(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145581
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】二酸化炭素の固定化方法、及びセメント混合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/24 20060101AFI20241004BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20241004BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20241004BHJP
B01D 53/80 20060101ALI20241004BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B28B11/24
C04B40/02
B01D53/62
B01D53/80
B01D53/14 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057998
(22)【出願日】2023-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト/多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術の確立」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100226023
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】須山 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山下 牧生
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC05
4D002BA03
4D002DA05
4D002DA11
4D002DA12
4D002DA66
4D002EA13
4D002FA02
4D002GA01
4D002GA04
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB03
4D002GB08
4D002GB12
4D020AA03
4D020BA02
4D020BB05
4D020CA06
4D020CC05
4D020CD03
4D020DB01
4D020DB02
4D020DB03
4D020DB07
4D020DB10
4G055AA01
4G055BA02
4G055BA03
4G055BA04
4G112RA02
4G112RA03
(57)【要約】
【課題】
セメント質硬化体にCO
2を効率よく固定化する方法を提供すること。
【解決手段】
セメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化する方法であって、前記セメント質硬化体と水とを含む混合物に二酸化炭素を含むガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、前記二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて前記混合物に加水しながら、前記混合物における水分量が、固液比で0.1~0.5の範囲で予め設定された水分量の80~150質量%の範囲内に保たれつつ行われる、方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化する方法であって、
前記セメント質硬化体と水とを含む混合物に二酸化炭素を含むガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、
前記二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて前記混合物に加水しながら、前記混合物における水分量が、固液比で0.1~0.5の範囲で予め設定された水分量の80~150質量%の範囲内に保たれつつ行われる、方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素固定化工程が、水分蒸発速度を監視しながら容器内で行われ、
前記容器が前記ガスを流入させるための入口と、容器内のガスを排出可能な出口を備え、
前記出口において排出されるガスに含まれる水蒸気量と前記入口において流入するガスに含まれる水蒸気量との差から前記水分蒸発速度を算出する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化する方法であって、
前記セメント質硬化体と水とを含む混合物に二酸化炭素を含むガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、
前記二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて前記混合物に加水しながら、前記混合物における水分量が、固液比で0.08~0.75の範囲内に保たれつつ行われる、方法。
【請求項4】
前記二酸化炭素固定化工程において、前記混合物に20~120℃の前記ガスを接触させる、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記セメント質硬化体の粒度が40mm以下である、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記二酸化炭素固定化工程が、すりもみ装置内で前記セメント質硬化体を粉砕しながら行われる、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項7】
セメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化して得られるセメント混合材の製造方法であって、
前記セメント質硬化体と水とを含む混合物にガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、
前記二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて前記混合物に加水しながら前記混合物における水分量が、固液比で0.1~0.5の範囲で予め設定された水分量の80~150質量%の範囲内に保たれつつ行われる、製造方法。
【請求項8】
セメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化して得られるセメント混合材の製造方法であって、
前記セメント質硬化体と水とを含む混合物にガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、
前記二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて前記混合物に加水しながら前記混合物における水分量が、固液比で0.08~0.75の範囲内に保たれつつ行われる、製造方法。
【請求項9】
前記二酸化炭素固定化工程が、すりもみ装置内で、前記すりもみ装置によりコンクリート塊が粉砕されて得られたセメント質硬化体と前記ガスとを接触させることにより行われる、請求項7又は8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は二酸化炭素の固定化方法、及びセメント混合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2050年カーボンニュートラルを達成するためには、セメント工場をはじめ工場から排出されるCO2の削減が課題となっている。そこで、セメント硬化体等のカルシウムを多く含む材料中にCO2をCaCO3として固定化する方法が技術開発されている。例えば、特許文献1では、セメント質硬化体に、水分量が1.5%以上で且つ温度が75~175℃の二酸化炭素含有ガスを接触させて二酸化炭素を固定化する方法が提案されている。特許文献2では、CaO及び/又はCa(OH)2を含む固体粒子の集合体にCO2を含むガスを接触させて、排ガス中のCO2を固体粒子に固定化する方法が提案されている。また、特許文献3には廃コンクリートを摩砕して骨材とセメントペーストを分別し、セメントペーストを得る補法が提案されている。特許文献4には、廃コンクリートを破砕して得た材料を集積し、水分供給して攪拌して、湿潤・乾燥の交互工程を繰り返すことでCO2を固定化する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-15659号公報
【特許文献2】特開2000-197810号公報
【特許文献3】特開2022-126254号公報
【特許文献4】特開2009-90198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1及び特許文献2の方法ではセメント質硬化体に水分を供給して炭酸化を行うことが記載されているが、水分を供給しても処理温度によっては水分が蒸発してしまうため最終的な炭酸化度が低くなる。
特許文献3の方法では、CO2固定化したセメントペーストを効率よく(短時間、高炭酸化度)回収することまでは記載されていない。
特許文献4の方法では、材料を断続的に乾燥及び湿潤とすることを繰り返すため、効率が悪い。
【0005】
本開示は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、セメント質硬化体にCO2を効率よく固定化する方法、及びセメント混合材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
セメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化する方法であって、
前記セメント質硬化体と水とを含む混合物に二酸化炭素を含むガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、
前記二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて前記混合物に加水しながら、前記混合物における水分量が、固液比で0.1~0.5の範囲で予め設定された水分量の80~150質量%の範囲内に保たれつつ行われる、方法。
[2]
前記二酸化炭素固定化工程が、水分蒸発速度を監視しながら容器内で行われ、
前記容器が前記ガスを流入させるための入口と、容器内のガスを排出可能な出口を備え、
前記出口において排出されるガスに含まれる水蒸気量と前記入口において流入するガスに含まれる水蒸気量との差から前記水分蒸発速度を算出する、[1]の方法。
[3]
セメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化する方法であって、
前記セメント質硬化体と水とを含む混合物に二酸化炭素を含むガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、
