(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145667
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】焼菓子、複合菓子、焼菓子の製造方法、及び複合菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 1/36 20060101AFI20241004BHJP
A21D 2/08 20060101ALI20241004BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20241004BHJP
【FI】
A23G1/36
A21D2/08
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058118
(22)【出願日】2023-03-31
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小野 隆
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 紋奈
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB04
4B014GG02
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG10
4B014GG11
4B014GG14
4B014GL01
4B014GL10
4B014GP01
4B014GP14
4B014GP27
4B032DB21
4B032DB40
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK34
4B032DK43
4B032DK47
4B032DL20
4B032DP08
4B032DP23
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】小麦粉等の澱粉質原料を主体とする焼菓子の菓子組織の全体域にわたってチョコレートをリッチに配合したような場合にも、ブルームが生じにくく、良好なチョコレート風味を呈する製品が得られるようにした、焼菓子及び焼菓子の製造方法を提供する。
【解決手段】澱粉質原料及びカカオ脂を含む生地が焼成されることによって形成される菓子組織を有する焼菓子であって、前記菓子組織には該菓子組織の全体域にわたって、前記澱粉質原料の100質量部あたり、POS、SOS、及びPOPの3種のトリグリセリド成分が合計で8.2~33.1質量部含有され、BOBが0.03~0.2質量部含有され、乳脂が15~45質量部含有されていることを特徴とする焼菓子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉質原料及びカカオ脂を含む生地が焼成されることによって形成される菓子組織を有する焼菓子であって、前記菓子組織には該菓子組織の全体域にわたって、前記澱粉質原料の100質量部あたり、POS、SOS、及びPOPの3種のトリグリセリド成分が合計で8.2~33.1質量部含有され、BOBが0.03~0.2質量部含有され、乳脂が15~45質量部含有されていることを特徴とする焼菓子。
(ここで、POSは、グリセリンの1,3位にパルミトイル基とステアロイル基を各1基有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、SOSは、グリセリンの1,3位にステアロイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、POPは、グリセリンの1,3位にパルミトイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、BOBは、グリセリンの1,3位にベヘノイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドである。)
【請求項2】
前記菓子組織には該菓子組織の全体域にわたって、前記澱粉質原料100質量部あたり、前記POSが4.0~15.5質量部含有され、前記SOSが2.5~10.7質量部含有され、前記POPが1.7~6.9質量部含有されている、請求項1記載の焼菓子。
【請求項3】
前記POS、前記SOS、及び前記POPの3種のトリグリセリド成分が、前記焼菓子に含有せしめた原材料であって、ココアバター、チョコレート生地、準チョコレート生地、及びカカオマスからなる群から選ばれた少なくとも1種の原材料に由来するものである、請求項1記載の焼菓子。
【請求項4】
前記乳脂としてバターを含有せしめたものである、請求項1記載の焼菓子。
【請求項5】
前記焼菓子の原材料としてショートニングを含有せしめたものである、請求項1記載の焼菓子。
【請求項6】
前記焼菓子の原材料として糖を含有せしめたものである、請求項1記載の焼菓子。
【請求項7】
前記焼菓子の原材料として卵原料を含有せしめたものである、請求項1記載の焼菓子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の焼菓子と他の菓子材とを複合してなる、複合菓子。
【請求項9】
澱粉質原料及びカカオ脂を含む生地が焼成されることによって形成される菓子組織を有する焼菓子の生地であって、前記生地には該生地の全体域にわたって、前記澱粉質原料の100質量部あたり、POS、SOS、及びPOPの3種のトリグリセリド成分が合計で8.2~33.1質量部含有され、BOBが0.03~0.2質量部含有され、乳脂が15~45質量部含有されている該生地を調製し、成型して、焼成することを特徴とする焼菓子の製造方法。
(ここで、POSは、グリセリンの1,3位にパルミトイル基とステアロイル基を各1基有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、SOSは、グリセリンの1,3位にステアロイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、POPは、グリセリンの1,3位にパルミトイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、BOBは、グリセリンの1,3位にベヘノイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドである。)
