IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京精密の特許一覧

<>
  • 特開-レーザ加工装置 図1
  • 特開-レーザ加工装置 図2
  • 特開-レーザ加工装置 図3
  • 特開-レーザ加工装置 図4
  • 特開-レーザ加工装置 図5
  • 特開-レーザ加工装置 図6
  • 特開-レーザ加工装置 図7
  • 特開-レーザ加工装置 図8
  • 特開-レーザ加工装置 図9
  • 特開-レーザ加工装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145623
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/046 20140101AFI20241004BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20241004BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/364
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058060
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】林 博和
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168AD18
4E168CA06
4E168CB07
4E168CB12
4E168CB13
4E168CB22
4E168DA38
4E168EA05
4E168EA06
4E168JA11
5F063AA26
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB22
5F063CB26
5F063CC23
5F063DD26
5F063DD32
(57)【要約】
【課題】各加工部間で個別に焦点の位置を調整できるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置は、相対的に加工送りが与えられるワークに対し、レーザ加工ヘッドからレーザ光を照射して、ワークを加工する。レーザ加工ヘッドは、ワークに一対の第1レーザ光を照射して、2条の溝を加工する第1加工部と、第1加工部によって加工される2条の溝の間に第2レーザ光を照射して、2条の溝の間を加工する第2加工部と、第1レーザ光の焦点の位置に対し第2レーザ光の焦点の位置を光軸方向に沿って相対的に移動させて、光軸方向における第1レーザ光の焦点と第2レーザ光の焦点との間の相対的な位置関係を調整する第1焦点調整部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に加工送りが与えられるワークに対し、レーザ加工ヘッドからレーザ光を照射して、前記ワークを加工するレーザ加工装置であって、
前記レーザ加工ヘッドは、
前記ワークに一対の第1レーザ光を照射して、2条の溝を加工する第1加工部と、
前記第1加工部によって加工される前記2条の溝の間に第2レーザ光を照射して、前記2条の溝の間を加工する第2加工部と、
前記第1レーザ光の焦点の位置に対し前記第2レーザ光の焦点の位置を光軸方向に沿って相対的に移動させて、光軸方向における前記第1レーザ光の焦点と前記第2レーザ光の焦点との間の相対的な位置関係を調整する第1焦点調整部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
光軸方向における前記第1レーザ光の焦点と前記第2レーザ光の焦点との間の相対的な位置関係を保って、光軸方向における前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の焦点の位置を調整する第2焦点調整部を更に備える、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1焦点調整部は、前記第1加工部及び/又は前記第2加工部における集光レンズの光軸方向の位置を調整して、前記第1レーザ光の焦点の位置に対し前記第2レーザ光の焦点の位置を光軸方向に沿って相対的に移動させる、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1焦点調整部は、アクチュエータで前記集光レンズを光軸方向に沿って移動させて、光軸方向における前記集光レンズの位置を調整する、
請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
複数の前記第2加工部を備え、
複数の前記第2加工部と前記第1加工部とが前記加工送り方向に沿って配置される、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記第2加工部の間に前記第1加工部が配置される、
請求項5に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の焦点の位置の設定を受け付け、受け付けた位置に前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の焦点が位置するように、前記第1焦点調整部及び前記第2焦点調整部を制御する制御部を更に備える、
請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記制御部は、デフォーカス量の指定を受け付けて、前記第1レーザ光及び前記第2レーザ光の焦点の位置の設定を受け付ける、
請求項7に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工装置に係り、特にワークに溝を加工するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
層間絶縁膜にLow-k(低誘電率)膜を使用した半導体のウェーハは、通常のブレードダイサを使用してチップ化すると、膜剥離(デラミネーション)が発生するという問題がある。
【0003】
特許文献1には、Low-k膜を有するウェーハの加工方法として、ストリートに沿って2条の溝をレーザ光で加工し、その2条の溝の間をブレードで切削することにより、膜剥離を抑制する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、ストリートに沿って2条の溝をレーザ光で加工し、その2条の溝の間をレーザ光で切削する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-142398号公報
