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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145845
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】果樹栽培方法、及び果樹園施工方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/06 20060101AFI20241004BHJP
   A01G 17/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A01G7/06 Z
A01G17/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058380
(22)【出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 光徳
(57)【要約】
【課題】果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる果樹栽培方法、及びこの果樹栽培方法を行うための果樹園施工方法を提供すること。
【解決手段】第1シート11によって、果樹Aが植えられる地表面1からの雨水の浸透を防ぎ、第2シート12の地表面壁部12wによって地表水が果樹Aの根圏域Bに流れ込むのを阻止し、第2シート12の他方長手辺12dを土中に埋設することで土中の浸透水が果樹Aの根圏域Bに流れ込むのを阻止し、第2シート12の一方長手辺12uを第1シート11で覆うことで、第1シート11上の雨水を一方長手辺12uを越えて根圏域B外に排出する果樹栽培方法であって、果樹Aが植えられる地表面1が斜面勾配を有し、果樹Aに対して高所に位置する地表面1に第2シート12を配設する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果樹が植えられる地表面を第1シートで被覆し、前記第1シートと前記地表面との間に潅水チューブを配設することで、前記果樹の根圏土壌における土壌水分をコントロールし、前記果樹に対して乾燥ストレスを付与することができる果樹栽培方法であり、
長尺物からなる第2シートを、一方長手辺を前記地表面から露出させ、他方長手辺を土中に埋設し、前記一方長手辺を前記地表面から露出させることで形成される地表面壁部が、自立性を有するとともに弾性を有し、
前記第1シートによって、前記果樹が植えられる前記地表面からの雨水の浸透を防ぎ、
前記第2シートの前記地表面壁部によって地表水が前記果樹の根圏域に流れ込むのを阻止し、
前記第2シートの前記他方長手辺を前記土中に埋設することで前記土中の浸透水が前記果樹の前記根圏域に流れ込むのを阻止し、
前記第2シートの前記一方長手辺を前記第1シートで覆うことで、前記第1シート上の前記雨水を前記一方長手辺を越えて前記根圏域外に排出する
果樹栽培方法であって、
前記果樹が植えられる前記地表面が斜面勾配を有し、
前記果樹に対して高所に位置する前記地表面に前記第2シートを配設する
ことを特徴とする果樹栽培方法。
【請求項2】
前記他方長手辺を、前記根圏域の深さより深い位置とする
ことを特徴とする請求項1に記載の果樹栽培方法。
【請求項3】
前記斜面勾配を有する前記地表面が、法面と通路とを交互に階段状に耕作され、
前記法面と前記通路とは等高線に沿う方向に形成され、
前記法面に、複数の前記果樹が植列され、
前記法面に対して高所に位置する前記通路と、前記法面との間に前記第2シートを配設し、
前記通路が通路勾配を有する場合には、前記通路の高い方の前記法面に対して、前記等高線に直交する方向に前記第2シートを配設する
ことを特徴とする請求項1に記載の果樹栽培方法。
【請求項4】
前記果樹を柑橘とした
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の果樹栽培方法。
【請求項5】
果樹が植えられる地表面を第1シートで被覆し、前記第1シートと前記地表面との間に潅水チューブを配設することで、前記果樹の根圏土壌における土壌水分をコントロールし、前記果樹に対して乾燥ストレスを付与することができる果樹栽培方法であり、
既に植えられている前記果樹の外方に溝を掘る第1ステップと、
前記溝に、長尺物からなる第2シートを、一方長手辺を前記地表面から露出させ、他方長手辺を前記溝内に位置させる第2ステップと、
前記一方長手辺を前記地表面から露出させた状態で前記溝を埋め戻すことで地表面壁部を形成する第3ステップと
を有し、
前記第2シートの前記一方長手辺を前記第1シートで覆い、
前記地表面壁部が、自立性を有するとともに弾性を有し、
施工後においては、
前記第1シートによって、前記果樹が植えられる前記地表面からの雨水の浸透を防ぎ、
前記第2シートの前記地表面壁部によって地表水が前記果樹の根圏域に流れ込むのを阻止し、
前記第2シートの前記他方長手辺を前記土中に埋設することで前記土中の浸透水が前記果樹の前記根圏域に流れ込むのを阻止し、
前記第2シートの前記一方長手辺を前記第1シートで覆うことで、前記第1シート上の前記雨水を前記一方長手辺を越えて前記根圏域外に排出する
果樹園の果樹園施工方法であって、
前記果樹が植えられる前記地表面が斜面勾配を有し、
前記果樹に対して高所に位置する前記地表面に前記溝を掘る
ことを特徴とする果樹園施工方法。
【請求項6】
前記他方長手辺を、前記果樹の前記根圏域の深さより深い位置とする
ことを特徴とする請求項5に記載の果樹園施工方法。
【請求項7】
前記斜面勾配を有する前記地表面が、法面と通路とを交互に階段状に耕作され、
前記法面と前記通路とは等高線に沿う方向に形成され、
前記法面に、複数の前記果樹が植列され、
前記法面に対して高所に位置する前記通路と、前記法面との間に前記溝を掘り、
前記通路が通路勾配を有する場合には、前記通路の高い方の前記法面に対して、前記等高線に直交する方向に前記溝を掘る
ことを特徴とする請求項5に記載の果樹園施工方法。
【請求項8】
前記果樹を柑橘とした
ことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の果樹園施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にシートマルチ栽培又はマルチ栽培と呼ばれている果樹栽培方法、この果樹栽培方法を行うための果樹園施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、長尺物からなる第2シートを、一方長手辺を地表面から露出させ、他方長手辺を土中に埋設し、一方長手辺を地表面から露出させることで形成される地表面壁部が、自立性を有するとともに弾性を有し、第1シートによって、果樹が植えられる地表面からの雨水の浸透を防ぎ、第2シートの地表面壁部によって地表水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止し、第2シートの他方長手辺を土中に埋設することで土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止し、第2シートの一方長手辺を第1シートで覆うことで、第1シート上の雨水を一方長手辺を越えて根圏域外に排出する果樹栽培方法、及びこの果樹栽培方法を行うための果樹園施工方法を既に提案している(特許文献1)。
