(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145928
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】定電流回路
(51)【国際特許分類】
G05F 3/24 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G05F3/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058536
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴彦
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420NA27
5H420NB03
5H420NB12
5H420NC02
5H420NC14
5H420NC27
5H420NE01
(57)【要約】
【課題】起動回路部の定常電流を低減した定電流回路を提供する。
【解決手段】起動回路部3において、抵抗器R2は、接合ノードCと負電源端子T2との間に接続される。ディプリーション型のトランジスタM5は、ゲート・ソース間に抵抗器R2が接続される。起動時にトランジスタM5がオンすると、トランジスタM3に励起電流を流す経路が接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流を発生する定電流発生部と、
前記定電流発生部を起動させる起動回路部とを備え、
第1の接合ノードにソース又はエミッタが接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れる電流を折り返す第2のトランジスタと、
第1の電源電圧が供給される第1の電源端子と前記第2のトランジスタとの間に接続された第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第3のトランジスタに流れる電流を折り返し、前記第1の電源端子と前記第1のトランジスタとの間に接続された第4のトランジスタとを有し、
前記起動回路部は、
前記第1の接合ノードと第2の電源電圧が供給される第2の電源端子との間に接続された第1の抵抗器と、
ゲート・ソース間に前記第1の抵抗器が接続されたディプリーション型の第5のトランジスタとを有し、
前記第5のトランジスタがオンすると、前記第1のトランジスタ又は前記第3のトランジスタに励起電流を流す経路が接続される、
定電流回路。
【請求項2】
請求項1に記載の定電流回路において、
前記第5のトランジスタが、前記第3のトランジスタに直列接続され、前記第2のトランジスタに並列接続された、
定電流回路。
【請求項3】
請求項1に記載の定電流回路において、
前記起動回路部は、前記第1の抵抗器に並列接続された電圧クランプ素子を有する、
定電流回路。
【請求項4】
請求項1に記載の定電流回路において、
前記起動回路部は、
前記第5のトランジスタのソースと前記第1の接合ノードとの間に接続された第2の抵抗器を有する、
定電流回路。
【請求項5】
請求項1に記載の定電流回路において、
前記起動回路部は、
前記第3のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第3のトランジスタに流れる電流を折り返し、前記第1の電源端子と前記第5のトランジスタとの間に接続された第6のトランジスタと、
前記第1のトランジスタに直列接続され、前記第4のトランジスタに並列接続された第7のトランジスタとを有し、
前記第7のトランジスタのゲート又はベースが、前記第5のトランジスタと前記第6のトランジスタの接続点に接続された、
定電流回路。
【請求項6】
請求項5に記載の定電流回路において、
前記第6のトランジスタの閾値電圧が、前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
定電流回路。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上が電界効果トランジスタから構成されている、
定電流回路。
【請求項8】
請求項1~6の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上がバイポーラトランジスタから構成されている、
定電流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因は、CO2のような温暖効果ガスの濃度上昇により、大気の温室効果が強まったことによると考えられており、通信情報化社会の急速な進展に伴い、電子機器の低消費電力化も大きな課題になってきている。電子機器には多くの半導体集積回路が使用されており、本発明は、半導体集積回路に幅広く使われる定電流回路の消費電流を低減し、地球温暖化の抑制に貢献しようとするものである。
