(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145970
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸収量測定用器具、及び、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058607
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮薗 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 笑海歌
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
(57)【要約】
【課題】コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を容易に取得することができる二酸化炭素吸収量測定用器具、及び、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る二酸化炭素吸収量測定用器具は、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を測定するために用いられ、セメント組成物を収容する内部空間を形成するように筒状に形成された側部と、該側部の軸線方向の一端側を閉塞するように形成された底部と、を備え、前記側部及び前記底部が二酸化炭素を透過しない材料から構成され、かつ、前記側部の軸線方向の他端側の少なくとも一部が開放される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を測定するために用いられ、
セメント組成物を収容する内部空間を形成するように筒状に形成された側部と、
該側部の軸線方向の一端側を閉塞するように形成された底部と、を備え、
前記側部及び前記底部が二酸化炭素を透過しない材料から構成され、かつ、前記側部の軸線方向の他端側の少なくとも一部が開放される、二酸化炭素吸収量測定用器具。
【請求項2】
さらに、前記軸線方向に沿って、該軸線方向の他端側に延びる摘み部を備える、請求項1に記載の二酸化炭素吸収量測定用器具。
【請求項3】
前記側部は、引き裂き可能に形成されている、請求項1又は2に記載の二酸化炭素吸収量測定用器具。
【請求項4】
前記コンクリート構造物に形成されたセパ穴に挿入して用いられ、
前記底部には、前記セパ穴の奥面から突出するセパレータの端部に対応する位置に、前記他端側に向かって延びる孔を形成する孔部が設けられている、請求項1又は2に記載の二酸化炭素吸収量測定用器具。
【請求項5】
セメント組成物の硬化体を収容した請求項1又は2に記載の二酸化炭素吸収量測定用器具における前記側部の少なくとも一部の領域を除去することによりセメント組成物の硬化体を露出させる側部除去工程と、
前記側部除去工程で露出させた領域に検査液を塗布する検査液塗布工程と、
前記検査液塗布工程で検査液を塗布した領域において、炭酸化した箇所の中性化深さを測定する中性化深さ測定工程と、
前記中性化深さに基づいて前記コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を得る二酸化炭素吸収量取得工程と、
を含む、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸収量測定用器具、及び、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の劣化現象の一つとして、コンクリート構造物が大気中の二酸化炭素を吸収し、該コンクリート構造物のアルカリ性が低下する炭酸化(中性化)という現象が知られている。この炭酸化は、時間の経過とともに、コンクリート構造物の表面から内部に向かって進行する。そして、例えば、鉄筋コンクリート構造物の場合、鉄筋周辺のコンクリートが炭酸化することにより、該鉄筋が腐食し易くなる。その結果、コンクリート構造物の耐荷力、長期耐久性等が低下する虞がある。
【0003】
従来、この炭酸化現象に対しては、炭酸化の進行を遅らせるために打設するコンクリートを緻密にする、コンクリートのかぶり厚さを十分に確保する、樹脂等で被覆を施した鉄筋を用いる等の対策が取られている。また、コンクリート構造物がどの程度炭酸化しているかを把握するため、例えば、√T則と呼ばれる法則により炭酸化の進行を予測する方法、既存建物のコンクリートから試料を採取して中性化深さを測定する方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、コンクリート構造物の炭酸化は劣化現象として捉えられていて、コンクリート構造物が二酸化炭素を吸収及び固定する点には着目されていなかった。ところが、近年になり、カーボンニュートラル機運の上昇により、コンクリート構造物における二酸化炭素を吸収及び固定する性能に関心が高まっている。しかしながら、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量を定量化する試験方法は未だ確立されていない。
【0006】
コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量を測定する方法として、例えば、既存建物のコンクリートから試料を採取し、採取した試料を熱分析する(試料の温度を調節されたプログラムによって変化させながら試料の質量と温度を測定する)方法が考えられる。該方法において、既存建物のコンクリートから試料を採取する際には、例えば、コアマシンを構造物に設置してコンクリートコア供試体を採取する、コンクリートドリルを用いて構造物からドリル粉を採取する等の手段を実施するため、鉄筋を損傷させる又は破断させる虞がある。また、コンクリートコア採取後のコア穴は、コンクリート構造物の美観性を低下させるため補修の必要がある。さらに、既存建物のコンクリートから試料を採取する際には、コンクリート構造物から鉄筋を避けて試料を採取する熟練した技術と、コンクリートコアマシン、コンクリートドリル等の専用の設備が必要となるため、二酸化炭素の吸収量を把握する作業に技術力、多大な労力、コスト等を要する。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を容易に取得することができる二酸化炭素吸収量測定用器具、及び、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る二酸化炭素吸収量測定用器具は、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を測定するために用いられ、セメント組成物を収容する内部空間を形成するように筒状に形成された側部と、該側部の軸線方向の一端側を閉塞するように形成された底部と、を備え、前記側部及び前記底部が二酸化炭素を透過しない材料から構成され、かつ、前記側部の軸線方向の他端側の少なくとも一部が開放される。
