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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145536
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】膜形成方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20241004BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241004BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/31 C
C23C16/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057931
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 博紀
(72)【発明者】
【氏名】酒井 宗一朗
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA44
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030FA10
4K030GA02
4K030GA06
4K030HA01
4K030JA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA11
4K030LA02
4K030LA15
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB32
5F045AC05
5F045AC07
5F045AC11
5F045AC12
5F045AD08
5F045AD09
5F045AE19
5F045BB09
5F045DP19
5F045DP28
5F045EE17
5F045EF03
5F045EH12
5F045EK06
5F058BA08
5F058BA09
5F058BA20
5F058BC02
5F058BC03
5F058BD04
5F058BD05
5F058BF07
5F058BF21
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
5F058BH07
(57)【要約】
【課題】基板に所定元素と酸素とを含有する酸化膜を形成する膜形成方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板に少なくとも所定元素と酸素とを含有する酸化膜を形成する膜形成方法であって、(a)前記基板に、前記所定元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、(b)前記基板に、前記所定元素を含有し、前記所定元素と酸素との結合及び前記所定元素と水酸基との結合を有し、前記第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを供給する工程と、(c)工程(a)と工程(b)とを1サイクルとして、前記サイクルを複数回繰り返す工程と、を有する、膜形成方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に少なくとも所定元素と酸素とを含有する酸化膜を形成する膜形成方法であって、
(a) 前記基板に、前記所定元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b) 前記基板に、前記所定元素を含有し、前記所定元素と酸素との結合及び前記所定元素と水酸基との結合を有し、前記第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを供給する工程と、
(c) 工程(a)と工程(b)とを1サイクルとして、前記サイクルを複数回繰り返す工程と、を有する、
膜形成方法。
【請求項2】
(d) 前記基板に、前記基板の表面を改質する改質ガスを供給する工程をさらに含む、
請求項1に記載の膜形成方法。
【請求項3】
工程(d)は、前記改質ガスのプラズマを前記基板に供給する、
請求項2に記載の膜形成方法。
【請求項4】
前記改質ガスは、水素含有ガス、酸素含有ガス、窒素含有ガスのうち、少なくともいずれかを含む、
請求項2に記載の膜形成方法。
【請求項5】
工程(c)は、工程(a)、工程(b)、工程(d)の順番で、複数回繰り返す工程と、を有する、
請求項2に記載の膜形成方法。
【請求項6】
前記所定元素は、Si、Ge、B、Al、Hf、Zr、Ta、La、Tiのうち、少なくともいずれかを含む、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項7】
前記所定元素は、Siであり、
前記第1原料ガスは、前記所定元素と水素との結合、前記所定元素とハロゲン元素との結合、所定元素と窒素との結合のうち、少なくともいずれかを含む、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項8】
前記所定元素は、Siであり、
前記第1原料ガスは、シラン系ガス、クロロシラン系ガス、シリルアミン系ガスのうち、少なくともいずれかを含む、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項9】
前記第2原料ガスは、シラノール系ガスである、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項10】
前記所定元素は、金属元素であり、
前記第1原料ガスは、前記金属元素のハロゲン化物であり、
前記第2原料ガスは、前記金属元素の水酸化物である、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項11】
前記所定元素は、金属元素であり、
前記第1原料ガスは、前記金属元素のハロゲン化物であり、
前記第2原料ガスは、前記金属元素を含む金属アルコキシドに水素ラジカルを供給して形成する、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項12】
処理容器と、
前記処理容器内で基板を支持する基板支持部と、
前記処理容器内に、所定元素を含有する第1原料ガスを供給する第1原料ガス供給部と、
前記処理容器内に、前記所定元素を含有し、前記所定元素と酸素との結合及び前記所定元素と水酸基との結合を有し、前記第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを供給する第2原料ガス供給部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
(a) 前記基板に、前記所定元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b) 前記基板に、前記所定元素を含有し、前記所定元素と酸素との結合及び前記所定元素と水酸基との結合を有し、前記第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを供給する工程と、
