(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145687
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】金属含有試料の解析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20241004BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058142
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光
(72)【発明者】
【氏名】林 徹太郎
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA06
2G001HA14
2G001JA08
2G001JA09
2G001KA10
2G001LA02
(57)【要約】
【課題】金属含有試料に含まれる金属粒子の情報を精度よく、かつ効率よく解析する。
【解決手段】金属含有試料を準備する準備工程と、金属含有試料について、X線CT装置を用いて、撮影距離を変えて異なる複数の試料量で撮像し、撮影距離に応じて異なる撮影視野を有する複数のCT画像を取得する画像取得工程と、複数のCT画像のそれぞれから、複数の粒度分布を取得する解析工程と、複数の粒度分布を規格化し、複数の規格化粒度分布を取得する規格化工程と、2つの規格化粒度分布を比較し、金属粒子の個数が相関する粒径の閾値を設定し、一方の規格化粒度分布のうち閾値未満を抽出するとともに、他方の規格化粒度分布のうち閾値以上を抽出することを、複数の規格化粒度分布のそれぞれについて行う抽出・統合工程と、抽出された規格化粒度分布に基づき、金属含有試料に含まれる金属粒子を評価する評価工程と、を有する、金属含有試料の解析方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子が非金属物質中に存在して構成される金属含有試料を準備する準備工程と、
前記金属含有試料について、X線CT装置を用いて、X線発生源から前記金属含有試料までの撮影距離を変えて、異なる複数の試料量で撮像し、前記撮影距離に応じて異なる撮影視野を有する複数のCT画像を取得する画像取得工程と、
複数の前記CT画像のそれぞれから、前記金属含有試料に含まれる前記金属粒子の粒径と個数との関係を示す複数の粒度分布を取得する解析工程と、
複数の前記粒度分布を、前記CT画像を取得する際の撮影距離に応じて変化する試料量で規格化し、複数の規格化粒度分布を取得する規格化工程と、
所定の撮影距離で取得された1つの規格化粒度分布と、それよりも撮影距離の長い他の規格化粒度分布とを比較し、前記金属粒子の個数が相関する粒径の閾値を設定し、前記1つの規格化粒度分布のうち前記閾値未満の規格化粒度分布を抽出するとともに、前記他の規格化粒度分布のうち前記閾値以上の規格化粒度分布を抽出することを、複数の前記規格化粒度分布のそれぞれについて行う抽出・統合工程と、
前記抽出された規格化粒度分布に基づき、前記金属含有試料に含まれる前記金属粒子を評価する評価工程と、を有する、
金属含有試料の解析方法。
【請求項2】
前記抽出・統合工程では、前記閾値を、前記他の規格化粒度分布を取得する際の撮影距離に応じた分解能の3倍以上の範囲から設定する、
請求項1に記載の金属含有試料の解析方法。
【請求項3】
前記抽出・統合工程では、前記1つの規格化粒度分布と前記他の規格化粒度分布との前記個数の比率が0.5倍以上1.5倍以下となる粒径の範囲から前記閾値を設定する、
請求項1に記載の金属含有試料の解析方法。
【請求項4】
前記画像取得工程では、前記撮影距離の近い2つの前記試料量の比率について、比較的長い撮影距離の試料量を比較的短い撮影距離の試料量の3倍以上100倍以下とする、
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の金属含有試料の解析方法。
【請求項5】
前記規格化工程では、最大の撮影距離で撮像されるCT画像における試料量をA、その他の撮影距離で撮像されるCT画像における試料量をBとしたとき、前記その他の撮影距離で取得される粒度分布について、前記個数をA/B倍することで規格化する、
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の金属含有試料の解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有試料の解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属含有試料として、例えばサプロライト等のNi酸化鉱石を還元処理して、Fe-Ni合金を製錬する際に得られる還元処理産物がある。この還元処理産物には、Fe-Ni合金などのメタル(金属粒子)やスラグ(非金属物質)が含まれ、メタルは微細な粒子としてスラグ中に点在している。
【0003】