【0009】
前記二酸化炭素吸収量測定用器具は、側部及び底部が二酸化炭素を透過しない材料から構成され、かつ、該側部の軸線方向の他端側の少なくとも一部が開放される。斯かる構成により、内部空間に収容されたセメント組成物の硬化体は、側部の軸線方向の他端側の表面のみが二酸化炭素に曝されるため、時間の経過とともに、側部の軸線方向の他端側の表面から内部に向かって炭酸化が進行する。そして、炭酸化した箇所の中性化深さ(前記他端側の表面からの深さ)を測定することにより、例えば、後述する計算式、二酸化炭素の吸収量及び中性化深さを互いに関連付けて登録したデータベース等を用いて、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量を取得することができる。すなわち、前記二酸化炭素吸収量測定用器具は、コンクリートコアマシン、コンクリートドリル等を用いて既存建物のコンクリートから試料を採取する必要がなく、また、コンクリートコア採取後のコア穴を補修する必要もないため、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量を容易に取得することができる。
【0010】
本発明に係る二酸化炭素吸収量測定用器具は、さらに、前記軸線方向に沿って、該軸線方向の他端側に延びる摘み部を備えていてもよい。
【0011】
前記二酸化炭素吸収量測定用器具は、斯かる構成により、前記二酸化炭素吸収量測定用器具の設置箇所への着脱を容易に行うことができる。
【0012】
本発明に係る二酸化炭素吸収量測定用器具は、前記側部が、引き裂き可能に形成されていてもよい。
【0013】
前記二酸化炭素吸収量測定用器具は、斯かる構成により、内部空間に収容されたセメント組成物の硬化体における側面部分を容易に露出させることができる。また、斯かる構成により、前記硬化体における側面部分の一部のみが露出するように引き裂くことで、二酸化炭素吸収量を取得した後、再度その二酸化炭素吸収量測定用器具を用いて、繰り返し二酸化炭素吸収量を取得することができる。
【0014】
本発明に係る二酸化炭素吸収量測定用器具は、前記コンクリート構造物に形成されたセパ穴に挿入して用いられ、前記底部には、前記セパ穴の奥面から突出するセパレータの端部に対応する位置に、前記他端側に向かって延びる孔を形成する孔部が設けられていてもよい。
【0015】
前記二酸化炭素吸収量測定用器具をコンクリート構造物に形成されたセパ穴に挿入して用いることにより、コンクリート構造物に前記二酸化炭素吸収量測定用器具を挿入するための穴を形成する作業を省くことができる。よって、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量をより容易に取得することができる。また、前記孔部を備えることにより、前記底部とセパレータの端部が干渉しないよう、セパ穴に前記二酸化炭素吸収量測定用器具をはめ込むことができる。
【0016】
本発明に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法は、セメント組成物の硬化体を収容した上述の二酸化炭素吸収量測定用器具における前記側部の少なくとも一部の領域を除去することによりセメント組成物の硬化体を露出させる側部除去工程と、前記側部除去工程で露出させた領域に検査液を塗布する検査液塗布工程と、前記検査液塗布工程で検査液を塗布した領域において、炭酸化した箇所の中性化深さを測定する中性化深さ測定工程と、前記中性化深さに基づいて前記コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を得る二酸化炭素吸収量取得工程と、を含む。
【0017】
前記コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法では、上述の二酸化炭素吸収量測定用器具を用いることにより、コンクリートコアマシン、コンクリートドリル等を用いて既存建物のコンクリートから試料を採取する必要がなく、また、コンクリートコア採取後のコア穴を補修する必要もない。また、前記コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法では、炭酸化した箇所の中性化深さを測定することにより、例えば、後述する計算式、二酸化炭素の吸収量及び中性化深さを互いに関連付けて登録したデータベース等を用いて、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量を取得することができる。すなわち、前記コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法は、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量を容易に取得することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を容易に取得することができる二酸化炭素吸収量測定用器具、及び、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の使用状態を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の使用状態における断面を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第二実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の斜視図である。
【
図5】
図5(a)~(d)は、本発明の第三実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の斜視図である。
【
図6】
図6(a)~(d)は、本発明の第三実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の底面図である。
【
図7】
