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特開2024-14560研磨パッドのドレッシング方法、シリコンウェーハの研磨方法、シリコンウェーハの製造方法およびシリコンウェーハの研磨装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014560
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】研磨パッドのドレッシング方法、シリコンウェーハの研磨方法、シリコンウェーハの製造方法およびシリコンウェーハの研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/017 20120101AFI20240125BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20240125BHJP
   B24B 37/07 20120101ALI20240125BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20240125BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B24B53/017 A
B24B53/12 Z
B24B37/07
B24B37/12 D
H01L21/304 622M
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117471
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】倉本 諒
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 太希
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C047AA16
3C047AA34
3C047EE04
3C047EE05
3C158AA07
3C158CA01
3C158CB01
3C158EA01
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED00
5F057AA23
5F057CA11
5F057DA02
5F057EB27
5F057FA39
(57)【要約】
【課題】回転定盤の表面が湾曲している場合であっても、研磨パッドをより均一にドレッシングすることができる研磨パッドのドレッシング方法を提案する。
【解決手段】研磨定盤に貼り付けられた研磨パッド100に、砥石12が付設されたパッドドレッサー1の砥石12を押し当て、摺接させることによって研磨パッド100のドレッシングを行う研磨パッド100のドレッシング方法であって、研磨パッド100と摺接する砥石12のドレッシング面12bの研磨定盤の径方向の曲率半径R1が変更可能に構成されているパッドドレッサー1を用いることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨定盤に貼り付けられた研磨パッドに、砥石が付設されたパッドドレッサーの前記砥石を押し当て、摺接させることによって前記研磨パッドのドレッシングを行う研磨パッドのドレッシング方法であって、
前記研磨パッドと摺接する前記砥石のドレッシング面の前記研磨定盤の径方向の曲率半径R1が変更可能に構成されているパッドドレッサーを用いることを特徴とする研磨パッドのドレッシング方法。
【請求項2】
前記砥石の前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を、前記研磨パッドの表面の曲率半径R2よりも小さくなるように変更し、その後前記研磨パッドのドレッシングを行う、請求項1に記載の研磨パッドのドレッシング方法。
【請求項3】
前記砥石が曲率半径の異なる複数のドレッシング面を有し、前記砥石を回転させることによって前記研磨パッドと摺接する前記ドレッシング面の前記曲率半径R2を変更することができるパッドドレッサーを用いる、請求項1または2に記載の研磨パッドのドレッシング方法。
【請求項4】
前記砥石の基材が撓むことが可能な合金で構成されており、前記ドレッシング面の反対側から前記砥石を押圧することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるパッドドレッサーを用いる、請求項1または2に記載の研磨パッドのドレッシング方法。
【請求項5】
前記砥石は保持具を介して前記パッドドレッサーに付設されており、前記砥石の基材の両端と保持具とが結合され、前記ドレッシング面の反対側の前記砥石の一部を押圧部材で押圧することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるパッドドレッサーを用いる、請求項4に記載の研磨パッドのドレッシング方法。
