(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145681
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】塩化ニッケル水溶液からの銅イオンの除去方法、塩化ニッケル水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 23/00 20060101AFI20241004BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20241004BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20241004BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C22B23/00 102
C22B3/44 101B
C22B3/44 101Z
C22B3/04
C22B3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058136
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英明
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA09
4K001AA19
4K001BA02
4K001BA06
4K001BA10
4K001BA19
4K001BA21
4K001DB04
4K001DB16
4K001DB21
4K001DB22
4K001DB24
4K001DB26
(57)【要約】
【課題】塩化ニッケル水溶液の銅イオン濃度が高い場合であっても、その水溶液から効率よく銅イオンを除去する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、塩化ニッケル水溶液から銅イオンを除去する方法であって、塩化ニッケル水溶液に硫化ニッケルを含む硫化物原料Aを添加し2価銅イオンを1価銅イオンに還元する第1のセメンテーション工程と、得られたスラリーに二硫化三ニッケルを含む硫化物原料Bを添加し1価銅イオンを硫化する第2のセメンテーション工程と、を含む処理を行い、処理対象の塩化ニッケル水溶液として、2価銅イオンの比率が60~100%である塩化ニッケル水溶液aと、2価銅イオンの比率が0~40%である塩化ニッケル水溶液bと、の2種が存在し、第1のセメンテーション工程では塩化ニッケル水溶液aを用いて処理に供し、第2のセメンテーション工程では塩化ニッケル水溶液aに加えて塩化ニッケル水溶液bを添加して処理に供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオンを含む塩化ニッケル水溶液から銅イオンを除去する方法であって、
前記塩化ニッケル水溶液に硫化ニッケルを含む硫化物原料Aを添加し、該塩化ニッケル水溶液中の2価銅イオンを1価銅イオンに還元する第1のセメンテーション工程と、
前記第1のセメンテーション工程で得られた第1のスラリーに、二硫化三ニッケルを含む硫化物原料Bを添加し、該第1のスラリーに含まれる1価銅イオンを硫化物として固定化する第2のセメンテーション工程と、を含むセメンテーション処理を行い、
処理対象の前記塩化ニッケル水溶液として、銅イオン濃度が20~80g/L、該銅イオンにおける2価銅イオンの比率(Cu2+/(Cu2++Cu+))が60~100%である塩化ニッケル水溶液aと、銅イオン濃度が1~20g/L、該銅イオンにおける2価銅イオンの比率(Cu2+/(Cu2++Cu+))が0~40%である塩化ニッケル水溶液bと、の2種類が存在し、
前記第1のセメンテーション工程では、前記塩化ニッケル水溶液として前記塩化ニッケル水溶液aを用いて処理に供し、
前記第2のセメンテーション工程では、前記塩化ニッケル水溶液aに加えて、さらに前記塩化ニッケル水溶液bを添加して処理に供する、
塩化ニッケル水溶液からの銅イオンの除去方法。
【請求項2】
前記セメンテーション処理を、直列に連結された合計n槽(nは4以上の整数)の反応槽を備えた銅イオン除去装置を用いて実行し、
前記銅イオン除去装置において、
最も上流に位置する第1段目の反応槽に、前記塩化ニッケル水溶液aを供給するとともに、前記硫化物原料Aを装入し、
最も下流に位置する最終段目(第n段目)の反応槽、及び該最終段目の反応槽の1段手前に位置する第n-1段目の反応槽に、前記硫化物原料Bを装入し、
中央に位置する反応槽(ただし、nが偶数の場合にはn/2+1段目の反応槽)に、前記塩化ニッケル水溶液bを供給する、
請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液からの銅イオンの除去方法。
【請求項3】
前記硫化物原料Aは、ニッケル酸化鉱石を原料とする湿式製錬プロセスで製造されたニッケル及びコバルトを含有する混合硫化物であり、
前記硫化物原料Bは、ニッケルの乾式製錬法で製造されたニッケルマットである、
請求項1又は2に記載の塩化ニッケル水溶液からの銅イオンの除去方法。
【請求項4】
前記第1のセメンテーション工程を経て得られた前記第1のスラリーの一部を始液として、電解採取法により銅粉を回収するとともに電解廃液を得る脱銅電解工程を含み、
前記セメンテーション処理においては、前記脱銅電解工程から得られる前記電解廃液を、前記塩化ニッケル水溶液bとして用いる、
請求項2に記載の塩化ニッケル水溶液からの銅イオンの除去方法。
【請求項5】
ニッケルを含有する原料から銅イオンを除去した塩化ニッケル水溶液を得る方法であって、
ニッケル含有物スラリーに塩素ガスを吹き込むことによって塩素浸出し、塩素浸出液と塩素浸出残渣とを得る塩素浸出工程と、
前記塩素浸出液である銅イオンを含む塩化ニッケル水溶液に対して、請求項1に記載の銅イオンの除去方法を行うための前記セメンテーション処理を実行し、銅イオンを除去した塩化ニッケル水溶液を得るセメンテーション工程と、を含み、
前記セメンテーション工程で生成したスラリーを固液分離することでセメンテーション残渣を得て、該セメンテーション残渣のスラリー(残渣スラリー)を前記塩素浸出工程に移送し、
前記塩素浸出工程では、前記残渣スラリーを含む前記ニッケル含有物スラリーに対して塩素ガスを吹込むことによって塩素浸出する、
塩化ニッケル水溶液の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記セメンテーション工程における第1のセメンテーション工程を経て得られた前記第1のスラリーの一部を始液として、電解採取法により銅粉を回収するとともに電解廃液を得る脱銅電解工程を含み、
前記セメンテーション工程に供する前記塩化ニッケル水溶液として、
前記塩化ニッケル水溶液aが前記塩素浸出工程から得られる前記塩素浸出液であり、
前記塩化ニッケル水溶液bが前記脱銅電解工程から得られる前記電解廃液である、
請求項5に記載の塩化ニッケル水溶液の製造方法。
