(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145926
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】定電流回路
(51)【国際特許分類】
G05F 3/24 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G05F3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058534
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴彦
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420NA27
5H420NB03
5H420NB12
5H420NB25
5H420NC02
5H420NC14
5H420NC17
5H420NE03
(57)【要約】
【課題】起動回路部の定常電流を低減した定電流回路を提供する。
【解決手段】トランジスタM5は、トランジスタM3と負電源端子T1との間に接続され、トランジスタM2に並列接続される。トランジスタM6は、トランジスタM5のゲートと負電源端子T1との間に接続される。トランジスタM7は、トランジスタM6に直列接続される。ディプリーション型のトランジスタM8は、正電源端子T2とトランジスタM7との間に接続される。抵抗器R2が、トランジスタM8のゲート・ソース間に接続される。トランジスタM7と抵抗器R2が並列接続される。トランジスタM7のゲートが、負電源端子T1又はトランジスタM6のゲートに接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流を発生する定電流発生部と、
前記定電流発生部を起動させる起動回路部とを備え、
前記定電流発生部は、
第1の電源電圧が供給される第1の電源端子にソース又はエミッタが接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れる電流を折り返す第2のトランジスタと、
第2の電源電圧が供給される第2の電源端子と前記第2のトランジスタとの間に接続された第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第3のトランジスタに流れる電流を折り返し、前記第2の電源端子と前記第1のトランジスタとの間に接続された第4のトランジスタとを有し、
前記起動回路部は、
前記第3のトランジスタと前記第1の電源端子との間に接続され、前記第2のトランジスタに並列接続された第5のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れる電流を折り返し、前記第5のトランジスタのゲート又はベースと前記第1の電源端子との間に接続された第6のトランジスタと、
前記第2の電源端子と前記第6のトランジスタとの間に接続された第7のトランジスタと、
前記第2の電源端子と前記第7のトランジスタとの間に接続されたディプリーション型の第8のトランジスタと、
前記第8のトランジスタのゲート・ソース間に接続された抵抗器とを有し、
前記第7のトランジスタと前記抵抗器が並列接続され、
前記第7のトランジスタのゲート又はベースが、前記第1の電源端子又は前記第6のトランジスタのゲート又はベースに接続された、
定電流回路。
【請求項2】
請求項1に記載の定電流回路において、
前記第5のトランジスタのゲート又はベースは、前記第6のトランジスタと前記抵抗器との接続点に接続されている、
定電流回路。
【請求項3】
請求項1に記載の定電流回路において、
前記第5のトランジスタのゲート又はベースは、前記第8のトランジスタと前記抵抗器との接続点に接続されている、
定電流回路。
【請求項4】
請求項1に記載の定電流回路において、
前記第6のトランジスタの閾値電圧が、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
定電流回路。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上が電界効果トランジスタから構成されている、
定電流回路。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上がバイポーラトランジスタから構成されている、