【0003】
従来、半導体集積回路に用いられる定電流回路として、
図5に示すような回路が知られている(例えば特許文献1、2など参照)。
図5に示されている定電流回路100は、定電流I
REFを発生する定電流発生部102と、電源投入時及び定電流発生部102の動作が停止した場合に、定電流発生部102を起動する起動回路部103とを有している。
【0004】
定電流発生部102は、カレントミラー接続されたトランジスタM1,M2と、カレントミラー接続されたトランジスタM3,M4と、抵抗器R1とを有している。
【0005】
起動回路部103は、トランジスタM10,M11,M12を有している。トランジスタM10,M11のソースが、負電源電圧VSSに接続され、トランジスタM12のソースが、正電源電圧VDD間に接続される。トランジスタM10は、トランジスタM3に直列接続され、トランジスタM2及び抵抗器R1に並列接続される。トランジスタM10のゲートが、トランジスタM11,M12のドレインに接続される。
【0006】
次に、上記構成の定電流回路100について、その動作を説明する。電源投入後、トランジスタM1のゲート電位となる接合ノードAの電位がトランジスタM11の閾値電圧より低い場合、トランジスタM11はオフ状態、トランジスタM12はオン状態となる。よって、トランジスタM10がオン状態となり、トランジスタM3から励起電流を引き抜く。トランジスタM3とトランジスタM4はカレントミラー接続されているため、トランジスタM4へ励起電流を発生させる。トランジスタM4による励起電流は、接合ノードAと負電源電圧VSSとの間の寄生容量を充電し、トランジスタM1,M2をオフ状態からオン状態に変化させる。
【0007】
ここで、接合ノードAの電位がトランジスタM11の閾値電圧を超えると、トランジスタM11がオン状態となる。トランジスタM11がオン状態となると、トランジスタM10はオフ状態となり、励起電流の引き抜きが終了する。この時点でトランジスタM3,M4とトランジスタM1,M2には十分な電流が流れており、定電流発生部102は定常状態へと移行する。
【0008】
トランジスタM12のゲート電位は、トランジスタM1のゲート・ソース電位差で駆動され、トランジスタM11がオン状態となってもトランジスタM12はオフ状態とならない。トランジスタM12は常時オン状態であり、抵抗器と同様な動作となる。したがって、定電流発生部102が定常状態に移行した後も、トランジスタM11のドレイン電流は起動回路部103の定常電流IM11として流れ続ける。
【0009】
トランジスタM12のオン抵抗をRM12とした場合の定常電流IM11は式1で表される。なお、下記の式1において、IM12は、トランジスタM12のドレイン電流である。
【0010】
【0011】
起動回路部103の定常電流IM11は、トランジスタM10をオンするために、トランジスタM11がオフ状態のリーク電流より大きな電流値に設定する必要がある。式1より起動回路部103の定常電流IM11は、電源電圧の変動や抵抗RM12の変動に大きく依存する。抵抗RM12は、製造プロセスのバラツキや温度変動により抵抗値が変動する。このため、定常電流IM11は、電源電圧、温度、製造バラツキなどの変動量を考慮して、ある程度大きなマージンを持たせた状態で、トランジスタM11がオフ時のリーク電流より大きな電流値に設計する必要がある。
【0012】
上述した従来の定電流回路100は、定電流発生部102が定常状態に移行した後も、起動回路部103に大きな定常電流IM11が流れ続けるため、消費電流が大きくなるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011-118532号公報
【特許文献2】特許第6329633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、起動回路部の定常電流を低減した定電流回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係る定電流回路は、下記[1]~[8]を特徴としている。
[1]
定電流を発生する定電流発生部と、
前記定電流発生部を起動させる起動回路部とを備え、
第1の接合ノードにソース又はエミッタが接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れる電流を折り返す第2のトランジスタと、
第1の電源電圧が供給される第1の電源端子と前記第2のトランジスタとの間に接続された第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第3のトランジスタに流れる電流を折り返し、前記第1の電源端子と前記第1のトランジスタとの間に接続された第4のトランジスタとを有し、
前記起動回路部は、
前記第1の接合ノードと第2の電源電圧が供給される第2の電源端子との間に接続された第1の抵抗器と、