【請求項7】
前記セメンテーション工程に供する前記塩素浸出液の銅濃度を調整することにより、前記第2のセメンテーション工程を経て得られる第2のスラリーの酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が-100mV以上、0mV未満となるように制御する、
請求項5又は6に記載の塩化ニッケル水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ニッケル水溶液中に含まれる銅を除去する技術に関する。詳しくは、例えばニッケルの湿式製錬プロセスのセメンテーション工程における塩化ニッケル水溶液からの銅イオンの除去方法、並びに銅イオンを除去した塩化ニッケル水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルの湿式製錬プロセス(以下、「MCLEプロセス」ともいう)では、原料であるニッケルマットやニッケル・コバルト混合硫化物(MS:ミックスサルファイド)を塩素浸出し、得られた浸出液(塩素浸出液)から不純物を除去する浄液工程等を経て、電解工程にて電気ニッケルや電気コバルトの形態としてニッケルやコバルトを回収する。
【0003】
図1に示すように、塩素浸出を行う塩素浸出工程から得られた塩素浸出液は、セメンテーション工程との間に備えられた脱銅電解工程において余剰の銅が除去され、さらに、脱鉄工程において鉄やヒ素等の不純物が除去された後、コバルト溶媒抽出工程に送られる。コバルト溶媒抽出工程では、溶媒抽出によりニッケルとコバルトとが分離し、粗塩化ニッケル溶液(NiCl
2)と粗塩化コバルト溶液(CoCl
2)とが得られる。粗塩化ニッケル溶液は、浄液工程においてさらに不純物が除去され高純度となってニッケル電解工程に送られる。そして、ニッケル電解工程では、電解採取により電気ニッケルが製造される。一方、粗塩化コバルト溶液についても、浄液工程においてさらに不純物が除去され高純度となってコバルト電解工程に送られ、コバルト電解工程にて電解採取により電気コバルトが製造される。
【0004】
さて、MCLEプロセスでは、塩素浸出により得られた塩素浸出液(含銅塩化ニッケル水溶液)中に含まれる不純物である銅イオンを除去する工程として、セメンテーション工程を有している。
【0005】
セメンテーション工程では、塩素浸出液中に含まれる2価銅イオンの酸化力を利用してニッケルマットやMS(以降、これらを総称して「ニッケル硫化物原料」と表記することがある)中のニッケル、コバルトを浸出するとともに、ニッケルマットやMSの還元力を利用して塩素浸出液中に含まれる銅イオンや銀イオンを固体側へ分配させて除去している。このセメンテーション工程では、含銅塩化ニッケル水溶液にMSを添加して溶液中の銅イオンを2価から1価に還元する還元処理と、還元処理で得られたスラリーにニッケルマットを添加して還元された1価の銅イオンを硫化銅として固定化する硫化処理との、それぞれの処理が、直列に連結された合計n槽(nは4以上の整数)の反応槽で実行されるように構成されている(例えば特許文献1)。このようなセメンテーション工程での処理を経ることで、反応後の工程液(セメンテーション終液)中の銅イオン濃度を0.10g/L以下、より好ましくは0.05g/L以下の低濃度まで除去するようにしている。
【0006】
セメンテーション工程を経て固液分離されたセメンテーション終液は、次工程であるコバルト溶媒抽出工程に送られる。一方、固体である残渣スラリー(セメンテーション残渣のスラリー)は、塩素浸出工程に送られ、新規の原料と共に塩素ガスとの反応により有価金属が可能な限り浸出される。
【0007】
このとき、塩素浸出により得られる塩素浸出液中の銅イオンは、塩素ガスを吸収するイオンキャリアとして機能するため(例えば特許文献2)、残渣スラリー中の銅品位や塩素浸出液中の銅イオン濃度は高ければ高いほど塩素浸出反応に有利となる。しかしながら、塩素浸出液は、セメンテーション工程での処理の反応始液となるために、銅イオン濃度が高いと、後述するような問題が生じる。
【0008】
ここで、セメンテーション工程は、塩素浸出により得られた塩素浸出液である含銅塩化ニッケル水溶液に硫化ニッケルを含む硫化物原料Aを添加して、塩化ニッケル水溶液中の2価銅イオンを1価銅イオンに還元する第1のセメンテーション工程と、第1のセメンテーション工程で得られた第1のスラリーに、二硫化三ニッケルを含む硫化物原料Bを添加して、第1のスラリーに含まれる1価銅イオンを硫化物として固定化する第2のセメンテーション工程と、により構成されている。
【0009】
第1のセメンテーション工程に添加される硫化物原料Aの還元力は、第2のセメンテーション工程で添加される硫化物原料Bよりも弱い。そのため、主に2価銅イオンを1価銅イオンに還元することしかできない。2価銅イオンを1価銅イオンに還元するためには、所定の反応時間が必要となる。反応時間を確保できない場合には、2価銅イオンが一部残存した状態で、第2のセメンテーション工程での反応を行うことになる。ところが、そのような場合、第2のセメンテーション工程において、銅イオンの硫化固定に必要な硫化物原料Bを増加させなければならないという問題がある。
【0010】
そのため、第1のセメンテーション工程において、2価銅イオンのできるだけ多くを1価銅イオンに還元しておくことが望ましい。しかしながら、これを達成しようとすると、反応時間を延長させるか、あるいは塩化ニッケル水溶液の銅イオン濃度を低下させるほかない。前者の場合では、調整自由度が極めて低く、反応槽を増設する等の設備投資が必要となる。また、後者の場合では、セメンテーション反応に供する塩化ニッケル水溶液中の銅濃度を低下させることで対応できるものの、銅濃度を低下させると上述のように塩素浸出工程で浸出率の悪化を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2017-155281号公報
【特許文献2】特開2012-026027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、塩化ニッケル水溶液の銅イオン濃度が高い場合であっても、その水溶液から効率よく銅イオンを除去することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは検討を重ねた結果、銅イオンを含む塩化ニッケル水溶液に対するセメンテーション処理において、塩化ニッケル水溶液として2価銅イオン比率の異なる2種類の水溶液の添加位置の最適化を行い、2価銅イオン比率の高い塩化ニッケル水溶液を還元処理に供し、2価銅イオン比率の高い塩化ニッケル水溶液に加えて、さらに2価銅イオン比率の低い塩化ニッケル水溶液を添加して硫化処理に供するようにすることで、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