(c) 工程(a)と工程(b)とを1サイクルとして、前記サイクルを複数回繰り返す工程と、を実行可能に構成される、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膜形成方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ルイス酸特性を有する金属または半金属化合物を含有する領域を含む加熱された基板をシラノール蒸気にさらして、基板の酸性領域上に2nmを超える厚さを有するシリカ層を形成することを含む、基板上にシリカ層を形成する方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、被処理体が収容された反応室内に、1価のアミノシランを供給し、前記被処理体にシリコンを吸着させる吸着ステップと、前記吸着ステップで吸着されたシリコンに活性化された酸化ガスを供給し、当該シリコンを酸化させ、前記被処理体にシリコン酸化膜を形成するシリコン酸化膜形成ステップと、を備え、前記吸着ステップと、前記シリコン酸化膜形成ステップとを、複数回繰り返す、ことを特徴とするシリコン酸化膜の形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005-521792号公報
【特許文献2】特開2012-28741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一の側面では、本開示は、基板に所定元素と酸素とを含有する酸化膜を形成する膜形成方法及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、基板に少なくとも所定元素と酸素とを含有する酸化膜を形成する膜形成方法であって、(a)前記基板に、前記所定元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、(b)前記基板に、前記所定元素を含有し、前記所定元素と酸素との結合及び前記所定元素と水酸基との結合を有し、前記第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを供給する工程と、(c)工程(a)と工程(b)とを1サイクルとして、前記サイクルを複数回繰り返す工程と、を有する、膜形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、基板に所定元素と酸素とを含有する酸化膜を形成する膜形成方法及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る基板処理装置の構成例を示す概略図。
図2】第1実施形態に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャート。
図3】第1実施形態に係る膜形成処理における基板表面の状態の一例を示す模式図。
図4】温度、圧力に対する成膜速度及び膜厚の面内均一性の一例を示すグラフ。
図5】サイクル数に対する膜厚及び膜厚の面内均一性の一例を示すグラフ。
図6】膜形成処理の一例を示すタイムチャート。
図7】各膜形成処理におけるSiO膜の増膜量の一例を示すグラフ。
図8】各膜形成処理におけるSiO膜の増膜レートの一例を示すグラフ。
図9】第2実施形態に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャート。
図10】成膜速度及の一例を示すグラフ。
図11】ウェットエッチングレート及び熱処理による収縮の一例を示すグラフ。
図12】第3実施形態に係る基板処理装置の構成例を示す概略図。
図13】第3実施形態に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャート。
図14】第3実施形態に係る膜形成処理における基板表面の状態の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〔基板処理装置〕
第1実施形態に係る基板処理装置100について、図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る基板処理装置100の構成例を示す概略図である。基板処理装置100は、基板Wに少なくとも所定元素と酸素(O)とを含有する酸化膜を形成する成膜装置である。ここで、所定元素は、ケイ素(Si)、金属元素(例えば、Ge、B、Al、Hf、Zr、Ta、La、Ti等)のうち、少なくともいずれかを含む。即ち、基板処理装置100は、基板Wにシリコン酸化膜または金属酸化膜を形成する成膜装置である。また、酸化膜は、他の元素、例えば炭素(C)、窒素(N)等を含有してもよい。以下の説明において、所定元素はケイ素(Si)であり、基板に形成する酸化膜はシリコン酸化膜(SiO)である場合を例に説明する。
【0011】
基板処理装置100は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理容器1を有する。処理容器1の全体は、例えば石英により形成されている。処理容器1内の上端近傍には、石英により形成された天井板2が設けられており、天井板2の下側の領域が封止されている。処理容器1の下端の開口には、円筒体状に成形された金属製のマニホールド3がOリング等のシール部材4を介して連結されている。
【0012】
マニホールド3は、処理容器1の下端を支持しており、マニホールド3の下方から基板として多数枚(例えば25~150枚)の半導体ウエハ(以下「基板W」という。)を多段に載置したウエハボート(基板支持部)5が処理容器1内に挿入される。このように処理容器1内には、上下方向に沿って間隔を有して多数枚の基板Wが略水平に収容される。ウエハボート5は、例えば石英により形成されている。ウエハボート5は、3本のロッド6を有し(図1では2本を図示する。)、ロッド6に形成された溝(図示せず)により多数枚の基板Wが支持される。
【0013】
ウエハボート5は、石英により形成された保温筒7を介してテーブル8上に載置されている。テーブル8は、マニホールド3の下端の開口を開閉する金属(ステンレス)製の蓋体9を貫通する回転軸10上に支持される。
【0014】
回転軸10の貫通部には、磁性流体シール11が設けられており、回転軸10を気密に封止し、且つ回転可能に支持している。蓋体9の周辺部とマニホールド3の下端との間には、処理容器1内の気密性を保持するためのシール部材12が設けられている。
【0015】
回転軸10は、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム13の先端に取り付けられており、ウエハボート5と蓋体9とは一体として昇降し、処理容器1内に対して挿脱される。なお、テーブル8を蓋体9側へ固定して設け、ウエハボート5を回転させることなく基板Wの処理を行うようにしてもよい。
【0016】
また、基板処理装置100は、処理容器1内へ処理ガス、パージガス等の所定のガスを供給するガス供給部20を有する。
【0017】
ガス供給部20は、ガス供給管21~24を有する。ガス供給管21,22,23は、例えば石英により形成されており、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方へ屈曲されて垂直に延びる。ガス供給管21,22,23の垂直部分には、ウエハボート5のウエハ支持範囲に対応する上下方向の長さに亘って、複数のガス孔21g,22g,23gが所定間隔で形成されている。各ガス孔21g,22g,23gは、水平方向にガスを吐出する。ガス供給管24は、例えば石英により形成されており、マニホールド3の側壁を貫通して設けられた短い石英管からなる。
