよい。
【符号の説明】
【0054】
1 成膜装置
10 処理容器
31 DIPAS供給部
32 ジシラン供給部
33 フッ化水素供給部
80 制御部
S30 シリコン膜形成工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8