特許文献1によれば、一方長手辺を地表面から露出させることで地表水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止できるとともに、他方長手辺を土中に埋設することで土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。また、地表面壁部が自立性を有することで、地表水の流れ込みを確実に阻止でき、弾性を有することで地表面壁部の破損を防ぎ、長期間に渡って使用することができる。また、第1シート上の雨水を一方長手辺を越えて根圏域外に排出できるため、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7102010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
果樹は、いわゆる階段畑とも呼ばれる、傾斜地で栽培されることが少なくない。
【0005】
そこで本発明は、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる果樹栽培方法、及びこの果樹栽培方法を行うための果樹園施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の果樹栽培方法は、果樹Aが植えられる地表面1を第1シート11で被覆し、前記第1シート11と前記地表面1との間に潅水チューブ13を配設することで、前記果樹Aの根圏土壌2における土壌水分をコントロールし、前記果樹Aに対して乾燥ストレスを付与することができる果樹栽培方法であり、長尺物からなる第2シート12を、一方長手辺12uを前記地表面1から露出させ、他方長手辺12dを土中に埋設し、前記一方長手辺12uを前記地表面1から露出させることで形成される地表面壁部12wが、自立性を有するとともに弾性を有し、前記第1シート11によって、前記果樹Aが植えられる前記地表面1からの雨水の浸透を防ぎ、前記第2シート12の前記地表面壁部12wによって地表水が前記果樹Aの根圏域Bに流れ込むのを阻止し、前記第2シート12の前記他方長手辺12dを前記土中に埋設することで前記土中の浸透水が前記果樹Aの前記根圏域Bに流れ込むのを阻止し、前記第2シート12の前記一方長手辺12uを前記第1シート11で覆うことで、前記第1シート11上の前記雨水を前記一方長手辺12uを越えて前記根圏域B外に排出する果樹栽培方法であって、前記果樹Aが植えられる前記地表面1が斜面勾配を有し、前記果樹Aに対して高所に位置する前記地表面1に前記第2シート12を配設することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の果樹栽培方法において、前記他方長手辺12dを、前記根圏域Bの深さより深い位置とすることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の果樹栽培方法において、前記斜面勾配を有する前記地表面1が、法面1aと通路1bとを交互に階段状に耕作され、前記法面1aと前記通路1bとは等高線に沿う方向に形成され、前記法面1aに、複数の前記果樹Aが植列され、前記法面1aに対して高所に位置する前記通路1bと、前記法面1aとの間に前記第2シート12を配設し、前記通路1bが通路勾配を有する場合には、前記通路1bの高い方の前記法面1aに対して、前記等高線に直交する方向に前記第2シート12xを配設することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の果樹栽培方法において、前記果樹Aを柑橘としたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明の果樹園施工方法は、果樹Aが植えられる地表面1を第1シート11で被覆し、前記第1シート11と前記地表面1との間に潅水チューブ13を配設することで、前記果樹Aの根圏土壌2における土壌水分をコントロールし、前記果樹Aに対して乾燥ストレスを付与することができる果樹A園の果樹園施工方法であり、既に植えられている前記果樹Aの外方に溝3を掘る第1ステップと、前記溝3に、長尺物からなる第2シート12を、一方長手辺12uを前記地表面1から露出させ、他方長手辺12dを前記溝3内に位置させる第2ステップと、前記一方長手辺12uを前記地表面1から露出させた状態で前記溝3を埋め戻すことで地表面壁部12wを形成する第3ステップとを有し、前記第2シート12の前記一方長手辺12uを前記第1シート11で覆い、前記地表面壁部12wが、自立性を有するとともに弾性を有し、施工後においては、前記第1シート11によって、前記果樹Aが植えられる前記地表面1からの雨水の浸透を防ぎ、前記第2シート12の前記地表面壁部12wによって地表水1が前記果樹Aの根圏域Bに流れ込むのを阻止し、前記第2シート12の前記他方長手辺12dを前記土中に埋設することで前記土中の浸透水が前記果樹Aの前記根圏域Bに流れ込むのを阻止し、前記第2シート12の前記一方長手辺12uを前記第1シート11で覆うことで、前記第1シート11上の前記雨水を前記一方長手辺12uを越えて前記根圏域B外に排出する果樹園の果樹園施工方法であって、前記果樹Aが植えられる前記地表面1が斜面勾配を有し、前記果樹Aに対して高所に位置する前記地表面1に前記溝3を掘ることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の果樹園施工方法において、前記他方長手12dを、前記果樹Aの前記根圏域Bの深さより深い位置とすることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項5に記載の果樹園施工方法において、前記斜面勾配を有する前記地表面1が、法面1aと通路1bとを交互に階段状に耕作され、前記法面1aと前記通路1bとは等高線に沿う方向に形成され、前記法面1aに、複数の前記果樹Aが植列され、前記法面1aに対して高所に位置する前記通路1bと、前記法面1aとの間に前記溝3を掘り、前記通路1bが通路勾配を有する場合には、前記通路1bの高い方の前記法面1aに対して、前記等高線に直交する方向に前記溝3を掘ることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の果樹園施工方法において、前記果樹Aを柑橘としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の果樹栽培方法によれば、第2シートを果樹に対して高所に位置する地表面に配設することで、高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
また本発明の果樹園施工方法によれば、既に果樹が植えられている園地においても施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による果樹栽培方法を示す側断面概念図
図2】階段畑における同果樹栽培方法を示す概念図
図3】本発明の一実施例による果樹園施工方法を示す写真
図4】果実発育期間中の乾燥ストレスに及ぼす影響を示すグラフ
図5】果実発育期間中の果実糖度に及ぼす影響を示すグラフ
図6】収穫時の果実品質に及ぼす影響を示す表