図7(a)~(c)は、本発明の第四実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の斜視図である。
【
図8】
図8(a)~(c)は、本発明の第四実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1、及び、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0021】
[第一実施形態]
<二酸化炭素吸収量測定用器具>
図1は、本発明の第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の斜視図である。第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1は、セメント組成物を収容する内部空間Rを形成するように筒状に形成された側部2と、側部2の軸線CL方向の一端側を閉塞するように形成された底部3と、を備え、側部2の軸線CL方向の他端側が開放される。また、第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1は、後述する摘み部4と、を備える。
【0022】
側部2は、軸線CL方向から見て円形状であり、軸線CL方向の他端側から一端側に縮径するように筒状に形成される。側部2は、軸線CL方向の一端側に底側縁21を有し、該底側縁21が底部3と接している。また、側部2は、軸線CL方向の他端側に頂側縁22を有する。
【0023】
側部2は、セメント組成物の硬化体の側面部分を容易に露出させる観点から、引き裂き可能に形成されていることが好ましい。具体的には、側部2における頂側縁22から底側縁21に向かって引き裂き可能に形成されていることが好ましい。
【0024】
底部3は、軸線CL方向から見て円形状であり、軸線CL方向から見た側部2の底側縁21の形状と同一である。なお、本明細書において同一とは、公差を考慮した同一を意味する。
【0025】
底部3には、
図1に示すように、軸線CL方向に沿って他端側に向かって延びる孔を形成するように孔部31が設けられている。より詳しくは、孔部31は、軸線CL方向から見て、底部3の中央部に設けられている。また、孔部31は、軸線CL方向に直交する方向から見て、底部3から、側部2の頂側縁22と重なる位置まで延びている。また、孔部31は、後述するように、セパ穴6の奥面から突出するセパレータ5の端部51に対応する位置に設けられている。すなわち、底部3には、セパ穴6の奥面から突出するセパレータの端部51に対応する位置に、軸線CL方向の他端側に向かって延びる孔を形成する孔部31が設けられている。
【0026】
孔部31は、
図1に示すように、筒状に形成され、軸線CL方向から見て円形状である。孔部31の形状及び内径は、孔部31をセパレータ5の端部51に固定する観点から、セパレータ5の端部51の形状及び直径に対応させることが好ましい。また、孔部31の内側面には、孔部31をセパレータ5の端部51に固定する観点から、ネジ切り加工がされている。
【0027】
側部2及び底部3は、二酸化炭素を透過しない材料から構成される。前記二酸化炭素を透過しない材料としては、例えば、アルミ、スチール、ブリキ等の各種金属又は合金材料、ポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、多硫化ゴム、エピクロロヒドリンゴム、高ニトリルゴム、フッ素ゴム、ガラス等が挙げられる。特に、側部2は、該側部2を引き裂き可能にする観点から、ブリキ等の合金材料から構成されることが好ましい。
【0028】
また、側部2及び底部3は、二酸化炭素吸収量測定用器具1とセメント組成物の付着性を確保する観点から、二酸化炭素吸収量測定用器具1が変形し難い材料から構成されることが好ましい。二酸化炭素吸収量測定用器具1が変形し難い材料としては、例えば、アルミ、スチール、ブリキ等の各種金属又は合金材料、ポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、多硫化ゴム、エピクロロヒドリンゴム、高ニトリルゴム、フッ素ゴム、ガラス等が挙げられる。側部2及び底部3は、同一の材料から構成されていてもよいし、異なる材料から構成されていてもよい。
【0029】
すなわち、側部2は、二酸化炭素を透過せず、変形し難く、かつ、側部2を引き裂き可能にする材料として、ブリキ等の合金材料から構成されることが好ましい。また、底部3は、二酸化炭素を透過せず、かつ、変形し難い材料として、ブリキ等の合金材料から構成されることが好ましい。
【0030】
摘み部4は、
図1に示すように、軸線CL方向に沿って、該軸線CL方向の他端側に延びる。具体的には、摘み部4は、孔部31における、軸線CL方向の他端側の孔に摘み部4の一方の端部を差し込むことにより嵌合される。摘み部4は、軸線CL方向に直交する方向から見て、側部2の頂側縁22と重なる位置よりも外方に延びる。摘み部4は、円柱状に形成される。摘み部4の直径は、摘み部4を孔部31に固定する観点から、孔部31の内径に対応させることが好ましい。また、摘み部4の側面は、摘み部4を孔部31に固定する観点から、ネジ切り加工がされている。
【0031】
第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1は、側部2と、底部3と、を備え、側部2及び底部3が二酸化炭素を透過しない材料から構成され、かつ、側部2の軸線CL方向の他端側の少なくとも一部が開放される。これにより、内部空間Rに収容されたセメント組成物の硬化体は、側部2の軸線CL方向の他端側の表面のみが二酸化炭素に曝されるため、時間の経過とともに、側部2の軸線CL方向の他端側の表面から内部に向かって炭酸化が進行する。そして、炭酸化した箇所の中性化深さ(前記他端側の表面からの深さ)を測定することにより、例えば、後述する計算式、二酸化炭素の吸収量及び中性化深さを互いに関連付けて登録したデータベース等を用いて、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量を取得することができる。すなわち、前記二酸化炭素吸収量測定用器具1は、コンクリートコアマシン、コンクリートドリル等を用いて既存建物のコンクリートから試料を採取する必要がなく、また、コンクリートコア採取後のコア穴を補修する必要もないため、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量を容易に取得することができる。