スラグ中に点在する微細な金属粒子を回収するに当たっては、製錬効率を向上すべく、スラグ中に点在する微細な金属粒子を集合させて大きくすることが望ましい。そこで、金属含有試料に含まれる金属粒子の大きさ、形状、分布状態、存在割合等の情報を得ることが有用である。金属成分の割合を測定する方法として、例えば鉱物自動分析装置(いわゆるMLA)とX線CT装置を用いて粒子の体積、粒子の球相当径、粒子の球形度などの形状パラメータを分析する方法が提案されている(例えば特許文献1)。また例えば、金属含有試料について化学分析を行うことにより、金属成分の含有率を測定する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したMLAおよびX線CT装置を併用する方法では、MLAで同定された鉱物種データとX線CT測定における輝度データを紐付けることにより、X線CT測定によって試料中の特定の鉱物種の粒子の体積、粒子の球相当径、粒子の球形度などの情報を得ることができる。化学分析を採用した方法では、金属の含有率を測定することはできるが、金属粒子の大きさ、形状、分布状態等の情報を得ることはできない。そこで、金属含有試料に含まれる金属粒子の大きさ、形状、分布状態、存在割合等の情報を収集するに当たって、上述したMLAおよびX線CT装置を併用する方法を適用することができる。
【0006】
しかしながら、X線CT測定では、微細な金属粒子が含まれている場合、分解能もしくは画素サイズによって微細な金属粒子を精度よく検出できないことがある。また、個数は僅かであるが粗大な金属粒子が含まれている場合、試料量やサンプリング精度によっては、体積比率等の存在割合を示す数値が、大きくバラつくことになる。つまり、X線CT測定では、検出可能な粒子径を小さくすることやバラつきを減少させること、といった点で課題があった。そのため、金属含有試料における金属粒子の情報、例えば大きさ、形状、数量、分布状態等の形状や数量や位置などを精度よく、かつ効率よく解析できないことがあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金属含有試料に含まれる金属粒子の情報を精度よく、かつ効率よく解析する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、
金属粒子が非金属物質中に存在して構成される金属含有試料を準備する準備工程と、
前記金属含有試料について、X線CT装置を用いて、X線発生源から前記金属含有試料までの撮影距離を変えて、異なる複数の試料量で撮像し、前記撮影距離に応じて異なる撮影視野を有する複数のCT画像を取得する画像取得工程と、
複数の前記CT画像のそれぞれから、前記金属含有試料に含まれる前記金属粒子の粒径と個数との関係を示す複数の粒度分布を取得する解析工程と、
複数の前記粒度分布を、前記CT画像を取得する際の撮影距離に応じて変化する試料量で規格化し、複数の規格化粒度分布を取得する規格化工程と、
所定の撮影距離で取得された1つの規格化粒度分布と、それよりも撮影距離の長い他の規格化粒度分布とを比較し、前記金属粒子の個数が相関する粒径の閾値を設定し、前記1つの規格化粒度分布のうち前記閾値未満の規格化粒度分布を抽出するとともに、前記他の規格化粒度分布のうち前記閾値以上の規格化粒度分布を抽出することを、複数の前記規格化粒度分布のそれぞれについて行う抽出・統合工程と、
前記抽出された規格化粒度分布に基づき、前記金属含有試料に含まれる前記金属粒子を評価する評価工程と、を有する、
金属含有試料の解析方法が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、
前記抽出・統合工程では、前記閾値を、前記他の規格化粒度分布を取得する際の撮影距離に応じた分解能の3倍以上の範囲から設定する。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、
前記抽出・統合工程では、前記1つの規格化粒度分布と前記他の規格化粒度分布との前記個数の比率が0.5倍以上1.5倍以下となる粒径の範囲から前記閾値を設定する。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれかにおいて、
前記画像取得工程では、前記撮影距離の近い2つの前記試料量の比率について、比較的長い撮影距離の試料量を比較的短い撮影距離の試料量の3倍以上100倍以下とする。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1~第3の態様のいずれかにおいて、
