(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145675
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの設計方法及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H05K 7/00 20060101AFI20241004BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H05K7/00 D
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058126
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓実
(72)【発明者】
【氏名】滑川 雅彦
【テーマコード(参考)】
4E352
5G352
【Fターム(参考)】
4E352AA03
4E352AA09
4E352AA16
4E352CC40
4E352DD15
4E352DR02
4E352GG12
4E352GG21
5G352CH01
5G352CH02
(57)【要約】
【課題】複数の配線エリアを対象とする配策作業が容易となるワイヤハーネスの設計方法及びワイヤハーネスを得る。
【解決手段】ワイヤハーネス82の設計方法は、エリア設定工程と、情報決定工程と、位置決定工程と、を含む。エリア設定工程では、ハーネス本体83が配策される車体12が、配線エリアB、C、Dに区分される。情報決定工程では、配線エリアB、C、Dのそれぞれに対応する表示情報が決定される。位置決定工程では、表示情報を含む表示部材36、46、56のハーネス本体83に対する取付位置が決定される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーネス本体が配策される配策対象物を複数の配線エリアに区分するエリア設定工程と、
前記複数の配線エリアのそれぞれに対応する表示情報を決定する情報決定工程と、
前記表示情報を含む表示部材の前記ハーネス本体に対する取付位置を決定する位置決定工程と、を含む、
ワイヤハーネスの設計方法。
【請求項2】
前記ハーネス本体は、2以上の前記配線エリアに跨って配策されるものであり、
前記ハーネス本体を前記2以上の配線エリアに応じて複数の部位に区分する区分工程をさらに含み、
前記位置決定工程では、前記複数の部位のそれぞれについて前記取付位置を決定する、
請求項1に記載のワイヤハーネスの設計方法。
【請求項3】
前記ハーネス本体は、2以上の前記配線エリアに跨って配策されるものであり、
前記ハーネス本体を前記2以上の配線エリアに応じて複数の部位に区分する区分工程をさらに含み、
前記位置決定工程では、隣り合う2つの前記部位の境界位置を前記取付位置と決定する、
請求項1に記載のワイヤハーネスの設計方法。
【請求項4】
前記ハーネス本体は、幹線部と、分岐部で前記幹線部から分かれる枝線部とを有し、
前記位置決定工程では、前記分岐部を前記取付位置と決定する、
請求項1に記載のワイヤハーネスの設計方法。
【請求項5】
前記情報決定工程で決定される前記表示情報は、前記複数の配線エリアのそれぞれに対応する色である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネスの設計方法。
【請求項6】
前記情報決定工程で決定される前記表示情報は、前記複数の配線エリアのそれぞれに対応する文字又は文字列である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネスの設計方法。
【請求項7】
複数の配線エリアを有する配策対象物に配策されるハーネス本体と、
前記ハーネス本体に取り付けられた表示部材であって、前記複数の配線エリアのそれぞれに対応する表示情報を含む少なくとも1つの前記表示部材と、
を備える、ワイヤハーネス。
【請求項8】
前記ハーネス本体は、2以上の前記配線エリアに跨って配策されるものであり、且つ前記2以上の配線エリアに応じた複数の部位を有し、
前記表示部材は、前記複数の部位のそれぞれに取り付けられている、
請求項7に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記ハーネス本体は、2以上の前記配線エリアに跨って配策されるものであり、且つ前記2以上の配線エリアに応じた複数の部位を有し、
前記表示部材は、隣り合う2つの前記部位の境界位置に取り付けられている、
請求項7に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記ハーネス本体は、幹線部と、分岐部で前記幹線部から分かれる枝線部とを有し、
前記表示部材は、前記分岐部に取り付けられている、
請求項7に記載のワイヤハーネス。
【請求項11】
前記表示情報は、前記複数の配線エリアのそれぞれに対応する色である、
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項12】
前記表示情報は、前記複数の配線エリアのそれぞれに対応する文字又は文字列である、
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの設計方法及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ツイストペアケーブルを備えたワイヤハーネスが示されている。ツイストペアケーブルの芯線は、外被チューブによってまとめられている。外被チューブには、ツイストペアケーブルが接続される端子盤の各端子群エリアの識別色と同じ色が着色され、識別番号が付されている。端子盤の各端子は、ワイヤハーネスによって情報機器端末と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤハーネスは、家電製品のように小さな配策対象物に限らず、車両や航空機のように大きな配策対象物にも用いられる。大きな配策対象物は、複数の配線エリアを有する。
【0005】
しかし、大きな配策対象物に特許文献1のワイヤハーネスを配策する場合、作業者は、ワイヤハーネスの末端部の接続先を判断することはできるが、末端部以外の部分をどの配線エリアに配策するのか判断しにくい。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、複数の配線エリアを対象とする配策作業が容易となるワイヤハーネスの設計方法及びワイヤハーネスを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るワイヤハーネスの設計方法は、エリア設定工程と、情報決定工程と、位置決定工程と、を含む。エリア設定工程では、ハーネス本体が配策される配策対象物が、複数の配線エリアに区分される。情報決定工程では、前記複数の配線エリアのそれぞれに対応する表示情報が決定される。位置決定工程では、前記表示情報を含む表示部材の前記ハーネス本体に対する取付位置が決定される。
【0008】
本発明の一態様に係るワイヤハーネスは、ハーネス本体と、少なくとも1つの表示部材と、を備える。ハーネス本体は、複数の配線エリアを有する配策対象物に配策される。前記表示部材は、前記ハーネス本体に取り付けられる。前記表示部材は、前記複数の配線エリアのそれぞれに対応する表示情報を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るワイヤハーネスの設計方法によれば、複数の配線エリアを対象とする配策作業が容易となるワイヤハーネスを得ることができる。