定電流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因は、CO2のような温暖効果ガスの濃度上昇により、大気の温室効果が強まったことによると考えられており、通信情報化社会の急速な進展に伴い、電子機器の低消費電力化も大きな課題になってきている。電子機器には多くの半導体集積回路が使用されており、本発明は、半導体集積回路に幅広く使われる定電流回路の消費電流を低減し、地球温暖化の抑制に貢献しようとするものである。
【0003】
従来、半導体集積回路に用いられる定電流回路として、
図3に示すような回路が知られている(例えば特許文献1、2など参照)。
図3に示されている定電流回路100は、定電流I
REFを発生する定電流発生部102と、電源投入時及び定電流発生部102の動作が停止した場合に、定電流発生部102を起動する起動回路部103とを有している。
【0004】
定電流発生部102は、カレントミラー接続されたトランジスタM1,M2と、カレントミラー接続されたトランジスタM3,M4と、抵抗器R1とを有している。
【0005】
起動回路部103は、トランジスタM5,M6,M7を有している。トランジスタM5,M6のソースが、負電源電圧VSSに接続され、トランジスタM7のソースが、正電源電圧VDD間に接続される。トランジスタM5は、トランジスタM3に直列接続され、トランジスタM2及び抵抗器R1に並列接続される。トランジスタM5のゲートが、トランジスタM6,M7のドレインに接続される。
【0006】
次に、上記構成の定電流回路100について、その動作を説明する。電源投入後、トランジスタM1のゲート電位となる接合ノードAの電位がトランジスタM6の閾値電圧より低い場合、トランジスタM6はオフ状態、トランジスタM7はオン状態となる。よって、トランジスタM5がオン状態となり、トランジスタM3から励起電流を引き抜く。トランジスタM3とトランジスタM4はカレントミラー接続されているため、トランジスタM4へ励起電流を発生させる。トランジスタM4による励起電流は、接合ノードAと負電源電圧VSSとの間の寄生容量を充電し、トランジスタM1,M2をオフ状態からオン状態に変化させる。
【0007】
ここで、接合ノードAの電位がトランジスタM6の閾値電圧を超えると、トランジスタM6がオン状態となる。トランジスタM6がオン状態となると、トランジスタM5はオフ状態となり、励起電流の引き抜きが終了する。この時点でトランジスタM3,M4とトランジスタM1,M2には十分な電流が流れており、定電流発生部102は定常状態へと移行する。
【0008】
トランジスタM7のゲート電位は、トランジスタM1のゲート・ソース電位差で駆動され、トランジスタM6がオン状態となってもトランジスタM7はオフ状態とならない。トランジスタM7は常時オン状態であり、抵抗器と同様な動作となる。したがって、定電流発生部102が定常状態に移行した後も、トランジスタM6のドレイン電流は起動回路部103の定常電流として流れ続ける。
【0009】
トランジスタM7のオン抵抗をRM7とした場合の定常電流IM6は式1で表される。なお、下記の式1において、IM7は、トランジスタM7のドレイン電流である。
【0010】
【0011】
起動回路部103の定常電流IM6は、トランジスタM5をオンするために、トランジスタM6がオフ状態のリーク電流より大きな電流値に設定する必要がある。式1より起動回路部103の定常電流IM6は、電源電圧の変動や抵抗RM7の変動に大きく依存する。抵抗RM7は、製造プロセスのバラツキや温度変動により抵抗値が変動する。このため、定常電流IM6は、電源電圧、温度、製造バラツキなどの変動量を考慮して、ある程度大きなマージンを持たせた状態で、トランジスタM6がオフ時のリーク電流より大きな電流値に設計する必要がある。
【0012】
上述した従来の定電流回路100は、定電流発生部102が定常状態に移行した後も、起動回路部103に大きな定常電流IM6が流れ続けるため、消費電流が大きくなるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011-118532号公報
【特許文献2】特許第6329633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、起動回路部の定常電流を低減した定電流回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係る定電流回路は、下記[1]~[6]を特徴としている。
[1]
定電流を発生する定電流発生部と、
前記定電流発生部を起動させる起動回路部とを備え、
前記定電流発生部は、
第1の電源電圧が供給される第1の電源端子にソース又はエミッタが接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れる電流を折り返す第2のトランジスタと、
