(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145624
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】レーザ加工方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241004BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058061
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】林 博和
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168AD18
4E168CA06
4E168CB07
4E168CB22
4E168DA35
4E168DA43
4E168EA05
4E168EA06
4E168JA11
5F063AA07
5F063BA07
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB12
5F063CB16
5F063CC39
5F063DD26
5F063DD32
5F063DE01
5F063DE12
5F063DE33
(57)【要約】
【課題】加工品質を維持しつつ効率よくワークを加工処理できるレーザ加工方法及び装置を提供する。
【解決手段】相対的に加工送りが与えられるワークに対し、一対のレーザ光を照射することにより、ワークに2条の第1溝を加工可能な第1加工部と、加工送り方向に対し第1加工部の両側に配置され、第1加工部で加工される2条の第1溝の間にレーザ光を照射することにより、2条の第1溝の間を加工可能な2つの第2加工部と、を備えたレーザ加工ユニットを用いて、ワークに第2溝を加工するレーザ加工方法であって、加工送りを複数回与えて、2条の第1溝の間を中抜きした第2溝を加工する。1回目の加工送りでは、第1加工部でワークに2条の第1溝を加工しつつ、加工の進行方向に対し第1加工部の下流側に位置する第2加工部で2条の第1溝の間を加工する。2回目以降の加工送りでは、2つの第2加工部を使用して、2条の第1溝の間を加工する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に加工送りが与えられるワークに対し、一対のレーザ光を照射することにより、前記ワークに2条の第1溝を加工可能な第1加工部と、加工送り方向に対し前記第1加工部の両側に配置され、前記第1加工部で加工される2条の前記第1溝の間にレーザ光を照射することにより、2条の前記第1溝の間を加工可能な2つの第2加工部と、を備えたレーザ加工ユニットを用いて、前記ワークに第2溝を加工するレーザ加工方法であって、
加工送りを複数回与えて、2条の前記第1溝の間を中抜きした前記第2溝を加工し、
1回目の加工送りでは、前記第1加工部で前記ワークに2条の前記第1溝を加工しつつ、加工の進行方向に対し前記第1加工部の下流側に位置する前記第2加工部で2条の前記第1溝の間を加工し、
2回目以降の加工送りでは、2つの前記第2加工部を使用して、2条の前記第1溝の間を加工する、
レーザ加工方法。
【請求項2】
少なくとも1回目の加工送りと2回目以降の加工送りとの間で前記第2加工部から出射させるレーザ光の強度を変える、
請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
相対的に加工送りが与えられるワークに対し、一対のレーザ光を照射することにより、前記ワークに2条の第1溝を加工可能な第1加工部と、加工送り方向に対し前記第1加工部の両側に配置され、前記第1加工部で加工される2条の前記第1溝の間にレーザ光を照射することにより、2条の前記第1溝の間を加工可能な2つの第2加工部と、を備えたレーザ加工ユニットを用いて、前記ワークに第2溝を加工するレーザ加工方法であって、
前記ワークに対し、前記第1加工部で前記ワークに2条の前記第1溝の加工しつつ、加工の進行方向に対し前記第1加工部の下流側に位置する前記第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、前記第1加工部で加工された2条の前記第1溝の間を加工し、かつ、加工の進行方向に対し前記第1加工部の上流側に位置する前記第2加工部から前記第1強度よりも弱い第2強度でレーザ光を照射して、前記第1加工部で加工される2条の前記第1溝の間を事前に加工することにより、2条の前記第1溝の間を中抜きした前記第2溝を前記ワークに加工する、
レーザ加工方法。
【請求項4】
加工送りを複数回与えて、前記第2溝を加工し、
1回目の加工送りでは、前記ワークに対し、前記第1加工部で前記ワークに2条の前記第1溝の加工しつつ、加工の進行方向に対し前記第1加工部の下流側に位置する前記第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、前記第1加工部で加工された2条の前記第1溝の間を加工し、かつ、加工の進行方向に対し前記第1加工部の上流側に位置する前記第2加工部から前記第1強度よりも弱い第2強度でレーザ光を照射して、前記第1加工部で加工される2条の前記第1溝の間を事前に加工し、
2回目以降の加工送りでは、2つの前記第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、2条の前記第1溝の間を加工する、
請求項3に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記ワークは、層間絶縁膜にLow-k膜を使用した半導体のウェーハであり、前記第2強度は、膜剥離が発生する強度よりも低い強度に設定される、
請求項3又は4に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
相対的に加工送りが与えられるワークに対し、一対のレーザ光を照射することにより、前記ワークに2条の第1溝を加工可能な第1加工部と、加工送り方向に対し前記第1加工部の両側に配置され、前記第1加工部で加工される2条の前記第1溝の間にレーザ光を照射することにより、2条の前記第1溝の間を加工可能な2つの第2加工部と、を備えたレーザ加工ユニットと、
前記ワークを保持するテーブルと、
前記レーザ加工ユニットと前記テーブルとを相対的に移動させて、加工送りを与える加工送り部と、
前記レーザ加工ユニット及び前記加工送り部を制御して、加工を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
複数回の加工送りによって、前記第1溝の間を中抜きした第2溝が前記ワークに加工されるように、前記レーザ加工ユニット及び前記加工送り部を制御し、
1回目の加工送りでは、前記第1加工部で前記ワークに2条の前記第1溝を加工しつつ、加工の進行方向に対し前記第1加工部の下流側に位置する前記第2加工部で2条の前記第1溝の間を加工するように、前記レーザ加工ユニット及び前記加工送り部を制御し、
2回目以降の加工送りでは、2つの前記第2加工部を使用して、2条の前記第1溝の間を加工するように、前記レーザ加工ユニット及び前記加工送り部を制御する、
レーザ加工装置。
【請求項7】
相対的に加工送りが与えられるワークに対し、一対のレーザ光を照射することにより、前記ワークに2条の第1溝を加工可能な第1加工部と、加工送り方向に対し前記第1加工部の両側に配置され、前記第1加工部で加工される2条の前記第1溝の間にレーザ光を照射することにより、2条の前記第1溝の間を加工可能な2つの第2加工部と、を備えたレーザ加工ユニットと、
前記ワークを保持するテーブルと、
前記レーザ加工ユニットと前記テーブルとを相対的に移動させて、加工送りを与える加工送り部と、
前記レーザ加工ユニット及び前記加工送り部を制御して、加工を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
少なくとも1回の加工送りによって、前記第1溝の間を中抜きした第2溝が前記ワークに加工されるように、前記レーザ加工ユニット及び前記加工送り部を制御し、
前記ワークに対し、前記第1加工部で前記ワークに2条の前記第1溝の加工しつつ、加工の進行方向に対し前記第1加工部の下流側に位置する前記第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、前記第1加工部で加工された2条の前記第1溝の間を加工し、かつ、加工の進行方向に対し前記第1加工部の上流側に位置する前記第2加工部から前記第1強度よりも弱い第2強度でレーザ光を照射して、前記第1加工部で加工される2条の前記第1溝の間を事前に加工するように、前記レーザ加工ユニット及び前記加工送り部を制御する、
レーザ加工装置。
【請求項8】
前記制御部は、
複数回の加工送りによって、前記第2溝が前記ワークに加工されるように、前記レーザ加工ユニット及び前記加工送り部を制御し、
1回目の加工送りでは、前記ワークに対し、前記第1加工部で前記ワークに2条の前記第1溝の加工しつつ、加工の進行方向に対し前記第1加工部の下流側に位置する前記第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、前記第1加工部で加工された2条の前記第1溝の間を加工し、かつ、加工の進行方向に対し前記第1加工部の上流側に位置する前記第2加工部から前記第1強度よりも弱い第2強度でレーザ光を照射して、前記第1加工部で加工される2条の前記第1溝の間を事前に加工するように、前記レーザ加工ユニット及び前記加工送り部を制御し、
2回目以降の加工送りでは、2つの前記第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、2条の前記第1溝の間を加工するように、前記レーザ加工ユニット及び前記加工送り部を制御する、
請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記ワークは、層間絶縁膜にLow-k膜を使用した半導体のウェーハであり、前記第2強度は、膜剥離が発生する強度よりも低い強度に設定される、
請求項7又は8に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工方法及び装置に係り、特にワークに溝を加工するレーザ加工方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
層間絶縁膜にLow-k(低誘電率)膜を使用した半導体のウェーハは、通常のブレードダイサを使用してチップ化すると、膜剥離(デラミネーション)が発生するという問題がある。
【0003】