【特許文献2】特開2009-182019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載の加工方法において、2条の溝の加工と、その2条の溝の間の加工は、1つの装置内に設けられた別々の加工手段を用いて行われる。各加工手段には、それぞれ個別に駆動機構等が備えられ、位置調整等が加工に設けられる。しかしながら、各々個別に駆動機構等を備えた複数の加工手段ないし加工部を1つの装置内に設けると、装置の構成が複雑かつ大型化するという欠点がある。この点に関しては、1つのレーザ加工ヘッドに複数の加工部を搭載し、複数の加工部間で駆動機構等を共用することも考えられる。しかしながら、1つのレーザ加工ヘッドに複数の加工部を搭載し、駆動機構等を共用すると、各加工部間で焦点調整のための機構も共用されるため、各加工部の焦点の位置を個別に調整できないという欠点がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、各加工部間で個別に焦点の位置を調整できるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の態様は、相対的に加工送りが与えられるワークに対し、レーザ加工ヘッドからレーザ光を照射して、ワークを加工するレーザ加工装置であって、レーザ加工ヘッドは、ワークに一対の第1レーザ光を照射して、2条の溝を加工する第1加工部と、第1加工部によって加工される2条の溝の間に第2レーザ光を照射して、2条の溝の間を加工する第2加工部と、第1レーザ光の焦点の位置に対し第2レーザ光の焦点の位置を光軸方向に沿って相対的に移動させて、光軸方向における第1レーザ光の焦点と第2レーザ光の焦点との間の相対的な位置関係を調整する第1焦点調整部と、を備えるレーザ加工装置である。
【0009】
第2の態様は、第1の態様のレーザ加工装置において、光軸方向における第1レーザ光の焦点と第2レーザ光の焦点との間の相対的な位置関係を保って、光軸方向における第1レーザ光及び第2レーザ光の焦点の位置を調整する第2焦点調整部を更に備える、レーザ加工装置である。
【0010】
第3の態様は、第1又は2の態様のレーザ加工装置において、第1焦点調整部は、第1加工部及び/又は第2加工部における集光レンズの光軸方向の位置を調整して、第1レーザ光の焦点の位置に対し第2レーザ光の焦点の位置を光軸方向に沿って相対的に移動させる、レーザ加工装置である。
【0011】
第4の態様は、第3の態様のレーザ加工装置において、第1焦点調整部は、アクチュエータで集光レンズを光軸方向に沿って移動させて、光軸方向における集光レンズの位置を調整する、レーザ加工装置である。
【0012】
第5の態様は、第1又は2の態様のレーザ加工装置において、複数の第2加工部を備え、複数の第2加工部と第1加工部とが加工送り方向に沿って配置される、レーザ加工装置である。
【0013】
第6の態様は、第5の態様のレーザ加工装置において、第2加工部の間に第1加工部が配置される、レーザ加工装置である。
【0014】
第7の態様は、第2の態様のレーザ加工装置において、第1レーザ光及び第2レーザ光の焦点の位置の設定を受け付け、受け付けた位置に第1レーザ光及び第2レーザ光の焦点が位置するように、第1焦点調整部及び第2焦点調整部を制御する制御部を更に備える、レーザ加工装置である。
【0015】
第8の態様は、第7の態様のレーザ加工装置において、制御部は、デフォーカス量の指定を受け付けて、第1レーザ光及び第2レーザ光の焦点の位置の設定を受け付ける、レーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各加工部間で個別に焦点の位置を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】加工対象の一例を示す平面図である。
図2】溝の加工処理の概要を示す図である。
図3】レーザ加工装置の一実施形態を示す概略図である。
図4】制御装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図5】レーザ加工ヘッドの一実施形態を示す概略図である。
図6】第1集光レンズによる第1レーザ光の照射の概念図である。
図7】光路切替部の構成の一例を示す概略図である。
図8】第2集光レンズによる第2レーザ光の照射の概念図である。
図9】レーザ加工装置による加工処理の流れを示すフローチャートである。
図10】焦点調整の処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0019】
ここでは、層間絶縁膜にLow-k膜を使用した半導体のウェーハに対し、ダイシング前にストリートからLow-k膜を含む配線層を除去する装置に本発明を適用した場合を例に説明する。ウェーハは、ワークの一例である。
【0020】
層間絶縁膜(絶縁層)としてのLow-k膜(Low-k層)は、Low-k材料(低誘電率材料)で構成される。Low-k材料は、たとえば、SiO、SiOC、SiLK等の無機物系材料、ポリイミド系、パリレン系、ポリテトラフルオロエチレン系等のポリマーである有機物系材料、及びメチル含有ポリシロキサン等のポーラスシリカ材料等である。
【0021】
[レーザ加工の概要]
図1は、加工対象の一例を示す平面図である。
【0022】
図1に示すように、加工対象である半導体のウェーハWは、複数のストリートSt(分割予定ライン)によって区画された格子状の領域にデバイスDvが形成される。層間絶縁膜にLow-k膜を使用したウェーハWは、隣接するデバイスDv間でストリートStを跨いでLow-k膜が存在する。ストリートStごとにレーザ光で所定の溝を加工(アブレーション加工)することにより、ストリートStからLow-k膜を含む配線層を除去する。
【0023】
図2は、溝の加工処理の概要を示す図である。
【0024】
図2に示すように、ストリートStに沿って所定の溝Cを加工し、ストリートStからLow-k膜を含む配線層を除去する。その際、溝Cの両側の縁を切る加工と、溝Cの中を刳り貫く加工(いわゆる中抜き加工)とを分けて、溝Cを加工する。以下、溝Cの両側の縁を切る加工を「縁切り加工」、溝Cの中を刳り貫く加工を「中抜き加工」と称する。
【0025】
縁切り加工は、一対のレーザ光L1a、L1bをストリートStに沿って照射し、互いに平行な2条の溝C1a、C1bをストリートStに沿って加工することにより行う。
【0026】
中抜き加工は、縁切り加工によって形成された2条の溝C1a、C1bの間に所定の幅を有するレーザ光L2を照射することにより行う。このレーザ光L2は、2条の溝C1a、C1bの間隔に対応した幅の溝を加工できるレーザ光で構成される。
【0027】
