(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146046
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】検出装置、検出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/931 20200101AFI20241004BHJP
【FI】
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058724
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】白根 森斗
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】山村 隆介
(72)【発明者】
【氏名】眞子 凌
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB18
5J070AC02
5J070AC06
5J070AE01
5J070AE09
5J070AE10
5J070AF03
5J070AH12
5J070AH31
5J070AK14
(57)【要約】
【課題】高い精度で物体を検出し、植生と障害物を区別することができる検出装置、検出方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】検出装置1は、移動体2の周囲環境に向けて送信波を送信するとともに、移動体2の周囲環境に存在する物体40からの反射波を受信し、当該反射波を処理することによって、点群の位置情報を周期的に取得するレーダ装置10と、レーダ装置10によって予め取得され、物体40を示す基準となる参照点群情報を記憶する記憶装置30と、参照点群情報及び点群の位置情報に基づいて、物体40が植生であるか又は障害物であるかを判定する障害物判定部26と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周囲環境に向けて送信波を送信するとともに、前記移動体の周囲環境に存在する物体からの反射波を受信し、当該反射波を処理することによって、点群の位置情報を周期的に取得するレーダ処理部と、
前記レーダ処理部によって予め取得され、前記物体を示す基準となる参照点群情報を記憶する記憶装置と、
前記参照点群情報及び前記点群の位置情報に基づいて、前記物体が植生であるか又は障害物であるかを判定する障害物判定部と、
を備える検出装置。
【請求項2】
前記障害物判定部によって前記物体が植生であると判定された場合、前記移動体と前記物体との距離が、前記移動体と前記物体との衝突を判定するための衝突判定閾値未満であるか判定し、衝突判定閾値未満であると判定した場合、前記移動体を停止させる走行制御部を更に備える請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記障害物判定部は、
前記参照点群情報を構成する点群から、列状に配置された前記物体における複数の始点及び終点の位置を取得し、
取得した前記複数の始点及び終点の位置から判定領域を作成し、
前記レーダ処理部によって取得された前記物体の点群のうち、前記判定領域内に存在する点群を除去する、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記障害物判定部は、
前記物体の点群における前記物体からの反射波の強度が、所定の閾値を超える場合、前記物体が障害物であると判定し、
前記物体からの反射波における強度が、前記所定の閾値未満の場合、前記物体が植生であると判定する、
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記参照点群情報の強度から前記所定の閾値を決定する閾値決定部を更に備える、請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記記憶装置から前記参照点群情報を読み込み、前記参照点群情報と前記移動体の走行開始位置とのキャリブレーションを行う調整部を更に備える請求項3に記載の検出装置。
【請求項7】
前記調整部は、
前記参照点群情報と、前記参照点群情報を生成する際の前記移動体の所定の地点における位置情報とを関連付け、
前記点群の位置情報を取得する際の前記移動体の位置情報を取得し、
前記参照点群情報と関連付けられた前記移動体の位置情報と、前記点群の位置情報を取得する際の前記移動体の位置情報との差分を算出し、
算出した前記差分に基づいて前記点群の位置情報を修正する、請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
レーダ処理部によって予め取得され、移動体の周囲環境に存在する物体を示す基準となる参照点群情報を記憶するステップと、