特許文献1には、Low-k膜を有するウェーハの加工方法として、ストリートに沿って2条の溝をレーザ光で加工し、その2条の溝の間をブレードで切削することにより、膜剥離を抑制する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、ストリートに沿って2条の溝をレーザ光で加工し、その2条の溝の間をレーザ光で切削する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、ストリートに沿って2条の溝をレーザ光で加工し、かつ、その2条の溝の間をレーザ光で中抜き加工して、ストリートからLow-kを含む積層体を除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-142398号公報
【特許文献2】特開2009-182019号公報
【特許文献3】特開2021-192922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、効率よくウェーハを加工処理するためには、1回の加工送り(いわゆる1パス)で各ストリートを加工処理することが要求される。
【0008】
しかしながら、レーザ加工では、加工対象によって、加工品質と1パス当たりの除去量がトレードオフになる場合がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、加工品質を維持しつつ効率よくワークを加工処理できるレーザ加工方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の態様は、相対的に加工送りが与えられるワークに対し、一対のレーザ光を照射することにより、ワークに2条の第1溝を加工可能な第1加工部と、加工送り方向に対し第1加工部の両側に配置され、第1加工部で加工される2条の第1溝の間にレーザ光を照射することにより、2条の第1溝の間を加工可能な2つの第2加工部と、を備えたレーザ加工ユニットを用いて、ワークに第2溝を加工するレーザ加工方法であって、加工送りを複数回与えて、2条の第1溝の間を中抜きした第2溝を加工し、1回目の加工送りでは、第1加工部でワークに2条の第1溝を加工しつつ、加工の進行方向に対し第1加工部の下流側に位置する第2加工部で2条の第1溝の間を加工し、2回目以降の加工送りでは、2つの第2加工部を使用して、2条の第1溝の間を加工する、レーザ加工方法である。
【0011】
第2の態様は、第1の態様のレーザ加工方法において、少なくとも1回目の加工送りと2回目以降の加工送りとの間で第2加工部から出射させるレーザ光の強度を変える、レーザ加工方法である。
【0012】
第3の態様は、相対的に加工送りが与えられるワークに対し、一対のレーザ光を照射することにより、ワークに2条の第1溝を加工可能な第1加工部と、加工送り方向に対し第1加工部の両側に配置され、第1加工部で加工される2条の第1溝の間にレーザ光を照射することにより、2条の第1溝の間を加工可能な2つの第2加工部と、を備えたレーザ加工ユニットを用いて、ワークに第2溝を加工するレーザ加工方法であって、ワークに対し、第1加工部でワークに2条の第1溝の加工しつつ、加工の進行方向に対し第1加工部の下流側に位置する第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、第1加工部で加工された2条の第1溝の間を加工し、かつ、加工の進行方向に対し第1加工部の上流側に位置する第2加工部から第1強度よりも弱い第2強度でレーザ光を照射して、第1加工部で加工される2条の第1溝の間を事前に加工することにより、2条の第1溝の間を中抜きした第2溝をワークに加工する、レーザ加工方法である。
【0013】
第4の態様は、第3の態様のレーザ加工方法において、加工送りを複数回与えて、第2溝を加工し、1回目の加工送りでは、ワークに対し、第1加工部でワークに2条の第1溝の加工しつつ、加工の進行方向に対し第1加工部の下流側に位置する第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、第1加工部で加工された2条の第1溝の間を加工し、かつ、加工の進行方向に対し第1加工部の上流側に位置する第2加工部から第1強度よりも弱い第2強度でレーザ光を照射して、第1加工部で加工される2条の第1溝の間を事前に加工し、2回目以降の加工送りでは、2つの第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、2条の第1溝の間を加工する、レーザ加工方法である。
【0014】
第5の態様は、第3又は4の態様のレーザ加工方法において、ワークは、層間絶縁膜にLow-k膜を使用した半導体のウェーハであり、第2強度は、膜剥離が発生する強度よりも低い強度に設定される、レーザ加工方法である。
【0015】
第6の態様は、相対的に加工送りが与えられるワークに対し、一対のレーザ光を照射することにより、ワークに2条の第1溝を加工可能な第1加工部と、加工送り方向に対し第1加工部の両側に配置され、第1加工部で加工される2条の第1溝の間にレーザ光を照射することにより、2条の第1溝の間を加工可能な2つの第2加工部と、を備えたレーザ加工ユニットと、ワークを保持するテーブルと、レーザ加工ユニットとテーブルとを相対的に移動させて、加工送りを与える加工送り部と、レーザ加工ユニット及び加工送り部を制御して、加工を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数回の加工送りによって、第1溝の間を中抜きした第2溝がワークに加工されるように、レーザ加工ユニット及び加工送り部を制御し、1回目の加工送りでは、第1加工部でワークに2条の第1溝を加工しつつ、加工の進行方向に対し第1加工部の下流側に位置する第2加工部で2条の第1溝の間を加工するように、レーザ加工ユニット及び加工送り部を制御し、2回目以降の加工送りでは、2つの第2加工部を使用して、2条の第1溝の間を加工するように、レーザ加工ユニット及び加工送り部を制御する、レーザ加工装置である。
【0016】
第7の態様は、相対的に加工送りが与えられるワークに対し、一対のレーザ光を照射することにより、ワークに2条の第1溝を加工可能な第1加工部と、加工送り方向に対し第1加工部の両側に配置され、第1加工部で加工される2条の第1溝の間にレーザ光を照射することにより、2条の第1溝の間を加工可能な2つの第2加工部と、を備えたレーザ加工ユニットと、ワークを保持するテーブルと、レーザ加工ユニットとテーブルとを相対的に移動させて、加工送りを与える加工送り部と、レーザ加工ユニット及び加工送り部を制御して、加工を制御する制御部と、を備え、制御部は、少なくとも1回の加工送りによって、第1溝の間を中抜きした第2溝がワークに加工されるように、レーザ加工ユニット及び加工送り部を制御し、ワークに対し、第1加工部でワークに2条の第1溝の加工しつつ、加工の進行方向に対し第1加工部の下流側に位置する第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、第1加工部で加工された2条の第1溝の間を加工し、かつ、加工の進行方向に対し第1加工部の上流側に位置する第2加工部から第1強度よりも弱い第2強度でレーザ光を照射して、第1加工部で加工される2条の第1溝の間を事前に加工するように、レーザ加工ユニット及び加工送り部を制御する、レーザ加工装置である。
【0017】
第8の態様は、第7の態様のレーザ加工装置において、制御部は、複数回の加工送りによって、第2溝がワークに加工されるように、レーザ加工ユニット及び加工送り部を制御し、1回目の加工送りでは、ワークに対し、第1加工部でワークに2条の第1溝の加工しつつ、加工の進行方向に対し第1加工部の下流側に位置する第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、第1加工部で加工された2条の第1溝の間を加工し、かつ、加工の進行方向に対し第1加工部の上流側に位置する第2加工部から第1強度よりも弱い第2強度でレーザ光を照射して、第1加工部で加工される2条の第1溝の間を事前に加工するように、レーザ加工ユニット及び加工送り部を制御し、2回目以降の加工送りでは、2つの第2加工部から第1強度でレーザ光を照射して、2条の第1溝の間を加工するように、レーザ加工ユニット及び加工送り部を制御する、レーザ加工装置である。
【0018】
第9の態様は、第7又は8の態様のレーザ加工方法において、ワークは、層間絶縁膜にLow-k膜を使用した半導体のウェーハであり、第2強度は、膜剥離が発生する強度よりも低い強度に設定される、レーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、加工品質を維持しつつ効率よくワークを加工処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】レーザ加工装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図4】制御装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【
図5】レーザ加工ヘッドの一実施形態を示す概略図である。
【
図6】第1集光レンズによる第1レーザ光の照射の概念図である。
【
図7】光路切替部の構成の一例を示す概略図である。
【
図8】第2集光レンズによる第2レーザ光の照射の概念図である。
【
図10】レーザ加工装置による加工処理の流れを示すフローチャート
【
図12】レーザ加工装置による加工処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】第2レーザ光の分岐量を調整する手段の他の一例を示す図である。
【
図14】第2レーザ光の強度を調整する方法の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0022】
[第1の実施の形態]
ここでは、層間絶縁膜にLow-k膜を使用した半導体のウェーハに対し、ダイシング前にストリートからLow-k膜を含む配線層(積層体)を除去する装置に本発明を適用した場合を例に説明する。ウェーハは、ワークの一例である。
【0023】
層間絶縁膜(絶縁層)としてのLow-k膜(Low-k層)は、Low-k材料(低誘電率材料)で構成される。Low-k材料は、たとえば、SiO2、SiOC、SiLK等の無機物系材料、ポリイミド系、パリレン系、ポリテトラフルオロエチレン系等のポリマーである有機物系材料、及びメチル含有ポリシロキサン等のポーラスシリカ材料等である。
【0024】
[加工の概要]
図1は、加工対象の一例を示す平面図である。
【0025】
図1に示すように、加工対象である半導体のウェーハWは、複数のストリートSt(分割予定ライン)によって区画された格子状の領域にデバイスDvが形成される。層間絶縁膜にLow-k膜を使用したウェーハWは、隣接するデバイスDv間でストリートStを跨いでLow-k膜が存在する。ストリートStごとにレーザ光で所定の溝を加工(アブレーション加工)することにより、ストリートStからLow-k膜を含む配線層(積層体)を除去する。
【0026】
【0027】