縁切り加工と中抜き加工とを組み合わせて行うことで、最終的に所定の幅及び深さを有する1条の溝CがストリートStに沿って形成される。
【0028】
一度にLow-k膜を除去できる出力のレーザ光を用いて溝Cを加工すると、膜剥離が発生するおそれがある。しかし、上記のように、縁切り加工と中抜き加工とを分けて加工することで、膜剥離の発生を抑制できる。
【0029】
なお、以下においては、縁切り加工に用いる一対のレーザ光L1a、L1bを「第1レーザ光L1a、L1b」、中抜き加工に用いるレーザ光L2を「第2レーザ光L2」と称して、両者を区別する。また、縁切り加工で加工する2条の溝C1a、C1bを「縁切り溝C1a、C1b」、縁切り加工及び中抜き加工によって加工される溝Cを「配線層除去溝C」と称して、両者を区別する。
【0030】
[レーザ加工装置]
[装置構成]
図3は、レーザ加工装置の一実施形態を示す概略図である。なお、図中のXYZは、互いに直交する3軸である。本実施の形態では、X軸及びY軸を含む平面を水平面とし、X方向及びY方向を水平方向とする。また、Z方向を鉛直方向(上下方向)とする。
【0031】
図3に示すように、本実施の形態のレーザ加工装置10は、テーブル20、第1レーザ光源22A、第2レーザ光源22B、レーザ加工ヘッド100、顕微鏡24、テーブル駆動部26、ヘッド駆動部28、及び、制御装置30等を備える。
【0032】
テーブル20は、ウェーハWを保持する。また、テーブル20は、制御装置30の制御の下、テーブル駆動部26に駆動されて、X方向及びY方向に移動する。X方向は、加工送り(溝を加工する方向の送り)の方向である。加工対象のストリートStは、X方向(加工送り方向)と平行に設定される。また、テーブル20は、制御装置30の制御の下、テーブル駆動部26に駆動されて、θ軸を中心に回転する。θ軸は、テーブル20の中心を通り、Z軸と平行な軸である。
【0033】
第1レーザ光源22Aは、縁切り加工用のレーザ光LAをレーザ加工ヘッド100に供給する。このレーザ光LAは、縁切り加工に適した条件(波長、パルス幅及び繰り返し周波数等)のパルスレーザ光である。
【0034】
第2レーザ光源22Bは、中抜き加工用のレーザ光LBをレーザ加工ヘッド100に供給する。このレーザ光LBは、中抜き加工に適した条件(波長、パルス幅及び繰り返し周波数等)のパルスレーザ光である。
【0035】
レーザ加工ヘッド100は、レーザ光学系を有し、テーブル20上のウェーハWに向けて、縁切り加工用の一対の第1レーザ光L1a、L1b及び中抜き加工用の第2レーザ光L2を出射する。各レーザ光L1a、L1b、L2は、テーブル20上のウェーハWに向けて鉛直下向きに出射される。
【0036】
レーザ加工ヘッド100は、3つの出射口を有する。1つは、縁切り加工用の一対の第1レーザ光L1a、L1bを出射する第1出射口101である。残り2つは、中抜き加工用の第2レーザ光L2を出射する第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bである。
【0037】
3つの出射口、すなわち、第1出射口101、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bは、ウェーハWの加工送り方向(X方向)に沿って一列に並んで配置される。また、第1出射口101は、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの間に配置される。すなわち、縁切り加工用のレーザ光の出射口(第1出射口101)の両側に、中抜き加工用のレーザ光の出射口(第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102B)が配置される。
【0038】
中抜き加工用の第2レーザ光L2は、加工送りの方向に応じて出射口(第1の第2出射口102A又は第2の第2出射口102B)が切り替えられる。具体的には、図3において、X(-)方向(図中右方向)に加工送りする場合は、第1の第2出射口102Aから第2レーザ光L2が出射される。この場合、加工の進行方向は、X(+)方向(図中左方向)となる。一方、X(+)方向(図3中左方向)に加工送りする場合は、第2の第2出射口102Bから第2レーザ光L2が出射される。この場合、加工の進行方向、X(-)方向(図中右方向)となる。すなわち、加工送り方向に対し、第1出射口101の上流側に位置する出射口(=加工の進行方向に対し、第1出射口101の下流側に位置する出射口)から第2レーザ光L2が出射される。
【0039】
レーザ加工ヘッド100は、制御装置30の制御の下、ヘッド駆動部28に駆動されて、Z方向に移動する。
【0040】
レーザ光学系を含むレーザ加工ヘッド100の詳細については、後述する。
【0041】
顕微鏡24は、テーブル20に保持されたウェーハWを撮影する。顕微鏡24は、レーザ加工ヘッド100に固定されており、レーザ加工ヘッド100と一体に移動する。顕微鏡24で撮影された画像は、制御装置30に出力される。制御装置30は、顕微鏡24で撮影された画像に基づいて、アライメント、カーフチェック等を行う。
【0042】
テーブル駆動部26は、ガイド機構として、テーブル20をX方向にガイドするガイド機構、テーブル20をY方向にガイドするガイド機構、テーブル20を回転可能に支持する軸受等を含む。また、テーブル駆動部26は、アクチュエータとして、テーブル20をX方向に駆動するモータ、テーブル20をY方向に駆動するモータ、テーブル20を回転駆動するモータ等を含む。また、テーブル駆動部26は、センサ類として、テーブル20のX方向の位置を検出するセンサ、テーブル20のY方向の位置を検出するセンサ、及び、テーブル20の回転位置を検出するセンサ等を含む。
【0043】
ヘッド駆動部28は、レーザ加工ヘッド100をZ方向にガイドするガイド機構、レーザ加工ヘッド100をZ方向に駆動するモータ、レーザ加工ヘッド100のZ方向の位置を検出するセンサ等を含む。
【0044】
図4は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【0045】
制御装置30は、プロセッサ30A、主記憶装置30B、補助記憶装置30C、入力装置30D及び出力装置30E等を備える。すなわち、制御装置30は、コンピュータで構成され、コンピュータが所定のプログラムを実行することで制御装置30として機能する。プロセッサ30Aは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)で構成される。主記憶装置30Bは、たとえば、RAM(Random Access Memory)で構成される。補助記憶装置30Cは、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。入力装置30Dには、操作ボタン類の他、キーボード、タッチパネル等が含まれる。出力装置30Eは、たとえば、ディスプレイ(表示装置)で構成される。入力装置30D及び出力装置30Eをタッチパネルディスプレイで構成することもできる。