本発明に係るワイヤハーネスによれば、複数の配線エリアを対象とする配策作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1実施形態の配線エリア及びワイヤハーネスを示す図である。
【
図3】第1実施形態のワイヤハーネス設計装置及びワイヤハーネス製造装置を示す図である。
【
図4A】
図2の配線エリアAの車体に配策されるワイヤハーネスを示す図である。
【
図4B】
図2の配線エリアBの車体に配策されるワイヤハーネスを示す図である。
【
図4C】
図2の配線エリアCの車体に配策されるワイヤハーネスを示す図である。
【
図4D】
図2の配線エリアDの車体に配策されるワイヤハーネスを示す図である。
【
図4E】
図2の配線エリアEの車体に配策されるワイヤハーネスを示す図である。
【
図5】第2実施形態の配線エリア及びワイヤハーネスを示す図である。
【
図6】
図5の配線エリア及びワイヤハーネスを具体的に示す図である。
【
図7】
図5の配線エリア及びワイヤハーネスを具体的に示す図である。
【
図8】第3実施形態の配線エリア及びワイヤハーネスを示す図である。
【
図9】
図8の配線エリア及びワイヤハーネスを具体的に示す図である。
【
図10】
図8の配線エリア及びワイヤハーネスを具体的に示す図である。
【
図11A】第3実施形態の表示部材が境界位置PAに位置する状態を示す図である。
【
図11B】第3実施形態の表示部材が境界位置PBに位置する状態を示す図である。
【
図11C】第3実施形態の表示部材が境界位置PCに位置する状態を示す図である。
【
図11D】第3実施形態の表示部材が境界位置PDに位置する状態を示す図である。
【
図12】第4実施形態の配線エリア及びワイヤハーネスを示す図である。
【
図13】変形例1の配線エリア及びワイヤハーネスを具体的に示す図である。
【
図14】変形例1の配線エリア及びワイヤハーネスを具体的に示す図である。
【
図17A】第1実施形態の表示部材の変形例を示す図である。
【
図17B】第1実施形態の表示部材の変形例を示す図である。
【
図17C】第1実施形態の表示部材の変形例を示す図である。
【
図17D】第1実施形態の表示部材の変形例を示す図である。
【
図17E】第1実施形態の表示部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1には、鉄道車両10が示されている。鉄道車両10は、車両の一例である。鉄道車両10は、車体12と、複数の台車19と、後述するワイヤハーネス群21(
図2)とを含む。
【0013】
以後の説明では、鉄道車両10の進行方向をY方向とする。また、鉄道車両10の高さ方向をZ方向とする。さらに、鉄道車両10の幅方向をX方向とする。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交している。矢印Yの先端側は、進行側(前側)に相当する。矢印Yの基端側は、後側に相当する。矢印Xの先端側は、進行側を向いた場合の左側に相当する。矢印Xの基端側は、進行側を向いた場合の右側に相当する。矢印Zの先端側は、上側に相当する。矢印Zの基端側は、下側に相当する。なお、図に斜線が示されている場合、当該斜線は、各部材の色を区別するための表示であり、断面を表示するものではない。
【0014】
図2に示されるように、車体12は、運転室14と、前側出入台15と、客室16と、後側出入台17と、床下部18と、を有する。車体12は、配策対象物の一例である。複数の台車19は、床下部18に設けられている。車体12には、不図示の電装品を電気的に接続するワイヤハーネス群21が配策されている。ワイヤハーネス群21は、ワイヤハーネス22、32、42、52、62を含む。車体12は、配線エリアA、B、C、D、Eを有する。
【0015】
運転室14の内側のエリアを配線エリアAとする。前側出入台15の内側のエリアを配線エリアBとする。客室16の内側のエリアを配線エリアCとする。後側出入台17の内側のエリアを配線エリアDとする。床下部18の内側のエリアを配線エリアEとする。配線エリアA、B、C、D、Eは、複数の配線エリアの一例である。
【0016】
配線エリアAには、ワイヤハーネス22が配策されている。配線エリアBには、ワイヤハーネス32が配策されている。配線エリアCには、ワイヤハーネス42が配策されている。配線エリアDには、ワイヤハーネス52が配策されている。配線エリアEには、ワイヤハーネス62が配策されている。
【0017】
配線エリアAには、基準位置P1が設定されている。配線エリアBには、基準位置P2が設定されている。配線エリアCには、基準位置P3が設定されている。配線エリアDには、基準位置P4が設定されている。配線エリアEには、基準位置P5が設定されている。ここで、「基準位置」とは、ワイヤハーネス22、32、42、52、62が車体12に配策される場合の、それぞれの配策作業の開始位置を意味する。なお、基準位置P1、P2、P3、P4、P5は、車体12に表示されていなくてもよい。例えば、基準位置P1、P2、P3、P4、P5が、鉄道車両10の不図示の設計図面に表示されてもよい。
【0018】
図3には、ネットワークN、データサーバ20、ワイヤハーネス設計装置30及びワイヤハーネス製造装置40が示されている。データサーバ20、ワイヤハーネス設計装置30及びワイヤワイヤハーネス製造装置40は、ネットワークNを介してデータの送受信を行う。データサーバ20は、鉄道車両10(
図1)の設計データ等を記憶している。
【0019】
ワイヤハーネス設計装置30では、各種の鉄道車両における配線レイアウトの設計、及び各種のワイヤハーネスの設計が可能である。ワイヤハーネス設計装置30は、入力部31Aと、表示部31Bと、通信部31Cと、図面作成部31Dと、を備えている。入力部31Aでは、設計者による各種のデータの入力が行われる。表示部31Bでは、各種のデータ及び図面の表示が行われる。通信部31Cでは、ネットワークNを介したデータの送受信が行われる。
【0020】
図面作成部31Dは、不図示のCPU(Central Processing Unit)、メモリ、ストレージ等を組み合わせて実現されている。図面作成部31Dは、一例として、パーソナルコンピュータにより構成されている。図面作成部31Dでは、入力部31Aにおいて入力された各種のデータ等に基づいて、各種のワイヤハーネスの二次元又は三次元の図面が作成可能である。
【0021】
図1及び
図3に示されるように、ワイヤハーネス設計装置30は、一例として、ネットワークNを介してデータサーバ20から鉄道車両10の車両設計データ(接続対象機器等のデータを含む)を取得する。ワイヤハーネス設計装置30は、取得した車両設計データに基づいて、車体12の配線エリアの区分や、車体12に配線される複数の種類、複数の本数のワイヤ(信号線、電源線)の配線レイアウトを設計する。ワイヤハーネス設計装置30は、一例として、ワイヤハーネスの二次元図面を作成する。
【0022】