【0018】
ガス供給管(第1原料ガス供給部)21は、その垂直部分(ガス孔21gが形成される垂直部分)が処理容器1内に設けられている。ガス供給管21には、ガス配管を介してガス供給源21aから第1原料ガスが供給される。ガス配管には、流量制御器21b及び開閉弁21cが設けられている。これにより、ガス供給源21aからの第1原料ガスは、ガス配管及びガス供給管21を介して処理容器1内に供給される。
【0019】
ガス供給源21aは、所定元素(例えばSi)を含有する第1原料ガスを供給する。ここで、第1原料ガスは、基板表面に形成された終端基(例えば、-OH、-NH、-Cl、-H等)又は未結合手(-(D/B))のうち、少なくともいずれかと反応性の高い官能基を有する。また、第1原料ガスは、所定元素と水素(H)との結合(Si-H)、所定元素とハロゲン元素(例えば、Cl)との結合(Si-Cl)、所定元素と窒素(N)との結合(Si-N)のうち、少なくともいずれかを含む。具体的には、所定元素がケイ素(Si)である場合、第1原料ガスは、シラン系ガス、クロロシラン系ガス、シリルアミン系ガスのうち、少なくともいずれかを含む。
【0020】
以下の説明において、第1原料ガスは、クロロシラン系ガスである場合を例に説明する。また、第1原料ガスとして、SiCl、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl等の無機ハライド(無機ハロゲン化物)を好適に用いることができる。具体的には、第1原料ガスは、PCDS(Pentachlorodisilane)である場合を例に説明する。PCDSの化学式を以下に示す。
【0021】
【化1】
【0022】
ガス供給管(第2原料ガス供給部)22は、その垂直部分(ガス孔22gが形成される垂直部分)が処理容器1内に設けられている。ガス供給管22には、ガス配管を介してガス供給源22aから第2原料ガスが供給される。ガス配管には、流量制御器22b及び開閉弁22cが設けられている。これにより、ガス供給源22aからの第2原料ガスは、ガス配管及びガス供給管22を介して処理容器1内に供給される。
【0023】
ガス供給源22aは、所定元素(例えばSi)を含有し、所定元素と酸素(O)との結合(Si-O)及び所定元素と水酸基(-OH)との結合(Si-OH)を有し、第1原料ガスとは異なる第2原料ガスを供給する。また、所定元素がケイ素(Si)である場合、第2原料ガスは、シラノール系ガスを含む。また、第2原料ガスとして、有機シラノールを好適に用いることができる。
【0024】
以下の説明において、第2原料ガスは、TPSOL(Tris(tert-pentoxy)silanol)である場合を例に説明する。TPSOLの化学式を以下に示す。
【0025】
【化2】
【0026】
ガス供給管(改質ガス供給部)23は、その垂直部分(ガス孔23gが形成される垂直部分)が後述するプラズマ生成空間に設けられている。ガス供給管23には、ガス配管を介してガス供給源23aから改質ガスが供給される。ガス配管には、流量制御器23b及び開閉弁23cが設けられている。これにより、ガス供給源23aからの改質ガスは、ガス配管及びガス供給管23を介してプラズマ生成空間に供給され、プラズマ生成空間においてプラズマ化されて、改質ガスの活性種(イオン、ラジカル等)が処理容器1内に供給される。
【0027】
ガス供給源23aは、改質ガスを供給する。改質ガスは、水素含有ガス、酸素含有ガス、窒素含有ガスのうち、少なくともいずれかを含む。具体的には、水素(H)ガス、酸素(O)ガス、水素と酸素の混合ガス、水(HO)、NHガス等のガスを用いることが可能である。
【0028】
なお、基板処理装置100は、改質ガスのプラズマを生成して、処理容器1内の基板Wに供給するプラズマ処理装置であるものとして説明したが、これに限られるものではない。基板処理装置100は、所望の温度に加熱された処理容器1内の基板Wにガス供給管23から改質ガスを供給してサーマル処理を施す基板処理装置であってもよい。
【0029】
また、図1に示す基板処理装置100は、改質ガス及び/又は改質ガスの活性種を処理容器1内に供給する構成(ガス供給管23、後述するプラズマ生成機構30等)を備えているものとして説明したが、これに限定されるものではない。改質ガス及び/又は改質ガスの活性種による処理を行わない基板処理装置100においては、これらの構成(ガス供給管23、後述するプラズマ生成機構30等)が省略されていてもよい。
【0030】
ガス供給管24には、ガス配管を介してパージガス供給源(図示せず)からパージガスが供給される。ガス配管(図示せず)には、流量制御器(図示せず)及び開閉弁(図示せず)が設けられている。これにより、パージガス供給源からのパージガスは、ガス配管及びガス供給管24を介して処理容器1内に供給される。パージガスとしては、例えばアルゴン(Ar)、窒素(N)等の不活性ガスを利用できる。なお、パージガスがパージガス供給源からガス配管及びガス供給管24を介して処理容器1内に供給される場合を説明したが、これに限定されず、パージガスはガス供給管21~23のいずれから供給されてもよい。
【0031】
処理容器1の側壁の一部には、プラズマ生成機構30が形成されている。プラズマ生成機構30は、改質ガスをプラズマ化して改質ガスの活性種(イオン、ラジカル等)を生成する。
【0032】
プラズマ生成機構30は、プラズマ区画壁32と、一対のプラズマ電極33(図1では1つを図示する。)と、給電ライン34と、高周波電源35と、絶縁保護カバー36と、を備える。
【0033】
プラズマ区画壁32は、処理容器1の外壁に気密に溶接されている。プラズマ区画壁32は、例えば石英により形成される。プラズマ区画壁32は断面凹状をなし、処理容器1の側壁に形成された開口31を覆う。開口31は、ウエハボート5に支持されている全ての基板Wを上下方向にカバーできるように、上下方向に細長く形成される。プラズマ区画壁32により規定されると共に処理容器1内と連通する内側空間、すなわち、プラズマ生成空間には、改質ガスを吐出するためのガス供給管23が配置されている。
【0034】
一対のプラズマ電極33(図1では1つを図示する。)は、それぞれ細長い形状を有し、プラズマ区画壁32の両側の壁の外面に、上下方向に沿って対向配置されている。各プラズマ電極33は、例えばプラズマ区画壁32の側面に設けられた保持部(図示せず)によって保持されている。各プラズマ電極33の下端には、給電ライン34が接続されている。
【0035】
給電ライン34は、各プラズマ電極33と高周波電源35とを電気的に接続する。図示の例では、給電ライン34は、一端が各プラズマ電極33の下端に接続されており、他端が高周波電源35と接続されている。
【0036】
高周波電源35は、各プラズマ電極33の下端に給電ライン34を介して接続され、一対のプラズマ電極33に例えば13.56MHzの高周波電力を供給する。これにより、プラズマ区画壁32により規定されたプラズマ生成空間内に、高周波電力が印加される。ガス供給管23から吐出された改質ガスは、高周波電力が印加されたプラズマ生成空間内においてプラズマ化され、これにより生成された改質ガスの活性種が開口31を介して処理容器1の内部へと供給される。
【0037】