第2の電源電圧が供給される第2の電源端子と前記第2のトランジスタとの間に接続された第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第3のトランジスタに流れる電流を折り返し、前記第2の電源端子と前記第1のトランジスタとの間に接続された第4のトランジスタとを有し、
前記起動回路部は、
前記第3のトランジスタと前記第1の電源端子との間に接続され、前記第2のトランジスタに並列接続された第5のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れる電流を折り返し、前記第5のトランジスタのゲート又はベースと前記第1の電源端子との間に接続された第6のトランジスタと、
前記第2の電源端子と前記第6のトランジスタとの間に接続された第7のトランジスタと、
前記第2の電源端子と前記第7のトランジスタとの間に接続されたディプリーション型の第8のトランジスタと、
前記第8のトランジスタのゲート・ソース間に接続された抵抗器とを有し、
前記第7のトランジスタと前記抵抗器が並列接続され、
前記第7のトランジスタのゲート又はベースが、前記第1の電源端子又は前記第6のトランジスタのゲート又はベースに接続された、
定電流回路であること。
[2]
[1]に記載の定電流回路において、
前記第5のトランジスタのゲート又はベースは、前記第6のトランジスタと前記抵抗器との接続点に接続されている、
定電流回路であること。
[3]
[1]に記載の定電流回路において、
前記第5のトランジスタのゲート又はベースは、前記第8のトランジスタと前記抵抗器との接続点に接続されている、
定電流回路であること。
[4]
[1]に記載の定電流回路において、
前記第6のトランジスタの閾値電圧が、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
定電流回路であること。
[5]
[1]~[4]の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上が電界効果トランジスタから構成されている、
定電流回路であること。
[6]
[1]~[4]の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上がバイポーラトランジスタから構成されている、
定電流回路であること。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、起動回路部の定常電流を低減した定電流回路を提供できる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
【
図3】
図3は、従来の定電流回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の定電流回路1について
図1を参照して説明する。
図1に示すように、定電流回路1は、定電流I
REFを発生する定電流発生部2と、電源投入時及び定電流発生部2の動作が停止した場合に定電流発生部2を起動する起動回路部3とを備えている。
【0021】
定電流発生部2は、トランジスタM1(=第1のトランジスタ),トランジスタM2(=第2のトランジスタ),トランジスタM3(=第3のトランジスタ),トランジスタM4(=第4のトランジスタ)と、抵抗器R1とを備える。トランジスタM1,M2は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM3,M4は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0022】
トランジスタM1は、ソースが負電源端子T1(=第1の電源端子)に接続される。負電源端子T1には負電源電圧VSS(=第1の電源電圧)が供給されている。トランジスタM2は、ソースが抵抗器R1を介して負電源端子T1に接続され、ゲートがトランジスタM1のゲート及びドレインに接続される。すなわち、トランジスタM1,M2は、カレントミラー接続され、トランジスタM1に流れるドレイン電流がトランジスタM2のドレイン電流にコピーされ折り返される。
【0023】
トランジスタM3は、ソースが正電源端子T2(=第2の電源端子)に接続される。正電源端子T2には、正電源電圧VDD(=第2の電源電圧)が供給されている。トランジスタM3は、ドレイン及びゲートがトランジスタM2のドレインに接続される。すなわち、トランジスタM2及びM3は、直列接続される。
【0024】