図2に示すように、ストリートStに沿って所定の溝Cを加工し、ストリートStからLow-k膜を含む配線層を除去する。その際、溝Cの両側の縁を切る加工と、溝Cの中を刳り貫く加工(いわゆる中抜き加工)とを分けて、溝Cを加工する。以下、溝Cの両側の縁を切る加工を「縁切り加工」、溝Cの中を刳り貫く加工を「中抜き加工」と称する。
【0028】
縁切り加工は、一対のレーザ光L1a、L1bをストリートStに沿って照射し、互いに平行な2条の溝C1a、C1bをストリートStに沿って加工することにより行う。2条の溝C1a、C1bは、Y方向において、加工する溝Cの幅に対応した間隔で加工する。また、2条の溝C1a、C1bは、Z方向において、加工する溝Cの深さに対応した深さで加工する。
【0029】
中抜き加工は、縁切り加工によって形成された2条の溝C1a、C1bの間に所定の幅を有するレーザ光L2を照射することにより行う。このレーザ光L2は、2条の溝C1a、C1bの間隔に対応した幅の溝を加工できるレーザ光で構成される。
【0030】
縁切り加工と中抜き加工とを組み合わせて行うことで、最終的に所定の幅及び深さを有する1条の溝CがストリートStに沿って形成される。
【0031】
一度にLow-k膜を除去できる出力のレーザ光を用いて溝Cを加工すると、膜剥離が発生するおそれがある。しかし、上記のように、縁切り加工と中抜き加工とを分けて溝Cを加工することで、膜剥離の発生を抑制できる。
【0032】
本実施の形態では、加工送り(溝を加工する方向の送り)を複数回与えて、所要の溝CをストリートStに加工する(いわゆるマルチパスによる加工)。この点については、後に詳述する。
【0033】
なお、以下においては、縁切り加工に用いる一対のレーザ光L1a、L1bを「第1レーザ光L1a、L1b」、中抜き加工に用いるレーザ光L2を「第2レーザ光L2」と称して、両者を区別する。また、縁切り加工で加工する2条の溝C1a、C1bを「縁切り溝C1a、C1b」、縁切り加工及び中抜き加工によって加工される溝Cを「配線層除去溝C」と称して、両者を区別する。縁切り溝C1a、C1bは、第1溝の一例である。また、配線層除去溝Cは、第2溝の一例である。
【0034】
[レーザ加工装置]
[装置構成]
図3は、レーザ加工装置の一実施形態を示す概略図である。なお、図中のXYZは、互いに直交する3軸である。本実施の形態では、X軸及びY軸を含む平面を水平面とし、X方向及びY方向を水平方向とする。また、Z方向を鉛直方向(上下方向)とする。
【0035】
図3に示すように、本実施の形態のレーザ加工装置10は、テーブル20、第1レーザ光源22A、第2レーザ光源22B、レーザ加工ヘッド100、顕微鏡24、テーブル駆動部26、ヘッド駆動部28、及び、制御装置30等を備える。
【0036】
テーブル20は、ウェーハWを保持する。また、テーブル20は、制御装置30の制御の下、テーブル駆動部26に駆動されて、X方向及びY方向に移動する。X方向は、加工送り方向である。加工対象のストリートStは、X方向(加工送り方向)と平行に設定される。また、テーブル20は、制御装置30の制御の下、テーブル駆動部26に駆動されて、θ軸を中心に回転する。θ軸は、テーブル20の中心を通り、Z軸と平行な軸である。
【0037】
第1レーザ光源22Aは、縁切り加工に用いるレーザ光LAをレーザ加工ヘッド100に供給する。このレーザ光LAは、縁切り加工に適した条件(波長、パルス幅及び繰り返し周波数等)のパルスレーザ光である。
【0038】
第2レーザ光源22Bは、中抜き加工に用いるレーザ光LBをレーザ加工ヘッド100に供給する。このレーザ光LBは、中抜き加工に適した条件(波長、パルス幅及び繰り返し周波数等)のパルスレーザ光である。
【0039】
レーザ加工ヘッド100は、レーザ光学系を有し、テーブル20上のウェーハWに向けて、縁切り加工用の第1レーザ光L1a、L1b及び中抜き加工用の第2レーザ光L2を出射する。各レーザ光L1a、L1b、L2は、テーブル20上のウェーハWに向けて鉛直下向きに出射される。
【0040】
レーザ加工ヘッド100は、3つの出射口を有する。1つは、縁切り加工用の一対の第1レーザ光L1a、L1bを出射する第1出射口101である。残り2つは、中抜き加工用の第2レーザ光L2を出射する第2出射口102A、102Bである。以下必要に応じて、一方(
図3の左側)の第2出射口102Aを第1の第2出射口102A、他方(
図3の右側)の第2出射口102Bを第2の第2出射口102Bと称して、両者を区別する。3つの出射口(第1出射口101、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102B)は、ウェーハWの加工送り方向(X方向)に沿って一列に並んで配置される。また、第1出射口101は、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの間に配置される。すなわち、縁切り加工用のレーザ光の出射口(第1出射口101)の両側に、中抜き加工用のレーザ光の出射口(第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102B)が配置される。
【0041】
中抜き加工用の第2レーザ光L2は、加工形態に応じて、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bから同時又は択一的に出射される。詳細は後述する。
【0042】
レーザ加工ヘッド100は、制御装置30の制御の下、ヘッド駆動部28に駆動されて、Z方向に移動する。
【0043】
レーザ光学系を含むレーザ加工ヘッド100の詳細については、後述する。本実施の形態において、レーザ加工ヘッド100は、レーザ加工ユニットの一例である。
【0044】
顕微鏡24は、テーブル20に保持されたウェーハWを撮影する。顕微鏡24は、レーザ加工ヘッド100に固定されており、レーザ加工ヘッド100と一体に移動する。顕微鏡24で撮影された画像は、制御装置30に出力される。制御装置30は、顕微鏡24で撮影された画像に基づいて、アライメント、カーフチェック等を行う。
【0045】
テーブル駆動部26は、ガイド機構として、テーブル20をX方向にガイドするガイド機構、テーブル20をY方向にガイドするガイド機構、テーブル20を回転可能に支持する軸受等を含む。また、テーブル駆動部26は、アクチュエータとして、テーブル20をX方向に駆動するモータ、テーブル20をY方向に駆動するモータ、テーブル20を回転駆動するモータ等を含む。また、テーブル駆動部26は、センサ類として、テーブル20のX方向の位置を検出するセンサ、テーブル20のY方向の位置を検出するセンサ、及び、テーブル20の回転位置を検出するセンサ等を含む。テーブル駆動部26は、加工送り部の一例である。
【0046】
ヘッド駆動部28は、レーザ加工ヘッド100をZ方向にガイドするガイド機構、レーザ加工ヘッド100をZ方向に駆動するモータ、レーザ加工ヘッド100のZ方向の位置を検出するセンサ等を含む。
【0047】
図4は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【0048】
制御装置30は、プロセッサ30A、主記憶装置30B、補助記憶装置30C、入力装置30D及び出力装置30E等を備える。すなわち、制御装置30は、コンピュータで構成され、コンピュータが所定のプログラムを実行することで制御装置30として機能する。プロセッサ30Aは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)で構成される。主記憶装置30Bは、たとえば、RAM(Random Access Memory)で構成される。補助記憶装置30Cは、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。入力装置30Dには、操作ボタン類の他、キーボード、タッチパネル等が含まれる。出力装置30Eは、たとえば、ディスプレイ(表示装置)で構成される。入力装置30D及び出力装置30Eをタッチパネルディスプレイで構成することもできる。
【0049】
制御装置30は、第1レーザ光源22A、第2レーザ光源22B、レーザ加工ヘッド100、顕微鏡24、テーブル駆動部26及びヘッド駆動部28等の動作を統括的に制御する。制御装置30は、制御部の一例である。
【0050】
[レーザ加工ヘッド]
図5は、レーザ加工ヘッドの一実施形態を示す概略図である。
【0051】
図5に示すように、レーザ加工ヘッド100は、第1安全シャッタ110A、第2安全シャッタ110B、第1レーザ光生成部114、第2レーザ光生成部116、光路切替部118、第1高速シャッタ112A、2つの第2高速シャッタ112B1、112B2、第1集光レンズ120、及び、2つの第2集光レンズ122A、122B等を備える。
【0052】
第1レーザ光生成部114、及び、第1集光レンズ120は、第1のレーザ光学系を構成する。第1のレーザ光学系は、第1レーザ光源22Aから出射されるレーザ光LAから一対の第1レーザ光L1a、L1bを生成し、第1出射口101から出射させる。また、第2レーザ光生成部116、光路切替部118、及び、第2集光レンズ122A、122Bは、第2のレーザ光学系を構成する。第2のレーザ光学系は、第2レーザ光源22Bから出射されるレーザ光LBから第2レーザ光L2を生成し、第1の第2出射口102A又は第2の第2出射口102Bから出射させる。
【0053】
第1安全シャッタ110Aは、第1レーザ光源22Aから第1レーザ光生成部114に入射するレーザ光LAの光路上に配置される。第1安全シャッタ110Aは、制御装置30による制御の下、当該光路を開閉する。第1安全シャッタ110Aが閉じられることにより、第1レーザ光源22Aからレーザ加工ヘッド100へのレーザ光LAの入射が遮断される。また、これにより、第1レーザ光L1a、L1bの出射が停止される。第1安全シャッタ110Aは、第1レーザ光L1a、L1bの入射元を閉じるシャッタとして機能する。
【0054】
第1レーザ光生成部114は、第1レーザ光源22Aから供給されるレーザ光LAから縁切り加工用の一対の第1レーザ光L1a、L1bを生成する。第1レーザ光生成部114は、一対の第1レーザ光L1a、L1bを生成する手段として、回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE)を有する。回折光学素子は、光の回折現象を利用して、レーザ光を空間的に分岐できる光学素子である。回折光学素子は、レーザ光をさまざまなパターン、形状に変えることができる。本実施の形態では、テーブル20上のウェーハWに対し、Y方向に所定の間隔で一対のスポットが形成されるように、一対の第1レーザ光L1a、L1bを生成する(
図2参照)。一対の第1レーザ光L1a、L1bを生成する手段には、この他、たとえば、屈折光学素子(Refractive Optical Element:ROE)、ウォラストンプリズム等を採用することもできる。