前記レーダ処理部により、前記移動体の周囲環境に向けて送信波を送信するとともに、前記移動体の周囲環境に存在する前記物体からの反射波を受信し、当該反射波を処理することによって、点群の位置情報を周期的に取得するステップと、
障害物判定部により、前記参照点群情報及び前記点群の位置情報に基づいて、前記物体が植生であるか又は障害物であるかを判定するステップと、
を備える検出方法。
【請求項9】
コンピュータに、
レーダ処理部によって予め取得され、移動体の周囲環境に存在する物体を示す基準となる参照点群情報を記憶するステップと、
前記レーダ処理部により、前記移動体の周囲環境に向けて送信波を送信するとともに、前記移動体の周囲環境に存在する前記物体からの反射波を受信し、当該反射波を処理することによって、点群の位置情報を周期的に取得するステップと、
障害物判定部により、前記参照点群情報及び前記点群の位置情報に基づいて、前記物体が植生であるか又は障害物であるかを判定するステップと、
を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体に取り付けたセンサ装置により、移動体の周囲環境に存在する物体を検出する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1は、距離センサとしてLIDAR(Light Detection and Ranging, Laser Imaging Detection and Ranging)を備え、移動体が移動している間に少なくとも2つのLiDARセンサから繰り返し出力される点群データに基づいて、移動体の周囲の環境における樹木列の幹部を検出し、検出した樹木列の幹部と環境地図データとのマッチングを行うことにより、移動体の位置を推定することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の移動体は、樹木列の幹部の分布を環境地図データから取得しているため、環境地図データの更新が欠かせず管理が煩雑となるおそれがある。また、特許文献1に記載の移動体は、波長が短いレーザ光を使用するLIDARを用いているため、物体が植生である場合、植生の葉などによる遮蔽の影響を受けやすく、物体を検出する際の精度が低下する可能性がある。
【0005】
本願発明の一つの目的は、高い精度で物体を検出し、植生と障害物を区別することができる検出装置、検出方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の、及び他の目的を達成するために、本発明に係る検出装置は、移動体の周囲環境に向けて送信波を送信するとともに、前記移動体の周囲環境に存在する物体からの反射波を受信し、当該反射波を処理することによって、点群の位置情報を周期的に取得するレーダ処理部と、前記レーダ処理部によって予め取得され、前記物体を示す基準となる参照点群情報を記憶する記憶装置と、前記参照点群情報及び前記点群の位置情報に基づいて、前記物体が植生であるか又は障害物であるかを判定する障害物判定部と、を備える。
【0007】
前記検出装置は、前記障害物判定部によって前記物体が植生であると判定された場合、前記移動体と前記物体との距離が、前記移動体と前記物体との衝突を判定するための衝突判定閾値未満であるか判定し、衝突判定閾値未満であると判定した場合、前記移動体を停止させる走行制御部を更に備えてもよい。
【0008】
前記障害物判定部は、前記参照点群情報を構成する点群から、列状に配置された前記物体における複数の始点及び終点の位置を取得し、取得した前記複数の始点及び終点の位置から判定領域を作成し、前記レーダ処理部によって取得された前記物体の点群のうち、前記判定領域内に存在する点群を除去してもよい。
【0009】
前記障害物判定部は、前記物体の点群情報における前記物体からの反射波の強度が、所定の閾値を超える場合、前記物体が障害物であると判定し、前記物体からの反射波における強度が、前記所定の閾値未満の場合、前記物体が植生であると判定してもよい。
【0010】
前記検出装置は、前記参照点群情報の強度から前記所定の閾値を決定する閾値決定部を更に備えてもよい。
【0011】
前記検出装置は、前記記憶装置から前記参照点群情報を読み込み、前記参照点群情報と前記移動体の走行開始位置とのキャリブレーションを行う調整部を更に備えてもよい。
【0012】
前記調整部は、前記参照点群情報と、前記参照点群情報を生成する際の前記移動体の所定の地点における位置情報とを関連付け、前記点群の位置情報を取得する際の前記移動体の位置情報を取得し、前記参照点群情報と関連付けられた前記移動体の位置情報と、前記点群の位置情報を取得する際の前記移動体の位置情報との差分を算出し、算出した前記差分に基づいて前記点群の位置情報を修正してもよい。
【0013】