前記規格化工程では、最大の撮影距離で撮像されるCT画像における試料量をA、その他の撮影距離で撮像されるCT画像における試料量をBとしたとき、前記その他の撮影距離で取得される粒度分布について、前記個数をA/B倍することで規格化する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属含有試料に含まれる金属粒子の情報を精度よく、かつ効率よく解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる金属含有試料の解析方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、X線CT装置を用いてCT画像を撮像する場合の撮影視野を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態における解析工程で取得される粒度分布を示す。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態における規格化工程で取得される規格化粒度分布を示す。
【
図5】
図5は、サンプル1において取得される規格化粒度分布を示す。
【
図6】
図6は、サンプル2において取得される規格化粒度分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態にかかる金属含有試料の解析方法について図を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる金属含有試料の解析方法を示すフローチャートである。
図2は、X線CT装置を用いてCT画像を撮像する場合の撮影視野を説明するための図である。
【0016】
(準備工程S1)
まず、
図1に示すように、評価対象とする金属含有試料を準備する。
【0017】
金属含有試料は、金属粒子が非金属物質中に存在(もしくは点在)して構成される。金属含有試料は、例えばサプロライト等のNi酸化鉱石の還元処理で得られる還元処理産物である。還元処理産物に含まれる金属粒子は、例えばFe-Ni合金などのメタルである。また、還元処理産物に含まれる非金属物質はスラグであり、化合物形態としては、例えばFe2O3、Al2O3、CaO、MgO、SiO2などになる。
【0018】
金属含有試料の形状は、X線CT測定に支障が生じない限りにおいて、塊状でも粉末状でも構わない。ただし、規定の試料容器に充填して規定の撮影視野とするために、粉末状の方が好ましい。金属含有試料を粉末状としたときの粒径については、金属含有試料の製造プロセス、由来、出所や、X線CT測定で得たい情報によって変わる。例えば、金属含有試料がサプロライト等のNi酸化鉱石の還元処理で得られる還元処理産物であって、スラグ中に点在する微細な金属粒子の大きさ、形状、分布状態、存在割合等の情報が知りたい場合、当該金属粒子の大きさ、形状等が判別できなくなるほど微粉砕してしまっては、必要な情報が得られなくなる。このようなときは、空冷されたスラグをほぐす程度に解砕された、最大で6mm程度のものが用いられる。例えば、水砕ショット法により、すなわち、ジェット水流に融体を滴下する方法により製造したグラニュール状のスラグであれば、解砕、粉砕の必要が無いときもある。金属含有試料の形状が粉末状のとき、空隙が多過ぎると、空気層が透過層となって精密な測定を妨害することもあるので、タッピングによって見掛けの密度を調整することも必要になる。つまり、金属含有試料の粒径は6mm以下とすることが好ましい。
【0019】
(画像取得工程S2)
続いて、上述した金属含有試料をX線CT測定用の容器(カプセル)に収容する。金属含有試料を収容したカプセルをX線CT装置に導入する。
【0020】
X線CT(Computed Tomography;コンピュータ断層撮影)装置は、対象試料を360°回転させながらX線を照射し、試料における各部分の材質ごとのX線吸収量の違いを利用して、物質の内部構造を非破壊で三次元的に評価するものである。
図2に示すように、X線CT装置1は、X線発生源10と、検出器20と、カプセルを載置するステージ(図示略)とを備えて構成される。X線発生源10は、例えばコーンビーム法によりX線を円錐状に拡げて照射するように構成される。検出器20は、例えばフラットパネル検出器などを用いることができ、金属含有試料を透過するX線を検出することで透過像を得ることができる。ステージは、X線発生源10と検出器20との間に配置され、回転可能であって、X線発生源10と検出器20との間を移動可能なように構成される。X線CT装置1では、ステージを所定の位置に移動させたうえで、カプセル内の金属含有試料にX線を照射し、金属含有試料を透過するX線を検出することで、透過像を得る。そして、カプセルを回転させ、X線を照射して、複数の透過像を取得し、最終的に、これら複数の透過像から3次元的なCT画像を得る。
【0021】
本実施形態では、X線発生源からカプセル(金属含有試料)までの撮影距離を変え、異なる複数の試料量で撮像を行い、撮影距離に応じて異なる撮影視野を有する複数のCT画像を取得する。本実施形態では、
図2に示すように、3つの撮影距離d1~d3で撮像し、3つのCT画像P1~P3を取得する場合を例に説明する。なお、d1<d2<d3となる。
【0022】