絶縁保護カバー36は、プラズマ区画壁32の外側に、該プラズマ区画壁32を覆うようにして取り付けられている。絶縁保護カバー36の内側部分には、冷媒通路(図示せず)が設けられており、冷媒通路に冷却された窒素(N)ガス等の冷媒を流すことによりプラズマ電極33が冷却される。また、プラズマ電極33と絶縁保護カバー36との間に、プラズマ電極33を覆うようにシールド(図示せず)が設けられていてもよい。シールドは、例えば金属等の良導体により形成され、接地される。
【0038】
開口31に対向する処理容器1の側壁部分には、処理容器1内を真空排気するための排気口40が設けられている。排気口40は、ウエハボート5に対応して上下に細長く形成されている。処理容器1の排気口40に対応する部分には、排気口40を覆うように断面U字状に成形された排気口カバー部材41が取り付けられている。排気口カバー部材41は、処理容器1の側壁に沿って上方に延びている。排気口カバー部材41の下部には、排気口40を介して処理容器1を排気するための排気管42が接続されている。排気管42には、処理容器1内の圧力を制御する圧力制御バルブ43及び真空ポンプ等を含む排気装置44が接続されており、排気装置44により排気管42を介して処理容器1内が排気される。
【0039】
また、処理容器1の外周を囲むようにして処理容器1及びその内部の基板Wを加熱する円筒体状の加熱機構50が設けられている。
【0040】
また、基板処理装置100は、制御部60を有する。制御部60は、例えば基板処理装置100の各部の動作の制御、例えば開閉弁21c~23cの開閉による各ガスの供給・停止、流量制御器21b~23bによるガス流量の制御、排気装置44による排気制御を行う。また、制御部60は、例えば高周波電源35による高周波電力のオン・オフ制御、加熱機構50による基板Wの温度の制御を行う。
【0041】
制御部60は、例えばコンピュータ等であってよい。また、基板処理装置100の各部の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0042】
<第1実施形態に係る膜形成処理>
次に、基板処理装置100による膜形成処理の一例について説明する。図2は、第1実施形態に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。図3は、第1実施形態に係る膜形成処理における基板表面の状態の一例を示す模式図である。ここでは、第1原料ガスとしてPCDSを用い、第2原料ガスとしてTPSOLを用い、基板Wの表面(下地層300の表面)にシリコン酸化膜を形成する場合を例に説明する。
【0043】
図2に示される第1実施形態に係る膜形成処理は、第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101と、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102と、を1サイクルとして、このサイクルを複数回(所定サイクル)繰り返し、基板Wの表面にシリコン酸化膜を形成するプロセスである。なお、図2では、1サイクルを括弧付きで示す。また、サイクルを繰り返す間、ガス供給管24からパージガスであるNガスが膜形成処理中に常時(連続して)供給されていてよい。
【0044】
まず、制御部60は、基板Wを準備する。具体的には、制御部60は、昇降機構(図示せず)を制御して、多数枚の基板Wが載置されたウエハボート5を処理容器1内に挿入する。また、制御部60は、加熱機構50を制御して、処理容器1内の基板Wを所定の処理温度に制御する。
【0045】
第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101において、制御部60は、基板Wに第1原料ガスを供給する。具体的には、制御部60は、圧力制御バルブ43を制御して、処理容器1内を所定の圧力に制御する。また、制御部60は、開閉弁21c及び流量制御器21bを制御して、所定の流量の第1原料ガスを所定時間供給する。
【0046】
図3(a)は、膜形成処理の開始時における基板表面の状態の一例を示す模式図である。図3(a)に示す例では、基板Wの下地層300は、例えばシリコン層である。基板W(下地層300)の表面には、終端に(-OH)が形成されている。基板Wに第1原料ガスを供給することにより、第1原料ガスが終端の(-OH)と反応(例えば、脱水縮合)する。これにより、図3(b)に示すように、第1原料ガスの所定元素(Si)が基板Wの表面に結合するとともに、終端に(-Cl)及び/又は(-H)が形成される。
【0047】
第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102において、制御部60は、基板Wに第2原料ガスを供給する。具体的には、制御部60は、圧力制御バルブ43を制御して、処理容器1内を所定の圧力に制御する。また、制御部60は、開閉弁22c及び流量制御器22bを制御して、所定の流量の第2原料ガスを所定時間供給する。
【0048】
図3(b)は、第2原料ガスの供給開始時における基板表面の状態の一例を示す模式図である。基板W(下地層300)の表面には、終端に(-Cl)及び/又は(-H)が形成されている。基板Wに第2原料ガスを供給することにより、第2原料ガスが終端の水素(H)及び/又はハロゲン元素(Cl)と反応する。これにより、図3(c)に示すように、第2原料ガスの所定元素(Si)及び酸素(O)が基板Wの表面に結合するとともに、終端に(-OH)及び/又は(-R)が形成される。なお、Rは、TPSOLに由来する炭化水素基である。
【0049】
そして、次のサイクルの第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101において、制御部60は、同様に基板Wに第1原料ガスを供給する。
【0050】
図3(c)は、次のサイクルの第1原料ガスの供給開始時における基板表面の状態の一例を示す模式図である。基板W(下地層300)の表面には、終端に(-OH)及び/又は(-R)が形成されている。基板Wに第1原料ガスを供給することにより、第1原料ガスが終端の(-OH)及び/又は(-R)と反応する。これにより、第1原料ガスの所定元素(Si)が基板Wの表面に結合するとともに、終端に(-Cl)及び/又は(-H)が形成される。
【0051】
このように、制御部60は、第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101と、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102と、を1サイクルとして、このサイクルを複数回(所定サイクル)繰り返すことにより、基板W(下地層300)の表面にシリコン酸化膜を形成する。
【0052】
次に、第1実施形態に係る膜形成処理の成膜結果の一例について、図4及び図5を用いて説明する。
【0053】
図4は、温度、圧力に対する成膜速度及び膜厚の面内均一性の一例を示すグラフである。ここでは、処理温度(成膜温度)を200℃~550℃の範囲において、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102における処理容器1内の圧力を0.4Torrまたは9Torrとして、シリコン酸化膜の成膜速度及び膜厚の面内均一性をそれぞれ測定した。なお、第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101において、第1原料ガスの流量50sccm、第1原料ガスの供給時間30sec、処理容器1内の圧力4Torrとした。第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102において、第2原料ガスの流量1sccm、第2原料ガスの供給時間30secとした。また、ここでは100サイクル繰り返した。