本発明の他の態様は、レーダ処理部によって予め取得され、移動体の周囲環境に存在する物体を示す基準となる参照点群情報を記憶するステップと、前記レーダ処理部により、前記移動体の周囲環境に向けて送信波を送信するとともに、前記移動体の周囲環境に存在する前記物体からの反射波を受信し、当該反射波を処理することによって、点群の位置情報を周期的に取得するステップと、障害物判定部により、前記参照点群情報及び前記点群の位置情報に基づいて、前記物体が植生であるか又は障害物であるかを判定するステップと、を備える検出方法である。
【0014】
本発明の更に他の態様は、コンピュータに、レーダ処理部によって予め取得され、移動体の周囲環境に存在する物体を示す基準となる参照点群情報を記憶するステップと、前記レーダ処理部により、前記移動体の周囲環境に向けて送信波を送信するとともに、前記移動体の周囲環境に存在する前記物体からの反射波を受信し、当該反射波を処理することによって、点群の位置情報を周期的に取得するステップと、障害物判定部により、前記参照点群情報及び前記点群の位置情報に基づいて、前記物体が植生であるか又は障害物であるかを判定するステップと、を実行させるコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い精度で物体を検出し、植生と障害物を区別することができる検出装置、検出方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施態様に係る検出装置の概略構成を示す図である。
【
図2】レーダ装置が搭載された移動体を上面から視た平面概略図である。
【
図3】本実施形態における検出装置の処理の概要を例示するフローチャートである。
【
図4】レーダ検出処理の動作を具体的に示すフローチャートである。
【
図5】マッチング処理の動作を具体的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る検出装置について説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものでない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は、各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものでない。
【0018】
図1は、本実施態様に係る検出装置1の概略構成を示す図である。検出装置1は、レーダ装置10と、調整部24と、閾値決定部25と、障害物判定部26と、走行制御部27と、記憶装置30と、を備える。
【0019】
検出装置1は、レーダ装置10によって得られる移動体2の周囲環境における物体40(
図2参照)の検出結果を受けて、自動操舵などの処理を行うための上位装置100に接続されている。
図1には、1台のレーダ装置10のみを図示しているが、検出装置1は複数台のレーダ装置を備えてもよい。また、各装置間の接続は、有線で構成してもよいし、無線ネットワークを介して接続してもよい。また、検出装置1は、制御装置として、例えば1以上のプロセッサ等を備え、記憶装置として1以上のメモリ、ハードディスクドライブ等を備える。
【0020】
レーダ装置10は、所定の周波数帯の信号を、周期的に(例えば50msごとに)送受信するものであって、農機や、建機、一般自動車等の移動体2の周囲(例えば、移動体2の前方方向(フロント又はフロントコーナー)、移動体2の後方方向(リア又はリアコーナー)又は移動体2の側方(サイド)、又はそれらの組み合わせ)に搭載される。また、レーダ装置10は、制御装置として、例えば1以上のプロセッサ等を備え、記憶装置として1以上のメモリ、ハードディスクドライブ等を備える。
【0021】
ここで、植生等のような、列状に配置された1以上の物体40が存在する周囲環境を移動体2が走行する状況を想定する。
図2は、レーダ装置10が搭載された移動体2を上面から視た平面概略図である。
図2に示すように、レーダ装置10は、移動体2の周囲環境に向けて送信波を送信するとともに、移動体2の周囲環境に存在する物体40からの反射波を受信し、当該反射波を処理することによって、点群の位置情報を周期的に取得する。
【0022】
本実施形態において、物体40は、作物、樹木等のような位置が固定されている植生と、人、動物、作業車両等のような位置が固定されず、移動可能な障害物と、を含む。
【0023】
本実施形態において、検出装置1は、後述するように、レーダ装置10によって検出された点群情報に基づいて、1以上の物体40が植生であるか又は障害物であるかを判定する。なお、
図2では、移動体2の正面の左側と右側のそれぞれにレーダ装置10が配置されている例を示しているが、これに限定されず、例えば、移動体2の正面にレーダ装置10がひとつだけ配置されていてもよい。
【0024】