ゲート・ソース間に前記第1の抵抗器が接続されたディプリーション型の第5のトランジスタとを有し、
前記第5のトランジスタがオンすると、前記第1のトランジスタ又は前記第3のトランジスタに励起電流を流す経路が接続される、
定電流回路であること。
[2]
[1]に記載の定電流回路において、
前記第5のトランジスタが、前記第3のトランジスタに直列接続され、前記第2のトランジスタに並列接続された、
定電流回路であること。
[3]
[1]に記載の定電流回路において、
前記起動回路部は、前記第1の抵抗器に並列接続された電圧クランプ素子を有する、
定電流回路であること。
[4]
[1]に記載の定電流回路において、
前記起動回路部は、
前記第5のトランジスタのソースと前記第1の接合ノードとの間に接続された第2の抵抗器を有する、
定電流回路であること。
[5]
[1]に記載の定電流回路において、
前記起動回路部は、
前記第3のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第3のトランジスタに流れる電流を折り返し、前記第1の電源端子と前記第5のトランジスタとの間に接続された第6のトランジスタと、
前記第1のトランジスタに直列接続され、前記第4のトランジスタに並列接続された第7のトランジスタとを有し、
前記第7のトランジスタのゲート又はベースが、前記第5のトランジスタと前記第6のトランジスタの接続点に接続された、
定電流回路であること。
[6]
[5]に記載の定電流回路において、
前記第6のトランジスタの閾値電圧が、前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
定電流回路であること。
[7]
[1]~[6]の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上が電界効果トランジスタから構成されている、
定電流回路であること。
[8]
[1]~[6]の何れか1項に記載の定電流回路において、
前記トランジスタの少なくとも1つ以上がバイポーラトランジスタから構成されている、
定電流回路であること。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、起動回路部の定常電流を低減した定電流回路を提供できる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
【
図4】
図4は、第4実施形態における本発明の定電流回路を示す回路図である。
【
図5】
図5は、従来の定電流回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の定電流回路1について
図1を参照して説明する。
図1に示すように、定電流回路1は、定電流I
REFを発生する定電流発生部2と、電源投入時及び定電流発生部の動作が停止した場合に定電流発生部2を起動する起動回路部3とを備えている。
【0021】
定電流発生部2は、トランジスタM1(=第1のトランジスタ),トランジスタM2(=第2のトランジスタ),トランジスタM3(=第3のトランジスタ),トランジスタM4(=第4のトランジスタ)と、抵抗器R1とを備える。トランジスタM1,M2は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM3,M4は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0022】
トランジスタM1は、ソースが接合ノードC(=第1の接合ノード)に接続される。トランジスタM2は、ソースが抵抗器R1を介して接合ノードCに接続され、ゲートがトランジスタM1のゲート及びドレインに接続される。すなわち、トランジスタM1,M2は、カレントミラー接続され、トランジスタM1に流れるドレイン電流がトランジスタM2のドレイン電流にコピーされ折り返される。
【0023】
トランジスタM3は、ソースが正電源端子T1(=第1の電源端子)に接続される。正電源端子T1には、正電源電圧VDD(=第1の電源電圧)が供給されている。トランジスタM3は、ドレイン及びゲートがトランジスタM2のドレインに接続される。すなわち、トランジスタM2及びM3は、直列接続される。
【0024】
トランジスタM4は、ソースが正電源端子T1に接続され、ゲートがトランジスタM3のゲート及びドレインに接続され、ドレインがトランジスタM1のドレイン及びゲートに接続される。すなわち、トランジスタM3,M4は、カレントミラー接続され、トランジスタM3に流れるドレイン電流がトランジスタM4のドレイン電流にコピーされ折り返される。また、トランジスタM1及びM4は、直列接続される。
【0025】
