IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特開-造形ノズル 図1
  • 特開-造形ノズル 図2
  • 特開-造形ノズル 図3
  • 特開-造形ノズル 図4
  • 特開-造形ノズル 図5
  • 特開-造形ノズル 図6
  • 特開-造形ノズル 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145539
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】造形ノズル
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/53 20210101AFI20241004BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241004BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20241004BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20241004BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241004BHJP
   B22F 12/40 20210101ALI20241004BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
B22F12/53
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/209
B33Y10/00
B22F12/40
B22F10/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057935
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 弘行
(72)【発明者】
【氏名】谷田 雄亮
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL32
4F213WL43
4F213WL74
4F213WL76
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】粉体の利用率を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】造形ノズル20は、立体物が造形される造形エリアに立体物の材料となる粉体を供給するとともに、供給された粉体にビームを照射することで当該粉体を溶融させるように構成された、造形ノズル20であって、ビームが通過するビーム通路25を有する内筒23と、内筒23の外側に配置された外筒24であって、内筒23の外面28と外筒24の内面27との間に粉体が通過する粉体通路26を有する、外筒24と、を備え、ビーム通路25の先端29の内側寸法(D1)は、外筒24の先端30の内側寸法(D2)よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体物が造形される造形エリアに前記立体物の材料となる粉体を供給するとともに、供給された前記粉体にビームを照射することで当該粉体を溶融させるように構成された、造形ノズルであって、
前記ビームが通過するビーム通路を有する内筒と、
前記内筒の外側に配置された外筒であって、前記内筒の外面と前記外筒の内面との間に前記粉体が通過する粉体通路を有する、外筒と、を備え、
前記ビーム通路の先端の内側寸法は、前記外筒の先端の内側寸法よりも大きい、造形ノズル。
【請求項2】
前記ビーム通路の先端は、前記外筒の先端よりも、前記造形ノズルの軸方向で基端側に位置している、請求項1に記載の造形ノズル。
【請求項3】
前記外筒は、前記外筒の先端に近づくほど前記外筒の内側寸法が小さくなるように構成された縮径部位を有し、
前記ビーム通路の先端は、前記外筒の前記縮径部位の内部に位置している、請求項1に記載の造形ノズル。
【請求項4】
前記造形ノズルは、立体物を前記造形エリアに造形するように構成された付加製造装置に適用されている、請求項1に記載の造形ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、造形エリアに立体物の材料となる粉体を供給するとともに、この供給された粉体にビームを照射することで当該粉体を溶融させるように構成された、造形ノズルが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この特許文献1に例示されいている造形ノズルは、ビームが通過するビーム通路を有する内筒と、内筒の外側に配置された外筒と、を備えている。また、内筒の外面と外筒の内面との間に、粉体が通過する粉体通路が設けられている。