(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145554
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ハーネス取付け具およびハーネス取付け具付きワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20241004BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241004BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02G3/30 050
B60R16/02 623D
H02G3/30
F16B2/08 A
F16B2/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057957
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】長谷 薫
【テーマコード(参考)】
3J022
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA11
3J022EA16
3J022EB14
3J022EC02
3J022EC14
3J022FA05
3J022FB04
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA03
3J022GA16
3J022GB43
3J022GB45
3J022GB56
5G363AA08
5G363AA11
5G363AA12
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA15
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】取付け箇所の表面形状によって取り付けが制限されることがなく、様々な形状の表面に対してもしっかりと取り付けることができるハーネス取付け具およびハーネス取付け具付きワイヤーハーネスを提供すること。
【解決手段】ワイヤーハーネス1を保持するハーネス保持部20と、車両における所定の取付け箇所Pに取り付けられる車体取付け部30とが備えられ、車体取付け部30は、所定の取付け箇所Pに貼着する粘着シート31と、粘着シート31に対して面状に接触した状態で該粘着シート31を支持する支持部32とが備えられ、ハーネス保持部20と支持部32とが連結され、支持部32は、所定の取付け箇所Pに沿った形状に変形可能な可撓性を有するとともに粘着シート31に沿う面状に形成された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを保持するハーネス保持部と、
車両における所定の取付け箇所に取り付けられる車体取付け部とが備えられ、
前記車体取付け部は、前記所定の取付け箇所に貼着する粘着シートと、
前記粘着シートに対して面状に接触した状態で該粘着シートを支持する支持部とが備えられ、
前記ハーネス保持部と前記支持部とが連結され、
前記支持部は、前記所定の取付け箇所に沿った形状に変形可能な可撓性を有するとともに前記粘着シートに沿う面状に形成された
ハーネス取付け具。
【請求項2】
前記支持部には、前記所定の取付け箇所に沿った形状への変形を促進する変形促進部が形成された
請求項1に記載のハーネス取付け具。
【請求項3】
前記変形促進部は、前記支持部に沿って延在するスリットである
請求項2に記載のハーネス取付け具。
【請求項4】
前記スリットは、前記支持部の板厚方向の両面のうち少なくとも何れか一方の面に対して凹状に形成された凹状スリットであり、
前記凹状スリットは、前記支持部において互いに交差するように複数配設された
請求項3に記載のハーネス取付け具。
【請求項5】
前記スリットは、前記支持部の板厚方向の両面のうち何れか一方の面から凹状に形成された前記凹状スリットと、前記支持部の板厚方向に貫通形成された貫通スリットであり、
前記凹状スリットと前記貫通スリットは、前記支持部において互いに交差するように配設された
請求項3に記載のハーネス取付け具。
【請求項6】
前記支持部における前記ハーネス保持部との連結部には、前記凹状スリットと前記貫通スリットのうち、前記凹状スリットのみが形成された
請求項5に記載のハーネス取付け具。
【請求項7】
前記ハーネス保持部は、バンド部とバンド固定部とが備えられ、
前記バンド固定部は、前記バンド部を挿通する挿通孔が貫通形成され、
前記挿通孔に挿通され、前記バンド固定部から延出された前記バンド部の延出部分は、ワイヤーハーネスに対して前記支持部と反対側に向けて延出された
請求項1に記載のハーネス取付け具。
【請求項8】
前記支持部には、周辺部よりも厚みが厚い押圧部が設けられた
請求項2に記載のハーネス取付け具。
【請求項9】
前記押圧部は、前記支持部を板厚方向の一方側から視て前記支持部の中心部に設けられ、
前記支持部において、前記押圧部から径方向の外側へ延在するリブが周方向に複数配設され、
前記変形促進部が、複数の前記リブ間に設けられた
請求項8に記載のハーネス取付け具。
【請求項10】
前記ハーネス保持部は、前記支持部を板厚方向における、前記粘着シートの側と反対側から視て前記押圧部に対してずらして配置された
請求項8に記載のハーネス取付け具。
【請求項11】
前記支持部は、前記ハーネス保持部との連結部から離間するほど肉厚に形成された
請求項1に記載のハーネス取付け具。
【請求項12】
前記ハーネス保持部と前記支持部とは着脱可能に連結された
請求項1に記載のハーネス取付け具。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のうちいずれかに記載のハーネス取付け具が、ワイヤーハーネスに装着された
ハーネス取付け具付きワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ワイヤーハーネスを車両における所定の取付け箇所に取り付けるハーネス取付け具およびハーネス取付け具付きワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に配索されるワイヤーハーネスを保持した状態で車体パネル等の車体に対して取り付けるためのハーネス取付け具の中でも両面粘着テープを車体に張り付けて取り付けるものとしては、例えば、特許文献1のようなケーブルクランプ(以下、「クランプ」と称する)が知られている。
【0003】
特許文献1のクランプは、シャーシや基板に固定されるベースと、ベースの下面に貼り付けられた両面粘着テープと、ベースから延出され、ケーブルを巻き付けた状態で先端側がベースの上面側においてロックされる可撓性を有するベルトとが備えられている。特許文献1のクランプは、両面粘着テープをシャーシ等の表面に貼り付けることで、ベルトで巻き付けたケーブルを車体に取り付けることができる。