(1)本発明の第1の発明は、銅イオンを含む塩化ニッケル水溶液から銅イオンを除去する方法であって、前記塩化ニッケル水溶液に硫化ニッケルを含む硫化物原料Aを添加し、該塩化ニッケル水溶液中の2価銅イオンを1価銅イオンに還元する第1のセメンテーション工程と、前記第1のセメンテーション工程で得られた第1のスラリーに、二硫化三ニッケルを含む硫化物原料Bを添加し、該第1のスラリーに含まれる1価銅イオンを硫化物として固定化する第2のセメンテーション工程と、を含むセメンテーション処理を行い、処理対象の前記塩化ニッケル水溶液として、銅イオン濃度が20~80g/L、該銅イオンにおける2価銅イオンの比率(Cu2+/(Cu2++Cu+))が60~100%である塩化ニッケル水溶液aと、銅イオン濃度が1~20g/L、該銅イオンにおける2価銅イオンの比率(Cu2+/(Cu2++Cu+))が0~40%である塩化ニッケル水溶液bと、の2種類が存在し、前記第1のセメンテーション工程では、前記塩化ニッケル水溶液として前記塩化ニッケル水溶液aを用いて処理に供し、前記第2のセメンテーション工程では、前記塩化ニッケル水溶液aに加えて、さらに前記塩化ニッケル水溶液bを添加して処理に供する、塩化ニッケル水溶液からの銅イオンの除去方法である。
【0015】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記セメンテーション処理を、直列に連結された合計n槽(nは4以上の整数)の反応槽を備えた銅イオン除去装置を用いて実行し、前記銅イオン除去装置において、最も上流に位置する第1段目の反応槽に、前記塩化ニッケル水溶液aを供給するとともに、前記硫化物原料Aを装入し、最も下流に位置する最終段目(第n段目)の反応槽、及び該最終段目の反応槽の1段手前に位置する第n-1段目の反応槽に、前記硫化物原料Bを装入し、中央に位置する反応槽(ただし、nが偶数の場合にはn/2+1段目の反応槽)に、前記塩化ニッケル水溶液bを供給する、塩化ニッケル水溶液からの銅イオンの除去方法である。
【0016】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記硫化物原料Aは、ニッケル酸化鉱石を原料とする湿式製錬プロセスで製造されたニッケル及びコバルトを含有する混合硫化物であり、前記硫化物原料Bは、ニッケルの乾式製錬法で製造されたニッケルマットである、塩化ニッケル水溶液からの銅イオンの除去方法である。
【0017】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記第1のセメンテーション工程を経て得られた前記第1のスラリーの一部を始液として、電解採取法により銅粉を回収するとともに電解廃液を得る脱銅電解工程を含み、前記セメンテーション処理においては、前記脱銅電解工程から得られる前記電解廃液を、前記塩化ニッケル水溶液bとして用いる、塩化ニッケル水溶液からの銅イオンの除去方法である。
【0018】
(5)本発明の第5の発明は、ニッケルを含有する原料から銅イオンを除去した塩化ニッケル水溶液を得る方法であって、ニッケル含有物スラリーに塩素ガスを吹き込むことによって塩素浸出し、塩素浸出液と塩素浸出残渣とを得る塩素浸出工程と、前記塩素浸出液である銅イオンを含む塩化ニッケル水溶液に対して、請求項1に記載の銅イオンの除去方法を行うための前記セメンテーション処理を実行し、銅イオンを除去した塩化ニッケル水溶液を得るセメンテーション工程と、を含み、前記セメンテーション工程で生成したスラリーを固液分離することでセメンテーション残渣を得て、該セメンテーション残渣のスラリー(残渣スラリー)を前記塩素浸出工程に移送し、前記塩素浸出工程では、前記残渣スラリーを含む前記ニッケル含有物スラリーに対して塩素ガスを吹込むことによって塩素浸出する、塩化ニッケル水溶液の製造方法である。
【0019】
(6)本発明の第6の発明は、第5の発明において、さらに、前記セメンテーション工程における第1のセメンテーション工程を経て得られた前記第1のスラリーの一部を始液として、電解採取法により銅粉を回収するとともに電解廃液を得る脱銅電解工程を含み、前記セメンテーション工程に供する前記塩化ニッケル水溶液として、前記塩化ニッケル水溶液aが前記塩素浸出工程から得られる前記塩素浸出液であり、前記塩化ニッケル水溶液bが前記脱銅電解工程から得られる前記電解廃液である、塩化ニッケル水溶液の製造方法である。
【0020】
(7)本発明の第7の発明は、第5又は第6の発明において、前記セメンテーション工程に供する前記塩素浸出液の銅濃度を調整することにより、前記第2のセメンテーション工程を経て得られる第2のスラリーの酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が-100mV以上、0mV未満となるように制御する、塩化ニッケル水溶液の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、塩化ニッケル水溶液の銅イオン濃度が高い場合であっても、その水溶液から効率よく銅イオンを除去することができる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ニッケルの湿式製錬プロセス(MCLEプロセス)の流れを概略的に示す工程図である。
【
図2】セメンテーション処理の流れの一例を示す工程図である。
【
図3】銅イオン除去装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図4】原料のニッケル硫化物から電気ニッケルを製造するMCLEプロセスの流れを説明する工程図である。
【
図5】セメンテーション工程での処理始液(含銅塩化ニッケル水溶液である塩素浸出液)の銅イオン濃度と、塩素浸出工程から得られる塩素浸出残渣中のニッケル品位との関係を示すグラフ図である。
【
図6】実施例1、比較例1での処理の結果のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0024】
≪1.塩化ニッケル水溶液から銅イオンを除去する方法≫
本実施の形態に係る銅イオンの除去方法は、銅イオンを含む塩化ニッケル水溶液からその銅イオンを除去する方法である。
【0025】
例えば、処理対象の塩化ニッケル水溶液としては、ニッケルの湿式製錬プロセス(MCLEプロセス)において、原料のニッケル硫化物を塩素浸出して得られる含銅塩化ニッケル水溶液(塩素浸出液)が挙げられる。そして、MCLEプロセスにおけるセメンテーション工程における処理に、当該銅イオンの除去方法を適用することができる。
【0026】
図2は、この方法を実行するためのセメンテーション処理の流れの一例を示す工程図である。具体的に、この方法では、含銅塩化ニッケル水溶液に硫化ニッケルを含む硫化物原料Aを添加し、塩化ニッケル水溶液中の2価銅イオンを1価銅イオンに還元する第1のセメンテーション工程S21と、第1のセメンテーション工程S21で得られた第1のスラリーに、二硫化三ニッケルを含む硫化物原料Bを添加し、第1のスラリーに含まれる1価銅イオンを硫化物として固定化する第2のセメンテーション工程S22と、を含むセメンテーション処理を行う。