【0032】
第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1は、軸線CL方向に沿って、該軸線CL方向の他端側に延びる摘み部を備えていることにより、二酸化炭素吸収量測定用器具1の設置箇所への着脱を容易に行うことができる。
【0033】
第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1は、側部2が、引き裂き可能に形成されていることにより、内部空間Rに収容されたセメント組成物の硬化体における側面部分を容易に露出させることができる。また、前記硬化体における側面部分の一部のみが露出するように引き裂くことで、二酸化炭素吸収量を取得した後、再度その二酸化炭素吸収量測定用器具1を用いて、繰り返し二酸化炭素吸収量を取得することができる。
【0034】
第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1は、コンクリート構造物に形成されたセパ穴6に挿入して用いられることにより、コンクリート構造物に二酸化炭素吸収量測定用器具1を挿入するための穴を形成する作業を省くことができる。よって、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量をより容易に取得することができる。また、孔部31を備えることにより、底部3とセパレータ5の端部51が干渉しないため、セパ穴6に二酸化炭素吸収量測定用器具1をはめ込むことができる。
【0035】
<コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法>
以下、第一実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法について説明する。
図2は、本発明の第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の使用状態を示す図である。また、
図3は、本発明の第一実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の使用状態における断面を示す図である。
【0036】
第一実施形態において、二酸化炭素吸収量測定用器具1は、コンクリート構造物に形成されたセパ穴6に挿入して用いられる。
図2及び
図3に示すように、二酸化炭素吸収量測定用器具1がセパ穴6に挿入される際には、セパレータ5の端部51が孔部31に挿入される。これにより、底部3とセパレータ5の端部51が干渉しないよう、セパ穴6に二酸化炭素吸収量測定用器具1をはめ込むことができる。
【0037】
二酸化炭素吸収量測定用器具1は、該二酸化炭素吸収量測定用器具1にセメント組成物が注入されて硬化した後、コンクリート構造物に形成されたセパ穴6に挿入される。二酸化炭素吸収量測定用器具1に注入されるセメント組成物としては、二酸化炭素吸収量の測定対象であるコンクリート構造物のコンクリート、又は、該コンクリート構造物のコンクリートと粗骨材以外の成分が同一であるモルタルが用いられる。
【0038】
第一実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法は、セメント組成物の硬化体を収容した上述の二酸化炭素吸収量測定用器具1における側部2の少なくとも一部の領域を除去することによりセメント組成物の硬化体を露出させる側部除去工程と、前記側部除去工程で露出させた領域に検査液を塗布する検査液塗布工程と、前記検査液塗布工程で検査液を塗布した領域において、炭酸化した箇所の中性化深さを測定する中性化深さ測定工程と、前記中性化深さに基づいて前記コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を得る二酸化炭素吸収量取得工程と、を含む。
【0039】
前記側部除去工程は、セメント組成物の硬化体を収容した二酸化炭素吸収量測定用器具1における側部2の少なくとも一部の領域を除去することによりセメント組成物の硬化体を露出させる。具体的には、二酸化炭素吸収量測定用器具1がセパ穴6に挿入されてから所定期間経過後に、二酸化炭素吸収量測定用器具1をセパ穴6から取り出して、除去される箇所が長方形状(長手方向の長さが側部2の底側縁21から頂側縁22までの全長となり、短手方向の長さが側部2の円周方向の長さとなる)となるように、側部2の一部を除去することによりセメント組成物の硬化体を露出させる。除去方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、側部2の少なくとも一部の領域を切断することにより除去することができる。
【0040】
セメント組成物の硬化体を収容した二酸化炭素吸収量測定用器具1における側部2の一部の領域を除去する場合には、二酸化炭素の吸収量を測定した後、再度その二酸化炭素吸収量測定用器具1を用いて二酸化炭素の吸収量を測定することができる。より詳細には、後述する検査液塗布工程及び中性化深さ測定工程が完了した後に、例えば、セメント組成物の硬化体を収容した二酸化炭素吸収量測定用器具1における側部2の一部を除去した領域を二酸化炭素が透過しないテープ等で覆い、硬化体の側面が二酸化炭素に曝されないようにする。そして、その二酸化炭素吸収量測定用器具1をコンクリート構造物に形成されたセパ穴6に再び挿入し、所定期間経過後にその二酸化炭素吸収量測定用器具1をセパ穴6から取り出して、最初に除去した領域以外の領域を除去する。その除去した領域に対して、後述する検査液塗布工程、中性化深さ測定工程、及び、二酸化炭素吸収量取得工程を再び行うことにより、二酸化炭素の吸収量を測定することができる。前記二酸化炭素が透過しないテープとしては、例えば、アルミテープ、ブチルゴムテープ、シリコーンゴムテープ等が挙げられる。
【0041】
前記検査液塗布工程は、前記側部除去工程でセメント組成物の硬化体を露出させた領域に検査液を塗布する。検査液としては、例えば、フェノールフタレイン溶液等が挙げられる。前記検査液の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、検査液を筆等で塗布してもよいし、検査液を吹きかけてもよい。
【0042】
前記中性化深さ測定工程は、炭酸化した箇所の中性化深さを測定する。検査液としてフェノールフタレイン溶液を用いた場合には、炭酸化していない箇所は着色し、炭酸化した箇所は着色しない。そのため、着色しなかった箇所における軸線方向の長さを測定することにより、中性化深さを測定することができる。
