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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145625
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ワーク加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241004BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058062
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】林 博和
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168CA06
4E168CB07
4E168CB19
4E168CB23
4E168CB24
4E168DA38
4E168DA43
4E168DA60
4E168EA05
4E168EA06
4E168EA20
4E168HA01
4E168JA13
5F063AA02
5F063AA07
5F063BA07
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB12
5F063CB16
5F063CC23
5F063CC38
5F063CC39
5F063DD26
5F063DD31
5F063DD32
5F063DE02
5F063DE07
5F063DE12
5F063DE33
5F063FF01
(57)【要約】
【課題】ワークを精度よく加工できるワーク加工装置を提供する。
【解決手段】ワーク加工装置は、ワークを保持するテーブルと、X方向に配列される第1加工部及び第2加工部を有し、ワークに設定された加工予定線に沿って相対的にX方向に送られるテーブルに対し、第1加工部から一対の第1レーザ光をZ方向に照射して、2条の溝を加工予定線に沿って加工し、かつ、第1加工部で加工される2条の溝の間に第2加工部から第2レーザ光をZ方向に照射して、2条の溝の間を加工する加工ユニットと、テーブル及び加工ユニットをX方向及びY方向に相対移動させて、X方向及びY方向の送りを与える送り駆動部と、加工予定線に対する第1加工部及び第2加工部の配列の傾きを補正する補正部と、補正部による傾きの補正を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するテーブルと、
X方向に沿って配列される第1加工部及び第2加工部を有し、前記ワークに設定された加工予定線に沿って相対的にX方向に送られる前記テーブルに対し、前記第1加工部から一対の第1レーザ光を照射して、2条の溝を前記加工予定線に沿って加工し、かつ、前記第1加工部で加工される2条の前記溝の間に前記第2加工部から第2レーザ光を照射して、2条の前記溝の間を加工する加工ユニットと、
前記テーブル及び前記加工ユニットをX方向及びX方向と直交するY方向に相対移動させて、X方向及びY方向の送りを与える送り駆動部と、
前記加工予定線に対する前記第1加工部及び前記第2加工部の配列の傾きを補正する補正部と、
前記補正部による前記傾きの補正を制御する制御部と、
を備えたワーク加工装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記送り駆動部によるY方向の送りで生じる前記傾きを補正し、
前記制御部は、前記テーブルと前記加工ユニットとの間のY方向の相対位置に基づいて、前記補正部による前記傾きの補正を制御する、
請求項1に記載のワーク加工装置。
【請求項3】
前記相対位置に応じた前記傾きの補正情報を記憶した記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記補正情報を参照して、前記補正部による前記傾きの補正を制御する、
請求項2に記載のワーク加工装置。
【請求項4】
前記加工ユニットは、複数の前記第2加工部を有し、前記第1加工部を挟んでX方向の前後に前記第2加工部が配置される、
請求項3に記載のワーク加工装置。
【請求項5】
前記送り駆動部は、Y方向に移動するY軸ステージと、前記Y軸ステージ上をX方向に移動するX軸ステージと、を備え、前記テーブルが、前記X軸ステージに搭載され、
前記補正部は、前記第1加工部及び前記第2加工部をY方向に相対移動させて、前記傾きを補正する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のワーク加工装置。
【請求項6】
前記送り駆動部は、Y方向に移動するY軸ステージと、前記Y軸ステージ上をX方向に移動するX軸ステージと、を備え、前記テーブルが、前記X軸ステージに搭載され、
前記補正部は、前記第1加工部及び前記第2加工部をXY平面に直交する軸周りに一体的に回転させて、前記傾きを補正する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のワーク加工装置。
【請求項7】
前記送り駆動部は、X方向に移動するX軸ステージと、前記X軸ステージ上をY方向に移動するY軸ステージと、を備え、前記テーブルが、前記Y軸ステージに搭載され、
前記補正部は、前記テーブルを軸周りに回転させて、前記傾きを補正する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のワーク加工装置。
【請求項8】
前記送り駆動部は、独立してX方向に移動するX軸ステージと、独立してY方向に移動するY軸ステージと、を備え、前記テーブルが、前記X軸ステージに搭載され、前記加工ユニットが、前記Y軸ステージに搭載され、
前記補正部は、前記第1加工部及び前記第2加工部をY方向に相対移動させて、前記傾きを補正する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のワーク加工装置。
【請求項9】
前記送り駆動部は、独立してX方向に移動するX軸ステージと、独立してY方向に移動するY軸ステージと、を備え、前記テーブルが、前記X軸ステージに搭載され、前記加工ユニットが、前記Y軸ステージに搭載され、
前記補正部は、前記第1加工部及び前記第2加工部をXY平面に直交する軸周りに一体的に回転させて、前記傾きを補正する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のワーク加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工装置に係り、特に、ワークに2条の溝を加工し、更に、その2条の溝の間を加工するワーク加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
層間絶縁膜にLow-k(低誘電率)膜を使用した半導体のウェーハは、通常のブレードダイサを使用してチップ化すると、膜剥離(デラミネーション)が発生するという問題がある。
【0003】
特許文献1には、Low-k膜を有するウェーハの加工方法として、ストリートに沿って2条の溝をレーザ光で加工し、その2条の溝の間をブレードで切削することにより、膜剥離を抑制する方法が提案されている。また、特許文献2には、ブレードに代えて、レーザ光で2条の溝の間を切削する方法が提案されている。
【0004】
一方、特許文献3には、ストリートに沿ってレーザ光で2条の溝を加工し、更に、その2条の溝の間をレーザ光で中抜き加工して、ストリートからLow-k膜を含む積層体を除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-142398号公報
【特許文献2】特開2009-182019号公報
【特許文献3】特開2021-192922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、レーザ光で2条の溝を加工し、更に、その2条の溝の間をレーザ光で加工する装置では、2つの加工部(2条の溝を加工する加工部及び2条の溝の間を加工する加工部)が、ストリートに沿って一列に並んで配置される。これにより、一回の加工送りで2つの加工を同時に実行できる。
【0007】
しかしながら、上記構成の装置では、2つの加工部がストリートに沿って正しく配列されていないと、加工位置にズレが生じ、2条の溝の間を正しく加工できなくなる、あるいは、ストリートに沿って正しく加工できなくなる、という問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ワークを精度よく加工できるワーク加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の態様は、ワークを保持するテーブルと、X方向に沿って配列される第1加工部及び第2加工部を有し、ワークに設定された加工予定線に沿って相対的にX方向に送られるテーブルに対し、第1加工部から一対の第1レーザ光を照射して、2条の溝を加工予定線に沿って加工し、かつ、第1加工部で加工される2条の溝の間に第2加工部から第2レーザ光を照射して、2条の溝の間を加工する加工ユニットと、テーブル及び加工ユニットをX方向及びX方向と直交するY方向に相対移動させて、X方向及びY方向の送りを与える送り駆動部と、加工予定線に対する第1加工部及び第2加工部の配列の傾きを補正する補正部と、補正部による傾きの補正を制御する制御部と、を備えたワーク加工装置である。
【0010】
第2の態様は、第1の態様のワーク加工装置において、補正部は、送り駆動部によるY方向の送りで生じる傾きを補正し、制御部は、テーブルと加工ユニットとの間のY方向の相対位置に基づいて、補正部による傾きの補正を制御する、ワーク加工装置である。
【0011】
第3の態様は、第2の態様のワーク加工装置において、相対位置に応じた傾きの補正情報を記憶した記憶部を更に備え、制御部は、補正情報を参照して、補正部による傾きの補正を制御する、ワーク加工装置である。
【0012】
第4の態様は、第3の態様のワーク加工装置において、加工ユニットは、複数の第2加工部を有し、第1加工部を挟んでX方向の前後に第2加工部が配置される、ワーク加工装置である。
【0013】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1の態様のワーク加工装置において、送り駆動部は、Y方向に移動するY軸ステージと、Y軸ステージ上をX方向に移動するX軸ステージと、を備え、テーブルが、X軸ステージに搭載され、補正部は、第1加工部及び第2加工部をY方向に相対移動させて、傾きを補正する、ワーク加工装置である。
【0014】
第6の態様は、第1から第4のいずれか1の態様のワーク加工装置において、送り駆動部は、Y方向に移動するY軸ステージと、Y軸ステージ上をX方向に移動するX軸ステージと、を備え、テーブルが、X軸ステージに搭載され、補正部は、第1加工部及び第2加工部をXY平面に直交する軸周りに一体的に回転させて、傾きを補正する、ワーク加工装置である。
【0015】
第7の態様は、第1から第4のいずれか1の態様のワーク加工装置において、送り駆動部は、X方向に移動するX軸ステージと、X軸ステージ上をY方向に移動するY軸ステージと、を備え、テーブルが、Y軸ステージに搭載され、補正部は、テーブルを軸周りに回転させて、傾きを補正する、ワーク加工装置である。
【0016】
第8の態様は、第1から第4のいずれか1の態様のワーク加工装置において、送り駆動部は、独立してX方向に移動するX軸ステージと、独立してY方向に移動するY軸ステージと、を備え、テーブルが、X軸ステージに搭載され、加工ユニットが、Y軸ステージに搭載され、補正部は、第1加工部及び第2加工部をY方向に相対移動させて、傾きを補正する、ワーク加工装置である。
【0017】
