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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145726
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20241004BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058206
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】バス トウヒン シュブラ
(72)【発明者】
【氏名】藤川 尋斗
(72)【発明者】
【氏名】本山 豊
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 圭太
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA06
4K030AA07
4K030AA08
4K030BA29
4K030BB05
4K030EA03
4K030KA04
5F045AA06
5F045AB04
5F045AC01
5F045AC03
5F045AC05
5F045AF03
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EC02
5F045EE11
5F045EF03
5F045EK06
5F045EM10
(57)【要約】
【課題】第1膜及び第2膜の上にシリコン膜を同時に成膜するに際し、第1膜の上に成膜されるシリコン膜と第2膜の上に成膜されるシリコン膜との膜厚差を制御できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による成膜方法は、基板にシリコン膜を成膜する成膜方法であって、第1膜と第2膜とを表面に有する基板を準備する工程と、前記シリコン膜の成長を阻害する成長阻害ガスを前記基板に供給し、前記第1膜の上に前記成長阻害ガスを物理吸着させる工程と、前記第1膜の上に前記成長阻害ガスが物理吸着した前記基板に、珪素数が1のシラン系ガスを供給し、前記第1膜の上及び前記第2膜の上に前記シリコン膜を成膜する工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にシリコン膜を成膜する成膜方法であって、
第1膜と第2膜とを表面に有する基板を準備する工程と、
前記シリコン膜の成長を阻害する成長阻害ガスを前記基板に供給し、前記第1膜の上に前記成長阻害ガスを物理吸着させる工程と、
前記第1膜の上に前記成長阻害ガスが物理吸着した前記基板に、珪素数が1のシラン系ガスを供給し、前記第1膜の上及び前記第2膜の上に前記シリコン膜を成膜する工程と、
を有する、成膜方法。
【請求項2】
前記成長阻害ガスは、熱分解温度より低い温度で供給される、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記第1膜と前記第2膜とは、前記シリコン膜を成膜する際のインキュベーション時間が異なる膜である、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記第2膜の前記インキュベーション時間は、前記第1膜の前記インキュベーション時間より長い、
請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記第1膜は、シリコン膜又は窒化シリコン膜であり、
前記第2膜は、酸化シリコン膜である、
請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記成長阻害ガスは、ホスフィンガス又はジボランガスである、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項7】
基板にシリコン膜を成膜する成膜装置であって、
前記基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給部と、
制御部と、
を備え、
前記基板は、第1膜と第2膜とを表面に有し、
前記処理ガスは、前記シリコン膜の成長を阻害する成長阻害ガスと、珪素数が1のシラン系ガスとを含み、
前記制御部は、前記成長阻害ガスを前記基板に供給し、前記第1膜の上に前記成長阻害ガスを物理吸着させる工程を行うよう前記ガス供給部を制御するように構成され、
前記制御部は、前記第1膜の上に前記成長阻害ガスが物理吸着した前記基板に前記シラン系ガスを供給し、前記第1膜の上及び前記第2膜の上に前記シリコン膜を成膜する工程を行うよう前記ガス供給部を制御するように構成される、