撮影距離d1で得られるCT画像P1は撮影距離が最も短く、拡大率が最も高くなる。そのため、CT画像P1は、撮影視野(以下、FOV(Field Of View)ともいう)が小さく、観察される試料量は最も少なくなる。一方、CT画像P1の拡大率は高いため、その最小画素サイズは小さく、分解能が最も高くなる。つまり、短い撮影距離d1で得られるCT画像は、少ない試料量を高い分解能で表示することができる。ここで、FOVとは、所定の距離で観察される撮影領域の大きさを示し、例えば
図2で円柱状に表示される撮影領域の直径によって示される。試料量とは、カプセルに収容される試料のうち、X線の透過により撮影された一部の試料の重量や体積を示す。試料量は、撮影距離を変えてX線の透過面積が変動するのに対応して、変動する。
【0023】
これに対して、撮影距離がd2、d3と長くなるほど、拡大率が小さくなる。そのため、撮影距離に応じてCT画像P2やCT画像P3のFOVは大きくなり、観察される試料量も多くなる。一方、その分解能は撮影距離が長くなるのに対応して低くなり、撮影距離d3で分解能が最も低くなる。つまり、撮影距離を長くするほど、分解能が低くなるものの、観察される試料量を多くすることができる。
【0024】
本発明者等の検討によると、短い撮影距離d1で取得されたCT画像P1では、分解能が高いため、金属含有試料に含まれる微細な金属粒子も撮影することができる。ただし、金属含有試料では金属粒子の粒度がばらつくことがあり、撮影する試料量が少なすぎると、金属含有試料における全体の金属粒子の粒度を精度よく評価できないことがある。例えばCT画像P1上で粗大な金属粒子が1つ含まれたときに、この金属粒子が金属試料全体で一様に存在しているのか、局所的に存在しているのか分からず、金属粒子の粒度分布を精度よく評価できないことがある。評価精度を向上させる観点からは試料量を多くする必要があり、短い撮影距離d1でCT画像P1を繰り返し取得する必要がある。この場合、評価時間が長くなり、作業性が著しく低下する。
【0025】
一方、例えば長い撮影距離d3で取得されたCT画像P3では、試料量が多いため、CT画像P1の場合のようにCT画像を繰り返し取得する必要がなく、作業性の低下を抑制することができる。ただし、CT画像P3では、その分解能が低く、金属含有試料に含まれる金属粒子のうち、分解能未満である微細な金属粒子までは観察できない。このため、CT画像P1でもCT画像P3でも、金属含有試料に含まれる金属粒子について幅広い粒径にわたって精度よく評価できない。
【0026】
例えばFOVを30mmとしたCT画像では、観察される試料量が20gであるのに対して、FOVを7mmとしたCT画像では、観察される試料量が0.2gとなる。FOVを7mmとする場合、FOVを30mmとした場合と同様の試料量を確保するにはCT画像を100回、取得する必要がある。また、FOVを30mmとした場合、分解能は90μm程度であり、90μm未満の金属粒子については検出できないことがある。
【0027】
このように所定の撮影距離で取得したCT画像1つのみでは、撮影距離によって、試料量が少ないことで作業性が著しく低下したり、分解能が低いことで精度よく評価できなかったりすることがある。
【0028】
このことから、本実施形態では、撮影距離を変えて、異なる撮影視野を有する3つのCT画像を取得する。以下、これらのCT画像について解析工程S3、規格化工程S4、抽出・統合工程S5および評価工程S6を行う。
【0029】
画像取得工程S2において、複数の撮影距離は、金属含有試料に含まれる金属粒子が取り得る粒径の範囲に応じて適宜変更するとよい。後述の抽出・統合工程S5を精度よく行う観点からは、撮影距離の近い2つの試料量の比率について、比較的長い撮影距離の試料量を比較的短い撮影距離の試料量の3倍以上100倍以下とすることが好ましく、3倍以上25倍以下とすることがより好ましい。例えば撮影距離d2の試料量を撮影距離d1の試料量の3倍以上100倍以下、撮影距離d3の試料量を撮影距離d2の試料量の3倍以上100倍以下とするとよい。後述の抽出・統合工程S5をより精度よく行う観点からは、複数の撮影距離の試料量のうち、最大の撮影距離での試料量を最小の撮影距離での試料量の3倍以上100倍以下とすることが好ましい。
【0030】
また画像取得工程S2において、最も短い撮影距離は、金属含有試料に含まれる微細な金属粒子をCT画像上で検出できれば特に限定されず、検出対象とする微細な金属粒子の大きさに応じて適宜変更するとよい。検出下限値については小さければ小さいほど良いが、装置の性能にも依存するため、一概には決めることができない。一般的には、粒径が7μm以上である微細な金属粒子を検出できるような分解能を実現する撮影距離とするとよい。
【0031】
なお、拡大率とは、X線発生源10の焦点からカプセル(金属含有試料)までの距離に対する、X線発生源10の焦点から検出器20までの距離の比率を示す。最小画素サイズは、検出器20に由来する画素サイズを拡大率で除した値を示す。
【0032】
(解析工程S3)
続いて、取得した3つのCT画像のそれぞれについて解析を行い、金属含有試料に含まれる金属粒子の粒径と個数との関係を示す複数の粒度分布を取得する。
【0033】