【0004】
ところで従来より、ハーネス取付け具は、凹凸を有する表面や曲面形状の表面に貼り付けて取り付けることが要求されている。
しかし、特許文献1のクランプは、ベースをシャーシ等の平坦な表面に設置した状態で取り付けることを前提としているため、ベースの下面に貼り付けられた両面粘着テープを、シャーシ等の凹凸を有する表面に貼り付けようとした場合、ベース部がシャーシ等の凹凸を有する表面形状に沿ってフィットするように変形せず、表面との間に隙間が生じるなどして表面に対してしっかりと貼り付けられないことが懸念される。すなわち、特許文献1のクランプは、ワイヤーハーネスの車体への取付け箇所が取付け箇所の表面形状によって制限されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、取付け箇所の表面形状によって取り付けが制限されることがなく、様々な形状の表面に対してもしっかりと取り付けることができるハーネス取付け具およびハーネス取付け具付きワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ワイヤーハーネスを保持するハーネス保持部と、車両における所定の取付け箇所に取り付けられる車体取付け部とが備えられ、前記車体取付け部は、前記所定の取付け箇所に貼着する粘着シートと、前記粘着シートに対して面状に接触した状態で該粘着シートを支持する支持部とが備えられ、前記ハーネス保持部と前記支持部とが連結され、前記支持部は、前記所定の取付け箇所に沿った形状に変形可能な可撓性を有するとともに前記粘着シートに沿う面状に形成されたハーネス取付け具であることを特徴とする。
【0008】
またこの発明は、上述したハーネス取付け具が、ワイヤーハーネスに装着されたハーネス取付け具付きワイヤーハーネスであることを特徴とする。
前記支持部は、例えば、可撓性を有する材質で形成されるなどして前記所定の取付け箇所に沿った形状に変形可能な可撓性を有することができるが、全体が可撓性を有していなくとも、少なくとも一部において、可撓性を有したり、後述する変形促進部が形成された構成としてもよい。
【0009】
この発明により、凹凸形状の所定の取付け箇所に取り付ける際に、前記支持部を介して前記粘着シートを押圧する力によって、前記支持部は、前記粘着シートと共に前記所定の取付け箇所に沿って変形するため、前記粘着シートを所定の取付け箇所の凹凸形状に沿ってしっかりと貼着できる。
従って、所定の取り付け箇所の表面形状によって取り付けが制限されることがなく、凹凸を有する表面など様々な形状の表面に対してもしっかりと取り付けることができる。
【0010】
この発明の態様として、前記支持部には、前記所定の取付け箇所に沿った形状への変形を促進する変形促進部が形成されてもよい。
前記変形促進部は、後述するスリットで形成する以外にも例えば、支持部の板厚方向に貫通する貫通孔や、支持部の板厚方向の両面のうち、少なくとも何れか一方に対して凹状の凹部で形成されたり、変形促進部以外の部位と比して可撓性に優れた材質で形成された部位としてもよい。
この発明により、前記所定の取付け箇所に沿った形状への前記支持部の変形を促進することができるため、前記粘着シートを所定の取付け箇所の凹凸形状に沿ってしっかりと貼着できる。
【0011】
またこの発明の態様として、前記変形促進部は、前記支持部に沿って延在するスリットとしてもよい。
前記スリットは、貫通状スリットと凹状スリットのうち少なくとも何れか一方としてもよい。前記凹状スリットは、前記粘着シートを有する側の面と、前記粘着シートを有する側の面と反対側の面の何れの面に対して凹状であってもよい。
この発明により、前記支持部の可撓性が向上し、前記取り付け箇所の形状に沿って前記粘着シートをしっかりと取り付けることができる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記スリットは、前記支持部の板厚方向の両面のうち少なくとも何れか一方の面に対して凹状に形成された凹状スリットであり、前記凹状スリットは、前記支持部において互いに交差するように複数配設されてもよい。
【0013】
前記支持部において互いに交差する複数の前記凹状スリットは、前記支持部の板厚方向の両面のうち前記粘着シートを有する側の面に対して凹状に形成された凹状スリットと、前記粘着シートを有する側の面と反対側の面に対して凹状に形成された凹状スリットが備えられてもよい。
また、前記支持部において互いに交差する複数の前記凹状スリットは、何れも前記支持部の板厚方向の両面のうち前記粘着シートを有する側の面に配設されてもよく、或いは前記粘着シートを有する側の面と反対側の面に配設されてもよい。
【0014】
この発明により、互いに交差する複数の前記凹状スリットによって、前記支持部を3次元的に変形させることができ、より複雑な凹凸形状の取り付け箇所に対してもしっかりと前記貼着シートを貼り付けることができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記スリットは、前記支持部の板厚方向の両面のうち何れか一方の面から凹状に形成された前記凹状スリットと、前記支持部の板厚方向に貫通形成された貫通スリットであり、前記凹状スリットと前記貫通スリットは、前記支持部において互いに交差するように配設されてもよい。
この発明により、互いに交差する前記凹状スリットと前記貫通スリットによって、前記支持部を3次元的に変形させることができ、より複雑な凹凸形状の取り付け箇所に対してもしっかりと貼着シートを貼着することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記支持部における前記ハーネス保持部との連結部には、前記凹状スリットと前記貫通スリットのうち、前記凹状スリットのみが形成されてもよい。
この発明により、前記連結部の強度を確保しながら前記連結部の可撓性を確保することができる。
詳しくは、前記連結部において前記貫通スリットが形成されないことで前記連結部の強度を確保しながら、前記凹状スリットのみが形成されることにより、前記連結部の強度と可撓性を両立することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記ハーネス保持部は、バンド部とバンド固定部とが備えられ、前記バンド固定部は、前記バンド部を挿通する挿通孔が貫通形成され、前記挿通孔に挿通され、前記バンド固定部から延出された前記バンド部の延出部分は、ワイヤーハーネスに対して前記支持部と反対側に向けて延出されてもよい。
【0018】