【請求項6】
前記砥石は前記砥石の基材と熱膨張係数の異なる保持具を介して前記パッドドレッサーに付設されており、前記保持具の温度を変更することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるパッドドレッサーを用いる、請求項4に記載の研磨パッドのドレッシング方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の研磨パッドのドレッシング方法を用いてドレッシングされた研磨パッドを用いて、シリコンウェーハを研磨することを特徴とするシリコンウェーハの研磨方法。
【請求項8】
所定の方法で育成した単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施して得られたシリコンウェーハに対して、請求項7に記載されたシリコンウェーハの研磨方法を用いて前記シリコンウェーハを研磨することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項9】
研磨定盤と、前記研磨定盤に貼りつけられた研磨パッドと、砥石が付設され、前記研磨パッドをドレッシングするパッドドレッサーとを備える研磨装置において、
前記砥石の前記研磨パッドと摺接するドレッシング面の前記研磨定盤の径方向の曲率半径R1が変更可能に構成されていることを特徴とするシリコンウェーハの研磨装置。
【請求項10】
前記砥石が曲率半径の異なる複数のドレッシング面を有し、前記砥石を回転させることによって前記研磨パッドと摺接する前記ドレッシング面の曲率半径R1を変更することができるように構成されている、請求項9に記載のシリコンウェーハの研磨装置。
【請求項11】
前記砥石の基材が撓むことが可能な合金で構成されており、前記ドレッシング面の反対側から前記砥石を押圧することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるように構成されている、請求項10に記載のシリコンウェーハの研磨装置。
【請求項12】
前記砥石は保持具を介して前記パッドドレッサーに付設されており、前記砥石の基材の両端と保持具とが結合され、前記ドレッシング面の反対側の前記砥石の一部を押圧部材で押圧することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるように構成されている、請求項11に記載のシリコンウェーハの研磨装置。
【請求項13】
前記砥石は前記砥石の基材と熱膨張係数の異なる保持具を介して前記パッドドレッサーに付設されており、前記保持具の温度を変更することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるように構成されている、請求項11に記載のシリコンウェーハの研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドのドレッシング方法、シリコンウェーハの研磨方法、シリコンウェーハの製造方法およびシリコンウェーハの研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの基板の典型例であるシリコンウェーハの製造において、より高精度なウェーハの平坦度品質や表面粗さ品質を得るために、シリコンウェーハの表裏面を研磨する両面研磨工程およびシリコンウェーハの表面および裏面の一方を研磨する片面研磨工程が一般的に採用されている。
【0003】
両面研磨工程は、シリコンウェーハをキャリアプレートに保持し、キャリアプレートを研磨パッドが貼り付けられた上定盤と下定盤とからなる一対の回転定盤で挟み込み、研磨液を供給しつつ回転定盤とキャリアプレートとを相対回転させることによって、シリコンウェーハの表裏面を同時に研磨する。
【0004】
一方、片面研磨工程は、研磨パッドが貼り付けられた回転定盤の上にシリコンウェーハを載置し、研磨ヘッドでシリコンウェーハを押圧するとともに、研磨液を供給しつつ回転定盤と研磨ヘッドとを相対回転させることによって、シリコンウェーハの表面および裏面の一方を研磨する。
【0005】
上記両面研磨工程または片面研磨工程を繰り返し行うと、回転定盤に貼り付けられた研磨パッドに、研磨液に含まれる砥粒や研磨屑が付着し、研磨パッドの性能が低下し、研磨速度の低下や研磨ムラなどの問題が生じる。そこで、研磨パッドの性能を回復させるために研磨パッドに対してドレッシング処理が定期的に施されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、下面にダイヤモンド粒子が電着されたダイヤモンドドレッサーを研磨パッドに押し当てて摺接させて研磨パッドの目粗しを行い、次いで下面にブラシを有するブラシドレッサーを研磨パッドに押し当てて摺接させることによって、研磨パッドの研磨面に凹部が設けられている場合にも、凹部に詰まった異物を効果的に除去することによって、研磨パッドを再生する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-211355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された技術においては、ドレッサーのドレッシング面は平坦である。