起動回路部3は、電源投入時及び定電流発生部2の動作が停止した場合に、トランジスタM3に励起電流を流すことで、トランジスタM4,M1,M2をオンさせて、定電流発生部2を起動する。起動回路部3は、抵抗器R2(=第1の抵抗器)と、ディプリーション型のトランジスタM5(=第5のトランジスタ)とで構成されている。
【0026】
抵抗器R2は、接合ノードCと負電源端子T2(=第2の電源端子)との間に接続される。負電源端子T2には、負電源電圧VSS(=第2の電源電圧)が供給されている。トランジスタM5は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM5は、ゲート・ソース間に抵抗器R2が接続されている。また、トランジスタM5は、ゲートが負電源端子T2に接続され、ソースが抵抗器R2に接続され、ドレインがトランジスタM3とトランジスタM2の接続点に接続されている。すなわち、トランジスタM5は、トランジスタM3と直列接続され、トランジスタM2及び抵抗器R1に並列接続される。
【0027】
次に、上述した構成の定電流回路1の動作について説明する。最初に、電源投入後、トランジスタM1のゲート・ソース電位差がトランジスタM1,M2の閾値電圧より低い場合(起動時)の動作について説明する。この場合、トランジスタM1,M2はオフ状態であり、接合ノードCには電流が流れ込まないため、抵抗器R2での電圧降下は小さくトランジスタM5と抵抗器R2で構成された定電流源はオン状態となり、トランジスタM3から励起電流を引き抜く。
【0028】
トランジスタM3,M4は、カレントミラー接続されているため、上記励起電流がトランジスタM4のドレイン電流にコピーされる。このトランジスタM4による励起電流は、トランジスタM1のゲート電位となる接合ノードAと負電源端子T2との間の寄生容量を充電する。寄生容量を充電した結果、トランジスタM1,M2のゲート・ソース電位差が閾値電圧を超えると、トランジスタM1,M2がオフ状態からオン状態に変化する。
【0029】
トランジスタM1,M2がオンすると、トランジスタM1のドレイン電流IM1及びトランジスタM2のドレイン電流IM2が接合ノードCに流れ込み、抵抗器R2の電圧降下により接合ノードCの電位が上昇し、トランジスタM5はオフして励起電流の引き抜きが終了する。この時点でトランジスタM3,M4とトランジスタM1,M2には十分な電流が流れており、定電流発生部2は定常状態へと移行する。
【0030】
また、
図5に示されているような従来の定電流回路100の構成例においては、定電流発生部102が定常状態に移行した後でも、トランジスタM11のドレイン電流が定常電流I
M11として流れ続け、その電流は式1より電源電圧などの影響による変動量も大きい。しかしながら、第1実施形態においては、定電流発生部2が定常状態に移行した後は、トランジスタM5がオフするため、定電流回路1の消費電流を低減させることができる。
【0031】
つまり、この第1実施形態における定電流回路1は、定電流発生部2が定常状態に移行した後は、起動回路部3の電流が抑制される。
【0032】
したがって、定電流回路1全体の消費電流を低減することが可能となるという効果が得られるものとなっている。
【0033】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の定電流回路1Bについて
図2を参照して説明する。なお、
図2において、
図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0034】
同図に示すように、定電流回路1Bは、第1実施形態と同様に、定電流発生部2と、起動回路部3Bとを備えている。定電流発生部2は、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0035】
第1実施形態の起動回路部3と第2実施形態の起動回路部3Bとで異なる点は、電圧クランプ素子であるトランジスタMcpの有無である。起動回路部3Bでは、抵抗器R2にダイオード接続されたトランジスタMcpが並列接続されている。トランジスタMcpは、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0036】
上述した構成の定電流回路1Bの動作は、後述する点を除けば、基本的には、第1実施形態と同様である。すなわち、抵抗器R2の電圧降下がトランジスタMcpの閾値電圧で制限される。
【0037】
定電流回路1Bの最低動作電圧(VDD-VSSの最低値)は、抵抗器R1による電圧降下+抵抗器R2による電圧降下+トランジスタM2のソース・ドレイン間電圧+トランジスタM3の閾値電圧以上である必要がある。つまり、抵抗器R2の電圧降下がトランジスタMcpの閾値電圧を越える場合、第2実施形態における定電流回路1Bの最低動作電圧は、第1実施形態の定電流回路1に比べ改善される。
【0038】
したがって、定電流回路1Bの最低動作電圧が改善されると共に、定電流回路1B全体の消費電流を低減することが可能となるという効果が得られるものとなっている。
