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特開2024-145507ポリウレタン樹脂組成物、及び塗料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145507
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物、及び塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/44 20060101AFI20241004BHJP
   C09D 175/06 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08G18/44
C09D175/06
C08G18/62 016
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057891
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本田 康平
(72)【発明者】
【氏名】南原 慎太郎
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DE04
4J034DF03
4J034DP18
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034QA02
4J034QA05
4J034RA07
4J038DG112
4J038DG121
4J038DG132
4J038DG192
4J038DG262
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA04
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】耐候試験後の光沢保持率が高く、色差が低いポリウレタン樹脂組成物、および塗料組成物を提供すること。
【解決手段】ポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、
水酸基含有アクリル樹脂(C)と、ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含み、前記ポリカーボネートポリオール(B)は、エステル結合を有し、かつ、平均水酸基官能基数が2を超える、ポリウレタン樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、
水酸基含有アクリル樹脂(C)と、
ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含み、
前記ポリカーボネートポリオール(B)は、エステル結合を有し、かつ、平均水酸基官能基数が2を超える、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカーボネートポリオール(B)の含有量が、前記ポリオール(A)と、前記水酸基含有アクリル樹脂(C)の固形分の含有量と、の総和に対して、5~90質量%である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリカーボネートポリオール(B)が、
ポリカーボネートポリオール(b-1)と、平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)と、のエステル交換反応物を含む、または、
ポリカーボネートポリオール(b-1)と、平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)と、平均水酸基官能基数が2以上3未満のポリエステルポリオール(b-3)との、エステル交換反応物を含む、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均水酸基官能基数が2.1~3.5であり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)の水酸基価が、40~500mgKOH/gであり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)の数平均分子量が、400~4,000g/molであり、
前記ポリエステルポリオール(b-2)に対する前記ポリカーボネートポリオール(b-1)の質量比([(b-1)の質量]/[(b-2)の質量])が90/10~10/90である、または、前記ポリエステルポリオール(b-2)と前記ポリエステルポリオール(b-3)との総和に対する前記ポリカーボネートポリオール(b-1)の質量比([(b-1)の質量]/([(b-2)の質量]+[(b-3)の質量]))が95/5~5/95である、請求項3に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネートポリオール(B)のエステル基濃度が10~90質量%である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネートポリオール(B)が常温で液状である、請求項1~5に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~5に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む塗料組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の塗料組成物の硬化物を含む、塗膜
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタン樹脂組成物、及び塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂含有ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂組成物は、耐加水分解性、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性等に有利なことから、種々の外装、内装用途へ用いられている。
【0003】
ここで、特許文献1は、水酸基含有アクリル樹脂(a)と、カーボネート骨格を有する高分子ポリオール(b)と、及び硬化剤(c)と、を反応させて得られるポリウレタン樹脂を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-59072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にかかるポリウレタン樹脂はバランスの取れた耐候性が得られず、耐候試験後の黄変度合い及び光沢度保持率の改善が求められていた。
【0006】
そこで本開示の一態様は、耐候試験後の光沢保持率が高く、色差が低い塗膜の作製に資するポリウレタン樹脂組成物、および塗料組成物を提供することに向けられている。また、本開示の他の態様は、耐候試験後の光沢保持率が高く、色差が低い塗膜を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の各態様は以下に示す実施形態を含む。
(1) ポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、
水酸基含有アクリル樹脂(C)と、
ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含み、
前記ポリカーボネートポリオール(B)は、エステル結合を有し、かつ、平均水酸基官能基数が2を超える、ポリウレタン樹脂組成物。