トランジスタM4は、ソースが正電源端子T2に接続され、ゲートがトランジスタM3のゲート及びドレインに接続され、ドレインがトランジスタM1のドレイン及びゲートに接続される。すなわち、トランジスタM3,M4は、カレントミラー接続され、トランジスタM3に流れるドレイン電流がトランジスタM4のドレイン電流にコピーされ折り返される。また、トランジスタM1及びM4は、直列接続される。
【0025】
起動回路部3は、電源投入時及び定電流発生部2の動作が停止した場合に、トランジスタM1,M2の寄生容量に電流を供給して、トランジスタM1,M2をオンさせるためのトランジスタM5(=第5のトランジスタ)と、トランジスタM5のオンオフを制御する制御回路31とを有している。トランジスタM5は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0026】
トランジスタM5は、ソースが負電源端子T1に接続され、ゲートがトランジスタM6のドレインとトランジスタM7のドレインとの接続点である接合ノードCに接続され、ドレインがトランジスタM2,M3のドレインに接続される。トランジスタM5は、トランジスタM3と直列接続され、トランジスタM2及び抵抗器R1と並列接続される。
【0027】
制御回路31は、トランジスタM6(=第6のトランジスタ),トランジスタM7(=第7のトランジスタ),トランジスタM8(=第8のトランジスタ)と、抵抗器R2(=抵抗器)とを有している。トランジスタM6,M8は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM7は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0028】
トランジスタM6は、ソースが負電源端子T1に接続され、ゲートがトランジスタM1のゲート及びドレインに接続され、ドレインがトランジスタM7のドレインに接続される。トランジスタM6は、トランジスタM1にカレントミラー接続され、トランジスタM1に流れる電流を折り返す。
【0029】
トランジスタM7は、ドレインがトランジスタM6のドレインに接続され、ゲートが負電源端子T1に接続される。トランジスタM8は、ドレインが正電源端子T2に接続され、ゲートがトランジスタM7のドレインに接続され、ソースがトランジスタM7のソースに接続される。トランジスタM8は、ディプリーション型のトランジスタから構成されている。
【0030】
抵抗器R2は、トランジスタM7と並列接続され、一端がトランジスタM7のソースに接続され、他端がトランジスタM7のドレインに接続される。抵抗器R2は、トランジスタM8のゲート・ソース間に接続されている。また、トランジスタM7,M8と抵抗器R2により定電流源を構成している。
【0031】
次に、上述した構成の定電流回路1の動作について説明する。最初に、電源投入後、トランジスタM1のゲート電位となる接合ノードAの電位がトランジスタM1,M2,M6の閾値電圧より低い場合の動作について説明する。この場合、トランジスタM1,M2,M6はオフ状態となっている。また、ディプリーション型トランジスタM8はオン状態となり、接合ノードCの電位が上昇しHigh状態(=正電源電圧VDD)となるため、トランジスタM5はオンする。
【0032】
トランジスタM5がオンすると、トランジスタM5は、トランジスタM3からの励起電流を引き抜く。トランジスタM3,M4は、カレントミラー接続されているため、上記励起電流がトランジスタM4のドレイン電流にコピーされる。このトランジスタM4による励起電流は、接合ノードAと負電源端子T1との間の寄生容量を充電する。寄生容量を充電した結果、トランジスタM1,M2,M6のゲート・ソース電位差が閾値電圧を超えると、トランジスタM1,M2,M6がオフ状態からオン状態に変化する。
【0033】
トランジスタM6がオンすると、接合ノードCの電位はHigh状態からLow状態(=負電源電圧VSS)に変化し、トランジスタM5はオフして励起電流の引き抜きが終了する。この時点でトランジスタM3,M4とトランジスタM1,M2には十分な電流が流れており、定電流発生部2は定常状態へと移行する。
【0034】
次に、トランジスタM7,M8と抵抗器R2により構成された定電流源の動作を説明する。電源投入後で、定電流発生部2が定常状態に移行する前では、トランジスタM6はオフ状態、トランジスタM7,M8と抵抗器R2により構成された定電流源が接合ノードCに電流を流し込むため、接合ノードCの電位はHigh状態になる。接合ノードCの電位がHigh状態になると、トランジスタM8のゲート・ソース間に接続された抵抗器R2に並列接続されたトランジスタM7がオンする。
【0035】