図7】階段畑における柑橘樹の根の分布を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による果樹栽培方法は、果樹が植えられる地表面が斜面勾配を有し、果樹に対して高所に位置する地表面に第2シートを配設するものである。本実施の形態によれば、第2シートを果樹に対して高所に位置する地表面に配設することで、高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による果樹栽培方法において、他方長手辺を、根圏域の深さより深い位置とするものである。本実施の形態によれば、根圏域を確実に乾燥させることができるとともに、果樹の根が第2シートを越えて拡大することを防止でき、果樹が成長しても、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による果樹栽培方法において、斜面勾配を有する地表面が、法面と通路とを交互に階段状に耕作され、法面と通路とは等高線に沿う方向に形成され、法面に、複数の果樹が植列され、法面に対して高所に位置する通路と、法面との間に第2シートを配設し、通路が通路勾配を有する場合には、通路の高い方の法面に対して、等高線に直交する方向に第2シートを配設するものである。本実施の形態によれば、第1シート上の雨水を通路に確実に排出でき、高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを第2シートで阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による果樹栽培方法において、果樹を柑橘としたものである。本実施の形態によれば、特に柑橘の根圏域は比較的浅いために第2シートの施工が容易であるとともに、柑橘は乾燥ストレス付与によって確実に糖度を上げることができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態による果樹園施工方法は、果樹が植えられる地表面が斜面勾配を有し、果樹に対して高所に位置する地表面に溝を掘るものである。本実施の形態によれば、既に果樹が植えられている園地においても施工できる。また、第1シート上の雨水を根圏域外に排出でき、第2シートを果樹に対して高所に位置する地表面に配設することで高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による果樹園施工方法において、他方長手辺を、果樹の根圏域の深さより深い位置とするものである。本実施の形態によれば、根圏域を確実に乾燥させることができるとともに、果樹の根が第2シートを越えて拡大することを防止でき、果樹が成長しても、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第5の実施の形態による果樹園施工方法において、斜面勾配を有する地表面が、法面と通路とを交互に階段状に耕作され、法面と通路とは等高線に沿う方向に形成され、法面に、複数の果樹が植列され、法面に対して高所に位置する通路と、法面との間に溝を掘り、通路が通路勾配を有する場合には、通路の高い方の法面に対して、等高線に直交する方向に溝を掘るものである。本実施の形態によれば、第1シート上の雨水を通路に確実に排出でき、高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを第2シートで阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第5から第7のいずれかの実施の形態による果樹園施工方法において、果樹を柑橘としたものである。本実施の形態によれば、特に柑橘の根圏域は比較的浅いために第2シートの施工が容易であるとともに、柑橘は乾燥ストレス付与によって確実に糖度を上げることができる。
【実施例0017】
以下本発明の一実施例による果樹栽培方法について説明する。
図1は本実施例による果樹栽培方法を示す側断面概念図である。
本実施例は、果樹Aが植えられる地表面1を第1シート11で被覆することで、果樹Aの根圏土壌2における土壌水分をコントロールする果樹栽培方法に関する。
この果樹栽培方法は、一般にシートマルチ栽培、又はマルチ栽培と呼ばれて普及している。
【0018】
本実施例による果樹栽培方法では、更に、長尺物からなる第2シート12を、一方長手辺12uを地表面1から露出させ、他方長手辺12dを土中に埋設する。
なお、第1シート11と地表面1との間で、果樹Aの主幹近傍に、潅水チューブ13を配設している。
第2シート12は、果樹Aの根圏域Bに雨水が流れ込むことを阻止する。一方長手辺12uを地表面1から露出させることで地表水が果樹Aの根圏域Bに流れ込むのを阻止できるとともに、他方長手辺12dを土中に埋設することで土中の浸透水が果樹Aの根圏域Bに流れ込むのを阻止でき、果樹Aに対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
一方長手辺12uを地表面1から露出させることで形成される地表面壁部12wは、自立性を有するとともに弾性を有する。地表面壁部12wが自立性を有することで、地表水の根圏域Bへの流れ込みを確実に阻止でき、弾性を有することで地表面壁部12wの破損を防ぎ、長期間に渡って使用することができる。
【0019】
果樹Aが植えられる地表面1は斜面勾配を有している。斜面勾配を有する地表面1は、法面1aと通路1bとを交互に階段状に耕作され、法面1aと通路1bとは等高線に沿う方向に形成され、法面1aに複数の果樹Aが植列される。
本実施例では、法面1aは、自然の地形による斜面や、盛土や切土によって造成された斜面による傾斜面のこととし、低所側の通路1bと高所側の通路1bとの間を法面1aとしている。
法面1aの下端Xから上端Yまでの水平長さ1aLに対する、法面1aの下端Xから上端Yまでの高さ(法面高さ)1aHによる斜面勾配は、10%以上の場合に本実施例は極めて有効であり、斜面勾配が14%以上であれば更に有効である。
また、法面高さ1aHは、50cm以上の場合に本実施例は極めて有効であり、法面高さ1aHが60cm以上であれば更に有効である。
第2シート12は、果樹Aに対して高所に位置する地表面1に配設する。従って、法面1aに対して高所に位置する通路1bと、法面1aとの間に第2シート12を配設することが好ましい。
【0020】
図2は階段畑における同果樹栽培方法を示す概念図であり、図2(a)は植列された2段の側断面概念図、図2(b)は図2(a)の上面概念図を示している。
図2に示すように、上段側の果樹Aに対しても、下段側の果樹Aに対しても、果樹Aに対して高所に位置する地表面1だけに第2シート12を配設する。
図2(b)に示すように、通路1bは、一方が他方よりも高い通路勾配を有することが好ましく、通路勾配は2%以上とすることが好ましい。通路1bは排水路としても機能させる。
一方が他方よりも高い通路勾配を通路1bが有する場合には、通路1bの高い方の法面1aに対して、等高線に直交する方向に第2シート12xを配設する。
【0021】
第1シート11には防水透湿性シートを用いるが、第2シート12には防水不透湿性シートを用いる。第1シート11は雨水の土中への浸透を防ぐとともに土中水分の蒸発を促すことができるのに対して、第2シート12は、防水不透湿性であることから根圏域Bを加湿することがなく、確実に乾燥ストレスを付与することができる。
一方長手辺12uは第1シート11で覆う。一方長手辺12uを第1シート11で覆うことで、第1シート11上の雨水を一方長手辺12uを越えて根圏域B外に排出できるため、果樹Aに対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
他方長手辺12dは、根圏域Bの深さより深い位置とする。他方長手辺12dを根圏域Bの深さより深くすることで、根圏域Bを確実に乾燥させることができるとともに、果樹Aの根が第2シート12を越えて拡大することを防止でき、果樹Aが成長しても、果樹Aに対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0022】