(2) 前記ポリカーボネートポリオール(B)の含有量が、前記ポリオール(A)と、前記水酸基含有アクリル樹脂(C)の固形分の含有量と、の総和に対して、5~90質量%である、(1)に記載のポリウレタン樹脂組成物。
(3) 前記ポリカーボネートポリオール(B)が、
ポリカーボネートポリオール(b-1)と、平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)と、のエステル交換反応物を含む、または、
ポリカーボネートポリオール(b-1)と、平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)と、平均水酸基官能基数が2以上3未満のポリエステルポリオール(b-3)との、エステル交換反応物を含む、(1)または(2)に記載のポリウレタン樹脂組成物。
(4) 前記ポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均水酸基官能基数が2.1~3.5であり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)の水酸基価が、40~500mgKOH/gであり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)の数平均分子量が、400~4,000g/molであり、
前記ポリエステルポリオール(b-2)に対する前記ポリカーボネートポリオール(b-1)の質量比([(b-1)の質量]/[(b-2)の質量])が90/10~10/90である、または、前記ポリエステルポリオール(b-2)と前記ポリエステルポリオール(b-3)との総和に対する前記ポリカーボネートポリオール(b-1)の質量比([(b-1)の質量]/([(b-2)の質量]+[(b-3)の質量]))が95/5~5/95である、請求項3に記載のポリウレタン樹脂組成物。
(5) 前記ポリカーボネートポリオール(B)のエステル基濃度が10~90質量%である、(1)~(4)のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
(6) 前記ポリカーボネートポリオール(B)が常温で液状である、(1)~(5)のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
(7) (1)~(6)のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む塗料組成物。
(8) (7)に記載の塗料組成物の硬化物を含む、塗膜
【0008】
本開示の一態様によれば、耐候試験後の光沢保持率が高く、色差が低い塗膜の作製に資するポリウレタン樹脂組成物、および塗料組成物を提供することができる。また、本開示の他の態様によれば、耐候試験後の光沢保持率が高く、色差が低い塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の各態様を実施するための例示的な実施形態についてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0010】
本開示の一態様にかかるポリウレタン樹脂組成物は、
ポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、
水酸基含有アクリル樹脂(C)と、
ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含み
前記ポリカーボネートポリオール(B)は、エステル結合を有し、かつ、平均水酸基官能基数が2を超える。
【0011】
以下、ポリウレタン樹脂組成物の各成分(A)、(B)、(C)、(D)およびこれら以外に含まれ得る他の成分について説明する。
【0012】
<ポリオール(A)>
ポリオール(A)は、エステル結合を有し、かつ、平均水酸基官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオール(B)を含む。ポリオール(A)に含まれるポリカーボネートポリオール(B)以外のポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール(ただし、ポリカーボネートポリオール(B)以外のもの)、ポリオレフィンポリオール、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせからなるポリオール(A-1)が挙げられる。
【0013】
ポリエステルポリオールとしては、ジオールとジカルボン酸及び/又はその無水物とから得られるポリエステルポリオール(ポリエステルジオール)、ジオールを開始剤としてラクトン類等の環状エステル化合物を開環付加重合することで得られるポリエステルポリオール(ポリエステルジオール)、3官能以上の多価アルコールとジオールとジカルボン酸及び/又はその無水物とから得られるポリエステルポリオール、または3官能以上の多価アルコールと、必要に応じてジオールと、を開始剤としてラクトン類等の環状エステル化合物を開環付加重合することで得られるポリエステルポリオール、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが好ましい。
【0014】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の低分子ポリオール、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0015】
3官能以上の多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等、およびこれら任意の2種類の組み合わせが挙げられる。これらの中でもトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールが好ましい。
【0016】
ジカルボン酸及び/又はその無水物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水素化ダイマー脂肪酸、酒石酸等、およびこれらの無水物、ならびにこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0017】
環状エステル化合物としては、例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、α-カプロラクトン、β-カプロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、β-メチル-ε-カプロラクトン、4-メチルカプロラクトン、γ-カプリロラクトン、ε-カプリロラクトン、ε-パルミトラクトン等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。その中でも、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等を開始剤としたε-カプロラクトンの開環付加重合体が重合時の安定性及び経済性の点から好ましい。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0019】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、以下の(α)、(β)、(γ)のポリカーボネートポリオール、以下の(α’)、(β’)のポリカーボネートポリオール、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。なお、ポリオール(A-1)に含まれるポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートポリオール(B)、と異なるものである。