前記二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて前記混合物に加水しながら、前記混合物における水分量が、固液比で0.08~0.75の範囲内に保たれつつ行われる、方法。
[4]
前記二酸化炭素固定化工程において、前記混合物に20~120℃の前記ガスを接触させる、[1]~[3]のいずれか一つの方法。
[5]
前記セメント質硬化体の粒度が40mm以下である、[1]~[4]のいずれか一つの方法。
[6]
前記二酸化炭素固定化工程が、すりもみ装置内で前記セメント質硬化体を粉砕しながら行われる、[1]~[5]のいずれか一つの方法。
[7]
セメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化して得られるセメント混合材の製造方法であって、
前記セメント質硬化体と水とを含む混合物にガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、
前記二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて前記混合物に加水しながら前記混合物における水分量が、固液比で0.1~0.5の範囲で予め設定された水分量の80~150質量%の範囲内に保たれつつ行われる、製造方法。
[8]
セメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化して得られるセメント混合材の製造方法であって、
前記セメント質硬化体と水とを含む混合物にガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、
前記二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて前記混合物に加水しながら前記混合物における水分量が、固液比で0.08~0.75の範囲内に保たれつつ行われる、製造方法。
[9]
前記二酸化炭素固定化工程が、すりもみ装置内で、前記すりもみ装置によりコンクリート塊が粉砕されて得られたセメント質硬化体と前記ガスとを接触させることにより行われる、[7]又は[8]の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、セメント質硬化体にCO2を効率よく固定化する方法、及びセメント混合材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例で使用した反応装置の概略図である。
【
図2】
図2は、各参考例及び参考比較例について反応時間と炭酸化度との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、参考例3及び参考例3Bについて、反応時間と炭酸化度又は固液比との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例1及び2について、反応時間と炭酸化度又は固液比との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態のセメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化する方法(二酸化炭素の固定化方法)は、セメント質硬化体と水とを含む混合物に二酸化炭素を含むガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、以下の(1)又は(2)の条件を満たす。
(1)二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて混合物に加水しながら、混合物における水分量が、固液比で0.1~0.5の範囲で予め設定された水分量の80~150質量%の範囲内(以下、変動幅とも呼ぶ。)に保たれつつ行われる。
(2)二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて混合物に加水しながら、混合物における水分量が、固液比で0.08~0.75の範囲内に保たれつつ行われる。
なお、本明細書において「固液比」とは、固形分(セメント質硬化体の量)に対する液量(水分量)の割合(質量比)である。
【0010】
従来の方法では、二酸化炭素の固定化反応中に試料(セメント質硬化体と水とを含む混合物)中の水分量が保持されず、反応がすすむにつれ水分量が少なくなり、反応効率が低下していたところ、本実施形態の二酸化炭素の固定化方法によれば、二酸化炭素の固定化反応中に水分量が一定範囲に保持されるため、反応効率を高めることが可能である。
【0011】
条件(1)では、まず、二酸化炭素固定化工程において資料に含まれる水分量を予め設定する。当該水分量は固液比で0.1~0.5の範囲内の値により定める。そして、二酸化炭素固定化工程中、混合物に含まれる水分が変動幅の範囲内にあるように、混合物に水を供給する。例えば、予め設定された水分量が固液比で0.25であれば、混合物における水分量を0.25の80~150質量%の範囲内(すなわち、固液比で0.2~0.375の範囲内)に保ちながら、二酸化炭素固定化工程を行う。
【0012】
予め設定された水分量は、固液比で0.15~0.40であってよく、0.15~0.35であってよい。変動幅は90~130質量%であってよく、95~120質量%であってよい。
【0013】