トランジスタM8のゲート・ソース間に接続される抵抗値の大きさは、トランジスタM7がオフ状態の時は、抵抗器R2の抵抗値となるが、トランジスタM7がオン状態の時は、トランジスタM7のオン抵抗と抵抗器R2との並列抵抗となるため、抵抗値は小さくなる。そのため、トランジスタM7がオンすると、トランジスタM8のゲート・ソース間に接続された抵抗による負帰還がかからないため、トランジスタM7がオフ状態の時と比べ、トランジスタM7,M8と抵抗器R2による定電流源で生成された電流は大きくなる。
【0036】
トランジスタM7がオン状態の時のトランジスタM7,M8と抵抗器R2による定電流源で生成された電流は、接合ノードCと負電源端子T1との間の寄生容量を充電する。その充電電流は、接合ノードCの電位が上昇しHigh状態になるまでの間に流れ、定常電流としては流れ続けない。トランジスタM5のゲート・ソース電位差が閾値電圧を超えると、トランジスタM5がオフ状態からオン状態に変化する。
【0037】
一方、定電流発生部2が定常状態に移行した後では、トランジスタM6はオンし、接合ノードCの電位はLow状態になる。トランジスタM7のソース電位は、(Low状態の接合ノードCの電位)+(トランジスタM8のゲート・ソース間電圧)と等しくなり、トランジスタM7の閾値電圧よりも小さい。このため、接合ノードCの電位がLow状態になると、トランジスタM8のゲート・ソース間に接続された抵抗器R2に並列接続されたトランジスタM7がオフする。
【0038】
トランジスタM7がオフすると、トランジスタM8のゲート・ソース間には抵抗器R2のみが接続された状態となる。抵抗器R2の電圧降下によって負帰還がかかるため、トランジスタM7がオン状態の時と比べ、トランジスタM8と抵抗器R2による定電流源で生成された電流は小さくなる。このようにトランジスタM7がオフすると、トランジスタM8,抵抗器R2による定電流源で生成された電流は小さくなるため、接合ノードCの電位は、Low状態が保持され、トランジスタM7のオフも保持される。また、トランジスタM8と抵抗器R2による定電流源で生成された電流が小さくなると、トランジスタM8の閾値電圧の製造バラツキによる電流の変動量も低減される。このため、定常状態に移行した後は、小さく抑制され変動量も低減された電流が、定常電流IM6としてトランジスタM6に流れる。
【0039】
すなわち、トランジスタM7がオンして、トランジスタM8のゲート・ソース間の抵抗が小さい時に生成される定電流は、製造工程で生ずるトランジスタの閾値電圧の変動によって絶対値や温度係数が大きく変化する。一方、トランジスタM7がオフして、トランジスタM8のゲート・ソース間の抵抗が抵抗器R2の抵抗値と等しくなると、トランジスタM8のゲート・ソース間には、ソースから流れ出る電流と抵抗器R2の電圧降下によって負帰還がかかる。これにより、トランジスタM8に流れる電流と抵抗器R2に流れる電流が等しくなるようにトランジスタM8のソース電位(=抵抗器R2の電圧降下)が制御されるため、閾値電圧のバラツキによる電流変動が自己補正される。
【0040】
なお、トランジスタM8のゲート・ソース電位差(=閾値電圧)は、負の温度係数となるため、抵抗器R2を正の温度係数となる構造とすることで、温度の変動によるトランジスタM8と抵抗器R2による定電流源で生成される電流の変化量をさらに低減させることができる。
【0041】
また、
図3に示されているような従来の定電流回路100の構成例において、定電流発生部102が定常状態に移行した後のトランジスタM6のドレイン電流である定常電流I
M6は、式1より電源電圧や温度などの影響による変動量が大きい。しかしながら、第1実施形態において、定電流発生部2が定常状態に移行した後のトランジスタM6のドレイン電流である定常電流I
M6は、トランジスタM8と抵抗器R2による定電流源で生成されるため、閾値電圧の製造バラツキによる変動量に加え、電源電圧や温度などの影響による変動量も低減される。そのため、起動回路部3の定常電流を低減させることができる。
【0042】
上述したように、定常状態に移行した後(=トランジスタM6がオン、接合ノードCがLow状態のとき)は、トランジスタM8のゲート・ソース間に抵抗器R2が接続されることで、低減された定電流が生成されると共に、電源電圧、温度、閾値電圧の製造バラツキなどによる影響を受け難い定電流が生成され、定常電流としてトランジスタM6に流れる。一方、定常状態に移行する前(=トランジスタM6がオフ、接合ノードCがHigh状態のとき)は、トランジスタM8のゲート・ソース間の抵抗が小さくなることで、生成される定電流が大きくなり、接合ノードCがLow状態からHigh状態に変化する時間が短縮されるため、起動回路部3が起動する時間も短縮される。また、生成される電流は、トランジスタM6がオフ時のリーク電流よりも大きくする必要があるが、そのリーク電流に対するするマージンも確保され易い。
