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特開2024-146043ステアリングホイールへのケーブルの接続構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146043
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ステアリングホイールへのケーブルの接続構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20241004BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20241004BHJP
   H01R 35/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R16/027 S
H01R35/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058717
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】笠原 甫
(72)【発明者】
【氏名】川村 幸大
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DB22
(57)【要約】
【課題】車体側とステアリング側との間において、高速通信に供される接続に対応可能なステアリングホイールへのケーブルの接続構造を提供すること。
【解決手段】本発明のステアリングホイールへのケーブルの接続構造は、車体側40と、正逆方向に回転するステアリングホイール21を含むステアリング側20と、を電気的に接続するステアリングホイールへのケーブルの接続構造であって、
ケーブルの少なくとも一部(撚り線36)が、中空筒状で導電性を有し、ステアリングホイール21とともに回転するシャフト32内を貫通しており、
車体側40とステアリング側20との間の通信に供される接続が、シャフト32内を貫通するケーブル36によって為されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側と、正逆方向に回転するステアリングホイールを含むステアリング側と、を電気的に接続するステアリングホイールへのケーブルの接続構造であって、
前記ケーブルの少なくとも一部が、中空筒状で導電性を有し、前記ステアリングホイールとともに回転するシャフト内を貫通しており、
前記車体側と前記ステアリング側との間の通信に供される接続が、前記シャフト内を貫通するケーブルによって為されている、ステアリングホイールへのケーブルの接続構造。
【請求項2】
前記シャフト内を貫通するケーブルの一端が前記ステアリング側の電気回路に電気的に接続され、他端が前記車体側の電気回路に電気的に接続されている、請求項1に記載のステアリングホイールへのケーブルの接続構造。
【請求項3】
前記ケーブルのうち、前記シャフト内を貫通するケーブル以外のケーブルが、回転コネクタ装置を介して前記車体側と前記ステアリング側とを電気的に接続している、請求項1または2に記載のステアリングホイールへのケーブルの接続構造。
【請求項4】
前記シャフト内を貫通するケーブルの一端が、前記ステアリング側に設けられたスイッチ及び/または分岐を介して前記ステアリング側の電気回路に接続されている、請求項2に記載のステアリングホイールへのケーブルの接続構造。
【請求項5】
前記シャフト内を貫通するケーブルの一端が、前記シャフト内を貫通後、前記シャフトの軸方向に対して角度を有して配策され、前記ステアリング側の電気回路のコネクタに接続されている、請求項2に記載のステアリングホイールへのケーブルの接続構造。
【請求項6】
前記シャフト内を貫通するケーブルの一端が、前記シャフト内を貫通後、前記ステアリング側の部材に固定されてから、前記ステアリング側の電気回路のコネクタに接続されている、請求項2に記載のステアリングホイールへのケーブルの接続構造。
【請求項7】
前記シャフト内を貫通するケーブルの他端が、前記シャフト内を貫通後、前記車体側の部材に固定されてから、前記車体側の電気回路のコネクタに接続されている、請求項2に記載のステアリングホイールへのケーブルの接続構造。
【請求項8】
前記シャフト内を貫通するケーブルと前記シャフトとの間に緩衝部材が配されている、請求項1または2に記載のステアリングホイールへのケーブルの接続構造。
【請求項9】
前記シャフト内を貫通するケーブルが丸型電線である、請求項1または2に記載のステアリングホイールへのケーブルの接続構造。
【請求項10】
前記シャフト内を貫通するケーブルが撚り線である、請求項1または2に記載のステアリングホイールへのケーブルの接続構造。
【請求項11】