CT画像においては、金属含有試料における金属粒子と非金属物質との材質に応じてX線の吸収量に違いが生じる。金属含有試料において、密度や厚さ、原子番号などが大きい成分ほど透過X線強度が小さく、密度や厚さ、原子番号などが小さい成分ほど透過X線強度が大きくなる。CT画像においては、金属含有試料における金属粒子は、非金属物質、例えばスラグと比較して高密度であるため、高輝度で表示される。スラグは、比較的低密度であるため、低輝度で表示される。
【0034】
本実施形態では、CT画像において例えば高輝度で表示されるボクセルを抽出し、金属粒子について粒径と個数とを求め、粒度分布を取得する。本実施形態では、異なる撮影視野を有する3つのCT画像のそれぞれについて粒度分布を取得する。
【0035】
具体的には、各粒度分布は、
図3に示すように、粒径x1~x11の金属粒子の個数をそれぞれ表示する。
図3は、本発明の一実施形態における解析工程S3で取得される粒度分布を示し、横軸は金属粒子の粒径、縦軸は金属粒子の個数をそれぞれ示す。3つのCT画像は撮影距離によって試料量が異なるため、各CT画像から得られる粒度分布はそれぞれ異なる試料量に基づいた情報となっている。例えば試料量の多いCT画像P3から得られる粒度分布は、試料量の少ないCT画像P1と比較して、同じ粒径での個数が多くなる傾向がある。
【0036】
(規格化工程S4)
続いて、3つの粒度分布を試料量で規格化する。
【0037】
本実施形態では、各粒度分布について試料量の違いを排除すべく、複数の粒度分布を試料量で規格化する。これにより、試料量の違いが排除された複数の規格化粒度分布を得る。それぞれの規格化粒度分布は、規格化により試料量が同一となり、試料量の違いが排除される。
【0038】
規格化の方法は特に限定されないが、最大の撮影距離で撮像されるCT画像における試料量をA、その他の撮影距離で撮像されるCT画像における試料量をBとしたとき、その他の撮影距離で取得される粒度分布について、個数をA/B倍することで規格化することが好ましい。本実施形態では、最大の撮影距離d3で撮像されるCT画像P3における試料量をA、CT画像P1における試料量をB1、CT画像P2における試料量をB2としたとき、CT画像P1から得られる粒度分布については、個数をA/B1倍、CT画像P2から得られる粒度分布については、個数をA/B2倍するとよい。これにより、試料量の比較的少ないCT画像P1やCT画像P2から得られる粒度分布を、CT画像P3と同一の試料量となるように補正することができる。
【0039】
各CT画像に基づく規格化粒度分布は、例えば
図4となる。
図4は、本発明の一実施形態における規格化工程で取得される規格化粒度分布を示し、横軸は金属粒子の粒径、縦軸は金属粒子の個数をそれぞれ示す。
【0040】
(抽出・統合工程S5)
続いて、3つの規格化粒度分布から個数の精度を担保できる粒径の範囲を特定するとともに抽出する。規格化粒度分布では、撮影距離が長くなるほど分解能が低くなるため、CT画像P2、P3と試料量が多くなるほど、粒径が小さい範囲で個数の精度が低くなる傾向がある。一方、撮影距離が短く、試料量が少なくなるほど、粒径の大きな粒子のばらつきが大きくなるため、CT画像P2、P1と試料量が少なくなるほど粒径の大きい範囲での個数の精度を担保しにくくなる。そこで、各規格化粒度分布から個数の精度を担保できる粒径の範囲を特定し、抽出する。
【0041】
個数の精度を担保できる粒径の範囲を特定する方法は、所定の撮影距離で取得された1つの規格化粒度分布と、それよりも撮影距離の長い他の規格化粒度分布とを比較し、金属粒子の個数が相関する粒径の閾値を設定する。本実施形態では、撮影距離の最も近い規格化粒度分布同士を比較し、各粒径での個数分布の相関を確認する。
【0042】
具体的には、まず、撮影距離の最も短いCT画像P1と撮影距離の最も近いCT画像P2のそれぞれから取得される規格化粒度分布を比較する。そして、個数の乖離が少ない粒径範囲を特定する。例えば
図4では、粒径がx6以上においてCT画像P1とCT画像P2との個数の相関があることから、粒径x6を、CT画像P1とCT画像P2について金属粒子の個数が相関する閾値T1として設定する。粒径x6未満(x5以下)の範囲では、CT画像P1から取得した規格化粒度分布が金属粒子の粒度分布をより高い精度で反映し、粒径がx6以上の範囲では、CT画像P2から取得した規格化粒度分布が金属粒子の粒度分布をより高い精度で反映している。次に、同様の操作を、CT画像P3と撮影距離の最も近いCT画像P2のそれぞれから取得される規格化粒度分布についても行う。
図4では、粒径x9以上においてCT画像P2とCT画像P3との個数の相関があることから、粒径x9を、CT画像P2とCT画像P3について金属粒子の個数が相関する閾値T2として設定する。粒径がx9未満(x8以下)の範囲では、CT画像P2から取得した規格化粒度分布が金属粒子の粒度分布をより高い精度で反映し、粒径がx9以上の範囲では、CT画像P3から取得した規格化粒度分布が金属粒子の粒度分布をより高い精度で反映している。
【0043】