ワイヤハーネス製造装置40は、二次元図面のデータを、ネットワークNを介してワイヤハーネス設計装置30から取得する。そして、ワイヤハーネス製造装置40は、当該二次元図面上にワイヤを順次、布線することで、ワイヤハーネス22、32、42、52、62(
図2)を製造する装置である。なお、ワイヤハーネス製造装置40の操作は、作業者による手動操作、コンピュータを用いた自動操作のいずれであってもよい。ワイヤハーネス製造装置40は、一例として、制御部41Aと、ワイヤ供給部41Bと、ワイヤ切断部41Cと、通信部41Dと、作業台41Eと、を備えている。
【0023】
制御部41Aは、不図示のCPU、メモリ、ストレージ等を組み合わせて実現されている。ワイヤ供給部41Bは、作業台41Eに向けてワイヤを供給する。ワイヤ切断部41Cは、作業台41Eに供給されたワイヤを切断する。通信部41Dでは、ネットワークNを介した通信が行われる。作業台41Eには、一例として、ワイヤハーネス設計装置30で作成された2次元図面が表示されている。作業台41Eでは、作業者がワイヤの結束作業を行う。なお、作業台41Eにおいて、不図示のロボットがワイヤの結束作業を行ってもよい。
【0024】
次に、ワイヤハーネス22、32、42、52、62について説明する。
【0025】
図4Aに示されるように、ワイヤハーネス22は、ハーネス本体23と、複数の表示部材26と、複数の結束部材27と、1つの基準部材28と、コネクタ29A、29B(
図2)と、を備える。ハーネス本体23は、複数のケーブル及び/又は複数のワイヤを有する。結束部材27は、一例として、黒色の結束バンドである。複数のケーブル及び複数のワイヤが、複数の結束部材27によって結束されることで、ハーネス本体23が形成されている。
【0026】
基準部材28は、一例として、白色のビニールテープである。基準部材28は、ハーネス本体23に巻き付けられることで、ハーネス本体23に取り付けられている。基準部材28は、ハーネス本体23のうち1箇所のみに取り付けられている。基準部材28は、結束部材27及び後述する各表示部材とは、色又は大きさが異なっている。基準部材28は、ワイヤハーネス22が車体12(
図2)に配策される場合、基準位置P1(
図2)に配置される。
【0027】
表示部材26は、一例として、赤色のビニールテープである。表示部材26は、ハーネス本体23に巻き付けられることで、ハーネス本体23に取り付けられている。表示部材26は、ハーネス本体23の複数の箇所に取り付けられている。表示部材26が含む表示情報は、配線エリアA(
図2)に対応する色であり、赤色である。
【0028】
図4Bに示されるように、ワイヤハーネス32は、ハーネス本体33と、複数の表示部材36と、複数の結束部材27と、1つの基準部材28と、コネクタ39A、39B(
図2)と、を備える。ハーネス本体33は、複数のケーブル及び複数のワイヤを有する。
【0029】
表示部材36は、一例として、緑色のビニールテープである。表示部材36は、ハーネス本体33に巻き付けられることで、ハーネス本体33に取り付けられている。表示部材36は、ハーネス本体33の複数の箇所に取り付けられている。表示部材36が含む表示情報は、配線エリアB(
図2)に対応する色であり、緑色である。
【0030】
図4Cに示されるように、ワイヤハーネス42は、ハーネス本体43と、複数の表示部材46と、複数の結束部材27と、1つの基準部材28と、コネクタ49A、49B(
図2)と、を備える。ハーネス本体43は、複数のケーブル及び複数のワイヤを有する。
【0031】
表示部材46は、一例として、青色のビニールテープである。表示部材46は、ハーネス本体43に巻き付けられることで、ハーネス本体43に取り付けられている。表示部材46は、ハーネス本体43の複数の箇所に取り付けられている。表示部材46が含む表示情報は、配線エリアC(
図2)に対応する色であり、青色である。
【0032】
図4Dに示されるように、ワイヤハーネス52は、ハーネス本体53と、複数の表示部材56と、複数の結束部材27と、1つの基準部材28と、コネクタ59A、59B(
図2)と、を備える。ハーネス本体53は、複数のケーブル及び複数のワイヤを有する。
【0033】
表示部材56は、一例として、桃色のビニールテープである。表示部材56は、ハーネス本体53に巻き付けられることで、ハーネス本体53に取り付けられている。表示部材56は、ハーネス本体53の複数の箇所に取り付けられている。表示部材56が含む表示情報は、配線エリアD(
図2)に対応する色であり、桃色である。
【0034】
図4Eに示されるように、ワイヤハーネス62は、ハーネス本体63と、複数の表示部材66と、複数の結束部材27と、1つの基準部材28と、コネクタ69A、69B(
図2)と、を備える。ハーネス本体63は、複数のケーブル及び複数のワイヤを有する。
【0035】
表示部材66は、一例として、橙色のビニールテープである。表示部材66は、ハーネス本体63に巻き付けられることで、ハーネス本体63に取り付けられている。表示部材66は、ハーネス本体63の複数の箇所に取り付けられている。表示部材66が含む表示情報は、配線エリアE(
図2)に対応する色であり、橙色である。このように、表示部材26、36、46、56、66は、配線エリアA、B、C、D、E(
図2)に対応する表示情報として、互いに異なる色を含んでいる。
【0036】
図1、
図2、
図3及び
図4Aを参照して、ワイヤハーネス22の設計方法について説明する。なお、ワイヤハーネス32、42、52、62の設計方法は、各部材の配置、長さ、色等を除いてワイヤハーネス22の設計方法と同様の工程で行われるため、説明を省略する。本実施形態では、設計者がワイヤハーネス設計装置30を操作することで、ワイヤハーネス22が設計される。
【0037】
ワイヤハーネス設計装置30は、車体12を配線エリアA、B、C、D、Eに区分する(エリア設定工程の一例)。配線エリアA、B、C、D、Eは、既述のように、運転室14、前側出入台15、客室16、後側出入台17、床下部18に合わせて設定されている。
【0038】
ワイヤハーネス設計装置30は、配線エリアA、B、C、D、Eのそれぞれに対応する表示情報として、それぞれの色を決定する。具体的には、配線エリアAに対応する色を赤色、配線エリアBに対応する色を緑色、配線エリアCに対応する色を青色、配線エリアDに対応する色を桃色、配線エリアEに対応する色を橙色に決定する(情報決定工程の一例)。色の決定は、例えば、予め設定されている色テーブルから順番に色を選択することで行ってもよい。
【0039】
ワイヤハーネス設計装置30は、ハーネス本体23における複数の表示部材26の取付位置を決定する。具体的には、ワイヤハーネス設計装置30は、ハーネス本体23のうち、基準部材28の取付位置を除いて、複数の表示部材26の取付位置を決定する(位置決定工程の一例)。なお、ハーネス本体23が屈曲部を有する場合、当該屈曲部を取付位置から除いてもよい。複数の取付位置の間隔は、等間隔、異なる間隔のいずれであってもよい。
【0040】
図2、
図3及び
図4Aを参照して、ワイヤハーネス22の製造方法について説明する。なお、ワイヤハーネス32、42、52、62の製造方法については、ワイヤハーネス22の製造方法と同様であるため説明を省略する。本実施形態では、作業者がワイヤハーネス製造装置40を操作することで、ワイヤハーネス22が製造される。
【0041】