第9の態様は、第1から第4のいずれか1の態様のワーク加工装置において、送り駆動部は、独立してX方向に移動するX軸ステージと、独立してY方向に移動するY軸ステージと、を備え、テーブルが、X軸ステージに搭載され、加工ユニットが、Y軸ステージに搭載され、補正部は、第1加工部及び第2加工部をXY平面に直交する軸周りに一体的に回転させて、傾きを補正する、ワーク加工装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ワークを精度よく加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】加工対象である。半導体のウェーハの一例を示す平面図である。
図2】加工の概要を示す図である。
図3】ワーク加工装置の概略構成を示す図である。
図4】テーブル送り駆動部の概略構成を示す平面図である。
図5】レーザ加工ヘッドの概略構成を示す図である。
図6】縁切り用レーザ光生成部の構成の一例を示す図である。
図7】中抜き用レーザ光生成部及び中抜き用光路切替部の構成の一例を示す図である。
図8】レーザ光の照射の概念図である。
図9】位置の調整の概念図
図10】ワーク加工装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図11】加工処理の流れを示すフローチャートである。
図12】Y軸ステージのヨーイングによるテーブルの加工送り方向の傾きの発生の概念図である。
図13】加工位置のずれの概念図である。
図14】補正の概念図である。
図15】補正後の加工状態の一例を示す図である。
図16】集光レンズの配列の傾きの補正に関して制御装置が実現する機能のブロック図である。
図17】集光レンズの配列の傾きの補正処理の流れを示すフローチャートである。
図18】3つの集光レンズの配列方向の傾きを補正する構成の他の一例を示す概念図である。
図19】ワーク加工装置の概略構成を示す図である。
図20】ストリートに傾きが生じた場合の加工の一例を示す図である。
図21】補正の概念図である。
図22】集光レンズの配列の傾きの補正に関して制御装置が実現する機能のブロック図である。
図23】集光レンズの配列の傾きの補正処理の流れを示すフローチャートである。
図24】ワーク加工装置の概略構成を示す図である。
図25】集光レンズの配列方向に傾きが生じた場合の加工の一例を示す図である。
図26】補正の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0021】
[第1の実施の形態]
ここでは、層間絶縁膜にLow-k膜を使用した半導体のウェーハに対し、ダイシング前にストリートからLow-k膜を含む配線層(積層体)を除去する装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0022】
層間絶縁膜(絶縁層)としてのLow-k膜(Low-k層)は、Low-k材料(低誘電率材料)で構成される。Low-k材料は、たとえば、SiO2、SiOC、SiLK等の無機物系材料、ポリイミド系、パリレン系、ポリテトラフルオロエチレン系等のポリマーである。有機物系材料、及びメチル含有ポリシロキサン等のポーラスシリカ材料等である。
【0023】
図1は、加工対象である半導体のウェーハの一例を示す平面図である。
【0024】
図1に示すように、半導体のウェーハWは、複数のストリートStによって区画された格子状の領域にデバイスDvが形成される。
【0025】
層間絶縁膜にLow-k膜を使用したウェーハWは、隣接するデバイスDv間でストリートStを跨いでLow-k膜が存在する。このため、直接、ブレード(外周刃)で切削すると、膜剥離(デラミネーション)が発生するおそれがある。
【0026】
そこで、本実施の形態では、ダイシング前に、ストリートStに沿って所定の溝をレーザ加工(アブレーション加工)することにより、ストリートStからLow-k膜を含む配線層(積層体)を除去する。ストリートStは、ワークであるウェーハWに設定される加工予定線の一例である。
【0027】
[加工の概要]
図2は、加工の概要を示す図である。
【0028】
上記のように、ストリートStに沿って所定の溝Cを加工することで、ストリートStからLow-k膜を含む配線層を除去する。その際、溝Cの両側の縁を切る加工と、溝Cの中を刳り貫く加工(いわゆる中抜き加工)とを分けて、溝Cを加工する。以下、溝Cの両側の縁を切る加工を「縁切り加工」、溝Cの中を刳り貫く加工を「中抜き加工」と称する。
【0029】
縁切り加工は、一対のレーザ光L1a、L1bをストリートStに沿って照射し、互いに平行な2条の溝C1a、C1bをストリートStに沿って加工することにより行う。2条の溝C1a、C1bは、Y方向において、加工する溝Cの幅に対応した間隔で加工する。また、2条の溝C1a、C1bは、Z方向において、加工する溝Cの深さに対応した深さで加工する。以下、この縁切り加工によって加工される2条の溝C1a、C1bを縁切り溝C1a、C1bと称する。
【0030】
中抜き加工は、2条の縁切り溝C1a、C1bの間に所定の加工幅を有するレーザ光L2を照射することにより行う。レーザ光L2の加工幅(加工の進行方向と直交する方向の幅)は、2条の縁切り溝C1a、C1bの間隔に対応した幅である。中抜き加工は、必要に応じて複数回実行される。
【0031】
縁切り加工と中抜き加工とを組み合わせることで、最終的に所定の幅及び深さを有する1条の溝CがストリートStに沿って形成される。この溝Cによって、ストリートStからLow-k膜を含む配線層(積層体)が除去される。以下、この溝Cを配線層除去溝Cと称する。
【0032】
一度にLow-k膜を除去できる出力のレーザ光を用いて配線層除去溝Cを加工すると、膜剥離が発生するおそれがある。しかし、上記のように、縁切り加工と中抜き加工とを分けて加工することで、膜剥離の発生を抑制できる。
【0033】
[ワーク加工装置]
図3は、ワーク加工装置の概略構成を示す図である。なお、図中のXYZは、互いに直交する3軸である。本実施の形態では、X軸及びY軸を含む平面(XY平面)を水平面とし、X方向及びY方向を水平方向とする。また、Z方向を鉛直方向(上下方向)とする。また、X方向を加工送り方向とする。加工送り方向は、配線層除去溝Cを加工する際の送り方向である。したがって、加工送り方向に沿って配線層除去溝Cが加工される。
【0034】
図3に示すように、本実施の形態のワーク加工装置1は、ウェーハWを保持するテーブル10、テーブル10を回転させるテーブル回転駆動部20、テーブル10にX方向及びY方向の送りを与えるテーブル送り駆動部30、テーブル10上のウェーハWに対しレーザ加工(アブレーション加工)を行うレーザ加工ヘッド100、レーザ加工ヘッド100にZ方向の送りを与えるヘッド送り駆動部40、テーブル10上のウェーハWの表面を拡大して観察する顕微鏡50等を備える。
【0035】
[テーブル]
テーブル10は、上面にウェーハWが載置される載置面を有し、載置面において、ウェーハWを水平に保持する。テーブル10は、載置面に載置されたウェーハWを吸着(たとえば、真空吸着)して保持する。テーブル10には、必要に応じて、傾きを調整する機構(チルト機構)等が備えられる。
【0036】
[テーブル回転駆動部]
テーブル回転駆動部20は、テーブル10をθ軸周りに回転させる。θ軸は、テーブル10の中心を通り、Z軸と平行な軸である。テーブル回転駆動部20は、回転駆動源としてのモータ、及び、そのモータの回転をテーブル10に伝達する回転伝達機構等を有する。
【0037】
テーブル10は、図示しないテーブル回転位置検出部22(図10参照)によって、回転角度位置が検出される。テーブル回転位置検出部22は、たとえば、ロータリーエンコーダ等で構成される。
【0038】
[テーブル送り駆動部]
テーブル送り駆動部30は、レーザ加工ヘッド100に対し、テーブル10をX方向及びY方向に移動(相対移動)させて、テーブル10にX方向及びY方向の送りを与える。本実施の形態において、テーブル送り駆動部30は、送り駆動部の一例である。
【0039】
図4は、テーブル送り駆動部の概略構成を示す平面図である。
【0040】
図3及び図4に示すように、テーブル送り駆動部30は、水平に設けられたベース2上をY方向に移動するY軸ステージ31Y、Y軸ステージ31YのY方向の移動をガイドするY軸ガイド部32Y、Y軸ステージ31YにY方向の送りを与えるY軸駆動機構33Y、Y軸ステージ31Y上をX方向に移動するX軸ステージ31X、X軸ステージ31XのX方向の移動をガイドするX軸ガイド部32X、及び、X軸ステージ31XにX方向の送りを与えるX軸駆動機構33X等を有する。テーブル10は、X軸ステージ31Xに搭載されて、X方向及びY方向の送りが与えられる。
【0041】
Y軸ステージ31Yは、平板状の形状を有し、XY平面と平行に配置される。Y軸ステージ31Yは、XY平面内をY方向に沿って移動する。
【0042】
Y軸ガイド部32Yは、Y方向に沿って敷設されるガイドレール32Ya、及び、そのガイドレール32Ya上を摺動するスライダ32Yb等で構成される。ガイドレール32Yaは、ベース2上に敷設される。Y軸ステージ31Yは、スライダ32Ybを介して、ガイドレール32Ya上を摺動自在に支持される。
【0043】
Y軸駆動機構33Yは、たとえば、送りねじ機構で構成され、ねじ軸33Ya、軸受33Yb、ナット33Yc、及び、Y軸モータ33Yd等を有する。ねじ軸33Yaは、Y方向に沿って配置される。軸受33Ybは、ベース2上に設けられて、ねじ軸33Yaをベース2上で回転自在に支持する。ナット33Ycは、ねじ軸33Yaにねじ結合され、かつ、Y軸ステージ31Yに固定される。Y軸モータ33Ydは、ねじ軸33Yaを軸周りに回転させる。Y軸モータ33Ydでねじ軸33Yaを回転させることにより、Y軸ステージ31Yがベース2上をY方向に移動する。
【0044】
X軸ステージ31Xは、平板状の形状を有し、XY平面と平行に配置される。X軸ステージ31Xは、XY平面内をX方向に沿って移動する。
【0045】
X軸ガイド部32Xは、X方向に沿って敷設されるガイドレール32Xa、及び、そのガイドレール32Xa上を摺動するスライダ32Xb等で構成される。ガイドレール32Xaは、水平なY軸ステージ31Y上に敷設される。X軸ステージ31Xは、スライダ32Xbを介して、ガイドレール32Xa上を摺動自在に支持される。
【0046】
X軸駆動機構33Xは、たとえば、送りねじ機構で構成され、ねじ軸33Xa、軸受33Xb、ナット33Xc、及び、X軸モータ33Xd等を有する。ねじ軸33Xaは、X方向に沿って配置される。軸受33Xbは、Y軸ステージ31Y上に設けられて、ねじ軸33XaをY軸ステージ31Y上で回転自在に支持する。ナット33Xcは、ねじ軸33Xaにねじ結合され、かつ、X軸ステージ31Xに固定される。X軸モータ33Xdは、ねじ軸33Xaを軸周りに回転させる。X軸モータ33Xdでねじ軸33Xaを回転させることにより、X軸ステージ31XがY軸ステージ31Y上をX方向に移動する。
【0047】
以上の構成のテーブル送り駆動部30によれば、Y軸駆動機構33YによってY軸ステージ31YをY方向に移動させることにより、テーブル10がY方向に送られる。また、X軸駆動機構33XによってX軸ステージ31XをX方向に移動させることにより、テーブル10がX方向(加工送り方向)に送られる。
【0048】
テーブル10は、図示しないテーブルX位置検出部34X(図10参照)によって、そのX方向の位置(一例として、原点に対するX方向の位置)が検出される。また、図示しないテーブルY位置検出部34Y(図10参照)によって、そのY方向の位置(一例として、原点に対するY方向の位置)が検出される。テーブルX位置検出部34X及びテーブルY位置検出部34Yは、たとえば、リニアスケール等で構成される。
【0049】
[レーザ加工ヘッド]