【0054】
図4に示すグラフにおいて、横軸は処理温度(Process temp.)(℃)である。左側の縦軸は、1サイクル当りの成膜量である成膜速度(GPC:Growth per cycle)(A/cycle)を示す。右側の縦軸は、面内均一性(WIW)を示す。工程S102における圧力を0.4Torrとした場合における成膜速度GPCを白抜き四角印で示す。工程S102における圧力を9Torrとした場合における成膜速度GPCを黒塗り四角印で示す。工程S102における圧力を0.4Torrとした場合における面内均一性WIWを白抜き丸印で示す。工程S102における圧力を9Torrとした場合における面内均一性WIWを黒塗り丸印で示す。
【0055】
図4に示すように、成膜温度が増加するほど成膜量が増加する傾向を示している。また、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102における圧力に依存して成膜速度が増加する傾向を示している。
【0056】
図5は、サイクル数に対する膜厚及び膜厚の面内均一性の一例を示すグラフである。サイクル数を25回、50回、100回繰り返した場合において、シリコン酸化膜の膜厚及び膜厚の面内均一性をそれぞれ測定した。なお、処理温度(成膜温度)を500℃とした。第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101において、第1原料ガスの流量50sccm、第1原料ガスの供給時間30sec、処理容器1内の圧力4Torrとした。第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102において、第2原料ガスの流量1sccm、第2原料ガスの供給時間30sec、処理容器1内の圧力9Torrとした。
【0057】
図5に示すグラフにおいて、横軸はサイクル数(Cycle)である。左側の縦軸はシリコン酸化膜の膜厚(Thickness)(A)を示す。右側の縦軸は、面内均一性(WIW)を示す。膜厚(Thickness)を黒塗り丸印で示す。面内均一性WIWを白抜き丸印で示す。
【0058】
図5に示すように、第1実施形態に係る膜形成処理(図2参照)においては、サイクル数に応じてリニアに膜厚が増加する傾向を示している。また、サイクル数が増加しても、面内均一性が十分に小さい傾向を示している。
【0059】
次に、第1実施形態に係る膜形成処理の成膜結果の一例について、第1~3参考例に係る膜形成処理と対比しつつ、図6から図8を用いて説明する。
【0060】
図6(a)は、第1参考例に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。第1参考例に係る膜形成処理は、TPSOLのみを連続して供給する膜形成処理である。
【0061】
図6(b)は、第2参考例に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。第2参考例に係る膜形成処理は、TPSOLのみを間欠的に(不連続に)供給する膜形成処理である。換言すれば、第1実施形態に係る膜形成処理(図2図6(d)参照)における第2原料ガスの供給工程S102のみを行う膜形成処理である。
【0062】
図6(c)は、第3参考例に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。第3参考例に係る膜形成処理は、PCDSのみを間欠的に(不連続に)供給する膜形成処理である。換言すれば、第1実施形態に係る膜形成処理(図2図6(d)参照)における第1原料ガスS101の供給工程のみを行う膜形成処理である。
【0063】
図6(d)は、第1実施形態に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。第1実施形態に係る膜形成処理(併せて図2参照)では、第1原料ガス(PCDS)の供給工程S101と第2原料ガス(TPSOL)の供給工程S102とを交互に繰り返す膜形成処理である。
【0064】
図7は、各膜形成処理におけるSiO膜の増膜量(A)の一例を示すグラフである。図8は、各膜形成処理におけるSiO膜の増膜レート(A/min)の一例を示すグラフである。ここで、図8は、図7で検出増膜量をTOPSOLの総供給時間で割った値である。なお、(3-2)ではTPSOLを供給していないため、(3-1)及び(3-3)におけるTPSOLの総供給時間で割った値である。
【0065】
(1-1)は、図6(a)に示す第1参考例に係る膜形成処理において、処理温度450℃とし、TPSOLの供給工程における流量1sccm、供給時間30min、圧力0.5Torrとして膜形成処理を行った。
【0066】
(1-2)は、図6(d)に示す第1実施形態に係る膜形成処理において、処理温度450℃とし、PCDSの供給工程における流量50sccm、供給時間30sec、圧力4Torr、とし、TPSOLの供給工程における流量1sccm、供給時間30sec、圧力0.5Torrとして、100サイクルを繰り返し膜形成処理を行った。なお、TPSOLの総供給時間は、50minとなる。
【0067】
(2-1)は、図6(a)に示す第1参考例に係る膜形成処理において、処理温度500℃とし、TPSOLの供給工程における流量1sccm、供給時間30min、圧力0.5Torrとして膜形成処理を行った。
【0068】
(2-2)は、図6(d)に示す第1実施形態に係る膜形成処理において、処理温度500℃とし、PCDSの供給工程における流量50sccm、供給時間30sec、圧力4Torr、とし、TPSOLの供給工程における流量1sccm、供給時間30sec、圧力0.5Torrとして、100サイクルを繰り返し膜形成処理を行った。なお、TPSOLの総供給時間は、50minとなる。
【0069】
(3-1)は、図6(b)に示す第2参考例に係る膜形成処理において、処理温度500℃とし、TPSOLの供給工程における流量1sccm、供給時間30sec、圧力9Torrとして、100サイクルを繰り返し膜形成処理を行った。なお、TPSOLの総供給時間は、50minとなる。
【0070】
(3-2)は、図6(c)に示す第3参考例に係る膜形成処理において、処理温度500℃とし、PCDSの供給工程における流量50sccm、供給時間30sec、圧力4Torrとして、100サイクルを繰り返し膜形成処理を行った。
【0071】
(3-3)は、図6(d)に示す第1実施形態に係る膜形成処理において、処理温度500℃とし、PCDSの供給工程における流量50sccm、供給時間30sec、圧力4Torr、とし、TPSOLの供給工程における流量1sccm、供給時間30sec、圧力9Torrとして、100サイクルを繰り返し膜形成処理を行った。なお、TPSOLの総供給時間は、50minとなる。
【0072】
(4-1)は、図6(a)に示す第1参考例に係る膜形成処理において、処理温度550℃とし、TPSOLの供給工程における流量1sccm、供給時間30min、圧力0.5Torrとして膜形成処理を行った。
【0073】