前記シャフトがステア・バイ・ワイヤ方式のステアリングシステムにおけるシャフトである、請求項1または2に記載のステアリングホイールへのケーブルの接続構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体におけるステアリングホイールへのケーブルの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車においては、車体側に取り付けられた電気回路と、正逆方向に回転するステアリング側に取り付けられた電気回路との間は、一般に、フラットケーブルを用いた回転コネクタ装置によって接続されていた。
【0003】
回転コネクタ装置は、ステアリングホイールが結合したステアリングシャフトを中空円環状体に嵌合させ、この中空円環状体を車体側に固定された筒状枠体の内側に正逆方向に回転自在に組み合わせる。そして、フラットケーブルの長手方向の一端部を前記中空円環状体に取り付けてステアリング側の部品に接続し、他端部を前記筒状枠体に取り付けて車体側の部品に接続し、フラットケーブルを前記中空円環状体と前記筒状枠体との間に形成された環状空間内に収容してなる。
【0004】
回転コネクタ装置は、必要な回路数が増えた場合にも、フラットケーブルの枚数を例えば4枚に増やして周方向に等間隔(4枚であれば中心角90°)に配することで容易に、増やしたフラットケーブルの枚数分回路数を増やすことができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
近年の安全装置の電子化や高度化、さらには自動運転技術の発達等により、ステアリングホイールに組み込まれるデバイスや電子部品の数も著しく増加している。そのような時流においても回転コネクタ装置は、周方向に分かれたそれぞれのフラットケーブルをさらに複数枚重ねた状態にすることが可能であり、増加する回路数への対応の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-208223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今後の自動運転の進歩に伴い、ステアリングホイールには、カメラやディスプレイ等を代表とする広帯域の通信が必要となる各種デバイスが搭載されるようになる。しかし、一般的なフラットケーブルによる回転コネクタ装置では、電気的要件を満足することが難しいため、高速通信に適用することは困難である。
【0008】
したがって、本発明は、車体側とステアリング側との間において、高速通信に供される接続に対応可能なステアリングホイールへのケーブルの接続構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、以下の本発明の一態様によって解決される。即ち、本発明の一態様にかかるステアリングホイールへのケーブルの接続構造は、車体側と、正逆方向に回転するステアリングホイールを含むステアリング側と、を電気的に接続するステアリングホイールへのケーブルの接続構造であって、
前記ケーブルの少なくとも一部が、中空筒状で導電性を有し、前記ステアリングホイールとともに回転するシャフト内を貫通しており、
前記車体側と前記ステアリング側との間の通信に供される接続が、前記シャフト内を貫通するケーブルによって為されている。
【0010】
本発明の一態様においては、前記シャフト内を貫通するケーブルの一端が前記ステアリング側の電気回路に電気的に接続され、他端が前記車体側の電気回路に電気的に接続されていてもよい。
【0011】
本発明の一態様においては、前記ケーブルのうち、前記シャフト内を貫通するケーブル以外のケーブルが、回転コネクタ装置を介して前記車体側と前記ステアリング側とを電気的に接続していてもよい。
【0012】
本発明の一態様における、前記シャフト内を貫通するケーブルの一端が前記ステアリング側の電気回路に電気的に接続され、他端が前記車体側の電気回路に電気的に接続される態様においては、前記シャフト内を貫通するケーブルの一端が、前記ステアリング側に設けられたスイッチ及び/または分岐を介して前記ステアリング側の電気回路に接続されていてもよい。同様に、前記シャフト内を貫通するケーブルの一端が、前記シャフト内を貫通後、前記シャフトの軸方向に対して角度を有して配策され、前記ステアリング側の電気回路のコネクタに接続されていてもよい。同様に、前記シャフト内を貫通するケーブルの一端が、前記シャフト内を貫通後、前記ステアリング側の部材に固定されてから、前記ステアリング側の電気回路のコネクタに接続されていてもよい。同様に、前記シャフト内を貫通するケーブルの他端が、前記シャフト内を貫通後、前記車体側の部材に固定されてから、前記車体側の電気回路のコネクタに接続されていてもよい。
【0013】
本発明の一態様においては、前記シャフト内を貫通するケーブルと前記シャフトとの間に緩衝部材が配されていてもよい。
【0014】
本発明の一態様においては、前記シャフト内を貫通するケーブルが丸型電線であってもよいし、撚り線であってもよい。