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の表面に露出したSiO膜及びSiN膜の表層を窒化処理してシード層を形成した後にALDによってSiN膜を成膜することで、SiO膜の表面とSiN膜の表面とでSiN膜の成長を揃える技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-175106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、第1膜及び第2膜の上にシリコン膜を同時に成膜するに際し、第1膜の上に成膜されるシリコン膜と第2膜の上に成膜されるシリコン膜との膜厚差を制御できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜方法は、基板にシリコン膜を成膜する成膜方法であって、第1膜と第2膜とを表面に有する基板を準備する工程と、前記シリコン膜の成長を阻害する成長阻害ガスを前記基板に供給し、前記第1膜の上に前記成長阻害ガスを物理吸着させる工程と、前記第1膜の上に前記成長阻害ガスが物理吸着した前記基板に、珪素数が1のシラン系ガスを供給し、前記第1膜の上及び前記第2膜の上に前記シリコン膜を成膜する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、第1膜及び第2膜の上にシリコン膜を同時に成膜するに際し、第1膜の上に成膜されるシリコン膜と第2膜の上に成膜されるシリコン膜との膜厚差を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図2】実施形態に係る成膜方法を示す断面図である。
図3】a-Si膜上にa-Si膜を成膜する場合の表面反応を示す図である。
図4】SiO膜上にa-Si膜を成膜する場合の表面反応を示す図である。
図5】実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図6】a-Si膜上にa-Si膜を成膜したときのガス供給時間と膜厚との関係を示す図である。
図7】SiO膜上にa-Si膜を成膜したときのガス供給時間と膜厚との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔成膜方法〕
図1及び図2を参照し、実施形態に係る成膜方法について説明する。図1に示されるように、実施形態に係る成膜方法は、準備工程S10と、成長阻害工程S20と、成膜工程S30と、を有する。
【0010】
準備工程S10は、図2(a)に示されるように、基板101を準備することを含む。基板101は、例えばシリコンウエハ等の半導体ウエハである。基板101は、アモルファスシリコン膜(a-Si膜)102と酸化シリコン膜(SiO膜)103とを表面に有する。a-Si膜102は、第1膜の一例である。SiO膜103は、第2膜の一例である。基板101は、平坦部104と、第1柱状部105と、第2柱状部106とを表面に有する。第1柱状部105及び第2柱状部106は、それぞれ平坦部104上に設けられる。第1柱状部105及び第2柱状部106は、それぞれ複数であってもよい。a-Si膜102は、平坦部104及び第1柱状部105を覆う。SiO膜103は、第2柱状部106を覆う。基板101は、第1柱状部105及び第2柱状部106を有しなくてもよい。この場合、a-Si膜102とSiO膜103とが、平坦部104上の異なる領域に設けられる。準備工程S10は、基板101を所定の温度に調整して維持することを含んでよい。所定の温度は、成長阻害工程S20における処理温度と同じ温度であってよい。この場合、準備工程S10から成長阻害工程S20に移行する際に温度を変更しなくてよいので、生産性が向上する。
【0011】
成長阻害工程S20は、準備工程S10の後に行われる。成長阻害工程S20は、基板101を第1処理温度に調整して維持することを含む。成長阻害工程S20は、基板101にホスフィン(PH)ガスを供給することを含む。ホスフィンガスは、成長阻害ガスの一例である。ホスフィンガスは、図2(b)に示されるように、a-Si膜102の表面に選択的に物理吸着するのに対し、SiO膜103の表面にはほとんど物理吸着しない。理由については後述する。第1処理温度は、ホスフィンガスの熱分解温度より低い温度であることが好ましい。この場合、a-Si膜102の表面に対するホスフィンガスの化学吸着を防止できるため、成膜工程S30においてa-Si膜102の表面に存在するホスフィンガスが容易に除去される。このため、ホスフィンガスに含まれるリン(P)が後述するa-Si膜108の膜中に残存することを防止できる。その結果、a-Si膜108の性質に影響を与えることがない。第1処理温度は、例えば470℃である。
【0012】
成膜工程S30は、成長阻害工程S20の後に行われる。成膜工程S30は、基板101を第2処理温度に調整して維持することを含む。成膜工程S30は、基板101にモノシラン(SiH)ガスを供給し、a-Si膜102上及びSiO膜103上にa-Si膜108を成膜することを含む。モノシランガスは、珪素数が1のシラン系ガスの一例である。SiO膜103に対してモノシランガスの供給が開始されてから成膜が開始されるまでには所定の時間を要する。a-Si膜102に対してモノシランガスの供給が開始されると供給直後から成膜が開始されるが、表面にPHが物理吸着している場合、物理吸着するPHの量が多くなるほど、モノシランガスの供給が開始されてから成膜が開始されるまでの時間が長くなる。成膜工程S30では、a-Si膜102上にPHが物理吸着しているので、a-Si膜102上にPHが物理吸着していない場合と比べて、a-Si膜102上及びSiO膜103上に膜厚差が小さいa-Si膜108が成膜される。第2処理温度は、モノシランガスの熱分解温度以上600℃以下の温度であってよい。第2処理温度は、第1処理温度と同じであってよく、例えば470℃である。