【0055】
第1レーザ光生成部114で生成された一対の第1レーザ光L1a、L1bは、第1高速シャッタ112A及び第1集光レンズ120を介して、テーブル20上のウェーハWに照射される。
【0056】
第1高速シャッタ112Aは、第1レーザ光生成部114から第1集光レンズ120に入射する第1レーザ光L1a、L1bの光路上に配置される。第1高速シャッタ112Aは、制御装置30による制御の下、当該光路を開閉する。第1高速シャッタ112Aを閉じることにより、第1集光レンズ120への第1レーザ光L1a、L1bの入射が遮断される。これにより、第1レーザ光L1a、L1bの出射が停止される。第1高速シャッタ112Aは、第1レーザ光L1a、L1bの出射を一時的に停止させるシャッタとして機能する。このため、第1高速シャッタ112Aは、第1安全シャッタ110Aよりも高速に作動するシャッタで構成される。なお、第1高速シャッタ112Aは、第1安全シャッタ110Aと第1出射口101との間の光路に配置されていればよく、その配置位置は特に限定されない。
【0057】
第1集光レンズ120は、第1レーザ光生成部114で生成された一対の第1レーザ光L1a、L1bをZ方向の所定の位置(焦点)に集光させて、テーブル20上のウェーハWに照射する。
図6は、第1集光レンズによる第1レーザ光の照射の概念図である。一対の第1レーザ光L1a、L1bは、Y方向に所定の間隔Dをもって集光される。この間隔Dが、2条の縁切り溝C1a、C1bの形成間隔となる。
【0058】
第2安全シャッタ110Bは、第2レーザ光源22Bから第2レーザ光生成部116に入射するレーザ光LBの光路上に配置される。第2安全シャッタ110Bは、制御装置30による制御の下、当該光路を開閉する。第2安全シャッタ110Bを閉じることにより、第2レーザ光源22Bからレーザ加工ヘッド100へのレーザ光LBの入射が遮断される。また、これにより、第2レーザ光L2の出射が停止される。第2安全シャッタ110Bは、第2レーザ光L2の入射元を閉じるシャッタとして機能する。
【0059】
第2レーザ光生成部116は、第2レーザ光源22Bから供給されるレーザ光LBから中抜き加工用の第2レーザ光L2を生成する。本実施の形態では、中抜き加工用の第2レーザ光L2として、スポットの形状が直線状ないし矩形状となるレーザ光を生成する(
図8参照)。第2レーザ光生成部116は、スポットの形状が直線状ないし矩形状となるレーザ光を生成する手段として、たとえば、回折光学素子(DOE)、マスク等を有する。また、本実施の形態では、中抜き加工用の第2レーザ光L2として、所定の強度分布を有するレーザ光を生成する。一例として、強度分布がトップハット形状(フラットトップともいう)を有するレーザ光を生成する。第2レーザ光L2の強度分布をトップハット形状とすることにより、中抜き加工する溝の底面を平坦に加工できる。第2レーザ光生成部116は、強度分布をトップハット形状に変換する手段としては、たとえば、回折光学素子(DOE)、屈折型ビームシェイパ等を有する。また、第2レーザ光生成部116は、第2レーザ光源22Bから供給されるレーザ光LBを強度変調する手段を有する。一例として、音響光学素子(Acoustic Optical Deflector:AOD)を有する。第2レーザ光生成部116は、制御装置30による制御の下、第2レーザ光源22Bから供給されるレーザ光LBを強度変調して、所定の強度の第2レーザ光L2を生成する。第2レーザ光生成部116で生成された第2レーザ光L2は、光路切替部118に入射される。
【0060】
光路切替部118は、第2レーザ光生成部116で生成された第2レーザ光L2の光路を切り替える。具体的には、第2レーザ光L2を第1の第2出射口102Aから出射させる第1光路と、第2の第2出射口102Bから出射させる第2光路と、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの双方から出射させる第3光路と、を択一的に切り替える。
【0061】
図7は、光路切替部の構成の一例を示す概略図である。
【0062】
図7に示すように、光路切替部118は、1/2波長板(λ/2板)118A、回転駆動部118B、偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter:PBS)118C、及び、ミラー118D等を備える。なお、第2レーザ光源22Bからは所定の偏光方向に偏光した直線偏光のレーザ光LBが出射されるものとする。したがって、第2レーザ光生成部116からも所定の偏光方向に偏光した直線偏光の第2レーザ光L2が出射される。
【0063】
1/2波長板118Aは、第2レーザ光生成部116から光路切替部118に導入される第2レーザ光L2の光路上に配置される。1/2波長板118Aは、第2レーザ光L2の光軸を中心にして回転することにより、第2レーザ光L2の偏光方向を切り替える。すなわち、1/2波長板118Aは、可変偏光ローテータとして機能する。1/2波長板118Aは、図示しない支持部によって回転自在に支持される。
【0064】
回転駆動部118Bは、1/2波長板118Aを回転させる。回転駆動部118Bは、22.5°間隔で設定された3つの回転ポジションの間で1/2波長板118Aを回転させる。3つの回転ポジションを第1ポジション、第2ポジション及び第3ポジションとする。1/2波長板118Aを第1ポジションにセットすると、第2レーザ光L2の偏光方向が第1方向に設定される。1/2波長板118Aを第2ポジションにセットすると、第2レーザ光L2の偏光方向が第2方向に設定される。第2方向は、第1方向から45°回転した方向である。1/2波長板118Aを第3ポジションにセットすると、第2レーザ光L2の偏光方向が第3方向に設定される。第3方向は、第2方向から更に45°回転した方向であり、かつ、第1方向と直交する方向である。回転駆動部118Bは、たとえば、モータ、ロータリーアクチュエータ等で構成される。
【0065】
偏光ビームスプリッタ118Cは、1/2波長板118Aを透過した第2レーザ光L2の光路上に配置される。偏光ビームスプリッタ118Cは、入射する光の偏光状態に応じて入射光を透過光と反射光とに分割する。上記のように、1/2波長板118Aを透過する第2レーザ光L2は、1/2波長板118Aのポジションによって、3つの偏光方向に設定される。偏光方向が第1方向の第2レーザ光L2が入射すると、偏光ビームスプリッタ118Cは透過させる。また、偏光方向が第3方向の光が入射すると、偏光ビームスプリッタ118Cは、ミラー118Dの方向に反射させる。また、偏光方向が第2方向の光が入射すると、偏光ビームスプリッタ118Cは、透過光と反射光とに等分割して出射させる。このように、偏光ビームスプリッタ118Cは、1/2波長板118Aと組み合わせて使用することにより、分岐比を調整可能なビームスプリッタとして機能する。
【0066】
偏光ビームスプリッタ118Cを透過させた場合、第2レーザ光L2は、一方の第2高速シャッタ112B1を介して一方の第2集光レンズ122Aに入射し、第1の第2出射口102Aから出射される。
【0067】
偏光ビームスプリッタ118Cで反射させた場合、第2レーザ光L2は、ミラー118D及び他方の第2高速シャッタ112B2を介して他方の第2集光レンズ122Bに入射し、第2の第2出射口102Bから出射される。
【0068】
偏光ビームスプリッタ118Cで透過光と反射光とに二分割した場合、透過光は、一方の第2高速シャッタ112B1を介して一方の第2集光レンズ122Aに入射し、第1の第2出射口102Aから出射される。また、反射光は、ミラー118D及び他方の第2高速シャッタ112B2を介して他方の第2集光レンズ122Bに入射し、第2の第2出射口102Bから出射される。すなわち、双方の第2出射口102A、102Bから出射される。
【0069】
このように、本実施の形態の光路切替部118は、1/2波長板118Aの回転により、第2レーザ光L2の光路(出射先)を選択的に切り替える。本実施の形態の光路切替部118の場合、1/2波長板118Aを第1ポジションにセットすると、第1の第2出射口102Aのみから第2レーザ光L2が出射される。また、1/2波長板118Aを第2ポジションにセットすると、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの双方から第2レーザ光L2が出射される。また、1/2波長板118Aを第3ポジションにセットすると、第2の第2出射口102Bのみから第2レーザ光L2が出射される。光路切替部118は、制御装置30による制御の下、回転駆動部118Bの駆動を制御して、第2レーザ光L2の光路を切り替える。
【0070】
2つの第2高速シャッタ112B1、112B2のうち一方の第2高速シャッタ112B1は、一方の第2集光レンズ122Aに入射する第2レーザ光L2の光路上に配置される。また、他方の第2高速シャッタ112B2は、他方の第2集光レンズ122Bに入射する第2レーザ光L2の光路上に配置される。各第2高速シャッタ112B1、112B2は、制御装置30による制御の下、各光路を個別に開閉する。第2高速シャッタ112B1、112B2を閉じることにより、第2集光レンズ122A、122Bへの第2レーザ光L2の入射が遮断される。これにより、第2レーザ光L2の出射が停止される。各第2高速シャッタ112B1、112B2は、第2レーザ光L2の出射を一時的に停止させるシャッタとして機能する。このため、各第2高速シャッタ112B1、112B2は、第2安全シャッタ110Bよりも高速に作動するシャッタで構成される。以下、必要に応じて、一方の第2高速シャッタ112B1を第1の第2高速シャッタ112B1、他方の第2高速シャッタ112B2を第2の第2高速シャッタ112B2と称して、両者を区別する。なお、各第2高速シャッタ112B1、112B2は、それぞれ偏光ビームスプリッタ118Cと第2出射口102A、102Bとのとの間の光路に配置されていればよく、その配置位置は特に限定されない。
【0071】
2つの第2集光レンズ122A、122Bは、それぞれ第2レーザ光生成部116で生成された第2レーザ光L2をZ方向において所定の位置(焦点)に集光させる。以下、必要に応じて、一方の第2集光レンズ122Aを第1の第2集光レンズ122A、他方の第2集光レンズ122Bを第2の第2集光レンズ122Bと称して、両者を区別する。
【0072】
図8は、第2集光レンズによる第2レーザ光の照射の概念図である。
【0073】
上記のように、本実施の形態では、第2レーザ光L2が矩形状のスポットを形成して中抜き加工を行う。スポットは、一対の第1レーザ光L1a、L1bで形成される2条の縁切り溝C1a、C1bの間隔Dに対応して形成される。すなわち、2条の縁切り溝C1a、C1bの内側を一度に中抜きできる幅で形成される。本実施の形態では、矩形の長辺が加工送り方向(X方向)と直交するように、スポットが形成される。また、矩形の長辺の長さが、2条の縁切り溝C1a、C1bの間隔Dに対応した長さとなるように、スポットが形成される。