【0015】
本発明の一態様においては、前記シャフトがステア・バイ・ワイヤ方式のステアリングシステムにおけるシャフトであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の一態様によれば、車体側とステアリング側との間において、高速通信に供される接続に対応可能なステアリングホイールへのケーブルの接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の例示的態様である第1の実施形態にかかるステアリングホイールへのケーブルの接続構造を示す概略構成図である。
図2】本発明の例示的態様である第2の実施形態にかかるステアリングホイールへのケーブルの接続構造を示す概略構成図である。
図3】本発明の例示的態様である第3の実施形態にかかるステアリングホイールへのケーブルの接続構造を示す概略構成図である。
図4】本発明の例示的態様である第4の実施形態にかかるステアリングホイールへのケーブルの接続構造を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の例示的態様である4つの実施形態にかかるステアリングホイールへのケーブルの接続構造(以下、単に「接続構造」と称する場合がある。)を挙げて、図面を参照しながら説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態にかかるステアリングホイールへのケーブルの接続構造を示す概略構成図である。図1に示されるように、本実施形態にかかる接続構造は、車体側40と、正逆方向に回転するステアリングホイール21を含むステアリング側20と、を電気的に接続する構造である。
【0020】
ステアリングホイール21は、運転者が手で握り正逆方向に回転させる円形のリム24と、中央のハブ22と、リム24及びハブ22の間を連結するスポーク23と、で構成される。ステアリングホイール21は、運転者がリム24を回転させるとスポーク23及びハブ22が一体となって回転する。
【0021】
本実施形態にかかる接続構造においては、従来から一般的であるラック・アンド・ピニオン方式等の機械的な操舵機構に代えて、電子的な操舵機構であるステア・バイ・ワイヤ方式を採用している。ステア・バイ・ワイヤ方式とは、機械的な操舵機構におけるステアリングシャフトに代わって電気信号を利用して、運転者によるステアリングホイールの回転操作の情報を操舵系の機構に伝え、車輪を操舵する方式である。
【0022】
ステア・バイ・ワイヤ方式は、ステアリングホイールと操舵系の機構とを物理的に切り分けていることから、自動運転時にステアリングホイールを格納することができる等自動運転に適した操舵機構である。なお、図1において、ステア・バイ・ワイヤ方式による操舵機構に関わる構成の図示は省略されている。
【0023】
ステアリングホイール21のハブ22は、回転コネクタ装置10の回転体14に固定されている。回転コネクタ装置10は、円筒ケース状の固定体12と、同じく円筒ケース状で固定体12に回転自在に嵌合して内部空間を形成する回転体14と、からなり、当該内部空間内で不図示のワイヤーケーブルによって固定体12と回転体14との間が繋がっている。
【0024】
回転コネクタ装置10の固定体12は、固定具11を介して固定シャフト34の一端に固定され、さらに固定シャフト34の他端は車体42に取り付けられた取付具43によって車体42に固定されている。一方、回転コネクタ装置10の回転体14は、回転シャフト(シャフト)32の一端に固定されている。
【0025】
回転シャフト32は、固定シャフト34の内側で、固定シャフト34と同軸上に配されている。回転シャフト32は、回転体14が取り付けられた側と反対の他端が、軸受44を介して取付具43に取り付けられている。即ち、回転体14は車体42に対して回転自在に固定されている。、
【0026】
以上のように、付随的な部材を除けば、回転コネクタ装置10の固定体12及び固定シャフト34が車体42に固定された部材であり、回転コネクタ装置10の回転体14及び回転シャフト32がステアリングホイール21とともに車体42に対して回転する部材である。
【0027】
回転シャフト32は、中空筒状であり、導電性を有している。回転シャフト32の材料としては、導電性と強度とを備えていれば特に制限はないが、具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属や導電性のプラスチック等が挙げられる。導電性のプラスチックとしては、例えば、導電性FRP(カーボン・レインフォースト・プラスチック)が挙げれる。なお、この回転シャフト32は、操舵機構に回転力を伝える機能を有する、機械的な操舵機構におけるステアリングシャフトとは異なり、運転者によるステアリングホイール21の回転操作に耐える強度のみが求められる。回転シャフト32は、軸受44を介して車体42に接地されている。