【請求項10】
前記生地の成型は、押出成型によるものである、請求項9記載の焼菓子の製造方法。
【請求項11】
前記生地に他の菓子材を含有せしめて焼成する、請求項9又は10記載の焼菓子の製造方法。
【請求項12】
請求項9又は10の製造方法で焼菓子を得、前記焼菓子に他の菓子材を複合させる、複合菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼菓子及びその焼菓子を用いた複合菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、カカオ由来の風味や、軟らかく口どけする食感を呈することなどから、とても人気の高いお菓子である。一方、クッキー、サブレ、ビスケットなど、小麦粉を主体とする焼菓子はサクサクとした食感を呈することなどにより、こちらも人気の高いお菓子である。
【0003】
従来、チョコレートと小麦粉を主体とする焼菓子の両者の良さを融合した菓子の開発についても盛んに行われてきた。しかしながら、小麦粉等の澱粉質原料を主体とする焼菓子の菓子組織の全体域にわたってチョコレートをリッチに配合したような場合には、カカオ由来の油脂が焼菓子の表面に斑状に白変する、いわゆるブルームが生じて、商品価値が損なわれるといったことが課題となる場合があった。
【0004】
この問題に関連して、例えば、特許文献1には、カカオ脂とアセチル化蔗糖脂肪酸エステルを含むチョコレート類を小麦粉、糖類を含む生地と共に焼成することを特徴とする、ベーカリー製品の製造法の発明が開示されている(特許文献1の請求項5)。そして、アセチル化蔗糖脂肪酸エステルを配合したことにより、ブルームが生じにくく、良好なチョコレート風味を呈するベーカリー製品が得られるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、アセチル化蔗糖脂肪酸エステルとして特定製品が用いられており(特許文献1の実施例)、汎用性に乏しいという側面があった。
【0007】
本発明の目的は、小麦粉等の澱粉質原料を主体とする焼菓子の菓子組織の全体域にわたってチョコレートをリッチに配合したような場合にも、ブルームが生じにくく、良好なチョコレート風味を呈する製品が得られるようにした、焼菓子及び焼菓子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、その第1の観点においては、澱粉質原料及びカカオ脂を含む生地が焼成されることによって形成される菓子組織を有する焼菓子であって、前記菓子組織には該菓子組織の全体域にわたって、前記澱粉質原料の100質量部あたり、POS、SOS、及びPOPの3種のトリグリセリド成分が合計で8.2~33.1質量部含有され、BOBが0.03~0.2質量部含有され、乳脂が15~45質量部含有されていることを特徴とする焼菓子を提供するものである。
【0010】
ここで、POSは、グリセリンの1,3位にパルミトイル基とステアロイル基を各1基有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、SOSは、グリセリンの1,3位にステアロイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、POPは、グリセリンの1,3位にパルミトイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、BOBは、グリセリンの1,3位にベヘノイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドである。
【0011】
本発明により提供される焼菓子によれば、澱粉質原料及びカカオ脂を含む生地が焼成されることによって形成される菓子組織を有し、その菓子組織の全体域にわたってカカオ脂が含有されてなるので、カカオ由来の風味が豊富でチョコレート様の口どけ感を呈する焼菓子となる。また、BOB及び乳脂が含有されてなるので、焼菓子にブルームが生じにくい。また、これらのBOBや乳脂は特定量で含有せしめたので、チョコレート様の口どけ感のある食感が損なわれることがなく、更に、生地の成型適性にも優れている。
【0012】
本発明により提供される焼菓子においては、前記菓子組織には該菓子組織の全体域にわたって、前記澱粉質原料100質量部あたり、前記POSが4.0~15.5質量部含有され、前記SOSが2.5~10.7質量部含有され、前記POPが1.7~6.9質量部含有されていることが好ましい。これによれば、更に、カカオ由来の風味が豊富で、チョコレート様の口どけ感を呈する焼菓子となし易い。
【0013】
本発明により提供される焼菓子においては、前記POS、前記SOS、及び前記POPの3種のトリグリセリド成分が、前記焼菓子に含有せしめた原材料であって、ココアバター、チョコレート生地、準チョコレート生地、及びカカオマスからなる群から選ばれた少なくとも1種の原材料に由来するものであることが好ましい。これによれば、更に、カカオ由来の風味が豊富で、チョコレート様の口どけ感を呈する焼菓子となし易い。
【0014】
本発明により提供される焼菓子においては、前記乳脂としてバターを含有せしめたものであることが好ましい。これによれば、更に、風味や食感に優れた焼菓子となし易い。
【0015】
本発明により提供される焼菓子においては、前記焼菓子の原材料としてショートニングを含有せしめたものであることが好ましい。これによれば、更に、生地の成型適性に優れた焼菓子となし易い。
【0016】
本発明により提供される焼菓子においては、前記焼菓子の原材料として糖を含有せしめたものであることが好ましい。これによれば、更に、風味や食感に優れた焼菓子となし易い。
【0017】
本発明により提供される焼菓子においては、前記焼菓子の原材料として卵原料を含有せしめたものであることが好ましい。これによれば、更に、風味や食感に優れた焼菓子となし易い。
【0018】
本発明は、その第2の観点においては、上記の焼菓子と他の菓子材とを複合してなる、複合菓子を提供するものである。
【0019】
本発明により提供される複合菓子によれば、上記の焼菓子を用いたので、カカオ由来の風味が豊富でチョコレート様の口どけ感を呈する焼菓子を含む複合菓子となる。
【0020】