(α)ジオール(a-1)と、炭酸エステル(a-2)とから得られるポリカーボネートポリオール(以下、「ポリカーボネートポリオール(α)」ともいう。)
(β)ジオール(a-1)と、炭酸エステル(a-2)と、ラクトン類などの環状エステル化合物(a-3)と、から得られるポリカーボネートポリオール(以下、「ポリカーボネートポリオール(β)」ともいう。)
(γ)ポリカーボネートポリオール(a-4)とポリエステルポリオール(a-5)と、から得られるポリカーボネートポリオール(以下、「ポリカーボネートポリオール(γ)」ともいう。)
(α’)ジオール(a-1)と、官能基数3以上の多価アルコール(a-6)と、炭酸エステル(a-2)とのエステル交換反応物であるポリカーボネートポリオール(以下、「ポリカーボネートポリオール(α’)」ともいう。)
(β’)官能基数3以上の多価アルコール(a-6)と、必要に応じて用いられるジオール(a-1)とを含み、ポリカーボネートポリオール(a-7)とのエステル交換反応物であるポリカーボネートポリオール(以下、「ポリカーボネートポリオール(β’)」ともいう。)
【0020】
ジオール(a-1)としては、例えば、ポリエステルポリオールの説明で挙げたジオールと同じものが挙げられる。その中でも、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールが好ましい。
【0021】
炭酸エステル(a-2)としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類;ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類;等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0022】
環状エステル化合物(a-3)としては、例えば、ポリエステルポリオールの説明で挙げた環状エステル化合物と同じものが挙げられる。
【0023】
ポリカーボネートポリオール(a-4)としては、例えば、ポリカーボネートポリオール(α)の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0024】
ポリエステルポリオール(a-5)としては、例えば、ポリエステルポリオールの説明で挙げたポリエステルポリオール(ポリエステルジオール)と同じものが挙げられる。
【0025】
多価アルコール(a-6)としては、例えば、ポリエステルポリオールの説明で挙げた多価アルコールと同じものが挙げられる。これらの中でもトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールが好ましい。
【0026】
ポリカーボネートポリオール(a-7)は、官能基数が2以上のポリカーボネートポリオールであり、官能基数が2のポリカーボネートポリオール(a-7-1)であってもよく、官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオール(a-7-2)であってもよく、ポリカーボネートポリオール(a-7-1)およびポリカーボネートポリオール(a-7-2)から選択される2種以上の組み合わせであってもよい。
【0027】
ポリカーボネートポリオール(a-7-1)としては、例えば、ポリカーボネートポリオール(α)の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0028】
ポリカーボネートポリオール(a-7-2)としては、例えば、ポリカーボネートポリオール(α’)の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0029】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基末端ポリブタジエンやその水素添加物、水酸基含有塩素化ポリオレフィン等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0030】
ポリウレタン樹脂組成物から得られる被膜の各種耐久性及び密着性等を考慮すると、ポリオール(A-1)は、ポリカーボネートポリオールを含むことが好ましく、ポリカーボネートジオールを含むことがより好ましい。
【0031】
また、ハンドリング性及びウレタン樹脂に使用した際の塗膜外観の観点から、ポリオール(A-1)のポリカーボネートポリオールは常温で液状であることが好ましい。
【0032】
ポリオール(A-1)の数平均分子量は、300~10,000が好ましく、500~7,000であってもよく、800~5,000であってもよく、1000~3,000であってもよい。数平均分子量の測定方法の詳細は、後述する実施例に記載されるとおりであってよい。
【0033】
ポリオール(A-1)の平均水酸基価は、30~500mgKOH/gであることが好ましく、40~400mgKOH/gであることがより好ましく、50~300mgKOH/gであることがさらに好ましい。平均水酸基価が上記範囲であると、塗膜外観が良好で、耐候試験後の20°での光沢保持率が高く、色差ΔEが低いポリウレタン樹脂が得られやすい
【0034】
ポリオール(A)は、ポリカーボネートポリオール(B)以外のポリオールとして、ポリオール(A-1)に加えて、あるいは、ポリオール(A-1)の代わりに、ジオール(A-2)及び/又は3官能以上の多価アルコール(A-3)を含んでいてもよい。
【0035】
ジオール(A-2)としては、例えば、ポリエステルポリオールの説明で挙げたジオールと同じものが挙げられる。その中でも、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールが好ましい。
【0036】
多価アルコール(A-3)としては、例えば、ポリエステルポリオールの説明で挙げた多価アルコールと同じものが挙げられる。その中でも、経済的な観点から、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールが好ましい。
【0037】
ポリオール(A)中のポリオール(A-1)とジオール(A-2)及び/又は多価アルコール(A-3)とのモル比[ポリオール(A-1)/(ジオール(A-2)及び/又は多価アルコール(A-3)]は、10/0~1/20であることが好ましく、10/0~1/10であることがより好ましく、7/1~1/5であることがさらに好ましい。この範囲とすることで、外観が良好で、耐候試験後の20°での光沢保持率が高く、色差ΔEが低いポリウレタン樹脂が得られやすい
【0038】
<ポリカーボネートポリオール(B)>
本開示の一態様において、ポリカーボネートポリオール(B)は、エステル結合を有し、かつ、平均水酸基官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオールである。また、ポリカーボネートポリオール(B)は、ポリオール(A)に含まれるものである。
【0039】
ポリカーボネートポリオール(B)、としては、例えば、以下の(α”)、(β”)のコポリマーポリオール、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
(α”)ポリカーボネートポリオール(b-1)と、平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)との、エステル交換反応物であるコポリマーポリオール(以下、「ポリカーボネートポリオール(α”)」ともいう。)
(β”)ポリカーボネートポリオール(b-1)と、平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)と、平均水酸基官能基数が2以上3未満のポリエステルポリオール(b-3)との、エステル交換反応物であるコポリマーポリオール(以下、「ポリカーボネートポリオール(β”)」ともいう。)