このように、各規格化粒度分布の比較から、各規格化粒度分布について個数の精度を担保できる粒径の閾値を設定した後、それぞれの規格化粒度分布から個数分布を抽出する。
【0044】
また抽出・統合工程S5において、粒径の閾値は、CT画像の撮影距離に応じた分解能、すなわち画素サイズに基づいて設定することが好ましい。具体的には、所定の撮影距離で取得された1つの規格化粒度分布、それよりも撮影距離の長い他の規格化粒度分布について、粒径の閾値は、他の規格化粒度分布の分解能(画素サイズ)の3倍以上の範囲から設定することが好ましい。例えば
図4の場合であれば、CT画像P1とCT画像P2から取得される規格化粒度分布については、CT画像P2の分解能(画素サイズ)の3倍以上の範囲から閾値を設定するとよい。また、CT画像P2とCT画像P3から取得される規格化粒度分布については、CT画像P3の分解能(画素サイズ)の3倍以上の範囲から閾値を設定するとよい。本発明者等の検討によると、金属粒子のうち、分解能(画素サイズ)以上の粒径の粒子でも、精度よく検出できないことがわかった。その一方、分解能(画素サイズ)の3倍以上の粒径のものであれば、精度よく検出できることがわかった。
【0045】
また抽出・統合工程S5において、金属粒子の個数が相関する粒径の閾値を設定する際、所定の1つの規格化粒度分布とそれよりも撮影距離の長い他の規格化粒度分布との個数の比率が0.5倍以上1.5倍以下となる粒径の範囲から設定するとよい。個数の比率が上記範囲内にあれば、規格化粒度分布の乖離が小さく、閾値以上の範囲で、個数の精度を担保することができる。
【0046】
(評価工程S6)
続いて、抽出・統合した規格化粒度分布に基づき、金属含有試料に含まれる金属粒子を評価する。この評価としては、例えば金属粒子の粒径とその個数から、金属含有試料に含まれる金属粒子の重量比率などを行うとよい。また、重量比率にとどまらず、上記設定された金属粒子の個数が相関する粒径の閾値に基き、金属粒子の形状、分布状態等の形状や位置についても評価、解析することができる。
【0047】
以上により、金属含有試料に含まれる金属粒子の情報を評価することができる。
【0048】
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0049】
比較形態として、例えば1つの撮影距離で取得されたCT画像に基づき、金属含有試料に含まれる金属粒子を評価する場合、以下のような課題がある。
【0050】
例えば短い撮影距離で取得されたCT画像に基づき粒度分布を取得し、その粒度分布から金属粒子を評価する場合、分解能が高く、微細な金属粒子についても検出することが可能となる。しかし、試料量が少ないため、仮に粗大な金属粒子が1つ含まれた場合、金属含有試料の本来の粒度分布を反映したものか判別できないことがある。つまり、粒径の大きい金属粒子についての個数の精度を担保できないことがある。これを解消すべく、同じ撮影距離で複数回評価することで試料量を増やすことも考えられるが、その分、評価に要する時間が長くなり、作業性が低下する。
【0051】
その反対に、長い撮影距離で取得されたCT画像に基づき粒度分布を取得し、その粒度分布から金属粒子を評価する場合、試料量が多いため、粗大な粒径範囲においては、金属含有試料の本来の粒度分布を取得することが可能となる。ただし、その粒度分布では、CT画像の分解能が低く、微細な金属粒子を精度よく検出できないため、粒径の小さい金属粒子についての個数の精度を担保できないことがある。
【0052】
このように、1つの撮影距離でCT画像を取得し金属含有試料を評価する場合、CT画像においては分解能と試料量とが反比例の関係にあり、粒径が幅広い範囲である粒度分布を精度よく短時間で取得することが困難となる。
【0053】
(a)この点、本実施形態では、まず、画像取得工程S2および解析工程S3にて、異なる3つの撮影距離(d1~d3)で撮像した3つのCT画像P1~P3からそれぞれ粒度分布を取得する。続いて、これらの粒度分布は、撮影距離に応じた試料量に基づく情報であるため、規格化工程S4にて各粒度分布を試料量で規格化する。これにより、試料量が同一に規格化された規格化粒度分布を得る。規格化粒度分布はそれぞれ、撮影距離が異なることで、金属粒子について個数の精度を担保できる粒径範囲がそれぞれ異なる。そこで、抽出・統合工程S5にて、3つの規格化粒度分布について、撮影距離の最も近い規格化粒度分布同士を比較し、金属粒子の個数が相関する粒径の閾値を設定する。例えば、
図4に示すように、撮影距離d1の規格化粒度分布と撮影距離d2の規格化粒度分布とを比較し、金属粒子の個数が相関する粒径範囲を特定し、その閾値T1を設定する。同様に、撮影距離d2の規格化粒度分布と撮影距離d3の規格化粒度分布についても比較し、粒径の閾値T2を設定する。続いて、各規格化粒度分布のそれぞれから、金属粒子の個数の精度を担保できる粒径範囲を抽出する。具体的には、撮影距離d1の規格化粒度分布から閾値T1未満を、撮影距離d2の規格化粒度分布から閾値T1以上閾値T2未満を、そして、撮影距離d3の規格化粒度分布から閾値T2以上を、それぞれ抽出する。このように各規格化粒度分布から抽出することで、金属粒子の各粒径での個数の精度を高く維持できるので、評価工程S6にて金属含有試料に含まれる微細な金属粒子から粗大な金属粒子までを精度よく評価することができる。しかも、CT画像の取得を3回としながらも、撮影距離が最も長いd3に応じた試料量が最も多い情報を取得することができる。つまり、精度よく評価するために試料量を多くしながらも、その一方で評価時間を短縮することが可能となる。