【0013】
図3を参照し、a-Si膜102上にa-Si膜108を成膜する場合の表面反応について説明する。図3(a)に示されるように、a-Si膜102の表面は、Si-H結合や未結合手(ダングリングボンド)を有する珪素(Si)により構成される。Si-H結合やダングリングボンドを有する珪素を有する表面には、ホスフィン(PH)が吸着しやすい。このため、図3(b)に示されるように、成長阻害工程S20においてa-Si膜102に対してホスフィンガスが供給されると、a-Si膜102の表面にPHが物理吸着する。
【0014】
続いて、成膜工程S30においてモノシランガスが供給されると、図3(c)に示されるように、モノシランガスが熱分解してSiHラジカルが生成される。SiHラジカルは、a-Si膜102の表面に存在する水素(H)を引き抜くことでSiHに戻ると共にダングリングボンドを生成する。a-Si膜102の表面にPHが物理吸着していない場合、ダングリングボンドに別のSiHラジカルが吸着してa-Si膜108の成膜が開始される。これに対し、a-Si膜102の表面にPHが物理吸着している場合、ダングリングボンドへのSiHラジカルの吸着がPHにより阻害される。この場合、a-Si膜102の表面にSiHラジカルが供給され続けると、a-Si膜102の表面からPHが脱離する。a-Si膜102の表面からPHが脱離すると、SiHラジカルがa-Si膜102の表面に存在する水素(H)を引き抜くことでSiHに戻ると共にダングリングボンドを生成しやすくなる。その結果、ダングリングボンドに別のSiHラジカルが吸着してa-Si膜108の成膜が開始される。
【0015】
このように、表面にPHが物理吸着したa-Si膜102に対しては、モノシランガスの供給が開始されてからa-Si膜108の成膜が開始されるまでに要する時間(以下「インキュベーション時間」ともいう。)が長くなる。インキュベーション時間は、a-Si膜102の表面に物理吸着するPHの量が多いほど長くなる。そこで、成長阻害工程S20において基板101に対するホスフィンガスの供給時間を変更することで、a-Si膜102に対するa-Si膜108のインキュベーション時間を制御できる。
【0016】
図4を参照し、SiO膜103上にa-Si膜108を成膜する場合の表面反応について説明する。図4(a)に示されるように、SiO膜103の表面は、多くのSi-O結合を有し、a-Si膜102の表面と比べてSi-H結合やダングリングボンドを有する珪素(Si)が少ない。Si-O結合は、SiHラジカルによる水素(H)の引き抜きを阻害する機能を有する。このため、SiO膜103上にモノシランガスの供給が開始されてからa-Si膜108の成膜が開始されるまでに要する時間は、a-Si膜102上にモノシランガスの供給が開始されてからa-Si膜108の成膜が開始されるまでに要する時間より長くなる。Si-O結合は、PHの物理吸着を阻害する機能を有する。このため、成長阻害工程S20においてSiO膜103の表面がホスフィンガスに晒されても、図4(b)に示されるように、SiO膜103の表面にはPHがほとんど物理吸着しない。
【0017】
続いて、成膜工程S30においてモノシランガスが供給されると、図4(c)に示されるように、モノシランガスが熱分解してSiHラジカルが生成される。SiHラジカルは、SiO膜103の表面に存在する水素(H)を引き抜くことでSiHに戻ると共にダングリングボンドを生成する。このとき、SiO膜103の表面は多くのSi-O結合を有し、Si-H結合が少ないため、SiHラジカルによる水素(H)の引き抜きが生じにくい。このように、SiO膜103の表面では、PHの物理吸着の有無に関わらず、モノシランガスの供給が開始されてからa-Si膜108の成長が開始されるまでに要する時間が長くなる。
【0018】
以上に説明したように、実施形態に係る成膜方法によれば、a-Si膜102とSiO膜103とを表面に有する基板101に、ホスフィンガスを供給してa-Si膜102の表面にPHを物理吸着させる。この後、モノシランガスを供給し、a-Si膜102上及びSiO膜103上にa-Si膜108を成膜する。これにより、a-Si膜102上及びSiO膜103上に膜厚差が小さいa-Si膜108を同時に成膜できる。
【0019】
実施形態に係る成膜方法によれば、基板101に対するホスフィンガスの供給時間を変更することで、a-Si膜102に対するa-Si膜108のインキュベーション時間を制御できる。このとき、SiO膜103に対するa-Si膜108のインキュベーション時間はほとんど変化しない。このため、a-Si膜102上及びSiO膜103上に成膜されるa-Si膜108の膜厚差を制御できる。
【0020】
〔成膜装置〕
図5を参照し、実施形態に係る成膜装置1について説明する。図5に示されるように、成膜装置1は、複数の基板Wに対して一度に処理を行うバッチ式の装置である。
【0021】
成膜装置1は、処理容器10と、ガス供給部30と、排気部40と、加熱部50と、制御部80とを備える。