ワイヤハーネス製造装置40は、複数のワイヤ(複数のケーブル含む)を作業台41Eに供給すると共に、予め設定された長さに切断する。作業者は、作業台41Eにおいて、複数の結束部材27を用いて複数のワイヤを結束する。これにより、ハーネス本体23が形成される。作業者は、ハーネス本体23に基準部材28を取り付ける。さらに、作業者は、予め決定された取付位置に対応するように、ハーネス本体23に複数の表示部材26を取り付ける。加えて、作業者は、ハーネス本体23にコネクタ29A、29Bを取り付ける。このようにして、ワイヤハーネス22が出来上がる。なお、コネクタ29A、29Bは、車両10(配策対象物)にハーネス本体23を配策し、電装品と電気的に接続する際に配策済のハーネス本体23に取付けるようにしてもよい。
【0042】
図1、
図2、
図3、
図4Aから
図4Eまでを参照して、鉄道車両10の製造方法について説明する。なお、鉄道車両10の製造方法のうち、ワイヤハーネス群21の取付工程について説明する。ワイヤハーネス群21の取付工程を除く他の工程については、説明を省略する。車体12には、予め、不図示の複数のクランプが設けられている。
【0043】
作業者は、配線エリアAに対応する色が赤色であることから、赤色の表示部材26を有するワイヤハーネス22を選択する。作業者は、配線エリアAにおいて、ワイヤハーネス22の基準部材28を基準位置P1に配置する。そして、作業者は、ワイヤハーネス22の一部を車体12に取り付ける。また、作業者は、設計図面を確認しながら、ワイヤハーネス22の残りの部位を車体12に順次、取り付けていく(配策する)。そして、作業者は、コネクタ29A、29Bを、不図示の電装品に接続する。さらに、作業者は、ワイヤハーネス22の取付手順と同様の手順により、ワイヤハーネス32、42、52、62を、車体12の配線エリアB、C、D、Eに取り付ける(配策する)。このようにして、鉄道車両10が出来上がる。
【0044】
以上、説明した通り、上記の設計方法によって設計されたワイヤハーネス22、32、42、52、62について、表示部材26、36、46、56、66の表示情報は、配線エリアA、B、C、D、Eに対応している。これにより、作業者は、表示部材26、36、46、56、66を見ることで、ワイヤハーネス22、32、42、52、62のそれぞれが、配線エリアA、B、C、D、Eのどのエリアに対応しているかを容易に判断できる。つまり、配線エリアA、B、C、D、Eを対象とする配策作業が容易となるワイヤハーネス22、32、42、52、62を得ることができる。
【0045】
また、上記の設計方法によって設計されたワイヤハーネス22、32、42、52、62について、表示部材26、36、46、56、66の表示情報は、配線エリアA、B、C、D、Eに対応する色となっている。これにより、表示部材26、36、46、56、66のそれぞれに複数の表示情報が表示されるものと比べて、表示部材26、36、46、56、66を区別し易くなる。
【0046】
鉄道車両10の製造方法によれば、表示部材26、36、46、56、66によって、ワイヤハーネス22、32、42、52、62が区別される。これにより、作業者が、配線エリアA、B、C、D、Eに対して、誤った組合せのワイヤハーネス22、32、42、52、62を取り付けることを抑制できる。
【0047】
ワイヤハーネス22、32、42、52、62によれば、配線エリアA、B、C、D、Eとハーネス本体23、33、43、53、63とが、一対一で対応している。さらに、表示部材26、36、46、56、66は、ハーネス本体23、33、43、53、63にそれぞれ複数取り付けられている。これにより、ハーネス本体23、33、43、53、63のそれぞれが、一度に全体を視認できない程度に大きいものであっても、表示部材26、36、46、56、66を見れば、ワイヤハーネス22、32、42、52、62を区別できる。つまり、作業者は、ワイヤハーネス22、32、42、52、62の区別を容易に行うことができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一又は同様の構成及び作用については、第1実施形態の符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
図5には、鉄道車両70が示されている。鉄道車両70は、車両の一例である。鉄道車両70は、車体12と、複数の台車19と、後述するワイヤハーネス群71と、を含む。ワイヤハーネス群71は、不図示の電装品を電気的に接続する。また、ワイヤハーネス群71は、ワイヤハーネス72、82、92を含む。
【0050】
配線エリアAには、ワイヤハーネス72を取り付けるための基準位置P6が設定されている。配線エリアCには、ワイヤハーネス82を取り付けるための基準位置P7と、ワイヤハーネス92を取り付けるための基準位置P8とが設定されている。基準位置P6、P7、P8は、車体12に表示されていなくてもよい。例えば、基準位置P6、P7、P8が鉄道車両70の不図示の設計図面に表示されてもよい。
【0051】
図6に示されるように、配線エリアAと配線エリアBとの間の領域を境界領域SAとする。
図7に示されるように、配線エリアBと配線エリアCとの間の領域を境界領域SBとする。配線エリアCと配線エリアDとの間の領域を境界領域SCとする。配線エリアCと配線エリアEとの間の領域を境界領域SDとする。
図6及び
図7では、一例として、境界領域SA、SB、SC、SDが、それぞれ帯状の領域として示されている。なお、境界領域SA、SB、SC、SDは、それぞれ境界線として存在していてもよい。
【0052】
図6に示されるように、ワイヤハーネス72は、ハーネス本体73と、複数の表示部材26、36と、複数の結束部材27と、1つの基準部材28と、コネクタ79Bと、コネクタ79A、79C(
図5)と、を備える。ハーネス本体73は、ケーブル及びワイヤを有する。ハーネス本体73は、配線エリアA、Bに跨って配策されるものである。また、ハーネス本体73は、幹線部75と、分岐部74で幹線部75から分かれる枝線部76と、を有する。ワイヤハーネス72の基準部材28は、基準位置P6(
図5)に配置されている。
【0053】
幹線部75は、前部75Aと、後部75Bと、を有する。つまり、ハーネス本体73は、配線エリアA、Bに応じて、前部75Aと後部75Bとに区分されている。前部75Aは、配線エリアAの内側に配置されている。後部75Bは、配線エリアBの内側に配置されている。Y方向において、前部75Aと後部75Bとが隣り合う位置を境界位置PAとする。境界位置PAは、境界領域SAの内側に位置している。なお、本実施形態において、「ハーネス本体を区分すること」とは、ハーネス本体の複数の部位に異なる名称を用いて概念的に区別することを意味しており、ハーネス本体を物理的に分割することを意味していない。
【0054】
複数の表示部材26は、配線エリアAの内側において、幹線部75及び枝線部76に取り付けられている。複数の表示部材26のうち、1つの表示部材26は、分岐部74に取り付けられている。なお、表示部材26は、ハーネス本体73の分岐部74に隣り合う位置に取り付けられてもよい。複数の表示部材36は、配線エリアBの内側において、幹線部75に取り付けられている。
【0055】
図7に示されるように、ワイヤハーネス82は、ハーネス本体83と、複数の表示部材36、46、56と、複数の結束部材27と、1つの基準部材28と、コネクタ89A、89B、89C(