【0046】
制御装置30は、第1レーザ光源22A、第2レーザ光源22B、レーザ加工ヘッド100、顕微鏡24、テーブル駆動部26及びヘッド駆動部28等の動作を統括的に制御する。制御装置30は、制御部の一例である。
【0047】
[レーザ加工ヘッド]
図5は、レーザ加工ヘッドの一実施形態を示す概略図である。
【0048】
図5に示すように、レーザ加工ヘッド100は、第1安全シャッタ110A、第2安全シャッタ110B、第1高速シャッタ112A、第2高速シャッタ112B、第1レーザ光生成部114、第2レーザ光生成部116、光路切替部118、第1集光レンズ120、2つの第2集光レンズ122A、122B及び2つの焦点調整部124A、124B等を備える。
【0049】
第1レーザ光生成部114、及び、第1集光レンズ120は、第1のレーザ光学系を構成し、第1レーザ光源22Aから出射されるレーザ光LAから一対の第1レーザ光L1a、L1bを生成し、第1出射口101から出射させる。また、第2レーザ光生成部116、光路切替部118、及び、第2集光レンズ122A、122Bは、第2のレーザ光学系を構成し、第2レーザ光源22Bから出射されるレーザ光LBから第2レーザ光L2を生成し、第1の第2出射口102A又は第2の第2出射口102Bから出射させる。
【0050】
第1安全シャッタ110A及び第1高速シャッタ112Aは、第1レーザ光源22Aから第1レーザ光生成部114に入射するレーザ光LAの光路上に配置される。第1安全シャッタ110A及び第1高速シャッタ112Aは、第1レーザ光源22A側から第1安全シャッタ110A、第1高速シャッタ112Aの順でレーザ光LAの光路上に配置される。第1安全シャッタ110A及び第1高速シャッタ112Aは、制御装置30による制御の下、当該光路を個別に開閉する。第1安全シャッタ110A又は第1高速シャッタ112Aを閉じることで、第1レーザ光源22Aからのレーザ光LAの入射が遮断される。また、これにより、第1レーザ光L1a、L1bの出射が停止される。第1安全シャッタ110Aは、第1レーザ光L1a、L1bの入射元を閉じるシャッタとして機能する。一方、第1高速シャッタ112Aは、第1レーザ光L1a、L1bの出射を一時的に停止させるシャッタとして機能する。このため、第1高速シャッタ112Aは、第1安全シャッタ110Aよりも高速に作動するシャッタで構成される。
【0051】
第1レーザ光生成部114は、第1レーザ光源22Aから供給されるレーザ光LAから縁切り加工用の一対の第1レーザ光L1a、L1bを生成する。第1レーザ光生成部114は、一対の第1レーザ光L1a、L1bを生成する手段として、たとえば、回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE)を有する。回折光学素子は、光の回折現象を利用して、レーザ光を空間的に分岐できる光学素子である。回折光学素子は、レーザ光をさまざまなパターン、形状に変えることができる。本実施の形態では、テーブル20上のウェーハWに対し、Y方向に所定の間隔で一対のスポット(集光点ないし加工点)が形成されるように、一対の第1レーザ光L1a、L1bを生成する(図2参照)。一対の第1レーザ光L1a、L1bを生成する手段には、この他、たとえば、屈折光学素子(Refractive Optical Element:ROE)、ウォラストンプリズム等を採用することもできる。
【0052】
第1レーザ光生成部114で生成された一対の第1レーザ光L1a、L1bは、第1集光レンズ120を介して、テーブル20上のウェーハWに照射される。
【0053】
第1集光レンズ120は、第1レーザ光生成部114で生成された一対の第1レーザ光L1a、L1bをZ方向の所定の位置(焦点)に集光させて、テーブル20上のウェーハWに照射する。図6は、第1集光レンズによる第1レーザ光の照射の概念図である。一対の第1レーザ光L1a、L1bは、Y方向に所定の間隔Dをもって集光される。この間隔Dが、2条の縁切り溝C1a、C1bの形成間隔となる。
【0054】
第2安全シャッタ110B及び第2高速シャッタ112Bは、第2レーザ光源22Bから第2レーザ光生成部116に入射するレーザ光LBの光路上に配置される。第2安全シャッタ110B及び第2高速シャッタ112Bは、第2レーザ光源22B側から第2安全シャッタ110B、第2高速シャッタ112Bの順でレーザ光LBの光路上に配置される。第2安全シャッタ110B及び第2高速シャッタ112Bは、制御装置30による制御の下、当該光路を個別に開閉する。第2安全シャッタ110B又は第2高速シャッタ112Bを閉じることで、第2レーザ光源22Bからのレーザ光LBの入射が遮断される。また、これにより、第2レーザ光L2の出射が停止される。第2安全シャッタ110Bは、第2レーザ光L2の入射元を閉じるシャッタとして機能する。一方、第2高速シャッタ112Bは、第2レーザ光L2の出射を一時的に停止させるシャッタとして機能する。このため、第2高速シャッタ112Bは、第2安全シャッタ110Bよりも高速に作動するシャッタで構成される。
【0055】
第2レーザ光生成部116は、第2レーザ光源22Bから供給されるレーザ光LBから中抜き加工用の第2レーザ光L2を生成する。本実施の形態では、中抜き加工用の第2レーザ光L2として、所定の強度分布を有するレーザ光を生成する。一例として、強度分布がトップハット形状(フラットトップともいう)を有するレーザ光を生成する。第2レーザ光L2の強度分布をトップハット形状とすることにより、中抜き加工する溝の底面を平坦に加工できる。強度分布をトップハット形状に変換する手段としては、たとえば、回折光学素子(DOE)、屈折型ビームシェイパ等を採用できる。第2レーザ光生成部116には、このように強度分布を所定の形状(一例として、トップハット形状)に変換する光学素子が備えられる。第2レーザ光生成部116で生成された第2レーザ光L2は、光路切替部118に入射される。
【0056】
光路切替部118は、第2レーザ光生成部116で生成された第2レーザ光L2の光路を切り替える。具体的には、第2レーザ光L2を第1の第2出射口102Aから出射させる第1光路と、第2の第2出射口102Bから出射させる第2光路とを択一的に切り替える。
【0057】
図7は、光路切替部の構成の一例を示す概略図である。
【0058】