【0027】
ここで、第1のセメンテーション工程S21における処理を「還元処理」ともいい、第2のセメンテーション工程S22における処理を「硫化処理」ともいう。第1のセメンテーション工程S21と、第2のセメンテーション工程S22とのそれぞれの処理の概要を以下に説明する。
【0028】
[セメンテーション工程について]
(第1のセメンテーション工程S21)
まず、第1のセメンテーション工程S21では、処理対象の含銅塩化ニッケル水溶液(塩素浸出液)に、硫化ニッケル(NiS)を含む硫化物原料Aを添加することによって、水溶液中の銅イオンを還元する。硫化物原料Aとしては、ニッケル酸化鉱石を原料とする湿式製錬プロセスで製造されたニッケル及びコバルトを含有する混合硫化物等を用いることができる。
【0029】
第1のセメンテーション工程S21では、例えば下記の[1]~[2]式に示す銅イオンの還元反応が生じると推定される。
4NiS+2Cu2+ → Ni2++Ni3S4+2Cu+ ・・・[1]
NiS+2Cu+ → Ni2++Cu2S ・・・[2]
【0030】
上記[1]式に示すように、第1のセメンテーション工程S21における還元処理では、塩化ニッケル水溶液に対して硫化ニッケルを含む硫化物原料Aを添加することで、その硫化ニッケルが水溶液中の2価銅イオンを1価銅イオンに還元する。このようにして還元された銅イオンは、次工程の第2のセメンテーション工程S22にて添加する硫化物原料Bによって、銅の硫化物として固定されるようになる。
【0031】
第1のセメンテーション工程S21における還元処理の温度条件としては、特に限定されず、80~110℃程度の範囲とすることができ、80~90℃の範囲とすることが好ましい。
【0032】
(第2のセメンテーション工程S22)
次に、第2のセメンテーション工程S22では、第1のセメンテーション工程S21を経て得られた第1のスラリーに、二硫化三ニッケル(亜硫化ニッケル,Ni3S2)を含む硫化物原料Bを添加し、スラリー中の1価銅イオンを硫化銅として沈澱除去する。硫化物原料Bとしては、ニッケルの乾式製錬法で製造されたニッケルマット等を用いることができる。なお、ニッケルマットは、二硫化三ニッケルを含有するとともに、ニッケルメタルを含有する。
【0033】
第2のセメンテーション工程S22では、例えば、下記の[3]~[5]式で示される硫化反応が生じると推定される。なお、下記の反応式は、硫化物原料Bとしてニッケルマットを用いたときの反応式である。
Ni+Cu2+→Ni2++Cu+ ・・・[3]
Ni3S4+6Cu+→3Ni2++S+3Cu2S ・・・[4]
Ni3S2+6Cu++S→3Ni2++3Cu2S ・・・[5]
【0034】
上記[3]~[5]式に示すように、添加したニッケルマットに含まれる二硫化三ニッケル(Ni3S2)やニッケルメタル(Ni)により、1価銅イオンを固体として沈澱除去する反応(硫化処理)が生じる。これにより、含銅塩化ニッケル水溶液中に含まれていた銅イオンを主に硫化銅として固定化して除去する。
【0035】
また、第2のセメンテーション工程S22では、より効率的に1価銅イオンを硫化物として固定化するために、塩素浸出残渣を硫黄源として添加してもよい。塩素浸出残渣は、MCLEプロセスにおける塩素浸出工程S1にて固相に残存した残渣であり、主成分は硫黄である。これを硫黄源として添加することにより、ニッケルマットと共に、1価銅イオンを硫化銅として固定化できる。
【0036】
(固液分離工程S23)
第2のセメンテーション工程S22における硫化処理を経て得られる第2のスラリーは、硫化固定された銅の硫化物を含むセメンテーション残渣と、銅を除去した塩化ニッケル水溶液であるセメンテーション終液とからなるものである。したがって、その第2のスラリーに対して固液分離処理(固液分離工程S23)を施すことで、セメンテーション終液とセメンテーション残渣とを分離して回収することができる。
【0037】
[処理始液である塩化ニッケル水溶液について]
ここで、本実施の形態に係る方法においては、セメンテーション処理に供する(処理対象の)塩化ニッケル水溶液として、銅イオン濃度が20~80g/Lであり、その銅イオンにおける2価銅イオンの比率(Cu2+/(Cu2++Cu+))が60~100%である「塩化ニッケル水溶液a」と、銅イオン濃度が1~20g/Lであり、その銅イオンにおける2価銅イオンの比率(Cu2+/(Cu2++Cu+))が0~40%である「塩化ニッケル水溶液b」と、の2種類の塩化ニッケル水溶液を、別々に最適な位置に添加する。
【0038】
具体的には、第1のセメンテーション工程S21において、塩化ニッケル水溶液として「塩化ニッケル水溶液a」を用いて処理に供し、第2のセメンテーション工程S22において、塩化ニッケル水溶液aに加えて、さらに「塩化ニッケル水溶液b」を添加して処理に供する、ことを特徴としている。
【0039】
「塩化ニッケル水溶液a」としては、特に限定されないが、例えば、ニッケルの湿式製錬プロセス(MCLEプロセス)における塩素浸出工程S1を経て得られる塩素浸出液を用いることができる。
【0040】
また、本実施の形態に係る方法では、第1のセメンテーション工程S21を経て得られた第1のスラリーの一部を始液として、電解採取法により銅粉を回収するとともに電解廃液を得る脱銅電解工程をさらに含むものとすることができる。このとき、「塩化ニッケル水溶液b」としては、その脱銅電解工程から得られる電解廃液(脱銅電解廃液)を用いることができる。
【0041】
下記表1に、「塩化ニッケル水溶液a」として用いる“塩素浸出液”と、「塩化ニッケル水溶液b」として用いる“脱銅電解廃液”のそれぞれの液組成の一例を示す。
【0042】
【0043】
表1の組成例に示すとおり、塩素浸出液(塩化ニッケル水溶液a)は、ニッケル濃度、銅濃度がともに高く、温度も比較的に高い。また、酸化還元電位(ORP)が高いため、溶液中の銅イオンはそのほぼ全量が2価銅イオンの形態で存在している。一方で、脱銅電解廃液(塩化ニッケル水溶液b)は、ニッケル濃度、銅濃度がともに低く、温度も比較的に低い。また、ORPも低いため、溶液中の銅イオンはそのほぼ全量が1価銅イオンの形態で存在している。
【0044】
したがって、脱銅電解廃液(塩化ニッケル水溶液b)を第1のセメンテーション工程S21での処理に供しても、硫化物原料Aとはほとんど反応しない。そして、第1のセメンテーション工程S21での処理を行うにあたり、処理対象の塩化ニッケル水溶液として、塩化ニッケル水溶液bのような1価銅イオンの比率が多い水溶液が含まれていると、塩素浸出液(塩化ニッケル水溶液a)中の2価銅イオンが1価銅イオンで希釈されてしまって2価銅イオンの比率が低下するため、硫化物原料Aによる2価銅イオンの1価銅イオンへの還元効率が低下することになる。
【0045】
