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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146060
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】波長可変レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0687 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H01S5/0687
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058762
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木内 啓生
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 玲
(72)【発明者】
【氏名】金堂 晃久
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173SA26
5F173SE01
5F173SF08
5F173SF33
5F173SF43
5F173SF49
5F173SF63
(57)【要約】
【課題】例えば、より改善された新規な構成を備えた波長可変レーザ装置を得る。
【解決手段】波長可変レーザ装置は、例えば、第一方向および当該第一方向の反対方向に光を導波する活性層を有した利得部と、利得部に対して第一方向にずれるとともに当該利得部と接し、第一方向および当該第一方向の反対方向に光を導波する導波部と、利得部に対して第一方向と交差した第二方向に重なる位置から第一方向にずれて位置するとともに導波部と第二方向に重なるように位置し電力の供給に応じて発熱する電熱部と、を一体に有した、波長可変レーザ素子と、利得部に電流を供給する電流供給部と、電熱部に電力を供給する電力供給部と、波長可変レーザ素子の出力した光の波長を検出する波長検出部と、波長検出部による波長の検出値と、目標波長と、の偏差が小さくなるよう電流供給部および電力供給部を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向および当該第一方向の反対方向に光を導波する活性層を有した利得部と、
前記利得部に対して前記第一方向にずれるとともに当該利得部と接し、前記第一方向および当該第一方向の反対方向に光を導波する導波部と、
前記利得部に対して前記第一方向と交差した第二方向に重なる位置から前記第一方向にずれて位置するとともに前記導波部と前記第二方向に重なるように位置し電力の供給に応じて発熱する電熱部と、
を一体に有した、波長可変レーザ素子と、
前記利得部に電流を供給する電流供給部と、
前記電熱部に電力を供給する電力供給部と、
前記波長可変レーザ素子の出力した光の波長を検出する波長検出部と、
前記波長検出部による波長の検出値と、目標波長と、の偏差が小さくなるよう前記電流供給部および前記電力供給部を制御する制御部と、
を備えた、波長可変レーザ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電流供給部および前記電力供給部をそれぞれフィードバック制御可能な、請求項1に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項3】
前記制御部は、制御周波数が第一周波数以下で前記電力供給部をフィードバック制御する、請求項2に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項4】
前記制御周波数が低くなるにつれて前記電力供給部のフィードバック制御における第一フィードバックゲインの絶対値が大きくなる前記制御周波数の第一範囲が設定された、請求項3に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項5】
前記制御部は、経時変化しない第一電流値で電流を供給するよう前記電流供給部を制御する、請求項3または4に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項6】
前記第一電流値は前記目標波長に応じて異なる、請求項5に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記目標波長に応じて異なる値に設定された第一電力値と、現在の電力値と、の偏差が小さくなるよう、前記電流供給部を制御する、請求項3または4に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項8】
前記制御部は、制御周波数が第二周波数以上で前記電流供給部をフィードバック制御する、請求項2に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項9】