【0043】
つまり、この第1実施形態における定電流回路1は、起動回路部3の定常電流が低減されると共に、電源電圧や温度などの影響による変動量も抑制される。また、トランジスタM5がオンするまでの時間が短縮されるため、起動回路部3の起動時間が短縮される。
【0044】
したがって、起動回路部3の定常電流を低減することができ、定電流回路1全体の消費電流を低減することが可能となるという効果が得られるものとなっている。
【0045】
なお、トランジスタM6の閾値電圧の絶対値が、定電流発生部2を構成するトランジスタM1,M2の閾値電圧よりも低くすることで、トランジスタM5がオン状態からオフ状態に変化する時間が短縮され、定電流発生部2が定常状態へ移行するまでの時間が改善される。
【0046】
また、上述した第1実施形態では、トランジスタM7のゲートは負電源端子T1に接続され接続されたが、これに限ったものではない。トランジスタM6のゲートに接続しても、同様の効果が得られるものとなっている。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の定電流回路1Bについて
図2を参照して説明する。なお、
図2において、
図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
同図に示すように、定電流回路1Bは、第1実施形態と同様に、定電流発生部2と、起動回路部3Bとを備えている。定電流発生部2は、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0049】
第1実施形態の起動回路部3と第2実施形態の起動回路部3Bとで異なる点は、トランジスタM5のゲートの接続先である。
【0050】
起動回路部3では、トランジスタM5のゲートは、トランジスタM6のドレインとトランジスタM7のドレインとの接続点に接続されていたが、起動回路部3Bでは、トランジスタM8のソースと抵抗器R2との接続点に接続されている。
【0051】
上述した構成の定電流回路1Bの動作は、後述する点を除けば、基本的には、第1実施形態と同様である。すなわち、第1実施形態の起動回路部3においては、定電流発生部2が定常状態へ移行した時は、トランジスタM5のゲート電位は、ほぼ負電源電圧VSSとなるが、第2実施形態の起動回路部3Bにおいては、負電源電圧VSSに抵抗器R2の電圧降下分を加えた電位となる。
【0052】
つまり、この第2実施形態における起動回路部3Bは、第1実施形態の起動回路部3に比べ、電源電圧の変動やノイズなどの影響で、定電流発生部2が停止した場合に、トランジスタM5がオフ状態からオン状態に変化(=起動回路部3Bが起動)し、再度、定電流発生部2が定常状態へ移行するための時間が短縮される。
【0053】
したがって、定電流発生部2が定常状態へ移行するまでの時間が短縮されると共に、起動回路部3Bの定常電流を低減することができ、定電流回路1B全体の消費電流を低減することが可能となるという効果が得られるものとなっている。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0055】
例えば、上述した第1、第2実施形態では、トランジスタが電界効果トランジスタから構成されていたが、これに限ったものではない。トランジスタの少なくとも1つ以上をバイポーラトランジスタに置き換えてもよい。この場合、トランジスタのゲートをベース、ソースをエミッタ、ドレインをコレクタに読み替えて説明することができる。
【0056】
また、上述した第1、第2実施形態において、正電源端子T2と負電源端子T1とを入れ替えて、トランジスタM1~M8の極性を反転させるようにしてもよい。この場合、正電源電圧VDDが第1の電源電圧、正電源端子T2が第1の電源端子、負電源電圧VSSが第2の電源電圧、負電源端子T1が第2の電源端子に相当する。
【符号の説明】
【0057】
1,1B 定電流回路
2 定電流発生部
3,3B 起動回路部
IREF 定電流
M1 トランジスタ(第1のトランジスタ)
M2 トランジスタ(第2のトランジスタ)
M3 トランジスタ(第3のトランジスタ)
M4 トランジスタ(第4のトランジスタ)
M5 トランジスタ(第5のトランジスタ)
M6 トランジスタ(第6のトランジスタ)
M7 トランジスタ(第7のトランジスタ)
M8 トランジスタ(第8のトランジスタ)
R2 抵抗器(抵抗器)
T1 負電源端子(第1の電源端子)
T2 正電源端子(第2の電源端子)
VDD 正電源電圧(第2の電源電圧)
VSS 負電源電圧(第1の電源電圧)