図1に戻り、レーダ装置10は、送信アンテナ11と、受信アンテナ12と、信号生成部13と、送信制御部14と、発振部15と、スイッチ16と、ADC(Analog to Digital Converter)17と、距離演算部18と、速度演算部19と、閾値設定部20と、検出部21と、角度演算部22と、補正部23と、を備える。
【0025】
送信アンテナ11は、1つ又は複数のアンテナ素子で構成され、発振部15で発振された送信波S1を物体40に向けて放射する。受信アンテナ12は、1つ又は複数のアンテナ素子で構成され、物体40によって反射された電磁波R1(反射信号)を受信する。
【0026】
信号生成部13は、周期的な送信信号の信号パターンを生成する。送信制御部14は、信号生成部13に接続され、信号生成部13の動作を制御する。発振部15は、信号生成部13に接続され、信号生成部13からの信号パターンに基づいて送信信号を発振する。
【0027】
ADC17は、受信アンテナ12に接続され、受信アンテナ12で受信した信号をデジタル信号へ変換する。発振部15とADC17とは、スイッチ16により直接接続することができる。距離演算部18は、変換されたデジタル信号に基づいてレーダ装置10に対する物体40の相対距離を算出する。
【0028】
速度演算部19は、変換されたデジタル信号に基づいて移動体2の速度を算出する。閾値設定部20は、検出部21で利用する検出閾値を設定する。検出部21は、距離方向のピークを検出する。角度演算部22は、検出部21で検出された距離において、到来角度(水平角及び仰角)を求める。
【0029】
補正部23は、検出方向のずれをIMU(Interial Measurement Unit)情報を利用して補正する。検出装置1のレーダ装置10は、FCM(Fast Chirp Modulation)方式を採用しているが、FCM方式に限定されず、パルス方式でもよい。
【0030】
調整部24は、記憶装置30から参照点群情報を読み込み、参照点群情報と移動体2の走行開始位置とのキャリブレーションを行う。
閾値決定部25は、参照点群情報の強度から所定の閾値を決定する。
【0031】
障害物判定部26は、参照点群情報及び点群情報に基づいて、物体40が植生であるか又は障害物であるかを判定する。
更に、障害物判定部26は、参照点群情報を構成する点群から、列状に配置された物体40における複数の始点及び終点の位置を取得し、取得した複数の始点及び終点の位置から判定領域を作成し、レーダ装置10によって取得された物体40の点群のうち、判定領域内に存在する点群を除去する。
【0032】
また、障害物判定部26は、物体40の点群における物体40からの反射波の強度Pが、所定の閾値である樹木最大強度Psを超える場合、物体40が障害物であると判定し、物体40からの反射波における強度Pが、樹木最大強度Ps未満の場合、物体40が植生であると判定する。ここで、反射波の強度とは、反射波の振幅を示す。また、樹木最大強度Psは、移動体2の周囲環境に想定される植生に含まれる樹木等の植物のうちで反射強度が最も大きいと考えられるものを選択し、その反射強度を障害物判定のための閾値としている。即ち、本実施形態では、移動体2の周囲環境において検出されると想定される植生以外の物体40からの反射波の反射強度は樹木最大強度Psよりも大であると想定している。植生と他の障害物となる物体40との判別のための閾値は、周囲環境の植生の性質、想定される他の物体40の種別、性質に応じて設定することができる。
【0033】
走行制御部27は、障害物判定部26によって物体40が植生であると判定された場合、移動体2と物体40との距離dが、移動体2と物体40との衝突の可能性を判定するための衝突判定閾値ds未満であるか判定し、距離dが衝突判定閾値ds未満であると判定した場合、移動体2を停止させる。
【0034】
記憶装置30は、1以上のメモリ、ハードディスクドライブ等によって構成され、検出装置1における各種情報を記憶する。記憶装置30は、例えば、レーダ装置10によって予め取得され、物体40を示す基準となる参照点群情報としての点群マップ、レーダ装置10によって取得された点群等を記憶する。
【0035】
調整部24、閾値決定部25、障害物判定部26、及び走行制御部27は、各部の機能をプログラムで記述し、プロセッサと記憶装置を備えたコンピュータによって実行することにより、各部の機能を実施しているが、各部を個別のハードウェアやソフトウェアによって構成してもよい。プログラムは、コンピュータの記憶装置に格納されている。このコンピュータには、上位装置100とのデータ通信を行う通信部、検出装置1へのデータ入出力インタフェースを構成する入出力部も含まれる。
【0036】
以上の構成、機能を有する検出装置1によって実行される処理について説明する。
図3は、本実施形態における検出装置1の処理の概要を例示するフローチャートである。