前記制御周波数が低くなるにつれて前記電流供給部のフィードバック制御における第二フィードバックゲインの絶対値が小さくなる前記制御周波数の第二範囲が設定された、請求項2または8に記載の波長可変レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力が供給されて発熱した電熱部から導波部に熱を供給し、これによって共振器長を変えることで波長を可変制御する、波長可変レーザ装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-181688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電熱部のみによって共振器長を変更して波長を可変制御する方式では、制御周波数が高い領域において波長可変制御の応答速度を確保し難いという問題がある。また、電熱部による加熱範囲が広い場合にあっては、波長可変制御の応答速度を確保し難くなったり、エネルギ消費が増大しやすくなったり、といった問題が生じる虞がある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、波長可変制御における所要の応答速度を確保しながら、より改善された新規な構成を備えた波長可変レーザ装置を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の波長可変レーザ装置は、例えば、第一方向および当該第一方向の反対方向に光を導波する活性層を有した利得部と、前記利得部に対して前記第一方向にずれるとともに当該利得部と接し、前記第一方向および当該第一方向の反対方向に光を導波する導波部と、前記利得部に対して前記第一方向と交差した第二方向に重なる位置から前記第一方向にずれて位置するとともに前記導波部と前記第二方向に重なるように位置し電力の供給に応じて発熱する電熱部と、を一体に有した、波長可変レーザ素子と、前記利得部に電流を供給する電流供給部と、前記電熱部に電力を供給する電力供給部と、前記波長可変レーザ素子の出力した光の波長を検出する波長検出部と、前記波長検出部による波長の検出値と、目標波長と、の偏差が小さくなるよう前記電流供給部および前記電力供給部を制御する制御部と、を備える。
【0007】
前記波長可変レーザ装置では、前記制御部は、前記電流供給部および前記電力供給部をそれぞれフィードバック制御可能であってもよい。
【0008】
前記波長可変レーザ装置では、前記制御部は、制御周波数が第一周波数以下で前記電力供給部をフィードバック制御してもよい。
【0009】
前記波長可変レーザ装置では、前記制御周波数が低くなるにつれて前記電力供給部のフィードバック制御における第一フィードバックゲインの絶対値が大きくなる前記制御周波数の第一範囲が設定されてもよい。
【0010】
前記波長可変レーザ装置では、前記制御部は、経時変化しない第一電流値で電流を供給するよう前記電流供給部を制御してもよい。
【0011】
前記波長可変レーザ装置では、前記第一電流値は前記目標波長に応じて異なってもよい。
【0012】
前記波長可変レーザ装置では、前記制御部は、前記目標波長に応じて異なる値に設定された第一電力値と、現在の電力値と、の偏差が小さくなるよう、前記電流供給部を制御してもよい。
【0013】
前記波長可変レーザ装置では、前記制御部は、制御周波数が第二周波数以上で前記電流供給部をフィードバック制御してもよい。
【0014】
前記波長可変レーザ装置では、前記制御周波数が低くなるにつれて前記電流供給部のフィードバック制御における第二フィードバックゲインの絶対値が小さくなる前記制御周波数の第二範囲が設定されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば、波長可変制御における所要の応答速度を確保しながら、より改善された新規な構成を備えた波長可変レーザ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態の波長可変レーザ装置の例示的な概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態の波長可変レーザ装置における利得部制御ゲインおよびヒータ制御ゲインの制御周波数に応じた設定例を示すグラフである。
図3図3は、第2実施形態の波長可変レーザ装置における目標波長に応じた利得部電流の算出に用いるテーブルの一例である。
図4図4は、目標波長が異なる場合のヒータ電流の電流値の変化に応じた波長の変化の一例を示すグラフである。
図5図5は、第2実施形態の波長可変レーザ装置の目標波長が異なる場合のヒータ電流の電流値の変化に応じた波長の変化の一例を示すグラフである。
図6図6は、第3実施形態の波長可変レーザ装置における目標波長に応じたヒータ電流の算出に用いるテーブルの一例である。
図7図7は、第3実施形態の波長可変レーザ装置のヒータ電流の電流値と波長との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0018】
以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0019】
本明細書において、序数は、方向や、波長、電流値、それらの範囲等を区別するために便宜上付与されうるものである。なお、序数は、優先順位や順番を示すものではないし、数を特定するものでもない。
【0020】
また、図1において、X方向を矢印Xで表し、Z方向を矢印Zで表している。X方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、実施形態の波長可変レーザ装置100の概略構成図である。図1に示されるように、波長可変レーザ装置100は、波長可変レーザ素子10と、波長検出部20と、制御部30と、利得部電流供給部41と、ヒータ電力供給部42と、を備えている。
【0022】
波長可変レーザ素子10は、利得部11と、導波部12とを有している。導波部12は、利得部11に対してX方向の反対方向にずれて位置されるとともに利得部11と接している。X方向の反対方向は、第一方向の一例である。利得部11は、利得領域とも称され、導波部12は、導波路領域とも称されうる。
【0023】
利得部11は、活性層を有しており、当該活性層に電流を注入することによって発光し、かつ光増幅の機能を発揮する。光は、活性層において、X方向およびX方向の反対方向に導波される。
【0024】
導波部12は、コア層を有している。利得部11の活性層で発生した光は、コア層において、X方向およびX方向の反対方向に導波される。
【0025】