【0028】
回転シャフト32内には、撚り線(ケーブル)36が貫通し、一端がステアリング側20の電気回路(以下、「ステアリング側電気回路」と称する場合がある。)に電気的に接続され、他端が車体側40の電気回路(以下、「車体側電気回路」と称する場合がある。)に電気的に接続されている。
【0029】
なお、ここでいう「ステアリング側電気回路」とは、ステアリング側20に配された電気回路全般を指し、ステアリング側20に複数の電気回路が配されている場合には、これら複数の電気回路の集合体を意味する。同様に、「車体側電気回路」とは、車体側40に配された電気回路全般を指し、車体側40に複数の電気回路が配されている場合には、これら複数の電気回路の集合体を意味する。
【0030】
撚り線36の一端は、ハブ22内に配された不図示のステアリング側電気回路に電気的に接続されたステアリング側コネクタ26に接続されている。一方、撚り線36の他端は、回転シャフト32の先端開口を通じて、取付具43の底面(回転シャフト32における車体側40の先端に対向する面)に取り付けられた車体側コネクタ46に接続されている。
【0031】
車体側コネクタ46にはワイヤハーネス48が接続され、矢印Bの先で、車体側40に配された不図示の車体側電気回路に電気的に接続されている。車体側電気回路は、例えば車体側40に設けられたECU(Electronic Control Unit)である。
【0032】
本実施形態において、撚り線36は、高速通信用途に適した丸型電線の撚り線が用いられる。なかでもツイスト線(UTP)、ジャケット付きツイスト線(JUTP)がより好ましいが、シールドツイスト電線(STP)やシールドカッド電線(STQ)、さらにHDMI(登録商標)などの複合ケーブル等であっても構わない。
【0033】
なお、本実施形態において、「高速通信」とは、一般的に高速通信とされる通信信号をやり取りする通信のことを指し、具体的には、デジタルの映像情報や音声情報が挙げられる。通信速度としては、100kbps以上であれば本実施形態における高速通信の範疇に含めるものとし、好ましくは10Mbps以上、より好ましくは100Mbps以上とする。
【0034】
本実施形態において、車体側40とステアリング側20とを電気的に接続するケーブルのうち、一部は回転シャフト32内を貫通する撚り線36であるが、撚り線36以外のケーブルは、回転コネクタ装置10を介して車体側40とステアリング側20とを電気的に接続している。
【0035】
即ち、回転コネクタ装置10内に配された不図示のワイヤーケーブルの一端は、回転体14を介してハブ22内に配された不図示のステアリング側電気回路に電気的に接続されている。また、不図示のワイヤーケーブルの他端は、回転コネクタ装置のコネクタ16に電気的に接続されている。そして、コネクタ16にはワイヤハーネス18が接続され、矢印Aの先で、車体側40に配された不図示の車体側電気回路に電気的に接続されている
【0036】
つまり、本実施形態においては、車体側40とステアリング側20とを電気的に接続するケーブルが、回転シャフト32内を貫通する撚り線36を介する系統と、回転コネクタ装置10を介する系統の2系統の接続系統を有している。
【0037】
車体側40とステアリング側20と間の通信(特に高速通信)に供される接続は、回転シャフト32内を貫通するケーブルである撚り線36(撚り線36を介する系統)によって為されている。ステアリング側20において撚り線36が接続されるステアリング側電気回路としては、例えば、乗員検知用のカメラやステアリングホイール21に搭載されたディスプレイ、あるいはこれらへの接続を中継するECU等を挙げることができる。ステアリング側電気回路への電気的な接続は、直接接続せずとも、スイッチや分岐、あるいはこれらの両方を介してもいても構わない。
【0038】
一方、回転コネクタ装置10を介する系統は、ステアリングホイール21のハブ22やスポーク23に設けられた各種デバイスや電子部品と車体側電気回路との接続に供される。具体的なデバイスや電子部品としては、エアバッグ装置、ヒートステアリング装置、その他の補機等のデバイスや、カーオーディオ乃至カーナビゲーションシステムの操作ボタン及び調整スイッチ、ハンズフリーフォンの操作ボタン等の電子部品を挙げることができる。なお、これら各種デバイスや電子部品と車体側電気回路との接続に供されるケーブルのうちの一部は、回転シャフト32内を貫通するケーブル(撚り線36)に含めても構わない。
【0039】
以上説明した本実施形態にかかる接続構造によれば、車体側40とステアリング側20との間の通信に供される接続が、導電性を有する回転シャフト32内を貫通する撚り線36によって為されているので、回転シャフト32のシールド効果により、高速通信の電気信号にノイズを生じさせる懸念が抑制される。
【0040】