【0022】
処理容器10は、内部を減圧可能である。処理容器10は、内部に基板Wを収容する。処理容器10は、内管11と、外管12とを有する。内管11及び外管12は、下端が開放された有天井の円筒形状を有する。外管12は、内管11の外側を覆う。内管11及び外管12は、同軸状に配置された2重管構造を有する。内管11及び外管12は、石英等の耐熱材料により形成される。
【0023】
内管11の天井は、例えば平坦であってよい。内管11の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガスノズルを収容する収容部13が形成される。例えば、内管11の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部14を形成し、凸部14内を収容部13として形成している。
【0024】
収容部13に対向させて内管11の反対側の側壁には、その長手方向(上下方向)に沿って矩形状の開口15が形成される。
【0025】
開口15は、内管11内のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。開口15の長さは、ボート16の長さと同じであるか、又は、ボート16の長さより長く上下方向へそれぞれ延びるようにして形成される。
【0026】
処理容器10の下端は、円筒形状のマニホールド17によって支持される。マニホールド17は、例えばステンレス鋼により形成される。マニホールド17の上端には、フランジ18が形成される。フランジ18は、外管12の下端を支持する。フランジ18と外管12との下端との間には、Oリング等のシール部材19が設けられる。これにより、外管12内が気密に維持される。
【0027】
マニホールド17の上部の内壁には、円環状の支持部20が設けられる。支持部20は、内管11の下端を支持する。マニホールド17の下端の開口には、蓋体21がOリング等のシール部材22を介して気密に取り付けられる。これにより、処理容器10の下端の開口、すなわち、マニホールド17の開口が気密に塞がれる。蓋体21は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0028】
蓋体21の中央部には、磁性流体シール23を介して回転軸24が貫通させて設けられる。回転軸24の下部は、ボートエレベータよりなる昇降機構25のアーム25Aに回転自在に支持される。
【0029】
回転軸24の上端には、回転プレート26が設けられる。回転プレート26上には、石英製の保温台27を介して基板Wを保持するボート16が載置される。ボート16は、回転軸24を回転させることにより回転する。ボート16は、昇降機構25を昇降させることによって蓋体21と一体として上下動する。これにより、ボート16は処理容器10内に対して挿脱される。ボート16は、処理容器10内に収容可能である。ボート16は、複数(例えば50~150枚)の基板Wを上下方向に間隔を有して略水平に保持する。
【0030】
ガス供給部30は、前述した成膜方法で用いられる各種の処理ガスを内管11内に導入可能に構成される。ガス供給部30は、ホスフィン供給部31と、モノシラン供給部32とを含む。
【0031】
ホスフィン供給部31は、処理容器10内にホスフィン供給管31aを備えると共に、処理容器10の外部にホスフィン供給経路31bを備える。ホスフィン供給経路31bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、ホスフィン供給源31c、マスフローコントローラ31d、バルブ31eが設けられる。これにより、ホスフィン供給源31cのホスフィンガスは、バルブ31eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ31dにより所定の流量に調整される。ホスフィンガスは、ホスフィン供給経路31bからホスフィン供給管31aに流入して、ホスフィン供給管31aから処理容器10内に吐出される。
【0032】
モノシラン供給部32は、処理容器10内にモノシラン供給管32aを備えると共に、処理容器10の外部にモノシラン供給経路32bを備える。モノシラン供給経路32bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、モノシラン源32c、マスフローコントローラ32d、バルブ32eが設けられる。これにより、モノシラン源32cのモノシランガスは、バルブ32eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ32dにより所定の流量に調整される。モノシランガスは、モノシラン供給経路32bからモノシラン供給管32aに流入して、モノシラン供給管32aから処理容器10内に吐出される。
【0033】
各ガス供給管(ホスフィン供給管31a、モノシラン供給管32a)は、マニホールド17に固定される。各ガス供給管は、例えば石英により形成される。各ガス供給管は、内管11の近傍位置を鉛直方向に沿って直線状に延在すると共に、マニホールド17内においてL字状に屈曲して水平方向に延在することで、マニホールド17を貫通する。各ガス供給管同士は、内管11の周方向に沿って並んで設けられ、互いに同じ高さに形成される。