こうしたドレッシング面が平坦なドレッサーを用いて研磨パッドのドレッシングを行う場合、回転定盤の内外端ではドレッサーの取り付け精度や加圧時の角度によって径方向の押し付け方に差が生じ、回転定盤の径方向に取り代のバラツキが生じる。また、回転定盤の表面がお椀型あるいは逆お椀型のような湾曲した形状の場合に、回転定盤の内外端においてドレッサーの端がより強く研磨パッドに押し当てられ、同じく回転定盤の径方向に取り代のバラツキが生じてしまう。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回転定盤の表面が湾曲している場合であっても、研磨パッドをより均一にドレッシングすることができる研磨パッドのドレッシング方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]研磨定盤に貼り付けられた研磨パッドに、砥石が付設されたパッドドレッサーの前記砥石を押し当て、摺接させることによって前記研磨パッドのドレッシングを行う研磨パッドのドレッシング方法であって、
前記研磨パッドと摺接する前記砥石のドレッシング面の前記研磨定盤の径方向の曲率半径R1が変更可能に構成されているパッドドレッサーを用いることを特徴とする研磨パッドのドレッシング方法。
【0011】
[2]前記砥石の前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を、前記研磨パッドの表面の曲率半径R2よりも小さくなるように変更し、その後前記研磨パッドのドレッシングを行う、前記[1]に記載の研磨パッドのドレッシング方法。
【0012】
[3]前記砥石が曲率半径の異なる複数のドレッシング面を有し、前記砥石を回転させることによって前記研磨パッドと摺接する前記ドレッシング面の前記曲率半径R2を変更することができるパッドドレッサーを用いる、前記[1]または[2]に記載の研磨パッドのドレッシング方法。
【0013】
[4]前記砥石の基材が撓むことが可能な合金で構成されており、前記ドレッシング面の反対側から前記砥石を押圧することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるパッドドレッサーを用いる、前記[1]または[2]に記載の研磨パッドのドレッシング方法。
【0014】
[5]前記砥石は保持具を介して前記パッドドレッサーに付設されており、前記砥石の基材の両端と保持具とが結合され、前記ドレッシング面の反対側の前記砥石の一部を押圧部材で押圧することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるパッドドレッサーを用いる、前記[4]に記載の研磨パッドのドレッシング方法。
【0015】
[6]前記砥石は前記砥石の基材と熱膨張係数の異なる保持具を介して前記パッドドレッサーに付設されており、前記保持具の温度を変更することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるパッドドレッサーを用いる、前記[4]に記載の研磨パッドのドレッシング方法。
【0016】
[7]前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の研磨パッドのドレッシング方法を用いてドレッシングされた研磨パッドを用いて、シリコンウェーハを研磨することを特徴とするシリコンウェーハの研磨方法。
【0017】
[8]所定の方法で育成した単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施して得られたシリコンウェーハに対して、前記[7]に記載されたシリコンウェーハの研磨方法を用いて前記シリコンウェーハを研磨することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【0018】
[9]研磨定盤と、前記研磨定盤に貼りつけられた研磨パッドと、砥石が付設され、前記研磨パッドをドレッシングするパッドドレッサーとを備える研磨装置において、
前記砥石の前記研磨パッドと摺接するドレッシング面の前記研磨定盤の径方向の曲率半径R1が変更可能に構成されていることを特徴とするシリコンウェーハの研磨装置。
【0019】
[10]前記砥石が曲率半径の異なる複数のドレッシング面を有し、前記砥石を回転させることによって前記研磨パッドと摺接する前記ドレッシング面の曲率半径R1を変更することができるように構成されている、前記[9]に記載のシリコンウェーハの研磨装置。
【0020】