本発明は、その第3の観点においては、澱粉質原料及びカカオ脂を含む生地が焼成されることによって形成される菓子組織を有する焼菓子の生地であって、前記生地には該生地の全体域にわたって、前記澱粉質原料の100質量部あたり、POS、SOS、及びPOPの3種のトリグリセリド成分が合計で8.2~33.1質量部含有され、BOBが0.03~0.2質量部含有され、乳脂が15~45質量部含有されている該生地を調製し、成型して、焼成することを特徴とする焼菓子の製造方法を提供するものである。
【0021】
ここで、POSは、グリセリンの1,3位にパルミトイル基とステアロイル基を各1基有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、SOSは、グリセリンの1,3位にステアロイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、POPは、グリセリンの1,3位にパルミトイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドであり、BOBは、グリセリンの1,3位にベヘノイル基を有し、2位にオレオイル基を有するトリグリセリドである。
【0022】
本発明により提供される焼菓子の製造方法によれば、澱粉質原料及びカカオ脂を含む生地において、その生地の全体域にわたってカカオ脂を含有せしめるようにしたので、これを焼成して得られる焼菓子は、カカオ由来の風味が豊富でチョコレート様の口どけ感を呈する焼菓子となる。また、BOB及び乳脂を含有せしめるようにしたので、得られる焼菓子にブルームが生じにくい。また、これらのBOBや乳脂は特定量で含有せしめるようにしたので、チョコレート様の口どけ感のある食感が損なわれることがなく、更に、生地の成型適性にも優れている。
【0023】
本発明により提供される焼菓子の製造方法においては、前記生地の成型は、押出成型によるものであることが好ましい。これによれば、本発明にかかる焼菓子を生産性よく製造することができる。
【0024】
本発明により提供される焼菓子の製造方法においては、前記生地に他の菓子材を含有せしめて焼成することが好ましい。これによれば、カカオ由来の風味が豊富でチョコレート様の口どけ感を呈する菓子組織と他の菓子材とを複合的に含む焼菓子が得られる。
【0025】
本発明は、その第4の観点においては、上記の製造方法で焼菓子を得、前記焼菓子に他の菓子材を複合させる、複合菓子の製造方法を提供するものである。
【0026】
本発明により提供される複合菓子の製造方法によれば、上記の焼菓子を用いたので、カカオ由来の風味が豊富でチョコレート様の口どけ感を呈する焼菓子を含む複合菓子が得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、小麦粉等の澱粉質原料を主体とする焼菓子の菓子組織の全体域にわたってチョコレートをリッチに配合したような場合にも、ブルームが生じにくく、良好なチョコレート風味を呈する製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、澱粉質原料とカカオ脂を含む生地が焼成されることによって形成される菓子組織を有する焼菓子を提供するものである。
【0029】
本発明に用いる澱粉質原料としては、焼成により菓子組織を形成できる原料であればよい。例えば、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉等の穀粉類や、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、これらの加工澱粉等の澱粉類や、乾燥ポテト粉末、乾燥ポテトフレーク、乾燥マッシュポテト等のポテト原料などが挙げられる。澱粉質原料は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。なかでも、小麦粉は、得られる菓子組織が呈する食感の観点から好ましく用いられ得る。また、得られる焼菓子には、小麦粉が27~41質量%含有されていることが好ましく、30~37質量%含有されていることがより好ましく、32~36質量%含有されていることが更により好ましい。
【0030】
本発明に用いるカカオ脂としては、カカオ由来の油脂であって、焼菓子にカカオ由来の風味を付与することができる原料であればよい。例えば、カカオマス、ココアバター、それらを原料として調製されてなるチョコレート生地、準チョコレート生地などが挙げられる。ここで、「カカオマス」や「ココアバター」や「チョコレート生地」や「準チョコレート生地」とは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」に規定されるとおりであり得る。
【0031】
例えば、「カカオマス」とは、カカオニブ(カカオビーンズからシェルを除いたもの)を、そのいかなる構成分も除去又は添加することなく、機械的方法により磨砕したもの(アルカリ処理等をしたものを含む。)であり得る。
【0032】
また、「ココアバター」とは、カカオビーンズ、カカオニブ、又はカカオマスから得られた油脂であって、シェル又はジャームの脂肪分を天然に含んでいる量以上に含まないものであり得る。
【0033】
また、「チョコレート生地」とは、カカオ由来のカカオ分が35質量%以上(ココアバターが18質量%以上)であって、水分が3質量%以下のものであり得る。また、カカオ由来のカカオ分が21質量%を下らず(ココアバターが18質量%以上)、且つ、カカオ分と乳固形分の合計が35質量%を下らない範囲内(乳脂肪が3質量%以上)で、カカオ分の代わりに、乳固形分を使用したものであり得る。
【0034】
また、「準チョコレート生地」とは、カカオ分がカカオ由来のカカオ分が15質量%以上(ココアバターが3質量%以上)、脂肪分が18質量%以上のものであって、水分が3質量%以下のもの(ただし、チョコレート生地に該当するものを除く。)であり得る。また、カカオ由来のカカオ分が7質量%以上(ココアバターが3質量%以上)、脂肪分が18質量%以上、乳固形分が12.5質量%以上(乳脂肪が2質量%以上)であって、水分が3質量%以下のもの(ただし、チョコレート生地に該当するものを除く。)であり得る。
【0035】