この発明により、前記支持部を介して前記粘着シートを取付け箇所の側へ押圧する際に、前記バンド部の延出部分が邪魔になることがなく、前記支持部を介して前記粘着シートを所定の取付け箇所へしっかりと貼着することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記支持部には、周辺部よりも厚みが厚い押圧部が設けられてもよい。
この発明により、前記押圧部を押圧することで、前記押圧部の周辺の該押圧部よりも薄肉の部分へと押圧荷重をしっかりと伝達させることができるため、前記粘着シートを広範囲にわたって確実かつ容易に所定の取付け箇所に貼着することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記押圧部は、前記支持部を板厚方向の一方側から視て前記支持部の中心部に設けられ、前記支持部において、前記押圧部から径方向の外側へ延在するリブが周方向に複数配設され、前記変形促進部が、複数の前記リブ間に設けられてもよい。
【0021】
この発明により、前記押圧部を押圧した押圧荷重を、前記リブを介して前記支持部における広範囲にわたってより一層効率よく分散することができる。さらに、前記変形促進部によって、前記押圧部と複数の前記リブが設けられた前記支持部においても、その可撓性を確保することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記ハーネス保持部は、前記支持部を板厚方向における、前記粘着シートの側と反対側から視て前記押圧部に対してずらして配置されてもよい。
この発明により、前記支持部を板厚方向における、前記粘着シートの側と反対側から視て、前記ハーネス保持部に保持されたワイヤーハーネスが前記押圧部を覆うように配置されないため、ワイヤーハーネスが邪魔になることがなく前記支持部を介して前記粘着シートを取付け箇所の側へしっかりと押圧することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記支持部は、前記ハーネス保持部との連結部から離間するほど肉厚に形成されてもよい。
この発明により、前記ハーネス保持部においてワイヤーハーネスが保持された状態においても前記支持部を介して前記粘着シートを所定の取付け箇所に押し付けて貼着することができる。
【0024】
詳述すると、前記支持部において、前記ハーネス保持部との連結部から離間すればするほど、前記ハーネス保持部に保持されたワイヤーハーネスが邪魔になることがなくしっかりと前記支持部を押圧することができる。
【0025】
このため、上述したように、前記支持部は、前記ハーネス保持部との連結部から離間すればするほど肉厚に形成されることで、前記支持部を介して粘着シートに対して押圧力をしっかりと作用させることができる。すなわち、所定の取り付け箇所に対して前記粘着シートをしっかりと貼着することができる。
【0026】
一方で、前記支持部における、前記ハーネス保持部との連結部の周辺部は、ワイヤーハーネスが邪魔で押圧し難い部位となり易い。このため、上述したように、前記支持部における、前記ハーネス保持部との連結部の周辺部については薄肉に形成されることで、少しの押圧でも所定の取り付け箇所に沿って前記粘着シートと共に変形させることができる。すなわち、所定の取り付け箇所に対して前記粘着シートを貼着することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記ハーネス保持部と前記支持部とは着脱可能に連結されてもよい。
この発明により、前記粘着シートを所定の取付け箇所に貼着するために前記支持部を介して前記粘着シートを所定の取付け箇所に押圧する際に、前記ハーネス保持部が邪魔になることがなく前記粘着シートを取付け箇所にしっかりと押し付けて貼着することができる。
なお、本発明は、前記ハーネス保持部と前記支持部とは互いに分離不能に一体に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、取付け箇所の表面形状によって取り付けが制限されることがなく、様々な形状の表面に対してもしっかりと取り付けることができるハーネス取付け具およびハーネス取付け具付きワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態のハーネス取付け具をXb、Yb、Za方向から視た斜視図
【
図2】(a)は本実施形態のハーネス取付け具をXa方向から視た側面図、(b)は同じくYb方向から視た側面図、(c)は同じく
図1におけるA-A矢視断面図、(d)は同じく(b)におけるB-B矢視断面図
【
図3】本実施形態のハーネス取付け具を所定の取り付け箇所に装着した状態をXb、Yb、Za方向から視て示す斜視図
【
図4】変形例1のハーネス取付け具をXb、Yb、Za方向から視た斜視図
【
図5】(a)は変形例1のハーネス取付け具をZa方向から視た平面図、(b)は同じくYb方向から視た側面図、(c)は同じくXb方向から視た正面図
【
図6】変形例2のハーネス取付け具をXb、Yb、Za方向から視た斜視図
【
図7】(a)は変形例2のハーネス取付け具をZa方向から視た平面図、(b)は同じくYb方向から視た側面図、(c)は同じくXb方向から視た正面図
【
図8】変形例3のハーネス取付け具を、Xb、Yb、Za方向から視た斜視図
【
図9】(a)は変形例3のハーネス取付け具をZa方向から視た平面図、(b)は同じくYb方向から視た側面図、(c)は同じくXb方向から視た正面図
【
図10】変形例4のハーネス取付け具をXb、Yb、Za方向から視た斜視図
【
図11】(a)は変形例4のハーネス取付け具をZa方向から視た平面図、(b)は同じくYb方向から視た側面図、(c)は同じくXb方向から視た正面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1に示すように、本実施形態のハーネス取付け具付きワイヤーハーネス1Aは、ワイヤーハーネス1とハーネス取付け具10が備えられ、ハーネス取付け具10がワイヤーハーネス1に装着されている。
【0031】
ワイヤーハーネス1は、図示省略するが複数の被覆電線を束ねて構成されている。被覆電線は、導電性材料から成る導体と、導体の外周全体を被覆する、絶縁材料から成る絶縁被覆とを有している。
図1に示すように、ワイヤーハーネス1は、自動車における、
図3に示すようなバンパー等の車体パネル100の車内側の表面に沿って配索されている。
【0032】
以下、ハーネス取付け具10の構成について説明する。
ハーネス取付け具10は、ワイヤーハーネス1の配索方向に沿って所定間隔ごとに備えられ、何れも車体パネル100に対して取り付けられている。なお、ハーネス取付け具付きワイヤーハーネス1Aに備えられた複数のハーネス取付け具10は、何れも同一形態であるものとする。
【0033】
図1に示すように、ハーネス取付け具10は、ワイヤーハーネス1を保持するハーネス保持部20と、