【0054】
(b)抽出・統合工程S5にて、所定の撮影距離で取得された1つの規格化粒度分布と、それよりも撮影距離が長く、最も近い撮影距離で取得された他の規格化粒度分布を比較し、粒径の閾値を、他の規格化粒度分布の分解能、すなわち画素サイズの3倍以上の範囲から設定することが好ましい。本実施形態では、撮影距離d1およびd2で取得された規格化粒度分布についての粒径の閾値T1を、撮影距離d2でのCT画像P2の分解能(画素サイズ)の3倍以上の範囲から選択するとよい。また同様に、撮影距離d2およびd3で取得された規格化粒度分布についての粒径の閾値T2を、撮影距離d3でのCT画像P3の分解能(画素サイズ)の3倍以上の範囲から選択するとよい。これにより、各規格化粒度分布のそれぞれから、金属粒子の個数についての情報をより高い精度で取得することが可能となる。
【0055】
(c)また抽出・統合工程S5にて、1つの規格化粒度分布および他の規格化粒度分布を比較した際に、金属粒子の個数の比率が0.5倍以上1.5倍以下となるときの粒径の範囲から閾値を設定することが好ましい。個数の比率が上記範囲内であれば、1つの規格化粒度分布および他の規格化粒度分布について個数の相関がより高くなることから、金属粒子の個数についての情報をより高い精度で取得することが可能となる。
【0056】
(d)また、画像取得工程S2では、撮影距離の近い2つの試料量の比率について、比較的長い撮影距離での試料量を比較的短い撮影距離での試料量の3倍以上100倍以下とすることが好ましい。これにより、抽出・統合工程S5にて各規格化粒度分布から、個数の精度が担保された粒径範囲をより確実に抽出することができ、評価工程S6にて金属粒子をより精度よく評価することができる。
【0057】
(e)規格化工程S4では、最大の撮影距離で撮像されるCT画像における試料量をA、その他の撮影距離で撮像されるCT画像における試料量をBとしたとき、その他の撮影距離で取得される粒度分布について、個数をA/B倍することで規格化することが好ましい。これにより、評価工程S6にて金属粒子をより精度よく評価することができる。
【0058】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0059】
上述の実施形態では、3つの異なる撮影距離でCT画像を取得する場合について説明したが、2つの異なる撮影距離でCT画像を取得し、解析工程S3~評価工程S6を上述の実施形態と同様に行ってもよい。この場合、撮影距離の最大値を最小値の3倍以上100倍以下とすることが好ましい。なお、異なる撮影距離は4以上を選択してもよい。上限は特に限定されないが、撮影距離を増やすほど評価時間が長くなるため、作業性の著しい低下を招かない範囲で適宜設定するとよい。
【実施例0060】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0061】
(サンプル1)
サンプル1では、金属含有試料として、Ni酸化鉱石(サプロライト)の還元処理で得られる還元処理産物を破砕した破砕物を準備した。この破砕物は、金属酸化物を含むスラグから主に構成され、その中に金属が粒子状に存在している。この破砕物は2mmの篩を通るように破砕している。
【0062】
続いて、破砕物をX線CT測定用の容器(カプセル)に収容し、X線CT装置(株式会社リガク製の「CTLabHX130」)に導入した。サンプル1では、X線発生源と金属含有試料との間の撮影距離を変え、撮影視野(FOV)の大きさが7mm、20mm、30mmとなるように撮像し、撮影視野の異なる3つのCT画像を取得した。以降、FOVの大きさが7mmであれば「FOV7」と表記する。なお、各試料量は、FOV7で0.2g、FOV20で5g、FOV30で20gであった。また、各CT画像での分解能、すなわち画素サイズは、FOV7で7.1μm、FOV20で20μm、FOV30で30μmであった。
【0063】
続いて、取得した各CT画像を解析し、金属含有試料に含まれる金属粒子の粒径とその個数を測定し、粒度分布を得た。続いて、各粒度分布をFOV30の試料量となるように規格化した。具体的には、FOV7の粒度分布について個数を100倍(20/0.2)、FOV20の粒度分布について個数を4倍(20/5)した。これにより、3つの規格化粒度分布を得た。得られた規格化粒度分布を
図5に示す。
図5は、サンプル1において取得される規格化粒度分布を示し、横軸は粒径[μm]を、縦軸は個数の対数をそれぞれ示す。
【0064】