コポリマーポリオールは、機械物性や耐候性を両立させる他、溶剤への溶解性、常温での液状化によるハンドリング性などが向上する。
【0040】
ポリカーボネートポリオール(b-1)としては、ポリカーボネートポリオール(a-7)の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0041】
ポリエステルポリオール(b-2)としては、例えば、以下の(δ)~(ε)のポリエステルポリオール、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
(δ)ジオール(b-2-1)と、ジカルボン酸及び/又はその無水物(b-2-2)と、平均水酸基官能基数3以上の多価アルコール(b-2-3)と、から得られるポリエステルポリオール(以下、「ポリエステルポリオール(δ)」ともいう。)
(ε)平均水酸基官能基数3以上の多価アルコール(b-2-3)と、必要に応じて用いられる2官能アルコール(b-2-5)と、を開始剤として、ラクトン類などの環状エステル化合物(b-2-4)が開環付加重合して得られるポリエステルポリオール(以下、「ポリエステルポリオール(ε)」ともいう。)
【0042】
ジオール(b-2-1)、ジカルボン酸及び/又はその無水物(b-2-2)、環状エステル化合物(b-2-4)としては、例えば、ポリエステルポリオールの説明で挙げたジオール、ジカルボン酸及び/又はその無水物、環状エステル化合物と同じものが挙げられる。
【0043】
多価アルコール(b-2-3)としては、例えば、ポリエステルポリオールの説明で挙げた3官能以上の多価アルコールと同じものが挙げられる。なお、所期の効果を奏する限りにおいて、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール等の2官能アルコール(b-2-5)を開始剤として、多価アルコール(b-2-3)に併用してもよい。換言すると、ポリエステルポリオール(ε)は、多価アルコール(b-2-3)に由来した部位と、環状エステル化合物(b-2-4)に由来した部位と、を有するポリエステルポリオールであってもよく、これに加えてさらに、2官能アルコール(b-2-5)に由来した部位と、環状エステル化合物(b-2-4)に由来した部位と、を有するポリエステルポリオールを含んでいてもよい。
【0044】
ポリカーボネートポリオール(b-1)の数平均分子量は、合成の容易さ、取り扱いやすさを考慮すると、400~5,000g/molであることが好ましく、500~3,000g/molであることがより好ましい。
【0045】
(触媒)
ポリカーボネートポリオール(B)の作製の際には、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、公知のエステル交換触媒が挙げられ、例えば、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等の金属アルコキシド類;リチウムアセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート等の金属エノラート類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の金属カルボン酸塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン等の第三級アルキルアミン;ピリジン、ピラジン、キノリン等の環状アジン;N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等の第三級環状アミン;t-ブチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Bu)、t-ブチルイミノトリ(ピロリジノ)ホスホラン、t-オクチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Oct)、1-t-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P2-t-Bu)、1-エチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ、4λ-カテナジ(ホスファゼン)、1-t-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P4-t-Bu)、1-tert-オクチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P4-t-Oct)等のホスファゼン類;およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。中でも収率がよい点で、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リチウムアセテート、リチウムアセチルアセトナート、ジアザビシクロウンデセン、P4-t-Buが好ましい。
【0046】
・(b-1)、(b-2)の2成分系の場合(ポリカーボネートポリオール(α”))
ポリカーボネートポリオール(b-1)と、平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)との質量比([(b-1)の質量]/[(b-2)の質量])が90/10~10/90であることが好ましく、(b-1)/(b-2)=80/20~20/80であることがより好ましく、70/30~30/70であることがさらに好ましく、60/40~40/60であることが特に好ましい。
・(b-1)、(b-2)、(b-3)の3成分系の場合(ポリカーボネートポリオール(β”))
ポリカーボネートポリオール(b-1)と、平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)および平均水酸基官能基数が2以上3未満のポリエステルポリオール(b-3)との質量比([(b-1)の質量]/([(b-2)の質量]+[(b-3)の質量]))は、95/5~5/95であることが好ましく、90/10~10/90であることがより好ましく、80/20~20/80であることがより好ましく、70/30~30/70であることがさらに好ましく、60/40~40/60であることが特に好ましい。
質量比がこれらの範囲であると、ポリカーボネートポリオール(b-1)の凝集力と、ウレタン基濃度と、ポリエステルポリオール(b-2)、又は、ポリエステルポリオール(b-2)とポリエステルポリオール(b-3)との含有量とのバランスにより、良好な耐候性と塗膜外観を有するポリウレタン樹脂が得られやすい。
【0047】
ポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均水酸基官能基数は、2.1~3.5であることが好ましく、2.2~3.0であることがより好ましく、2.3~2.9であることがさらに好ましく、2.4~2.8であることが特に好ましい。みなし平均水酸基官能基数が3.5以下であると塗膜外観が良好なポリウレタン樹脂が得られやすい。みなし平均水酸基官能基数が2.1以上であると、耐候試験後の20°での光沢保持率が高く、色差ΔEが低いポリウレタン樹脂が得られやすい
【0048】
ポリカーボネートポリオール(B)の平均水酸基価は、40~500mgKOH/gであることが好ましく、50~300mgKOH/gであることがより好ましい。平均水酸基価が40mgKOH/g以上であると、ポリウレタン樹脂中のウレタン基濃度が低くなり過ぎず、耐候性がさらに向上する。平均水酸基価が500mgKOH/g以下であるとウレタン基濃度が高くなり過ぎず、塗膜外観が良好になりやすい。