図5)と、を備える。ハーネス本体83は、ケーブル及びワイヤを有する。ハーネス本体83は、配線エリアB、C、Dに跨って配策されるものである。また、ハーネス本体83は、幹線部85と、分岐部84で幹線部85から分かれる枝線部86と、を有する。ワイヤハーネス82の基準部材28は、基準位置P7(
図5)に配置されている。
【0056】
幹線部85は、前部85Aと、中部85Bと、後部85Cと、を有する。前部85Aは、配線エリアBの内側に配置されている。中部85Bは、配線エリアCの内側に配置されている。後部85Cは、配線エリアDの内側に配置されている。Y方向において、前部85Aと中部85Bとが隣り合う位置を境界位置PBとする。境界位置PBは、境界領域SBの内側に位置している。Y方向において、中部85Bと後部85Cとが隣り合う位置を境界位置PCとする。境界位置PCは、境界領域SCの内側に位置している。
【0057】
枝線部86は、配線エリアCの内側において、分岐部84で幹線部85から分岐されている。また、枝線部86は、配線エリアB、Cに跨っている。枝線部86は、前部86Aと、後部86Bとを有する。前部86Aは、配線エリアBの内側に配置されている。後部86Bは、配線エリアCの内側に配置されている。Y方向において、前部86Aと後部86Bとが隣り合う位置を、境界位置PBとする。このように、ハーネス本体83は、配線エリアB、C、Dに応じて、前部85A、前部86A、中部85B、後部86B、後部85Cに区分されている。
【0058】
複数の表示部材36は、配線エリアBの内側において、前部85A及び前部86Aに取り付けられている。複数の表示部材46は、配線エリアCの内側において、中部85B及び後部86Bに取り付けられている。複数の表示部材56は、配線エリアDの内側において、後部85Cに取り付けられている。換言すると、複数の表示部材36、46、56の取付位置は、境界位置PB、PCとは異なる複数の位置に設定されている。複数の表示部材46のうち、1つの表示部材46は、分岐部84に取り付けられている。なお、表示部材46は、ハーネス本体83の分岐部84に隣り合う位置に取り付けられてもよい。
【0059】
ワイヤハーネス92は、ハーネス本体93と、複数の表示部材46、66と、複数の結束部材27と、1つの基準部材28と、コネクタ99A、99B(
図5)と、を備える。ハーネス本体93は、複数のケーブル及び/又はワイヤを有する。ハーネス本体93は、配線エリアC、Eに跨って配策されるものである。ワイヤハーネス92の基準部材28は、基準位置P8(
図5)に配置されている。
【0060】
ハーネス本体93は、上部93Aと、下部93Bと、を有する。つまり、ハーネス本体93は、配線エリアC、Eに応じて、上部93Aと下部93Bとに区分されている。上部93Aは、配線エリアCの内側に配置されている。下部93Bは、配線エリアEの内側に配置されている。Z方向において、上部93Aと下部93Bとが隣り合う位置を境界位置PDとする。境界位置PDは、境界領域SDの内側に位置している。
【0061】
図3、
図5、
図6及び
図7を参照して、ワイヤハーネス82の設計方法及び製造方法について説明する。ワイヤハーネス22(
図4A)の設計方法及び製造方法と同様の工程については、説明を省略する。なお、ワイヤハーネス72、92の設計方法及び製造方法については、各部材の配置、長さ、色等を除いてワイヤハーネス82の設計方法及び製造方法と同様の手順で行われるため、説明を省略する。本実施形態では、設計者がワイヤハーネス設計装置30を操作することで、ワイヤハーネス82が設計される。また、作業者がワイヤハーネス製造装置40を操作することで、ワイヤハーネス82が製造される。
【0062】
ワイヤハーネス設計装置30は、ハーネス本体83を、配線エリアB、C、Dに応じて、前部85A、前部86A、中部85B、後部86B、後部85Cに区分する(区分工程の一例)。ワイヤハーネス設計装置30は、前部85A、前部86A、中部85B、後部86B、後部85Cのそれぞれについて、基準部材28の取付位置を除いて、表示部材36、46、56の取付位置を決定する(位置決定工程の一例)。ワイヤハーネス設計装置30は、分岐部84を表示部材46の取付位置と決定する。
【0063】
ワイヤハーネス製造装置40において、ハーネス本体83が形成される。作業者は、ハーネス本体83に基準部材28を取り付ける。さらに、作業者は、予め決定された取付位置に対応するように、ハーネス本体83に複数の表示部材36、46、56を取り付ける。加えて、作業者は、ハーネス本体83にコネクタ89A、89B、89Cを取り付ける。このようにして、ワイヤハーネス82が出来上がる。
【0064】
鉄道車両70の製造において、作業者は、配線エリアCにおいて、ワイヤハーネス82の基準部材28を基準位置P7に配置する。そして、作業者は、ワイヤハーネス82の一部を車体12に取り付ける。また、作業者は、設計図面を確認しながら、ワイヤハーネス82の残りの部位を車体12に順次、取り付けていく(配策する)。具体的には、作業者は、配線エリアCにおいて、複数の表示部材46が取り付けられた中部85B及び後部86Bを車体12に取り付ける。作業者は、同様に、配線エリアB、Dにおいて、複数の表示部材36、56が取り付けられた前部85A、86A及び後部85Cを車体12に取り付ける。このようにして、鉄道車両70が出来上がる。
【0065】
以上、説明した通り、ワイヤハーネス72、82、92の設計方法及び製造方法によれば、表示部材26、36、46、56、66の表示情報は、配線エリアA、B、C、D、Eに対応している。これにより、配線エリアA、B、C、D、Eを対象とする配線作業が容易となるワイヤハーネス72、82、92を得ることができる。
【0066】
また、ワイヤハーネス72、82、92のように、複数の配線エリアA、B、C、D、Eに跨るものであっても、ワイヤハーネス72、82、92を複数の部位に区分することで、表示部材26、36、46、56、66の取付位置が決まる。これにより、同じ表示部材が、異なる配線エリアに配置されることを防ぐことができる。さらに、分岐部74、84に表示部材26、46が取り付けられているので、作業者は、分岐部74、84がどの配線エリアに取り付けられるか、容易に判断することができる。
【0067】
鉄道車両70の製造方法によれば、鉄道車両10(
図2)の製造方法と同様に、配線エリアA、B、C、D、Eに対して、誤った組合せのワイヤハーネス72、82、92が取り付けられることを抑制できる。
【0068】
ワイヤハーネス82によれば、ハーネス本体83の複数の部位のそれぞれについて、表示部材36、46、56のうち、いずれか1つが取り付けられている。これにより、ハーネス本体83のように、配線エリアB、C、Dに跨って配策されるものであっても、作業者は、ハーネス本体83の各部を取り付ける配線エリアを容易に判断することができる。なお、ワイヤハーネス72、92についても同様である。
【0069】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、第1、第2実施形態と同一又は同様の構成及び作用については、第1、第2実施形態の符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