本発明により提供される焼菓子においては、カカオ由来のカカオ脂が、焼菓子の菓子組織の全体域にわたって含有されている。これにより、得られる焼菓子にカカオ由来の風味を十分に付与し、なお且つ、チョコレート様の口どけ感を呈するものとなすことができる。カカオ由来のカカオ脂は、澱粉質原料の100質量部あたり、9~44質量部含有されていることが好ましく、10~42質量部含有されていることがより好ましく、11~38質量部含有されていることが更により好ましい。また、カカオ脂に含まれるPOS、SOS、及びPOPの3種のトリグリセリド成分の成分量に換算した場合、その合計で、澱粉質原料の100質量部あたり、8.2~33.1質量部含有されていることが好ましく、8.5~32.8質量部含有されていることがより好ましく、8.8~32.5質量部含有されていることが更により好ましい。また、個々のトリグリセリド成分の成分量に換算した場合、澱粉質原料100質量部あたり、POSが4.0~15.5質量部含有され、SOSが2.5~10.7質量部含有され、前記POPが1.7~6.9質量部含有されていることが好ましく、POSが4.1~15.4質量部含有され、SOSが2.6~10.6質量部含有され、POPが1.8~6.8質量部含有されていることがより好ましく、POSが4.2~15.3質量部含有され、SOSが2.7~10.5質量部含有され、POPが1.9~6.7質量部含有されていることが更により好ましい。
【0036】
本発明により提供される焼菓子においては、上記カカオ脂に加えて、更にBOB及び乳脂が含有されている。これにより、焼菓子にブルームが生じにくくなる。BOBは、澱粉質原料の100質量部あたり、0.03~0.2質量部含有されていることが好ましい。また、乳脂は、澱粉質原料の100質量部あたり、15~45質量部含有されていることが好ましく、18~43質量部含有されていることがより好ましく、20~40質量部含有されていることが更により好ましい。BOB及び乳脂の含有量が上記範囲であることにより、ブルームを抑制しつつ、チョコレート様の口どけ感のある食感が損なわれることがなく、更に、生地の成型適性にも優れている。
【0037】
乳脂としては、乳由来の脂肪分を含む原料であればよい。例えば、バター、バターオイル、全粉乳、クリーム、牛乳などが挙げられる。
【0038】
本発明により提供される焼菓子においては、上記した原料以外にも、適宜、他の原料を含有せしめてもよい。
【0039】
限定されないが、例えば、通常の菓子に汎用されているショートニングが挙げられる。ショートニングは、植物性油脂由来であってよく、動物性油脂由来であってよく、それら混合により調製されたものであってもよい。ショートニングを含有せしめることにより、上記した乳脂の配合とあいまって、生地の成型適性を良好にしたり、サクサクとした良好な食感となしたりするのに寄与し得る。ショートニングは、澱粉質原料の100質量部あたり、11~40質量部含有されていることが好ましく、13~37質量部含有されていることがより好ましく、15~35質量部含有されていることが更により好ましい。
【0040】
限定されないが、例えば、通常の菓子に汎用されている糖が挙げられる。具体的には、砂糖、黒糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、乳糖、水あめ、糖アルコール、オリゴ糖、デキストリン等の糖が挙げられる。糖を含有せしめることにより、焼菓子に一定の甘味を付与することができるとともに、澱粉質原料や油脂分の配合とあいまって、サクサクとした良好な食感となしたりするのに寄与し得る。
【0041】
限定されないが、例えば、通常の菓子に汎用されている卵原料が挙げられる。具体的には、液体や粉体を問わず鶏卵等の卵原料が挙げられる。卵原料を含有せしめることにより、焼菓子に一定の風味を付与することができるとともに、澱粉質原料や油脂分の配合とあいまって、生地の成型適性を良好にしたり、サクサクとした良好な食感となしたりするのに寄与し得る。
【0042】
以下には、本発明により提供される焼菓子の製造方法について、更に具体的に説明する。ただし、本発明の範囲が以下に例示される製造方法によっていささかも限定されるものではない。
【0043】
まず、焼成により菓子組織を形成させるための生地を調製する。このとき、生地は、原料の全部を混合して調製してもよく。あるいは、原料の一部同士を混合して前駆生地を調製したうえ、得られた前駆生地どうしを更に混合して、焼成に供する生地となしてもよい。
【0044】
限定されないが、例えば、第1の前駆生地として、小麦粉等の澱粉質原料を含む生地を調製してもよい。この第1の前駆生地には、例えば、上述した乳脂や必要に応じて配合され得るショートニング、糖、卵原料などを含有せしめてもよい。ただし、BOBは、澱粉質原料を含む生地を調製する際、分散させづらいため含有されないことがより好ましい。
【0045】
第1の前駆生地には、適宜、他の原料が含有されていてもよい。例えば、食塩、醤油、ソース等の調味料、全粉乳、脱脂粉乳、牛乳、ホエイ、カゼインなどの乳原料、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂等の油脂、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、ベーキングパウダー等の膨張剤、大豆タンパク、大豆粉等のタンパク質原料、イヌリン、イソマルトデキストリン、ポリデキストロース、難消化デキストリン等の水溶性食物繊維原料、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等の不溶性食物繊維原料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類等の具材などが挙げられる。
【0046】
小麦粉等の澱粉質原料を含む第1の前駆生地は、限定されないが、例えば、通常のクッキー生地などのように、いわゆるシュガーバッター法に準じて調製してもよい。典型例では、例えば、溶かしたバターやバターオイルとグラニューと鶏卵とを混合しておき、これに小麦粉を加えて生地をまとめるようにして調製することができる。
【0047】
限定されないが、例えば、第2の前駆生地として、カカオ脂を含む生地を調製してもよい。この第2の前駆生地には、例えば、上述したBOBが含有されていることがより好ましい。BOBは、例えば、その融点以上(例えば、55℃以上)の品温にして溶融させたうえ、第2の前駆生地としたカカオ脂を含む生地に含有せしめることにより、その生地の全体域にわたってよりよく分散させることができる。第2の前駆生地へのBOBの混合の際は、他の原料の品温をBOBにあわせて高めておくことも好ましい。BOBは、第1の前駆生地とした小麦粉等の澱粉質原料を含む生地ではなく、第2の前駆生地としたカカオ油を含む生地に含有せしめることが好ましい。これにより、それらを混合してなる最終的な生地においても、その生地の全体域にわたって、カカオ脂とともにBOBをよく分散させることができる。