第2シート12にはポリエチレンを主成分とする合成樹脂からなる防水不透湿性シートを用いる。
防水不透湿性シートは、長さを50m、幅を50cm~60cmとした長尺物であり、厚みを1.5mm~2.0mmとしている。
防水不透湿性シートは、一方の面を平滑面とし、他方の面を網目状凹凸面としている。また防水不透湿性シートは、曲げ強度を160kgf/cm2以上197kgf/cm2以下、好ましくは曲げ強度を160kgf/cm2以上180kgf/cm2以下、引張強度を180kgf/cm2以上226kgf/cm2以下、好ましくは引張強度を180kgf/cm2以上205kgf/cm2以下、伸び率を400%以上505%以下、好ましくは伸び率を400%以上460%以下、硬度を45(Type D/1 sec)以上56(Type D/1 sec)以下、好ましくは硬度を45(Type D/1 sec)以上51(Type D/1 sec)以下としている。なお、曲げ強度試験は、JIS K 7203に準じ、温度23℃プラスマイナス2℃、湿度50プラスマイナス10% R.H 88HR レート1mm/mjnで行った。引張強度試験及び伸び率試験は、JIS K 7128に準じ、温度23℃プラスマイナス2℃、湿度50プラスマイナス10% R.H 88HR レート50mm/mjnで行った。硬度試験は、JIS K 7215に準じ、温度23℃プラスマイナス2℃、湿度50プラスマイナス5% R.H 88HRで行った。
このような防水不透湿性シートを第2シート12として用いることで、地表面1から露出させた地表面壁部12wが自立性を備えるとともに弾性を有するため、地表水の流れ込みを確実に阻止でき、弾性を有することで地表面壁部12wの破損を防ぎ、長期間に渡って使用することができる。
また、平滑面を果樹Aの根圏域B側に用いることで、成長によって伸びる果樹Aの根がシート面に張り付くことがなく、改植における抜根時に、防水不透湿性シートの浮き上がりを防止できる。
【0023】
一方長手辺12uは、通路1bの地表面1から5cm程度であることが好ましく、他方長手辺12dは、地表面1から30cm以上、更に好ましくは45cm以上とする。従って、第2シート12の幅は35cm以上であることが好ましく、50cm~60cmであることが更に好ましい。
【0024】
このように、果樹Aが植えられる地表面1を法面1aとし、法面1aに隣接する地表面1には排水路としても機能させる通路1bを形成し、法面1aと法面1aに対して高所に位置する通路1bとの間に第2シート12を配設することで、高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
また、第1シート11上の雨水を通路1bに確実に排出でき、通路1bを排水路として機能させることで、通路1bから第2シート12を越えて果樹Aの根圏域Bに雨水が流れ込むことを防止できる。
また、特に柑橘の根圏域Bは比較的浅いために第2シート12の施工が容易であるとともに、柑橘は乾燥ストレス付与によって確実に糖度を上げることができるため、果樹Aとして柑橘を用いることが適している。
【0025】
図3は本発明の一実施例による果樹園施工方法を示す写真である。
図3(a)は、果樹Aの外方に溝3を掘る第1ステップを示している。果樹Aが植えられる地表面1を法面1aとし、法面1aに隣接して、排水路としても機能させる通路1bが形成されている。法面1aと果樹Aに対して高所に位置する通路1bとの間に溝3を掘る。
図3(b)は、第2ステップとして、第2シート12の埋設を示している。第2シート12は、一方長手辺12uを地表面1から露出させ、他方長手辺12dを溝3内に位置させて溝3に埋設する。
そして、図3(c)に示すように、一方長手辺12uを地表面1から露出させた状態で溝3を埋め戻すことで地表面壁部12wを形成する(第3ステップ)。
図3(d)では、一方長手辺12uを第1シート11で覆った状態を示している。
図3に示すように、本実施例による果樹園施工方法によれば、既に果樹Aが植えられている園地においても施工できる。
そして、第1シート11上の雨水を一方長手辺12uを越えて根圏域B外に排出でき、通路1bを排水路として機能させるとともに地表面壁部12wを形成することで、通路1bから第2シート12を越えて果樹Aの根圏域Bに雨水が流れ込むことを防止できる。
【0026】
図4から図6を用いて本実施例による果樹栽培方法の実証実験を説明する。
図4から図6における実施例及び比較例では、同一の第1シート11を用いている。また実施例及び比較例1では、第2シートは、ポリエチレン93%、発泡率(発泡倍率?)が0.75である合成樹脂からなり、幅を50cm、厚みを1.5mmとした防水不透湿性シートであり、地表面壁部12wを平均5cmとして用いた。比較例2では第1シート11だけを用いている。
図4から図6に示す実施例は、既に説明したように第2シート12を果樹に対して高所に位置する地表面1にだけ配設した本実施例の果樹栽培方法によって栽培した果樹A、比較例1は第2シート12を果樹Aに対して高所及び低所の両方に位置する地表面1に配設して栽培した果樹A、比較例2は、第1シート11のみで第2シート12を配設しないで栽培した果樹Aである。比較例2は一般的なシートマルチ栽培による果樹である。
【0027】
図4は、果実発育期間中の乾燥ストレスに及ぼす影響を示しており、縦軸は乾燥ストレスの指標である葉内最大水ポテンシャルである。
高品質果実生産には、7月から9月末の間、葉内最大水ポテンシャル-0.7~-1.0MPa程度の乾燥ストレスを付与することが重要である。
実施例及び比較例1は同様に推移し、比較例2に比べて強い乾燥ストレスが付与されている。
図5は、果実発育期間中の果実糖度に及ぼす影響を示している。
調査を開始した7月中旬以降、実施例は比較例2に比べて糖度は高く推移し、比較例1と同様の推移を示している。
図6は、収穫時の果実品質に及ぼす影響を示している。
実施例による果実の糖度は13.1度で比較例1による果実と同等で、一般的な高品質果実の糖度基準である糖度12度を超えている。一方で、比較例2による果実は糖度10.8度で実施例による果実に比べて有意に低かった。実施例による果実は、乾燥ストレスが付与された果実の特徴とされるやや酸が高く、小玉で、赤みの強い果皮色を示した。このことから、実施例は比較例1と同等の高品質果実を生産することができると考えられる。
このように、本実施例の果樹栽培方法及び果樹園施工方法によれば、法面1aに対して低所に位置する通路1bと法面1aとの間に第2シート12を配設しなくても、配設した場合と同等の効果を得ることができ、第2シート12の使用量を減らせるだけではなく、施工負担を半減できる。
【0028】
図7は階段畑における柑橘樹の根の分布を示す図である。
段畑園に植栽された16年生温州ミカンにおいて、主幹から法面1aの上端から低所方向に伸長する根は、地表面1からの深さ50cmまでにほぼ全ての根が分布し、主幹部近傍に多く分布する。第1シート11の外側にあたる低所側の通路1bには全体の4%程度の根が分布する。吉田・岩崎(2014,園芸学研究)は、細根の15%程度が湿潤状態でも残りの根が乾燥状態であれば高糖度果実生産に必要な乾燥ストレスを付与できることを明らかにしている。このことから、本実施例のように、第2シート12を果樹Aに対して高所に位置する地表面1にのみ配設する場合には、低所側の通路1bに分布する約4%の根は湿潤土壌となるが、残りの90%以上の根は乾燥状態を維持できることから、第2シート12を果樹Aに対して高所に位置する地表面1と低所に位置する地表面1との両方に配設する場合と同等の効果が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、いわゆる階段畑とも呼ばれる、傾斜地で栽培される果樹に対して効果が高く、特に柑橘や葡萄に最適であり、その他乾燥ストレス付与によって果実品質に影響を与える果樹に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 地表面