【0049】
ポリカーボネートポリオール(B)の数平均分子量は、400~4,000g/molであることが好ましく、500~3000g/molであることがより好ましい。数平均分子量が400g/mol以上であるとポリウレタン中のウレタン基濃度が高くなり過ぎず、塗膜外観が良好になりやすい。数平均分子量が4000g/mol以下であるとポリウレタン樹脂中のウレタン基濃度が低くなり過ぎず、耐候性がさらに向上する
【0050】
ポリカーボネートポリオール(B)のエステル基濃度は、10~90質量%であることが好ましく、15~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることがさらに好ましく、25~60質量%であることが特に好ましい。エステル基濃度が10質量%以上であると低温特性、基材密着性に優れるポリウレタン樹脂が得られやすい傾向にある。エステル基濃度が90質量%以下であると耐候性に優れるポリウレタン樹脂が得られやすい傾向にある。
【0051】
ポリカーボネートポリオール(B)の性状は、ハンドリング性及びウレタン樹脂組成物として使用された際の塗料外観の観点から、常温で液状であることが好ましい。
【0052】
(ポリカーボネートポリオール(B)の製造方法)
ポリカーボネートポリオール(B)は、ポリカーボネートポリオール(b-1)と平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)と、必要に応じて平均水酸基官能基数が2以上3未満のポリエステルポリオール(b-3)と、をエステル交換反応させることによって製造することができる。このとき、触媒を使用することが好ましく、触媒の使用量としては、ポリカーボネートポリオール(b-1)と平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)の合計質量、又は、ポリエステルポリオール(b-3)を含む場合、ポリカーボネートポリオール(b-1)と、平均水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(b-2)と、ポリエステルポリオール(b-3)の合計質量の0.0001~1質量%、好ましくは0.001~0.1質量%である。触媒量が下限値以上の場合は、反応時間が長くなることをさらに抑制できるため、得られるポリカーボネートポリオールがさらに着色しにくくなる。触媒量が上限値以下の場合は、濁度がさらに抑制される。
エステル交換反応の反応温度としては、70~250℃が好ましく、80~220℃がより好ましい。
【0053】
<水酸基含有アクリル樹脂(C)>
本実施形態で用いる水酸基含有アクリル樹脂(C)は、表面硬度、耐水性、耐候性、耐熱性等を付与する成分である。本実施形態の水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基を有するアクリル系単量体に由来する構造単位を必須とした重合体であれば特に限定はなく、適宜、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、その他アクリル系単量体及び共重合可能なエステル基を有するアクリル系単量体や、その他のビニル系単量体等の単量体に由来する構造単位をさらに含んだ共重合体であってもよく、重合体を構成する構造単位の種類は特に限定されない。
【0054】
水酸基を有するアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸-1-ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチルや、これらのε-カプロラクトン付加物等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0055】
カルボキシル基を有するアクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びこれらの無水物等の不飽和カルボン酸類等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0056】
エステル基を有するアクリル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0057】
その他のビニル系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;スチレン等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。水酸基含有アクリル樹脂は、上記アクリル系単量体及びビニル系単量体から、適宜単量体を選んで、ラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤等により重合させることによって得られる。
【0058】
水酸基含有アクリル樹脂(C)の水酸基価は、特に限定されないが、30~500mgKOH/gであることが好ましく、50~300mgKOH/gであることがより好ましく、70~200mgKOH/gであることがさらに好ましく。水酸基価が50mgKOH/g以上であることにより、塗料組成物から得られる塗膜の塗膜硬度や塗膜強度がより向上する傾向にあり、初期の耐傷性がより良好となる傾向にある。また、水酸基価が500mgKOH/g以下であることにより、塗料組成物から得られる塗膜の架橋密度が適切な範囲に調整され、耐候性がより良好となる傾向にある。
【0059】
水酸基含有アクリル樹脂(C)の数平均分子量は、特に限定されないが、500~10000g/molであることが好ましく、1500~8000g/molであることがより好ましく、2000~6000g/molであることがさらに好ましい。水酸基含アクリル樹脂(C)の数平均分子量が500g/mol以上であることにより、塗料組成物から得られる塗膜の傷回復性がより良好となる傾向にある。また、水酸基含アクリル樹脂(C)の数平均分子量が10000g/mol以下であることにより、塗料組成物の粘度が適切な範囲に調整され、塗装外観が良好となり、かつ初期の耐傷性が良好となる傾向にある。
【0060】
上記水酸基含有アクリル樹脂(C)のガラス転移温度は、特に限定されないが、-20~70℃であることが好ましく、0℃~60℃であることがより好ましい。水酸基含有アクリル樹脂(C)のガラス転移温度が-20℃以上であることにより、塗料組成物から得られる塗膜の表面硬度が高くなり、初期の耐傷性が良好となる傾向にある。また水酸基含有アクリル樹脂(C)のガラス転移温度が70℃以下であることにより、塗料組成物から得られる塗膜の硬度が適切な範囲に調整され、傷回復性がより良好となる傾向にある。
【0061】
水酸基含有アクリル樹脂(C)としては、例えば、市販品を使用することができ、具体的には、アクリディックA-801、アクリディック54-768、アクリディックHU-596、アクリディックA-49-394-IM、アクリディックA-859、アクリディックA-858、Nuplex社製Setalux1152、Setalux1184、Setalux1767、三菱レイヨン社製LR-7606、日本ペイント社製スーパーラックO-150クリヤー等を好適に使用することができる。
【0062】
(ポリカーボネートポリオール(B)の含有量)