【0074】
2つの第2集光レンズ122A、122Bは、第1集光レンズ120と共にウェーハWの加工送り方向(X方向)に沿って一列に並んで配置される。また、2つの第2集光レンズ122A、122Bは、第1集光レンズ120を挟んで配置される。具体的には、
図5において、図中左から右に向かって(X(+)方向)、第1の第2集光レンズ122A、第1集光レンズ120、第2の第2集光レンズ122Bの順で一列に並んで配置される。
【0075】
第1集光レンズ120を通過した一対の第1レーザ光L1a、L1bは、第1出射口101からテーブル20上のウェーハWに向けて鉛直下向きに照射される。また、第1の第2集光レンズ122Aを通過した第2レーザ光L2は、第1の第2出射口102Aからテーブル20上のウェーハWに向けて鉛直下向きに照射される。また、第2の第2集光レンズ122Bを通過した第2レーザ光L2は、第2の第2出射口102Bからテーブル20上のウェーハWに向けて鉛直下向きに照射される。
【0076】
本実施の形態において、第1集光レンズ120を介して、テーブル20上のウェーハWに一対の第1レーザ光L1a、L1bを照射し、2条の縁切り溝C1a、C1bを加工する構成は、第1加工部の一例である。また、第2集光レンズ122A、122Bを介して、テーブル20上のウェーハWに第2レーザ光L2を照射し、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を中抜き加工する構成は、2つの第2加工部の一例である。
【0077】
[レーザ加工装置の作用]
[基本動作]
図1に示すように、レーザ加工装置10は、多数のデバイスDvが形成された半導体のウェーハWに対し、ストリートStごとに所定の溝(配線層除去溝C)を加工して、ストリートStからLow-k膜を含む配線層を除去する。
【0078】
配線層除去溝Cは、ウェーハWをX方向(加工送り方向)に送って加工する。後述するように、本実施の形態では、1つのストリートStに対し、加工送りを複数回与えて、所要の配線層除去溝Cを加工する(マルチパス加工)。
【0079】
配線層除去溝Cは、Y方向の一端に位置するストリートStから順に加工する。1つのストリートStに対する加工が終了したら、ウェーハWをY方向に送り(インデックス送り)、次のストリートStを加工する。第1の方向(
図1においてX方向)に延びるすべてのストリートStの加工が終了したら、ウェーハWを90°回転させる。これにより、第2の方向(
図1においてY方向)に延びるストリートStが、加工送り方向に沿って配置される。同様の手順で、第2の方向に延びるすべてのストリートStに配線層除去溝Cを加工する。
【0080】
[配線層除去溝の加工動作の詳細]
上記のように、本実施の形態のレーザ加工装置10では、1つのストリートStに対し、加工送りを複数回与えて、所要の配線層除去溝Cを加工する。以下、一例として、1つのストリートStに対し、2回加工送りを与えて加工する場合、すなわち、一往復して加工する場合を例に説明する。
【0081】
図9は、配線層除去溝の加工の概念図である。
図9(A)は、往路(1回目の加工送り)での加工状態を示している。
図9(A)において、符号FFで示す矢印は、往路での加工の進行方向(加工方向)である。往路での加工の進行方向は、図中左から右に向かう方向である。ウェーハWには、図中右から左に向かう方向に送りが与えられる。
図9(B)は、復路(2回目の加工送り)での加工状態を示している。
図9(B)において、符号FBで示す矢印は、復路での加工の進行方向である。復路での加工の進行の方向は、往路での加工送りの方向と反対の方向であり、図中右から左に向かう方向である。ウェーハWは、図中左から右に向かう方向に送りが与えられる。
【0082】
図9(A)に示すように、往路(1回目の加工送り)では、第1出射口101から一対の第1レーザ光L1a、L1bを出射させて、ウェーハWに2条の縁切り溝C1a、C1bを加工しつつ、第1の第2出射口102Aから第2レーザ光L2を出射させて、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を中抜き加工する。すなわち、2つある第2出射口(第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102B)のうち加工の進行方向(加工方向)の下流側の位置する第1の第2出射口102Aから第2レーザ光L2を出射させて、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を中抜き加工する。
【0083】
一方、復路(2回目の加工送り)では、
図9(B)に示すように、2つの第2出射口(第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102B)の双方から第2レーザ光L2を出射させて、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を中抜き加工する。
【0084】
このように、複数回(本例では2回)に分けて中抜き加工することにより、加工品質を向上できる。また、2回目以降の加工送りでは、2つの第2出射口(第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102B)の双方から第2レーザ光L2を出射させて加工することにより、スループットを向上できる。したがって、本実施の形態の加工方法によれば、加工品質を維持しつつ効率よくウェーハWを加工処理できる。
【0085】
制御装置30は、往路と復路とで同じ強度の第2レーザ光L2がウェーハWに照射されるように、2つの第2出射口102A、102Bから出射させる第2レーザ光L2の強度を制御する。2つの第2出射口102A、102Bから出射させる第2レーザ光L2の強度は、第2レーザ光生成部116で調整される。したがって、制御装置30は、第2レーザ光生成部116を制御して、2つの第2出射口102A、102Bから出射させる第2レーザ光L2の強度を制御する。具体的には、往路(1回目の加工送り)では、第1の第2出射口102Aから第1の強度で第2レーザ光L2を出射させて中抜き加工する。また、復路(2回目の加工送り)では、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの双方から第1の強度で第2レーザ光L2を出射させて中抜き加工する。
【0086】
[加工処理の流れ(レーザ加工方法)]
図10は、本実施の形態のレーザ加工装置による加工処理の流れを示すフローチャートである。
【0087】
なお、前提として、テーブル20にウェーハWが保持されており、かつ、第1レーザ光源22A及び第2レーザ光源22Bからレーザ光LA、LBがレーザ加工ヘッド100に供給されているものとする。また、第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110B、並びに、第1高速シャッタ112A及び2つの第2高速シャッタ112B1、112B2は閉じられているものとする。
【0088】
まず、アライメントが行われる(ステップS1)。すなわち、加工位置を検出し、その位置合わせが行われる。アライメントは、顕微鏡50で撮影した画像に基づいて行われる。
【0089】
次に、第2レーザ光L2の光路(出射先)が設定される(ステップS2)。すなわち、往路(1回目の加工送り)での第2レーザ光L2の光路が設定される。上記のように、往路(1回目の加工送り)では、加工の進行方向の下流側に位置する第1の第2出射口102Aのみから第2レーザ光L2を出射させる。制御装置30は、第1の第2出射口102Aのみから第2レーザ光L2が出射されるように、光路切替部118を設定する。具体的には、回転駆動部118Bを制御して、1/2波長板118Aを第1ポジションにセットする。
【0090】
第2レーザ光L2の光路の設定が完了すると、第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110Bが開かれる(ステップS3)。これにより、レーザ加工ヘッド100に第1レーザ光源22A及び第2レーザ光源22Bからのレーザ光LA、LBが導入される。ただし、第1高速シャッタ112A及び2つの第2高速シャッタ112B1、112B2が閉じられているため、第1レーザ光L1a、L1b及び第2レーザ光L2は出射されない。
【0091】
第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110Bが開かれると、往路での加工送りが開始される(ステップS4)。これにより、ストリートStに沿ってウェーハWに加工送りが与えられる。なお、往路でのウェーハWの送り方向は、
図1において、X(-)方向である。
【0092】
次に、第1高速シャッタ112Aが開かれる(ステップS5)。これにより、第1出射口101から一対の第1レーザ光L1a、L1bが出射され、テーブル20上のウェーハWに照射される。これにより、ストリートStに沿って2条の縁切り溝C1a、C1bが加工される。加工の進行方向は、
図1において、X(+)方向である。2条の縁切り溝C1a、C1bは、所定の間隔Dで加工され、かつ、それぞれ所定の深さで加工される。
【0093】
次いで、第1の第2高速シャッタ112B1が開かれる(ステップS6)。これにより、第1の第2集光レンズ122Aを介して、第1の第2出射口102Aから第2レーザ光L2が出射される。上記のように、第1の第2出射口102Aは、加工の進行方向の下流側に位置する出射口である。第1の第2出射口102Aから出射された第2レーザ光L2は、加工済みの2条の縁切り溝C1a、C1bの間に照射される。これにより、加工済みの2条の縁切り溝C1a、C1bの間が中抜き加工される。
【0094】
この後、往路の加工が完了したか否かが判定される(ステップS7)。すなわち、往路における送り方向の終端まで加工されたか否かが判定される。往路の加工が完了したと判定されると、まず、第1高速シャッタ112Aが閉じられる(ステップS8)。これにより、第1レーザ光L1a、L1bの照射が停止される。また、これにより、縁切り加工が停止される。次いで、第1の第2高速シャッタ112B1が閉じられる(ステップS9)。これにより、第2レーザ光L2の照射が停止される。また、これにより、中抜き加工が停止される。この後、往路での加工送りが停止される(ステップS10)。これにより、ウェーハWの移動が停止する。
【0095】
以上の一連の工程で往路での加工処理が完了する。引き続き復路での加工が行われる。
【0096】