1a 法面
1aH 法面高さ
1aL 水平長さ
1b 通路
2 根圏土壌
3 溝
11 第1シート
12、12x 第2シート
12d 他方長手辺
12u 一方長手辺
12w 地表面壁部
13 潅水チューブ
A 果樹
B 根圏域
X 下端
Y 上端

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にシートマルチ栽培又はマルチ栽培と呼ばれている果樹栽培方法、この果樹栽培方法を行うための果樹園施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、長尺物からなる第2シートを、一方長手辺を地表面から露出させ、他方長手辺を土中に埋設し、一方長手辺を地表面から露出させることで形成される地表面壁部が、自立性を有するとともに弾性を有し、第1シートによって、果樹が植えられる地表面からの雨水の浸透を防ぎ、第2シートの地表面壁部によって地表水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止し、第2シートの他方長手辺を土中に埋設することで土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止し、第2シートの一方長手辺を第1シートで覆うことで、第1シート上の雨水を一方長手辺を越えて根圏域外に排出する果樹栽培方法、及びこの果樹栽培方法を行うための果樹園施工方法を既に提案している(特許文献1)。
特許文献1によれば、一方長手辺を地表面から露出させることで地表水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止できるとともに、他方長手辺を土中に埋設することで土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。また、地表面壁部が自立性を有することで、地表水の流れ込みを確実に阻止でき、弾性を有することで地表面壁部の破損を防ぎ、長期間に渡って使用することができる。また、第1シート上の雨水を一方長手辺を越えて根圏域外に排出できるため、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7102010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
果樹は、いわゆる階段畑とも呼ばれる、傾斜地で栽培されることが少なくない。
【0005】
そこで本発明は、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる果樹栽培方法、及びこの果樹栽培方法を行うための果樹園施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の果樹栽培方法は、果樹Aが植えられる地表面1を第1シート11で被覆し、前記第1シート11と前記地表面1との間に潅水チューブ13を配設することで、前記果樹Aの根圏土壌2における土壌水分をコントロールし、前記果樹Aに対して乾燥ストレスを付与することができる果樹栽培方法であり、長尺物からなる第2シート12を、一方長手辺12uを前記地表面1から露出させ、他方長手辺12dを土中に埋設し、前記一方長手辺12uを前記地表面1から露出させることで形成される地表面壁部12wが、自立性を有するとともに弾性を有し、前記第1シート11によって、前記果樹Aが植えられる前記地表面1からの雨水の浸透を防ぎ、前記第2シート12の前記地表面壁部12wによって地表水が前記果樹Aの根圏域Bに流れ込むのを阻止し、前記第2シート12の前記他方長手辺12dを前記土中に埋設することで前記土中の浸透水が前記果樹Aの前記根圏域Bに流れ込むのを阻止し、前記第2シート12の前記一方長手辺12uを前記第1シート11で覆うことで、前記第1シート11上の前記雨水を前記一方長手辺12uを越えて前記根圏域B外に排出する果樹栽培方法であって、前記果樹Aが植えられる前記地表面1が斜面勾配を有し、前記果樹Aに対して高所に位置する前記地表面1に前記第2シート12を配設し、前記果樹に対して低所に位置する前記地表面に前記第2シートを配設しないことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の果樹栽培方法において、前記他方長手辺12dを、前記根圏域Bの深さより深い位置とすることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の果樹栽培方法において、前記斜面勾配を有する前記地表面1が、法面1aと通路1bとを交互に階段状に耕作され、前記法面1aと前記通路1bとは等高線に沿う方向に形成され、前記法面1aに、複数の前記果樹Aが植列され、前記法面1aに対して高所に位置する前記通路1bと、前記法面1aとの間に前記第2シート12を配設し、前記通路1bが通路勾配を有する場合には、前記通路1bの高い方の前記法面1aに対して、前記等高線に直交する方向に前記第2シート12xを配設することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の果樹栽培方法において、前記果樹Aを柑橘としたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明の果樹園施工方法は、果樹Aが植えられる地表面1を第1シート11で被覆し、前記第1シート11と前記地表面1との間に潅水チューブ13を配設することで、前記果樹Aの根圏土壌2における土壌水分をコントロールし、前記果樹Aに対して乾燥ストレスを付与することができる果樹A園の果樹園施工方法であり、既に植えられている前記果樹Aの外方に溝3を掘る第1ステップと、前記溝3に、長尺物からなる第2シート12を、一方長手辺12uを前記地表面1から露出させ、他方長手辺12dを前記溝3内に位置させる第2ステップと、前記一方長手辺12uを前記地表面1から露出させた状態で前記溝3を埋め戻すことで地表面壁部12wを形成する第3ステップとを有し、前記第2シート12の前記一方長手辺12uを前記第1シート11で覆い、前記地表面壁部12wが、自立性を有するとともに弾性を有し、施工後においては、前記第1シート11によって、前記果樹Aが植えられる前記地表面1からの雨水の浸透を防ぎ、前記第2シート12の前記地表面壁部12wによって地表水1が前記果樹Aの根圏域Bに流れ込むのを阻止し、前記第2シート12の前記他方長手辺12dを土中に埋設することで前記土中の浸透水が前記果樹Aの前記根圏域Bに流れ込むのを阻止し、前記第2シート12の前記一方長手辺12uを前記第1シート11で覆うことで、前記第1シート11上の前記雨水を前記一方長手辺12uを越えて前記根圏域B外に排出する果樹園の果樹園施工方法であって、前記果樹Aが植えられる前記地表面1が斜面勾配を有し、前記果樹Aに対して高所に位置する前記地表面1に前記溝3を掘り、前記果樹に対して低所に位置する前記地表面に前記溝を掘らないことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の果樹園施工方法において、前記他方長手12dを、前記果樹