そして、内筒におけるビーム通路の先端の内側寸法は、外筒の先端の内側寸法以下になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4299157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来の造形ノズルの場合、ビーム通路の先端の内側寸法が外筒の先端の内側寸法以下であるので、粉体通路を通過して造形エリアに供給される粉体が、造形エリアに照射されるビームよりも外側に広がり易い構造になっている。このため、従来の技術は、造形ノズルから造形エリアに供給される粉体における立体物の造形に実際に寄与する粉体の割合(すなわち、「粉体の利用率」)を向上させるという観点において、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、粉体の利用率を向上させることができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る造形ノズルは、立体物が造形される造形エリアに前記立体物の材料となる粉体を供給するとともに、供給された前記粉体にビームを照射することで当該粉体を溶融させるように構成された、造形ノズルであって、前記ビームが通過するビーム通路を有する内筒と、前記内筒の外側に配置された外筒であって、前記内筒の外面と前記外筒の内面との間に前記粉体が通過する粉体通路を有する、外筒と、を備え、前記ビーム通路の先端の内側寸法は、前記外筒の先端の内側寸法よりも大きい。
【0007】
この態様によれば、例えば、ビーム通路の先端の内側寸法が外筒の先端の内側寸法以下の場合に比較して、粉体通路を通過して造形エリアに供給される粉体が、造形エリアに照射されるビームよりも外側に広がることを抑制することができる。これにより、粉体の利用率を向上させることができる。
【0008】
(態様2)
上記の態様1において、前記ビーム通路の先端は、前記外筒の先端よりも、前記造形ノズルの軸方向で基端側に位置していてもよい。
【0009】
(態様3)
上記の態様1又は2において、前記外筒は、前記外筒の先端に近づくほど前記外筒の内側寸法が小さくなるように構成された縮径部位を有し、前記ビーム通路の先端は、前記外筒の前記縮径部位の内部に位置していてもよい。
【0010】
(態様4)
上記の態様1~3のいずれか1態様において、前記造形ノズルは、立体物を前記造形エリアに造形するように構成された付加製造装置に適用されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)及び図1(B)は、実施形態に係る付加製造装置を説明するための模式図である。
図2】実施形態に係る造形ノズルの第1部位の模式的な断面図である。
図3】実施形態に係る造形ノズルの先端部近傍領域(A1部分)を拡大して示す模式的な断面図である。
図4】実施形態に係る造形ノズルのB1-B1線断面図である。
図5】比較例に係る造形ノズルの第1部位の模式的な断面図である。
図6図6(A)は比較例に係る造形ノズルによって造形された蛇行状の立体物の写真の一例である。図6(B)は実施例に係る造形ノズルによって造形された蛇行状の立体物の写真の一例である。
図7図7(A)は比較例に係る造形ノズルで造形された螺旋状の立体物の写真の一例である。図7(B)は実施例に係る造形ノズルで造形された螺旋状の立体物の写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、図面には、必要に応じて、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0013】
本実施形態に係る造形ノズル20は、一例として、材料を積層することによって立体物を造形するように構成された付加製造装置1(Aditive Manufacturing装置(「AM装置」))に適用されている。そこで、まずは、この付加製造装置1の概略について説明し、次いで、造形ノズル20の詳細について説明する。
【0014】
図1(A)及び図1(B)は、本実施形態に係る付加製造装置1を説明するための模式図である。具体的には、図1(A)は、付加製造装置1の主要な構成を模式的に示す平面図であり、図1(B)は、付加製造装置1の造形ノズル20の周辺構成を模式的に示す正面図である。なお、図1(A)において、後述する材料供給装置6やビーム発生装置7やシールドガス供給装置8の図示は省略されている。
【0015】
付加製造装置1は、造形エリア2と、移動軸(第1移動軸3及び第2移動軸4)と、材料供給装置6と、ビーム発生装置7と、造形ノズル20と、制御装置10とを備えている。
【0016】
制御装置10は、付加製造装置1の動作を統合的に制御するための装置である。具体的には、本実施形態に係る制御装置10は、マイクロコンピュータを備えている。このマイクロコンピュータは、プロセッサ11や、非一時的な記憶媒体としての記憶装置12、等
を備えている。制御装置10においては、プロセッサ11が、記憶装置12に記憶されているプログラムの指令に基づいて作動することで、付加製造装置1の動作を制御する。
【0017】