図8には、鉄道車両100が示されている。鉄道車両100は、車両の一例である。鉄道車両100と鉄道車両70(
図5)との相違点は、ワイヤハーネス群101を有する点のみである。ワイヤハーネス群101は、不図示の電装品を電気的に接続する。また、ワイヤハーネス群101は、ワイヤハーネス102、112、122を含む。
【0071】
図9に示されるように、ワイヤハーネス102は、ハーネス本体73と、1つの表示部材104と、複数の結束部材103と、1つの基準部材28と、コネクタ79A、79B、79C(
図8)と、を備える。表示部材104の取付位置は、境界位置PA(
図8)に設定されている。
【0072】
図10に示されるように、ワイヤハーネス112は、ハーネス本体83と、2つの表示部材107と、1つの表示部材108と、複数の結束部材103と、1つの基準部材28と、コネクタ89A、89B、89C(
図8)と、を備える。表示部材107の取付位置は、境界位置PB(
図8)に設定されている。表示部材108の取付位置は、境界位置PC(
図8)に設定されている。
【0073】
ワイヤハーネス122は、ハーネス本体93と、1つの表示部材109と、複数の結束部材103と、1つの基準部材28と、コネクタ99A、99B(
図8)と、を備える。表示部材109の取付位置は、境界位置PD(
図8)に設定されている。
【0074】
図11Aに示されるように、表示部材104は、ハーネス本体73に取り付けられた本体部材105と、本体部材105に貼り付けられたシール部材106A、106Bとを有する。本体部材105は、結束バンドとして形成されている。本体部材105は、ハーネス本体73を結束した状態で、ハーネス本体73に取り付けられている。また、本体部材105は、円筒状に形成されている。
【0075】
シール部材106Aは、配線エリアA(
図9)に対応して赤色に着色されている。シール部材106Aは、本体部材105の外周部分に、周方向に沿って貼り付けられている。シール部材106Bは、配線エリアB(
図9)に対応して緑色に着色されている。シール部材106Bは、本体部材105の外周部分に、シール部材106Aと隣り合った状態で、周方向に沿って貼り付けられている。
【0076】
シール部材106Aとシール部材106Bとの境界を表す線を境界線CL1とする。境界線CL1は、境界位置PA上に位置している。換言すると、表示部材104は、ハーネス本体73の境界位置PAに取り付けられている。このように、表示部材104は、配線エリアAと配線エリアBとの境界を表示している。
【0077】
図11Bには、表示部材107が示されている。表示部材107と表示部材104(
図11A)との相違点は、シール部材106B、106Cを有する点である。シール部材106Cは、本体部材105の外周部分に貼り付けられている。シール部材106Cは、配線エリアC(
図10)に対応して青色に着色されている。シール部材106Bとシール部材106Cとの境界を表す線を境界線CL2とする。境界線CL2は、境界位置PB上に位置している。換言すると、表示部材107は、ハーネス本体83の境界位置PBに取り付けられている。このように、表示部材107は、配線エリアBと配線エリアCとの境界を表示している。
【0078】
図11Cには、表示部材108が示されている。表示部材108と表示部材107(
図11B)との相違点は、シール部材106C、106Dを有する点である。シール部材106Dは、本体部材105の外周部分に貼り付けられている。シール部材106Dは、配線エリアD(
図10)に対応して桃色に着色されている。シール部材106Cとシール部材106Dとの境界を表す線を境界線CL3とする。境界線CL3は、境界位置PC上に位置している。換言すると、表示部材108は、ハーネス本体83の境界位置PCに取り付けられている。このように、表示部材108は、配線エリアCと配線エリアDとの境界を表示している。
【0079】
図11Dには、表示部材109が示されている。表示部材109と表示部材108(
図11C)との相違点は、シール部材106C、106Eを有する点である。シール部材106Eは、本体部材105の外周部分に貼り付けられている。シール部材106Eは、配線エリアE(
図10)に対応して橙色に着色されている。シール部材106Cとシール部材106Eとの境界を表す線を境界線CL4とする。境界線CL4は、境界位置PD上に位置している。換言すると、表示部材109は、ハーネス本体93の境界位置PDに取り付けられている。このように、表示部材109は、配線エリアCと配線エリアEとの境界を表示している。
【0080】
図3及び
図8から
図11Dまでを参照して、ワイヤハーネス112の設計方法及び製造方法について説明する。なお、ワイヤハーネス102、122の設計方法及び製造方法は、表示部材、各部材の配置、分岐の有無等を除いて、ワイヤハーネス112の設計方法及び製造方法と同様の手順で行われるため、説明を省略する。
【0081】
ワイヤハーネス設計装置30は、配線エリアA、B、C、D、Eに対応する表示情報として、赤色、緑色、青色、桃色、橙色を決定する(情報決定工程の一例)。さらに、ワイヤハーネス設計装置30は、前部85A、前部86A、中部85B、後部86B、後部85Cのうち、隣り合う2つの部位の境界位置PB、PCを、表示部材107、108の取付位置と決定する(位置決定工程の一例)。
【0082】
ワイヤハーネス製造装置40において、ハーネス本体83が形成される。作業者は、境界位置PB、PCに対応するように、ハーネス本体83に表示部材107、108を取り付ける。このようにして、ワイヤハーネス112が出来上がる。
【0083】
鉄道車両100の製造において、作業者は、設計図面を確認しながら、ワイヤハーネス112を車体12に順次、取り付けていく。具体的には、作業者は、基準部材28を基準位置P7に取り付けた後、表示部材107又は表示部材108が視認されるまで、配線エリアCの内側にハーネス本体83を配置していく。なお、ワイヤハーネス102、122についての説明は省略する。
【0084】
作業者は、表示部材107を確認した場合、表示部材107を境界領域SBに配置する。これにより、ハーネス本体83のうち、配線エリアBに取り付けられる部位と、配線エリアCに取り付けられる部位とが区別される。同様に、作業者は、表示部材108を確認した場合、表示部材108を境界領域SCに配置する。これにより、ハーネス本体83のうち、配線エリアCに取り付けられる部位と、配線エリアDに取り付けられる部位とが区別可能となる。そして、ハーネス本体83が車体12に取り付けられる。このようにして、鉄道車両100が出来上がる。
【0085】
以上、説明した通り、ワイヤハーネス102、112、122の設計方法によれば、表示部材104、107、108、109の表示が、配線エリアA、B、C、D、Eに対応している。これにより、作業者は、表示部材104、107、108、109の各色を見ることで、ワイヤハーネス102、112、122の各部位が、配線エリアA、B、C、D、Eのどのエリアに対応しているかを容易に判断できる。つまり、配線エリアA、B、C、D、Eを対象とする配線作業が容易となるワイヤハーネス102、112、122を得ることができる。
【0086】
また、表示部材104、107、108、109の取付位置を境界位置PA、PB、PC、PDに決定すればよいので、表示部材104、107、108、109の取付位置を配線エリアA、B、C、D、Eの内側で複数、決定する必要がなくなる。これにより、ワイヤハーネス102、112、122の設計が容易となる。