【0039】
なお、上述した第2実施形態では、電圧クランプ素子として、ダイオード接続されたトランジスタMcpを用いていたが、これに限ったものではない。電圧クランプ素子は、例えばpn接合ダイオードやショットキーバリアダイオードなど電圧をクランプできる周知の素子を用いてもよい。
【0040】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の定電流回路1Cについて
図3を参照して説明する。なお、
図3において、
図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0041】
同図に示すように、定電流回路1Cは、第1実施形態と同様に、定電流発生部2と、起動回路部3Cとを備えている。定電流発生部2は、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0042】
第1実施形態の起動回路部3と第2実施形態の起動回路部3Cとで異なる点は、抵抗器R3をさらに有している点である。
【0043】
起動回路部3では、トランジスタM5のゲート・ソース間に抵抗器R2が接続されていたが、起動回路部3Cでは、直列接続された抵抗器R2C及び抵抗器R3が接続されている。また、抵抗器R2Cと抵抗器R3の接続点となる接合ノードCにトランジスタM1と抵抗器R1の接続点が接続されている。
【0044】
起動回路部3Cは、ディプリーション型のトランジスタM5C(=第5のトランジスタ)と、抵抗器R2C(=抵抗器)及び抵抗器R3(=第2の抵抗器)とを有している。トランジスタM5Cは、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0045】
トランジスタM5Cと抵抗器R3は、トランジスタM3と直列接続され、トランジスタM2及び抵抗器R1と並列接続される。また、トランジスタM5Cは、ゲートが負電源端子T2に接続され、ソースが抵抗器R3に接続される。抵抗器R2Cは、一端が抵抗器R3に接続され、他端が負電源端子T2に接続される。抵抗器R3は、トランジスタM5Cのソースと接合ノードCとの間に接続される。なお、第1実施形態の抵抗器R2の抵抗値は、第3実施形態の抵抗器R2C,抵抗器R3の抵抗値の和と等しくなるように設定されている。
【0046】
上述した構成の定電流回路1Cの動作は、後述する点を除けば、基本的には、第1実施形態と同様である。すなわち、接合ノードCと負電源端子T2との電位差は、第1実施形態では抵抗器R2の電圧降下となるが、第3実施形態では抵抗器R2よりも小さい抵抗器R2Cの電圧降下となるため、小さくなる。
【0047】
つまり、第1実施形態における定電流発生部2の最低動作電圧は、抵抗器R1による電圧降下+抵抗器R2(=抵抗器R2C+抵抗器R3)による電圧降下+トランジスタM2のソース・ドレイン間電圧+トランジスタM3の閾値電圧以上である必要がある。これに対して、第3実施形態における定電流発生部2の最低動作電圧は、抵抗器R1による電圧降下+抵抗器R2Cによる電圧降下+トランジスタM2のソース・ドレイン間電圧+トランジスタM3の閾値電圧以上であればよい。このため、第3実施形態における定電流発生部2の最低動作電圧は、第1実施形態に比べ改善される。
【0048】
したがって、定電流回路1Cの最低動作電圧が改善されると共に、定電流回路1C全体の消費電流を低減することが可能となるという効果が得られるものとなっている。
【0049】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の定電流回路1Dについて
図4を参照して説明する。なお、
図4において、
図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
同図に示すように、定電流回路1Dは、第1実施形態と同様に、定電流発生部2と、起動回路部3Dとを備えている。定電流発生部2は、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0051】
第1実施形態と第4実施形態とで異なる点は、トランジスタM5Dのドレインの接続先が異なる点と、トランジスタM6,M7を設けた点である。
【0052】
起動回路部3Dは、電源投入時及び定電流発生部2の動作が停止した場合に、トランジスタM1に励起電流を流すことで、トランジスタM2,M3,M4をオンさせて、定電流発生部2を起動する。起動回路部3Dは、抵抗器R2と、ディプリーション型のトランジスタM5D(=第5のトランジスタ)と、トランジスタM6(=第6のトランジスタ),トランジスタM7(=第7のトランジスタ)とで構成されている。トランジスタM5Dは、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM6,M7は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。