そこで、本実施の形態に係る方法では、上述したように、第1のセメンテーション工程S21において、塩化ニッケル水溶液として「塩化ニッケル水溶液a」を用いて処理に供し、第2のセメンテーション工程S22において、塩化ニッケル水溶液aに加えて、さらに「塩化ニッケル水溶液b」を添加して処理に供するようにしている。
【0046】
このような方法によれば、第1のセメンテーション工程S21において処理対象の塩化ニッケル水溶液(塩化ニッケル水溶液a)に含まれる2価銅イオンの1価銅イオンへの還元を効率的に行うことができ、第2のセメンテーション工程S22での1価銅イオンの硫化物としての固定化を経て、塩化ニッケル水溶液から銅イオンを効果的に除去することができる。
【0047】
また、第1のセメンテーション工程S21において2価銅イオンのできるだけ多くを1価銅イオンに還元するための最も有効な手段が、反応時間、すなわち反応槽における滞留時間の延長になる。よって、脱銅電解廃液(塩化ニッケル水溶液b)を第1のセメンテーション工程S21での処理に供しない、もしくは第1のセメンテーション工程S21のより下流側に添加することで、第1のセメンテーション工程S21における処理流量が低下して、その分、塩化ニッケル水溶液(塩化ニッケル水溶液a)の滞留時間が延長される。これにより、第1のセメンテーション工程S21において処理対象の塩化ニッケル水溶液(塩化ニッケル水溶液a)に含まれる2価銅イオンの1価銅イオンへの還元を効率的に行うことができる。
【0048】
そして、このような除去方法を適用して得られた塩化ニッケル水溶液(セメンテーション終液)を用いて電気ニッケルの製造工程に付すことで、水溶液中の銅イオンの含有量が有効に低減されていることから、純度の高い電気ニッケルを得ることが可能となる。
【0049】
また、処理対象の塩化ニッケル水溶液(塩化ニッケル水溶液a)として、ニッケルの湿式製錬プロセス(MCLEプロセス)における塩素浸出工程S1を経て得られる塩素浸出液を用いる場合、その塩化ニッケル水溶液の銅イオン濃度を低下させる等の措置を採ることなく、有効に銅イオンを除去することができる。そのため、ニッケルの湿式製錬プロセスの循環サイクルを考えたとき、塩素ガス吸収のイオンキャリアとして機能する銅イオンが不十分となって塩素浸出工程S1での塩素浸出率が悪化するといった事態を効果的に防ぐことができる。
【0050】
さらに、効率よく銅イオンを除去することができるため、意図的に塩素浸出液の銅濃度を上昇させて、塩素浸出工程S1での浸出率、すなわちニッケルの実収率を向上させることもできる。
【0051】
また、第1のセメンテーション工程S21における還元処理能力の増加は、硫化ニッケルを含む硫化物原料Aの処理能力の増加を意味するため、より多くの原料処理が可能になる。
【0052】
(塩化ニッケル水溶液aについて)
塩化ニッケル水溶液aは、セメンテーション処理の始液となるものである。塩化ニッケル水溶液aは、上述したように、銅イオン濃度が20~80g/Lであり、その銅イオンにおける2価銅イオンの比率(Cu2+/(Cu2++Cu+))が60~100%である。また、その温度は、特に限定されず、70~100℃程度のものを用いることができる。
【0053】
このような塩化ニッケル水溶液aとしては、ニッケルの湿式製錬プロセス(MCLEプロセス)における塩素浸出工程S1を経て得られる塩素浸出液を用いることができる。
【0054】
MCLEプロセスにおける塩素浸出工程S1について概略を説明する。塩素浸出工程S1では、例えば、ニッケルの乾式製錬法で製造されたニッケルマット等のニッケル硫化物を原料として、セメンテーション工程後のセメンテーション残渣と共に、塩素ガスによってニッケル等の金属を浸出させ、塩素浸出液としての含銅塩化ニッケル水溶液を生成させる。
【0055】
塩素浸出工程S1では、例えば、下記[6]~[8]式に示す反応が生じる。
Cl2+2Cu+ → 2Cl-+2Cu2+ ・・・[6]
NiS+2Cu2+ → Ni2++S0+2Cu+ ・・・[7]
Cu2S+2Cu2+ → 4Cu++S0 ・・・[8]
【0056】
すなわち、塩素浸出工程S1では、原料のニッケル硫化物が送液されると、ニッケル硫化物中に含まれる硫化ニッケル(NiS)及び硫化銅(Cu2S)等の金属成分が、塩素ガスにより酸化された「2価銅イオン」によって酸化浸出される。これにより、塩素浸出液である、銅イオンを含有する塩化ニッケル水溶液(含銅塩化ニッケル水溶液)が生成する。なお、[6]式に示す通り、塩素浸出工程S1では、2価銅イオンを電子キャリヤーとした酸化浸出が行われていると推定される。また、[7]式のNiSはMSの主成分を、[8]式のCu2Sはセメンテーション残渣の主成分を表す。
【0057】
(塩化ニッケル水溶液bについて)
塩化ニッケル水溶液bは、塩化ニッケル水溶液aと同様に、セメンテーション処理の始液となるものである。塩化ニッケル水溶液bは、上述したように、銅イオン濃度が1~20g/Lであり、その銅イオンにおける2価銅イオンの比率(Cu2+/(Cu2++Cu+))が0~40%である。すなわち、塩化ニッケル水溶液bは、塩化ニッケル水溶液aよりも2価銅イオンの含有比率が小さい、換言すると1価銅イオンの含有比率が大きい水溶液である。
【0058】
なお、塩化ニッケル水溶液bの温度としては、特に限定されず、40~60℃程度のものを用いることができる。
【0059】
このような塩化ニッケル水溶液bとしては、ニッケルの湿式製錬プロセス(MCLEプロセス)における脱銅電解工程を経て得られる脱銅電解廃液を用いることができる。
【0060】
MCLEプロセスにおける脱銅電解工程について概略を説明する。塩化ニッケル溶液から電気ニッケルを製造するMCLEプロセスでは、原料(ニッケル硫化物)に由来する銅がある所定の濃度を保った状態でプロセス系内を循環する。銅は、塩素浸出処理(塩素浸出工程S1)に際して、原料中のニッケルを効率的にかつ安定的に浸出させるための浸出剤として重要な役割を果たしている。MCLEプロセスでは、原料に含有される銅をプロセス系内に貯め込んで、大量の銅を塩素浸出液及びセメンテーション残渣として循環させているが、一方で、系内を循環させる銅量を適正に保つために、原料から新たに供給される銅見合いの銅量を系内から抜き出す必要がある。そのため、MCLEプロセスでは、系内を循環する銅の一部を電解採取して除去する処理(脱銅電解処理)が行われる。
【0061】
脱銅電解処理では、セメンテーション工程S2における第1のセメンテーション工程S21を経て得られた第1のスラリーの一部を始液として、電解採取法により銅粉を回収するとともに電解廃液を得る。電解給液としては、好ましくは、その第1のスラリーを固液分離して固形分を除去した溶液(第1のセメンテーション工程S21での処理の反応終液)を用いる。具体的に、脱銅電解処理では、電解給液が正極と負極とからなる電極対を備える電解槽に給液され、電解処理が施される。このような電解処理により、負極の表面にデンドライト状の銅粉が析出し、正極では塩素ガスが発生する。
【0062】