図3に例示する処理により、移動体2は、物体40を検知して、植生と障害物とを判別しながら物体40への衝突を避けつつ走行可能とされる。検出装置1による処理は、例えば移動体2を起動して検出装置1に電源が供給されることによって開始される。
【0037】
ステップS1において、調整部24は、記憶装置30から参照点群情報を読み込む。参照点群情報は、レーダ装置10によって予め取得され、記憶装置30に記憶されている点群マップである。参照点群情報は、例えば、移動体2の所定の移動経路に沿って予めレーダ装置10により取得した周囲環境の点群情報から生成して記憶装置30に記憶させておくことができる。参照点群情報は、位置が固定されている物体40である植生を示す点群の位置情報で構成される。また、参照点群情報は、位置が固定されている物体40として、植生以外の他の物体を示す点群の位置情報を含んでもよいが、反射波の強度が植生よりも強い物体(例えば金属など)を示す点群の位置情報を含まない。
【0038】
ステップS2において、調整部24は、参照点群情報と移動体2の走行開始位置とのキャリブレーションを行う。具体的には、調整部24は、検出装置1の操作装置(図示せず)によって受け付けた走行開始位置のデータを用いて、参照点群情報における走行開始位置と移動体2の走行開始位置とを位置合わせすることによって、キャリブレーションを行う。このキャリブレーション処理により、移動体2が走行しながらレーダ装置10によって取得する点群の位置情報と、予め記憶装置30に記憶している参照点群情報とを空間的に対比させることができるようになる。
【0039】
また、調整部24は、検出装置1のGNSS(Global Navigation Satellite System (全地球航法衛星システム))によって検出された位置情報を用いて参照点群情報における走行開始位置と移動体2の走行開始位置とを位置合わせすることによって、キャリブレーションを行ってもよい。更に、調整部24は、検出装置1の方位センサによって取得された方位情報を用いてキャリブレーションを行ってもよい。調整部24は、例えば、GNSSを利用できる環境では、GNSSによって検出された位置情報及び方位センサによって取得された方位情報を用いてキャリブレーションを行ってもよい。また、調整部24は、例えば、GNSSを利用できない環境では、ユーザによる手動の調整及び方位センサによって取得された方位情報を用いてキャリブレーションを行ってもよい。
【0040】
また、調整部24は、参照点群情報作成時の移動体2の走行経路と、新たに測定する移動体2の走行経路とを、検出装置1のGNSSを用いて位置合わせしてもよい。具体的には、調整部24は、参照点群情報と、参照点群情報を生成する際の移動体2の所定の地点(例えば、移動体2が10m移動するごとの各地点)における位置情報とを関連付け、記憶装置30に記憶する。ここで、移動体2の所定の地点における位置情報は、検出装置1のGNSSによって取得される。
【0041】
次に、調整部24は、レーダ装置10によって点群の位置情報を取得する際の移動体2の位置情報を取得し、参照点群情報と関連付けられた移動体2の位置情報と、点群の位置情報を取得する際の移動体2の位置情報との差分を算出する。次に、調整部24は、算出した差分に基づいて、点群の位置情報を修正し、記憶装置30に記憶する。このような処理を行うことによって、検出装置1のGNSSを用いて、参照点群情報作成時の移動体2の走行経路と、新たに測定する移動体2の走行経路との位置合わせをすることができる。
【0042】
ステップS3において、閾値決定部25は、参照点群情報の強度に基づいて、所定の閾値として樹木最大強度Psを決定する。なお、種々の物体40について予め求めておいた反射波の強度に関するデータを用いて、移動体2の走行径路の周囲環境に存在する植生において想定される最大強度を所定の閾値として採用してもよい。
【0043】
ステップS4において、レーダ装置10は、移動体2の周囲の物体40における検出点を周期的に検出して、検出情報を記憶装置30に提供する(レーダ検出処理(
図4に関して後述))。検出情報は、物体40とレーダ装置10との相対速度、検出点ごとの物体40の高さを含む三次元位置情報及び反射波の受信強度を含む。検出情報は、各周期に対応するフレームごとに、時系列的に、検出装置1の記憶装置30に記憶される。
【0044】
ステップS5において、障害物判定部26は、検出情報と参照点群情報とのマッチング処理を実行する。マッチング処理の詳細は後述する。
【0045】
ステップS6において、障害物判定部26は、マッチング処理後、物体40の点群における物体40からの反射波の強度Pが、樹木最大強度Psを超えるか否かを判定する。強度Pが樹木最大強度Psを超える場合(ステップS6:YES)、物体40が障害物であると判定し、処理は、ステップS7へ移る。一方、強度Pが樹木最大強度Ps以下の場合(ステップS6:NO)、物体40が植生であると判定する。処理は、ステップS5へ戻る。