(4-2)は、図6(d)に示す第1実施形態に係る膜形成処理において、処理温度550℃とし、PCDSの供給工程における流量50sccm、供給時間30sec、圧力4Torr、とし、TPSOLの供給工程における流量1sccm、供給時間30sec、圧力0.5Torrとして、100サイクルを繰り返し膜形成処理を行った。なお、TPSOLの総供給時間は、50minとなる。
【0074】
(1-1)(1-2)を対比して示すように、処理温度450℃において、第1実施形態に係る膜形成処理(図6(d)参照)は、第1参考例に係る膜形成処理(図6(a)参照)と比較して、増膜レートが増加している。
【0075】
また、(2-1)(2-2)を対比して示すように、処理温度500℃において、第1実施形態に係る膜形成処理(図6(d)参照)は、第1参考例に係る膜形成処理(図6(a)参照)と比較して、増膜レートが増加している。
【0076】
また、(4-1)(4-2)を対比して示すように、処理温度550℃において、第1実施形態に係る膜形成処理(図6(d)参照)は、第1参考例に係る膜形成処理(図6(a)参照)と比較して、増膜レートが増加している。
【0077】
即ち、処理温度450℃~550℃のいずれにおいても、TOPSOLを単独で供給する第1参考例に係る膜形成処理(図6(a)参照)と比較して、PCDSとTOPSOLとを交互に供給する第1実施形態に係る膜形成処理(図6(d)参照)の増膜レートが増加している。
【0078】
また、(3-1)(3-3)を対比して示すように、第1実施形態に係る膜形成処理(図6(d)参照)は、第2参考例に係る膜形成処理(図6(b)参照)と比較して、増膜レートが増加している。また、(3-2)(3-3)を対比して示すように、第1実施形態に係る膜形成処理(図6(d)参照)は、第3参考例に係る膜形成処理(図6(c)参照)と比較して、増膜レートが増加している。
【0079】
更に、(3-3)に示す第1実施形態に係る膜形成処理(図6(d)参照)は、(3-1)に示す第2参考例に係る膜形成処理(図6(b)参照)及び(3-2)に示す第3参考例に係る膜形成処理(図6(c)参照)の合計値と比較して、増膜レートが増加している。
【0080】
即ち、処理容器1内に供給されるPCDS及びTOPSOLの総量が同じであっても、PCDSとTOPSOLとを交互に供給してシリコン酸化膜を成膜することにより、一方の原料ガス(PCDS)を供給した後に他方の原料ガス(TPSOL)を供給してシリコン酸化膜を成膜する場合と比較して、シリコン酸化膜の増膜量が増加している。
【0081】
以上の様に、第1実施形態に係る膜形成処理によれば、強い酸化源を用いることなくシリコン酸化膜を成膜することができる。これにより、酸化ガス等の強い酸化源による下地層300へのダメージを抑制することができる。例えば、下地層300が炭素(C)を含むLow-k膜等である場合、酸化ガスによって下地層300中の炭素(C)が減少するおそれがある。これに対し、第1実施形態に係る膜形成処理によれば、下地層300中の炭素(C)が減少することを抑制することができる。これにより、Low-k膜として機能する下地層300の誘電率が増加することを防止することができる。
【0082】
また、第1実施形態に係る膜形成処理によれば、プラズマを用いることなくシリコン酸化膜を形成することができる。これにより、プラズマによる下地層300へのダメージを抑制することができる。
【0083】
また、第1実施形態に係る膜形成処理によれば、ステップカバレッジよくシリコン酸化膜を形成することができる。
【0084】
また、第1実施形態に係る膜形成処理によれば、金属触媒を用いることなくシリコン酸化膜を形成することができる。これにより、シリコン酸化膜中に金属触媒に由来する金属元素が混入することを防止することができる。
【0085】
<第2実施形態に係る膜形成処理>
次に、基板処理装置100による膜形成処理の他の一例について説明する。図9は、第2実施形態に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。ここでは、第1原料ガスとしてPCDSを用い、第2原料ガスとしてTPSOLを用い、基板Wの表面(下地層300の表面)にシリコン酸化膜を形成する場合を例に説明する。
【0086】
図9に示される第2実施形態に係る膜形成処理は、第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101と、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102と、改質ガスを用いて基板Wの表面を改質する工程S103(S103A,S103B)と、を1サイクルとして、このサイクルを複数回(所定サイクル)繰り返し、基板Wの表面にシリコン酸化膜を形成するプロセスである。なお、図9では、1サイクルを括弧付きで示す。また、サイクルを繰り返す間、ガス供給管24からパージガスであるNガスが膜形成処理中に常時(連続して)供給されていてよい。
【0087】
まず、制御部60は、基板Wを準備する。具体的には、制御部60は、昇降機構(図示せず)を制御して、多数枚の基板Wが載置されたウエハボート5を処理容器1内に挿入する。また、制御部60は、加熱機構50を制御して、処理容器1内の基板Wを所定の処理温度に制御する。
【0088】
第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101において、制御部60は、基板Wに第1原料ガスを供給する。具体的には、制御部60は、圧力制御バルブ43を制御して、処理容器1内を所定の圧力に制御する。また、制御部60は、開閉弁21c及び流量制御器21bを制御して、所定の流量の第1原料ガスを所定時間供給する。
【0089】
第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102において、制御部60は、基板Wに第2原料ガスを供給する。具体的には、制御部60は、圧力制御バルブ43を制御して、処理容器1内を所定の圧力に制御する。また、制御部60は、開閉弁22c及び流量制御器22bを制御して、所定の流量の第2原料ガスを所定時間供給する。
【0090】
改質ガスを用いて基板Wの表面を改質する工程S103Aにおいて、制御部60は、基板Wに改質ガスの活性種を供給する。具体的には、制御部60は、圧力制御バルブ43を制御して、処理容器1内を所定の圧力に制御する。また、制御部60は、開閉弁23c及び流量制御器23bを制御して、所定の流量の改質ガス(例えばHガス)を所定時間供給する。そして、制御部60は、高周波電源35を制御してプラズマを生成する。これにより、改質ガスの活性種が基板Wに供給される。
【0091】
このように、制御部60は、第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101と、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102と、改質ガスを用いて基板Wの表面を改質する工程S103Aと、を1サイクルとして、このサイクルを複数回(所定サイクル)繰り返すことにより、基板W(下地層300)の表面にシリコン酸化膜を形成する。
【0092】
なお、改質ガスを用いて基板Wの表面を改質する工程S103Aは、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102の後、次の第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101の前に行われるものとして説明したが、これに限られるものではない。