レーザ加工ヘッド100は、加工送りされるテーブル10上のウェーハWに対し、一対のレーザ光を照射して、2条の溝(縁切り溝)を加工(縁切り加工)する。また、レーザ加工ヘッド100は、縁切り加工された2条の溝の間にレーザ光を照射して、2条の溝の間を中抜き加工する。本実施の形態において、レーザ加工ヘッド100は、加工ユニットの一例である。レーザ加工ヘッド100の詳細については後述する。
【0050】
[ヘッド送り駆動部]
図3に示すように、ヘッド送り駆動部40は、コラム3上をZ方向に移動するZ軸ステージ41Z、Z軸ステージ41ZのZ方向の移動をガイドするZ軸ガイド部42Z、Z軸ステージ41ZにZ方向の送りを与えるZ軸駆動機構43Z等を有する。コラム3は、ベース2に対し垂直に設けられる。レーザ加工ヘッド100は、Z軸ステージ41Zに搭載されて、Z方向の送りが与えられる。
【0051】
Z軸ステージ41Zは、平板状の形状を有し、ZY平面と平行に配置される。Z軸ステージ41Zは、ZY平面内をZ方向に沿って移動する。
【0052】
Z軸ガイド部42Zは、Z方向に沿って敷設されるガイドレール42Za、及び、そのガイドレール42Za上を摺動するスライダ42Zb等で構成される。ガイドレール42Zaは、コラム3上に敷設される。Z軸ステージ41Zは、スライダ42Zbを介して、ガイドレール42Za上を摺動自在に支持される。
【0053】
Z軸駆動機構43Zは、たとえば、送りねじ機構で構成され、ねじ軸43Za、軸受43Zb、ナット43Zc、及び、Z軸モータ43Zd等を有する。ねじ軸43Zaは、Z方向に沿って配置される。軸受43Zbは、コラム3上に設けられて、ねじ軸43Zaをコラム3上で回転自在に支持する。ナット43Zcは、ねじ軸43Zaにねじ結合され、かつ、Z軸ステージ41Zに固定される。Z軸モータ43Zdは、ねじ軸43Zaを軸周りに回転させる。Z軸モータ43Zdでねじ軸43Zaを回転させることにより、Z軸ステージ41Zがコラム3上をZ方向に移動する。
【0054】
以上の構成のヘッド送り駆動部40によれば、Z軸駆動機構43ZによってZ軸ステージ41ZをZ方向に移動させることにより、レーザ加工ヘッド100がZ方向に送られる。レーザ加工ヘッド100は、図示しないヘッド位置検出部44によって、そのZ方向の位置(一例として、原点に対するZ方向の位置)が検出される。ヘッド位置検出部44は、たとえば、リニアスケール等で構成される。
【0055】
[顕微鏡]
顕微鏡50は、レーザ加工ヘッド100と共にZ軸ステージ41Zに搭載される。したがって、レーザ加工ヘッド100と共にZ方向に移動する。顕微鏡50は、光学系で拡大した像をイメージセンサで撮像して出力する。顕微鏡50で撮像された画像は、アライメント及びカーフチェック等に供される。
【0056】
[レーザ加工ヘッド]
上記のように、レーザ加工ヘッド100は、加工送りされるテーブル10上のウェーハWに対し、一対のレーザ光を照射して2条の溝(縁切り溝)を加工(縁切り加工)する。また、その2条の溝の間にレーザ光を照射して、2条の溝の間を中抜き加工する。
【0057】
図5は、レーザ加工ヘッドの概略構成を示す図である。
【0058】
図5に示すように、レーザ加工ヘッド100は、縁切り用安全シャッタ110A、中抜き用安全シャッタ110B、縁切り用高速シャッタ112A、中抜き用高速シャッタ112B、縁切り用レーザ光生成部114、中抜き用レーザ光生成部116、中抜き用光路切替部118、縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A、第2の中抜き用集光レンズ122B、第1のレンズ位置調整部124A、及び、第2のレンズ位置調整部124B等を備える。
【0059】
縁切り用安全シャッタ110A、縁切り用高速シャッタ112A、縁切り用レーザ光生成部114、及び、縁切り用集光レンズ120は、縁切り加工用のレーザ光学系を構成する。
【0060】
また、中抜き用安全シャッタ110B、中抜き用高速シャッタ112B、中抜き用レーザ光生成部116、中抜き用光路切替部118、第1の中抜き用集光レンズ122A、第2の中抜き用集光レンズ122B、第1のレンズ位置調整部124A、及び、第2のレンズ位置調整部124Bは、中抜き加工用のレーザ光学系を構成する。
【0061】
[縁切り加工用のレーザ光学系]
上記のように、縁切り用安全シャッタ110A、縁切り用高速シャッタ112A、縁切り用レーザ光生成部114、及び、縁切り用集光レンズ120は、縁切り加工用のレーザ光学系を構成する。縁切り加工用のレーザ光学系は、縁切り用レーザ光源22Aから供給されるレーザ光LAから一対のレーザ光L1a、L1b(以下、縁切り用レーザ光L1a、L1bと称する)を生成し、縁切り用集光レンズ120を介して、縁切り用出射口101から出射させる。
【0062】
縁切り用レーザ光源22Aは、縁切り加工に適した条件(波長、パルス幅及び繰り返し周波数等)のパルスレーザ光をレーザ加工ヘッド100に供給する。
【0063】
縁切り用安全シャッタ110Aは、縁切り用レーザ光源22Aから供給されるレーザ光LAの光路上に配置され、該光路を開閉する。縁切り用安全シャッタ110Aを閉じることで、縁切り用レーザ光源22Aから供給されるレーザ光LAの入射が遮断される。
【0064】
縁切り用高速シャッタ112Aは、縁切り用安全シャッタ110Aを通過するレーザ光LAの光路上に配置され、当該光路を開閉する。縁切り用高速シャッタ112Aは、縁切り用安全シャッタ110Aよりも高速に作動するシャッタで構成される。縁切り用高速シャッタ112Aは、主として、縁切り用レーザ光L1a、L1bの出射を一時的に停止させる用途で用いられる。すなわち、縁切り用安全シャッタ110Aが、レーザ光LAの入射を安全かつ確実に遮断するのに対し、縁切り用高速シャッタ112Aは、その動作速度を優先させて、瞬時に縁切り用レーザ光L1a、L1bの出射をオン、オフする手段として機能する。
【0065】
縁切り用レーザ光生成部114は、縁切り用レーザ光源22Aから供給されるレーザ光LAから縁切り加工用の一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bを生成する。
【0066】
図6は、縁切り用レーザ光生成部の構成の一例を示す図である。
【0067】
図6に示すように、縁切り用レーザ光生成部114は、光分岐素子114A、及び、光分岐素子回転駆動部114B等を有する。
【0068】
光分岐素子114Aは、入射光(レーザ光LA)を二分岐して、一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bを生成する。光分岐素子114Aは、たとえば、回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE)で構成される。回折光学素子は、光の回折現象を利用して、レーザ光を空間的に分岐できる光学素子である。回折光学素子は、レーザ光をさまざまなパターン、形状に変えることができる。本実施の形態において、光分岐素子114Aは、縁切り用集光レンズ120の光軸に対し、軸対称に入射光を二分岐し、一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bを生成する。よって、縁切り用集光レンズ120を介して出射される一対の縁切り用レーザ光L1a、L1は、縁切り用集光レンズ120の光軸に対し、軸対称に出射される。したがって、そのビームスポットBS1a、BS1bも縁切り用集光レンズ120の光軸に対し、軸対称に照射される(図8参照)。光分岐素子114Aには、回折光学素子の他、屈折光学素子(Refractive Optical Element:ROE)、ウォラストンプリズム等を採用することもできる。
【0069】
光分岐素子回転駆動部114Bは、アクチュエータを有し、光分岐素子114Aを入射光の光軸周りに回転させる。光分岐素子114Aを回転させることにより、ウェーハWに照射される一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bのビームスポットBS1a、BS1bが回転する。ビームスポットは、縁切り用集光レンズ120の光軸を中心に回転する。この結果、ビームスポットBS1a、BS1bの間隔D(加工送り方向(X方向)と直交する方向(Y方向)の間隔)が変わる(図8参照)。したがって、光分岐素子114Aを回転させることで、加工する縁切り溝C1a、C1bの間隔を調整できる。
【0070】
このように、本実施の形態の縁切り用レーザ光生成部114は、一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bを生成する機能に加えて、その一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bの間隔(加工送り方向と直交する方向の間隔)を調整する機能を有する。縁切り用レーザ光生成部114には、この他、縁切り用レーザ光L1a、L1bの強度を調整する手段(強度変調する手段)等を備えてもよい。たとえば、強度変調する手段として、音響光学素子(Acoustic Optical Deflector:AOD)等を備えてもよい。
【0071】
縁切り用レーザ光生成部114で生成された一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bは、縁切り用集光レンズ120を介して、縁切り用出射口101からテーブル10上のウェーハWに照射される。
【0072】
縁切り用集光レンズ120は、縁切り用レーザ光生成部114で生成された一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bをZ方向の所定の位置(焦点)に集光させて、テーブル10上のウェーハWに照射する。照射方向は、鉛直下向き(Z方向において下方向)である。
【0073】
一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bは、一対の第1レーザ光の一例である。また、縁切り用集光レンズ120は、第1加工部の一例である。
【0074】
[中抜き加工用のレーザ光学系]
上記のように、中抜き用安全シャッタ110B、中抜き用高速シャッタ112B、中抜き用レーザ光生成部116、中抜き用光路切替部118、第1の中抜き用集光レンズ122A、第2の中抜き用集光レンズ122B、第1のレンズ位置調整部124A、及び、第2のレンズ位置調整部124Bは、中抜き加工用のレーザ光学系を構成する。
【0075】
中抜き加工用のレーザ光学系は、中抜き用レーザ光源22Bから供給されるレーザ光LBから中抜き加工用のレーザ光L2(以下、中抜き用レーザ光L2と称する)を生成し、第1の中抜き用集光レンズ122A又は第2の中抜き用集光レンズ122Bを介して、第1の中抜き用出射口102A又は第2の中抜き用出射口102Bから出射させる。
【0076】
中抜き用レーザ光源22Bは、中抜き加工に適した条件(波長、パルス幅及び繰り返し周波数等)のパルスレーザ光をレーザ加工ヘッド100に供給する。また、中抜き用レーザ光源22Bは、所定の偏光方向に偏光した直線偏光のレーザ光LBを供給する。
【0077】
中抜き用安全シャッタ110Bは、中抜き用レーザ光源22Bから供給されるレーザ光LBの光路上に配置され、該光路を開閉する。中抜き用安全シャッタ110Bを閉じることで、中抜き用レーザ光源22Bから供給されるレーザ光LBの入射が遮断される。
【0078】
中抜き用高速シャッタ112Bは、中抜き用安全シャッタ110Bを通過するレーザ光LBの光路上に配置され、当該光路を開閉する。中抜き用高速シャッタ112Bは、中抜き用安全シャッタ110Bよりも高速に作動するシャッタで構成される。中抜き用高速シャッタ112Bは、主として、中抜き用レーザ光L2の出射を一時的に停止させる用途で用いられる。すなわち、中抜き用安全シャッタ110Bが、レーザ光LBの入射を安全かつ確実に遮断するのに対し、中抜き用高速シャッタ112Bは、その動作速度を優先させて、瞬時に中抜き用レーザ光L2の出射をオン、オフする手段として機能する。