[11]前記砥石の基材が撓むことが可能な合金で構成されており、前記ドレッシング面の反対側から前記砥石を押圧することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるように構成されている、前記[10]に記載のシリコンウェーハの研磨装置。
【0021】
[12]前記砥石は保持具を介して前記パッドドレッサーに付設されており、前記砥石の基材の両端と保持具とが結合され、前記ドレッシング面の反対側の前記砥石の一部を押圧部材で押圧することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるように構成されている、前記[11]に記載のシリコンウェーハの研磨装置。
【0022】
[13]前記砥石は前記砥石の基材と熱膨張係数の異なる保持具を介して前記パッドドレッサーに付設されており、前記保持具の温度を変更することによって前記ドレッシング面の前記曲率半径R1を変更することができるように構成されている、前記[11]に記載の研磨パッドの研磨装置。
【発明の効果】
【0023】
回転定盤の表面が湾曲している場合であっても、研磨パッドをより均一にドレッシングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による研磨パッドのドレッシング方法を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
図2】砥石のドレッシング面の曲率半径および研磨パッドの曲率半径を説明する図である。
図3】本発明において用いることができる、砥石のドレッシング面の曲率半径が変更可能に構成されているパッドドレッサーの一例を示す図である。
図4】本発明において用いることができる、砥石のドレッシング面の曲率半径が変更可能に構成されているパッドドレッサーの別の例を示す図である。
図5】本発明において用いることができる、砥石のドレッシング面の曲率半径が変更可能に構成されているパッドドレッサーのさらに別の例を示す図である。
図6】本発明において用いることができる、砥石のドレッシング面の曲率半径が変更可能に構成されているパッドドレッサーのさらにまた別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明による研磨パッドのドレッシング方法は、研磨定盤に貼り付けられた研磨パッドに、砥石が付設されたパッドドレッサーの砥石を押し当て、摺接させることによって研磨パッドのドレッシングを行う研磨パッドのドレッシング方法である。ここで、研磨パッドと摺接する砥石のドレッシング面の研磨定盤の径方向の曲率半径R1が変更可能に構成されているパッドドレッサーを用いることを特徴とする。
【0026】
上述のように、特許文献1に記載された技術のように、ドレッシング面が平坦なドレッサーを用いて研磨パッドをドレッシングすると、回転定盤の内外端ではドレッサーの取り付け精度や加圧時の角度によって径方向の押し付け方に差が生じ、回転定盤の径方向に取り代のバラツキが生じる問題がある。また、回転定盤の表面がお椀型あるいは逆お椀型のような湾曲した形状の場合に、回転定盤の内外端においてドレッサーの端がより強く研磨パッドに押し当てられ、同じく回転定盤の径方向に取り代のバラツキが生じる問題がある。
【0027】
本発明者らは、回転定盤の表面が湾曲している場合であっても、研磨パッドをより均一にドレッシングする方途について鋭意検討した。その結果、研磨パッドと摺接する砥石のドレッシング面の研磨定盤の径方向の曲率半径(以下、単に「ドレッシング面の曲率半径」とも言う。)R1が変更可能に構成されているパッドドレッサーを用いることに想到した。そして、このようなパッドドレッサーを用いることにより、回転定盤の湾曲に合わせてドレッシング面の曲率半径を変更することによって、研磨パッドに対して一定の押し付け圧でドレッシングすることができることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0028】
図1は、本発明による研磨パッドのドレッシング方法を説明する図を示しており、(a)は斜視図、(b)は上面図である。なお、図1は、両面研磨装置の下定盤の表面に貼り付けられた研磨パッド100をドレッシングする場合について示している。図1(a)に示すように、パッドドレッサー1は、アーム部11と、アーム部11に付設された砥石12とを有しており、砥石12は保持具13を介してアーム部11の端部11aに固定されている。また、砥石12は、基材12aと、基材12aの表面に固着された砥粒(図示せず)とで構成されており、砥粒は、砥石12の少なくともドレッシング面12bに固着されている。
【0029】
砥石12のドレッシング面12bの曲率半径R1は、変更可能に構成されている。これにより、回転定盤の湾曲に合わせてドレッシング面12bの曲率半径R1を変更することによって、研磨パッド100を一定の押し付け圧でドレッシングすることができ、研磨パッド100をより均一にドレッシングすることができる。曲率半径R1を変更可能な具体的なパッドドレッサー1については、後に詳述する。