造形エリア2は、立体物100(この符号は、例えば、後述する図2に例示されている)が造形されるエリアである。本実施形態に係る造形エリア2は、具体的には、所定のテーブル(造形テーブル)の上面に設けられている。この造形エリア2の上に立体物100が造形される。
【0018】
第1移動軸3は、所定方向(本実施形態ではX方向)に延在している。第2移動軸4は、第1移動軸3に垂直な方向(本実施形態ではY方向)に延在している。図1(B)を参照して、第2移動軸4は、脚部材5を介して、第1移動軸3に接続されている。第1移動軸3は、例えばボールねじを有する駆動機構を備えており、この駆動機構によって、脚部材5を介して第1移動軸3に接続された第2移動軸4をX方向及び-X方向に移動させる。
【0019】
材料供給装置6は、立体物100の材料となる粉体(Pd)を造形ノズル20に供給するための装置である。具体的には、材料供給装置6は、造形ノズル20に接続されており、非溶融状態の粉体を造形ノズル20の後述する粉体通路26に供給する。造形ノズル20に供給された粉体は、造形ノズル20から造形エリア2に向けて供給される。
【0020】
なお、材料供給装置6は、粉体を効果的に造形ノズル20の粉体通路26に流動させるために、粉体のみならず、この粉体を輸送するためのガス(これを「キャリアガス」と称する)も粉体通路26に供給することが好ましい。実際、本実施形態に係る材料供給装置6は、粉体をキャリアガスとともに粉体通路26に供給している。このキャリアガスとして、例えば、窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【0021】
また、粉体の具体的な材質は特に限定されるものではなく、樹脂や金属等、公知の材質を用いることができる。本実施形態では、粉体の材質の具体例として、金属を用いている。
【0022】
ビーム発生装置7は、ビーム(Bm)を発生させるための装置である。ビーム発生装置7は、造形ノズル20と接続されており、ビーム発生装置7が発生したビームは造形ノズル20から照射される。ビーム発生装置7が発生するビームの具体的な種類は、粉体を溶融できるものであれば特に限定されず、例えば、レーザービームや電子ビーム等を用いることができる。本実施形態に係るビーム発生装置7は、一例として、レーザービームを発生させる。
【0023】
造形ノズル20は、造形エリア2に立体物100の材料となる粉体を供給するとともに、この供給された粉体にビームを照射することで当該粉体を溶融させるように構成されている。造形ノズル20から照射されたビームによって溶融された材料が凝固することで、造形エリア2に立体物100が造形される。
【0024】
なお、造形ノズル20は、ビームを照射する際に、材料の酸化を抑制するためのシールドガス(例えば、不活性ガス)を噴射することが好ましい。具体的には、この場合、付加製造装置1は、例えば、図1(B)に例示するように、シールドガスを造形ノズル20に供給するためのシールドガス供給装置8(例えば、ガスボンベ等)を備えている。
【0025】
本実施形態に係る造形ノズル20は、第1部位21と第2部位22とを備えている。第1部位21は、第2部位22に接続されるとともに、第2部位22よりも造形ノズル20の先端側に配置されている。
【0026】
造形ノズル20は、前述した第2移動軸4に接続されている。具体的には、本実施形態では、一例として、造形ノズル20の第2部位22が第2移動軸4に接続されている。第2移動軸4は、例えばボールねじを有する駆動機構を備えており、この駆動機構によって、造形ノズル20をY方向及び-Y方向に移動させる。前述したように、第2移動軸4がX方向及び-X方向に移動することができるので、本実施形態に係る造形ノズル20は、X方向、-X方向、Y方向、及び、-Y方向に移動することができる。
【0027】
なお、図1(A)及び図1(B)においては、1つの第2移動軸4に、1つの造形ノズル20が配置されているが、この構成に限定されるものではない。1つの第2移動軸4に、複数の造形ノズル20が配置されていてもよい。また、付加製造装置1は、第2移動軸4、及び、造形ノズル20を複数組、備えていてもよい。
【0028】
以上のような付加製造装置1は、制御装置10に記憶された三次元データに基づいて造形ノズル20がX方向、-X方向、Y方向、及び、-Y方向に移動しながら、造形エリア2に立体物を造形する。
【0029】
なお、付加製造装置1は、造形エリア2、又は、第1移動軸3を昇降させるように構成された昇降軸を備えていてもよい。この場合、造形ノズル20を造形エリア2に対して昇降させながら(Z方向、又は、-Z方向に変位させながら)、立体物100を造形することができる。
【0030】
続いて、造形ノズル20の詳細について説明する。図2は、造形ノズル20の第1部位21の模式的な断面図である。図3は、造形ノズル20の先端部近傍領域(A1部分)を拡大して示す模式的な断面図である。図4は、造形ノズル20のB1-B1線断面図である。なお、図2及び図3には、造形ノズル20の中心軸線XLが例示されている。
【0031】