一方で、脱銅電解処理後には、銅が分離回収され除去された溶液(脱銅電解廃液)が得られる。この脱銅電解廃液は、上述したように、第1のセメンテーション工程S21での処理(還元処理)の反応終液、つまり1価銅イオンを多く含む溶液に対して電解処理を施して銅粉を回収した後の溶液である。したがって、脱銅電解廃液は、銅イオン濃度が比較的低く、2価銅イオンの比率が小さい溶液である。
【0063】
[銅イオン除去装置について]
さて、第1のセメンテーション工程S21と、第2のセメンテーション工程S22とから構成されるセメンテーション処理は、直列に連結された合計n槽(nは4以上の整数)の反応槽を備えた銅イオン除去装置を用いて実行することができる。
【0064】
このような、直列にn槽の反応槽が連結された銅イオン除去装置を用いたセメンテーション処理では、最も上流に位置する第1段目の反応槽から最終段目の反応槽の2段手前に位置する第n-2段目の反応槽において、第1のセメンテーション工程S21での処理(還元処理)が行われる。また、最終段目の反応槽の1段手前に位置する第n-1段目の反応槽から最も下流に位置する最終段(n段)目の反応槽において、第2のセメンテーション工程S22での処理(硫化処理)が行われる。
【0065】
そして、本実施の形態に係る方法においては、最も上流に位置する第1段目の反応槽に、塩化ニッケル水溶液aを供給するとともに、硫化ニッケルを含む硫化物原料Aを装入する。また、最も下流に位置する最終段目(第n段目)の反応槽、及びその最終段目の反応槽の1段手前に位置する第n-1段目の反応槽に、二硫化三ニッケルを含む硫化物原料Bを装入する。また、中央に位置する反応槽(ただし、nが偶数の場合にはn/2+1段目の反応槽)に、塩化ニッケル水溶液bを供給する。
【0066】
つまり、本実施の形態に係る方法では、第1のセメンテーション工程S21での還元処理に塩化ニッケル水溶液a(2価銅イオンの比率が60~100%)を、また、第2のセメンテーション工程S22での硫化処理に、塩化ニッケル水溶液aに加えて塩化ニッケル水溶液b(2価銅イオンの比率が0~40%)を供することができるように、組成の異なる塩化ニッケル水溶液a,bの装入口を変えるようにしている。
【0067】
より具体的に、
図3は、銅イオン除去装置の構成の一例を示す模式図である。
図3に例示する銅イオン除去装置1では、直列に連結された合計8槽(n=8)の反応槽(No.1~No.8)を備えるものである。
【0068】
銅イオン除去装置1では、最も上流に位置する第1段目の反応槽(No.1)から第6段目の反応槽(No.6)の計6槽において、塩化ニッケル水溶液に硫化ニッケルを含む硫化物原料Aを添加して銅イオンを還元する還元処理が行われるように構成されている(第1のセメンテーション工程S21)。また、第7段目の反応槽(No.7)から最も下流に位置する最終段目(第8段目)の反応槽(No.8)の計2槽において、還元処理により得られたスラリー(第1のスラリー)に二硫化三ニッケルを含む硫化物原料Bを添加して1価銅イオンを硫化銅として固定化する硫化処理が行われるように構成されている。
【0069】
銅イオン除去装置1においては、合計8槽の反応槽のうち、最も上流に位置する第1段目の反応槽(No.1)に、還元処理の始液である塩化ニッケル水溶液(塩化ニッケル水溶液a)を供給する始液装入口と、硫化ニッケルを含む硫化物原料Aを投入する硫化物原料A装入口とが設けられている。また、最も下流に位置する最終段目(第8段目)の反応槽(No.8)には、硫化処理を経て得られる反応終液を排出する終液排出口と、二硫化三ニッケルを含む硫化物原料Bを投入する硫化物原料B装入口とが設けられている。また、最終段目の反応槽の1段手前に位置する第7段目の反応槽(No.7)にも、硫化物原料Bを投入する硫化物原料B装入口が設けられている。
【0070】
さらに、上述したように、銅イオン除去装置1においては、第5段目の反応槽(No.5)に、塩化ニッケル水溶液bを供給する水溶液b装入口が設けられている。また、その第5段目の反応槽には、硫化物原料Bを投入する硫化物原料B装入口を設けることができる。
【0071】
第1のセメンテーション工程S21で添加される硫化ニッケルを含む硫化物原料Aの還元力は、第2のセメンテーション工程S22で添加される二硫化三ニッケルを含む硫化物原料Bよりも弱い。すなわち、硫化物原料Aによる還元反応は比較的緩やかに進行し、硫化物原料Bによる硫化反応は比較的速やかに進行する。したがって、硫化物原料Aによる還元処理、硫化物原料Bによる硫化処理を効率的に行うためには、硫化処理を行わせる反応槽数を必要最低限に絞り、残りの反応槽は還元処理に充当させることが得策である。
【0072】
一方で、外部要因により、硫化物原料Aと硫化物原料Bの処理比率を変えざるを得ない事態も生じるため、第5段目の反応槽に硫化物原料Bを投入する硫化物原料B装入口を設けることで、臨機応変な対応ができるようにすればよい。そのときは、還元処理を行う第1のセメンテーション工程S21に4槽を振り分け、硫化処理を行う第2のセメンテーション工程S22に4槽を振り分けることになる。
【0073】
上述した構成を備える銅イオン除去装置1を用いたセメンテーション処理では、2価銅イオンの比率が60~100%である塩化ニッケル水溶液aを第1段目の反応槽(No.1)に設けられた始液装入口から供給して、還元処理に供するようにしている。また、2価銅イオンの比率が0~40%である塩化ニッケル水溶液bを中央に位置する反応槽(第5段目(nが偶数の場合にはn/2+1段目)の反応槽)に設けられた水溶液b装入口から供給して、硫化処理に供するようにしている。
【0074】
ここで、第7段目と第8段目の反応槽に硫化物原料Bを装入して、硫化処理を行う第2のセメンテーション工程S22としているにもかかわらず、第5段目の反応槽に塩化ニッケル水溶液bを供給しているのは、その方が効率的だからである。つまり、第1段目の反応槽に供給された2価銅イオンの比率が60~100%である塩化ニッケル水溶液aは、次第に還元反応が進行するため、第5段目の反応槽に行き着く頃には、2価銅イオンの比率が0~40%である塩化ニッケル水溶液bと同等もしくはそれ以下になるまで2価銅イオンの比率が低下している。基本的には塩化ニッケル水溶液bにも2価銅イオンが含まれているため、概ね第5段目の反応槽に塩化ニッケル水溶液bを添加することで、全体の還元反応と硫化反応を最も効率的に行うことができる。
【0075】
このように、例えば銅イオン除去装置1を用いてセメンテーション処理を行うことで、特に2価銅イオン比率の点で組成の異なる塩化ニッケル水溶液a,bを、別々の段階から適切なタイミングで供給して反応に供することができる。これにより、第1のセメンテーション工程S21において塩化ニッケル水溶液a中の2価銅イオンの1価銅イオンへの還元を効率的に行うことができ、また、第2のセメンテーション工程S22での1価銅イオンの硫化物としての固定化を経て、含銅塩化ニッケル水溶液から銅イオンをより効果的に除去することができる。
【0076】