【0093】
改質ガスを用いて基板Wの表面を改質する工程S103Bは、第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101の後、次の第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102の前に行われる構成であってもよい。また、1サイクル中に、改質ガスを用いて基板Wの表面を改質する工程S103A,S103Bを両方行う構成であってもよい。
【0094】
次に、第2実施形態に係る膜形成処理の成膜結果の一例について、図10及び図11を用いて説明する。
【0095】
図10は、成膜速度GPCの一例を示すグラフである。ここでは、後述する(a)~(d)のプロセスでシリコン酸化膜を成膜した。なお、処理温度(成膜温度)を500℃とした。第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101において、第1原料ガスの流量50sccm、第1原料ガスの供給時間30sec、処理容器1内の圧力4Torrとした。第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102において、第2原料ガスの流量1sccm、第2原料ガスの供給時間30sec、処理容器1内の圧力9Torrとした。水素プラズマを用いて基板Wの表面を改質する工程(HRP)S103A,S103Bにおいて、Hガスの流量2000sccm、Hガスの供給時間30~60sec、処理容器1内の圧力0.1Torr、RF電力100Wとした。また、ここでは100サイクル繰り返した。
【0096】
(a)は、水素プラズマを供給する工程を行わずに、第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101と、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102と、をこの順番で1サイクルとして、このサイクルを複数回(ここでは100サイクル)繰り返すことにより、シリコン酸化膜を成膜する。即ち、(a)は、第1実施形態に係る膜形成処理に相当する。
【0097】
(b)は、第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101と、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102と、水素プラズマを供給する工程S103Aと、をこの順番で1サイクルとして、このサイクルを複数回(ここでは100サイクル)繰り返すことにより、シリコン酸化膜を成膜する。なお、(b)において、水素プラズマを供給する工程S103Aは、30secである。
【0098】
(c)は、第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101と、水素プラズマを供給する工程S103Bと、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102と、をこの順番で1サイクルとして、このサイクルを複数回(ここでは100サイクル)繰り返すことにより、シリコン酸化膜を成膜する。なお、(b)において、水素プラズマを供給する工程S103Bは、30secである。
【0099】
(d)は、第1原料ガス(PCDS)を供給する工程S101と、水素プラズマを供給する工程S103Bと、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102と、をこの順番で1サイクルとして、このサイクルを複数回(ここでは100サイクル)繰り返すことにより、シリコン酸化膜を成膜する。なお、(b)において、水素プラズマを供給する工程S103Bは、60secである。
【0100】
図10に示すように、水素プラズマを供給する工程S103A,S103Bを追加することにより((b)~(d)参照)、水素プラズマを供給する工程を行わない場合((a)参照)と比較して、成膜速度が増加する。
【0101】
また、(b)と(c)(d)とを対比して示すように、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102の後に水素プラズマを供給する工程S103Aを行うこで、成膜速度が向上する。
【0102】
図11は、ウェットエッチングレート及び熱処理による熱収縮の一例を示すグラフである。ここでは、(a)~(d)で成膜したシリコン酸化膜について、SiO膜とSiN膜とを交互に積層した積層膜をウェットエッチングするエッチング条件におけるウェットエッチングレート(WERR)を棒グラフで示す。また、基板Wを600℃又は800℃、N雰囲気で30分熱処理した際のシリコン酸化膜の収縮率(Thermal shrinkage)を折れ線グラフで示す。600℃で熱処理した場合を白丸印で示し、800℃で熱処理した場合を黒丸印で示す。
【0103】
図11に示すように、水素プラズマを供給する工程S103A,S103Bを追加することにより((b)~(d)参照)、水素プラズマを供給する工程を行わない場合((a)参照)と比較して、エッチング耐性が向上する。また、水素プラズマを供給する工程S103A,S103Bを追加することにより((b)~(c)参照)、水素プラズマを供給する工程を行わない場合((a)参照)と比較して、熱処理された際の収縮率が減少する。
【0104】
また、(b)と(c)(d)とを対比して示すように、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S102の後に水素プラズマを供給する工程S103Aを行うこで、エッチング耐性が向上し、熱処理された際の収縮率が減少する。
【0105】
以上の様に、第2実施形態に係る膜形成処理によれば、水素プラズマによって、反応性を低下させる不要な官能基を基板Wの表面から除去することにより、成膜レートの向上及び膜質の向上を図ることができる。
【0106】
<第3実施形態に係る膜形成処理>
第1及び第2実施形態に係る膜形成処理では、第1原料ガスとしてクロロシラン系ガスであるPCDSを用い、第2原料ガスとしてシラノール系ガスであるTPSOLを用いる場合を例に説明したが、これに限られるものではない。
【0107】
図12は、第3実施形態に係る基板処理装置100の構成例を示す概略図である。第3実施形態に係る基板処理装置100は、第1実施形態に係る基板処理装置100と比較して、第1原料ガスが異なっている。
【0108】
ガス供給源21aは、所定元素を含有する第1原料ガスを供給する。ここでは、第1原料ガスとして、アミノシラン系ガスである場合を例に説明する。
【0109】
具体的には、第1原料ガスは、3DMAS(Trisdimethylaminosilane)を用いることができる。3DMASの化学式を以下に示す。
【0110】
【化3】
【0111】
また、第1原料ガスは、DIPAS(Diisopropylaminosilane)を用いることができる。DIPASの化学式を以下に示す。以下の説明において、第1原料ガスは、DIPASである場合を例に説明する。
【0112】
【化4】
【0113】
<第3実施形態に係る膜形成処理>