図2図3及び図4を参照して、造形ノズル20は、内筒23と、外筒24とを備えている。外筒24は内筒23の外側に配置されている(換言すると、外筒24は、造形ノズル20の径方向で、内筒23の外周側に配置されている)。なお、外筒24の中心軸線XLは内筒23の中心軸線XLと一致している(すなわち、外筒24は内筒23と同軸上に配置されている)。
【0032】
図3及び図4を参照して、内筒23は、その内側に、ビーム(Bm)が通過するビーム通路25を有している。具体的には、ビーム通路25は、前述したビーム発生装置7と接続されており、このビーム発生装置7が発生したビームがビーム通路25を通過する。本実施形態において、ビーム通路25の先端29(ビームの流れ方向で下流端)は、一例として、内筒23の先端と一致している。すなわち、本実施形態において、ビーム通路25の先端29は内筒23の先端でもある。
【0033】
なお、前述したように、造形ノズル20がビームとともにシールドガスを噴射する場合、このビーム通路25には、ビームの他にシールドガスも通過する。また、本実施形態に係るビーム通路25は、ビーム通路25を通過したビームが造形エリア2の所定箇所(すなわち、加工点)に集束するように構成されている。
【0034】
内筒23の外面28(換言すると、外周面)と外筒24の内面27(換言すると、内周面)との間には、粉体(Pd)が通過するための粉体通路26が設けられている。具体的には、粉体通路26は、前述した材料供給装置6と接続されており、材料供給装置6から供給された粉体が粉体通路26を通過する。
【0035】
図3を参照して、本実施形態において、ビーム通路25の先端29の内側寸法(D1)は、外筒24の先端30の内側寸法(D2)よりも大きい。
【0036】
なお、D2に対するD1の比率(D1/D2)の具体的な値は、特に限定されるものではないが、一例を挙げると、D2に対するD1の比率として、1.2以上6.0以下の範囲から選択された任意の値(この場合、D1はD2の1.2倍以上6.0倍以下になる)、又は、1.5以上6.0以下の範囲から選択された任意の値、又は、2.0以上6.0以下の範囲から選択された任意の値を用いることができる。
【0037】
図2図3に例示するように、ビーム通路25の先端29は、外筒24の先端30よりも、造形ノズル20の軸方向(中心軸線XLに沿った方向)で基端側(先端とは反対側であり、図3ではZ方向の側)に位置していることが好ましい。この構成によれば、ビーム通路25の先端29の内側寸法(D1)を外筒24の先端30の内側寸法(D2)よりも大きくすることが容易にできる。
【0038】
また、図2図3に例示するように、外筒24は、外筒24の先端30に近づくほど外筒24の内側寸法が小さくなるように構成された縮径部位31を有していてもよい。この場合、内筒23のビーム通路25の先端29は、この縮径部位31の内部に位置していることが好ましい。この構成によれば、ビーム通路25の先端29の内側寸法(D1)を外筒24の先端30の内側寸法(D2)よりも大きくすることが容易にできる。また、この構成によれば、粉体通路26を通過した粉体を、ビーム通路25を通過したビームとともに、造形エリア2の所定箇所(加工点)に効果的に集束させることが容易にできる。
【0039】
なお、前述したように本実施形態に係るビーム通路25の先端29は外筒24の先端30よりも基端側に位置しているので、ビーム通路25を通過したビームは、ビーム通路25の先端29と外筒24の先端30との間の空間SP1を通過した後に、外筒24の先端30から、造形エリア2に向けて照射される。これと同様に、粉体通路26を通過した粉体は、この空間SP1を通過した後に、外筒24の先端30から、造形エリア2に向けて供給(吐出)される。
【0040】
また、本実施形態において、ビーム通路25の先端29の形状は、一例として円形である。また、外筒24の先端30の形状も、一例として円形である。この場合、ビーム通路25の先端29の内側寸法(D1)は、ビーム通路25の先端29の内径に相当する。同様に、外筒24の先端30の内側寸法(D2)は、外筒24の先端30の内径に相当する。
【0041】
但し、ビーム通路25の先端29や外筒24の先端30の形状は、円形に限定されるものではなく、他の形状でもよい。この一例を挙げると、ビーム通路25の先端29の形状は四角形でもよい。これと同様に、外筒24の先端30の形状も四角形でもよい。この場合、ビーム通路25の先端29の内側寸法(D1)は、ビーム通路25の先端29の四角形の対角線のうち最長の対角線の長さに相当する。同様に、外筒24の先端30の内側寸法(D2)は、外筒24の先端30の四角形の対角線のうち最長の対角線の長さに相当する。
【0042】
続いて、上述した実施形態の作用効果について、比較例と比較しつつ説明する。図5は、比較例に係る造形ノズル200の第1部位210の模式的な断面図である。
【0043】
比較例に係る造形ノズル200は、ビーム通路25の先端29の内側寸法(D1)が外筒24の先端30の内側寸法(D2)以下である点において、前述した実施形態に係る造形ノズル20(図3)と異なっている。具体的には、図5においては、D1はD2よりも