まず、第2レーザ光L2の光路(出射先)が設定される(ステップS11)。すなわち、復路(2回目の加工送り)での第2レーザ光L2の光路が設定される。上記のように、復路(2回目の加工送り)では、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの双方から第2レーザ光L2を出射させる。制御装置30は、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの双方から第2レーザ光L2が出射されるように、光路切替部118を設定する。具体的には、回転駆動部118Bを制御して、1/2波長板118Aを第2ポジションにセットする。これにより、第2レーザ光生成部116で生成される第2レーザ光L2が二分岐され、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの双方から第2レーザ光L2の出射が可能になる。
【0097】
第2レーザ光L2の光路(出射先)の設定が完了すると、復路での加工送りが開始される(ステップS12)。これにより、ストリートStに沿ってウェーハWに加工送りが与えられる。なお、復路でのウェーハWの送り方向は、
図1において、X(+)方向である。また、これにより、加工済みの2条の縁切り溝C1a、C1bの間が、2つの第2出射口102A、102Bの双方から出射される第2レーザ光L2によって中抜き加工される。加工の進行方向は、
図1において、X(-)方向である。
【0098】
この後、第1の第2高速シャッタ112B1が開かれる(ステップS13)。これにより、第1の第2集光レンズ122Aを介して第1の第2出射口102Aから第2レーザ光L2が出射される。第1の第2出射口102Aから出射された第2レーザ光L2は、加工済みの2条の縁切り溝C1a、C1bの間に照射される。これにより、加工済みの2条の縁切り溝C1a、C1bの間が更に中抜き加工される。
【0099】
次いで、第2の第2高速シャッタ112B2が開かれる(ステップS14)。これにより、第2の第2集光レンズ122Bを介して第2の第2出射口102Bから第2レーザ光L2が出射される。第2の第2出射口102Bから出射された第2レーザ光L2は、加工済みの2条の縁切り溝C1a、C1bの間に照射される。これにより、加工済みの2条の縁切り溝C1a、C1bの間が更に中抜き加工される。
【0100】
この後、復路での加工が完了したか否かが判定される(ステップS15)。すなわち、復路における送り方向の終端まで加工されたか否かが判定される。復路での加工が完了したと停止されると、まず、第1の第2高速シャッタ112B1が閉じられる(ステップS16)。これにより、第1の第2出射口102Aから第2レーザ光L2の出射が停止される。また、これにより、第1の第2出射口102Aから出射される第2レーザ光L2による中抜き加工が停止される。次いで、第2の第2高速シャッタ112B2が閉じられる(ステップS17)。これにより、第2の第2出射口102Bから第2レーザ光L2の出射が停止される。また、これにより、第2の第2出射口102Bから出射される第2レーザ光L2による中抜き加工が停止される。この後、復路での加工送りが終了される(ステップS18)。これにより、ウェーハWの移動が停止する。
【0101】
以上の一連の工程で復路での加工が完了する。また、これと同時に加工対象のストリートStへの配線層除去溝Cの加工が完了する。この後、次に加工するストリートStの有無が判定される(ステップS19)。
【0102】
次に加工するストリートStが存在する場合は、次のストリートStの加工が行われる。この場合、まず、次に加工するストリートStの位置に向けて、ウェーハWにY方向の送り(インデックス送り)が与えられる(ステップS20)。ウェーハWには、ストリートStの間隔(チップの間隔)に対応した送り量で送り(インデックス送り)が与えられる。次いで、第2レーザ光L2の光路(出射先)が設定される(ステップS21)。すなわち、往路での第2レーザ光L2の光路が設定される。この後、上記ステップS4からステップS19の処理が行われ、ストリートStに配線層除去溝Cが加工される。
【0103】
一方、次に加工するストリートStが存在しない場合、すなわち、すべてのストリートStに対する加工が完了した場合、第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110Bが閉じられる(ステップS22)。
【0104】
この後、テーブル20上からウェーハWが回収されて、当該ウェーハWに対する加工処理が完了する。
【0105】
このように、本実施の形態のレーザ加工装置10では、2回の加工送りを与えて、所要の配線層除去溝CをストリートStに加工する。そして、1回目の加工送り(往路)では、一対の第1レーザ光L1a、L1bで縁切り加工を行いつつ、加工の進行方向の下流側に位置する第2出射口から第2レーザ光L2を出射させて中抜き加工を行い、2回目の加工送り(復路)では、2つある第2出射口102A、102Bの双方から第2レーザ光L2を出射させて中抜き加工を行う。これにより、加工品質を維持しつつ効率よくウェーハWを加工処理できる。
【0106】
なお、上記例では、加工送りを2回与えて加工する場合を例に説明したが、3回以上加工送りを与えて加工する構成としてもよい。
【0107】
[変形例]
[第2レーザ光の強度の設定]
中抜き加工する際、加工送りごとに第2レーザ光L2の強度を変えてもよい。たとえば、一往復させて配線層除去溝Cを加工する場合において、往路(1回目の加工送り)では、第1の強度で第2レーザ光L2を第1の第2出射口102Aから出射させる。一方、復路(2回目の加工送り)では、第1の強度とは異なる第2の強度で第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの双方から第2レーザ光L2を出射させて中抜き加工する。これにより、たとえば、加工対象とする層(除去する層)、深さ等に応じて、照射する第2レーザ光L2の強度を設定できる。
【0108】
同様に、2つの第2出射口102A、102Bから第2レーザ光L2を出射させる場合(2回目以降の加工送り)において、2つの第2出射口102A、102Bから異なる強度の第2レーザ光L2を出射させてもよい。この場合、光路切替部118で第2レーザ光L2の分岐量を調整する。分岐量は、1/2波長板118Aの回転で調整する。
【0109】
[第2の実施の形態]
上記のように、ストリートに溝を加工して、ストリートからLow-k膜を含む配線層(積層体)を除去する場合において、縁切り加工と中抜き加工とを分けて溝を加工することにより、膜剥離の発生を抑制できる。本加工方法は、縁切り加工によって加工される2条の溝の間を中抜き加工によって中抜きする構成である。よって、基本的には、中抜き加工よりも先に縁切り加工を行う必要がある。しかし、膜剥離を生じさせなければ、縁切り加工に先行して中抜き加工を行うことも可能である。そこで、本実施の形態では、所定の条件下で縁切り加工に先行して中抜き加工を実施する。具体的には、膜剥離が発生しない強度でレーザ光を照射し、縁切り加工に先行して中抜き加工を実施する。なお、本実施の形態では、通常の中抜き加工、すなわち、加工済みの2条の縁切り溝C1a、C1bの間を中抜きする加工も行われる。したがって、縁切り加工の前後で中抜き加工が行われる。
【0110】
なお、装置の基本構成は、上記第1の実施の形態のレーザ加工装置10と同じであり、加工制御(第1レーザ光及び第2レーザ光の照射制御)の態様が異なる。したがって、ここでは、加工制御の態様についてのみ説明する。
【0111】
[基本動作]
ここでは、1回の加工送りでストリートStに所要の配線層除去溝C(所定の幅及び深さを有する溝)を加工する場合(いわゆる1パス加工)を例に説明する。
【0112】
この場合、加工送りを1回与えるごとに、インデックス送りが与えられる。したがって、往路と復路とで異なるストリートStに溝(配線層除去溝C)が加工される。
【0113】
[第2レーザ光の照射制御]
上記のように、本実施の形態では、縁切り加工の前後で中抜き加工を行う。したがって、2つの第2出射口102A、102Bから第2レーザ光L2を出射させて加工する。以下、必要に応じて、第1の第2出射口102Aから出射させる第2レーザ光を第1の第2レーザ光L2A、第2の第2出射口102Bから出射させる第2レーザ光を第2の第2レーザ光L2Bと称して、両者を区別する(
図11参照)。
【0114】
第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bから出射させる第2レーザ光L2A、L2Bの強度は、第2レーザ光生成部116及び光路切替部118で制御する。すなわち、全体の強度を第2レーザ光生成部116で制御し、分岐量を光路切替部118で制御する。全体の強度は、たとえば、第2レーザ光生成部116に備えられる音響光学素子で制御する。分岐量は、1/2波長板118Aの回転で制御する(
図7参照)。回転駆動部118Bは、たとえば、2つの回転ポジション(回転ポジションA及び回転ポジションB)の間で1/2波長板118Aを回転させる。1/2波長板118Aを回転ポジションAにセットすると、偏光ビームスプリッタ118Cにおいて、入射光がA1:B1の割合で透過光と反射光とに分岐される(A1>B1)。一方、1/2波長板118Aを回転ポジションBにセットすると、偏光ビームスプリッタ118Cにおいて、入射光がA2:B2の割合で透過光と反射光とに分岐される(A2<B2)。
【0115】
1/2波長板118Aを回転ポジションAにセットすると、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの双方から第2レーザ光L2A、L2Bが出射され、かつ、第1の第2出射口102Aの方が相対的に強い強度で第2レーザ光L2Aが出射される(第1の第2レーザ光の強度>第2の第2レーザ光の強度)。この時の第2の第2レーザ光の強度は、膜剥離が発生しない程度の強度である。すなわち、弱い方(分岐量が少ない方)の強度(この場合、第2の第2レーザ光の強度)は、膜剥離が発生する強度よりも低い強度に設定される。
【0116】
一方、1/2波長板118Aを回転ポジションBにセットすると、第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102Bの双方から第2レーザ光L2A、L2Bが出射され、かつ、第2の第2出射口102Bの方が相対的に強い強度で第2レーザ光L2Bが出射される(第1の第2レーザ光の強度<第2の第2レーザ光の強度)。この時の第1の第2レーザ光L2Aの強度は、膜剥離が発生しない程度の強度である。すなわち、弱い方(分岐量が少ない方)の強度(この場合、第2の第2レーザ光の強度)は、膜剥離が発生する強度よりも低い強度に設定される。
【0117】
1/2波長板118Aの回転ポジションは、加工の進行方向に応じて切り替えられる。すなわち、加工の進行方向の下流側に位置する第2出射口の方が、上流側に位置する第2出射口よりも強度の強い第2レーザ光を出射するように設定される。たとえば、加工の進行方向が、
図7において、X(+)方向(