図7に示すように、光路切替部118は、1/2波長板(λ/2板)118A、偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter:PBS)118B、及び、ミラー118C等を備える。なお、第2レーザ光源22Bからは所定の偏光方向に偏光した直線偏光のレーザ光LBが出射されるものとする。したがって、第2レーザ光生成部116からも所定の偏光方向に偏光した直線偏光の第2レーザ光L2が出射される。
【0059】
1/2波長板118Aは、第2レーザ光生成部116から出射される第2レーザ光L2の光路に挿入されて、通過する第2レーザ光L2の偏光方向を90°回転させる。1/2波長板118Aは、図示しないアクチュエータ(たとえば、シリンダ等)に駆動されて、第2レーザ光L2の光路に挿抜される。
【0060】
偏光ビームスプリッタ118Bは、第2レーザ光生成部116から出射される第2レーザ光L2の光路上に配置される。偏光ビームスプリッタ118Bは、入射する光の偏光状態に応じて入射光を透過光と反射光とに分割する。本実施の形態では、第2レーザ光生成部116から出射された第2レーザ光L2が、そのまま入射した場合、透過し、1/2波長板118Aを介して入射した場合、反射されるように設定される。
【0061】
偏光ビームスプリッタ118Bを透過した第2レーザ光L2は、一方の第2集光レンズ122Aを介して、第1の第2出射口102Aから出射される。
【0062】
偏光ビームスプリッタ118Bで反射された第2レーザ光L2は、ミラー118Cを介して他方の第2集光レンズ122Bに入射し、第2の第2出射口102Bから出射される。
【0063】
このように、本実施の形態の光路切替部118は、1/2波長板118Aの挿抜により、第2レーザ光L2の光路(出射先)を切り替える。なお、本実施の形態では、1/2波長板118Aを挿抜して、光路を切り替える構成としているが、1/2波長板118Aを45°回転させることによっても、同様の機能を実現できる。
【0064】
2つの第2集光レンズ122A、122Bは、それぞれ第2レーザ光生成部116で生成された第2レーザ光L2をZ方向において所定の位置(焦点)に集光させる。以下、必要に応じて、一方の第2集光レンズ122Aを第1の第2集光レンズ122A、他方の第2集光レンズ122Bを第2の第2集光レンズ122Bと称して、両者を区別する。
【0065】
図8は、第2集光レンズによる第2レーザ光の照射の概念図である。
【0066】
図8に示すように、2条の縁切り溝C1a、C1bの間に第2レーザ光L2を照射して、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を中抜き加工する。本実施の形態では、図8に示すように、第2レーザ光L2により円形のスポットを形成して、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を加工する。スポットは、2条の縁切り溝C1a、C1bの間隔Dに対応したサイズ(直径)で形成される。すなわち、2条の縁切り溝C1a、C1bの内側を一度に中抜きできるサイズ(直径)で形成される。
【0067】
2つの第2集光レンズ122A、122Bは、第1集光レンズ120と共にウェーハWの加工送り方向(X方向)に沿って一列に並んで配置される。また、2つの第2集光レンズ122A、122Bは、第1集光レンズ120を挟んで配置される。具体的には、図5において、図中左から右に向かって(X(+)方向)、第1の第2集光レンズ122A、第1集光レンズ120、第2の第2集光レンズ122Bの順で一列に並んで配置される。
【0068】
第1集光レンズ120を通過した一対の第1レーザ光L1a、L1bは、第1出射口101からテーブル20上のウェーハWに向けて鉛直下向きに照射される。また、第1の第2集光レンズ122Aを通過した第2レーザ光L2は、第2の第2出射口102Bからテーブル20上のウェーハWに向けて鉛直下向きに照射される。また、第2の第2集光レンズ122Bを通過した第2レーザ光L2は、第2の第2出射口102Bからテーブル20上のウェーハWに向けて鉛直下向きに照射される。
【0069】
本実施の形態において、第1集光レンズ120を介して、テーブル20上のウェーハWに一対の第1レーザ光L1a、L1bを照射し、2条の縁切り溝C1a、C1bを加工する構成は、第1加工部の一例である。また、第2集光レンズ122A、122Bを介して、テーブル20上のウェーハWに第2レーザ光L2を照射し、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を中抜き加工する構成は、第2加工部の一例である。
【0070】
2つの焦点調整部124A、124Bは、2つの第2出射口102A、102Bから出射される第2レーザ光L2の焦点位置を個別に調整する。本実施の形態では、第2集光レンズ122A、122BをZ方向に移動させて、第2レーザ光L2の焦点位置を調整する。以下、必要に応じて、第1の第2集光レンズ122Aの焦点位置を調整する焦点調整部124Aを第1の焦点調整部124A、第2の第2集光レンズ122Bの焦点位置を調整する焦点調整部124Bを第2の焦点調整部124Bと称して、2つの焦点調整部124A、124Bを区別する。
【0071】
第1の焦点調整部124Aは、第1の第2集光レンズ122Aを光軸方向(Z方向)に沿ってに移動させて、第1の第2出射口102Aから出射される第2レーザ光L2の焦点の光軸方向における位置を調整する。第2の焦点調整部124Bは、第2の第2集光レンズ122Bを光軸方向(Z方向)に沿って移動させて、第2の第2出射口102Bから出射される第2レーザ光L2の焦点の光軸方向における位置を調整する。
【0072】
各焦点調整部124A、124Bは、それぞれ第2集光レンズ122A、122BをZ方向にガイドするガイド機構、第2集光レンズ122A、122BをZ方向に駆動するアクチュエータ、第2集光レンズ122A、122BをZ方向の位置(基準点に対する位置)を検出するセンサ等を含んで構成される。
【0073】
焦点調整部124A、124Bを作動させることにより、第1集光レンズ120に対し、第2集光レンズ122A、122Bの位置(Z方向の位置)が相対的に変化する。これにより、第1レーザ光L1a、L1bと第2レーザ光L2との間で光軸方向(Z方向)における焦点の位置を相対的に変えることができる。すなわち、光軸方向(Z方向)において、第1レーザ光L1a、L1bの焦点と、第2レーザ光L2の焦点との間の相対的な位置関係を調整できる。これにより、たとえば、縁切り加工と中抜き加工とで異なる位置に焦点を設定して加工できる。
【0074】