【0079】
中抜き用レーザ光生成部116は、中抜き用レーザ光源22Bから供給されるレーザ光LBから中抜き用レーザ光L2を生成する。本実施の形態では、中抜き用レーザ光L2として、ビームスポットBS2が矩形状のレーザ光を生成する(図8参照)。
【0080】
図7は、中抜き用レーザ光生成部及び中抜き用光路切替部の構成の一例を示す図である。
【0081】
図7に示すように、中抜き用レーザ光生成部116は、回折光学素子(DOE)116A及び回折光学素子回転駆動部116B等を有する。
【0082】
上記のように、回折光学素子116Aは、レーザ光をさまざまなパターン、形状に変える機能を有する。本実施の形態では、中抜き用レーザ光L2として出射させるレーザ光の形状(ビームスポットの形状)を矩形状に変換する。
【0083】
回折光学素子回転駆動部116Bは、アクチュエータを有し、回折光学素子116Aを入射光の光軸周りに回転させる。回折光学素子116Aを回転させることにより、ウェーハWに照射される中抜き用レーザ光L2のビームスポットBS2が回転する。ビームスポットBS2は、第1の中抜き用集光レンズ122A又は第2の中抜き用集光レンズ122Bの光軸を中心に回転する。この結果、加工送り方向(X方向)と直交する方向(Y方向)におけるビームスポットの幅が変わる。すなわち、加工幅が変わる。したがって、回折光学素子116Aを回転させることで、加工幅を調整できる。
【0084】
このように、本実施の形態の中抜き用レーザ光生成部116は、中抜き用レーザ光L2を生成する機能に加えて、その加工幅を調整する機能を有する。中抜き用レーザ光生成部116には、この他、中抜き用レーザ光L2の強度を調整する手段(たとえば、音響光学素子等)、強度分布を調整する手段等を備えてもよい。特に、強度分布については、トップハット形状(フラットトップともいう)とすることが好ましい。中抜き用レーザ光L2の強度分布をトップハット形状とすることにより、中抜き加工する溝の底面を平坦に加工できる。強度分布をトップハット形状に変換する手段としては、たとえば、回折光学素子(DOE)、屈折型ビームシェイパ等を採用できる。
【0085】
中抜き用光路切替部118は、中抜き用レーザ光生成部116で生成された中抜き用レーザ光L2の光路を第1の光路又は第2の光路に切り替える。第1の光路は、中抜き用レーザ光L2を第1の中抜き用集光レンズ122Aに導く光路である。一方、第2の光路は、中抜き用レーザ光L2を第2の中抜き用集光レンズ122Bに導く光路である。
【0086】
中抜き用光路切替部118は、図7に示すように、1/2波長板(1/2λ板)118A、波長板回転駆動部118B、及び、偏光ビームスプリッタ118C等を有する。
【0087】
1/2波長板118Aは、中抜き用レーザ光生成部116から出射される中抜き用レーザ光L2の光路上に配置される。上記のように、中抜き用レーザ光源22Bからは、所定の偏光方向に偏光した直線偏光のレーザ光LBが供給される。したがって、中抜き用レーザ光生成部116から出射される中抜き用レーザ光L2も所定の偏光方向に偏光した直線偏光のレーザ光で構成される。よって、1/2波長板118Aを回転させることにより、中抜き用レーザ光L2の偏光方向が変わる。
【0088】
波長板回転駆動部118Bは、第1位置と第2位置との間で1/2波長板118Aを回転させる。第2位置は、第1位置に対し45°回転した位置である。1/2波長板118Aを第1位置から第2位置に回転させると、中抜き用レーザ光L2の偏光方向が90°回転する。1/2波長板118Aを第1位置にセットすると、第1の偏光方向に偏光した中抜き用レーザ光L2が1/2波長板118Aから出射される。一方、1/2波長板118Aを第2位置にセットすると、第2の偏向方向に偏光した中抜き用レーザ光L2が1/2波長板118Aから出射される。第2の偏向方向は、第1の偏光方向と直交する方向である。
【0089】
偏光ビームスプリッタ118Cは、1/2波長板118Aを通過した中抜き用レーザ光L2の光路上に配置される。偏光ビームスプリッタ118Cは、入射する光の偏光状態に応じて入射光を透過光と反射光とに分岐する。偏光ビームスプリッタ118Cは、第1の偏光方向の偏光した光が入射すると、その光を透過させる。また、偏光ビームスプリッタ118Cは、第2の偏向方向に偏光した光が入射すると、その光を反射させる。
【0090】
上記のように、1/2波長板118Aを第1位置にセットすると、第1の偏光方向に偏光した中抜き用レーザ光L2が1/2波長板118Aから出射される。よって、1/2波長板118Aを第1位置にセットすると、中抜き用レーザ光L2は、偏光ビームスプリッタ118Cを透過する。
【0091】
一方、1/2波長板118Aを第2位置にセットすると、第2の偏向方向に偏光した中抜き用レーザ光L2が1/2波長板118Aから出射される。よって、1/2波長板118Aを第2位置にセットすると、中抜き用レーザ光L2は、偏光ビームスプリッタ118Cで反射される。
【0092】
偏光ビームスプリッタ118Cを透過したレーザ光は、第1の中抜き用集光レンズ122Aを介して、第1の中抜き用出射口102Aから出射される。一方、偏光ビームスプリッタ118Cで反射されたレーザ光は、第2の中抜き用集光レンズ122Bを介して、第2の中抜き用出射口102Bから出射される。
【0093】
このように、中抜き用光路切替部118により、中抜き用レーザ光L2を出射させる出射口(第1の中抜き用出射口102A及び第2の中抜き用出射口102B)を切り替えることができる。また、これと同時に、出射させる集光レンズ(第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)を切り替えることができる。
【0094】
第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bは、それぞれ中抜き用レーザ光生成部116で生成された中抜き用レーザ光L2をZ方向において所定の位置(焦点)に集光させる。照射方向は、鉛直下向き(Z方向において下方向)である。
【0095】
中抜き用レーザ光L2は、第2レーザ光の一例である。また、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bは、それぞれ第2加工部の一例である。
【0096】
図8は、レーザ光の照射の概念図である。
【0097】
図8に示すように、一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bによって、ウェーハWに2条の縁切り溝C1a、C1bが加工される。そして、加工された2条の縁切り溝C1a、C1bの間に中抜き用レーザ光L2が照射されて、2条の縁切り溝C1a、C1bの間が中抜き加工される。
【0098】
本実施の形態のレーザ加工ヘッド100において、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bは、縁切り用集光レンズ120を挟んで加工送り方向(X方向)の前後に配置される。
【0099】
これにより、ウェーハWを加工送り方向(X方向)に沿って往復させた場合に、往路と復路の双方で中抜き加工が可能になる。たとえば、図1において、X(-)方向を往路の送り方向、X(+)方向を復路の送り方向とすると、往路では、第1の中抜き用集光レンズ122Aから中抜き用レーザ光L2を出射させて、中抜き加工を行う。一方、復路では、第2の中抜き用集光レンズ122Bから中抜き用レーザ光L2を出射させて、中抜き加工を行う。
【0100】
第1のレンズ位置調整部124Aは、第1の中抜き用集光レンズ122Aの位置を調整する。また、第2のレンズ位置調整部124Bは、第2の中抜き用集光レンズ122Bの位置を調整する。第1のレンズ位置調整部124Aは、XY平面内で第1の中抜き用集光レンズ122AをY方向に移動(シフト)させて、その位置を調整する。同様に、第2のレンズ位置調整部124Bは、XY平面内で第2の中抜き用集光レンズ122BをY方向に移動(シフト)させて、その位置を調整する。すなわち、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bは、それぞれ第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122BのY方向(加工送り方向と直交する方向)の位置を調整する。
【0101】
なお、このように第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bは、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bによって位置調整されることから、Y方向に移動可能(位置調整可能)に設けられる。第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bは、それぞれ第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124BをY方向に移動させるアクチュエータを有する。アクチュエータの種類は、特に限定されない。要求される移動範囲で第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bを移動できるものであればよい。
【0102】
図9は、位置の調整の概念図である。図9において、(A)は、未調整の状態を示しており、(B)は、調整後の状態を示している。
【0103】
図9(A)に示すように、未調整の状態では、3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)が、X方向に沿って等間隔で一列に並んで配置される。したがって、3つの集光レンズの配列方向(光軸の配列方向)は、X方向と一致する。この配列状態を基準の配列状態とする。
【0104】
図9(B)は、基準の配列状態から第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bを互いに逆方向に等量移動させた場合の例を示している。具体的には、第1の中抜き用集光レンズ122AをY(-)方向にΔy移動させ、かつ、第2の中抜き用集光レンズ122BをY(+)にΔy移動させた例を示している。
【0105】
このように、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122BをY方向に移動(シフト)させることで、3つの集光レンズの配列の傾き(X方向に対する傾き)を調整できる。
【0106】
これにより、たとえば、テーブル10の移動方向(加工送り方向)と3つの集光レンズの配列方向にズレが生じた場合等に、そのずれを補正できる。すなわち、テーブル10の移動方向(加工送り方向)に沿って、3つの集光レンズが配列されるように補正できる。この点については、後述する。
【0107】
[ワーク加工装置の電気的構成]
図10は、ワーク加工装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【0108】
図10に示すように、ワーク加工装置1を構成する各部は、制御装置200によって、その動作が制御される。
【0109】