【0043】
前記二酸化炭素吸収量取得工程は、測定した中性化深さに基づいてコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を得る。例えば、過去に測定した二酸化炭素の吸収量及び中性化深さを互いに関連付けて登録したデータベースを用いて、測定した中性化深さと登録された中性化深さを比較する。そして、測定した中性化深さに一致する又は最も近い値を示す登録された中性化深さに対応する二酸化炭素の吸収量を選択することにより、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を取得することができる。
【0044】
前記データベースに登録される二酸化炭素の吸収量及び中性化深さは、実測値ではなく、計算式等によって得られる推測値であってもよい。また、前記データベースには、二酸化炭素の吸収量及び中性化深さの実測値と推測値の両方が登録されていてもよい。前記データベースには、より精度の高い二酸化炭素吸収量を取得する観点から、二酸化炭素の吸収量及び中性化深さ以外に、セメントの種類、水セメント比、及び、コンクリート構造物の築年数をさらに関連付けて登録してもよい。
【0045】
二酸化炭素吸収量は、例えば、下記(1)式に基づいて算出することにより取得することもできる。
二酸化炭素吸収量(kg/m3)=
1.56×L+0.133×W/C+0.741×CaO-36.1 (1)
(L:中性化深さ(mm),W/C:使用したコンクリート又はモルタルの水セメント 比(%),CaO:使用したセメントの酸化カルシウム含有量(%))
【0046】
第一実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法では、上述の二酸化炭素吸収量測定用器具1を用いることにより、コンクリートコアマシン、コンクリートドリル等を用いて既存建物のコンクリートから試料を採取する必要がなく、また、コンクリートコア採取後のコア穴を補修する必要もない。また、前記コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法では、炭酸化した箇所の中性化深さを測定することにより、例えば、前述した計算式、二酸化炭素の吸収量及び中性化深さを互いに関連付けて登録したデータベース等を用いて、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量を取得することができる。すなわち、前記コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法は、コンクリート構造物の二酸化炭素の吸収量を容易に取得することができる。
【0047】
[第二実施形態]
<二酸化炭素吸収量測定用器具>
次に、本発明の第二実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1について説明する。以下では、第一実施形態と異なる点について説明する。
図4は、本発明の第二実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の斜視図である。
【0048】
第二実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1は、摘み部4を備えない。これにより、二酸化炭素吸収量測定用器具1を、コンクリート構造物に形成されたセパ穴6に挿入して用いる場合には、摘み部4に接触することによる怪我等を防止することができる。セパ穴6に対して、第二実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1を取り付け、取り外しする際は、ネジ切り加工された部材を孔部31に挿入して、上述の摘み部4として機能させてもよい。
【0049】
<コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法>
第二実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法は、第一実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法と同一の方法である。
【0050】
[第三実施形態]
<二酸化炭素吸収量測定用器具>
次に、本発明の第三実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1について説明する。以下では、第一実施形態及び第二実施形態と異なる点について説明する。
図5(a)~(d)は、本発明の第三実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の斜視図である。また、
図6(a)~(d)は、本発明の第三実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の底面図である。
【0051】
第三実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1は、側部除去工程において側部2の切断を容易にする観点から、側部2を貫通しない一又は複数の一対の切り込み23を備える。一対の切り込み23は、側部2の底側縁21から頂側縁22まで形成される。一対の切り込み23の切り込み深さは、側部2の厚さの半分以上であることが好ましく、例えば、0.05mm~1.0mmとすることができる。なお、一対の切り込み23は、側部2の外側面から所定の深さまで切り込まれて形成されることから、側部2の内側面には現われない。
図5(a)~(d)、並びに、後述する
図7(a)~(c)及び
図8(a)~(c)においては、一対の切り込み23の位置を説明するために、側部2の内側面に一対の切り込み23を記載している。
【0052】
以下、側部2に複数の一対の切り込み23が設けられる場合について説明する。
図5(b)~(d)に示すように、複数の一対の切り込み23は、基点となる一対の切り込み23a及びその他の一対の切り込み23b(23c,23d)から構成される。一対の切り込み23が形成される位置は、基点となる一対の切り込み23aに基づいて決定される。例えば、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、側部2に2つの一対の切り込み23が設けられる場合には、一対の切り込み23aを基点に、軸線CLを中心として180度の位置にその他の一対の切り込み23bが設けられる(すなわち、2つの一対の切り込み23は、軸線CLを中心とした周方向において均等に2分割した位置に設けられる)。また、