以下、必要に応じて、第1の第2集光レンズ122Aの焦点位置を調整する焦点調整部124Aを第1の焦点調整部124A、第2の第2集光レンズ122Bの焦点位置を調整する焦点調整部124Bを第2の焦点調整部124Bと称して、両者を区別する。焦点調整部124A、124Bは、第1焦点調整部の一例である。
【0075】
[レーザ加工装置の作用]
[溝の加工動作]
上記のように、Low-k膜を有するウェーハWに対し、ストリートStに沿って配線層除去溝Cを加工することにより、ストリートStからLow-k膜を含む配線層を除去する。
【0076】
レーザ加工装置10は、レーザ加工ヘッド100からテーブル20上のウェーハWに第1レーザ光L1a、L1b及び第2レーザ光L2を照射しながら、テーブル20を加工送り方向(X方向)に移動させることにより、ストリートStに沿って配線層除去溝Cを加工する。配線層除去溝Cは、所定の幅、所定の深さで加工する。
【0077】
本実施の形態のレーザ加工装置10では、第2レーザ光L2の出射口を切り替えることにより、加工送りにおける往路と復路の双方でウェーハWに配線層除去溝Cを加工する。
【0078】
具体的には、図3において、テーブル20をX(-)方向に送る方向を往路、X(+)方向に送る方向を復路とすると、往路では、第1の第2出射口102Aから第2レーザ光L2を出射させて配線層除去溝Cを加工し、復路では、第2の第2出射口102Bから第2レーザ光L2を出射させて、配線層除去溝Cを加工する。すなわち、常にテーブル20の送り方向の上流側(=加工の進行方向の下流側)に位置する出射口から第2レーザ光L2を出射させて、配線層除去溝Cを加工する。
【0079】
図9は、本実施の形態のレーザ加工装置による加工処理の流れを示すフローチャートである。
【0080】
なお、前提として、テーブル20にウェーハWが保持されており、かつ、第1レーザ光源22A及び第2レーザ光源22Bからレーザ光LA、LBがレーザ加工ヘッド100に供給されているものとする。また、第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110B、並びに、第1高速シャッタ112A及び第2高速シャッタ112Bは閉じられているものとする。
【0081】
まず、アライメントが行われる(ステップS1)。すなわち、加工位置を検出し、その位置合わせが行われる。アライメントは、顕微鏡50で撮影した画像に基づいて行われる。アライメントにより、ストリートStの加工開始位置に第1集光レンズ120の光軸が位置する。
【0082】
次に、第2レーザ光L2の出射口が設定される(ステップS3)。上記のように、往路では、第1の第2出射口102Aから第2レーザ光L2を出射させて、中抜き加工が行われる。一方、復路では、第2の第2出射口102Bから第2レーザ光L2を出射させて、中抜き加工が行われる。第1の第2出射口102Aから第2レーザ光L2を出射させる場合、光路切替部118において、第2レーザ光L2の光路から1/2波長板118Aが抜かれる。一方、第2の第2出射口102Bから第2レーザ光L2を出射させる場合、光路切替部118において、第2レーザ光L2の光路に1/2波長板118Aが挿入される。
【0083】
第2レーザ光L2の出射口の設定後、第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110Bが開かれる(ステップS3)。これにより、第1レーザ光源22A及び第2レーザ光源22Bからレーザ光LA、LBが、レーザ加工ヘッド100に導入される。ただし、第1高速シャッタ112A及び第2高速シャッタ112Bが閉じられているため、各出射口からレーザ光は出射されない。
【0084】
この後、加工送りが開始される(ステップS4)。これにより、テーブル10が、加工送り方向(X方向)に沿って移動を開始する。
【0085】
次いで、第1高速シャッタ112Aが開かれる(ステップS5)。これにより、テーブル10上のウェーハWに向けて一対の第1レーザ光L1a、L1bが照射される。一対の第1レーザ光L1a、L1bは、第1集光レンズ120を介して、第1出射口101から出射される。これにより、ストリートStに沿って2条の縁切り溝C1a、C1bが加工される。
【0086】
次いで、第2高速シャッタ112Bが開かれる(ステップS6)。これにより、テーブル10上のウェーハWに向けて第2レーザ光L2が照射される。第2レーザ光L2は、第1の第2出射口102A又は第2の第2出射口102Bから出射される。往路では、第1の第2集光レンズ122Aを介して第1の第2出射口102Aから出射される。一方、復路では、第2の第2集光レンズ122Bを介して第2の第2出射口102Bから出射される。。出射された第2レーザ光L2は、先行して加工された2条の縁切り溝C1a、C1b間に照射される。これにより、2条の縁切り溝C1a、C1bの間が中抜き加工される。中抜き加工されることにより、ストリートStに沿って1条の配線層除去溝Cが加工される。
【0087】
この後、第1レーザ光L1a、L1bによる加工点(スポット)が、ストリートStの終点(加工終了位置)に到達したか否かが判定される(ステップS7)。ストリートStの終点の位置は、ストリートStごとに個別に設定される。
【0088】
加工点が、ストリートStの終点に到達すると、まず、第1高速シャッタ112Aが閉じられる(ステップS8)。これにより、縁切り加工が停止される。
【0089】
続いて、第2高速シャッタ112Bが閉じられる(ステップS9)。これにより、中抜き加工が停止される。
【0090】
この後、加工送りが停止される(ステップS10)。これにより、テーブル10の移動が停止する。
【0091】
以上の工程で1つのストリートStの加工が完了する。この後、次に加工するストリートStの有無が判定される(ステップS11)。
【0092】
次の加工するストリートStが存在する場合は、次のストリートStの加工が行われる。この場合、まず、次に加工するストリートStの位置に向けて、テーブル10にY方向の送り(インデックス送り)が与えられる(ステップS12)。テーブル10には、ストリートStの間隔(チップの間隔)に対応した送り量で送り(インデックス送り)が与えられる。次いで、第2レーザ光L2の出射口が切り替えられる(ステップS13)。たとえば、加工送りの方向を往路から復路に切り換える場合は、出射口が第2の第2出射口102Bに切り替えられる。一方、加工送りの方向を復路から往路に切り換える場合は、出射口が第1の第2出射口102Aに切り換えられる。この後、上記ステップS4からステップS10の処理が行われ、ストリートStに配線層除去溝Cが加工される。
【0093】
一方、次の加工するストリートStが存在しない場合、すなわち、すべてのストリートStに対する加工が完了した場合、第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110Bが閉じられる(ステップS14)。