制御装置200は、たとえば、プロセッサ200A、主記憶装置200B、補助記憶装置200C、入力装置200D及び出力装置200E等を備えたコンピュータで構成される。すなわち、コンピュータが、所定のプログラムを実行することで制御装置200として機能する。プロセッサ200Aは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)で構成される。主記憶装置200Bは、たとえば、RAM(Random Access Memory)で構成される。補助記憶装置200Cは、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。入力装置200Dには、操作ボタン類の他、キーボード、タッチパネル等が含まれる。出力装置200Eは、たとえば、ディスプレイ(表示装置)で構成される。入力装置200D及び出力装置200Eをタッチパネルディスプレイで構成することもできる。
【0110】
縁切り用レーザ光源22Aは、制御装置200によって、そのオン、オフが制御されるとともに、供給するレーザ光LAの強度等が制御される。
【0111】
縁切り用安全シャッタ110A及び縁切り用高速シャッタ112Aは、制御装置200によって、その開閉が制御される。
【0112】
縁切り用レーザ光生成部114は、制御装置200によって、光分岐素子回転駆動部114Bの駆動が制御され、光分岐素子114Aの回転が制御される。
【0113】
中抜き用レーザ光源22Bは、制御装置200によって、そのオン、オフが制御されるとともに、供給するレーザ光LBの強度等が制御される。
【0114】
中抜き用安全シャッタ110B及び中抜き用高速シャッタ112Bは、制御装置200によって、その開閉が制御される。
【0115】
中抜き用レーザ光生成部116は、制御装置200によって、回折光学素子回転駆動部116Bの駆動が制御され、回折光学素子116Aの回転が制御される。
【0116】
中抜き用光路切替部118は、制御装置200によって、波長板回転駆動部118Bの駆動が制御され、1/2波長板118Aの回転が制御される。
【0117】
第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bは、制御装置200によって、そのアクチュエータの駆動が制御される。
【0118】
ヘッド送り駆動部40は、制御装置200によって、その駆動が制御され、レーザ加工ヘッド100に与えるZ方向の送りが制御される。
【0119】
ヘッド位置検出部44は、レーザ加工ヘッド100のZ方向の位置を検出し、検出した位置情報を制御装置200に出力する。
【0120】
テーブル送り駆動部30は、制御装置200によって、その駆動が制御され、テーブル10に与えるX方向及びY方向の送りが制御される。より具体的には、制御装置200によって、X軸駆動機構33Xが制御され、テーブル10に与えるX方向の送りが制御される。また、制御装置200によって、Y軸駆動機構33Yが制御され、テーブル10に与えるY方向の送りが制御される。
【0121】
テーブルX位置検出部34Xは、テーブル10のX方向の位置を検出し、検出した位置情報を制御装置200に出力する。
【0122】
テーブルY位置検出部34Yは、テーブル10のY方向の位置を検出し、検出した位置情報を制御装置200に出力する。
【0123】
テーブル回転駆動部20は、制御装置200によって、その駆動が制御され、テーブル10に与えるθ周りの回転が制御される。
【0124】
テーブル回転位置検出部22は、テーブル10の回転角度位置を検出し、検出した回転角度位置の情報を制御装置200に出力する。
【0125】
[ワーク加工装置の作用]
[ワーク(ウェーハ)の加工]
上記のように、Low-k膜を有するウェーハWに対し、ストリートStに沿って配線層除去溝Cを加工することにより、ストリートStからLow-k膜を含む配線層を除去する。
【0126】
ワーク加工装置1は、レーザ加工ヘッド100からテーブル10上のウェーハWに一対の縁切り用レーザ光L1a、L1b及び中抜き用レーザ光L2を照射しながら、テーブル10を加工送り方向(X方向)に移動させることにより、ストリートStに沿って配線層除去溝Cを加工する。
【0127】
本実施の形態のワーク加工装置1では、中抜き用レーザ光L2の出射口(第1の中抜き用出射口102A及び第2の中抜き用出射口102B)を切り替えることにより、加工送りにおける往路と復路の双方でウェーハWに配線層除去溝Cを加工する。
【0128】
具体的には、図1において、テーブル10をX(-)方向に送る方向を往路、X(+)方向に送る方向を復路とすると、往路では、第1の中抜き用出射口102Aから中抜き用レーザ光L2を出射させて配線層除去溝Cを加工する。一方、復路では、第2の中抜き用出射口102Bから中抜き用レーザ光L2を出射させて、配線層除去溝Cを加工する。すなわち、常にテーブル10の加工の進行方向の下流側に位置する出射口から中抜き用レーザ光L2を出射させて、配線層除去溝Cを加工する。なお、往路における加工の進行方向は、図1において、X(+)方向である。また、復路における加工の進行方向は、図1において、X(-)方向である。すなわち、ウェーハWの送り方向と反対方向に加工が進行する。
【0129】
図11は、加工処理の流れを示すフローチャートである。
【0130】
なお、前提として、テーブル10にウェーハWが保持されており、かつ、縁切り用レーザ光源22A及び中抜き用レーザ光源22Bからレーザ光LA、LBがレーザ加工ヘッド100に供給されているものとする。また、縁切り用安全シャッタ110A及び中抜き用安全シャッタ110B、並びに、縁切り用高速シャッタ112A及び中抜き用高速シャッタ112Bは閉じられているものとする。
【0131】
まず、アライメントが行われる(ステップS1)。すなわち、加工位置を検出し、その位置合わせが行われる。アライメントは、顕微鏡50で撮影した画像に基づいて行われる。アライメントにより、ストリートStの加工開始位置に縁切り用集光レンズ120の光軸が位置する。
【0132】
次に、中抜き用レーザ光L2の光路が設定される(ステップS2)。上記のように、往路では、第1の中抜き用出射口102Aから中抜き用レーザ光L2を出射させて、中抜き加工を行う。一方、復路では、第2の中抜き用出射口102Bから中抜き用レーザ光L2を出射させて、中抜き加工を行う。したがって、往路での加工では、第1の中抜き用出射口102Aから中抜き用レーザ光L2が出射される光路(第1の光路)に設定される。また、復路での加工では、第2の中抜き用出射口102Bから中抜き用レーザ光L2が出射される光路(第2の光路)に設定される。
【0133】
ここで、初回は、往路での送り(X(-)方向の送り)によって加工を開始するものとする。したがって、初回は、第1の中抜き用出射口102Aから中抜き用レーザ光L2が出射される光路(第1の光路)に設定される。
【0134】
中抜き用レーザ光L2の光路の設定後、縁切り用安全シャッタ110A及び中抜き用安全シャッタ110Bが開かれる(ステップS3)。これにより、縁切り用レーザ光源22Aから供給されるレーザ光LA及び中抜き用レーザ光源22Bから供給されるレーザ光LBがレーザ加工ヘッド100内に導入される。ただし、縁切り用高速シャッタ112A及び中抜き用高速シャッタ112Bが閉じられているため、各出射口からレーザ光は出射されない。
【0135】
この後、加工送りが開始される(ステップS4)。すなわち、X軸ステージ31Xが駆動され、テーブル10に加工送りが与えられる。
【0136】
次いで、縁切り用高速シャッタ112Aが開かれる(ステップS5)。これにより、テーブル10上のウェーハWに向けて、一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bが照射される。一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bは、縁切り用出射口101から出射される。これにより、ストリートStに沿って2条の縁切り溝C1a、C1bの加工が開始される。
【0137】
次いで、中抜き用高速シャッタ112Bが開かれる(ステップS6)。これにより、テーブル10上のウェーハWに向けて、中抜き用レーザ光L2が照射される。中抜き用レーザ光L2は、第1の中抜き用出射口102A又は第2の中抜き用出射口102Bから出射される。往路では、第1の中抜き用集光レンズ122Aを介して第1の中抜き用出射口102Aから出射される。一方、復路では、第2の中抜き用集光レンズ122Bを介して第2の中抜き用出射口102Bから出射される。出射された中抜き用レーザ光L2は、先行して加工された2条の縁切り溝C1a、C1b間に照射される。これにより、2条の縁切り溝C1a、C1bの間が中抜き加工される。2条の縁切り溝C1a、C1bの間が中抜き加工されることにより、ストリートStに沿って1条の配線層除去溝Cが加工される。
【0138】
この後、縁切り用レーザ光L1a、L1bによる加工点が、ストリートStの終点(加工終了位置)に到達したか否かが判定される(ステップS7)。
【0139】
加工点が、ストリートStの終点に到達すると、縁切り用高速シャッタ112Aが閉じられる(ステップS8)。これにより、縁切り加工が終了する。
【0140】
次いで、中抜き用高速シャッタ112Bが閉じられる(ステップS9)。これにより、中抜き加工が終了する。
【0141】
この後、加工送りが停止される(ステップS10)。すなわち、X軸ステージ31Xの駆動が停止され、テーブル10に加工送りが停止される。
【0142】
以上の工程で1つのストリートStの加工が完了する。この後、次に加工するストリートStの有無が判定される(ステップS11)。
【0143】
次の加工するストリートStが存在する場合は、次のストリートStの加工が行われる。この場合、まず、次に加工するストリートStの位置に向けて、テーブル10にY方向の送り(インデックス送り)が与えられる(ステップS12)。テーブル10には、ストリートStの間隔(チップの間隔)に対応した送り量で送り(インデックス送り)が与えられる。次いで、中抜き用レーザ光L2の光路の切り替えが行われる(ステップS13)。たとえば、加工送りの方向を往路から復路に切り換える場合は、第2の中抜き用出射口102Bから中抜き用レーザ光L2が出射されるように、光路が切り換えられる。一方、復路から往路に切り換える場合は、第1の中抜き用出射口102Aから中抜き用レーザ光L2が出射されるように、光路が切り換えられる。この後、上記ステップS4からステップS10の処理が行われ、ストリートStに配線層除去溝Cが加工される。
【0144】
一方、次の加工するストリートStが存在しない場合、すなわち、すべてのストリートStに対する加工が完了した場合、縁切り用安全シャッタ110A及び中抜き用安全シャッタ110Bが閉じられる(ステップS14)。これにより、レーザ加工ヘッド100へのレーザ光LA、LBの入射が遮断される。
【0145】
この後、テーブル10上からウェーハWが回収されて、当該ウェーハWに対する加工処理が完了する。
【0146】
このように、本実施の形態のワーク加工装置1によれば、1回の加工送り(1パス)で縁切り加工と中抜き加工とを同時に行うことができる。また、往路と復路の双方で同じ加工を行うことができる。
【0147】
[集光レンズの配列の傾き補正]
[補正の必要性]
上記のように、本実施の形態のワーク加工装置1では、レーザ加工ヘッド100に対し、テーブル10に加工送り(X方向の送り)及びインデックス送り(Y方向の送り)を与えて、テーブル10上のウェーハWを加工する。テーブル10は、X軸ステージ31Xが、Y軸ステージ31Y上を移動することで、加工送りが与えられる。また、テーブル10は、Y軸ステージ31Yが、ベース2上を移動することで、インデックス送りが与えられる。
【0148】
ここで、Y軸ステージ31Yの移動軸にX方向のうねりが存在(X方向の真直度が0でない場合)していると、Y軸ステージ31Yの移動にヨーイングが生じる。そして、Y軸ステージ31Yの移動にヨーイングが生じると、テーブル10上に保持されたウェーハWのストリートSt(加工予定線)に傾きが生じる(X軸に対し傾きが生じる)。また、これと同時に、X軸ステージ31Xの移動軸に傾きが生じ、加工送り方向に傾きが生じる。