Aの前記根圏域Bの深さより深い位置とすることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項5に記載の果樹園施工方法において、前記斜面勾配を有する前記地表面1が、法面1aと通路1bとを交互に階段状に耕作され、前記法面1aと前記通路1bとは等高線に沿う方向に形成され、前記法面1aに、複数の前記果樹Aが植列され、前記法面1aに対して高所に位置する前記通路1bと、前記法面1aとの間に前記溝3を掘り、前記通路1bが通路勾配を有する場合には、前記通路1bの高い方の前記法面1aに対して、前記等高線に直交する方向に前記溝3を掘ることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の果樹園施工方法において、前記果樹Aを柑橘としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の果樹栽培方法によれば、第2シートを果樹に対して高所に位置する地表面に配設することで、高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
また本発明の果樹園施工方法によれば、既に果樹が植えられている園地においても施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による果樹栽培方法を示す側断面概念図
図2】階段畑における同果樹栽培方法を示す概念図
図3】本発明の一実施例による果樹園施工方法を示す写真
図4】果実発育期間中の乾燥ストレスに及ぼす影響を示すグラフ
図5】果実発育期間中の果実糖度に及ぼす影響を示すグラフ
図6】収穫時の果実品質に及ぼす影響を示す表
図7】階段畑における柑橘樹の根の分布を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による果樹栽培方法は、果樹が植えられる地表面が斜面勾配を有し、果樹に対して高所に位置する地表面に第2シートを配設し、果樹に対して低所に位置する地表面に第2シートを配設しないものである。本実施の形態によれば、第2シートを果樹に対して高所に位置する地表面に配設することで、高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による果樹栽培方法において、他方長手辺を、根圏域の深さより深い位置とするものである。本実施の形態によれば、根圏域を確実に乾燥させることができるとともに、果樹の根が第2シートを越えて拡大することを防止でき、果樹が成長しても、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による果樹栽培方法において、斜面勾配を有する地表面が、法面と通路とを交互に階段状に耕作され、法面と通路とは等高線に沿う方向に形成され、法面に、複数の果樹が植列され、法面に対して高所に位置する通路と、法面との間に第2シートを配設し、通路が通路勾配を有する場合には、通路の高い方の法面に対して、等高線に直交する方向に第2シートを配設するものである。本実施の形態によれば、第1シート上の雨水を通路に確実に排出でき、高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを第2シートで阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による果樹栽培方法において、果樹を柑橘としたものである。本実施の形態によれば、特に柑橘の根圏域は比較的浅いために第2シートの施工が容易であるとともに、柑橘は乾燥ストレス付与によって確実に糖度を上げることができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態による果樹園施工方法は、果樹が植えられる地表面が斜面勾配を有し、果樹に対して高所に位置する地表面に溝を掘り、果樹に対して低所に位置する記地表面に溝を掘らないものである。本実施の形態によれば、既に果樹が植えられている園地においても施工できる。また、第1シート上の雨水を根圏域外に排出でき、第2シートを果樹に対して高所に位置する地表面に配設することで高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による果樹園施工方法において、他方長手辺を、果樹の根圏域の深さより深い位置とするものである。本実施の形態によれば、根圏域を確実に乾燥させることができるとともに、果樹の根が第2シートを越えて拡大することを防止でき、果樹が成長しても、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第5の実施の形態による果樹園施工方法において、斜面勾配を有する地表面が、法面と通路とを交互に階段状に耕作され、法面と通路とは等高線に沿う方向に形成され、法面に、複数の果樹が植列され、法面に対して高所に位置する通路と、法面との間に溝を掘り、通路が通路勾配を有する場合には、通路の高い方の法面に対して、等高線に直交する方向に溝を掘るものである。本実施の形態によれば、第1シート上の雨水を通路に確実に排出でき、高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを第2シートで阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第5から第7のいずれかの実施の形態による果樹園施工方法において、果樹を柑橘としたものである。本実施の形態によれば、特に柑橘の根圏域は比較的浅いために第2シートの施工が容易であるとともに、柑橘は乾燥ストレス付与によって確実に糖度を上げることができる。
【実施例0017】
以下本発明の一実施例による果樹栽培方法について説明する。
図1は本実施例による果樹栽培方法を示す側断面概念図である。
本実施例は、果樹Aが植えられる地表面1を第1シート11で被覆することで、果樹Aの根圏土壌2における土壌水分をコントロールする果樹栽培方法に関する。
この果樹栽培方法は、一般にシートマルチ栽培、又はマルチ栽培と呼ばれて普及している。
【0018】
本実施例による果樹栽培方法では、更に、長尺物からなる第2シート12を、一方長手辺12uを地表面1から露出させ、他方長手辺12dを土中に埋設する。
なお、第1シート11と地表面1との間で、果樹Aの主幹近傍に、潅水チューブ13を配設している。
第2シート12は、果樹Aの根圏域Bに雨水が流れ込むことを阻止する。一方長手辺12uを地表面1から露出させることで地表水が果樹Aの根圏域Bに流れ込むのを阻止できるとともに、他方長手辺12dを土中に埋設することで土中の浸透水が果樹Aの根圏域Bに流れ込むのを阻止でき、果樹Aに対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
一方長手辺12uを地表面1から露出させることで形成される地表面壁部12wは、自立性を有するとともに弾性を有する。地表面壁部12wが自立性を有することで、地表水の根圏域Bへの流れ込みを確実に阻止でき、弾性を有することで地表面壁部12wの破損を防ぎ、長期間に渡って使用することができる。
【0019】
果樹Aが植えられる地表面1は斜面勾配を有している。斜面勾配を有する地表面1は、法面1aと通路1bとを交互に階段状に耕作され、法面1aと通路1bとは等高線に沿う方向に形成され、法面1aに複数の果樹Aが植列される。
本実施例では、法面1aは、自然の地形による斜面や、盛土や切土によって造成された斜面による傾斜面のこととし、低所側の通路1bと高所側の通路1bとの間を法面1aとしている。