【0046】
ステップS7において、走行制御部27は、移動体2と物体40との距離dが、衝突判定閾値ds未満であるか否かを判定する。距離dが衝突判定閾値ds未満である場合(ステップS7:YES)、処理は、ステップS8へ移る。一方、距離dが衝突判定閾値ds以上である場合(ステップS7:NO)、処理は、ステップS5へ戻る。ここで、衝突判定閾値dsの大きさは、移動体2が停止するために必要な距離であることが好ましい。即ち、走行制御部27は、移動体2の速度に応じて衝突判定閾値dsを設定してもよい。
【0047】
ステップS8において、走行制御部27は、距離dが衝突判定閾値ds未満であると判定した場合、移動体2と物体40(障害物)とが衝突する可能性があると判定し、移動体2を停止させ、その後処理を終了する。
【0048】
次に、レーダ検出処理について説明する。
図4は、
図3に例示した検出装置1の処理フローにおけるレーダ検出処理(ステップS4)の動作を具体的に示すフローチャートである。ステップS11において、信号生成部13、送信制御部14及び発振部15は、所定の周波数の送信信号を生成し、送信アンテナ11から移動体2の前方に向けて送信波を放射する送信処理を行う。
【0049】
ステップS12において、受信アンテナ12は、送信波が1又は複数の物体40によって反射された反射波を、受信信号として受信し、ADC17は、受信信号をデジタル信号に変換する受信処理を行う。
【0050】
ステップS13において、距離演算部18は、デジタル信号に基づいて、レーダ装置10と物体40との相対距離を求める距離演算を行う。
【0051】
ステップS14において、速度演算部19は、デジタル信号に基づいて速度演算を行う。具体的には、速度演算部19は、受信信号に基づいて、1又は複数の物体40とレーダ装置10との相対速度情報を算出する。このように速度演算部19は、速度演算により物体40に対する速度を検出することができる。
【0052】
ステップS15において、閾値設定部20は、検出部21で利用するピークを検出のための検出閾値を設定する。具体的には、閾値設定部20は、受信アンテナ12の取り付け位置、高さ、角度などに基づいて検出閾値を調整する。
【0053】
ステップS16において、検出部21は、CFAR(Constant False Alarm Rate)などの所定の方式を用いて、距離方向のピークを検出する。
【0054】
ステップS17において、角度演算部22は、検出部21で検出された距離において、反射波の到来角度(水平角及び仰俯角)を求める角度演算処理を行い、レーダ装置10の位置を原点として放射方向を基準軸とする仮想空間において、物体40が存在する方向を算出する。
【0055】
ステップS18において、補正部23は、走路の凹凸などの影響でレーダ装置10が傾いた場合に生じる検出位置のずれをIMU(Interial Measurement Unit)情報を利用することで補正する。
【0056】
以上の処理により、レーダ装置10は、各検出点の三次元位置情報及び反射波の受信強度と、対象物の速度とを含む検出情報を検出することができる。レーダ装置10の検出情報は、各周期に対応するフレームごとに、時系列的に、検出装置1の記憶装置30に記憶される。
【0057】
次に、
図3に例示する検出装置1の処理におけるマッチング処理について説明する。
図5は、上述したマッチング処理(ステップS5)の動作を具体的に示すフローチャートである。
図6は、マッチング処理の具体例を示す図である。
図6及び後述の
図7において、横軸は検出装置1を基準とした平面上の距離を、縦軸は検出装置1を基準とした高さを示している。
【0058】
検出装置1のレーダ装置10によって取得されたマッチング処理前の点群は、
図6の上側の図に示すように、植生及び障害物の両方に対応する点群を含んでいる。参照点群情報とのマッチング処理を行うことによって重複する植生に関する点群が消去され、
図6の下側の図に示すように、マッチング処理後の点群情報には、参照点群情報の取得時には存在しない物体のみを残すことができる。
【0059】
マッチング処理ではまず、ステップS21において、障害物判定部26が、参照点群情報を構成する点群から、列状に配置された物体40における複数の始点及び終点の位置を取得する。具体的には、障害物判定部26は、参照点群情報を構成する点群から、物体40としての植生の位置に対応する2箇所の始点の位置、及び植生の位置に対応する2箇所の終点の位置を取得する。
【0060】
ステップS22において、障害物判定部26は、ステップS21において取得した複数の始点及び終点の位置から、略矩形状の判定領域を作成する。
図7は、判定領域の一例を示す図である。
図7に示すように、障害物判定部26は、ステップS21において取得した2箇所の始点の位置及び2箇所の終点の位置、即ち、4箇所の位置を頂点とする四角形状の判定領域50を作成する。