【0030】
なお、本発明において、「砥石のドレッシング面」とは、研磨パッド100をドレッシングする際に、研磨パッド100と摺接する砥石12の表面を意味しており、図1において、ドレッシング面12bは、砥石12の下面全体である。また、「ドレッシング面の曲率半径」は、図2に示すように、研磨パッド100と摺接する砥石12のドレッシング面12bについて、その研磨定盤の径方向の表面プロファイルに対して円弧をフィッティングした際の円弧の半径R1を意味している。なお、ドレッシング面12bの表面プロファイルは、市販の非接触式の形状測定器などを用いて測定することができる。また、円弧のフィッティングは、最小自乗法などによって行うことができる。
【0031】
図1(b)に示すように、上述のように構成されたパッドドレッサー1を、下定盤を回転させつつ、下定盤の内側端および外側端の一方から他方に向かって移動させ、研磨パッド100全体をドレッシングする。
【0032】
なお、本発明においては、砥石12のドレッシング面12bの曲率半径R1を、研磨パッド100の表面の曲率半径R2よりも小さくなるように変更し、その後研磨パッド100のドレッシングを行うことが好ましい。ドレッシング面12bの曲率半径R1を研磨パッド100の表面の曲率半径R2よりも小さくすることにより、より一定の押し付け圧でドレッシングすることができ、研磨パッド100をより均一にドレッシングすることができる。ドレッシング面12bの曲率半径の下限は、10mm以上とすることが好ましい。これにより、砥石12と研磨パッド100との接触面積を十分に確保して、研磨パッド100全体を均一かつ効率的に行うことができる。
【0033】
なお、「研磨パッドの曲率半径」は、図2に示すように、研磨パッド100の表面100aについて、その研磨定盤の径方向の表面プロファイルに対して円弧をフィッティングした際の円弧の半径R2を意味している。ここで、表面プロファイルは、研磨パッド100の一端(例えば、内側端)から他端(例えば、外側端)までの表面全体のプロファイルである。研磨パッド100の表面プロファイルは、市販の非接触式の形状測定機、また専用の表面プロファイラーなどを用いて測定することができる。また、円弧のフィッティングは、最小自乗法などによって行うことができる。
【0034】
図3は、本発明において用いることができる、砥石のドレッシング面の曲率半径が変更可能に構成されているパッドドレッサーの一例を示している。図3(a)に示したパッドドレッサー2は、砥石22を備えており、砥石22は、基材22aと、基材22aの少なくともドレッシング面に固着された砥粒(図示せず)とを有している。また、砥石22は、曲率半径が異なる4つのドレッシング面22b(曲率半径:50.0mm)、22c(曲率半径:100.0mm)、22d(曲率半径:250.0mm)および22e(曲率半径:500.0mm)を有している。
【0035】
砥石22は、図3(b)に示すように、回転軸23およびシリンダー24を介してアーム部21に接続されており、砥石22を回転軸23の周りで定盤径方向に回転させることによって、ドレッシング面の曲率半径R1を変更できるように構成されている。なお、砥石22と回転軸23とは、例えば、図3(c)に示すようにネジ止めにより固定することができる。
【0036】
砥石22の基材としては、例えば表面をDLCコーティングしたSUSを用いることができる。また、砥粒としては、例えばダイヤモンド砥粒やセラミック砥粒を用いることができる。
【0037】
このような構成を有するパッドドレッサー2において、研磨パッド100が貼り付けられた研磨定盤の表面形状に合わせて砥石22のドレッシング面を適切に選択する。そして、シリンダー24によって、選択したドレッシング面(図3では、ドレッシング面22c)を回転する研磨パッド100に摺接する。これにより、研磨パッド100を一定の押し付け圧でドレッシングすることができ、研磨パッド100をより均一にドレッシングすることができる。
【0038】
なお、図3に示したパッドドレッサー2は、4つのドレッシング面22b~22eを有しているが、2、3または5以上のドレッシング面を有してもよい。また、ドレッシング面22b~22eの曲率半径R1は、上述の値に限定されず、研磨パッド100が貼り付けられた研磨定盤の表面形状に合わせて適切に設定することができる。
【0039】
図4および図5に示すように、上記パッドドレッサー2とは異なり、砥石の基材が撓むことが可能な金属で構成されており、ドレッシング面の反対側から砥石を押圧することによってドレッシング面の曲率半径R1を変更することができるように構成されているパッドドレッサーを用いることもできる。
【0040】
図4は、本発明において用いることができる、砥石のドレッシング面の曲率半径が変更可能に構成されているパッドドレッサーの別の例を示している。なお、図4においては、パッドドレッサーの砥石近傍の構成のみが示されている。