図3に示すような車体パネル100における所定の取付け箇所Pに取り付けられる車体取付け部30とが備えられ、略全体が合成樹脂により一体成形されている。
【0034】
図中、矢印Zはハーネス取付け具10に備えられた板状の車体取付け部30の板厚方向であり、矢印Yはハーネス取付け具10のハーネス保持部20によって保持されたワイヤーハーネス1の配索方向であり、矢印Xはハーネス取付け具10における車体取付け部30とハーネス保持部20との配設方向、すなわちZ方向およびY方向に直交する方向を夫々示すものとする。さらに、図中、矢印ZaはZ方向一方側、矢印ZbはZ方向他方側、矢印YaはY方向一方側、矢印YbはY方向他方側、矢印XaはX方向一方側、矢印XbはX方向他方側を夫々示すものとする。
【0035】
ハーネス保持部20は、ワイヤーハーネス1の外周に巻き付け可能に可撓性を有する帯状に形成されたバンド部21と、ワイヤーハーネス1に巻き付けたバンド部21を固定するバンド固定部22とが備えられている。
【0036】
バンド部21は、公知のバンドクランプと同様の構成であって、
図1、
図2(a)(b)(c)(d)に示すように、長手方向の先端部21aがバンド固定部22のXa方向の端面からXa方向へ延出している。
図2(b)に示すように、バンド部21の内面には、バンド固定部22とY方向に係合可能な係合突起24が設けられている。
図2(a)(d)に示すように、係合突起24は、バンド部21の幅方向において所定間隔を隔てた各部位に並列に配設されており、何れもバンド部21の長手方向の全長にわたってレール状に設けられている。
【0037】
図2(a)(c)に示すように、バンド固定部22は、略直方体をしたブロック形状で形成され、バンド部21がXb方向の側から挿通される挿通孔25がX方向に貫通形成されている。挿通孔25の内壁には、挿通孔25におけるZb方向に突出するロック爪26が備えられている。
図2(a)に示すように、ロック爪26は、挿通孔25に挿通したバンド部21に設けられた一対の係合突起24の間に嵌り込んで該一対の係合突起24とY方向に係合可能に設けられている。
また、
図1に示すように、ハーネス保持部20のバンド部21は、Y方向に配索されたワイヤーハーネス1に巻き付けた状態においてZa方向へ立設する環状形態となる。
【0038】
車体取付け部30は、
図3に示すように、車体パネル100における所定の取付け箇所Pに貼着する粘着シート31と、粘着シート31に対して面状に接触した状態で該粘着シート31を支持する板状の支持部32とが備えられている。
粘着シート31は、車体パネル100における所定の取付け箇所Pの大きさや、要求される粘着力等を考慮した大きさを有しており、Zb方向から視て正円形状をした円板形状に形成されている。
【0039】
粘着シート31は、車体パネル100における所定の取付け箇所Pに沿った形状に変形可能な可撓性を有する面状に形成され、車体パネル100における所定の取付け箇所Pが平坦ではなく段差を有する表面でも該段差をある程度吸収可能な厚みを有している。
【0040】
詳しくは、
図2(a)中のX部拡大部分に示すように、粘着シート31は、基材層311と、該基材層311の厚み方向の両側に積層された粘着層312a,312bとが備えられている。例えば、粘着シート31の基材層311には、織布、不織布、或いは軟質樹脂を用いてもよく、また、粘着シート31の粘着層312a,312bには、天然ゴム等を主成分とするゴム系粘着剤、シリコーンゲル等のシリコーン系粘着剤、或いはアクリル系粘着剤を用いてもよい。
【0041】
図1、
図2(a)(b)(c)に示すように、支持部32は、粘着シート31に沿う面状に形成されている。具体的には、
図2(d)に示すように、支持部32は、Za方向から視て、すなわち平面視で円板形状の粘着シート31と同一または若干大きな正円形状をした略円板形状に形成されている。粘着シート31における、Za方向に備えられた粘着層312aを、支持部32のZb方向の面に同心状に貼着することで、粘着シート31は支持部32に取り付けられている。
【0042】
支持部32の外周縁部の周方向における所定箇所には、平面視でハーネス保持部20が支持部32と隣接するように備えられ、ハーネス保持部20と支持部32とは一体に連結されている。
図1、
図2(b)(c)(d)に示すように、ハーネス取付け具10には、X方向においてハーネス保持部20がXaの側へ位置するとともに、支持部32がXbの側に位置するレイアウトで並設されている。これにより、ハーネス保持部20は、平面視で支持部32の中心に設けられた後述する押圧部33に対してXa方向へずらして配置されている。
【0043】
本実施形態において、支持部32は、ハーネス保持部20に保持されたワイヤーハーネス1に対してXb方向の側に配置されるが、
図2(b)(c)(d)に示すように、ハーネス保持部20との連結部38およびその周辺部においては、ハーネス保持部20に保持されたワイヤーハーネス1によって平面視で覆われる一方で、少なくとも押圧部33については覆われない配置としている。
【0044】
図2(c)に示すように、バンド固定部22の挿通孔25は、バンド部21の先端部21aがXb方向の側から挿通可能に形成されている。換言すると、同図に示すように、バンド固定部22は、挿通孔25における、バンド部21の先端部21aが挿通される側の開口25bが、X方向において支持部32の側を指向する姿勢で配設されている。
【0045】
これにより、
図2(a)(b)(c)(d)に示すように、ハーネス保持部20において、ワイヤーハーネス1に巻き付けたバンド部21は、先端部21aが挿通孔25に挿通され、バンド固定部22に対してXa方向の側へ延出する。すなわち、本実施形態においてハーネス保持部20のバンド部21は、バンド固定部22の挿通孔25からの延出部分、すなわちバンド部21の先端部21aが、ワイヤーハーネス1に対して支持部32と反対側に向けて延出される構成としている。
【0046】
支持部32は、Za方向から視て周辺部よりもZ方向の厚みが厚い押圧部33およびリブ34と、周辺部よりも厚みが薄い凹状スリット35とが設けられている。
押圧部33は、平面視で支持部32の中心部およびその周辺の中央領域に設けられ、中央領域よりも外周側の領域に対してZa方向へ円柱状に隆起している。すなわち、
図1、
図2(d)に示すように、円柱状の押圧部33は、平面視で支持部32の中心と同心状に形成されている。
【0047】
図1、
図2(b)に示すように、押圧部33は、支持部32における、押圧部33の周辺部の板厚と略同じ隆起長さで周辺部に対して隆起している。
なお、押圧部33のZa方向の端面は、作業者が粘着シート31を車体パネル100における所定の取付け箇所Pに貼着する際に、支持部32を押圧する押圧面として形成され、
図1、
図2(d)に示すように、押圧面には、作業者が押圧し易いように平坦な面に対して径が異なる複数の円環状凸部33aが同心状に配設されている。