【0149】
図12は、Y軸ステージのヨーイングによるテーブルの加工送り方向の傾きの発生の概念図である。
【0150】
図12(A)は、Y軸ステージ31Yの移動軸YmaにX方向のうねりがない場合(X方向の真直度が0の場合)の例を示している。また、図12(B)は、Y軸ステージ31Yの移動軸YmaにX方向のうねりがある場合(X方向の真直度が0でない場合)の例を示している。なお、説明の便宜上、うねりを誇張して表現している。
【0151】
図12において、符号Ymaは、Y軸ステージ31Yの移動軸を示している。また、符号Xmaは、X軸ステージ31Xの移動軸を示している。X軸ステージ31Xの移動軸の方向は、ストリートStの方向と同じである。また、符号y1、y2、y3は、Y軸ステージ31Yの位置(テーブル10のY方向の位置)を示している。
【0152】
図12(A)に示すように、Y軸ステージ31Yの移動軸YmaにX方向のうねりがない場合、Y方向のどの位置においても、X軸ステージ31Xの移動軸Xmaに傾きは発生しない。したがって、ストリートStにも傾き(X軸に対する傾き)は生じない。また、テーブル10の加工送りの方向にも傾きは生じない。
【0153】
一方、図12(B)は、Y軸ステージ31Yの移動軸YmaにX方向のうねりがある場合、うねりに応じて、X軸ステージ31Xの移動軸Xmaに傾きが生じる。この結果、ストリートStに傾きが生じる。また、加工送り方向に傾きが生じる。
【0154】
テーブル10の加工送り方向に傾きが生じると、レーザ加工ヘッド100との間で縁切り加工を行う位置と、中抜き加工を行う位置にずれが生じる。この結果、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を正しく中抜き加工できなくなるという不具合が発生する。
【0155】
図13は、加工位置のずれの概念図である。
【0156】
図13は、テーブル10の加工送り方向が、X軸に対し傾いている場合の加工例を示している。図中符号FDで示す矢印の方向が、テーブル10の加工送り方向(移動方向)であり、XY平面内でX軸に対しα°傾いている。
【0157】
図13に示すように、テーブル10の加工送りの方向に傾きが生じると、レーザ加工ヘッド100に備えられた3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)の配列方向との間にずれが生じる。この結果、縁切り加工の位置と中抜き加工の位置とがずれ、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を正しく中抜き加工できなくなる。
【0158】
[補正方法]
テーブル10の加工送り方向に傾きが生じることで、集光レンズの配列方向との間にずれが生じた場合、両者が平行になるように補正する。すなわち、テーブル10の加工送り方向(移動方向)と集光レンズの配列方向とが一致するように補正する。この補正は、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bによって、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bの位置を補正することにより行う。
【0159】
図14は、補正の概念図である。
【0160】
図14において、符号FDで示す矢印の方向が、テーブル10の加工送りの方向(移動方向)である。テーブルの加工送りの方向と、3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)の配列方向とが一致するように、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122BをY方向に移動(シフト)させる。図14に示す例では、第1の中抜き用集光レンズ122AをY(-)方向にΔyシフトさせ、かつ、第2の中抜き用集光レンズ122BをY(+)方向にΔyシフトさせて補正した場合の例を示している。3つの集光レンズの配列方向は、各集光レンズ120、122A、122Bの光軸O1、O2a、O2bを通る直線の方向として規定される。
【0161】
図15は、補正後の加工状態の一例を示す図である。
【0162】
図15に示すように、テーブル10の加工送りの方向と、集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)の配列方向とを一致させることで、縁切り加工の位置と中抜き加工の位置とのずれが補正される。この結果、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を正しく中抜き加工できる。
【0163】
なお、配列方向の補正により、2条の縁切り溝の間隔が変わる場合、必要に応じて、一対の縁切り用レーザ光L1a、L1bのビームスポットBS1a、BS1bの間隔が補正される。ビームスポットBS1a、BS1bの間隔は、光分岐素子114Aを回転させて、ビームスポットBS1a、BS1bを縁切り用集光レンズ120の光軸周りに回転させることにより行われる。
【0164】
同様に、配列方向の補正により、中抜き加工の加工幅が変わる場合は、必要に応じて加工幅が補正される。中抜き加工の加工幅は、回折光学素子116Aを回転させて、中抜き用レーザ光L2を光軸周りに回転させることにより行われる。
【0165】
なお、本実施の形態において、テーブル10の加工送りの方向と、集光レンズの配列方向とを一致させることは、テーブル10上のウェーハWのストリートStの方向と、集光レンズの配列方向とを一致させることと同義である。すなわち、ストリートStに対する集光レンズの配列方向の相対的な傾きを補正することと同義である。
【0166】
[補正の制御]
図16は、集光レンズの配列の傾きの補正に関して制御装置が実現する機能のブロック図である。
【0167】
集光レンズの配列の傾きの補正に関して、制御装置200は補正制御部210として機能する。
【0168】
補正制御部210は、テーブル10のY方向の位置に基づいて、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bを制御し、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bの位置を補正する。
【0169】
上記のように、Y軸ステージ31Yの移動軸にX方向のうねりがある場合、Y軸ステージ31Yの位置(=テーブル10のY方向の位置)に応じて、テーブル10の加工送り方向が変化する(ヨーイングにより向きが変化する。)。このため、補正制御部210は、テーブル10のY方向の位置に応じて、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bの位置を補正する。
【0170】
テーブル10のY方向の位置は、レーザ加工ヘッド100に対するY方向の相対位置である。テーブル10のY方向の位置(相対位置)は、テーブルY位置検出部34Yで検出される。よって、補正制御部210は、テーブルY位置検出部34Yの出力に基づいて、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bを制御する。
【0171】
ここで、Y軸ステージ31YのX方向のうねり(X方向の真直度)は、事前に計測できる。よって、Y方向の位置ごとに生じる加工送り方向の傾き(ヨーイング)も事前に計測できる。したがって、Y方向の位置ごとに必要な補正量の情報(傾きのずれを補正するのに必要な第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bの移動量の情報)も事前に取得できる。制御装置200の補助記憶装置200Cには、テーブル10のY方向の位置ごとの補正量の情報が、補正用ルックアップテーブル(Lookup Table:LUT)として記憶される。補正制御部210は、補正用ルックアップテーブルを参照して、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bを制御し、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bの位置を補正する。
【0172】
本実施の形態において、補正制御部210は、補正部の一例である。また、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bは、補正部の一例である。また、Y方向の位置ごとの補正量の情報は、補正情報の一例であり、その情報を記憶した補助記憶装置200Cは、記憶部の一例である。
【0173】
[補正処理]
図17は、集光レンズの配列の傾きの補正処理の流れを示すフローチャートである。
【0174】
まず、補正制御部210は、テーブル10の現在のY方向の位置の情報を取得する(ステップS21)。テーブル10のY方向の位置は、テーブルY位置検出部34Yで検出される。補正制御部210は、テーブルY位置検出部34Yからテーブル10の現在のY方向の位置の情報を取得する。
【0175】
次に、補正制御部210は、現在のテーブル10のY方向の位置に基づいて、補正の要否を判定する(ステップS22)。補正制御部210は、補正用ルックアップテーブルを参照して、補正の要否を判定する。現在のテーブル10の位置の補正量が0であれば、補正制御部210は、補正不要と判定する。
【0176】
補正が必要な場合、補正制御部210は、補正用ルックアップテーブルに記録された情報に基づいて、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bの位置を補正する(ステップS23)。すなわち、補正用ルックアップテーブルに記録された情報に従って、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122BをY方向に移動(シフト)させて、3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)の配列方向を補正する。この補正により、テーブル10の加工送りの方向と、3つの集光レンズの配列方向とが一致する(平行になる)。また、この補正により、テーブル10上のウェーハWのストリートStの方向と、3つの集光レンズの配列方向とが一致する。すなわち、ストリートStに沿って3つの集光レンズが配置される。これにより、ストリートStに沿って、縁切り加工と中抜き加工とをずれなく実行できる。
【0177】
次に、補正制御部210は、テーブル10がY方向に移動したか否かを判定する(ステップS24)。すなわち、テーブル10がインデックス送りされたか否かを判定する。
【0178】
テーブル10がY方向に移動したと判定すると、補正制御部210は、上記ステップS21からステップS23の処理を実行し、必要に応じて傾きの補正処理を行う。
【0179】
テーブル10の移動なしと判定すると、補正制御部210は、加工が終了したか否かを判定する(ステップS25)。加工終了により、補正の処理も終了する。
【0180】
以上説明したように、本実施の形態のワーク加工装置1によれば、テーブル10のY方向の位置によって加工送り方向に傾きが生じる場合であっても、ストリートStに沿って、縁切り加工と中抜き加工とをずれなく実行できる。したがって、ウェーハWを精度よく加工できる。
【0181】
[変形例]
[補正部の変形例]
上記実施の形態では、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122BをY方向に移動(シフト)させることで、3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)の配列方向の傾きを補正する構成としているが、3つの集光レンズの配列方向の傾きを補正する構成は、これに限定されるものではない。
【0182】