特に、ツイスト線(UTP)やジャケット付きツイスト線(JUTP)は、それ自身がシールド効果を備えていないため、回転シャフト32のシールド効果の恩恵が大きい。ただし、シールドツイスト電線(STP)やシールドカッド電線(STQ)、同軸ケーブル等であっても、シールド電線としてのシールド効果と回転シャフト32のシールド効果とが相俟ってより高いシールド効果を期待することができ、高速通信の電気信号にノイズを生じさせる懸念がより一層抑制される。
【0041】
ツイスト線を用いた場合に、ステアリングホイール21の回転時の捻れの負荷によって撚りの状態が変わり、ツイスト線自体の耐ノイズ性が悪くなる恐れがあるが、回転シャフト32がシールド性を備えているため、このような原因に基づく耐ノイズ性の低下を抑制することができる。
【0042】
また、電気接続における高速通信用と一般電気接続とを分離して、一般電気接続は従来通り回転コネクタ装置10を経由することで、サイズ的にもコスト的にも有利となる。一方で、高速通信は回転シャフト32内を貫通する丸型電線の撚り線36を用いているので、特殊な工夫をすることなく、車体側40とステアリング側20との間の高速通信が可能になる。
【0043】
本実施形態においては、回転シャフト32が車体42に接地されているため、高いシールド効果が発現し、高速通信の電気信号にノイズを生じさせる懸念がより一層抑制される。なお、回転シャフト32が車体42に接地されていなくても撚り線36は外部からシールドされるので、一定のシールド効果を期待することができ、高速通信の電気信号にノイズを生じさせる懸念は抑制される。
【0044】
また、本実施形態にかかる接続構造によれば、車体側40とステアリング側20との間の接続に撚り線36を用いているため、捻りに対する耐久性が高い。そのため、ステアリングホイール21の正逆の総回転量が少ないステア・バイ・ワイヤ方式の操舵機構において、捻りに対する耐久性に余裕がある。勿論、±1回転やそれ以上の総回転量であっても、高い耐久性を期待することができる。
【0045】
本実施形態においては、ステアリング側コネクタ26と車体側コネクタ46がともにほぼ軸x上に配され、撚り線36がほぼ軸x上に位置している。そのため、構造が単純であり、小型化と軽量化を実現することができる。
【0046】
なお、ステアリング側コネクタ26が軸xから外れた位置に配される等、撚り線36が必ずしも軸x上を通らなくても、回転シャフト32内で自由に動くことができるため問題ない。そのため、本実施形態においては、ステアリング側コネクタ26の取付位置の自由度が高い。ステアリング側コネクタ26が軸xから外れた位置に配された場合、撚り線36は、車体側コネクタ46への接続位置を中心として、コーン状に回転する。
【0047】
また、本実施形態において、撚り線36は、回転シャフト32内で自由に動くことができることから、ある程度撓ませた状態であっても構わない。撚り線36は、回転により収縮することから、当該収縮の効果を考慮した範囲内でピンと張っても(張架させても)構わない。
【0048】
<第2の実施形態>
図2は、第2の実施形態にかかるステアリングホイールへのケーブルの接続構造を示す概略構成図である。図2に示されるように、本実施形態にかかる接続構造は、車体側40と、正逆方向に回転するステアリングホイール21を含むステアリング側20と、を電気的に接続する構造である。
【0049】
図2において、第1の実施形態にかかる接続構造と同様の構成の各部材に、第1の実施形態における各部材と同一の符号を付すことで、各部材における同様の構成並びに構造等についての説明は省略する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態においては、撚り線36の両端の接続状態が第1の実施形態にかかる接続構造と異なっている。
【0050】
撚り線36の一端(ステアリング側)は、回転シャフト32内を貫通後、回転シャフト32の軸x方向に対して角度を有して配策された上で、ステアリング側コネクタ26に接続されている。ステアリング側コネクタ26は、回転シャフト32の軸xから大きく外れた場所に固定されている。
【0051】
このように、回転シャフト32内を貫通するケーブル(撚り線36)の一端が、回転シャフト32内を貫通後、軸x方向に対して角度を有して配策されてからステアリング側コネクタ26に接続されることで、ステアリングホイール21の回転時の撚り線36の捻れによる負荷がステアリング側コネクタ26に直接作用しない。
【0052】
なお、ここでいう「軸x方向に対して角度を有して配策」とは、回転シャフト32内を貫通後からステアリング側コネクタ26までの間の配策において、軸xと平行ではなく角度がある(軸xと成す角を有する)部位を有することを指す。
【0053】
そのため、ステアリング側コネクタ26への機械的なストレスを低減することができ、特にステアリング側コネクタ26の端子をこじらせてしまうことを抑制することができる。また、本実施形態によれば、ステアリングホイール21のリム24内におけるステアリング側コネクタ26の取付位置の自由度を向上させることができる。