条件(1)において、水分蒸発速度は、二酸化炭素固定化工程が、容器(反応器等)内で行われる場合、容器がガスを流入させるための入口と、容器内のガスを排出可能な出口を備え、出口において排出されるガスに含まれる水蒸気量と前記入口において流入するガスに含まれる水蒸気量との差から時間に対する水分蒸発量を測定し、その結果から水分蒸発速度を算出してもよい。これにより、水分蒸発速度を監視しながら二酸化炭素固定化工程を行うことができ、監視結果に基づいて加水量を再調整してもよい。
【0014】
(2)において、二酸化炭素固定化工程中の混合物における水分量は、固液比で0.12~0.60であってよく、0.12~0.525であってよい。(2)において、二酸化炭素固定化工程中の混合物における水分量は、固液比で0.09~0.65であってよく、0.135~0.52であってよく、0.135~0.455であってよい。(2)において、二酸化炭素固定化工程中の混合物における水分量は、固液比で0.095~0.60であってよく、0.1425~0.48であってよく、0.1425~0.42であってよい。(2)において、二酸化炭素固定化工程中の混合物における水分量は、固液比で0.22~0.30であってよく、0.24~0.30であってよい。
【0015】
セメント質硬化体は、セメントと水を含む組成物の硬化によって得られた硬化体である。セメント質硬化体は、セメントペーストの硬化体、モルタルの硬化体、及びコンクリートの硬化体のいずれであってもよい。セメントとしては、ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメント等、各種のセメントが挙げられる。また、セメント質硬化体は、例えば、コンクリート又はモルタルからなる建材の廃材、セメントペースト硬化体の廃材、レディーミクストコンクリートで発生するスラッジ等の廃棄物であってよい。セメント質硬化体は、コンクリート塊を粉砕したものであってもよい。このような廃棄物を用いることによって資源の有効活用を図ることができる。セメント質硬化体の形状及びサイズは特に限定されない。
【0016】
セメント質硬化体の材齢は特に限定されず、例えば、材齢1日以上のものであってよく、7日以上のものであってよく、14日以上のものであってよく、1年以上のものであってよい。
【0017】
セメント質硬化体は水分を含有していてよい。セメント質硬化体における水分量は、例えば、15質量%以上であってよく、20質量%以上であってもよい。セメント質硬化体における水分量Wは、例えば、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよい。
【0018】
二酸化炭素を含むガスとしては、特に制限されないが、排ガスであってよく、工場からの排ガス、焼却炉若しくは電気集塵機等の設備から排出された排ガスであってよい。ガスの流入量は、例えば、0.5~5L/minであってよく、1~3L/minであってよい。ガスの温度は20~120℃であってよい。ガスの温度は、容器内で反応を行う場合、容器の入口での温度であってよい。
【0019】
ガスにおける二酸化炭素の含有量は、ガスの総量に対して1体積%以上であってよく、5~50体積%であってよく、10~30体積%であってよい。ガスは、二酸化炭素以外に窒素、酸素、揮発性有機物、水(水蒸気)等を含んでいてよい。
【0020】
混合物に加水する方法は特に制限されないが、例えば、ポンプにより水(液体の水)を混合物に供給することにより行ってよい。
【0021】
二酸化炭素固定化工程は、混合物を収容した容器内で行われてよい。容器としては容易内にガスを導入可能であり、容器内の混合物を加熱可能なもの(充填型加熱装置)であってよい。そのようなものとしては例えば、ヒーターが備え付けられた又はヒーターとしての機能を有する反応器であってよい。ヒーターとしては特に限定されず、ラバーヒーター等の外部加熱装置であってよく、赤外線照射装置等の内部加熱可能な装置であってもよい。二酸化炭素固定化工程において、混合物の温度(処理温度)として、20℃~水の沸点(常圧であれば100℃)までの範囲内の温度で炭酸化反応を行ってもよい。混合物の温度は反応器内に配置された熱電対等の温度測定手段で測定することができる。
【0022】
二酸化炭素固定化工程は、すりもみ装置内で行われてもよい。すりもみ装置内では、セメント質硬化体(コンクリート塊等)を粉砕しながら二酸化炭素固定化工程を行ってよい。また、充填型加熱装置等の加熱装置内で二酸化炭素固定化工程を行った後、二酸化炭素が固定化されたセメント質硬化体に対してすりもみ装置により更に粉砕を行ってもよい。粉砕は、複数のすりもみ装置により行われてもよい。
【0023】
すりもみ装置内のセメント質硬化体と水とを含む混合物の水分量が一定の範囲となるように水分を供給できるよう、すりもみ装置には水分供給手段を備えていてもよい。
【0024】
セメント質硬化体は粉砕物であってよい。セメント質硬化体のJISZ8801-1:2019に規定される試験用篩による分級、又はレーザー粒度分布測定装置により測定した平均粒子径(体積基準又は個数基準でのd50等)であってもよい。粒度は40mm以下であってよく、10mm以下であってよく、1mm以下であってよい。
【0025】
二酸化炭素固定化工程をすりもみ装置内で行う場合は、二酸化炭素が固定化されたセメント質硬化体はすりもみ装置からのガスに含まれる微粉として集塵装置により回収されてよい。
【0026】
本実施形態のセメント混合材の製造方法は、セメント質硬化体へ二酸化炭素を固定化してセメント混合材を得るものである。
具体的には、例えば、本実施形態のセメント混合材の製造方法は、セメント質硬化体と水とを含む混合物にガスを接触させる二酸化炭素固定化工程を備え、以下の(1)又は(2)の条件を満たす。