小さい。また、比較例に係る造形ノズル200は、ビーム通路25の先端29が外筒24の先端30に一致している点においても、前述した実施形態に係る造形ノズル20と異なっている。
【0044】
比較例に係る造形ノズル200の場合、粉体通路26を通過して造形エリア2に供給される粉体が、ビーム通路25を通過して造形エリア2に照射されるビームよりも外側に広がり易い構造になっている。換言すると、造形エリア2に照射される粉体が造形エリア2に照射されるビームよりも外側にはみ出易い構造になっている。この場合、造形ノズル200から造形エリア2に供給される粉体における立体物100の造形に実際に寄与する粉体の割合(すなわち、「粉体の利用率」)は高いとはいえない。
【0045】
これに対して本実施形態によれば、前述したように、ビーム通路25の先端29の内側寸法(D1)が外筒24の先端30の内側寸法(D2)よりも大きいので、粉体通路26を通過して造形エリア2に供給される粉体が、造形エリア2に照射されるビームよりも外側に広がることを抑制することができる。すなわち、造形ノズル20から造形エリア2に供給される粉体の「集束率」を向上させることができる。これにより、粉体の利用率を向上させることができる。この結果、少量の粉体供給量で立体物100を造形することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、上述したように造形ノズル20から造形エリア2に供給される粉体の集束率を向上させることができるので、造形される立体物100の形状を容易に制御することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、上述したように造形ノズル20から造形エリア2に供給される粉体の集束率を向上させることができるので、粉体通路26を通過する粉体の流速を予め設定された基準値よりも遅くしても、立体物100を容易に造形することができる。これにより、本実施形態によれば、粉体通路26の粉体の流速が速過ぎることに起因して造形エリア2の粉体が吹き飛ばされることを抑制することができる。この点においても、本実施形態によれば、造形される立体物100の形状を容易に制御することができる。
【0048】
(実施例)
上述した実施形態の効果(特に、立体物100の形状の制御性)に関して、実験によって確認した。これについて、以下に説明する。図6(A)は比較例に係る造形ノズル200によって造形された蛇行状の立体物100の写真の一例である。図6(B)は実施例に係る造形ノズル20によって造形された蛇行状の立体物100の写真の一例である。具体的には、図6(A)に係る立体物100は、図5に例示した比較例に係る造形ノズル200を用いて造形されたものであり、図6(B)に係る立体物100は、図3に例示した実施形態に係る造形ノズル20を用いて造形されたものである。図6(A)の場合も図6(B)の場合も、使用した造形ノズルが違う点以外は、同じ条件下で立体物100を造形した。
【0049】
図6(B)に係る実施例を図6(A)に係る比較例と比較すると分かるように、実施例の方が比較例よりも、立体物100の揺らぎが抑制されており、立体物100の外縁(すなわち、造形ビートの外縁)がシャープになっている。この実験結果からも、実施例に係る造形ノズル20の方が比較例に係る造形ノズル200よりも立体物100の形状を制御し易いことが分かる。
【0050】
図7(A)は比較例に係る造形ノズル200で造形された螺旋状の立体物100の写真の一例である。図7(B)は実施例に係る造形ノズル20で造形された螺旋状の立体物100の写真の一例である。なお、図7(A)に係る立体物100は、図5に例示した比較
例に係る造形ノズル200を用いて造形されたものであり、図7(B)に係る立体物100は、図3に例示した実施形態に係る造形ノズル20を用いて造形されたものである。図7(A)の場合も図7(B)の場合も、使用した造形ノズルが違う点以外は、同じ条件下で立体物100を造形した。
【0051】
図7(B)を図7(A)と比較すると分かるように、実施例の方が比較例よりも、立体物100の揺らぎが抑制されており、立体物100の外縁(すなわち、造形ビートの外縁)がシャープになっている。この実験結果からも、実施例に係る造形ノズル20の方が比較例に係る造形ノズル200よりも立体物100の形状を制御し易いことが分かる。
【0052】
以上、本発明の実施形態等について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 付加製造装置
2 造形エリア
20 造形ノズル
23 内筒
24 外筒
25 ビーム通路
26 粉体通路
27 外筒の内面
28 内筒の外面
29 ビーム通路の先端
30 外筒の先端
31 縮径部位
100 立体物
Bm ビーム
Pd 粉体
D1 ビーム通路の先端の内側寸法
D2 外筒の先端の内側寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7