【0034】
ホスフィン供給管31aにおいて内管11内に位置する部位には、複数のホスフィン吐出口31fが設けられる。モノシラン供給管32aにおいて内管11内に位置する部位には、複数のモノシラン吐出口32fが設けられる。
【0035】
各吐出口(ホスフィン吐出口31f、モノシラン吐出口32f)は、それぞれのガス供給管の延在方向に沿って所定の間隔ごとに形成される。各吐出口は、水平方向に向けてガスを放出する。各吐出口同士の間隔は、例えばボート16に保持される基板Wの間隔と同じに設定される。各吐出口の高さ方向の位置は、上下方向に隣り合う基板W間の中間位置に設定されている。これにより、各吐出口は隣り合う基板W間の対向面にガスを効率的に供給できる。
【0036】
ガス供給部30は、複数種類のガスを混合して1つのガス供給管から混合したガスを吐出してもよい。各ガス供給管(ホスフィン供給管31a、モノシラン供給管32a)は、互いに異なる形状や配置であってもよい。成膜装置1は、ホスフィンガス、モノシランガスの他に、別のガスを供給するガス供給管を更に備えてもよい。
【0037】
排気部40は、内管11内から開口15を介して排出され、内管11と外管12との間の空間P1を介してガス出口41から排出されるガスを排気する。ガス出口41は、マニホールド17の上部の側壁であって、支持部20の上方に形成される。ガス出口41には、排気通路42が接続される。排気通路42には、圧力調整弁43及び真空ポンプ44が順次介設されて、処理容器10内を排気できるようになっている。
【0038】
加熱部50は、外管12の周囲に設けられている。加熱部50は、例えばベースプレート28上に設けられている。加熱部50は、外管12を覆うように円筒形状を有する。加熱部50は、例えば発熱体を含み、処理容器10内の各基板Wを加熱する。
【0039】
制御部80は、成膜装置1の各部の動作を制御する。制御部80は、例えばコンピュータであってよい。成膜装置1の各部の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体90に記憶されている。記憶媒体90は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0040】
〔成膜装置の動作〕
成膜装置1において実施形態に係る成膜方法を実施する場合の動作について説明する。
【0041】
まず、制御部80は、昇降機構25を制御して、複数の基板Wを保持したボート16を処理容器10内に搬入し、蓋体21により処理容器10の下端の開口を気密に塞ぎ、密閉する。続いて、制御部80は、排気部40を制御して処理容器10内を減圧し、加熱部50を制御して基板Wの温度を第1処理温度に調整する。各基板Wは、前述の基板101であってよい。
【0042】
続いて、制御部80は、成長阻害工程S20を実行するように、ガス供給部30、排気部40及び加熱部50を制御する。具体的には、まず、制御部80は、加熱部50を制御して基板Wの温度を第1処理温度に維持した状態で、ガス供給部30を制御して処理容器10内にホスフィンガスを供給すると共に、排気部40を制御して処理容器10内を処理圧力に維持する。これにより、ホスフィンガスがa-Si膜102の表面に選択的に物理吸着する。
【0043】
続いて、制御部80は、成膜工程S30を実行するように、ガス供給部30、排気部40及び加熱部50を制御する。具体的には、まず、制御部80は、加熱部50を制御して基板Wの温度を第2処理温度に調整して維持した状態で、ガス供給部30を制御して処理容器10内にモノシランガスを供給すると共に、排気部40を制御して処理容器10内を処理圧力に維持する。これにより、a-Si膜102上及びSiO膜103上に膜厚差が小さいa-Si膜108が成膜される。
【0044】
続いて、制御部80は、処理容器10内を大気圧に昇圧すると共に、処理容器10内を搬出温度に降温させた後、昇降機構25を制御してボート16を処理容器10内から搬出する。
【0045】
〔実施例〕
(実施例1)
実施例1では、a-Si膜を表面に有する基板を準備した。続いて、準備した基板を前述の成膜装置1の処理容器10内に収容し、前述した成長阻害工程S20及び成膜工程S30をこの順に実施した。成長阻害工程S20では、基板温度を470℃に維持した状態で、基板にホスフィンガスを供給した。成膜工程S30では、基板温度を470℃に維持した状態で、基板にモノシランガスを供給した。実施例1では、成膜工程S30において基板にモノシランガスを供給する時間が異なる複数の条件でa-Si膜を成膜した。続いて、成膜されたa-Si膜の膜厚を測定した。
【0046】
(比較例1)
比較例1として、準備した基板を前述の成膜装置1の処理容器10内に収容し、上記の成長阻害工程S20を行うことなく、成膜工程S30を実施した。成膜工程S30では、実施例1と同じ条件でa-Si膜を成膜した。続いて、成膜されたa-Si膜の膜厚を測定した。
【0047】
図6は、a-Si膜上にa-Si膜を成膜したときのガス供給時間と膜厚との関係を示す図である。図6において、横軸はガス供給時間を示し、縦軸はa-Si膜の膜厚を示す。図6では、実施例1において測定された複数のa-Si膜の膜厚をプロットしたときの各点を結ぶ実線の直線と、比較例1において測定された複数のa-Si膜の膜厚をプロットしたときの各点を結ぶ破線の直線とを示す。