図7において左から右に向かう方向)の場合、1/2波長板118Aを回転ポジションAにセットする。これにより、下流側の第1の第2出射口102Aから第1強度で第1の第2レーザ光L2Aが出射され、かつ、上流側の第2の第2出射口102Bから第1強度よりも弱い第2強度で第2の第2レーザ光L2Bが出射される。また、たとえば、加工の進行方向が、
図7において、X(-)方向(
図7において右から左に向かう方向)の場合、1/2波長板118Aを回転ポジションBにセットする。これにより、下流側の第2の第2出射口102Bから第1強度で第2の第2レーザ光L2Bが出射され、かつ、上流側の第1の第2出射口102Aから第1強度よりも弱い第2強度で第1の第2レーザ光L2Aが出射される。
【0118】
このように、加工の進行方向に対し下流側に位置する第2出射口から第1強度で第2レーザ光を出射させるとともに、上流側に位置する第2出射口から第2強度の第2レーザ光を出射させて、配線層除去溝Cを加工する。上流側に位置する第2出射口から出射させる第2レーザ光は、縁切り加工に先んじて中抜き加工を行うレーザ光であり、膜剥離を生じさせない強度で照射される。
【0119】
[配線層除去溝の加工動作(レーザ加工方法)の詳細]
上記のように、本実施の形態のレーザ加工装置10では、1つのストリートStに対し、加工送りを1回与えて、所要の配線層除去溝Cを加工する(いわゆる1パス加工)。
【0120】
図11は、配線層除去溝の加工の概念図である。
図11は、X(+)方向(
図11において左から右に向かう方向)に加工する場合の例を示している。この場合、ウェーハWは、図中右から左に向かって送りが与えられる(X(+)方向と反対方向に送りが与えられる。)。
【0121】
図11に示すように、第1出射口101から一対の第1レーザ光L1a、L1bを出射させて縁切り加工しつつ、2つの第2出射口(第1の第2出射口102A及び第2の第2出射口102B)の双方から第2レーザ光L2A、L2Bを出射させて中抜き加工する。
【0122】
ここで、加工の進行方向(
図11のX(+)方向)に対し、第1出射口101の下流側に位置する出射口(第1の第2出射口102A)から出射される第2レーザ光(第1の第2レーザ光L2A)は、加工済みの2条の縁切り溝C1a、C1bの間を加工する。一方、加工の進行方向に対し、第1出射口101の上流側に位置する出射口(第2の第2出射口102B)から出射される第2レーザ光(第2の第2レーザ光L2B)は、2条の縁切り溝C1a、C1bが加工される前に、その間の領域を先行して加工する。その際、膜剥離を発生させない強度で加工する。
【0123】
このように、縁切り加工に先行して中抜き加工を実施することにより、加工品質を維持しつつ効率よくウェーハWを加工処理できる。
【0124】
[加工処理の流れ(レーザ加工方法)]
図12は、本実施の形態のレーザ加工装置による加工処理の流れを示すフローチャートである。
【0125】
なお、前提として、テーブル20にウェーハWが保持されており、かつ、第1レーザ光源22A及び第2レーザ光源22Bからレーザ光LA、LBがレーザ加工ヘッド100に供給されているものとする。また、第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110B、並びに、第1高速シャッタ112A及び2つの第2高速シャッタ112B1、112B2は閉じられているものとする。
【0126】
まず、アライメントが行われる(ステップS31)。すなわち、加工位置を検出し、その位置合わせが行われる。アライメントは、顕微鏡50で撮影した画像に基づいて行われる。
【0127】
次に、第2レーザ光L2A、L2Bの光路(分岐量)が設定される(ステップS32)。ここでは、加工の進行方向に対し下流側に位置する第2出射口から第1強度で出射され、かつ、上流側に位置する第2出射口から第2強度の第2レーザ光を出射されるように光路が設定される。上記のように、第2強度は、第1強度よりも弱い強度であり、かつ、膜剥離を生じさせない強度である。
【0128】
たとえば、
図7において、加工の進行方向がX(+)方向の場合、第1の第2出射口102Aから第1強度で第1の第2レーザ光L2Aが出射され、かつ、第2の第2出射口102Bから第2強度で第2の第2レーザ光L2Bが出射されるように、第2レーザ光L2A、L2Bの光路が設定される。また、たとえば、加工の進行方向がX(-)方向の場合、第2の第2出射口102Bから第1強度で第2の第2レーザ光L2Bが出射され、かつ、第1の第2出射口102Aから第2強度で第1の第2レーザ光L2Aが出射されように、第2レーザ光L2A、L2Bの光路が設定される。
【0129】
第2レーザ光L2の光路(分岐量)の設定が完了すると、第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110Bが開かれる(ステップS33)。これにより、レーザ加工ヘッド100に第1レーザ光源22A及び第2レーザ光源22Bからのレーザ光LA、LBが導入される。ただし、第1高速シャッタ112A及び2つの第2高速シャッタ112B1、112B2が閉じられているため、第1レーザ光L1a、L1b及び第2レーザ光L2は出射されない。
【0130】
第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110Bが開かれると、加工送りが開始される(ステップS34)。これにより、ストリートStに沿ってウェーハWに加工送りが与えられる。
【0131】
加工送りの開始後、まず、加工の進行方向の上流側に位置する第2高速シャッタが開かれる(ステップS35)。たとえば、
図7において、加工の進行方向がX(+)方向の場合、第2の第2高速シャッタ112B2が開かれる。これにより、加工の進行方向の上流側に位置する第2の第2出射口から第2レーザ光L2が出射される。たとえば、
図7において、加工の進行方向がX(+)方向の場合、第2の第2出射口102Bから第2レーザ光L2が出射される。
【0132】
次いで、第1高速シャッタ112Aが開かれる(ステップS36)。これにより、第1出射口101から一対の第1レーザ光L1a、L1bが出射される。
【0133】
次いで、加工の進行方向の下流側に位置する第2高速シャッタが開かれる(ステップS37)。たとえば、
図7において、加工の進行方向がX(+)方向の場合、第1の第2高速シャッタ112B1が開かれる。これにより、加工の進行方向の下流側に位置する第2の第2出射口から第2レーザ光L2が出射される。たとえば、
図7において、加工の進行方向がX(+)方向の場合、第1の第2出射口102Aから第2レーザ光L2が出射される。
【0134】
各出射口から出射されたレーザ光は、それぞれテーブル20上のウェーハWの所定の位置(ストリートSt上の所定の位置)に照射される。また、これにより、ストリートStに沿ってウェーハWに配線層除去溝Cが加工される。
【0135】
ここで、配線層除去溝Cは、ストリートStに沿って2条の縁切り溝C1a、C1bを加工し、かつ、その2条の縁切り溝C1a、C1bの間を中抜き加工することにより、ストリートStに沿って所定の幅、所定の深さで加工される。2条の縁切り溝C1a、C1bは、第1出射口101から出射される一対の第1レーザ光L1a、L1bで加工される。そして、2条の縁切り溝C1a、C1bの間は、2つの第2出射口102A、102Bから出射される第2レーザ光L2A、L2Bで加工される。2つの第2出射口102A、102Bは、第1出射口101を挟んで加工送り方向の前後に配置される。したがって、一方の第2出射口(加工の進行方向の上流側に位置する第2出射口)から出射される第2レーザ光は、2条の縁切り溝C1a、C1bに先んじて、その間を中抜き加工する。しかし、上記のように、加工の進行方向の上流側に位置する第2出射口からは、所定の強度(第2強度)に調整された第2レーザ光が出射されるため、膜剥離の発生を抑制できる。
【0136】
この後、ストリートStの終端まで加工が完了したか否かが判定される(ステップS38)。ストリートStの終端まで加工が完了したと判定されると、まず、加工の進行方向の上流側に位置する第2高速シャッタが閉じられる(ステップS39)。たとえば、
図7において、加工の進行方向がX(+)方向の場合、第2の第2高速シャッタ112B2が閉じられる。これにより、加工の進行方向の上流側に位置する第2の第2出射口から第2レーザ光L2の出射が停止される。また、これにより、先行する中抜き加工が終了される。
【0137】
次いで、第1高速シャッタ112Aが閉じられる(ステップS40)。これにより、一対の第1レーザ光L1a、L1bの出射が停止される。また、これにより、縁切り加工が終了される。
【0138】
次いで、加工の進行方向の下流側に位置する第2高速シャッタが開かれる(ステップS41)。たとえば、
図7において、加工の進行方向がX(+)方向の場合、第1の第2高速シャッタ112B1が開かれる。これにより、加工の進行方向の下流側に位置する第2の第2出射口から第2レーザ光L2の出射が停止される。また、これにより、追走する中抜き加工が終了される。
【0139】
この後、加工送りが終了される(ステップS42)。これにより、ウェーハWの移動が停止する。
【0140】
以上の一連の工程で1つのストリートStに対する配線層除去溝Cの加工が完了する。この後、次に加工するストリートStの有無が判定される(ステップS43)。
【0141】
次に加工するストリートStが存在する場合は、次のストリートStの加工が行われる。この場合、まず、次に加工するストリートStの位置に向けて、ウェーハWにY方向の送り(インデックス送り)が与えられる(ステップS44)。ウェーハWには、ストリートStの間隔(チップの間隔)に対応した送り量で送り(インデックス送り)が与えられる。次いで、第2レーザ光L2の光路(分岐量)が設定される(ステップS45)。すなわち、加工の進行方向に対し下流側に位置する第2出射口から第1強度で出射され、かつ、上流側に位置する第2出射口から第2強度の第2レーザ光を出射されるように光路が設定される。この後、上記ステップS34からステップS43の処理が行われ、ストリートStに配線層除去溝Cが加工される。
【0142】
一方、次に加工するストリートStが存在しない場合、すなわち、すべてのストリートStに対する加工が完了した場合、第1安全シャッタ110A及び第2安全シャッタ110Bが閉じられる(ステップS46)。
【0143】
この後、テーブル20上からウェーハWが回収されて、当該ウェーハWに対する加工処理が完了する。
【0144】
このように、本実施の形態のレーザ加工装置では、縁切り加工に先行して中抜き加工を実施することにより、加工品質を維持しつつ効率よくウェーハWを加工処理できる。
【0145】
[変形例]
[マルチパス加工]