【0094】
この後、テーブル20上からウェーハWが回収されて、当該ウェーハWに対する加工処理が完了する。
【0095】
このように、本実施の形態のレーザ加工装置10は、一対の第1レーザ光L1a、L1bで加工した2条の縁切り溝C1a、C1b内を第2レーザ光L2で中抜き加工し、ストリートStに沿って所定の幅の配線層除去溝Cを所定の深さで加工する。
【0096】
[焦点調整]
本実施の形態のレーザ加工装置10は、焦点調整部124A、124Bを有し、第1集光レンズ120に対し、第2集光レンズ122A、122Bの位置(Z方向の位置)を相対的に調整できる。したがって、縁切り加工と中抜き加工とで異なる位置に焦点を設定できる。
【0097】
制御装置30は、入力装置30D及び出力装置30Eを介して、縁切り加工及び中抜き加工における焦点の位置の設定を受け付ける。たとえば、出力装置30Eを構成するディスプレイの画面上に焦点位置の設定画面を表示させ、入力装置30Dから設定の入力を受け付ける。本実施の形態では、デフォーカス量の指定を受け付けて、縁切り加工及び中抜き加工における焦点の位置の設定を受け付ける。すなわち、規定の位置に焦点を合わせて加工する場合において、デフォーカスさせる量の指定を受け付けて、焦点の位置の設定を受け付ける。たとえば、縁切り加工は、N1[μm]デフォーカスさせて加工し、中抜き加工は、N2[μm]デフォーカスさせて加工する場合、それぞれデフォーカス量をN1[μm]、N2[μm]と指定して、各加工における焦点の位置を設定する。デフォーカスは、たとえば、テーブル20から離間する方向(上方向)をプラス(+)、近づく方向(下方向)をマイナス(-)として設定される。
【0098】
焦点の調整は、ヘッド駆動部28によるレーザ加工ヘッド100のZ方向の移動、及び、焦点調整部124A、124Bによる第2集光レンズ122A、122BのZ方向の移動によって行われる。具体的には、レーザ加工ヘッド100の移動によって、全体の焦点を調整し、第2集光レンズ122A、122Bの移動によって、中抜き加工の焦点を調整する。したがって、縁切り加工における焦点の調整は、レーザ加工ヘッド100の移動によって行われる。
【0099】
たとえば、ともにデフォーカス量を0[μm]として、縁切り加工及び中抜き加工を行う場合、規定の位置に焦点が位置するように、レーザ加工ヘッド100及び第2集光レンズ122A、122Bの位置が調整される。規定の位置は、テーブル20上のウェーハWに対し、規定の幅で縁切り溝C1a、C1b及び中抜き用の溝が加工される位置である。縁切り加工の焦点が、規定の位置に位置する場合のレーザ加工ヘッド100の位置をレーザ加工ヘッド100の標準設定位置とする。また、中抜き加工の焦点が、規定の位置に位置する場合の第2集光レンズ122A、122Bの位置を第2集光レンズ122A、122Bの標準設定位置とする。したがって、ともにデフォーカス量を0[μm]として、縁切り加工及び中抜き加工を行う場合は、レーザ加工ヘッド100を標準設定位置に位置させ、かつ、第2集光レンズ122A、122Bを標準設定位置に位置させる。
【0100】
一方、縁切り加工は、N1[μm]デフォーカスさせて加工し、中抜き加工は、N2[μm]デフォーカスさせて加工する場合は、次のように設定する。まず、縁切り加工の焦点を調整する。縁切り加工の焦点は、レーザ加工ヘッド100によって調整する。具体的には、焦点の位置が、既定の位置からN1[μm]ずれるように、レーザ加工ヘッド100の位置を調整する。次に、中抜き加工の焦点を調整する。中抜き加工の焦点は、第2集光レンズ122A、122Bによって調整する。具体的には、焦点の位置が、既定の位置からN2[μm]ずれるように、第2集光レンズ122A、122Bの位置を調整する。ここで、縁切り加工の焦点の位置を基準位置からずらしている場合、中抜き加工の焦点の位置も基準位置からずれている。したがって、この場合は、差分を調整量として算出し、第2集光レンズ122A、122Bの位置を調整する。たとえば、縁切り加工は、100[μm]デフォーカスさせて加工し、中抜き加工は、200[μm]デフォーカスさせて加工する場合、中抜き加工の焦点の調整量は、100[μm]となる。
【0101】
図10は、焦点調整の処理の手順を示すフローチャートである。
【0102】
まず、縁切り加工及び中抜き加工のそれぞれについて、焦点を設定する位置の受け付けが行われる(ステップS21)。上記のように、焦点の位置の設定は、デフォーカス量の指定を受け付けることにより行われる。
【0103】
一例として、本実施の形態では、デフォルトの設定を0(ゼロ)とする。したがって、デフォーカス量の指定が行われなかった場合、デフォーカス量は0として、規定位置に縁切り加工及び中抜き加工の焦点が設定される。
【0104】
次に、レーザ加工ヘッド100の位置が調整される(ステップS22)。縁切り加工のデフォーカス量の設定が0の場合、規定位置に縁切り加工の焦点が位置するように、レーザ加工ヘッド100の位置が調整される。一方、縁切り加工に対し、デフォーカスの指定がなされた場合、設定されたデフォーカス量となるように、レーザ加工ヘッド100の位置が調整される。
【0105】
次に、第2集光レンズ122A、122Bの位置が調整される(ステップS23)。縁切り加工のデフォーカス量の設定が0であり、かつ、中抜き加工のデフォーカス量の設定も0の場合、第2集光レンズ122A、122Bの位置の調整は行われない。一方、縁切り加工又は中抜き加工に対し、デフォーカスの指定がなされた場合、設定されたデフォーカス量に応じて、第2集光レンズ122A、122Bの位置が調整される。
【0106】
以上一連の工程で縁切り加工及び中抜き加工における焦点の位置の調整が完了する。
【0107】
このように、本実施の形態のレーザ加工装置10によれば、縁切り加工及び中抜き加工の各加工における焦点の位置を個別に調整できる。これにより、たとえば、縁切り加工と中抜き加工とで異なる位置に焦点を設定して加工できる。また、これにより、縁切り加工と中抜き加工とでそれぞれ個別に加工する溝の幅を調整できる。すなわち、デフォーカスにより、スポットのサイズが変わるので、デフォーカス量を調整することで、加工する溝の幅を調整できる。特に、中抜き加工については、2条の縁切り溝C1a、C1b間を正確に中抜きする必要があるため、スポットのサイズを微調整できることは極めて有効に作用する。
【0108】
なお、上記のように、本実施の形態のレーザ加工装置10では、レーザ加工ヘッド100をZ方向に移動させることで、全体の焦点の調整が行われる。この際、相対的な位置関係が保たれて、縁切り加工及び中抜き加工の焦点がZ方向に移動する。よって、本実施の形態において、ヘッド駆動部28は、第2焦点調整部の一例である。