続いて、各規格化粒度分布を比較し、金属粒子の個数が相関する粒径の閾値を設定した。FOV7とFOV20の規格化粒度分布を比較したとき、粒径が63μm以上の範囲で個数の相関が高いことから、FOV7とFOV20についての閾値を63μmに設定した。また同様に、FOV20とFOV30の規格化粒度分布を比較したとき、粒径が90μm以上の範囲で個数の相関が高いことから、FOV20とFOV30についての閾値を90μmに設定した。なお、粒径の閾値は、各FOVでの分解能、すなわち画素サイズの3倍以上の範囲であって、かつ、比較する規格化粒度分布の個数の比率が0.5倍以上1.5倍以下となる粒径の範囲から設定した。
【0065】
続いて、各規格化粒度分布について設定した粒径の閾値に基づき、粒度分布を抽出した。具体的には、FOV7の規格化粒度分布については粒径が8.1μm~53μmの範囲を、FOV20の規格化粒度分布については粒径が63μm~75μmの範囲を、FOV30の規格化粒度分布については粒径が90μm以上の範囲を、それぞれ抽出し、1つに統合した。
【0066】
続いて、抽出・統合した規格化粒度分布に基づき、金属含有試料に含まれる金属粒子を評価した。サンプル1では、金属粒子の情報として、金属含有試料に含まれる金属粒子の含有量(重量比率)を解析した。具体的には、金属粒子の粒径とその個数に基づき、金属含有試料に含まれる金属(メタル)の重量比率を評価した。その結果、金属含有試料に含まれる金属の含有量は重量割合で10.7重量%であることが確認された。
【0067】
(サンプル2)
サンプル2では、FOV7およびFOV30となるように2点の撮影距離で撮像してCT画像を取得した以外は、サンプル1と同様の操作を行い、金属含有試料を評価した。サンプル2にて、得られた規格化粒度分布を
図6に示す。
図6は、サンプル2において取得される規格化粒度分布を示し、横軸は粒径[μm]を、縦軸は個数の対数をそれぞれ示す。サンプル2では、FOV7とFOV30の規格化粒度分布を比較し、粒径が90μm以上の範囲で個数の相関が高いことから、FOV7とFOV30についての閾値を90μmに設定した。そして、抽出した規格化粒度分布に基づき、金属試料を評価したところ、サンプル2では、金属試料に含まれる金属の含有量は重量割合で11.1重量%であることが確認された。
【0068】
(サンプル3)
サンプル3では、FOV7となるように1点の撮影距離で撮像したCT画像から粒度分布を取得し、規格化を省略した以外は、サンプル1と同様の操作を行い、金属試料を評価した。その結果、サンプル3では、金属含有試料に含まれる金属の含有量は重量割合で22.0重量%であることが確認された。
【0069】
(サンプル4)
サンプル4では、FOV30となるように1点の撮影距離で撮像したCT画像から粒度分布を取得し、規格化を省略した以外は、サンプル1と同様の操作を行い、金属試料を評価した。その結果、サンプル4では、金属含有試料に含まれる金属の含有量は重量割合で7.5重量%であることが確認された。
【0070】
(評価結果)
サンプル1~4の評価結果を比較するため、金属含有試料について化学分析により金属の含有量を測定したところ、金属の含有量は重量割合で15.4重量%であることが確認された。このことから、サンプル1および2では、サンプル3やサンプル4と比較して、化学分析に近い精度で金属試料を評価しながらも、評価時間を短縮できることが確認された。
【0071】
FOV7のCT画像のみに基づき評価を行ったサンプル3では、化学分析よりも金属の含有量が高くなることが確認された。これは、撮影距離が短く、試料量の少ない撮影視野において、粗大な金属粒子が含まれていたことで、その粒度分布が金属試料の本来の粒度分布を正しく反映していないためと推測される。
【0072】
また、FOV30のCT画像のみに基づき評価を行ったサンプル4では、化学分析よりも金属の含有量が低くなることが確認された。これは、FOV30のCT画像では、分解能が低く、微細な金属粒子の個数を精度よく検出できないためと推測される。
【0073】
一方、複数のCT画像から抽出・統合して評価を行ったサンプル1や2では、検出可能な粒子径を小さくするとともに、粗大な金属粒子による解析のバラつきを抑制できたため、サンプル3やサンプル4と比較して金属試料を精度よく評価できたものと推測される。本発明の金属含有試料の解析方法によれば、非金属物質中に点在する金属粒子の粒度分布を精度よく、かつ効率よく取得することができるが、さらに、目安としてではあるが、金属粒子の重量比率も迅速に評価できることが分かった。ちなみに、一般的な化学分析では、化合物形態や単体を問わず金属元素の全てを定量してしまうため、単体金属の形態を取るものだけを定量するには、特殊な分析法に依ることとなり、多大な手間と時間を要する。
【0074】
以上説明したように、金属含有試料について異なる撮影距離で複数のCT画像を撮像し、複数のCT画像から粒度分布の取得、その規格化、そして規格化粒度分布に基づき所定の粒径範囲を適宜抽出することで、測定時間を短縮しながらも、金属含有試料に含まれる金属粒子を高い精度で評価することができる。