【0054】
また、撚り線36の他端(車体側)は、回転シャフト32内を貫通後、車体側40の部材である固定部材45に固定されてから車体側コネクタ46に接続されている。固定部材45は、取付具43の底面からステアリング側20に向けて立ち上がり、先端で略90°折り曲げられて回転シャフト32のほぼ軸x上で撚り線36を固定できるようになっている。固定部材45に固定されて略90°向きが変えられた撚り線36は、取付具43の周壁に取り付けられた車体側コネクタ46に接続されている。
【0055】
このように、回転シャフト32内を貫通するケーブル(撚り線36)の他端が、回転シャフト32内を貫通後、車体側40の部材(固定部材45)に固定されてから、車体側コネクタ46に接続されることで、ステアリングホイール21の回転時の撚り線36の捻れによる負荷が車体側コネクタ46に作用しない。
【0056】
そのため、車体側コネクタ46への機械的なストレスを低減することができる。また、本実施形態によれば、取付具43内における車体側コネクタ46の取付位置の自由度を向上させることができる。
【0057】
その他、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同様に作用及び効果が奏される。
【0058】
<第3の実施形態>
図3は、第3の実施形態にかかるステアリングホイールへのケーブルの接続構造を示す概略構成図である。図3に示されるように、本実施形態にかかる接続構造は、車体側40と、正逆方向に回転するステアリングホイール21を含むステアリング側20と、を電気的に接続する構造である。
【0059】
図3において、第1の実施形態にかかる接続構造と同様の構成の各部材に、第1の実施形態における各部材と同一の符号を付すことで、各部材における同様の構成並びに構造等についての説明は省略する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態においては、撚り線36の両端の接続状態が第1の実施形態にかかる接続構造と異なっている。
【0060】
撚り線36の一端(ステアリング側)は、回転シャフト32内を貫通後、ステアリング側20の部材(固定部材)であるクランプ28に固定されてから、ステアリング側コネクタ26に接続されている。本実施形態においても第2の実施形態と同様、ステアリング側コネクタ26は回転シャフト32の軸xから大きく外れた場所に固定されており、撚り線36の一端は、回転シャフト32の軸x方向に対して角度を有して配策された上でステアリング側コネクタ26に接続されている。
【0061】
このように、回転シャフト32内を貫通するケーブル(撚り線36)の一端が、回転シャフト32内を貫通後、ステアリング側20の部材(クランプ28)に固定されてからステアリング側コネクタ26に接続されることで、ステアリングホイール21の回転時の撚り線36の捻れによる負荷がステアリング側コネクタ26に作用しない。
【0062】
そのため、ステアリング側コネクタ26への機械的なストレスを低減することができ、特にステアリング側コネクタ26の端子をこじらせてしまうことがない。この効果は、ステアリング側コネクタ26を略軸x上に配したとしても奏される。また、本実施形態によれば、ステアリングホイール21のリム24内におけるステアリング側コネクタ26の取付位置の自由度を向上させることができる。
【0063】
また、撚り線36の他端(車体側)は、回転シャフト32内を貫通後、第2の実施形態と同様、車体側40の部材である固定部材45に固定されてから車体側コネクタ46に接続されている。しかし、本実施形態では、固定部材45に固定されて略90°向きが変えられた撚り線36が、固定シャフト34の側面に設けられた開口部34aを通じて固定シャフト34の外に延びている。そして、撚り線36は、車体42の所定の位置に取り付けられた車体側コネクタ46に接続されている。
【0064】
このように、回転シャフト32内を貫通するケーブル(撚り線36)の他端が、回転シャフト32内を貫通後、車体側40の部材(固定部材45)に固定されてから、車体側コネクタ46に接続されることで、ステアリングホイール21の回転時の撚り線36の捻れによる負荷が車体側コネクタ46に作用しない。
【0065】
そのため、車体側コネクタ46への機械的なストレスを低減することができる。また、本実施形態によれば、撚り線36が固定シャフト34の外まで延びているため、車体側コネクタ46の取付位置を車体42における広い範囲から選択することができ、車体側コネクタ46の取付位置の自由度をより一層向上させることができる。
【0066】
その他、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同様に作用及び効果が奏される。
【0067】