図18は、集光レンズの配列方向の傾きを補正する構成の他の一例を示す概念図である。
【0183】
図18に示す構成は、3つの集光レンズをZ軸と平行な軸周りに一体的に回転させることで、その配列方向の傾きを補正する。図18は、縁切り用集光レンズ120の光軸O1を軸として、3つの集光レンズを一体的に回転させる構成の例である。本構成によっても、テーブル10の加工送り方向の変化に追従させて、3つの集光レンズの配列方向を変えることができる。
【0184】
本構成は、たとえば、レーザ加工ヘッド100を縁切り用集光レンズ120の光軸周りに回転可能に保持することで実現できる。
【0185】
[送り駆動部]
上記実施の形態では、テーブル10をX方向及びY方向に移動させて、X方向及びY方向の送りを与える構成としているが、レーザ加工ヘッド100をX方向及びY方向に移動させて、X方向及びY方向の送りを与える構成としてもよい。この場合、テーブル10をZ方向に移動させる構成としてもよい。
【0186】
[その他]
経時的あるいは熱的な歪み等により、縁切り用集光レンズ120と、第1の中抜き用集光レンズ122A又は第2の中抜き用集光レンズ122Bとの間の位置関係にずれが生じ、縁切り加工と中抜き加工とで加工位置にずれが生じる場合がある。このような場合に、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bを用いて、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bの位置を調整することにより、位置関係のずれ、延いては加工位置のずれを補正できる。これにより、より高精度な加工が実現できる。
【0187】
また、上記実施の形態では、補正量の情報(補正情報)をルックアップテーブルの形式で保持する構成としているが、補正量の情報の保持形態は、これに限定されるものではない。Y方向の位置(座標)と、その位置での補正量の情報が保持されていればよい。
【0188】
[第2の実施の形態]
図19は、第2の実施の形態のワーク加工装置の概略構成を示す図である。
【0189】
本実施の形態のワーク加工装置1は、テーブル送り駆動部30の構成が、上記第1の実施の形態のワーク加工装置1と異なる。上記第1の実施の形態のワーク加工装置1では、Y軸ステージ31Y上にX軸ステージ31Xが設けられていた。本実施の形態のワーク加工装置1では、X軸ステージ上31X上にY軸ステージ31Yが設けられている。
【0190】
図19に示すように、本実施の形態のワーク加工装置1では、ベース2上にX軸ステージ31Xが設けられる。X軸ステージ31Xは、ベース2上をX方向に移動する。Y軸ステージ31Xは、X軸ステージ31X上に設けられ、X軸ステージ31X上をY方向に移動する。テーブル10は、Y軸ステージ31Y上に搭載される。
【0191】
他の構成は、上記第1の実施の形態のワーク加工装置1と基本的に同じである。ただし、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bについては、必ずしも必要ではない。第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bを備えることにより、加工位置ずれの補正等の用途に使用できる。
【0192】
[問題点]
Y軸ステージ31Yの移動軸にX方向のうねりが存在すると、テーブル10のY方向の移動によってヨーイングが生じ、テーブル10上に保持されたウェーハWのストリートStに傾きが生じる点は、上記第1の実施の形態のワーク加工装置1と同じである。
【0193】
本実施の形態のワーク加工装置1では、集光レンズの配列方向と、テーブル10の加工送り方向との間の平行性は確保される。したがって、縁切り加工と中抜き加工との間の位置ずれは原則として生じない。
【0194】
しかし、ストリート(加工予定線)Stに傾きが生じているため、そのまま加工すると、配線層除去溝Cが、ストリートStからずれて加工される。
【0195】
図20は、ストリートに傾きが生じた場合の加工の一例を示す図である。
【0196】
図20において、符号FDで示す矢印の方向が、テーブル10の加工送りの方向(移動方向)である。図20に示すように、テーブルの加工送りの方向と、3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)の配列方向とは一致している。よって、2条の縁切り溝C1a、C1bは、加工送り方向に沿って加工され、かつ、中抜き加工も2条の縁切り溝C1a、C1bの間を加工送り方向に沿って行われる。したがって、配線層除去溝C自体は、正しく加工される。しかし、テーブル上のストリートStがX軸に対し傾いているため、ストリートStからずれて加工される。すなわち、ストリートStに対して、配線層除去溝Cが傾いて加工される。
【0197】
[補正方法]
ストリートStと集光レンズの配列方向とが平行になるように、テーブル10を回転させて、両者の間の相対的な傾きを補正する。
【0198】
図21は、補正の概念図である。図21において、(A)は、補正前の状態を示しており、(B)は、補正後の状態を示している。
【0199】
図21(A)に示すように、補正前の状態では、3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)の配列方向(X方向)に対し、テーブル10上のウェーハWのストリートStがβ°傾いている。
【0200】
この場合、図21(B)に示すように、テーブル10をθ軸周りにβ°回転させて、ストリートStの傾きを補正する。より詳しくは、傾いた方向と逆方向にβ°回転させて、傾きを是正する。
【0201】
これにより、ストリートStの方向と3つの集光レンズの配列方向とが一致する。すなわち、ストリートStに沿って3つの集光レンズが配置される。この状態で加工すれば、ストリートStに沿って、配線層除去溝Cを加工できる。
【0202】
[補正の制御]
図22は、集光レンズの配列の傾きの補正に関して制御装置が実現する機能のブロック図である。
【0203】
補正制御部210は、テーブル10のY方向の位置に基づいて、テーブル回転駆動部20を制御し、ストリートStの傾きを補正する。
【0204】
上記のように、Y軸ステージ31YのX方向のうねりは、事前に計測できるので、Y方向の位置ごとに生じるストリートStの傾きも事前に計測できる。したがって、Y方向の位置ごとに必要な補正量の情報(傾きを補正するのに必要なテーブル10の回転量の情報)も事前に取得できる。制御装置200の補助記憶装置200Cには、テーブル10のY方向の位置ごとの補正量の情報が、補正用ルックアップテーブルとして記憶される。補正制御部210は、補正用ルックアップテーブルを参照して、テーブル回転駆動部20を制御し、ストリートStの傾きを補正する。
【0205】
本実施の形態において、補正制御部210は、補正部の一例である。また、テーブル回転駆動部20は、補正部の一例である。また、Y方向の位置ごとの補正量の情報は、補正情報の一例であり、その情報を記憶した補助記憶装置200Cは、記憶部の一例である
[補正処理]
図23は、集光レンズの配列の傾きの補正処理の流れを示すフローチャートである。
【0206】
まず、補正制御部210は、テーブル10の現在のY方向の位置の情報を取得する(ステップS31)。テーブル10のY方向の位置は、テーブルY位置検出部34Yで検出される。補正制御部210は、テーブルY位置検出部34Yからテーブル10の現在のY方向の位置の情報を取得する。
【0207】
次に、補正制御部210は、現在のテーブル10のY方向の位置に基づいて、補正の要否を判定する(ステップS32)。補正制御部210は、補正用ルックアップテーブルを参照して、補正の要否を判定する。現在のテーブル10の位置の補正量が0であれば、補正制御部210は、補正不要と判定する。
【0208】
補正が必要な場合、補正制御部210は、補正用ルックアップテーブルに記録された情報に基づいて、ストリートStの傾きを補正する(ステップS33)。すなわち、補正用ルックアップテーブルに記録された情報に従って、テーブル10を回転させ、ストリートStの傾きを補正する。この補正により、ストリートStの方向と、3つの集光レンズの配列方向とが一致する(平行になる)。すなわち、ストリートStに沿って3つの集光レンズが配置される。これにより、ストリートStに沿って、配線層除去溝Cを加工できる。
【0209】
次に、補正制御部210は、テーブル10がY方向に移動したか否かを判定する(ステップS34)。すなわち、テーブル10がインデックス送りされたか否かを判定する。
【0210】
テーブル10がY方向に移動したと判定すると、補正制御部210は、上記ステップS21からステップS23の処理を実行し、必要に応じてストリートStの傾きの補正処理を行う。
【0211】
テーブル10の移動なしと判定すると、補正制御部210は、加工が終了したか否かを判定する(ステップS35)。加工終了により、補正の処理も終了する。
【0212】
以上説明したように、本実施の形態のワーク加工装置1によれば、テーブル10のY方向の位置によってストリートStに傾きが生じる場合であっても、ストリートStに沿って、縁切り加工と中抜き加工とをずれなく実行できる。したがって、ウェーハWを精度よく加工できる。
【0213】
なお、上記実施の形態の変形例は、本実施の形態のワーク加工装置1にも適宜適用可能である。したがって、たとえば、レーザ加工ヘッド100をX方向及びY方向に移動させて、X方向及びY方向の送りを与える構成としてもよい。
【0214】
[第3の実施の形態]
図24は、ワーク加工装置の概略構成を示す図である。
【0215】
本実施の形態のワーク加工装置1は、テーブル10が、X方向にのみ移動し、レーザ加工ヘッド100が、Y方向及びZ方向に移動する。すなわち、Y方向の送りが、レーザ加工ヘッド100の移動によって与えられる。
【0216】
図24に示すように、テーブル10は、ベース2上をX方向に移動するX軸ステージ31上に搭載される。テーブル10は、X軸ステージ31がX方向に移動することで、加工方向の送りが与えられる。
【0217】
レーザ加工ヘッド100は、コラム3上をZ方向に移動するZ軸ステージ41Z上に搭載される。コラム3は、Z軸ステージ41Zは、Y軸ステージ31Y上をZ方向に移動する。Y軸ステージ31Yは、コラム3上をY方向に沿って移動する。
【0218】
他の構成は、上記第1の実施の形態のワーク加工装置1と基本的に同じである。したがって、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bを有する。
【0219】
[問題点]
本実施の形態のワーク加工装置1の場合、Y軸ステージ31Yの移動軸にX方向のうねりが存在すると、Y軸ステージ31Yの移動によって、レーザ加工ヘッド100に傾きが生じる。この結果、ウェーハWの加工送りの方向(X方向)に対し、3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122Aおよび第2の中抜き用集光レンズ122B)の配列方向に傾きが生じる。このため、そのまま加工すると、正しく中抜き加工できない事態が生じる。
【0220】
図25は、集光レンズの配列方向に傾きが生じた場合の加工の一例を示す図である。
【0221】
図25において、符号FDで示す矢印の方向が、テーブル10の加工送り方向(移動方向)である。テーブル10の加工送りの方向に対し、3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122Aおよび第2の中抜き用集光レンズ122B)が、XY平面内でγ°傾いて配置されている。
【0222】
図25に示すように、加工送り方向に対し、3つの集光レンズの配列方向に傾きが生じると、各集光レンズのY方向の位置がずれる。この結果、縁切り加工の位置と中抜き加工の位置とがずれ、2条の縁切り溝C1a、C1bの間を正しく中抜き加工できなくなる。