図5(c)及び
図6(c)に示すように、側部2に3つの一対の切り込み23が設けられる場合には、一対の切り込み23aを基点に、軸線CLを中心として120度の位置に、その他の一対の切り込み23bが設けられ、さらに120度の位置に、その他の一対の切り込み23cが設けられる(すなわち、3つの一対の切り込み23は、軸線CLを中心とした周方向において均等に3分割した位置に設けられる)。さらに、
図5(d)及び
図6(d)に示すように、側部2に4つの一対の切り込み23が設けられる場合には、一対の切り込み23aを基点に、軸線CLを中心として90度の位置にその他の一対の切り込み23bが設けられ、さらに90度の位置にその他の一対の切り込み23cが設けられ、さらに90度の位置にその他の一対の切り込み23dが設けられる(すなわち、4つの一対の切り込み23は、軸線CLを中心とした周方向において均等に4分割した位置に設けられる)。
【0053】
<コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法>
本発明の第三実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法について説明する。以下では、第一実施形態及び第二実施形態と異なる点について説明する。
【0054】
第三実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法は、前記側部除去工程において、一対の切り込み23に沿って側部2の一部の領域を除去する。これにより、側部2の切断を容易にすることができる。
【0055】
また、第三実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1が複数の一対の切り込み23を備えることにより、前記側部除去工程では、セメント組成物の硬化体を収容した二酸化炭素吸収量測定用器具1における一対の切り込み23に沿って側部2の一部の領域を除去して二酸化炭素の吸収量を測定した後、その除去した領域を二酸化炭素が透過しないテープ等で覆うことで、再度その二酸化炭素吸収量測定用器具1を用いて二酸化炭素の吸収量を測定することができる。具体的には、セメント組成物の硬化体を収容した二酸化炭素吸収量測定用器具1におけるその他の一対の切り込み23に沿って側部2の一部の領域を除去して、二酸化炭素の吸収量を測定することができる。
【0056】
[第四実施形態]
<二酸化炭素吸収量測定用器具>
次に、本発明の第四実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1について説明する。以下では、第一実施形態~第三実施形態と異なる点について説明する。
図7(a)~(c)は、本発明の第四実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の斜視図である。また、
図8(a)~(c)は、本発明の第四実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の上面図である。なお、第四実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1を軸線CL方向の一端側から見た形態は、第三実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1を軸線CL方向の一端側から見た形態と同一であることから、第四実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1の底面図を省略する。
【0057】
第四実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1は、二酸化炭素吸収量測定用器具1の内側に内部空間Rを分割する複数の仕切り32、及び、上述の一対の切り込み23を備える。仕切り32は、板状体であり、底部3から、軸線CL方向の他端側に向かって延びるように形成される。より詳しくは、仕切り32は、軸線CL方向に直交する方向から見て、底部3から、側部2の頂側縁22と重なる位置まで延びている。また、仕切り32は、孔部31の内部空間R側の面と側部2の内側面とを架け渡すように配置される。仕切り32は、このように配置されることにより、内部空間Rを分割する。仕切り32は、上述の二酸化炭素を透過しない材料から構成される。
【0058】
仕切り32は、基点となる仕切り32a及びその他の仕切り32b(32c、32d)から構成される。仕切り32が配置される位置は、基点となる仕切り32aに基づいて決定される。例えば、
図7(a)及び
図8(a)に示すように、2枚の仕切りを設けて、内部空間Rを2つに分割する場合には、仕切り32aを基点に、軸線CLを中心として180度の位置にその他の仕切り32bが設けられる(すなわち、2つの仕切り32は、軸線CLを中心とした周方向において均等に2分割した位置に設けられ、内部空間Rは均等に2分割される)。また、
図7(b)及び
図8(b)に示すように、3枚の仕切りを設けて、内部空間Rを3つに分割する場合には、仕切り32aを基点に、軸線CLを中心として120度の位置にその他の仕切り32bが設けられ、さらに120度の位置にその他の仕切り32cが設けられる(すなわち、3つの仕切り32は、軸線CLを中心とした周方向において均等に3分割した位置に設けられ、内部空間Rは均等に3分割される)。さらに、
図7(c)及び
図8(c)に示すように、4枚の仕切り32を設けて、内部空間Rを4つに分割する場合には、仕切り32aを基点に、軸線CLを中心として90度の位置にその他の仕切り32bが設けられ、さらに90度の位置にその他の仕切り32cが設けられ、さらに90度の位置にその他の仕切り32dが設けられる(すなわち、4つの仕切り32は、軸線CLを中心とした周方向において均等に4分割した位置に設けられ、内部空間Rは均等に4分割される)。
【0059】
このように、内部空間Rに仕切り32を設けて分割された領域を形成することにより、側部2の一部が除去されて硬化体の一部が露出しても、その部分に対応する分割された領域以外の領域については、硬化体の側面部分が二酸化炭素に曝されることはない。そのため、側部2の一部を除去した領域をテープ等で覆う作業を省くことができる。
【0060】