耐候試験後の20°での光沢度保持率が高く、色差ΔEが低いポリウレタン樹脂の形成が可能になることから、ポリカーボネートポリオール(B)の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中のポリオール(A)の含有量と、水酸基含有アクリル樹脂(C)の固形分の含有量と、の総和に対して、5.0質量%以上、7.0質量%以上、10.0質量%以上、15.0質量%以上、または20.0質量%以上であってよく、90質量%以下であり、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、または50質量%以下であってよい。ポリカーボネートポリオール(B)の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中のポリオール(A)の含有量と、水酸基含有アクリル樹脂(C)の固形分の含有量と、の総和に対して、例えば、5.0~90質量%であってよく、8.0~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、15~60質量%がさらに好ましく、20~50質量%が特に好ましい。ポリカーボネートポリオール(B)の含有量が上記範囲であると、塗膜外観が良好で、耐候試験後の20°での光沢度保持率が高く、色差ΔEが低いポリウレタン樹脂が得られやすい。
【0063】
<ポリイソシアネート(D)>
ポリイソシアネート(D)は、イソシアネート基(-N=C=O)を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基の数は、例えば、6以下、4以下、または3以下であってよい。ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基の数は、例えば、2~3であってよく、2であってよい。ポリイソシアネート(D)は、例えば、複数のイソシアネート基と、複数のイソシアネート基を連結する炭化水素基と、を有する化合物であってよい。
【0064】
ポリイソシアネート(D)としては、特に限定されず、従来公知の各種ポリイソシアネートが挙げられる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等;これら有機ポリイソシアネートとアルコールとの反応から得られるアロファネート変性ポリイソシアネート等:ならびに、これらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0065】
硬化塗膜の耐酸性、耐アルカリ性、耐アルコール性、耐油性、耐磨耗性、耐傷付き性を向上させる観点から、ポリイソシアネート(D)は、1分子中に2.5以上のイソシアネート基及び/又はブロックドイソシアネート基を有する、脂肪族及び/又は脂環族有機イソシアネート化合物であることが好ましく、具体的にはビウレット、アロファネート、ウレトジオン、イソシアヌレート等のジイソシアネート誘導体、及び多価アルコールアダクト型がより好ましい。
【0066】
ポリイソシアネート(D)が有するイソシアネート基の総モル数に対する、ポリオール(A)と水酸基含有アクリル樹脂(C)とが有する水酸基の総モル数の比(水酸基/イソシアネート基)が、例えば、0.500以上、0.600以上または0.700以上であってよく、1.20以下、1.10以下、または1.00以下であってよい。
【0067】
<ポリウレタン樹脂組成物の製造方法>
ポリウレタン樹脂組成物は、例えば、ポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、水酸基含有アクリル樹脂(C)と、ポリイソシアネート(D)とを反応させることにより、ポリウレタン樹脂組成物を得る工程とを含む方法によって製造することができる。
【0068】
ポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、水酸基含有アクリル樹脂(C)と、ポリイソシアネート(D)とを配合する際、硬化工程の短縮や反応率の向上を目的として、触媒を使用することができる。触媒は、ウレタン化反応触媒としてはトリエチルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン等の第3級アミン触媒、又は、スタナスオクトエート、スタナスオレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫系触媒に代表される金属等:ならびに、これらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0069】
<不活性有機溶剤>
本実施形態の塗料組成物には、塗装時の作業性を調整するために、必要に応じて不活性有機溶剤を塗料組成物全量に対し10~90質量%含有することができる。不活性有機溶剤の含有量は、20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましい。
【0070】
不活性有機溶剤としては、特に限定されないが、実質的にポリイソシアネート化合物に対して不活性な有機溶媒であり且つ活性水素を有しないものであることが好ましい。その例としては、特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類、トリクロロフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロエーテル等の弗素化油等の弗素系不活性液体、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロデカリン、パーフルオロ-n-ブチルアミン、パーフルオロポリエーテル、ジメチルポリシロキサン等の単独又は混合物が挙げられる。さらには、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン等、及びこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0071】
<その他の添加剤>
本実施形態の塗料組成物には、各種用途に応じて硬化促進剤(触媒)、充填剤、難燃剤、染料、有機又は無機顔料、離型剤、流動性調整剤、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、溶剤等を添加することができる。
【0072】
硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、モノアミンであるトリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアミンであるテトラメチルエチレンジアミン、その他トリアミン、環状アミン、ジメチルエタノールアミンのようなアルコールアミン、エーテルアミン、金属触媒としては特に限定されないが、例えば、酢酸カリウム、2-エチルへキサン酸カリウム、酢酸カルシウム、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ビスマスネオデカノエート、ビスマスオキシカーボネート、ビスマス-2-エチルヘキサノエート、オクチル酸亜鉛、亜鉛ネオデカノエート、ホスフィン、ホスホリン等、一般的に用いられるものが使用できる。
【0073】
充填剤や顔料としては、特に限定されないが、例えば、織布、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、雲母、カオリン、ベントナイト、金属粉、アゾ顔料、カーボンブラック、クレー、シリカ、タルク、石膏、アルミナ白、炭酸バリウム等一般的に用いられているものが使用できる。
【0074】
離型剤や流動性調整剤、レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン、エアロジル、ワックス、ステアリン酸塩、BYK-331、BYK-Silcrean-370(BYKケミカル社製)のようなポリシロキサン等が用いられる。
【0075】