【0061】
ステップS23において、障害物判定部26は、レーダ装置10によって取得された物体の点群のうち、判定領域内に存在する点群を除去し、判定領域外に存在する点群を残し、処理を終了する。例えば、
図7に示す例では、障害物判定部26は、判定領域50内に存在する点群を除去し、判定領域50外に存在する点群を残す。これにより、障害物判定部26は、判定領域内に存在する点群を植生であると判定し、判定領域外に存在する点群を障害物であると判定することができる。
【0062】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態に係る検出装置1は、移動体2の周囲環境に向けて送信波を送信するとともに、移動体2の周囲環境に存在する物体40からの反射波を受信し、当該反射波を処理することによって、点群の位置情報を周期的に取得するレーダ装置10と、レーダ装置10によって予め取得され、物体40を示す基準となる参照点群情報を記憶する記憶装置30と、参照点群情報及び点群の位置情報に基づいて、物体40が植生であるか又は障害物であるかを判定する障害物判定部26と、を備える。
【0063】
これにより、検出装置1は、レーダ装置10によって取得された参照点群情報及び点群の位置情報を用いることによって、物体40を高い精度で検出することができ、物体40が植生であるか又は障害物であるかを区別することが可能になる。
【0064】
また、検出装置1は、障害物判定部26によって物体40が植生であると判定された場合、移動体2と物体40との距離dが、移動体2と物体40との衝突を判定するための衝突判定閾値ds未満であるか判定し、距離dが衝突判定閾値ds未満であると判定した場合、移動体2を停止させる走行制御部27を更に備える。これにより、検出装置1は、移動体2と植生とが接近した場合、移動体2と植生との衝突を回避することができる。
【0065】
また、障害物判定部26は、参照点群情報を構成する点群から、列状に配置された物体40における複数の始点及び終点の位置を取得し、取得した複数の始点及び終点の位置から判定領域を作成し、レーダ装置10によって取得された物体の点群のうち、判定領域内に存在する点群を除去する。これにより、検出装置1は、植生に対応する判定領域内の点群を除去し、障害物に対応する判定領域外の点群を残すことによって、植生と障害物とを高い精度で判定することができる。
【0066】
また、障害物判定部26は、物体40の点群における物体40からの反射波の強度Pが、樹木最大強度Psを超える場合、物体40が障害物であると判定し、物体40からの反射波における強度が、樹木最大強度Ps未満の場合、物体40が植生であると判定する。これにより、検出装置1は、物体40が障害物であるか植生であるかを高い精度で判定できる。
【0067】
また、検出装置1は、参照点群情報の強度から所定の閾値を決定する閾値決定部25を更に備える。これにより、検出装置1は、樹木最大強度Psを用いて物体40を判定することによって、物体40が障害物であるか植生であるかを高い精度で判定できる。
【0068】
また、検出装置1は、記憶装置30から参照点群情報を読み込み、参照点群情報と移動体2の走行開始位置とのキャリブレーションを行う調整部24を更に備える。これにより、検出装置1は、参照点群情報をキャリブレーションすることによって、マッチング処理の精度を向上させることができる。
【0069】
また、調整部24は、参照点群情報と、参照点群情報を生成する際の移動体2の所定の地点における位置情報とを関連付け、レーダ装置10によって点群の位置情報を取得する際の移動体2の位置情報を取得し、参照点群情報と関連付けられた移動体2の位置情報と、点群の位置情報を取得する際の移動体2の位置情報との差分を算出し、算出した差分に基づいて、点群の位置情報を修正する。このような処理を行うことによって、検出装置1は、GNSSによって取得された移動体2の位置情報を用いて、参照点群情報作成時の移動体2の走行経路と、新たに測定する移動体2の走行経路と位置合わせし、マッチング処理の精度を向上させることができる。
【0070】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本明細書に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 検出装置
2 移動体
10 レーダ装置
11 送信アンテナ
12 受信アンテナ
13 送信制御部
14 信号生成部
15 発振部
16 スイッチ
17 ADC
18 距離演算部
19 速度演算部
20 閾値設定部
21 検出部
22 角度演算部
23 補正部
24 調整部
25 閾値決定部
26 障害物判定部
27 走行制御部
30 記憶装置
40 物体
100 上位装置