【0087】
ワイヤハーネス102、112、122によれば、ハーネス本体73、83、93を車体12に取り付ける場合、表示部材104、107、108、109が現れるまでは、配線エリアが変わらないことが分かる。換言すると、作業者は、同じ配線エリアの内側で、多数の表示部材を確認しながら取付作業をする必要がなくなるので、ワイヤハーネス102、112、122の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0088】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、第1、第2、第3実施形態と同一又は同様の構成及び作用については、第1、第2、第3実施形態の符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0089】
図12には、鉄道車両130が示されている。鉄道車両130は、車両の一例である。鉄道車両130は、車体132と、ワイヤハーネス134とを含む。車体132は、配策対象物の一例である。車体132は、配線エリアF、G、Hに区分されている。
【0090】
ワイヤハーネス134は、配線エリアF、G、Hに跨っている。具体的には、ワイヤハーネス134は、ハーネス本体136と、それぞれ複数の表示部材36、46、66と、1つの基準部材28と、通過点表示部材PS1、PS2、PS3と、複数のラベルLBと、不図示のコネクタと、を備える。複数の表示部材36、46、66は、ハーネス本体136の複数のワイヤを束ねている。複数のラベルLBは、ハーネス本体136の各配線の末端部に取り付けられている。複数のラベルLBには、それぞれ異なる不図示の接続先が表示されている。
【0091】
通過点表示部材PS1は、配線エリアFの内側の1箇所の位置に対応させて、ハーネス本体136に1つ設けられている。通過点表示部材PS2は、配線エリアGの内側の1箇所の位置に対応させて、ハーネス本体136に1つ設けられている。通過点表示部材PS3は、配線エリアHの内側の1箇所の位置に対応させて、ハーネス本体136に1つ設けられている。このため、作業者は、通過点表示部材PS1、PS2、PS3のみを視認したとしても、ハーネス本体136の各部が配線エリアF、G、Hのどこに位置するか、判断することが難しい。
【0092】
ハーネス本体136は、複数のワイヤ及びケーブルを有する。また、ハーネス本体136は、一例として、幹線部138、142、146と、枝線部139、141、143、144、147、148、149、151、152、153と、を有する。幹線部138には、通過点表示部材PS1が取り付けられている。枝線部139、141は、幹線部138から分岐されており、且つ配線エリアFに取り付けられている。幹線部138、枝線部139及び枝線部141には、それぞれ複数の表示部材36が取り付けられている。
【0093】
幹線部142には、通過点表示部材PS2が取り付けられている。枝線部143、144、147は、幹線部142から分岐されており、且つ配線エリアGに取り付けられている。そして、幹線部142及び枝線部143、144、147には、それぞれ複数の表示部材66が取り付けられている。
【0094】
幹線部146には、通過点表示部材PS3が取り付けられている。枝線部151、152、153は、幹線部146から分岐されている。枝線部148は、枝線部147から分岐されている。枝線部149は、枝線部148から分岐されている。幹線部146及び枝線部148、149、151、152、153は、配線エリアHに取り付けられている。幹線部146及び枝線部148、149、151、152、153には、それぞれ複数の表示部材46が取り付けられている。
【0095】
幹線部138、142、146から、枝線部139、141、143、144、147、148、149、151、152、153が分かれた部位を、複数の分岐部154とする。複数の分岐部154には、表示部材36、46、66が取り付けられている。
【0096】
図3及び
図12を参照して、ワイヤハーネス134の設計方法及び製造方法について説明する。ワイヤハーネス設計装置30は、車体132を配線エリアF、G、Hに区分する(エリア設定工程の一例)。また、ワイヤハーネス設計装置30は、配線エリアF、G、Hに対応する表示部材36、46、66を決定する(情報決定工程の一例)。さらに、ワイヤハーネス設計装置30は、表示部材36、46、66の取付位置を決定する(位置決定工程の一例)。加えて、ワイヤハーネス設計装置30は、基準部材28と、通過点表示部材PS1、PS2、PS3と、複数のラベルLBとが取り付けられる取付位置を決定する。ワイヤハーネス製造装置40は、ワイヤハーネス134の設計図面に基づいて、ワイヤハーネス134を製造する。
【0097】
鉄道車両130の製造方法について説明する。作業者は、ワイヤハーネス134の基準部材28を配線エリアHの基準位置P9に配置する。そして、作業者は、ハーネス本体136を、基準位置P9から配線エリアF、Gに向けて、車体132に取り付ける。このとき、作業者は、車体132に対する通過点表示部材PS1、PS2、PS3の位置が合っているか否かを判断するだけでなく、表示部材36、46、66の各色も判断する。これにより、作業者は、ワイヤハーネス134の各部について、配線エリアF、G、Hのどこに配線するかを判断することができる。このようにして、鉄道車両130が出来上がる。
【0098】
以上、説明した通り、ワイヤハーネス134の設計方法及び製造方法によれば、表示部材36、46、66の表示が、配線エリアF、G、Hに対応している。これにより、配線エリアF、G、Hを対象とする配線作業が容易となるワイヤハーネス134を得ることができる。
【0099】
なお、本発明の実施形態は、上記の各実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内で種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。以下、ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの設計方法の各変形例について説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0100】
<変形例1>
図13及び
図14には、変形例1のワイヤハーネス群160が示されている。ワイヤハーネス群160では、ワイヤハーネス72、82、92に、表示部材104、107、108、109が追加された点が異なる。このように、表示部材26、36、46、56、66、104、107、108、109の取付位置が、配線エリアA、B、C、D、Eの内側及び境界領域に設定されることで、ワイヤハーネス72、82、92の各部が取付けられる配線エリアがより明確に区別される。
【0101】
<変形例2>
図15Aには、ハーネス本体23に表示部材162が取り付けられた状態が示されている。表示部材162は、赤色のカラーテープから成る。表示部材162には、表示情報の一例として、白色の文字Aが表示されている。文字Aは、配線エリアA(
図2)に対応する。
【0102】