【0109】
[変形例]
[相対的な焦点調整]
上記実施の形態では、レーザ加工ヘッド100に対し、第1集光レンズ120を固定としているが、第1集光レンズ120についても、第2集光レンズ122A、122Bと同様に、焦点調整部を設けて、Z方向の位置を調整できる構成としてもよい。あるいは、第2集光レンズ122A、122Bをレーザ加工ヘッド100に対し固定とし、第1集光レンズ120を焦点調整部でZ方向に移動させる構成としてもよい。いずれの構成においても、上記実施の形態のレーザ加工装置10と同様の効果が得られる。なお、第1集光レンズ120と第2集光レンズ122A、122Bのいずれか一方のみをZ方向に移動させる構成とすることにより、構成を簡素化できる。
【0110】
[溝の加工]
上記実施の形態では、1つのストリートStに対し、1回の加工送りで1つの配線層除去溝Cを加工する構成(いわゆる1パス加工)としているが、1つのストリートStに対し、複数回の加工送りを行って、1つの配線層除去溝Cを加工する構成(いわゆるマルチパス加工)としてもよい。また、マルチパス加工では、中抜き加工のみを複数回に分けて行う構成としてもよい。すなわち、縁切り溝C1a、C1bは、1回の加工送りで加工し、中抜き加工は、複数回の加工送りで加工する構成としてもよい。
【0111】
[縁切り溝の間隔の調整]
ストリートStに沿って加工する2条の縁切り溝C1a、C1bについては、その間隔を調整できることが好ましい。縁切り溝C1a、C1bの間隔は、第1集光レンズ120から出射させる一対の第1レーザ光L1a、L1bのY方向の間隔(加工送り方向と直交する方向の間隔)を変えることで調整できる。第1集光レンズ120から出射させる一対の第1レーザ光L1a、L1bのY方向の間隔は、たとえば、その出射位置を第1集光レンズ120の光軸周りに回転させることで調整できる。また、出射位置は、たとえば、第1レーザ光生成部114において、回折光学素子をレーザ光LAの光軸周りに回転させることで、第1集光レンズ120の光軸周りに回転させることができる。
【0112】
[中抜き加工]
上記実施の形態では、1つの集光レンズ(第2集光レンズ122A、122B)から1つのレーザ光(第2レーザ光L2)を出射させて、中抜き加工を行う構成としているが、1つの集光レンズから複数のレーザ光を出射させて、中抜き加工を行う構成としてもよい。この場合、中抜き加工を行うレーザ光(第2レーザ光L2)が加工送り方向に沿って複数本並んで出力される(加工送り方向に沿って複数のスポットが形成される。)。また、この場合、第2レーザ光生成部116において、複数の第2レーザ光L2を生成する。複数の第2レーザ光L2は、第1レーザ光生成部114と同様に、回折光学素子等を用いて生成することができる。この場合、複数の第2レーザ光L2の出力を同じ値に設定してもよいし、異なる値に設定してもよい。たとえば、加工の進行方向の上流側から下流側に向かって段階的に出力が大きくなるように設定してもよい。
【0113】
また、上記実施の形態では、スポットの形状が円形のレーザ光(第2レーザ光)で中抜き加工を行う構成としているが、中抜き加工を行う際のスポットの形状は、これに限定されるものではない。たとえば、スポットの形状が直線状、矩形状、楕円形状等、非円形状のレーザ光で中抜き加工を行うようにしてもよい。
【0114】
[焦点の位置の補正]
経時的、熱的な歪みにより、各集光レンズの相対的な位置関係が変化する場合がある。このような場合、第2集光レンズ122A、122Bの位置を調整することで、Z方向における各集光レンズの相対的な位置関係を補正できる。
【0115】
[Y方向の位置調整]
Z方向における焦点の位置の調整に加えて、Y方向における焦点の位置の調整もできるようにしてもよい。Y方向における焦点の位置の調整は、たとえば、第2集光レンズ122A、122BをY方向にシフトさせる機構を追加することで実現できる。
【0116】
[テーブルとレーザ加工ヘッドとの間の相対移動の構成]
上記実施の形態では、テーブル20が、X方向及びY方向に移動、かつ、θ軸周りに回転する一方、レーザ加工ヘッド100が、Z方向に移動する構成とされているが、テーブル20とレーザ加工ヘッド100との間の移動の関係は、これに限定されるものではない。両者の間で相対的に移動が行われる構成であればよい。たとえば、レーザ加工ヘッド100を固定とし、テーブル20がX、Y、Zの3方向に移動、かつ、θ軸周りに回転する構成としてもよい。あるいは、テーブル20がX方向に移動、かつ、θ軸周りに回転し、レーザ加工ヘッド100が、Y方向及びZ方向に移動する構成としてもよい。また、テーブル20が一定位置でθ軸周りに回転し、レーザ加工ヘッド100が、X、Y、Zの3方向に移動する構成としてもよい。
【0117】
[その他]
上記実施の形態では、層間絶縁膜にLow-k膜を使用した半導体のウェーハに対し、ダイシング前にストリートからLow-k膜を含む配線層を除去する装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。レーザ加工ヘッドからテーブル上のウェーハにレーザ光を照射しながら、テーブルとレーザ加工ヘッドとを加工送り方向に相対移動させて、ウェーハに溝を加工する装置全般に適用できる。
【符号の説明】
【0118】
10…レーザ加工装置、20…テーブル、22A…第1レーザ光源、22B…第2レーザ光源、24…顕微鏡、26…テーブル駆動部、28…ヘッド駆動部、30…制御装置、30A…プロセッサ、30B…主記憶装置、30C…補助記憶装置、30D…入力装置、30E…出力装置、100…レーザ加工ヘッド、101…第1出射口、102A…第2出射口(第1の第2出射口)、102B…第2出射口(第2の第2出射口)、110A…第1安全シャッタ、110B…第2安全シャッタ、112A…第1高速シャッタ、112B…第2高速シャッタ、114…第1レーザ光生成部、116…第2レーザ光生成部、118…光路切替部、118A…2波長板、118B…偏光ビームスプリッタ、118C…ミラー、120…第1集光レンズ、122A…第2集光レンズ(第1の第2集光レンズ)、122B…第2集光レンズ(第2の第2集光レンズ)、124A…焦点調整部(第1の焦点調整部)、124B…焦点調整部(第2の焦点調整部)、C…溝(配線層除去溝)、C1a、C1b…溝(縁切り溝)、L1a、L1b…レーザ光(第1レーザ光)、L2…レーザ光(第2レーザ光)、LA…第1レーザ光源から出射されるレーザ光、LB…第2レーザ光源から出射されるレーザ光、W…ウェーハ、Dv…デバイス、St…ストリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10