(1)二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて混合物に加水しながら混合物における水分量が、固液比で0.1~0.5の範囲で予め設定された水分量の80~150質量%の範囲内に保たれつつ行われる。
(2)二酸化炭素固定化工程が、予め算出した当該工程における水分蒸発速度に基づいて前記混合物に加水しながら前記混合物における水分量が、固液比で0.08~0.75の範囲内に保たれつつ行われる。すなわち、本実施形態のセメント混合材は、上記本実施形態の二酸化炭素固定化方法により製造されたものであってよい。
【0027】
セメント混合材の用途としては特に限定されず、セメントと混合して使用するものであれば特に制限はないが、土壌改良材などの固化材として使用することも可能である。
【実施例0028】
以下、実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<セメント質硬化体の作製>
普通ポルトランドセメントを水セメント比(W/C)0.4となるように水と練り混ぜた後、28日間養生した。養生後、ボールミルでセメント質硬化体の粒度が0.3mm以下になるまで粉砕し、セメントペースト紛を得た。なお、セメント質硬化体の粒度(平均粒子径)はレーザー粒度分布測定装置で測定した。表1にセメントペースト粉の化学組成を示す。
【0030】
【0031】
<反応装置>
二酸化炭素の固定化を反応装置内で行った。
図1に反応装置の概略図を示す。反応装置の構成は以下のとおりである。
まず、反応装置10は、試料(セメントペースト紛と水との混合物)にCO
2固定化反応を行うための反応器1を有している。反応器1には、ホバートミキサー2が取り付けられており、反応器内の試料を撹拌することが可能である。また、反応器1の入口にはCO
2ボンベ3及びN
2ボンベ4が接続されており、反応器1内にガスを流入させることが可能である。反応装置10は、ポンプ5を有している。ポンプ5は反応器1と水を収容したタンク6とに接続されており、反応器1に水を共有することが可能である。反応器1にはラバーヒーター7が取り付けられており、反応器1を加熱することが可能である。ラバーヒーターには更に温度制御器8が接続されており、温度制御器8には反応器内に取り付けられた熱電対9が接続されている。これにより、熱電対9で反応器1内の温度を測定しながら温度制御器8によりラバーヒーターの温度を制御して反応器内の試料温度を管理することができる。
【0032】
<二酸化炭素固定化(炭酸化)反応>
作製したセメントペースト紛(200g)を上記反応装置の反応器内に投入し、ホバートミキサーで攪拌した。反応器内の温度は反応器の下部に備えられたラバーヒーターで20℃に調整した。N2及びCO2ボンベによりCO2濃度を20体積%に調整したガスを反応器内へ流量2.0L/minで通気し、表2のW/Pの値となるよう水を添加して得られた混合物にCO2の固定化反応を行った。固定化反応中、一定時間毎に試料を回収しながら熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)から下記式(1)を用いて炭酸化度を測定した。なお、W/Pは、セメントペースト粉(P)に対する水(W)の質量比である。
【0033】
<炭酸化度の計算方法>
炭酸化度は次の式(1)より算出した。
【数1】
式(1)中の記号は以下のとおりである。
ig.loss(before):炭酸化前のセメントペーストのig.loss
ig.loss(after):炭酸化後のセメントペーストのig.loss
CaCO
3:炭酸化後のセメントペーストのCaCO
3量
CaO:炭酸化前のセメントペーストのCaO量
なお、Ig.lossは室温~1000℃の温度範囲の減少量、CaCO
3の量は500~800℃の温度範囲の減少量からそれぞれ算出した。
【0034】
(参考例1~5、参考比較例1及び2)
表2に各参考及び参考比較例について、W/Pと反応開始から4時間後の炭酸化度の値を示す。また、各参考及び参考比較例について時間と炭酸化度との関係を
図2に示す。
図2に示すとおり、W/Pが0.1~0.5の場合には短時間、高炭酸化度で処理できることが確認できた。一方、固液比を高くした場合は、初期の炭酸化が緩やかであることが分かった。
【0035】
【0036】
(参考例3B)
ヒーターの温度を20℃又は100℃に設定し、固液比を0.25とした混合物に対して参考例1等と同様に二酸化炭素の固定化を行い、炭酸化度を測定した。結果を
図3に示す。
図3において、白い四角及び黒い三角のプロットは100℃での処理を示し、実線が炭酸化度、鎖線が固液比を示す。また、
図3において、白い丸及び黒い丸のプロットは20℃での処理を示し、実線が炭酸化度、鎖線が固液比を示す。
図3より、100℃で処理した場合は初期の炭酸化速度は20℃の場合と変わりはないが、最終的な炭酸化度は低くなることが分かる。
【0037】
(実施例1及び2)
図3の時間対固液比のグラフの傾きから、処理温度20℃及び100℃における水分の蒸発速度を算出した。算出した水分の蒸発速度により、固液比が0.25の一定範囲になるように水分を添加しながら上記と同様に炭酸化を行った。なお、表3にW/P及び処理温度を示し、加水したこと、W/P及び処理温度以外の条件は、参考例1と同様に二酸化炭素の固定化及び炭酸化度の測定を行った。結果を表3及び
図4に示す。
固液比が一定範囲となるように水分を添加した場合は、処理温度によらず高炭酸化度、短時間で処理できることが確認された。
【0038】