<第4の実施形態>
図4は、第4の実施形態にかかるステアリングホイールへのケーブルの接続構造を示す概略構成図である。図4に示されるように、本実施形態にかかる接続構造は、車体側40と、正逆方向に回転するステアリングホイール21を含むステアリング側20と、を電気的に接続する構造である。
【0068】
図4において、第1の実施形態にかかる接続構造と同様の構成の各部材に、第1の実施形態における各部材と同一の符号を付すことで、各部材における同様の構成並びに構造等についての説明は省略する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態においては、撚り線36と回転シャフト32との間に緩衝部材38が配されている点が第1の実施形態にかかる接続構造と異なっている。
【0069】
本実施形態において、緩衝部材38はコルゲートチューブである。撚り線36と回転シャフト32との間にコルゲートチューブの緩衝部材38が配されることで、ステアリングホイール21の回転時の撚り線36の動きにより生じる音や、撚り線36にかかる負荷を軽減することができる。
【0070】
また、撚り線36と回転シャフト32との距離が近くなりすぎると電気的バランスが悪化しノイズの原因になり得るが、緩衝部材38が介在することで、撚り線36と回転シャフト32とを離間させることができる。撚り線36と回転シャフト32とを緩衝部材38によって離間させることで、高速通信の電気信号にノイズを生じさせる懸念が抑制される。
【0071】
緩衝部材38としては、コルゲートチューブの他、スポンジ、塩ビ管、ゴム、発泡スチロール、各種テープ、その他各種樹脂あるいはその他各種発泡体を好適なものとして例示することができる。
【0072】
図4に示される通り、本実施形態では、緩衝部材38が回転シャフト32の略全長にわたって延在しているが、これに限定されない。緩衝部材としては、回転シャフト32より短くてもよいし、複数に分割されていてもよいし、軸x方向長さのごく短い緩衝部材を多数、あるいは要所要所のみに少数、配してもよい。
【0073】
その他、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同様に作用及び効果が奏される。
【0074】
以上説明した実施形態は、本発明の代表的な形態の例を示したに過ぎず、本発明は、これら実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明のステアリングホイールへのケーブルの接続構造の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。例えば、上記実施形態のそれぞれの構成を適宜組み合わせて本発明を実現することができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、シャフト内を貫通するケーブルとして丸型電線で、かつ撚り線であるケーブルを用いた例を挙げて説明しているが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、撚り線ではない通常の金属丸線や同軸ケーブル等であっても構わない。車体側とステアリング側と間の通信用として供するに耐え得るケーブルであれば、これをシャフト内に貫通させることで、回転シャフトに基づくノイズ抑制効果が期待できる。
【0076】
勿論、シャフト内を貫通するケーブルが丸型電線であることが、通信用として供するに好ましい。また、シャフト内を貫通するケーブルが撚り線であることが、ステアリングホイールの回転時の捻れに対する耐久性に優れる点で好ましい。
【0077】
なお、本発明や本実施形態において「シャフト内を貫通するケーブル」との表現があるが、実施形態における撚り線36等のケーブル自体が回転シャフト32内にとどまっていても、回転シャフト32内でコネクタ(ステアリング側コネクタ26や車体側コネクタ46)と接続され、撚り線36等のケーブル自体に加えてコネクタ及び当該コネクタに続く配線によって全体としてシャフト内を貫通していれば、本発明や本実施形態における「シャフト内を貫通するケーブル」の概念に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
10 回転コネクタ装置、
11 固定具、
12 固定体、
14 回転体、
16 コネクタ、
18 ワイヤハーネス、
20 ステアリング側、
21 ステアリングホイール、
22 ハブ、
23 スポーク、
24 リム、
26 ステアリング側コネクタ、
28 クランプ(ステアリング側の部材)、
32 回転シャフト(シャフト)、
34 固定シャフト、
34a 開口部、
36 撚り線(ケーブル)、
38 緩衝部材、
40 車体側、
42 車体、
43 取付具、
44 軸受、
45 固定部材(車体側の部材)、
46 車体側コネクタ、
48 ワイヤハーネス

図1
図2
図3
図4