【0048】
リブ34は、支持部32における押圧部33に対して径方向の外側において周方向に互いに離間して複数が配設されている。本実施形態の支持部32には、4つのリブ34が備えられ、これら4つのリブ34は、支持部32において周方向に等分に配設されている。リブ34は、支持部32の径方向において押圧部33から支持部32の外周縁に至るまで面状の支持部32のZa方向の端面に沿って直線状に連続して延在している。すなわち、複数のリブ34は、平面視で押圧部33に対して放射状に配設されている。
【0049】
図1、
図2(b)(c)に示すように、リブ34は、周辺部に対してZa方向へ隆起しており、径方向の内端が押圧部33よりもZ方向の高さが若干低い高さで形成されるとともに、径方向の内端から外側へ向かうほど徐々にZa方向の高さが低くなるように形成されている。
【0050】
凹状スリット35は、支持部32における周辺部に対して、Za方向の端面から凹状に形成され、周辺部の厚みに対して半分程度の深さで形成されている。
図1、
図2(d)に示すように、凹状スリット35は、支持部32における押圧部33の径方向の外側において周方向に互いに離間して複数が配設され、何れも周方向に隣り合うリブ34間を2等分する部位に配設されている。本実施形態の支持部32には、4つの凹状スリット35が備えられ、これら4つの凹状スリット35は、支持部32において周方向に等分に配設されている。
【0051】
凹状スリット35は、支持部32の径方向において押圧部33から支持部32の外周縁に至るまで面状の支持部32に沿って直線状に連続して延在している。すなわち、複数の凹状スリット35は、平面視で押圧部33に対して放射状に配設されている。
【0052】
支持部32は、全体が粘着シート31と共に所定の取付け箇所Pに沿った形状に変形可能な可撓性を有するが、押圧部33およびリブ34においては、相対的に剛性を高めて形成されるとともに、凹状スリット35および、その周辺部においては、相対的に優れた可撓性を有している。
【0053】
また、
図1、
図2(c)(d)に示すように、支持部32の周方向に配設された複数の凹状スリット35のうち、押圧部33からXa方向へ延びる凹状スリット351(以下、「幅広凹状スリット351」とも称する)は、他の凹状スリット35よりも幅広に形成されている。具体的に、幅広凹状スリット351は、ハーネス保持部20のバンド部21の幅よりも幅広に形成されている。なお、
図1、
図2(d)に示すように、幅広凹状スリット351は、Y方向の中央部が外側よりも溝深さが一段深く形成されている。
【0054】
幅広凹状スリット351は、支持部32におけるハーネス保持部20との連結部38に形成されることで、バンド部21の先端部21aをバンド固定部22における挿通孔25に対してXb方向の側から挿通する際に、バンド部21が支持部32に干渉することなく挿通孔25にスムーズに挿通可能としている。
【0055】
さらに、幅広凹状スリット351は、支持部32におけるハーネス保持部20との連結部38に形成されることで、他の部位と比して連結部38およびその周辺部の厚みを薄くして、その可撓性を向上させている。これにより、作業者が支持部32を押圧する際に、少ない押圧力によっても取付け箇所Pの表面に沿った連結部38およびその周辺部の変形を促進している。
【0056】
上述した実施形態のハーネス取付け具10は、支持部32が、所定の取付け箇所Pに沿った形状に変形可能な可撓性を有するとともに粘着シート31に沿う面状に形成されたため、凹凸形状の所定の取付け箇所Pに取り付ける際に、支持部32を介して粘着シート31を押圧する力によって、支持部32は、粘着シート31と共に所定の取付け箇所Pに沿って変形し、粘着シート31を所定の取付け箇所Pの凹凸形状に沿ってしっかりと貼着できる。
従って、取付け箇所Pの表面形状によって取り付けが制限されることがなく、凹凸を有する形状の表面に対してもしっかりと取り付けることができる。
【0057】
詳述すると
図1、
図2(b)(c)(d)に示すように、支持部32には、周辺部よりも厚みが厚い押圧部33が平面視で中心部に設けられたため、作業者が支持部32を押圧する際の押圧力を押圧部33によってしっかりと受け止めて粘着シート31を所定の取付け箇所Pに貼着することができる。
【0058】
さらに、支持部32には、押圧部33から径方向の外側へ延在するリブ34が周方向に複数配設されたため、作業者が押圧部33を押圧した押圧力を、リブ34を介して押圧部33よりも径方向外側へ効率よく分散することができ、押圧部33のみならず支持部32全体を所定の取付け箇所Pにしっかりと貼着することができる。
【0059】
支持部32には、凹状スリット35が形成されたため、所定の取付け箇所Pに沿った形状への支持部32の変形を促進でき、粘着シート31を所定の取付け箇所Pの形状に沿ってしっかりと貼着できる。凹状スリット35は、支持部32における、複数のリブ34間に設けられたため、押圧部33と複数のリブ34が設けられた支持部32においても、その可撓性を確保することができる。
【0060】
このように、実施形態のハーネス取付け具10は、車体パネル100における、平坦な取付け箇所に限らず、例えば、
図3に示すように、車体パネル100の取付け箇所Pにおいて、リベットの頭部等の凸部101が突き出した表面においても凹状スリット35の周辺部が凸部101に沿って変形し、粘着シート31全体を取付け箇所Pに貼着することができる。
【0061】
実施形態のハーネス取付け具10は、車体パネル100の取付け箇所Pに凸部101のみを有する表面に限らず、凹部や、凹部と凸部101とを有する表面においても表面形状に沿ってしっかりと貼着することができる。
【0062】
また、
図1、
図2(a)(b)(c)(d)に示すように、バンド固定部22に貫通形成された挿通孔25に挿通され、該挿通孔25から延出されたバンド部21の延出部分、すなわち先端部21aは、ワイヤーハーネス1に対して支持部32と反対側に向けて延出される。このため、作業者が支持部32を介して粘着シート31を取付け箇所Pの側へ押圧する際に、バンド部21の延出部分、すなわち先端部21aによって支障を来たすことがなく、支持部32を介して粘着シート31を取付け箇所Pへしっかりと貼着することができる。
【0063】
また、
図1、
図2(b)(c)(d)に示すように、ハーネス保持部20は、平面視で押圧部33に対してずらして配置されたため、平面視でハーネス保持部20に保持されたワイヤーハーネス1によって押圧部33が覆われることを回避することができる。従って、支持部32を介して粘着シート31を取付け箇所Pの側へ押圧する作業が、ワイヤーハーネス1によって支障を来たすことがなく、粘着シート31を取付け箇所Pへしっかりと貼着することができる。
【0064】