一対の切り込み23は、仕切り32によって分割された各領域に対応する側部2に1つずつ設けられる。すなわち、二酸化炭素吸収量測定用器具1において、一対の切り込み23が設けられる数と仕切り32が設けられる数は同一となる。具体的には、
図8(a)~(c)に示すように、側部2の頂側縁22において、隣り合う仕切り32がそれぞれ側部2と接合する箇所を両端とする円弧の略中央に、一対の切り込み23が形成される。すなわち、基点となる仕切り32aが側部2と接合する箇所と、その他の仕切り32bが側部2と接合する箇所と、を両端とする円弧の略中央に、基点となる一対の切り込み23aが形成される。
【0061】
第四実施形態に係る二酸化炭素吸収量測定用器具1では、仕切り32a及び一対の切り込み23aを基点として、その他の仕切り32b(32c、32d)及びその他の一対の切り込み23b(23c,23d)の組み合わせが繰り返されるように設けられる。
【0062】
<コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法>
本発明の第四実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法について説明する。以下では、第一実施形態~第三実施形態と異なる点について説明する。
【0063】
第四実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法は、二酸化炭素の吸収量を測定した後、再度その二酸化炭素吸収量測定用器具1を用いて二酸化炭素の吸収量を測定する場合、前記側部除去工程において、セメント組成物の硬化体を収容した二酸化炭素吸収量測定用器具1における側部2の一部を除去した領域を二酸化炭素が透過しないテープ等で覆い、硬化体の側面が二酸化炭素に曝されないようにする作業を行う必要がない。これにより、二酸化炭素吸収量測定方法の作業効率を向上させることができる。
【0064】
以上、本発明の二酸化炭素吸収量測定用器具及びコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法の一実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0065】
例えば、上記実施形態では、側部2が、軸線CL方向から見て円形状であり、軸線CL方向の他端側から一端側に縮径するように筒状に形成される場合について説明した。また、底部3を軸線CL方向から見た形状が、円形状である場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、側部2及び底部3の形状は、二酸化炭素吸収量測定用器具1を挿入する穴の形状及び大きさに応じて適宜変更することができる。
【0066】
また、上記実施形態においては、底部3に孔部31が設けられる場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、底部3に孔部31が設けられていなくてもよい。この場合、二酸化炭素吸収量測定用器具1の着脱を容易にする目的で、例えば、底部3に軸線CL方向の他端側に向かって延びる棒状部が設けられ、該棒状部が、軸線CL方向に直交する方向から見て、側部2の頂側縁22と重なる位置よりも外方に延びるように形成されていてもよい。これにより、前記棒状部において頂側縁22と重なる位置よりも外方に延びた部分を摘み部として機能させることができる。
【0067】
また、上記実施形態においては、孔部31が軸線CL方向に沿って他端側に向かって延びる孔を形成する場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、孔は有底であってもよい。この場合、第一実施形態の摘み部4は、例えば、孔部31の底に摘み部4の一端を接触させて固定してもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、孔部31の内側面にネジ切り加工がされている場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、孔部31の内側面にネジ切り加工がされていなくてもよい。
【0069】
また、上記第一実施形態においては、摘み部4の形状は円柱状である場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、孔部31における軸線CL方向の他端側の孔の形状に応じて適宜変更することができる。また、上記第一実施形態においては、摘み部4が孔部31における軸線CL方向の他端側の孔に摘み部4の一方の端部を差し込むことにより嵌合される場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、摘み部4は、孔部31における軸線CL方向の他端側の孔に差し込まれるのではなく、孔部31における軸線CL方向の他端側の端部を覆うように孔部31に取り付けられる構成にしてもよい。具体的には、摘み部4の先端部にキャップ等を形成して、該キャップを孔部31における軸線CL方向の他端側の端部に被せるようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、孔部31が軸線CL方向に直交する方向から見て、底部3から、側部2の頂側縁22と重なる位置まで延びる場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、孔部31は、頂側縁22と重なる位置よりも外方に延びるように形成されていてもよいし、頂側縁22と重なる位置よりも内方(すなわち、頂側縁22に到達しない)に延びるように形成されていてもよい。孔部31が頂側縁22と重なる位置よりも外方に延びるように形成される場合には、頂側縁22と重なる位置よりも外方に延びた部分を摘み部として機能させることもできる。
【0071】
また、上記第二実施形態~第四実施形態における二酸化炭素吸収量測定用器具1において、例えば、電動ドライバを用いて二酸化炭素吸収量測定用器具1を着脱することができるように、例えば、孔部31の先端部に、駆動部が形成されたネジの頭部に相当するものを設ける等の加工を行ってもよい。
【0072】
また、上記第三実施形態及び上記第四実施形態においては、一対の切り込み23が1~4つ設けられる場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、一対の切り込み23が5つ以上設けられていてもよい。
【0073】