【0041】
図4に示したパッドドレッサー3は、アーム部31(図示せず)と砥石32とを備えている。砥石32は、2つの固定具33により保持具34に固定されており、保持具34はアーム部31の端部31a(図示せず)に固定されている。また、パッドドレッサー3は、押圧部材35を備えており、押圧部材35によってドレッシング面32bとは反対側の砥石32の一部を押圧することによって、ドレッシング面32bの曲率半径R1を変更できるように構成されている。
【0042】
砥石32の基材32aを構成する撓むことが可能な金属としては、押圧部材35によって撓むことが可能であれば特に限定されず、SUSやチタン、アルミニウム、超弾性合金などを用いることができる。
【0043】
図4に示したパッドドレッサー3は、押圧部材35による砥石32を押圧する力を大きくすることによって、砥石32を図4中の点線で示したように変形させて、ドレッシング面32bの曲率半径R1を小さくすることができる。こうして、研磨定盤の表面形状に合わせてドレッシング面32bの曲率半径R1を変更し、砥石32を回転する研磨パッド100に摺接することによって、研磨パッド100を一定の押し付け圧でドレッシングして、研磨パッド100をより均一にドレッシングすることができる。
【0044】
図5は、本発明において用いることができる、砥石のドレッシング面の曲率半径が変更可能に構成されているパッドドレッサーのさらに別の例を示している。なお、図5においては、パッドドレッサーの砥石近傍の構成のみが示されている。
【0045】
図5に示したパッドドレッサー4は、アーム部41(図示せず)と砥石42とを備える。砥石42は、基材42aと熱膨張係数の異なる保持具44を介してアーム部41の端部41a(図示せず)に付設されている。また、保持具44の内部には、液体が流通する流路44aが設けられている。
【0046】
このように構成した保持具44の流路44a内に水などの所定の温度の液体Wを導入して流通させ、砥石42および保持具44の温度を変化させる。すると、両者の熱膨張係数の差により砥石42が変形し、これによりドレッシング面42bの曲率半径R1を変更することができる。こうして、研磨定盤の表面形状に合わせて砥石42の曲率半径R1を変更し、砥石42を回転する研磨パッド100に摺接することによって、研磨パッド100を一定の押し付け圧でドレッシングして、研磨パッド100をより均一にドレッシングすることができる。
【0047】
砥石42の基材42aおよび保持具44を構成する材料としては、熱膨張係数の異なる金属を用いることができる。例えば、砥石42の基材42aは、SUSやチタン、アルミニウム、低熱膨張合金(インバー)などで構成することができる。また、保持具44については、SUSやチタン、アルミニウムなどで構成することができる。具体的には、砥石42の基材42aを低熱膨張合金(インバー)で構成し、保持具44をSUSで構成することができるが、これに限定されない。
【0048】
保持具44の熱膨張係数を砥石42の基材42aの熱膨張係数よりも大きくする場合、保持具44の流路44a内に、液体Wとして、例えば低温の水を流通させる。これにより、保持具44がり収縮し、砥石42のドレッシング面42bの曲率半径R1を変更することができる。一方、保持具44の熱膨張係数を砥石42の基材42aの熱膨張係数よりも小さくする場合、保持具44の流路44a内に、液体Wとして、例えば高温の水を流通させる。これにより、砥石42の基材42aが膨張し、砥石42のドレッシング面42bの曲率半径R1を変更することができる。
【0049】
図6は、本発明において用いることができる、砥石のドレッシング面の曲率半径が変更可能に構成されているパッドドレッサーのさらにまた別の例を示している。なお、図6においては、パッドドレッサーの砥石近傍の構成のみが示されている。
【0050】
図6に示したパッドドレッサー5は、アーム部51(図示せず)と複数の砥石52とを備える。各砥石52は、シリンダー53の下面に固定されており、シリンダー53の上面は保持具54に固定されている。そして、保持具54は、アーム部51の端部51a(図示せず)に固定されている。
【0051】
パッドドレッサー5においては、複数の砥石52の下面全体がドレッシング面を形成し、各シリンダー53の伸縮の程度を変更することによって、ドレッシング面の曲率半径R1を変更することができる。なお、ドレッシング面の曲率半径R1は、全ての砥石52の下面で構成される表面のプロファイルを円弧でフィッティングすることによって求めることができる。
【0052】
(シリコンウェーハの研磨方法)
本発明によるシリコンウェーハの研磨方法は、上述した本発明による研磨パッドのドレッシング方法を用いてドレッシングされた研磨パッドを用いて、シリコンウェーハを研磨することを特徴とする。
【0053】