法面1aの下端Xから上端Yまでの水平長さ1aLに対する、法面1aの下端Xから上端Yまでの高さ(法面高さ)1aHによる斜面勾配は、10%以上の場合に本実施例は極めて有効であり、斜面勾配が14%以上であれば更に有効である。
また、法面高さ1aHは、50cm以上の場合に本実施例は極めて有効であり、法面高さ1aHが60cm以上であれば更に有効である。
第2シート12は、果樹Aに対して高所に位置する地表面1に配設する。従って、法面1aに対して高所に位置する通路1bと、法面1aとの間に第2シート12を配設することが好ましい。
【0020】
図2は階段畑における同果樹栽培方法を示す概念図であり、図2(a)は植列された2段の側断面概念図、図2(b)は図2(a)の上面概念図を示している。
図2に示すように、上段側の果樹Aに対しても、下段側の果樹Aに対しても、果樹Aに対して高所に位置する地表面1だけに第2シート12を配設する。
図2(b)に示すように、通路1bは、一方が他方よりも高い通路勾配を有することが好ましく、通路勾配は2%以上とすることが好ましい。通路1bは排水路としても機能させる。
一方が他方よりも高い通路勾配を通路1bが有する場合には、通路1bの高い方の法面1aに対して、等高線に直交する方向に第2シート12xを配設する。
【0021】
第1シート11には防水透湿性シートを用いるが、第2シート12には防水不透湿性シートを用いる。第1シート11は雨水の土中への浸透を防ぐとともに土中水分の蒸発を促すことができるのに対して、第2シート12は、防水不透湿性であることから根圏域Bを加湿することがなく、確実に乾燥ストレスを付与することができる。
一方長手辺12uは第1シート11で覆う。一方長手辺12uを第1シート11で覆うことで、第1シート11上の雨水を一方長手辺12uを越えて根圏域B外に排出できるため、果樹Aに対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
他方長手辺12dは、根圏域Bの深さより深い位置とする。他方長手辺12dを根圏域Bの深さより深くすることで、根圏域Bを確実に乾燥させることができるとともに、果樹Aの根が第2シート12を越えて拡大することを防止でき、果樹Aが成長しても、果樹Aに対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
【0022】
第2シート12にはポリエチレンを主成分とする合成樹脂からなる防水不透湿性シートを用いる。
防水不透湿性シートは、長さを50m、幅を50cm~60cmとした長尺物であり、厚みを1.5mm~2.0mmとしている。
防水不透湿性シートは、一方の面を平滑面とし、他方の面を網目状凹凸面としている。また防水不透湿性シートは、曲げ強度を160kgf/cm2以上197kgf/cm2以下、好ましくは曲げ強度を160kgf/cm2以上180kgf/cm2以下、引張強度を180kgf/cm2以上226kgf/cm2以下、好ましくは引張強度を180kgf/cm2以上205kgf/cm2以下、伸び率を400%以上505%以下、好ましくは伸び率を400%以上460%以下、硬度を45(Type D/1 sec)以上56(Type D/1 sec)以下、好ましくは硬度を45(Type D/1 sec)以上51(Type D/1 sec)以下としている。なお、曲げ強度試験は、JIS K 7203に準じ、温度23℃プラスマイナス2℃、湿度50プラスマイナス10% R.H 88HR レート1mm/mjnで行った。引張強度試験及び伸び率試験は、JIS K 7128に準じ、温度23℃プラスマイナス2℃、湿度50プラスマイナス10% R.H 88HR レート50mm/mjnで行った。硬度試験は、JIS K 7215に準じ、温度23℃プラスマイナス2℃、湿度50プラスマイナス5% R.H 88HRで行った。
このような防水不透湿性シートを第2シート12として用いることで、地表面1から露出させた地表面壁部12wが自立性を備えるとともに弾性を有するため、地表水の流れ込みを確実に阻止でき、弾性を有することで地表面壁部12wの破損を防ぎ、長期間に渡って使用することができる。
また、平滑面を果樹Aの根圏域B側に用いることで、成長によって伸びる果樹Aの根がシート面に張り付くことがなく、改植における抜根時に、防水不透湿性シートの浮き上がりを防止できる。
【0023】
一方長手辺12uは、通路1bの地表面1から5cm程度であることが好ましく、他方長手辺12dは、地表面1から30cm以上、更に好ましくは45cm以上とする。従って、第2シート12の幅は35cm以上であることが好ましく、50cm~60cmであることが更に好ましい。
【0024】
このように、果樹Aが植えられる地表面1を法面1aとし、法面1aに隣接する地表面1には排水路としても機能させる通路1bを形成し、法面1aと法面1aに対して高所に位置する通路1bとの間に第2シート12を配設することで、高所からの地表水及び土中の浸透水が果樹の根圏域に流れ込むのを阻止でき、果樹に対して確実に乾燥ストレスを付与することができる。
また、第1シート11上の雨水を通路1bに確実に排出でき、通路1bを排水路として機能させることで、通路1bから第2シート12を越えて果樹Aの根圏域Bに雨水が流れ込むことを防止できる。
また、特に柑橘の根圏域Bは比較的浅いために第2シート12の施工が容易であるとともに、柑橘は乾燥ストレス付与によって確実に糖度を上げることができるため、果樹Aとして柑橘を用いることが適している。
【0025】
図3は本発明の一実施例による果樹園施工方法を示す写真である。
図3(a)は、果樹Aの外方に溝3を掘る第1ステップを示している。果樹Aが植えられる地表面1を法面1aとし、法面1aに隣接して、排水路としても機能させる通路1bが形成されている。法面1aと果樹Aに対して高所に位置する通路1bとの間に溝3を掘る。
図3(b)は、第2ステップとして、第2シート12の埋設を示している。第2シート12は、一方長手辺12uを地表面1から露出させ、他方長手辺12dを溝3内に位置させて溝3に埋設する。
そして、図3(c)に示すように、一方長手辺12uを地表面1から露出させた状態で溝3を埋め戻すことで地表面壁部12wを形成する(第3ステップ)。
図3(d)では、一方長手辺12uを第1シート11で覆った状態を示している。
図3に示すように、本実施例による果樹園施工方法によれば、既に果樹Aが植えられている園地においても施工できる。
そして、第1シート11上の雨水を一方長手辺12uを越えて根圏域B外に排出でき、通路1bを排水路として機能させるとともに地表面壁部12wを形成することで、通路1bから第2シート12を越えて果樹Aの根圏域Bに雨水が流れ込むことを防止できる。
【0026】
図4から図6を用いて本実施例による果樹栽培方法の実証実験を説明する。
図4から図6における実施例及び比較例では、同一の第1シート11を用いている。また実施例及び比較例1では、第2シートは、ポリエチレン93%、発泡率(発泡倍率?)が0.75である合成樹脂からなり、幅を50cm、厚みを1.5mmとした防水不透湿性シートであり、地表面壁部12wを平均5cmとして用いた。比較例2では第1シート11だけを用いている。
図4から図6に示す実施例は、既に説明したように第2シート12を果樹に対して高所に位置する地表面1にだけ配設した本実施例の果樹栽培方法によって栽培した果樹A、比較例1は第2シート12を果樹Aに対して高所及び低所の両方に位置する地表面1に配設して栽培した果樹A、比較例2は、第1シート11のみで第2シート12を配設しないで栽培した果樹Aである。比較例2は一般的なシートマルチ栽培による果樹である。