本実施形態に用いられる添加剤としては少なくとも酸化防止剤、光安定剤及び熱安定剤が用いられることが好ましい。これらの酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば、燐酸、亜燐酸、の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体特にヒンダードフェノール化合物、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0076】
<塗装方法>
本実施形態の塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、各々の成分を塗装直前に混合した後、スプレー、ロール、はけ等で基材に塗布する方法が用いられる。予め、硬化剤である成分以外を混合しておき、塗布直前に成分を添加し均一に混合した後、塗布する方法も可能である。
【0077】
<用途>
本実施形態の塗料組成物は、耐候性に優れるため、自動車外装用クリア塗料、自動車内装用塗料として好適に使用される。また、家電製品、OA製品、皮革の表面処理、合成皮革の表面処理、等に好ましく用いることができる。
【0078】
前記の基材としては、ステンレス、リン酸処理鋼、亜鉛鋼、鉄、銅、アルミニウム、真鍮、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂、6-ナイロン樹脂、6,6-ナイロン樹脂、MXD6ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、NBR樹脂、クロロプレン樹脂、SBR樹脂、SEBS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂などの素材で成型された基材やポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、6-ナイロン樹脂、6,6-ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース、ポリ乳酸、綿、ウールから選ばれる少なくとも1種類を主成分とする有機繊維やガラスウールなどの無機繊維、炭素繊維を挙げることができる。
【0079】
これらの基材は、接着性を上げるために、基材表面を予めコロナ放電処理、フレーム処理、紫外線照射処理、及びオゾン処理等の処理をすることもできる。
【0080】
本開示の一態様によれば、耐候試験後の光沢保持率が高く、色差が低い塗膜の作製に資するポリウレタン樹脂組成物、および塗料組成物を提供することができる。本開示の他の態様によれば、耐候性に優れる塗膜を提供することができる。さらに、各態様にかかる塗膜は、その外観が良好である。
【実施例0081】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における%、部表記は、特に断りのない限り質量基準である。
【0082】
<各組成の計算方法>
(みなし平均水酸基官能基数)
平均水酸基官能基数が2を超えるポリオール(A-1)、またはポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均水酸基官能基数はGPC(Gel Permeation Chromatography)測定より得られる数平均分子量と水酸基価から算出した。本来であれば、みなし平均水酸基官能基数は真の数平均分子量と平均水酸基価から算出されるが、平均水酸基官能基数が2を超えるポリオール(A-1)、ポリカーボネートポリオール(B)の真の数平均分子量の算出が難しいため、GPC測定よりPPG検量線より換算される数平均分子量を用い、みなし平均水酸基官能基数として定義する。みなし平均水酸基官能基数は下記式より定義する。
みなし平均水酸基官能基数=(ポリカーボネートポリオール(B)の平均水酸基価(mgKOH/g)×ポリカーボネートポリオール(B)のGPC測定よりPPG検量線から算出される数平均分子量(g/mol))/(56.11(KOHg/mol)×1000)
なお、平均水酸基官能基数が2を超えるポリオール(A-1)のみなし平均水酸基官能基数の算出する場合、「ポリカーボネートポリオール(B)」は「ポリオール(A-1)」と読み替えるものとする。
【0083】
[エステル基濃度]
ポリカーボネートポリオール(B)のエステル基濃度は原料となるポリカーボネート化合物(ポリカーボネートポリオール(b-1)等)とポリエステル化合物(ポリエステルポリオール(b-2)、ポリエステルポリオール(b-3)等)との仕込み量から算出した。エステル基濃度は下記式より定義する。
エステル基濃度(質量%)=ポリエステル化合物の仕込み量(g)/(ポリカーボネート化合物の仕込み量(g)+ポリエステル化合物の仕込み量(g))×100
【0084】
(ポリカーボネートポリオール(B)の含有量)
ポリウレタン樹脂組成物中のポリカーボネートポリオール(B)の含有量はポリオール(A)と、水酸基含有アクリル樹脂(C)と、を混合した際の固形分での質量比から算出した。従って、ポリカーボネートポリオール(B)の含有量は下記式より定義する。
【0085】
ポリカーボネートポリオール(B)の含有量(質量%)=ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g)/(ポリオール(A)の仕込み量(g)+水酸基含有アクリル樹脂(C)の固形分の仕込み量(g))×100
【0086】
(ウレタン基濃度)
ポリウレタン樹脂組成物中のウレタン基濃度はポリオール(A)と、水酸基含有アクリル樹脂(C)と、ポリイソシアネート(D)を混合した際の固形分での質量比から算出した。従って、ウレタン基濃度は下記式より定義する。
【0087】
ウレタン基濃度(mmol/g)=(ポリオール(A)の水酸基価(KOHmg/g)/56.11(KOHg/mol)×ポリオール(A)の仕込み量+水酸基含有アクリル樹脂(C)の水酸基価(KOHmg/g)/56.11(KOHg/mol)×水酸基含有アクリル樹脂(C)の仕込み量(g))/(ポリオール(A)の仕込み量(g)+水酸基含有アクリル樹脂(C)の固形分の仕込み量(g)+ポリイソシアネート(D)の仕込み量(g))
(分析評価)
[数平均分子量の測定]
以下の条件で、得られた組成物のGPC分析を行い、組成物の数平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
-条件-
(1)測定器:HLC-8420(東ソー社製)
(2)カラム:TSKgel(東ソー社製)
・G3000H-XL
・G3000H-XL
・G2000H-XL
・G2000H-XL
(3)移動相:THF(テトラヒドロフラン)
(4)検出器:RI(屈折率)検出器(HLC-8420付属品)
(5)温度:40℃
(6)流速:1.000ml/min
(7)検量線:以下の商品(いずれも三洋化成工業社製の2官能のポリオキシプロピレンポリオール)を用いて、検量線を得た。
・「サンニックスPP-200」(数平均分子量=200、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-400」(数平均分子量=400、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-1000」(数平均分子量=1000、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-2000」(数平均分子量=2000、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-3000」(数平均分子量=3200、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-4000」(数平均分子量=4160、平均官能基数:2)