上記第1の実施の形態と同様に、複数回の加工送りを与えて、1つの配線層除去溝Cを加工する構成としてもよい(いわゆるマルチパス加工)。この場合、2回目以降の加工送りでは、たとえば、2つの第2出射口102A、102Bから同じ強度で第2レーザ光L2A、L2Bを出射させて、中抜き加工を行う。また、必要に応じて、各第2出射口102A、102Bから異なる強度で第2レーザ光L2A、L2Bを出射させて、中抜き加工を行う構成としてもよい。
【0146】
[第2レーザ光の強度の調整]
上記実施の形態では、第2レーザ光生成部116で生成される第2レーザ光の分岐量を調整して、各第2出射口102A、102Bから出射させる第2レーザ光L2A、L2Bの強度を調整する構成としている。そして、その分岐量を調整する手段として、1/2波長板118A及び偏光ビームスプリッタ118Cを使用している。第2レーザ光の分岐量を調整する手段は、これに限定されるものではない。
【0147】
図13は、第2レーザ光の分岐量を調整する手段の他の一例を示す図である。
【0148】
図13は、分岐比の異なる複数のビームスプリッタを切り替えて使用することにより、第2レーザ光L2A、L2Bの分岐量を調整する場合の例を示している。
【0149】
図13に示す例の光路切替部118は、互いに分岐比の異なる第1ビームスプリッタ118E1及び第2ビームスプリッタ118E2を有する。第1ビームスプリッタ118E1及び第2ビームスプリッタ118E2は、ターレット118Fに保持される。ターレット118Fは、ターレット駆動部118Gに駆動されて回転し、使用するビームスプリッタを切り替える。
【0150】
第1ビームスプリッタ118E1は、入射光を第1の比率で透過光と反射光とに分岐する。第1ビームスプリッタ118E1を光路上にセットすると、第2レーザ光生成部116で生成された第2レーザ光が、第1の比率で透過光と反射光とに分岐される。この結果、第1の第2出射口102Aから第1強度で第1の第2レーザ光L2Aが出射され、かつ、第2の第2出射口102Bから第2強度で第2の第2レーザ光L2Bが出射される。
【0151】
第2ビームスプリッタ118E2は、入射光を第2の比率で透過光と反射光とに分岐する。第2ビームスプリッタ118E2を光路上にセットすると、第2レーザ光生成部116で生成された第2レーザ光が、第2の比率で透過光と反射光とに分岐される。この結果、第1の第2出射口102Aから第2強度で第1の第2レーザ光L2Aが出射され、かつ、第2の第2出射口102Bから第1強度で第2の第2レーザ光L2Bが出射される。
【0152】
このように、分岐比の異なる複数のビームスプリッタを切り替えて使用することにより、第2レーザ光の分岐量を調整する構成とすることもできる。
【0153】
図14は、第2レーザ光の強度を調整する方法の他の一例を示す図である。
【0154】
図14は、個別にレーザ光源を設けて、各第2出射口102A、102Bから出射させる第2レーザ光L2A、L2Bの強度を調整する場合の例を示している。
【0155】
図14に示す例のレーザ加工装置10は、第2レーザ光L2A、L2Bの光源として、第1の第2レーザ光源22B1及び第2の第2レーザ光源22B2を有する。
【0156】
第1の第2レーザ光源22B1は、第1の第2出射口102Aから出射させる第1の第2レーザ光L2Aのレーザ光源である。第1の第2レーザ光源22B1から出射されたレーザ光LB1は、第1の第2安全シャッタ110B1、第1の第2高速シャッタ112B1、第1の第2レーザ光生成部116A、及び、第1の第2集光レンズ122Aを介して第1の第2出射口102Aから出射される。
【0157】
第1の第2安全シャッタ110B1及び第1の第2高速シャッタ112B1の開閉を制御することで、第1の第2出射口102Aからの第1の第2レーザ光L2Aの出射が制御される。また、第1の第2レーザ光生成部116Aを制御することにより、第1の第2出射口102Aから出射させる第1の第2レーザ光L2Aの強度が制御される。
【0158】
第2の第2レーザ光源22B2は、第2の第2出射口102Bから出射させる第2の第2レーザ光L2Bのレーザ光源である。第2の第2レーザ光源22B2から出射されたレーザ光LB2は、第2の第2安全シャッタ110B2、第2の第2高速シャッタ112B2、第2の第2レーザ光生成部116B、及び、第2の第2集光レンズ122Bを介して第2の第2出射口102Bから出射される。
【0159】
第2の第2安全シャッタ110B2及び第2の第2高速シャッタ112B2の開閉を制御することで、第2の第2出射口102Bからの第2の第2レーザ光L2Bの出射が制御される。また、第2の第2レーザ光生成部116Bを制御することにより、第2の第2出射口102Bから出射させる第2の第2レーザ光L2Bの強度が制御される。
【0160】
このように、個別にレーザ光源を設けて、各第2出射口102A、102Bから出射させる第2レーザ光L2A、L2Bの強度を調整する構成とすることもできる。本構成によれば、各第2出射口102A、102Bから出射させる第2レーザ光L2A、L2Bのオン、オフも個別に制御できる。
【0161】
[その他の実施の形態]
[縁切り溝の間隔の調整]
ストリートStに沿って加工する2条の縁切り溝C1a、C1bについては、その間隔を調整できることが好ましい。縁切り溝C1a、C1bの間隔は、第1集光レンズ120から出射させる一対の第1レーザ光L1a、L1bのY方向の間隔(加工送り方向と直交する方向の間隔)を変えることで調整できる。第1集光レンズ120から出射させる一対の第1レーザ光L1a、L1bのY方向の間隔は、たとえば、その出射位置を第1集光レンズ120の光軸周りに回転させることで調整できる。また、出射位置は、たとえば、第1レーザ光生成部114において、回折光学素子をレーザ光LAの光軸周りに回転させることで、第1集光レンズ120の光軸周りに回転させることができる。
【0162】
中抜き加工についても同様であり、第2レーザ光生成部116において、回折光学素子を光軸周りに回転させることで、その加工幅を調整できる。
【0163】
[中抜き加工]
上記実施の形態では、1つの集光レンズ(第2集光レンズ122A、122B)から1つのレーザ光(第2レーザ光L2、L2A、L2B)を出射させて、中抜き加工を行う構成としているが、1つの集光レンズから複数のレーザ光を出射させて、中抜き加工を行う構成としてもよい。この場合、中抜き加工を行うレーザ光(第2レーザ光L2、L2A、L2B)が加工送り方向に沿って複数本並んで出力される(加工送り方向に沿って複数のスポットが形成される。)。また、この場合、第2レーザ光生成部116において、複数の第2レーザ光L2を生成する。複数の第2レーザ光L2は、第1レーザ光生成部114と同様に、回折光学素子等を用いて生成することができる。この場合、複数の第2レーザ光L2の出力を同じ値に設定してもよいし、異なる値に設定してもよい。たとえば、加工送りの方向に対し、上流側から下流側に向かって段階的に出力が大きくなるように設定してもよい。
【0164】
また、上記実施の形態では、スポットの形状が矩形状のレーザ光(第2レーザ光)で中抜き加工を行う構成としているが、中抜き加工を行う際のスポットの形状は、これに限定されるものではない。たとえば、スポットの形状が直線状、円形状、楕円形状等のレーザ光で中抜き加工を行うようにしてもよい。
【0165】
[テーブルとレーザ加工ヘッドとの間の相対移動の構成]
上記実施の形態では、テーブル20がX方向及びY方向に移動し、かつ、θ軸周りに回転し、レーザ加工ヘッド100がZ方向に移動する構成とされているが、テーブル20とレーザ加工ヘッド100との間の移動の関係は、これに限定されるものではない。両者の間で相対的に移動が行われる構成であればよい。たとえば、レーザ加工ヘッド100を固定とし、テーブル20が、X、Y、Zの3方向に移動、かつ、θ軸周りに回転する構成としてもよい。あるいは、テーブル20が、X方向に移動、かつ、θ軸周りに回転する一方、レーザ加工ヘッド100が、Y方向及びZ方向に移動する構成としてもよい。また、テーブル20が一定位置でθ軸周りに回転し、レーザ加工ヘッド100が、X、Y、Zの3方向に移動する構成としてもよい。
【0166】
[レーザ加工ユニット]
上記実施の形態では、縁切り加工を行う加工部(第1加工部)と、中抜き加工を行う2つの加工部(第2加工部)とを一体化した構成(1つのレーザ加工ヘッド100に搭載した構成)で説明したが、縁切り加工を行う加工部(第1加工部)、及び、中抜き加工を行う2つの加工部(第2加工部)を別個独立した構成としてもよい。たとえば、縁切り加工を行う加工部(第1加工部)と、中抜き加工を行う2つの加工部(第2加工部)とを分け、個別にZ方向等に移動できる構成としてもよい。
【0167】
[その他]
上記実施の形態では、層間絶縁膜にLow-k膜を使用した半導体のウェーハに対し、ダイシング前にストリートからLow-k膜を含む配線層を除去する装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。レーザ加工ヘッドからテーブル上のウェーハにレーザ光を照射しながら、テーブルとレーザ加工ヘッドとを加工送り方向に相対移動させて、ウェーハに溝を加工する装置全般に適用できる。
【符号の説明】
【0168】
10…レーザ加工装置、20…テーブル、22A…第1レーザ光源、22B…第2レーザ光源、22B1…第1の第2レーザ光源、22B2…第2の第2レーザ光源、24…顕微鏡、26…テーブル駆動部、28…ヘッド駆動部、30…制御装置、30A…プロセッサ、30B…主記憶装置、30C…補助記憶装置、30D…入力装置、30E…出力装置、100…レーザ加工ヘッド、101…第1出射口、102A…第2出射口(第1の第2出射口)、102B…第2出射口(第2の第2出射口)、110A…第1安全シャッタ、110B…第2安全シャッタ、110B1…第1の第2安全シャッタ、110B2…第2の第2安全シャッタ、112A…第1高速シャッタ、112B1…第2高速シャッタ(第1の第2高速シャッタ)、112B2…第2高速シャッタ(第2の第2高速シャッタ)、114…第1レーザ光生成部、116…第2レーザ光生成部、116A…第1の第2レーザ光生成部、116B…第2の第2レーザ光生成部、118…光路切替部、118A…2波長板、118B…回転駆動部、118C…偏光ビームスプリッタ、118D…ミラー、118E1…第1ビームスプリッタ、118E2…第2ビームスプリッタ、118F…ターレット、118G…ターレット駆動部、120…第1集光レンズ、122A…第2集光レンズ(第1の第2集光レンズ)、122B…第2集光レンズ(第2の第2集光レンズ)、L1a…レーザ光(第1レーザ光)、L1b…レーザ光(第1レーザ光)、L2…レーザ光(第2レーザ光)、L2A…第2レーザ光(第1の第2レーザ光)、L2B…第2レーザ光(第2の第2レーザ光)、LA…第1レーザ光源からのレーザ光、LB…第2レーザ光源からのレーザ光、LB1…第1の第2レーザ光源からのレーザ光、LB2…第2の第2レーザ光源からのレーザ光、W…ウェーハ、St…ストリート、Dv…デバイス、C…溝(配線層除去溝)、C1a…溝(縁切り溝)、C1b…溝(縁切り溝)