【0048】
第2の前駆生地には、適宜、カカオ脂以外の他の原料が含有されていてもよい。例えば、ココアパウダー、カカオバター代用脂、砂糖、マルトース、トレハロース、糖アルコール等の糖質、食物繊維、全粉乳、脱脂粉乳等の粉乳、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の各種油脂、及びこれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の油脂類、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤などが挙げられる。
【0049】
カカオ脂を含む第2の前駆生地は、限定されないが、例えば、通常のチョコレート生地などのように、いわゆるリファイニングやコンチングの処理を経て調製してもよい。典型例では、例えば、カカオマスとカカオ脂と砂糖とを混合しておき、これに粘度調整のためにレシチンを添加して混合して生地を調製することができる。
【0050】
次に、小麦粉等の澱粉質原料を含む第1の前駆原料とカカオ脂を含む第2の前駆原料とを混合する。両者の混合割合は、澱粉質原料100質量部あたりに含有せしめるカカオ脂の量等によって、適宜、決定すればよい。
【0051】
なお、限定されないが、小麦粉等の澱粉質原料は、チョコレート生地等のカカオ脂を含む原料や、その他の原料が実質的にすべて配合されて、混合後に、最後に加えるようにしてもよい。これによれば、焼成後の小麦粉等の澱粉質原料による食感として、ソフトに仕上がりやすい。
【0052】
次に、得られた生地を所望の形状に成型する。形状は特に制限はなく、例えば、バー状、小判状、円形状、正・長方形状等であってよい。ただし、生地厚さとしては、焼成による熱のとおり易さの観点からは、2~20mmであることが好ましく、5~15mmであることがより好ましい。また、生地の成型は押出成型によることが好ましい。これによれば、適当な押出成型装置を用いて、より効率的な生産を行うことができる。
【0053】
焼成は、例えば、ガスオーブン、電気オーブン、コンベクションオーブン、加熱水蒸気オーブン等の加熱手段により行うことができる。焼成条件は、適宜設定すればよい。典型的に、例えば、100~250℃で、3~30分間などであり得る。焼成により得られた焼菓子では、その水分含量は、限定されないが、例えば、0.5~25質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0054】
本発明により提供される焼菓子は、限定されないが、その脂質分含量が、例えば、27.5~33.5質量%であることが好ましく、29~32.5質量%であることがより好ましい。
【0055】
本発明により提供される焼菓子は、その他の菓子材と複合することにより複合菓子となすことができる。
【0056】
そのための菓子材としては、例えば、チョコレート、油脂性クリーム、フォンダン、ナッツ、ドライフルーツ、ココアパウダー等の粉原料などが挙げられる。この場合、菓子材は、流動性のある状態のものは、焼成後の焼菓子に、掛けたり、塗布したりすること等により複合菓子を得ることができる。また、流動性のないものは、焼成後の焼菓子にトッピングしたり、付着させたりすること等により複合菓子を得ることができる。
【0057】
一方、焼成前の生地においても、他の菓子材と混合したり、接合したり、他の菓子材を生地にかけたり、塗布したりする等してもよい。これによれば、本発明にかかる生地を他の菓子材と一緒に焼成して、本発明にかかる菓子組織と他の菓子材とを複合的に含む焼菓子を得ることができる。なお、その場合、他の菓子材以外の菓子組織の部分において、本願発明の構成を備えていることによって、本発明のカカオ由来の風味が豊富でチョコレート様の口どけ感を呈するといった作用効果が奏され得る。
【0058】
本明細書において、澱粉質原料について、焼菓子や生地中でのその成分量は、例えば、小麦粉の場合、食物アレルゲンを定量的に分析する方法として周知のELISA法を用いて測定し、一般に知られた当該食物アレルゲンの小麦粉中の含有量から換算することができる。また、食品分析の周知の方法によりデンプン含量を求めることで、同様に、一般に知られた小麦粉中のデンプン含有量から換算することもできる。
【0059】
また、本明細書において、POS、SOS、POP、及びBOBについて、焼菓子や生地中でのそれらの成分量の特定は、例えば、基準油脂分析試験法(日本油化学会)による高速液体クロマトグラフ法によって行うことができる。
【0060】
また、本明細書において、乳脂について、焼菓子や生地中でのその成分量は、乳脂には、通常の植物由来の油脂類には含まれない酪酸が含まれているので、例えば、基準油脂分析試験法(日本油化学会)によるガスクロマトグラフ法により酪酸を測定して、例えば、乳脂中の酪酸含量が2.5~6.2質量%であるものとして、換算することができる。また、酪酸価・乳製品試験法・注解(日本薬学会)による酪酸価を測定して、乳脂の酪酸価が18~22であるものとして、換算することができる。
【0061】
また、本明細書において、焼菓子や生地の脂質分含量の特定は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、酸分解法等で行うことができる。
【0062】
また、本明細書において、焼菓子や生地の水分含量の特定は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、常圧加熱乾燥助剤法(105℃、5時間)等で行うことができる。
【実施例0063】
以下、試験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例示の範囲に限定されるものではない。
【0064】
〔1.チョコレート生地A〕
表1に示す原材料を用いてチョコレート生地を調製した。具体的には、常法に従い、レシチン以外の原材料を混合してリファイニング、コンチングの処理を行った後、レシチンを添加し、混合して、チョコレート生地Aを調製した。なお、表1右段には、使用したカカオ由来素材中に含まれるカカオ分と知られたカカオ脂及び日カカオ脂のそれぞれの割合を示す。