上述のように、本発明による研磨パッドのドレッシング方法においては、研磨パッドと摺接する砥石のドレッシング面の研磨定盤の径方向の曲率半径R1が変更可能に構成されているパッドドレッサーを用いるため、回転定盤の表面が湾曲している場合であっても、研磨パッドをより均一にドレッシングすることができる。その結果、ドレッシングされた研磨パッドを用いてシリコンウェーハを研磨することによって、シリコンウェーハの平坦性を高めることができる。
【0054】
(シリコンウェーハの製造方法)
本発明によるシリコンウェーハの製造方法は、所定の方法で育成した単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施して得られたシリコンウェーハに対して、上述した本発明によるシリコンウェーハの研磨方法を用いてシリコンウェーハを研磨することを特徴とする。
【0055】
上述のように、本発明によるシリコンウェーハの研磨方法により、シリコンウェーハの平坦性を高めることができる。そのため、チョクラルスキー(CZ)法や浮遊帯域溶融(FZ)法などの所定の方法で育成した単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施して得られたシリコンウェーハに対して、上述した本発明によるシリコンウェーハの研磨方法を用いてシリコンウェーハを研磨することによって、より平坦性の高いシリコンウェーハを製造することができる。
【0056】
(シリコンウェーハの研磨装置)
本発明によるシリコンウェーハの研磨装置は、研磨定盤と、研磨定盤に貼りつけられた研磨パッドと、砥石が付設され、研磨パッドをドレッシングするパッドドレッサーとを備える研磨装置である。ここで、砥石の研磨パッドと摺接するドレッシング面の研磨定盤の径方向の曲率半径R1が変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0057】
本発明によるシリコンウェーハの研磨装置は、上述した本発明による研磨パッドのドレッシング方法に用いることができるパッドドレッサーを備えることを特徴としている。研磨装置がパッドドレッサーを備えることにより、研磨パッドを一定の押し付け圧でドレッシングして、研磨パッドをより均一にドレッシングすることができる。その結果、ドレッシングされた研磨パッドを用いてシリコンウェーハを研磨することによって、シリコンウェーハの平坦性を高めることができる。
【0058】
パッドドレッサーは、図3に示したように、砥石22が、曲率半径が異なる複数のドレッシング面22b~22eを有し、砥石22を回転させることによって研磨パッド100と摺接するドレッシング面の曲率半径R1を変更することができるパッドドレッサー2とすることができる。
【0059】
また、パッドドレッサーは、砥石の基材が、撓むことが可能な合金で構成されており、ドレッシング面の反対側から砥石を押圧することによってドレッシング面の曲率半径R1を変更することができるように構成されているパッドドレッサーとすることができる。
【0060】
具体的には、図4に示すように、砥石32が保持具34を介してパッドドレッサー3に付設されており、砥石32の基材32aの両端と保持具34とが結合され、ドレッシング面32bの反対側の砥石32の一部を押圧部材35で押圧することによって、ドレッシング面32bの曲率半径R1を変更することができるパッドドレッサー3とすることができる。
【0061】
あるいは、図5に示すように、砥石42が砥石42の基材42aと熱膨張係数の異なる保持具44を介してパッドドレッサー4に付設されており、保持具44の温度を変更することによってドレッシング面42bの曲率半径R1を変更することができるように構成されているパッドドレッサー4とすることができる。
【0062】
さらに、パッドドレッサーは、図6に示したように、アーム部51(図示せず)と複数の砥石52とを備え、各砥石52がシリンダー53の下面に固定され、シリンダー53の上面は保持具54に固定されており、各シリンダー53の伸縮の程度を変更することによって、ドレッシング面の曲率半径R1を変更することができるパッドドレッサー5とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、回転定盤の表面が湾曲している場合であっても、研磨パッドをより均一にドレッシングすることができるため、半導体ウェーハ製造業において有用である。
【符号の説明】
【0064】
1,2,3,4,5 パッドドレッサー
11,21,31,41,51 アーム部
11a,21a,31a,41a,51a 端部
12,22,32,42,52 砥石
12a,22a,32a,42a 基材
12b,22b,22c,22d,22e,32b,42b ドレッシング面
13,34,44,54 保持具
23 回転軸
24,53 シリンダー
33,43 固定具
44a 流路
R1,R2 曲率半径
W 液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6