【0223】
[補正方法]
上記第1の実施の形態のワーク加工装置1と同様に、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122BをY方向に移動(シフト)させて、集光レンズの配列方向をウェーハWの加工送り方向(加工するストリートStの方向)と一致させる。
【0224】
図26は、補正の概念図である。
【0225】
図26において、符号FDで示す矢印の方向が、テーブル10の加工送りの方向(移動方向)である。テーブルの加工送りの方向と、3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)の配列方向とが一致するように、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122BをY方向に移動(シフト)させる。
【0226】
また、配列方向が傾くことで各集光レンズから出射させるレーザ光のビームスポットが傾く場合は、必要に応じて、ビームスポットを光軸周りに回転させて、その傾きを補正する。
【0227】
図26に示す例では、第1の中抜き用集光レンズ122AをY(+)方向にΔyシフトさせ、かつ、第2の中抜き用集光レンズ122BをY(-)方向にΔyシフトさせて補正した場合の例を示している。また、各レーザ光のビームスポットを回転させて、傾きを補正した例を示している。
【0228】
[補正の制御]
集光レンズの配列の傾きの補正に関して、制御装置200は補正制御部210として機能する(図16参照)。上記第1の実施の形態のワーク加工装置1と同様に、補正制御部210は、テーブル10のY方向の位置に基づいて、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bを制御し、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bの位置を補正する。補正制御部210は、補助記憶装置200Cに記憶された補正用ルックアップテーブルを参照して、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bを制御する。補正用ルックアップテーブルには、テーブル10のY方向の位置ごとの補正量の情報(補正情報)が記録される。
【0229】
本実施の形態において、補正制御部210は、補正部の一例である。また、第1のレンズ位置調整部124A及び第2のレンズ位置調整部124Bは、補正部の一例である。また、Y方向の位置ごとの補正量の情報は、補正情報の一例であり、その情報を記憶した補助記憶装置200Cは、記憶部の一例である。
【0230】
[補正処理]
補正処理の流れは、上記第1の実施の形態のワーク加工装置1と基本的に同じである。以下、図17に従って、本実施の形態のワーク加工装置1での集光レンズの配列の傾きの補正処理について説明する。
【0231】
まず、補正制御部210は、テーブル10の現在のY方向の位置の情報を取得する(ステップS21)。
【0232】
次に、補正制御部210は、現在のテーブル10のY方向の位置に基づいて、補正の要否を判定する(ステップS22)。補正制御部210は、補正用ルックアップテーブルを参照して、補正の要否を判定する。現在のテーブル10の位置の補正量が0であれば、補正制御部210は、補正不要と判定する。
【0233】
補正が必要な場合、補正制御部210は、補正用ルックアップテーブルに記録された情報に基づいて、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122Bの位置を補正する(ステップS23)。すなわち、補正用ルックアップテーブルに記録された情報に従って、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122BをY方向に移動(シフト)させて、3つの集光レンズ(縁切り用集光レンズ120、第1の中抜き用集光レンズ122A及び第2の中抜き用集光レンズ122B)の配列方向を補正する。この補正により、テーブル10の加工送りの方向と、3つの集光レンズの配列方向とが一致する(平行になる)。また、この補正により、テーブル10上のウェーハWのストリートStの方向と、3つの集光レンズの配列方向とが一致する。すなわち、ストリートStに沿って3つの集光レンズが配置される。これにより、ストリートStに沿って、縁切り加工と中抜き加工とをずれなく実行できる。また、必要に応じて、ビームスポットの傾きを補正する。これにより、加工する2条の縁切り溝C1a、C1bの間隔、及び、中抜き加工の加工幅が修正される。また、これにより、正しい加工幅で配線層除去溝Cを加工できる。
【0234】
次に、補正制御部210は、テーブル10がY方向に移動したか否かを判定する(ステップS24)。すなわち、テーブル10がインデックス送りされたか否かを判定する。
【0235】
テーブル10がY方向に移動したと判定すると、補正制御部210は、上記ステップS21からステップS23の処理を実行し、必要に応じて傾きの補正処理を行う。
【0236】
テーブル10の移動なしと判定すると、補正制御部210は、加工が終了したか否かを判定する(ステップS25)。加工終了により、補正の処理も終了する。
【0237】
以上説明したように、本実施の形態のワーク加工装置1によれば、テーブル10のY方向の位置によって集光レンズの配列方向に傾きが生じる場合であっても、ストリートStに沿って、縁切り加工と中抜き加工とをずれなく実行できる。したがって、ウェーハWを精度よく加工できる。
【0238】
[変形例]
[補正部の変形例]
上記第1の実施の形態のワーク加工装置1と同様に、3つの集光レンズをZ軸と平行な軸(たとえば、縁切り用集光レンズ120の光軸)周りに一体的に回転させることで、その配列方向の傾きを補正する構成とすることもできる(図18参照)。
【0239】
[その他]
上記実施の形態では、Z軸ステージ41Zが、Y軸ステージ31Y上をZ方向に移動する構成とされているが、Y軸ステージ31Yが、Z軸ステージ41Z上をY方向に移動する構成としてもよい。
【0240】
また、上記実施の形態では、Y軸ステージ31Yがコラム3上をY方向に移動する構成としているが、Y軸ステージ31Yがベース2上をY方向に移動する構成とし、Y軸ステージ31Y上にコラム3を設ける構成としてもよい。
【0241】
その他、上記第1及び第2の実施の形態の変形例は、適宜本実施の形態のワーク加工装置1にも適用できる。
【0242】
[その他の実施の形態]
[レーザ加工ヘッド]
上記実施の形態では、1つのレーザ加工ヘッドに中抜き用の加工部(集光レンズ)を2つ備える構成としているが、中抜き用の加工部は、少なくとも1つ備えていればよい。すなわち、最小の構成は、1つの縁切り用の加工部と、1つの中抜き用の加工部と、を備えた構成である。この場合、加工方向は一方向に限定される(1パスで加工する場合)。また、中抜き用の加工部を更に複数備えることもできる。中抜き用の加工部を縁切り用の加工部の片側に複数備えることにより、1パスで中抜き加工を複数回に分けて実行できる。
【0243】
なお、1パスで中抜き加工を複数回実行する方法として、1つの加工部(集光レンズ)から複数の中抜き用レーザ光を出射させる構成とすることもできる。この場合、たとえば、回折光学素子、屈折光学素子、ウォラストンプリズム等の光分岐素子を使用して、中抜き用レーザ光を複数に分岐し、1つの加工部(集光レンズ)から出射させる構成を採用できる。
【0244】
[レーザ加工ユニット]
上記実施の形態では、縁切り加工を行う加工部と、中抜き加工を行う加工部とを一体化した構成(1つのレーザ加工ヘッド100に搭載した構成)で説明したが、縁切り加工を行う加工部、及び、中抜き加工を行う加工部を別個独立した構成としてもよい。たとえば、上記第1の実施の形態のワーク加工装置1において、縁切り加工を行う加工部と、中抜き加工を行う加工部とを分け、個別にZ方向等に移動できる構成としてもよい。
【0245】
[ビームスポットの形状]
上記実施の形態では、中抜き用レーザ光のビームスポットの形状を矩形状としたが、中抜き用レーザ光のビームスポットの形状は、これに限定されるものでない。たとえば、加工幅を調整しない場合などには、ビームスポットの形状を円形状としてもよい。なお、光軸周りに回転させて、加工幅を調整する場合には、非円形状であればよい。すなわち、光軸周りに回転させた場合に、加工送り方向と直交する方向の幅が変化する形状であればよい。したがって、たとえば、線形状、楕円形状等とすることができる。
【0246】
[その他]
上記実施の形態では、層間絶縁膜にLow-k膜を使用した半導体のウェーハに対し、ダイシング前にストリートからLow-k膜を含む配線層を除去する装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。たとえば、ストリートに沿って2条の溝をレーザ光で加工し、その2条の溝の間をレーザ光で切削する装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0247】
1…ワーク加工装置、2…ベース、3…コラム、10…テーブル、20…テーブル回転駆動部、22…テーブル回転位置検出部、22A…縁切り用レーザ光源、22B…中抜き用レーザ光源、30…テーブル送り駆動部、31X…X軸ステージ、31Y…Y軸ステージ、32X…X軸ガイド部、32Xa…ガイドレール、32Xb…スライダ、32Y…Y軸ガイド部、32Ya…ガイドレール、32Yb…スライダ、33X…X軸駆動機構、33Xa…ねじ軸、33Xb…軸受、33Xc…ナット、33Xd…X軸モータ、33Y…Y軸駆動機構、33Ya…ねじ軸、33Yb…軸受、33Yc…ナット、33Yd…Y軸モータ、34X…テーブルX位置検出部、34Y…テーブルY位置検出部、40…ヘッド送り駆動部、41Z…Z軸ステージ、42Z…Z軸ガイド部、42Za…ガイドレール、42Zb…スライダ、43Z…Z軸駆動機構、43Za…ねじ軸、43Zb…軸受、43Zc…ナット、43Zd…Z軸モータ、44…ヘッド位置検出部、50…顕微鏡、100…レーザ加工ヘッド、101…縁切り用出射口、102A…中抜き用出射口(第1の中抜き用出射口)、102B…中抜き用出射口(第2の中抜き用出射口)、110A…縁切り用安全シャッタ、110B…中抜き用安全シャッタ、112A…縁切り用高速シャッタ、112B…中抜き用高速シャッタ、114…縁切り用レーザ光生成部、114A…光分岐素子、114B…光分岐素子回転駆動部、116…中抜き用レーザ光生成部、116A…回折光学素子、116B…回折光学素子回転駆動部、118…中抜き用光路切替部、118A…1/2波長板(1/2λ板)、118B…波長板回転駆動部、118C…偏光ビームスプリッタ、120…縁切り用集光レンズ、122A…第1の中抜き用集光レンズ、122B…第2の中抜き用集光レンズ、124A…第1のレンズ位置調整部、124B…第2のレンズ位置調整部、200…制御装置、200A…プロセッサ、200B…主記憶装置、200C…補助記憶装置、200D…入力装置、200E…出力装置、BS1a…ビームスポット、BS2…ビームスポット、C…溝(配線層除去溝)、C1a…溝(縁切り溝)、C1b…溝(縁切り溝)、Dv…デバイス、L1a…レーザ光(縁切り用レーザ光)、L1b…レーザ光(縁切り用レーザ光)、L2…レーザ光(中抜き用レーザ光)、LA…レーザ光(縁切り用レーザ光源から出射されるレーザ光)、LB…レーザ光(中抜き用レーザ光源から出射されるレーザ光)、St…ストリート、W…ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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