【0065】
【0066】
表2には、一般にカカオ脂に含まれることが知られている各種トリグリセリドの成分濃度を示す。
【0067】
【0068】
表3には、チョコレート生地Aに配合されたカカオ脂と各種トリグリセリドの占める割合を示す。
【0069】
【0070】
〔2.チョコレート生地B〕
表4に示す原材料を用いてチョコレート生地を調製した。具体的には、常法に従い、レシチン以外の原材料を混合してリファイニング、コンチングの処理を行った後、レシチンを添加し、混合して、チョコレート生地Bを調製した。なお、表4右段には、使用したカカオ由来素材中に含まれるカカオ分と知られたカカオ脂及び非カカオ脂のそれぞれの割合を示す。
【0071】
【0072】
表5には、チョコレート生地Bに配合されたカカオ脂と各種トリグリセリドの占める配合を示す。
【0073】
【0074】
<試験例1>
表6に示す原材料を用いて焼菓子を調製した。具体的には、油脂原料(バターオイル、ショートニング)と澱粉質原料以外の粉原料(砂糖、食塩)、液体原料(鶏卵、水)をミキサーに投入し、混合しながらクリーム状にし、30℃以上に温調溶解したチョコレート生地Aと55℃以上にして溶解したBOBを加え、均一にした。その後小麦粉等の澱粉質原料を加え練り上げ、焼成前生地とした。この生地を押し出し成型し、180℃で10分間焼成した。
【0075】
【0076】
得られた焼菓子について、下記評価基準により評価した。
(ブルーム)
◎:艶がある
〇:やや艶がない
×:艶がなく、白化している
(口とけ)
◎:口中における菓子の分散が優れている(さっととける)
〇:口中における菓子の分散がよい(とけやすい)
×:口中に菓子が残りやすい
【0077】
結果を表7に示す。なお、表中には、チョコレート生地A及びBOBの配合量、並びにチョコレート生地Aにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)を、それぞれ小麦粉100質量部あたりの値で示す。
【0078】
【0079】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)試験例1-1の結果にみられるように、BOBが非配合の場合には、焼菓子にブルームが生じた。
(2)試験例1-2の結果にみられるように、BOBを小麦粉100質量部あたり0.02質量部の配合量で配合した場合にも、焼菓子にブルームが生じた。
(3)試験例1-3~1-6の結果にみられるように、BOBを小麦粉100質量部あたり0.03~0.2質量部の配合量で配合すると、焼菓子にブルームが生じなかった。
(4)試験例1-7の結果にみられるように、BOBを小麦粉100質量部あたり0.3質量部の配合量で配合すると、焼菓子にブルームは生じないものの、口とけが悪くなった。
【0080】
<試験例2>
表8に示す原材料を用いて試験例1と同様にして焼菓子を調製した。なお、バターオイル及びショートニングは、それらによる合計の脂質分が同じになるようにしつつ、これらの配合量を変動させた。
【0081】
【0082】
得られた焼菓子について、下記評価基準により評価した。
(成型適性)
◎:問題なく成型できる
〇:成型できる
×:硬すぎて押出成型出来ない、もしくは油じみする
(ブルーム)
◎:艶がある
〇:やや艶がない
×:艶がなく、白化している
(口とけ)
◎:口中における菓子の分散が優れている(さっととける)
〇:口中における菓子の分散がよい(とけやすい)
×:口中に菓子が残りやすい
(食感)
◎:サクサクと滑らかさが両立して心地よい
〇:サクサクと滑らかさが両立してほどよい
×:サクサクとせず(硬く)、滑らかさもない
【0083】
結果を表9に示す。なお、表中には、チョコレート生地A、BOB、バターオイル、及びショートニングの配合量、並びにチョコレート生地Aにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)を、それぞれ小麦粉100質量部あたりの値で示す。
【0084】
【0085】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)試験例2-1の結果にみられるように、バターオイルが非配合の場合には、焼菓子にブルームが生じた。
(2)試験例2-2の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり10質量部の配合量で配合した場合にも、焼菓子にブルームが生じた。
(3)試験例2-3~2-5の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり15~45質量部の配合量で配合すると、焼菓子にブルームが生じなかった。
(4)試験例2-6の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり50質量部の配合量で配合すると、焼菓子生地表面に油層が表出する、いわゆる油染みが生じた。
【0086】
<試験例3>
表10に示す原材料を用いて焼菓子を調製し、評価した。焼菓子の調製や評価は、試験例2と同様にして行った。
【0087】
【0088】
結果を表11に示す。なお、表中には、チョコレート生地A、BOB、バターオイル、及びショートニングの配合量、並びにチョコレート生地Aにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)を、それぞれ小麦粉100質量部あたりの値で示す。
【0089】
【0090】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)試験例3-1の結果にみられるように、バターオイルが非配合の場合には、焼菓子にブルームが生じた。
(2)試験例3-2の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり10質量部の配合量で配合した場合にも、焼菓子にブルームが生じた。
(3)試験例3-3~3-5の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり15~45質量部の配合量で配合すると、焼菓子にブルームが生じなかった。