また、支持部32の周方向に配設された複数の凹状スリット35のうち、押圧部33からハーネス保持部20に向けて延びる幅広凹状スリット351が、支持部32におけるハーネス保持部20との連結部38に形成されることで、作業者が支持部32をZb方向の側へ押圧する際に、連結部38およびその周辺部の変形を促進することができる。
【0065】
詳しくは、支持部32における、ハーネス保持部20との連結部38およびその周辺部においては、上述したように、ハーネス保持部20に保持されたワイヤーハーネス1によって平面視で覆われるため、作業者が粘着シート31を車体パネル100に貼着するために支持部32をZb方向の側へ押圧する際に、支持部32における、連結部38およびその周辺部を押圧し難くなり、連結部38およびその周辺部において、粘着シート31を車体パネル100にしっかりと貼着できないことが懸念される。
【0066】
これに対して、本実施形態において、幅広凹状スリット351は、支持部32における連結部38およびその周辺部に形成されることで、支持部32の他の部位と比して連結部38およびその周辺部の可撓性を高めて、少ない押圧力によっても車体パネル100の取付け箇所Pの表面に沿って連結部38およびその周辺部の変形を促進することができる。
従って、支持部32における、連結部38およびその周辺部も含めて粘着シート31を車体パネル100にしっかりと貼着できる。
【0067】
また、車体取付け部30は、所定の取付け箇所Pに取り付けるにあたり、該所定の取付け箇所Pに貼着する粘着シート31が備えられたため、例えば、車体パネル等に設けられた貫通孔に差し込んで装着されるアンカーなどと異なり、車体パネル等に貫通孔を設けずとも車体パネル100等の表面の所定の取付け箇所Pに取り付けることができる。
従って、ワイヤーハーネス1をハーネス取付け具10を介して所定の取付け箇所Pに取り付けた状態において、見栄えや止水性を確保することができる。
【0068】
さらにまた、ハーネス取付け具10は、ハーネス保持部20によってワイヤーハーネス1が保持されるとともに、支持部32によって粘着シート31が支持されているため、ワイヤーハーネス1と粘着シート31との相対的な位置関係をハーネス保持部20および支持部32を介して一義的に定めることができ、結果としてワイヤーハーネス1を所定の取付け箇所Pに正確かつ容易に取り付けることができる。
【0069】
詳しくは、粘着シート31は、面状に接触した状態で支持部32によってしっかりと支持されるとともに、ハーネス保持部20は、支持部32と連結されるため、ハーネス取付け具10を用いることでハーネス保持部20によって保持されたワイヤーハーネス1と、粘着シート31との相対的な位置関係を、支持部32を介して一義的に定めることができる。
【0070】
これにより、ハーネス取付け具10を用いることで、ワイヤーハーネス1を粘着シートのみを用いて所定の取付け箇所に対して取り付ける従来の取り付け方法のように、取付け箇所に対する粘着シートの位置合わせに加えて、粘着シートに対するワイヤーハーネス1の位置合わせや、取付け箇所に対するワイヤーハーネス1の位置合わせを行う必要がなく、取付け箇所Pに対する粘着シート31の位置合わせのみによってワイヤーハーネス1を、ハーネス取付け具10を介して所定の取付け箇所Pに正確かつ容易に取り付けることができる。
【0071】
続いて、上述した実施形態のハーネス取付け具10の変形例に係るハーネス取付け具10a,10b,10c,10dについて説明する。但し、上述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
(変形例1)
変形例1のハーネス取付け具10aのハーネス保持部20aは、
図4、
図5(a)(b)(c)に示すように、バンド部21やバンド固定部22が備えられずに、沿板部27と粘着テープ28が備えられている。
【0073】
沿板部27は、Y方向に沿って直線状に延びる平板状の沿板本体部271と、沿板本体部271のY方向の両端部からX方向において互いに相反する方向へ突出する粘着テープ抜止め突片部272とが備えられている。
【0074】
ワイヤーハーネス1は、沿板本体部271にガイドされた状態で配索方向に沿って配置され、沿板部27のY方向における、支持部32aを隔てた各側において、外周に粘着テープ28が沿板本体部271ごと巻き付けられることによって沿板部27に固定されている。
【0075】
沿板本体部271のYa方向の端部に有する粘着テープ抜止め突片部272は、支持部32aに対してYa方向の側に備えられた粘着テープ28が、沿板本体部271のYa方向の端部側から外れないように該粘着テープ28に対して係止する。同様に沿板本体部271のYb方向の端部に有する粘着テープ抜止め突片部272は、支持部32aに対してYb方向の側に備えられた粘着テープ28が、沿板本体部271のYb方向の端部側から外れないように該粘着テープ28に対して係止する。
【0076】
変形例1の車体取付け部30aの支持部32aと粘着シート31aは、
図4、
図5(a)に示すように、何れもX方向及びY方向に沿って延びる平面視略矩形状に形成されている。
【0077】
そして、支持部32aと沿板部27とは、何れもX方向及びY方向に沿って延びる同一面上に配置され、沿板部27のY方向の中間部におけるXb方向の端部と、支持部32aのXa方向の端部とが一体に連結され、互いに面一に配置されている。すなわち、支持部32aと沿板部27とは、平面視でT字形状に形成されている。
【0078】
さらに、変形例1の支持部32aには、押圧部33およびリブ34が備えられておらず、複数の凹状スリット35x,35yが設けられている。複数の凹状スリット35x,35yは、何れも支持部32aのZa方向の端面からZb方向に向けて凹状に設けられている。
【0079】
変形例1の支持部32aにおいて、凹状スリット35x,35yは2つが設けられ、平面視で支持部32aの中心部において互いに直交する。2つの凹状スリット35x,35yのうち一方の凹状スリット35xは、X方向と一致する方向に支持部32aのX方向の全長にわたって直線状に延在するとともに、他方の凹状スリット35yは、Y方向と一致する方向に支持部32aのY方向の全長にわたって直線状に延在する。
上述により、変形例1の支持部32aは、凹状スリット35x,35yを中心として全体が可撓性を有して形成されている。
【0080】
図4、
図5(a)に示すように、変形例1の支持部32aは、平面視で互いに直交するように配設された一対の凹状スリット35x,35yによって、3次元的に変形させることができる。従って、支持部32aは、粘着シート31aと共に柔軟に変形し、凹凸形状の取付け箇所Pに対しても粘着シート31aをしっかりと貼着することができる。
【0081】