【0048】
図6の実線で示されるように、実施例1ではモノシランガスの供給が開始されてから所定の時間X1が経過した後にa-Si膜の成膜が開始されている。これに対し、図6の破線で示されるように、比較例1ではモノシランガスの供給が開始された直後にa-Si膜の成膜が開始されていることが分かる。この結果から、成膜工程S30の前に成長阻害工程S20を実施することで、基板にモノシランガスの供給が開始されてからa-Si膜の成膜が開始されるまでに要する時間を長くできることが示された。
【0049】
(実施例2)
実施例2では、SiO膜を表面に有する基板を準備した。続いて、準備した基板を前述の成膜装置1の処理容器10内に収容し、前述した成長阻害工程S20及び成膜工程S30をこの順に実施した。成長阻害工程S20では、基板温度を470℃に維持した状態で、基板にホスフィンガスを供給した。成膜工程S30では、基板温度を470℃に維持した状態で、基板にモノシランガスを供給した。実施例2では、成膜工程S30において基板にモノシランガスを供給する時間が異なる複数の条件でa-Si膜を成膜した。続いて、成膜されたa-Si膜の膜厚を測定した。
【0050】
(比較例2)
比較例2として、準備した基板を前述の成膜装置1の処理容器10内に収容し、上記の成長阻害工程S20を行うことなく、成膜工程S30を実施した。成膜工程S30では、実施例2と同じ条件でa-Si膜を成膜した。続いて、形成したa-Si膜の膜厚を測定した。
【0051】
図7は、SiO膜上にa-Si膜を成膜したときのガス供給時間と膜厚との関係を示す図である。図7において、横軸はガス供給時間を示し、縦軸はa-Si膜の膜厚を示す。図7では、実施例2において測定された複数のa-Si膜の膜厚をプロットしたときの各点を結ぶ実線の直線と、比較例1において測定された複数のa-Si膜の膜厚をプロットしたときの各点を結ぶ破線の直線とを示す。
【0052】
図7の実線で示されるように、実施例2ではモノシランガスの供給が開始されてから所定の時間X2が経過した後にa-Si膜の成膜が開始されていることが分かる。図7の破線で示されるように、比較例2ではモノシランガスの供給が開始されてから所定の時間Y2が経過した後にa-Si膜の成膜が開始されていることが分かる。また、所定の時間Y2は、所定の時間X2とほぼ同じであることが分かる。この結果から、SiO膜上にa-Si膜を成膜する場合、モノシランガスを供給する前にSiO膜をホスフィンガスに晒しても、モノシランガスの供給が開始されてからa-Si膜の成膜が開始されるまでに要する時間がほとんど変化しないことが示された。
【0053】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0054】
上記の実施形態では、成長阻害ガスがホスフィンガスである場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、成長阻害ガスは、ジボラン(B)ガスであってもよい。
【0055】
上記の実施形態では、珪素数が1のシラン系ガスがSiHガスである場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、珪素数が1のシラン系ガスは、SiHガスの分子中の水素(H)の一部がフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲンで置換されたシラン系ガスであってもよい。例えば、珪素数が1のシラン系ガスは、SiFガス、SiHFガス、SiHガス、SiHFガス、SiClガス、SiHClガス、SiHCl(DCS)ガス、SiHClガス、SiClガス、SiBrガス、SiHBrガス、SiHBrガス、SiHBrガス、SiIガス、SiHIガス、SiHガス、SiHIガスであってよい。
【0056】
上記の実施形態では、第1膜がa-Si膜であり、第2膜がSiO膜である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。第1膜と第2膜とは異なる材料で形成されていればよい。例えば、第1膜及び第2膜は、a-Si膜を成膜する際のインキュベーション時間が異なる膜である。例えば、第1膜が窒化シリコン膜(SiN膜)であり、第2膜がSiO膜であってもよい。例えば、基板101は、第1膜及び第2膜に加えて、別の膜を表面に有してもよい。
【0057】
上記の実施形態では、成膜装置が複数の基板に対して一度に処理を行うバッチ式の装置である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、成膜装置は基板を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってよい。
【符号の説明】
【0058】
1 成膜装置
10 処理容器
31 ホスフィン供給部
32 モノシラン供給部
80 制御部
S10 準備工程
S20 成長阻害工程
S30 成膜工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7