(4)試験例3-6の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり50質量部の配合量で配合すると、焼菓子生地表面に油層が表出する、いわゆる油染みが生じた。
(5)これらの結果によれば、バターオイルの配合量を変えて調製した焼菓子生地や焼菓子の特性としては、チョコレート生地Aの配合量を小麦粉100質量部あたり30質量部から60質量部に変えても、上述した試験例2の結果と同様の傾向がみられた。
【0091】
<試験例4>
表12に示す原材料を用いて焼菓子を調製し、評価した。焼菓子の調製や評価は、試験例2、3と同様にして行った。
【0092】
【0093】
結果を表13に示す。なお、表中には、チョコレート生地A、BOB、バターオイル、及びショートニングの配合量、並びにチョコレート生地Aにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)を、それぞれ小麦粉100質量部あたりの値で示す。
【0094】
【0095】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)試験例4-1の結果にみられるように、バターオイルが非配合の場合には、焼菓子にブルームが生じた。
(2)試験例4-2の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり10質量部の配合量で配合した場合にも、焼菓子にブルームが生じた。
(3)試験例4-3~4-5の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり15~45質量部の配合量で配合すると、焼菓子にブルームが生じなかった。
(4)試験例4-6の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり50質量部の配合量で配合すると、焼菓子生地表面に油層が表出する、いわゆる油染みが生じた。
(5)これらの結果によれば、バターオイルの配合量を変えて調製した焼菓子生地や焼菓子の特性としては、チョコレート生地Aの配合量を小麦粉100質量部あたり30質量部や60質量部から90質量部に変えても、上述した試験例2や試験例3の結果と同様の傾向がみられた。
【0096】
<試験例5>
表14に示す原材料を用いて焼菓子を調製し、評価した。焼菓子の調製や評価は、試験例2~4と同様にして行った。
【0097】
【0098】
結果を表15に示す。なお、表中には、チョコレート生地A、BOB、バターオイル、及びショートニングの配合量、並びにチョコレート生地Aにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)値を、それぞれ小麦粉100質量部あたりの値で示す。
【0099】
【0100】
その結果、チョコレート生地Aの配合量を小麦粉100質量部あたり120質量部とした調製例5では、バターオイルの配合量が小麦粉100質量部あたり0~50質量部のいずれであっても、調製した焼菓子生地において、チョコレート部分の多い塊がみられ、生地が均一でなく、成型ができなかった。
【0101】
<試験例6>
表16に示す原材料を用いて試験例2と同様にして焼菓子を調製し、評価した。なお、チョコレート原料としてはチョコレート生地Aに代えてチョコレート生地Bを使用した。
【0102】
【0103】
結果を表17に示す。なお、表中には、チョコレート生地B、BOB、バターオイル、及びショートニングの配合量、並びにチョコレート生地Bにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)を、それぞれ小麦粉100質量部あたりの値で示す。
【0104】
【0105】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)試験例6-1の結果にみられるように、バターオイルが非配合の場合には、焼菓子にブルームが生じた。
(2)試験例6-2の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり10質量部の配合量で配合した場合にも、焼菓子にブルームが生じた。
(3)試験例6-3~6-5の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり15~45質量部の配合量で配合すると、焼菓子にブルームが生じなかった。
(4)試験例6-6の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり50質量部の配合量で配合すると、焼菓子生地表面に油層が表出する、いわゆる油染みが生じた。
(5)これらの結果によれば、バターオイルの配合量を変えて調製した焼菓子生地や焼菓子の特性としては、ブラック系のチョコレート生地Aからホワイト系のチョコレート生地Bに変えても、上述した試験例2の結果と同様の傾向がみられた。
【0106】
<試験例7>
表18に示す原材料を用いて焼菓子を調製し、評価した。焼菓子の調製や評価は、試験例6と同様にして行った。
【0107】
【0108】
結果を表19に示す。なお、表中には、チョコレート生地B、BOB、バター、及びショートニングの配合量、並びにチョコレート生地Bにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)を、それぞれ小麦粉100質量部あたりの値で示す。
【0109】
【0110】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)試験例7-1の結果にみられるように、バターオイルが非配合の場合には、焼菓子にブルームが生じた。
(2)試験例7-2の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり10質量部の配合量で配合した場合にも、焼菓子にブルームが生じた。
(3)試験例7-3~7-5の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり15~45質量部の配合量で配合すると、焼菓子にブルームが生じなかった。
(4)試験例7-6の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり50質量部の配合量で配合すると、焼菓子生地表面に油層が表出する、いわゆる油染みが生じた。