特に、平面視で互いに直交する一対の凹状スリット35x,35yは、互いの交差部分が平面視で支持部32aの中心部に位置することで、支持部32aにおいて変形し易い部位と、変形し難い部位とに偏ることがなく、支持部32aの何れの部位においても、3次元的に変形させることができる。
なお、凹状スリット35x,35yは、平面視で交差していれば直交せずに配設されてもよく、2つに限らず、1つ又は3つ以上設けられてもよい。
【0082】
(変形例2)
変形例2のハーネス取付け具10bは、
図6、
図7(a)(b)(c)に示すように、車体取付け部30bの支持部32bに配設された凹状スリット35x,35yが、変形例1のハーネス取付け具10aの支持部32aに配設された凹状スリット35x,35yとは異なる数、レイアウトで設けられている。さらに、変形例2のハーネス取付け具10bは、車体パネル100に取り付ける際に、所定の取付け箇所Pに対して位置決めするための目印41が設けられている。
【0083】
詳しくは、支持部32bには、4つのX方向延在凹状スリット35xと2つのY方向延在凹状スリット35yとが備えられ、何れも支持部32bのZa方向の端面からZb方向に向けて凹状に設けられている。
【0084】
4つのX方向延在凹状スリット35xは、何れもX方向と一致する方向に支持部32bのX方向の全長にわたって直線状に延在するとともに、2つのY方向延在凹状スリット35yは、何れもY方向と一致する方向に支持部32bのY方向の全長にわたって直線状に延在する。
【0085】
4つのX方向延在凹状スリット35xは、支持部32bをY方向において5等分するように配設されている。2つのY方向延在凹状スリット35yは、支持部32bをX方向において3等分するように配設されている。これにより、4つのX方向延在凹状スリット35xと2つのY方向延在凹状スリット35yは、支持部32bにおいて互いに直交するように格子状に配設されている。
【0086】
また、
図6、
図7(a)に示すように、目印41は、支持部32bにおける、X方向の中間部かつY方向の両端部に設けられた2つのX方向位置決め目印41xと、Xb方向の側端部かつY方向の中間部に設けられた1つのY方向位置決め目印41yとが備えられている。
【0087】
X方向位置決め目印41xは、車体パネル100の所定の取付け箇所Pに付された不図示のX方向位置決め目印とX方向において一致させることでX方向の位置決めを行う目印である。Y方向位置決め目印41yは、車体パネル100の所定の取付け箇所Pに付された不図示のY方向位置決め目印とY方向において一致させることでY方向の位置決めを行う目印である。
【0088】
X方向位置決め目印41xおよびY方向位置決め目印41yは、周辺に対して隆起して形成された平面視三角形状の凸部で形成され、3つの頂点のうち所定の頂点が位置決めポイントを指向するように配置されている。
【0089】
上述した変形例2の支持部32bは、変形例1の支持部32aと同様に、凹状スリット35x,35yが平面視で互いに直交するように配設されているが、
図6、
図7(a)に示すように、変形例1の支持部32aよりも凹状スリット35x,35yの数や直交箇所の数が多く形成されたため、取付け箇所Pの表面が凹凸形状であっても、支持部32bをその表面形状に沿ってより柔軟に変形させることができ、粘着シート31aをしっかりと貼着することができる。
【0090】
また、変形例2の支持部32bには、車体パネル100の取付け箇所Pに対してX方向およびY方向へ位置決めするための目印41が設けられたため、取付け箇所Pに対してハーネス取付け具10bを正確かつ容易に取り付けることができる。
【0091】
すなわち、ハーネス取付け具10bは、ハーネス保持部20aによってワイヤーハーネス1が保持されるとともに、支持部32bによって粘着シート31aが支持されているため、ワイヤーハーネス1と粘着シート31aとの相対的な位置関係をハーネス保持部20aおよび支持部32bを介して一義的に定めることができる。そして、ハーネス取付け具10bを、目印41を利用して所定の取付け箇所Pに取り付けることで、取付け箇所Pに対するハーネス取付け具10bの取り付けも正確に行うことができ、結果としてワイヤーハーネス1を所定の取付け箇所Pに対してハーネス取付け具10bを介して正確かつ容易に取り付けることができる。
【0092】
目印41は、周辺に対して隆起させた凸形状に限らず、例えば、凹形状としたり、マーカー等で着色したり、別部材を付加して設けてもよい。さらに目印41は、平面視三角形状以外に限らず、例えば、文字、矢印等の記号、図柄であってもよい。
なお、目印41は、上述した実施形態の支持部32、或いは変形例1の支持部32aに設けられてもよい。
【0093】
(変形例3)
変形例3のハーネス取付け具10cの車体取付け部30cにおける支持部32cには、
図8、
図9(a)(b)(c)に示すように、作業者による押圧に対しての変形を促進する手段として、2つのY方向延在凹状スリット35yと、支持部32cの板厚方向に貫通形成された4つの貫通スリット36が設けられている。
【0094】
2つのY方向延在凹状スリット35yは、支持部32cをX方向において3等分するように配設されている。4つの貫通スリット36は、支持部32cをY方向において5等分するように配設されている。
【0095】
貫通スリット36は、支持部32cのXb方向の端部からXa方向の端部に至る手前までにわたってX方向に直線状に延在している。すなわち、
図8、
図9(a)に示すように、貫通スリット36は、支持部32cにおける、ハーネス保持部20aとの連結部38については形成されていない。
また、
図8、
図9(b)に示すように、変形例3の支持部32cは、Xa方向の端部が沿板部27と同じ厚みであるのに対して、ハーネス保持部20aとの連結部38からXb方向へ離間するほど徐々に肉厚に形成されている。
【0096】
上述したように、変形例3の支持部32cは、ハーネス保持部20aにおいてワイヤーハーネス1が保持された状態においても支持部32cを介して粘着シート31aを所定の取付け箇所Pに押し付けて貼着することができる。
【0097】
詳述すると、支持部32cにおいて、ハーネス保持部20aとの連結部38から離間すればするほど、作業者により支持部32cを押圧する作業が、ハーネス保持部20aに保持されたワイヤーハーネス1によって阻害されることがなく、しっかりと支持部32cをZa方向の側から押圧することができる。
【0098】
そして、上述したように、支持部32cは、ハーネス保持部20aとの連結部38から離間すればするほど肉厚に形成されることで、支持部32cを介して粘着シート31aに対して、作業者が押圧する押圧力をしっかりと受け止めることができる。すなわち、支持部32cにおける、ハーネス保持部20aとの連結部38から離間した部位においては、所定の取付け箇所Pに対して粘着シート31aをしっかりと貼着することができる。
【0099】