なお、銅イオン除去装置1に関して、セメンテーション処理が還元処理(第1のセメンテーション工程S21)と硫化処理(第2のセメンテーション工程S22)との2段階の処理で構成されるため、装置を構成する反応槽の数としては少なくとも2槽を必要とする。ところが、例えば合計2槽の反応槽からなる銅イオン除去装置では、処理量が多くなって、反応の規模が大きくなればなるほど反応槽の容量を大きくする必要が生じ、設備コストが膨大となるだけでなく、メンテナンス性の観点からもあまり好ましくない。このことから、銅イオン除去装置を構成する反応槽の総数としては、その規模に応じて4槽以上とし、還元処理と硫化処理とのそれぞれの処理が複数の反応槽で実行されるように構成することが好ましい。
【0077】
また、反応槽に連続的に溶液を供給する場合、その滞留時間は一定のバラツキを持つ。よって、バッチ反応では反応槽の容量を大きくする方がコスト等の面で有利に働くが、連続反応では反応槽の容量を大きくするよりも反応槽の数を増やす方が、反応の安定性、均一性の観点で、圧倒的に有利に働く。
【0078】
[第2のセメンテーション工程から得られるスラリーのORP制御について]
また、必須の態様ではないが、本実施の形態に係る方法では、第2のセメンテーション工程S22を経て得られる第2のスラリーの酸化還元電位(ORP)(銀/塩化銀電極基準)が、特定の範囲となるように制御することが好ましい。具体的に、第2のスラリーのORPが-100mV以上、0mV未満となるように制御することが好ましく、ORPが-50mV以上、0mV未満となるように制御することがより好ましい。
【0079】
このように、得られる第2のスラリーのORPが上述した特定の範囲となるように制御して処理することで、銅イオンだけではなく、含銅塩化ニッケル水溶液(塩素浸出液)から不純物である銀を効率的に除去することができ、銀濃度を効果的に低減した溶液を得ることができる。なお、不純物の銀は、第2のセメンテーション工程S22を経て、硫化物として固定化された銅と共に、セメンテーション残渣に分配され除去される。
【0080】
第2のスラリーのORPの制御方法としては、特に限定されない。例えば、セメンテーション工程S2に付す含銅塩化ニッケル水溶液の銅濃度を調整することによって行うことができる。
【0081】
≪2.銅イオンを除去した塩化ニッケル水溶液を製造する方法≫
上述した塩化ニッケル水溶液から銅イオンを除去する方法については、MCLEプロセスにおけるセメンテーション工程S2での処理に適用することができる。したがって、ニッケルを含有する原料から銅イオンを除去した塩化ニッケル水溶液を得る方法(製造方法)と定義することができる。また、製造した塩化ニッケル水溶液(銅イオンを除去した塩化ニッケル水溶液)から、電解工程での電解処理を経て純度の高い電気ニッケルが得られることから、電気ニッケルの製造方法と定義することもできる。
【0082】
具体的に、塩化ニッケル水溶液を製造する方法は、ニッケル含有物スラリーに塩素ガスを吹き込むことによって塩素浸出し、塩素浸出液と塩素浸出残渣とを得る塩素浸出工程S1と、塩素浸出液である塩化ニッケル水溶液に対してセメンテーション処理を実行し、銅イオンを除去した塩化ニッケル水溶液を得るセメンテーション工程S2と、を含む。
【0083】
なお、
図4に、原料のニッケル硫化物から電気ニッケルを製造するMCLEプロセスの流れを説明する工程図を示す。
図4に示すプロセスの流れにあるように、ニッケル硫化物原料を塩素浸出する塩素浸出工程S1と、得られた塩素浸出液に対してセメンテーション処理を施すことによって銅イオンを固定除去するセメンテーション工程S2と、を経ることで、銅イオンを除去した塩化ニッケル水溶液を効果的に製造することができる。なお、
図1と
図4は表記方法が異なるもののいずれも電気ニッケル製造プロセス(MCLEプロセス)のフロー図であり、
図1の「脱鉄工程」、「コバルト溶媒抽出工程」、「浄液工程」の全てが、
図4の「浄液工程S3」に含まれている。また、
図1に表記された「脱銅電解工程」は、
図4では省略している。
【0084】
(塩素浸出工程)
塩素浸出工程S1では、例えば、ニッケルの乾式製錬法で製造されたニッケルマット等のニッケル硫化物を原料として、塩素でニッケル等の金属を浸出する。具体的には、セメンテーション工程S2後のセメンテーション残渣と共に、例えば電解工程S4で回収された塩素ガスによって、ニッケル硫化物中のニッケルを浸出させ、塩素浸出液としての含銅塩化ニッケル水溶液を生成させる。
【0085】
なお、原料であるニッケル硫化物は、例えば、電解工程S4にて得られる塩化ニッケル水溶液(電解廃液)によってレパルプされてスラリー化したものが用いられる。
【0086】
(セメンテーション工程)
セメンテーション工程S2では、塩素浸出工程S1から得られた塩素浸出液である、銅イオンを含有する塩化ニッケル水溶液(含銅塩化ニッケル水溶液)に対して、還元処理と硫化処理を施すことにより、水溶液中の銅イオンを硫化物として固定除去し、銅イオンの含有量を低減した塩化ニッケル水溶液(セメンテーション終液)を得る。
【0087】
このセメンテーション工程S2での処理(セメンテーション処理)に、上述した銅イオンの除去方法を適用することができる。
【0088】
具体的に、セメンテーション工程S2では、含銅塩化ニッケル水溶液に硫化ニッケルを含む硫化物原料Aを添加し、塩化ニッケル水溶液中の2価銅イオンを1価銅イオンに還元する第1のセメンテーション工程S21と、第1のセメンテーション工程S21で得られた第1のスラリーに、二硫化三ニッケルを含む硫化物原料Bを添加し、第1のスラリーに含まれる1価銅イオンを硫化物として固定化する第2のセメンテーション工程S22と、を含むセメンテーション処理を行う。
【0089】
なお、第1のセメンテーション工程S21にて添加する硫化物原料Aとしては、ニッケル酸化鉱石を原料とする湿式製錬プロセスで製造されたニッケル及びコバルトを含有する混合硫化物を用いることができる。また、第2のセメンテーション工程S22にて添加する硫化物原料Bとしては、ニッケルの乾式製錬法で製造されたニッケルマットを用いることができる。
【0090】
セメンテーション工程S2では、セメンテーション処理に供する(処理対象の)塩化ニッケル水溶液として、銅イオン濃度が20~80g/Lであり、その銅イオンにおける2価銅イオンの比率(Cu2+/(Cu2++Cu+))が60~100%である「塩化ニッケル水溶液a」と、銅イオン濃度が1~20g/Lであり、その銅イオンにおける2価銅イオンの比率(Cu2+/(Cu2++Cu+))が0~40%である「塩化ニッケル水溶液b」と、の2種類の塩化ニッケル水溶液を、別々に最適な位置に添加する。
【0091】
具体的には、第1のセメンテーション工程S21において、塩化ニッケル水溶液として「塩化ニッケル水溶液a」を用いて処理に供し、第2のセメンテーション工程S22において、塩化ニッケル水溶液aに加えて、さらに「塩化ニッケル水溶液b」を添加して処理に供する。
【0092】