(8)検量線の近似式:3次式
(9)サンプル溶液濃度:0.5質量%THF溶液
【0089】
[水酸基価(OHv)の測定]
JIS K1557-1に準拠し、アセチル化試薬を用いた方法にて得られた組成物の水酸基価を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
[性状評価]
得られた組成物をサンプルとし、該サンプルを80℃で1時間加熱した後、25℃で3日間放置した。放置後のサンプルの状態を目視により確認し、上記温度で僅かでも流動性があれば液状とし、流動性がない場合には固体とした。結果を表1に示す。
【0091】
〔ポリオールの製造1〕
攪拌機、温度計、加熱装置、規則充填物を充填した精留塔及び冷却器を組んだ2L二口ガラス製反応器に、1,6-ヘキサンジオール826g、炭酸ジエチル787g、およびテトラブチルチタネート0.05gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~190℃で8時間反応させた。さらに反応温度を190℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCD-1)。
【0092】
〔ポリオールの製造2〕
攪拌機、温度計、加熱装置、規則充填物を充填した精留塔及び冷却器を組んだ2L二口ガラス製反応器に、1,6-ヘキサンジオール830g、炭酸ジエチル771g、およびテトラブチルチタネート0.05gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~190℃で8時間反応させた。さらに反応温度を190℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCD-2)。
【0093】
〔ポリオールの製造3〕
攪拌機、温度計、加熱装置、規則充填物を充填した精留塔及び冷却器を組んだ1L二口ガラス製反応器に、1,6-ヘキサンジオール107.6g、1,5-ペンタンジオール94.8g、炭酸ジエチル197.6g、およびテトラブチルチタネート0.02gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~190℃で8時間反応させた。さらに反応温度を190℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCD-3)。
【0094】
〔ポリオールの製造4〕
攪拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ1L四つ口ガラス製反応器にポリオールの製造1で得られたポリオール(PCD-1)575g、ポリカプロラクトントリオール(プラクセル305)400g、ポリカプロラクトンジオール(プラクセル210)25g、炭酸水素カリウム0.03gを仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、ポリオールを得た(PCP-1)。
【0095】
〔ポリオールの製造5〕
攪拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ1L四つ口ガラス製反応器にポリオールの製造2で得られたポリオール(PCD-2)674g、ポリカプロラクトントリオール(プラクセル305)326g、炭酸水素カリウム0.03gを仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、ポリオールを得た(PCP-2)。
【0096】
〔ポリオールの製造6〕
攪拌機、温度計、加熱装置、規則充填物を充填した精留塔及び冷却器を組んだ1L二口ガラス製反応器に、1,6-ヘキサンジオール322.3g、1,4-ブタンジオール61.4g、トリメチロールプロパン73.2g、炭酸ジエチル443.0g、およびリチウムアセチルアセトナート0.045を混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-3)。
【0097】
【表1】
【0098】
ポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)、水酸基含有アクリル樹脂(C)及びポリイソシアネート(D)、硬化用触媒、リン化合物、レベリング剤を表2に記載のとおりにして混合し、混合直後の液をカラーアルミEPホワイト(パルテック製)に流し、アプリケーターにて厚さ100μmの溶液になるようにキャストして、25℃にて30分、80℃で12時間、乾燥させることにより塗膜を作成した。この塗膜をサンプルとして、以下の項目について評価を行った。結果を表2に示す。表中の仕込単位はグラムである。
【0099】
[評価試験]
<塗膜外観>
塗膜外観は乾燥後の塗膜状態を目視により判断し、塗膜状態が平滑であれば良好とした。
【0100】
<耐候試験>
表2に示す配合で得られた塗料から作製したコーティング塗膜(乾燥後膜厚約20μm)を、下記の条件で耐候性の加速試験を行った。
・試験装置:QUV(Q-LAB社製)
・ランプ:EL-313
・照度:0.59w/m2
・λmax:313nm
・1サイクル:12時間〔UV照射:8時間(温度70℃)、結露:4時間(温度50℃)〕
・試験時間:504時間
【0101】
[塗膜特性]
<20°光沢保持率>
JIS Z8741に準じて、光沢度計(製品名:micro-TRI-gloss、BYK社製)にて、20°における光沢度を測定し、光沢保持率を算出した。光沢保持率は次式(式-1)により求めた。
光沢保持率(%)=耐候試験後光沢度÷初期光沢度×100 (式-1)
【0102】
<色差ΔE>
JIS Z28722に準じて、ハンディ測色計測(spectro 2 guide 45°:C:0°、BYK社製)にて、L*値、a*値、b*値を測定し、色差ΔEを算出した。色差ΔEは次式(式-2)により求めた。
色差ΔE=[(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2 (式-2)
ΔL*=L*(耐候試験後)-L*(耐候試験前)
Δa*=a*(耐候試験後)-a*(耐候試験前)
Δb*=b*(耐候試験後)-b*(耐候試験前)
【0103】
[評価基準]
20°光沢保持率が60%以上、色差ΔEが4.5以下を満たす場合、評価良好とした。塗膜外観が良好、光沢保持率が60%以上、色差ΔEが4.5以下を満たす場合、評価は極めて良好とした。
【0104】
【表2】
【0105】
・1,4-ブタンジオール:富士フイルム和光純薬社製
・1,5-ペンタンジオール:富士フイルム和光純薬社製
・1,6-ヘキサンジオール:BASF-JAPAN社製
・トリメチロールプロパン:Sigma-Aldrich社製
・炭酸ジエチル:Sigma-Aldrich社製
・プラクセル305 ポリカプロラクトントリオール(分子量=550、水酸基価=305、官能基数=3) ダイセル社製
・プラクセル210 ポリカプロラクトンジオール(分子量=1000、水酸基価=112、官能基数=2) ダイセル社製
・テトラブチルチタネート:東京化成工業社製
・炭酸水素カリウム:富士フイルム和光純薬社製
・リチウムアセチルアセトナート:Sigma-Aldrich社製
・アクリディックA-801:DIC社製(固形分50%、OHv:50mgKOH/g、水酸基含有アクリル樹脂)
・C-HXLV:(HDI系イソシアヌレート、NCO含量:23.2%、固形分:50%、東ソー社製)
・酢酸ブチル:東京化成工業社製
・BYK-Silcrean-370:ビックケミ―社製
・DOTDL:ジオクチルスズジラウレート、キシダ化学工業社製
・JP-508:商品名、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、城北化学工業社