一方、支持部32cにおける、ハーネス保持部20aとの連結部38および周辺部は、作業者により支持部32cを押圧する作業が、ハーネス保持部20aに保持されたワイヤーハーネス1によって阻害され易い。
【0100】
これに対して、変形例3の支持部32cは、上述したように、支持部32cにおける、ハーネス保持部20aとの連結部38および周辺部については薄肉に形成されることで、少しの押圧でも所定の取付け箇所Pに沿って変形し易くなる。すなわち、支持部32cにおける、ハーネス保持部20aとの連結部38および周辺部においても、所定の取付け箇所Pに対して粘着シート31aを貼着することができる。
【0101】
さらに、変形例3の支持部32cにおける、ハーネス保持部20aとの連結部38は、ワイヤーハーネス1を保持するハーネス保持部20aからの負荷が作用し易く、また、上述したように他の部位と比して薄肉に形成されているものの、Y方向延在凹状スリット35yや貫通スリット36を設けない構成とすることで強度を確保することができる。
【0102】
(変形例4)
変形例4のハーネス取付け具10dのハーネス保持部20は、
図10、
図11(a)(b)(c)に示すように、上述した実施形態のハーネス取付け具10と同様に、バンド部21とバンド固定部22とが備えられている。
また、変形例4の車体取付け部30dにおける支持部32dは、上述した変形例3の支持部32cと同様に、ハーネス保持部20との連結部38からXb方向へ離間するほど概ね肉厚に形成されている。
【0103】
ただし、
図10、
図11(a)(b)に示すように、変形例4の支持部32dは、ハーネス保持部20との連結部38を含むXa方向の端部側の領域が、Y方向の全長にわたって、Xb方向の側と比して薄肉とした薄肉領域43として形成されている。
【0104】
支持部32dの薄肉領域43の中でもハーネス保持部20との連結部38においては、Za方向の端面からZb方向の側へ凹状とした幅広凹状スリット351dが形成されている。幅広凹状スリット351dは、ハーネス保持部20のバンド部21の幅よりも幅広に形成され、薄肉領域43においてX方向に直線状に延在している。
【0105】
これにより、支持部32dにおける、ハーネス保持部20との連結部38は、薄肉領域43の中でもさらに薄肉とすることで、他の部位よりも可撓性を高めて形成されている。さらに、支持部32dにおけるハーネス保持部20との連結部38に幅広凹状スリット351dが形成されることで、バンド部21が支持部32dに干渉することなく挿通孔25にスムーズに挿通可能としている。
【0106】
上述した変形例4の支持部32dは、平面視でワイヤーハーネス1によって覆われる領域と覆われない領域が併存しても、上述した支持部32,32a,32b,32cと同様に、何れの領域においても粘着シート31aをしっかりと貼着することができる。
【0107】
特に、変形例4の支持部32dは、平面視でワイヤーハーネス1によって覆われる領域について薄肉領域43を設定し、さらに、薄肉領域43の中でもハーネス保持部20との連結部38において幅広凹状スリット351dが形成されたため、支持部32dにおける他の部位と比して可撓性を高めて形成することができる。
【0108】
ハーネス保持部20に保持されたワイヤーハーネス1によって、作業者が支持部32dをしっかりと押圧することが困難なハーネス保持部20との連結部38および周辺部においても、支持部32dを粘着シート31aと共に所定の取付け箇所Pに沿って変形させることができる。
【0109】
一方、変形例4の支持部32dは、
図10、
図11(a)(b)に示すように、Y方向延在凹状スリット35yが支持部32dの中でも厚肉に形成された領域に集中して設けられたため、作業者が支持部32dを押圧する押圧力をしっかりと受け止めつつ、車両における所定の取付け箇所Pに沿った形状に変形可能な可撓性を確保することができる。よって、支持部32dにおける厚肉に形成された領域についても所定の取付け箇所Pに対して粘着シート31aをしっかりと貼着することができる。
【0110】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
例えば、本発明のハーネス保持部は、上述した実施形態のハーネス保持部20や、変形例2のハーネス保持部20aに限らず、タイバンド等他の構成としてもよい。上述した実施形態のハーネス取付け具10や、変形例4のハーネス取付け具10dは、ハーネス保持部20に代えて変形例1のハーネス保持部20aが備えられてもよく、変形例1~3のハーネス取付け具10a,10b,10cは、ハーネス保持部20aに代えて上述した実施形態のハーネス保持部20が備えられてもよい。
【0111】
また、本発明の凹状スリットは、上述した実施形態の凹状スリット35のように、支持部32のZa方向の端面からZb方向へ凹状に形成されるに限らず、Zb方向の端面からZa方向へ凹状に形成されてもよい。
【0112】
その場合、本発明は、支持部32のZa方向の端面からZb方向へ凹状に形成された凹状スリット35とZb方向の端面からZa方向へ凹状に形成された凹状スリットとが平面視で交差する構成としてもよい。
【0113】
さらにまた、本発明の貫通スリットは、変形例3の貫通スリット36のように、支持部32cにおいてX方向に延在する構成に限らず、Y方向に延在してもよい。その場合、Y方向に延在する貫通スリットは、X方向延在凹状スリット35xと平面視で交差する構成としてもよい。
また、押圧部33およびリブ34は、上述した実施形態のハーネス取付け具10の支持部32に備えられたが、本発明は、これに限らず、変形例1の支持部32a、変形例2の支持部32b、変形例3の支持部32c、変形例4の支持部32dに備えられてもよい。
【0114】
リブ34は、支持部32において押圧部33からハーネス保持部20に向けて延在させてもよい。その場合、リブ34は、連結部38および周辺部の手前において途切れるように延在させてもよい。
また、上述した実施形態において、前記ハーネス保持部と前記支持部とは一体に連結されているが、本発明は、前記ハーネス保持部と前記支持部とが着脱可能に連結された構成としてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…ワイヤーハーネス
1A…ハーネス取付け具付きワイヤーハーネス
10,10a,10b,10c,10d…ハーネス取付け具
20,20a…ハーネス保持部
21…バンド部
21a…バンド固定部から延出されたバンド部21の先端部
22,22a…バンド固定部
25…挿通孔
30,30a,30b,30c,30d…車体取付け部
31,31a…粘着シート
32,32a,32b,32c,32d…支持部
33…押圧部
34…リブ
35,35x,35y…凹状スリット
36…貫通スリット
38…支持部におけるハーネス保持部との連結部
P…所定の取付け箇所