このような方法によれば、第1のセメンテーション工程S21において含銅塩化ニッケル水溶液に含まれる2価銅イオンの1価銅イオンへの還元を効率的に行うことができ、第2のセメンテーション工程S22での1価銅イオンの硫化物としての固定化を経て、塩化ニッケル水溶液から銅イオンを効果的に除去することができる。
【0093】
また、このような方法によれば、例えば、セメンテーション工程S2での処理に供する含銅塩化ニッケル水溶液の銅イオン濃度を低下させる等の前処理を施すことなく、有効に銅イオンを除去することができる。そのため、ニッケルの湿式製錬プロセスの循環サイクルを考えたとき、塩素ガス吸収のイオンキャリアとして機能する銅イオンが不十分となって塩素浸出工程S1での浸出率が悪化するといった事態を効果的に防ぐことができる。
【0094】
さらに、効率よく銅イオンを除去することができるため、意図的に塩素浸出液の銅濃度を上昇させて、塩素浸出工程S1での浸出率、すなわちニッケルの実収率を向上させることもできる。
【0095】
またさらに、第1のセメンテーション工程S21における還元処理能力の増加は、硫化ニッケルを含む硫化物原料Aの処理能力の増加を意味するため、より多くの原料処理が可能になる。
【0096】
ここで、セメンテーション工程S2での処理を経て得られる、銅の硫化物を含むセメンテーション残渣は、上述したように、塩素浸出工程S1に繰り返し戻され、新規のニッケル硫化物原料と共に塩素ガスにより浸出処理に供される。このとき、セメンテーション工程S2において銅イオンを効果的に低減した塩化ニッケル水溶液を得るために、セメンテーション工程S2での処理に先立って塩素浸出液から銅イオン濃度を低下させる前処理を行った場合、得られるセメンテーション残渣の物量が低減して、塩素浸出工程S1に循環する銅量が減少する。塩素浸出処理においては、銅イオンは塩素ガス吸収のイオンキャリアとして機能する重要な要素となるため、循環移送される銅量の減少は、塩素浸出率の低下を意味する。
【0097】
図5は、セメンテーション工程S2での処理始液(含銅塩化ニッケル水溶液である塩素浸出液)の銅イオン濃度と、塩素浸出工程S1から得られる塩素浸出残渣中のニッケル品位との関係を示すグラフ図である。セメンテーション工程S2での処理始液中の銅イオン濃度が低いほど、そのセメンテーション工程S2での処理を経て得られる塩化ニッケル水溶液中の銅イオン濃度はより低減されるものの、
図5のグラフに示されるように、塩素浸出残渣に含まれるニッケルの品位が高くなることがわかる。
【0098】
このことは、セメンテーション工程S2での処理始液中の銅イオン濃度が低いほど、セメンテーション残渣中の銅量が減少して、塩素浸出工程S1に循環する銅、すなわち塩素ガス吸収のイオンキャリアとして機能する銅の量が減少し、その結果、塩素浸出工程S1での塩素浸出率が低下して、浸出されるべきニッケルが塩素浸出残渣に含まれロスとなることを表している。
【0099】
この点において、本実施の形態に係る方法によれば、セメンテーション工程S2での処理に供する塩化ニッケル水溶液の銅イオン濃度を低下させる等の前処理を施すことなく、有効に銅イオンを除去することができるため、セメンテーション残渣に含まれる銅量も確保される。そして、そのセメンテーション残渣を塩素浸出工程S1での処理に循環移送して塩素浸出処理に供することで、十分な量の銅が塩素ガス吸収のイオンキャリアとして機能するようになり、塩素浸出処理を効果的にかつ効率的に進行させることが可能となる。
【実施例0100】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0101】
[実施例1]
MCLEプロセスにおいて、塩素浸出工程を経て得られた塩素浸出液(塩化ニッケル水溶液a)をセメンテーション工程における第1のセメンテーション工程に添加して処理に供した。第1のセメンテーション工程では、その塩化ニッケル水溶液aに対して硫化ニッケルを含むニッケル・コバルト混合硫化物(MS)を添加して、水溶液中の2価銅イオンを1価銅イオンに還元する還元処理を行った。なお、下記表2に、処理に供した塩化ニッケル水溶液aの組成を示す。
【0102】
また、セメンテーション工程では、第2のセメンテーション工程として、第1のセメンテーション工程を経て得られた第1のスラリーに対して、二硫化三ニッケルを含むニッケルマットを添加して、第1のスラリーに含まれる1価銅イオンを硫化物として固定化する硫化処理を行った。このとき、実施例1では、脱銅電解工程を経て得られた電解廃液(塩化ニッケル水溶液b)を還元処理の後段に添加した後、硫化処理に供した。なお、下記表2に、処理に供した塩化ニッケル水溶液bの組成を示す。
【0103】
【0104】
このように脱銅電解廃液(塩化ニッケル水溶液b)を還元処理の後段に添加、すなわち第2のセメンテーション工程での処理の直前に添加したことで、第2のセメンテーション工程での反応直前の酸化還元電位(ORP)(銀/塩化銀電極基準)が355mVとなった。
【0105】
ここで、一般的に、銅イオンは380mV以下でほぼ全量が1価の銅イオンとなることが知られている。このことから、第1のセメンテーション工程におけるMSによる硫化還元処理によって、塩化ニッケル水溶液aに含まれていた銅イオン(2価銅イオン)をほぼ全て1価銅イオンに還元できたことになる。
【0106】
そして、このようなセメンテーション工程での処理の結果、得られたセメンテーション終液中の銅イオン濃度は0.009g/Lとなり、目標銅イオン濃度を十分に達成することとなった。なお、塩素浸出液の銅濃度は48g/Lであった。
【0107】
また、セメンテーション工程を経て得られたセメンテーション残渣を塩素浸出工程に循環移送させ、通常の操業通りに塩素浸出工程での処理を行った結果、塩素浸出残渣のニッケル品位は2.4質量%となり、良好な結果となった。
【0108】
[比較例1]
比較例1では、塩素浸出液(塩化ニッケル水溶液a)と、脱銅電解廃液(塩化ニッケル水溶液b)とを併せて、第1のセメンテーション工程に添加して処理に供した。つまり、実施例1とは異なり、脱銅電解廃液(塩化ニッケル水溶液b)を第2のセメンテーション工程での処理の直前に添加する態様とはしなかった。
【0109】
このような処理の結果、第2のセメンテーション工程での反応直前のORPは409mVまでしか低下しなかった。このことから、セメンテーション処理に供した水溶液に含まれる一部の銅イオンは還元されず、2価銅イオンのまま残存していることがわかった。
【0110】
第2のセメンテーション工程での処理に不具合が発生することを回避するため、セメンテーション始液の銅濃度を低下させるほかなく、塩素浸出液の銅濃度は42g/Lであり、塩素浸出工程を経て得られた塩素浸出残渣のニッケル品位は4.8質量%となった。
【0111】
下記表3に、実施例1、比較例1での処理の結果をまとめて示す。なお、表中の数値は、同一条件で処理した複数回の試験結果の平均値である。また、
図6のグラフ図は、実施例1、比較例1での処理の結果をグラフ化したものである。
【0112】