図15Bには、ハーネス本体33に表示部材164が取り付けられた状態が示されている。表示部材164は、赤色のカラーテープから成る。表示部材164には、表示情報の一例として、白色の文字Bが表示されている。文字Bは、配線エリアB(
図2)に対応する。
【0103】
図15A及び
図15Bに示されるように、表示部材162、164には、同色の下地に対して、異なる文字が表示されている。つまり、情報決定工程では、表示部材162、164に表示される文字が決定されるようになっている。このように、配線エリアA、Bに対応する表示情報として、色に替えて、文字を選択してもよい。文字を選択することで、配線エリアA、Bの名称と表示部材162、164の表示情報とが同じになるため、作業者が表示部材162、164を見ることで、配線エリアA、Bを区別し易くなる。
【0104】
<変形例3>
図15Cには、ハーネス本体23に表示部材166が取り付けられた状態が示されている。表示部材166は、白色のラベルであり、「運転室」の黒色の文字列が表示されている。このように、表示情報として、色や1つの文字ではなく文字列を表示させてもよい。
【0105】
<変形例4>
図16Aには、ハーネス本体73に表示部材168が取り付けられた状態が示されている。表示部材168は、境界位置PA(
図8)に配置されている。表示部材168には、境界線CL5と、境界線CL5に対する一方側に位置する「運転室」の文字列と、境界線CL5に対する他方側に位置する「出入台(前)」の文字列とが表示されている。このように、境界線CL5を用いて表示部材168を2つに区分すると共に、各区分において複数の文字列を表示させてもよい。
【0106】
<変形例5>
図16Bには、ハーネス本体23に表示部材172が取り付けられた状態が示されている。表示部材172は、「運転室」の文字列が表示されたタグから成る。また、表示部材172は、ケーブルタイ173を用いて、ハーネス本体23に取り付けられている。
【0107】
図16Cには、ハーネス本体23に表示部材174が取り付けられた状態が示されている。表示部材174は、「運転室」の文字列が表示されたタグから成る。また、表示部材174は、ケーブルタイ173を用いて、ハーネス本体23にぶら下げられている。このように、表示部材としてタグを用いてもよい。
【0108】
<他の変形例>
図17A、
図17B、
図17C、
図17D及び
図17Eに示されるように、ワイヤハーネス22、32、42、52、62において、文字「A」、「B」、「C」、「D」、「E」が表示された表示部材176A、176B、176C、176D、176Eを用いてもよい。表示部材176A、176B、176C、176D、176Eの表示情報と、配線エリアA、B、C、D、E(
図2)とが、それぞれ一対一で対応しているため、作業者は、ワイヤハーネス22、32、42、52、62を区別し易くなる。
【0109】
表示部材に表示される色は、単色に限らず、複数の色が混在していてもよい。また、各表示部材の設定間隔は、均等な間隔、異なる間隔のいずれであってもよい。
【0110】
ハーネス本体が配策される「配策対象物」は、鉄道車両や自動車といった車両の車体(車両本体)に限定されない。「配策対象物」には、移動する「移動体」と、移動しない「非移動体」とがある。「移動体」には、車体だけでなく、航空機の機体や船の船体が含まれる。「非移動体」には、ビル等の建築物の本体が含まれる。
【0111】
以下、車両の製造方法の一態様について付記する。
<付記>
複数の配線エリアを有する車体において前記配線エリアの基準位置に配置される基準部材と、前記複数の配線エリアのそれぞれに対応する表示情報を含む表示部材と、前記基準部材及び前記表示部材が取り付けられたハーネス本体と、を有するワイヤハーネスを用いた車両の製造方法であって、
前記基準部材を前記基準位置に配置する工程と、
前記表示部材と前記配線エリアとが対応するように、前記基準位置から前記複数の配線エリアに向けて前記車体に前記ハーネス本体を配策する工程と、
を含む、車両の製造方法。
【符号の説明】
【0112】
10 鉄道車両、12 車体、14 運転室、15 前側出入台、16 客室、
17 後側出入台、18 床下部、19 台車、20 データサーバ、
21 ワイヤハーネス群、22 ワイヤハーネス、23 ハーネス本体、
24 ケーブル、25 ワイヤ、26 表示部材、27 結束部材、28 基準部材、
29A コネクタ、29B コネクタ、30 ワイヤハーネス設計装置、
31A 入力部、31B 表示部、31C 通信部、31D 図面作成部、
32 ワイヤハーネス、33 ハーネス本体、36 表示部材、39A コネクタ、
39B コネクタ、40 ワイヤハーネス製造装置、41A 制御部、
41B ワイヤ供給部、41C ワイヤ切断部、41D 通信部、41E 作業台、
42 ワイヤハーネス、43 ハーネス本体、46 表示部材、49A コネクタ、
49B コネクタ、52 ワイヤハーネス、53 ハーネス本体、56 表示部材、
59A コネクタ、59B コネクタ、62 ワイヤハーネス、63 ハーネス本体、
66 表示部材、69A コネクタ、69B コネクタ、70 鉄道車両、
71 ワイヤハーネス群、72 ワイヤハーネス、73 ハーネス本体、74 分岐部、
75 幹線部、75A 前部、75B 後部、76 枝線部、79A コネクタ、
79B コネクタ、79C コネクタ、82 ワイヤハーネス、83 ハーネス本体、
84 分岐部、85 幹線部、85A 前部、85B 中部、85C 後部、
86 枝線部、86A 前部、86B 後部、89A コネクタ、89B コネクタ、
89C コネクタ、92 ワイヤハーネス、93 ハーネス本体、93A 上部、
93B 下部、99A コネクタ、99B コネクタ、100 鉄道車両、
101 ワイヤハーネス群、102 ワイヤハーネス、103 結束部材、
104 表示部材、105 本体部材、106A シール部材、106B シール部材、
106C シール部材、106D シール部材、106E シール部材、
107 表示部材、108 表示部材、109 表示部材、112 ワイヤハーネス、
122 ワイヤハーネス、130 鉄道車両、132 車体、134 ワイヤハーネス、
136 ハーネス本体、138 幹線部、139 枝線部、141 枝線部、
142 幹線部、143 枝線部、144 枝線部、146 幹線部、147 枝線部、
148 枝線部、149 枝線部、151 枝線部、152 枝線部、153 枝線部、
160 ワイヤハーネス群、162 表示部材、164 表示部材、166 表示部材、
168 表示部材、172 表示部材、173 ケーブルタイ、174 表示部材、
176A 表示部材、176B 表示部材、176C 表示部材、176D 表示部材、
176E 表示部材、A 配線エリア、B 配線エリア、C 配線エリア、
CL1 境界線、CL2 境界線、CL3 境界線、CL4 境界線、CL5 境界線、
D 配線エリア、E 配線エリア、F 配線エリア、G 配線エリア、H 配線エリア、
LB ラベル、N ネットワーク、P1 基準位置、P2 基準位置、P3 基準位置、
P4 基準位置、P5 基準位置、P6 基準位置、P7 基準位置、P8 基準位置、
P9 基準位置、PA 境界位置、PB 境界位置、PC 境界位置、PD 境界位置、
PS1 通過点表示部材、PS2 通過点表示部材、PS3 通過点表示部材、
SA 境界領域、SB 境界領域、SC 境界領域、SD 境界領域