次に、基板処理装置100による膜形成処理の一例について説明する。図13は、第3実施形態に係る膜形成処理の一例を示すタイムチャートである。図14は、第3実施形態に係る膜形成処理における基板表面の状態の一例を示す模式図である。ここでは、第1原料ガスとしてDIPASを用い、第2原料ガスとしてTPSOLを用い、基板Wの表面(下地層300の表面)にシリコン酸化膜を形成する場合を例に説明する。
【0114】
図13に示される第3実施形態に係る膜形成処理は、第1原料ガス(DIPAS)を供給する工程S301と、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S302と、を1サイクルとして、このサイクルを複数回(所定サイクル)繰り返し、基板Wの表面にシリコン酸化膜を形成するプロセスである。なお、図13では、1サイクルを括弧付きで示す。また、サイクルを繰り返す間、ガス供給管24からパージガスであるNガスが膜形成処理中に常時(連続して)供給されていてよい。
【0115】
まず、制御部60は、基板Wを準備する。具体的には、制御部60は、昇降機構(図示せず)を制御して、多数枚の基板Wが載置されたウエハボート5を処理容器1内に挿入する。また、制御部60は、加熱機構50を制御して、処理容器1内の基板Wを所定の処理温度に制御する。
【0116】
第1原料ガス(DIPAS)を供給する工程S301において、制御部60は、基板Wに第1原料ガスを供給する。具体的には、制御部60は、圧力制御バルブ43を制御して、処理容器1内を所定の圧力に制御する。また、制御部60は、開閉弁21c及び流量制御器21bを制御して、所定の流量の第1原料ガスを所定時間供給する。
【0117】
図14(a)は、膜形成処理の開始時における基板表面の状態の一例を示す模式図である。図14(a)に示す例では、基板Wの下地層300は、例えばシリコン層である。基板W(下地層300)の表面には、終端に(-OH)が形成されている。基板Wに第1原料ガスを供給することにより、第1原料ガスが終端の(-OH)と反応(例えば、脱水縮合)する。これにより、図14(b)に示すように、第1原料ガスの所定元素(Si)が基板Wの表面に結合するとともに、終端に(-H)が形成される。
【0118】
第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S302において、制御部60は、基板Wに第2原料ガスを供給する。具体的には、制御部60は、圧力制御バルブ43を制御して、処理容器1内を所定の圧力に制御する。また、制御部60は、開閉弁22c及び流量制御器22bを制御して、所定の流量の第2原料ガスを所定時間供給する。
【0119】
図14(b)は、第2原料ガスの供給開始時における基板表面の状態の一例を示す模式図である。基板W(下地層300)の表面には、終端に(-H)が形成されている。基板Wに第2原料ガスを供給することにより、第2原料ガスが終端の水素(H)と反応する。これにより、図14(c)に示すように、第2原料ガスの所定元素(Si)及び酸素(O)が基板Wの表面に結合するとともに、終端に(-OH)及び/又は(-R)が形成される。なお、Rは、TPSOLに由来する炭化水素基である。
【0120】
そして、次のサイクルの第1原料ガス(DIPAS)を供給する工程S301において、制御部60は、同様に基板Wに第1原料ガスを供給する。
【0121】
図14(c)は、次のサイクルの第1原料ガスの供給開始時における基板表面の状態の一例を示す模式図である。基板W(下地層300)の表面には、終端に(-OH)及び/又は(-R)が形成されている。基板Wに第1原料ガスを供給することにより、第1原料ガスが終端の(-OH)及び/又は(-R)と反応する。これにより、第1原料ガスの所定元素(Si)が基板Wの表面に結合するとともに、終端に(-H)が形成される。
【0122】
このように、制御部60は、第1原料ガス(DIPAS)を供給する工程S301と、第2原料ガス(TPSOL)を供給する工程S302と、を1サイクルとして、このサイクルを複数回(所定サイクル)繰り返すことにより、基板W(下地層300)の表面にシリコン酸化膜を形成する。
【0123】
また、第3実施形態に係る膜形成処理(図13参照)において、第2実施形態に係る膜形成処理と同様に、改質ガスを用いて基板Wの表面を改質する工程(図9のS103A,S103B参照)を追加してもよい。
【0124】
また、第1~第3実施形態に係る膜形成処理において、シリコン酸化膜を形成する場合を例に説明したが、これに限られるものではない。形成される酸化膜は、SiO、SiON、SiCON等であってもよい。
【0125】
また、第1~第3実施形態に係る膜形成処理において、所定元素がケイ素(Si)である場合を例に説明したが、所定元素は金属元素(例えば、Ge、B、Al、Hf、Zr、Ta、La、Ti等)であってもよい。この場合、第1原料ガスは、当該所定元素のハロゲン化物(ハライド)が好ましい。具体的には、第1原料ガスとして、GeCl、BCl、AlCl、HfCl、ZrCl、TaCl、LaCl等の塩化物を用いることができる。また、第1原料ガスは、有機官能基や水素化された結合を有していてもよい。また、第2原料ガスは、当該所定元素の水酸化物が好ましい。具体的には、第2原料ガスとして、B(OH)、Zr(OH)、Al(OH)、La(OH)等の水酸化物を用いることができる。また、第2原料ガスは、有機官能基やハロゲンを有していてもよい。
【0126】
また、金属アルコキシドに水素ラジカルを供給して水酸基を有する形に変形させることによって第2原料ガスとしてもよい。例えば、ガス供給管21から処理容器1内に金属アルコキシドガスを供給し、プラズマ生成機構30でガス供給管23から供給された水素ガスのプラズマを生成して、処理容器1内で金属アルコキシドガスと水素ラジカルとを反応させ、水酸基を有する第2原料ガスを形成してもよい。このような金属アルコキシドの例としては、例えばGe(OCH(CH、Ti[OC(CH、Zr[OC(CH、Hf[OC(CH、Ta(OC2H5)を用いることができる。
【0127】
以上、基板処理装置100による本実施形態(第1~3実施形態)の膜形成方法について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0128】
なお、膜形成処理を行う基板処理装置100は、図1に示すように、多数枚の基板Wを多段に載置して処理する縦型基板処理装置であるものとして説明したが、これに限られるものではない。基板処理装置100は、枚葉式の基板処理装置であってもよく、セミバッチ式の基板処理装置であってもよい。また、1枚の基板を載置部に載置して処理する枚葉式の基板処理装置において、上述の膜形成処理を適用してもよい。また、複数枚の基板を載置部に載置して処理するセミバッチ式の基板処理装置において、上述の膜形成処理を適用してもよい。
【符号の説明】
【0129】
W 基板
1 処理容器
2 天井板
3 マニホールド
4 シール部材
5 ウエハボート(基板支持部)
6 ロッド
7 保温筒
8 テーブル
9 蓋体
10 回転軸
20 ガス供給部
21 ガス供給管(第1原料ガス供給部)
22 ガス供給管(第2原料ガス供給部)
23 ガス供給管
24 ガス供給管
30 プラズマ生成機構
40 排気口
50 加熱機構
60 制御部
100 基板処理装置
図1
図2
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