また、上記第四実施形態においては、仕切り32が2~4つ設けられる場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、仕切り32が5つ以上設けられていてもよい。
【0074】
また、上記第四実施形態においては、側部2の頂側縁22において、隣り合う仕切り32がそれぞれ側部2と接合する箇所を両端とする円弧の略中央に、一対の切り込み23が形成される場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、一対の切り込み23は、側部2の頂側縁22において、隣り合う仕切り32がそれぞれ側部2と接合する箇所を両端とする円弧のどの位置に形成されていてもよい。
【0075】
また、上記第四実施形態においては、2~4つの仕切り32a,32b(,32c,32d)が、軸線CLを中心とした周方向において内部空間Rを均等に2~4分割する場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、仕切り32a,32b(,32c,32d)が内部空間Rを均等に分割する位置に設けられていなくてもよい。例えば、
図7(b)又は(c)の二酸化炭素吸収量測定用器具1のように、内部空間Rを3分割又は4分割する場合には、仕切り32aを基点に、軸線CLを中心として120度又は90度の位置にその他の仕切り32bが設けられていれば、その他の仕切り32c又は32c,32dは、どのような角度の位置に設けられていてもよい。また、その他の仕切り32c又は32c,32dは、設けられていなくてもよい。
【0076】
また、上記第四実施形態においては、一対の切り込み23a,23b(,23c,23d)が、仕切り32a,32b(,32c,32d)によって分割された各領域に対応する側部2に1つずつ設けられる場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、例えば、
図7(a)~(c)の二酸化炭素吸収量測定用器具1においては、仕切り32a,32b(,32c,32d)によって分割された各領域に対応する側部2に、基点となる一対の切り込み23aが形成されていれば、上述のように、どのような角度の位置にもその他の仕切り32c又は32c,32dを設けることができ、そのような場合には、その他の仕切り32c又は32c,32dによって分割された各領域に対応する側部2に、その他の一対の切り込み23b(,23c,23d)が形成されていなくてもよいし、その他の一対の切り込み23b(23c,23d)が二対以上形成されていてもよい。
【0077】
また、上記第三実施形態及び第四実施形態においては、前記側部除去工程において、一対の切り込み23に沿って側部2の一部の領域を除去する場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、一対の切り込み23以外の側部2の一部の領域を除去してもよい。
【0078】
また、上記実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法は、セメント組成物の硬化体を収容した二酸化炭素吸収量測定用器具1を作製する工程、すなわち、二酸化炭素吸収量測定用器具1にセメント組成物を注入して硬化させる硬化体作製工程を備えていてもよい。この場合、硬化体作製工程において、二酸化炭素吸収量測定用器具1の内側面は、二酸化炭素吸収量測定用器具1とセメント組成物との付着性を確保する観点から、例えば、アルミテープを貼付する、ボンドを塗布する等の手段により、二酸化炭素吸収量測定用器具1の内側面に粘着力を付与してもよい。
【0079】
また、上記実施形態においては、二酸化炭素吸収量測定用器具1がコンクリート構造物に形成されたセパ穴6に挿入して用いられる場合について説明した。しかし、本発明は当該構成に限定されるものではなく、例えば、コンクリート構造物に二酸化炭素吸収量測定用器具1を挿入するための穴を形成してもよい。前記穴の形状及び大きさは、二酸化炭素吸収量測定用器具1が前記穴に挿入された状態を所定期間維持する観点から、二酸化炭素吸収量測定用器具1の形状に対応することが好ましい。
【0080】
また、二酸化炭素吸収量測定用器具1が、コンクリート構造物に形成されたセパ穴6又は前記穴に挿入して用いられる場合には、上記実施形態に係るコンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法は、コンクリート構造物に形成された穴に、セメント組成物の硬化体を収容した二酸化炭素吸収量測定用器具1を挿入する挿入工程を備えていてもよい。
【0081】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を測定するために用いられ、
セメント組成物を収容する内部空間を形成するように筒状に形成された側部と、
該側部の軸線方向の一端側を閉塞するように形成された底部と、を備え、
前記側部及び前記底部が二酸化炭素を透過しない材料から構成され、かつ、前記側部の軸線方向の他端側の少なくとも一部が開放される、二酸化炭素吸収量測定用器具。
[2]さらに、前記軸線方向に沿って、該軸線方向の他端側に延びる摘み部を備える、[1]に記載の二酸化炭素吸収量測定用器具。
[3]前記側部は、引き裂き可能に形成されている、[1]又は[2]に記載の二酸化炭素吸収量測定用器具。
[4]前記コンクリート構造物に形成されたセパ穴に挿入して用いられ、
前記底部には、前記セパ穴の奥面から突出するセパレータの端部に対応する位置に、前記他端側に向かって延びる孔を形成する孔部が設けられている、[1]~[3]のいずれか一つに記載の二酸化炭素吸収量測定用器具。
[5]セメント組成物の硬化体を収容した[1]~[4]のいずれか一つに記載の二酸化炭素吸収量測定用器具における前記側部の少なくとも一部の領域を除去することによりセメント組成物の硬化体を露出させる側部除去工程と、
前記側部除去工程で露出させた領域に検査液を塗布する検査液塗布工程と、
前記検査液塗布工程で検査液を塗布した領域において、炭酸化した箇所の中性化深さを測定する中性化深さ測定工程と、
前記中性化深さに基づいて前記コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量を得る二酸化炭素吸収量取得工程と、
を含む、コンクリート構造物の二酸化炭素吸収量測定方法。
【符号の説明】
【0082】
1 二酸化炭素吸収量測定用器具
2 側部
3 底部
31 孔部
4 摘み部
5 セパレータ
51 端部
6 セパ穴