【0027】
図4は、果実発育期間中の乾燥ストレスに及ぼす影響を示しており、縦軸は乾燥ストレスの指標である葉内最大水ポテンシャルである。
高品質果実生産には、7月から9月末の間、葉内最大水ポテンシャル-0.7~-1.0MPa程度の乾燥ストレスを付与することが重要である。
実施例及び比較例1は同様に推移し、比較例2に比べて強い乾燥ストレスが付与されている。
図5は、果実発育期間中の果実糖度に及ぼす影響を示している。
調査を開始した7月中旬以降、実施例は比較例2に比べて糖度は高く推移し、比較例1と同様の推移を示している。
図6は、収穫時の果実品質に及ぼす影響を示している。
実施例による果実の糖度は13.1度で比較例1による果実と同等で、一般的な高品質果実の糖度基準である糖度12度を超えている。一方で、比較例2による果実は糖度10.8度で実施例による果実に比べて有意に低かった。実施例による果実は、乾燥ストレスが付与された果実の特徴とされるやや酸が高く、小玉で、赤みの強い果皮色を示した。このことから、実施例は比較例1と同等の高品質果実を生産することができると考えられる。
このように、本実施例の果樹栽培方法及び果樹園施工方法によれば、法面1aに対して低所に位置する通路1bと法面1aとの間に第2シート12を配設しなくても、配設した場合と同等の効果を得ることができ、第2シート12の使用量を減らせるだけではなく、施工負担を半減できる。
【0028】
図7は階段畑における柑橘樹の根の分布を示す図である。
段畑園に植栽された16年生温州ミカンにおいて、主幹から法面1aの上端から低所方向に伸長する根は、地表面1からの深さ50cmまでにほぼ全ての根が分布し、主幹部近傍に多く分布する。第1シート11の外側にあたる低所側の通路1bには全体の4%程度の根が分布する。吉田・岩崎(2014,園芸学研究)は、細根の15%程度が湿潤状態でも残りの根が乾燥状態であれば高糖度果実生産に必要な乾燥ストレスを付与できることを明らかにしている。このことから、本実施例のように、第2シート12を果樹Aに対して高所に位置する地表面1にのみ配設する場合には、低所側の通路1bに分布する約4%の根は湿潤土壌となるが、残りの90%以上の根は乾燥状態を維持できることから、第2シート12を果樹Aに対して高所に位置する地表面1と低所に位置する地表面1との両方に配設する場合と同等の効果が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、いわゆる階段畑とも呼ばれる、傾斜地で栽培される果樹に対して効果が高く、特に柑橘や葡萄に最適であり、その他乾燥ストレス付与によって果実品質に影響を与える果樹に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 地表面
1a 法面
1aH 法面高さ
1aL 水平長さ
1b 通路
2 根圏土壌
3 溝
11 第1シート
12、12x 第2シート
12d 他方長手辺
12u 一方長手辺
12w 地表面壁部
13 潅水チューブ
A 果樹
B 根圏域
X 下端
Y 上端
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果樹が植えられる地表面を第1シートで被覆し、前記第1シートと前記地表面との間に潅水チューブを配設することで、前記果樹の根圏土壌における土壌水分をコントロールし、前記果樹に対して乾燥ストレスを付与することができる果樹栽培方法であり、
長尺物からなる第2シートを、一方長手辺を前記地表面から露出させ、他方長手辺を土中に埋設し、前記一方長手辺を前記地表面から露出させることで形成される地表面壁部が、自立性を有するとともに弾性を有し、
前記第1シートによって、前記果樹が植えられる前記地表面からの雨水の浸透を防ぎ、
前記第2シートの前記地表面壁部によって地表水が前記果樹の根圏域に流れ込むのを阻止し、
前記第2シートの前記他方長手辺を前記土中に埋設することで前記土中の浸透水が前記果樹の前記根圏域に流れ込むのを阻止し、
前記第2シートの前記一方長手辺を前記第1シートで覆うことで、前記第1シート上の前記雨水を前記一方長手辺を越えて前記根圏域外に排出する
果樹栽培方法であって、
前記果樹が植えられる前記地表面が斜面勾配を有し、
前記果樹に対して高所に位置する前記地表面に前記第2シートを配設し、
前記果樹に対して低所に位置する前記地表面に前記第2シートを配設しない
ことを特徴とする果樹栽培方法。
【請求項2】
前記他方長手辺を、前記根圏域の深さより深い位置とする
ことを特徴とする請求項1に記載の果樹栽培方法。
【請求項3】
前記斜面勾配を有する前記地表面が、法面と通路とを交互に階段状に耕作され、
前記法面と前記通路とは等高線に沿う方向に形成され、
前記法面に、複数の前記果樹が植列され、
前記法面に対して高所に位置する前記通路と、前記法面との間に前記第2シートを配設し、
前記通路が通路勾配を有する場合には、前記通路の高い方の前記法面に対して、前記等高線に直交する方向に前記第2シートを配設する
ことを特徴とする請求項1に記載の果樹栽培方法。
【請求項4】
前記果樹を柑橘とした
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の果樹栽培方法。
【請求項5】
果樹が植えられる地表面を第1シートで被覆し、前記第1シートと前記地表面との間に潅水チューブを配設することで、前記果樹の根圏土壌における土壌水分をコントロールし、前記果樹に対して乾燥ストレスを付与することができる果樹栽培方法であり、
既に植えられている前記果樹の外方に溝を掘る第1ステップと、
前記溝に、長尺物からなる第2シートを、一方長手辺を前記地表面から露出させ、他方長手辺を前記溝内に位置させる第2ステップと、
前記一方長手辺を前記地表面から露出させた状態で前記溝を埋め戻すことで地表面壁部を形成する第3ステップと
を有し、
前記第2シートの前記一方長手辺を前記第1シートで覆い、
前記地表面壁部が、自立性を有するとともに弾性を有し、
施工後においては、
前記第1シートによって、前記果樹が植えられる前記地表面からの雨水の浸透を防ぎ、
前記第2シートの前記地表面壁部によって地表水が前記果樹の根圏域に流れ込むのを阻止し、
前記第2シートの前記他方長手辺を土中に埋設することで前記土中の浸透水が前記果樹の前記根圏域に流れ込むのを阻止し、
前記第2シートの前記一方長手辺を前記第1シートで覆うことで、前記第1シート上の前記雨水を前記一方長手辺を越えて前記根圏域外に排出する
果樹園の果樹園施工方法であって、
前記果樹が植えられる前記地表面が斜面勾配を有し、
前記果樹に対して高所に位置する前記地表面に前記溝を掘り、
前記果樹に対して低所に位置する前記地表面に前記溝を掘らない
ことを特徴とする果樹園施工方法。
【請求項6】
前記他方長手辺を、前記果樹の前記根圏域の深さより深い位置とする
ことを特徴とする請求項5に記載の果樹園施工方法。
【請求項7】
前記斜面勾配を有する前記地表面が、法面と通路とを交互に階段状に耕作され、
前記法面と前記通路とは等高線に沿う方向に形成され、
前記法面に、複数の前記果樹が植列され、
前記法面に対して高所に位置する前記通路と、前記法面との間に前記溝を掘り、
前記通路が通路勾配を有する場合には、前記通路の高い方の前記法面に対して、前記等高線に直交する方向に前記溝を掘る
ことを特徴とする請求項5に記載の果樹園施工方法。
【請求項8】
前記果樹を柑橘とした
ことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の果樹園施工方法。