(5)これらの結果によれば、バターオイルの配合量を変えて調製した焼菓子生地や焼菓子の特性としては、チョコレート生地Bの配合量を小麦粉100質量部あたり30質量部から60質量部に変えても、上述した試験例6の結果と同様の傾向がみられた。また、ブラック系のチョコレート生地Aからホワイト系のチョコレート生地Bに変えても、上述した試験例3の結果と同様の傾向がみられた。
【0111】
<試験例8>
表20に示す原材料を用いて焼菓子を調製し、評価した。焼菓子の調製や評価は、試験例6、7と同様にして行った。
【0112】
【0113】
結果を表21に示す。なお、表中には、チョコレート生地B、BOB、バターオイル、及びショートニングの配合量、並びにチョコレート生地Bにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)を、それぞれ小麦粉100質量部あたりの値で示す。
【0114】
【0115】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)試験例8-1の結果にみられるように、バターオイルが非配合の場合には、焼菓子にブルームが生じた。
(2)試験例8-2の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり10質量部の配合量で配合した場合にも、焼菓子にブルームが生じた。
(3)試験例8-3~8-5の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり15~45質量部の配合量で配合すると、焼菓子にブルームが生じなかった。
(4)試験例8-6の結果にみられるように、バターオイルを小麦粉100質量部あたり50質量部の配合量で配合すると、焼菓子生地表面に油層が表出する、いわゆる油染みが生じた。
(5)これらの結果によれば、バターオイルの配合量を変えて調製した焼菓子生地や焼菓子の特性としては、チョコレート生地Bの配合量を小麦粉100質量部あたり30質量部や60質量部から90質量部に変えても、上述した試験例6や試験例7の結果と同様の傾向がみられた。また、ブラック系のチョコレート生地Aからホワイト系のチョコレート生地Bに変えても、上述した試験例4の結果と同様の傾向がみられた。
【0116】
<試験例9>
表22に示す原材料を用いて焼菓子を調製し、評価した。焼菓子の調製や評価は、試験例6~8と同様にして行った。
【0117】
【0118】
結果を表23に示す。なお、表中には、チョコレート生地B、BOB、バターオイル、及びショートニングの配合量、並びにチョコレート生地Bにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)を、それぞれ小麦粉100質量部あたりの値で示す。
【0119】
【0120】
その結果、チョコレート生地Bの配合量を小麦粉100質量部あたり120質量部とした調製例9では、バターオイルの配合量が小麦粉100質量部あたり0~50質量部のいずれであっても、調製した焼菓子生地において、チョコレート部分の多い塊がみられ、生地が均一でなく、成型ができなかった。
【0121】
<試験例10>
表24に示す原材料を用いて試験例2と同様にして焼菓子を調製し、評価した。なお、澱粉質原料としては小麦粉と米粉を使用した。
【0122】
【0123】
結果を表25に示す。なお、表中には、チョコレート生地A、BOB、バターオイル、及びショートニングの配合量、並びにチョコレート生地Aにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)を、それぞれ澱粉質原料(小麦粉及び米粉)100質量部あたりの値で示す。
【0124】
【0125】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)試験例10-1の結果にみられるように、バターオイルが非配合の場合には、焼菓子にブルームが生じた。
(2)試験例10-2の結果にみられるように、バターオイルを澱粉質原料(小麦粉及び米粉)100質量部あたり10質量部の配合量で配合した場合にも、焼菓子にブルームが生じた。
(3)試験例10-3~10-5の結果にみられるように、バターオイルを澱粉質原料(小麦粉及び米粉)100質量部あたり15~45質量部の配合量で配合すると、焼菓子にブルームが生じなかった。
(4)試験例10-6の結果にみられるように、バターオイルを澱粉質原料(小麦粉及び米粉)100質量部あたり50質量部の配合量で配合すると、焼菓子生地表面に油層が表出する、いわゆる油染みが生じた。
(5)これらの結果によれば、バターオイルの配合量を変えて調製した焼菓子生地や焼菓子の特性としては、使用する小麦粉の2割を米粉に置換しても、上述した試験例3の結果と同様の傾向がみられた。
【0126】
<試験例11>
表26に示す原材料を用いて試験例2と同様にして焼菓子を調製し、評価した。なお、澱粉質原料としては小麦粉と大麦粉を使用した。
【0127】
【0128】
結果を表27に示す。なお、表中には、チョコレート生地A、BOB、バターオイル、及びショートニングの配合量、並びにチョコレート生地Aにより配合されたカカオ脂分(カカオ脂、POS、SOS、POP)の値(表中、カッコ内)を、それぞれ澱粉質原料(小麦粉及び大麦粉)100質量部あたりの値で示す。
【0129】
【0130】
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)試験例11-1の結果にみられるように、バターオイルが非配合の場合には、焼菓子にブルームが生じた。
(2)試験例11-2の結果にみられるように、バターオイルを澱粉質原料(小麦粉及び大麦粉)100質量部あたり10質量部の配合量で配合した場合にも、焼菓子にブルームが生じた。
(3)試験例11-3~11-5の結果にみられるように、バターオイルを澱粉質原料(小麦粉及び大麦粉)100質量部あたり15~45質量部の配合量で配合すると、焼菓子にブルームが生じなかった。
(4)試験例11-6の結果にみられるように、バターオイルを澱粉質原料(小麦粉及び大麦粉)100質量部あたり50質量部の配合量で配合すると、焼菓子生地表面に油層が表出する、いわゆる油染みが生じた。
(5)これらの結果によれば、バターオイルの配合量を変えて調製した焼菓子生地や焼菓子の特性としては、使用する小麦粉の2割を大麦粉に置換しても、上述した試験例3の結果と同様の傾向がみられた。