【0053】
トランジスタM6は、正電源端子T1とトランジスタM5Dとの間に接続される。また、トランジスタM6は、ゲートがトランジスタM3のゲート及びドレインに接続される。すなわち、トランジスタM6は、トランジスタM3にカレントミラー接続され、トランジスタM3に流れる電流を折り返す。
【0054】
トランジスタM7は、トランジスタM1に直列接続され、トランジスタM4に並列接続される。トランジスタM7は、ゲートがトランジスタM5DとトランジスタM6との接続点に接続され、ソースが正電源端子T1に接続され、ドレインがトランジスタM1のゲート及びドレインに接続されている。
【0055】
次に、上述した構成の定電流回路1Dの動作について説明する。最初に、電源投入後、トランジスタM1のゲート・ソース電位差がトランジスタM1,M2の閾値電圧より低い場合の動作について説明する。この場合、トランジスタM1,M2はオフ状態であり、トランジスタM5Dと抵抗器R2との接続点である接合ノードCには電流が流れ込まないため、抵抗器R2での電圧降下は小さくトランジスタM5Dと抵抗器R2で構成された定電流源はオン状態となる。
【0056】
トランジスタM5Dと抵抗器R2で構成された定電流源がオンすると、トランジスタM7のゲート電位が低下しトランジスタM7がオンする。トランジスタM7がオンすると、トランジスタM1に励起電流を流し込む。
【0057】
トランジスタM1,M2は、カレントミラー接続されているため、上記励起電流がトランジスタM2のドレイン電流にコピーされる。このトランジスタM2による励起電流は、トランジスタM3のゲート及びドレイン電位となる接合ノードBと正電源端子T1との間の寄生容量を充電する。寄生容量を充電した結果、トランジスタM3,M4のゲート・ソース電位差が閾値電圧を超えると、トランジスタM3,M4がオフ状態からオン状態に変化する。
【0058】
トランジスタM3,M4がオンすると、トランジスタM1のドレイン電流IM1及びトランジスタM2のドレイン電流IM2が接合ノードCに流れ込み、抵抗器R2の電圧降下により接合ノードCの電位が上昇し、トランジスタM5Dはオフ状態となる。また、トランジスタM3にカレントミラー接続されるトランジスタM6がオンするため、トランジスタM7のゲート電位が上昇しトランジスタM7がオフする。トランジスタM7がオフすると、トランジスタM1への励起電流の供給が終了する。この時点でトランジスタM1,M2とトランジスタM3,M4には十分な電流が流れており、定電流発生部2は定常状態へと移行する。
【0059】
つまり、この第4実施形態における定電流回路1Dは、定電流発生部2が定常状態に移行した後に、起動回路部3Dに流れる電流が抑制される。
【0060】
したがって、定電流回路1D全体の消費電流を低減することが可能となるという効果が得られるものとなっている。
【0061】
なお、トランジスタM6の閾値電圧の絶対値が、定電流発生部2を構成するトランジスタM3,M4の閾値電圧よりも低くすることで、トランジスタM7がオン状態からオフ状態に変化する時間が短縮され、定電流発生部2が定常状態へ移行するまでの時間が改善される。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0063】
例えば、上述した第1~第4実施形態では、トランジスタが電界効果トランジスタから構成されていたが、これに限ったものではない。トランジスタの少なくとも1つ以上をバイポーラトランジスタに置き換えてもよい。この場合、トランジスタのゲートをベース、ソースをエミッタ、ドレインをコレクタに読み替えて説明することができる。
【0064】
また、上述した第1~第4実施形態において、正電源端子T1と負電源端子T2とを入れ替えて、トランジスタM1~M5,M5C,M5D,Mcp,M6,M7の極性を反転させるようにしてもよい。この場合、負電源電圧VSSが第1の電源電圧、負電源端子T2が第1の電源端子、正電源電圧VDDが第2の電源電圧、正電源端子T1が第2の電源端子に相当する。
【符号の説明】
【0065】
1,1B~1D 定電流回路
2 定電流発生部
3,3B~3D 起動回路部
C 接合ノード(第1の接合ノード)
IREF 定電流
M1 トランジスタ(第1のトランジスタ)
M2 トランジスタ(第2のトランジスタ)
M3 トランジスタ(第3のトランジスタ)
M4 トランジスタ(第4のトランジスタ)
M5,M5C,M5D トランジスタ(第5のトランジスタ)
M6 トランジスタ(第6のトランジスタ)
M7 トランジスタ(第7のトランジスタ)
Mcp トランジスタ(電圧クランプ素子)
R2,R2C 抵抗器(第1の抵抗器)
R3 抵抗器(第2の抵抗器)
T1 正電源端子(第1の電源端子)
T2 負電源端子(第2の電源端子)
VDD 正電源電圧(第1の電源電圧)
VSS 負電源電圧(第1の電源端子)