波長可変レーザ素子10のX方向および当該X方向の反対方向の端部には、共振器ミラーが設けられている。波長可変レーザ素子10は、利得部11の機能と、共振器ミラーの機能とによって、レーザ発振し、レーザ光L1,L2を出力する。
【0026】
波長可変レーザ素子10には、導波部12に接したヒータ12aが設けられている。ヒータ電力供給部42は、ヒータ12aに電力を供給することで、当該ヒータ12aを発熱させ、これにより導波部12のコア層を加熱して、屈折率を変化させ、これにより共振器長を変え、ひいては、発振波長、すなわちレーザ光L1,L2の波長を変えることができる。ヒータ電力供給部42は、電力供給部の一例であり、ヒータ12aは、電力の供給に応じて発熱する電熱部の一例である。
【0027】
なお、本実施形態では、ヒータ12aの発熱は、一例として、ヒータ電力供給部42からヒータ12aに供給される電流の電流値Ihによって管理される。ただし、これは一例であって、ヒータ12aの発熱は、電力値によって管理されてもよいし、電圧値によって管理されてもよい。
【0028】
また、波長可変レーザ素子10には、利得部11に接した電極11aが設けられている。利得部電流供給部41は、電極11aを介して、利得部11に電流を供給し、これにより、利得部11の共振器長を変え、ひいては、発振波長、すなわちレーザ光L1,L2の波長を変えることができる。利得部電流供給部41は、電流供給部の一例である。
【0029】
ここで、本実施形態では、ヒータ12aは、導波部12に対してZ方向に重なっており、利得部11に対してZ方向に重なる位置に対して、X方向の反対方向にずれている。本実施形態では、ヒータ12aは、利得部11とは全くあるいは殆ど重なっていない。このような構成により、ヒータ12aによる加熱範囲を、導波部12を主体とした限定的な範囲に抑えることができるため、例えば、ヒータが利得部11および導波部12を含むより広い範囲を加熱する場合に比べて、ヒータ12aの加熱をより迅速に行えることによる制御応答性の向上や、ヒータ12aの消費電力の抑制といった効果が得られる。
【0030】
他方、電極11aは利得部11に対してZ方向に重なっている。なお、本実施形態では、ヒータ12aは導波部12に対してZ方向に重なっており、電極11aとヒータ12aとがX方向に並んでいるが、このような構成および配置には限定されず、電極11aとヒータ12aとはX方向に並んでいなくてもよい。
【0031】
波長検出部20は、レーザ光L2の波長を検出する。
【0032】
制御部30は、波長検出部20による波長の検出値を、目標波長との偏差が小さくなるよう、利得部電流供給部41およびヒータ電力供給部42のうち少なくとも一方を、フィードバック制御する。第1実施形態では、制御部30は、利得部電流供給部41およびヒータ電力供給部42の双方を、フィードバック制御する。具体的には、制御部30は、電流値Ig,Ihを算出し、当該電流値Ig,Ihを出力するよう、利得部電流供給部41およびヒータ電力供給部42を制御する。
【0033】
制御部30は、例えば、CPU、RAMやROMのような主記憶部、SSDのような補助記憶部を有したコンピュータとして構成される。その場合、制御部30は、インストールされたプログラムにしたがって作動する。また、補助記憶部には、CPUによる演算で用いるテーブルやマップのようなデータが保存される。
【0034】
第1実施形態では、制御部30は、電極11aに供給する電流の電流値Igおよびヒータ12aに供給する電流の電流値Ihを、例えば、以下の式(1-1)および(2-1)により決定する。
Ig=Igp+Gg×Δλ ・・・(1-1)
Ih=Ihp+Gh×Δλ ・・・(2-1)
ここに、Igpは、Igより一つ前のタイムステップにおける電流値Igであり、Ggは、利得部制御ゲイン、Ihpは、Ihより一つ前のタイムステップにおける電流値Ihであり、Ghは、ヒータ制御ゲインであり、Δλは、波長の検出値の目標波長に対する偏差である。利得部制御ゲインGgは、第二フィードバックゲインの一例であり、ヒータ制御ゲインGhは、第一フィードバックゲインの一例である。
【0035】
なお、Igpは、電流値Igの初期値とし、Ihpは、電流値Ihの初期値としてもよい。
【0036】
図2は、第1実施形態における、利得部制御ゲインGgおよびヒータ制御ゲインGhの制御周波数fcに応じた設定例を示すグラフである。なお、図2において利得部制御ゲインGgおよびヒータ制御ゲインGhは絶対値で示している。
【0037】
ヒータ制御ゲインGhは、制御周波数fcが周波数fc1より高い場合には0となり、制御周波数fcが周波数fc1以下となる範囲において、絶対値が0より大きくなる。すなわち、本実施形態では、制御部30は、制御周波数fcが周波数fc1以下で、ヒータ電力供給部42をフィードバック制御する。周波数fc1は、第一周波数の一例である。
【0038】
また、図2に示されるように、制御周波数fcが周波数fc1より低い範囲においては、ヒータ制御ゲインGhは、当該制御周波数fcが低くなるにつれて絶対値が大きくなるよう、設定されている。制御周波数fcが周波数fc1以下となる範囲は、第一範囲の一例である。
【0039】
他方、利得部制御ゲインGgは、制御周波数fcが周波数fc2より低い場合には0となり、制御周波数fcが周波数fc2以上となる範囲において、絶対値が0より大きくなる。すなわち、本実施形態では、制御部30は、制御周波数fcが周波数fc2以上で、利得部電流供給部41をフィードバック制御する。周波数fc2は、第二周波数の一例である。なお、周波数fc2は、周波数fc1より低い。
【0040】
また、図2に示されるように、制御周波数fcが周波数fc2より高い範囲においては、利得部制御ゲインGgは、当該制御周波数fcが低くなるにつれて絶対値が小さくなるよう、設定されている。制御周波数fcが周波数fc2以上となる範囲は、第二範囲の一例である。
【0041】
ヒータ12aの加熱によって共振器長を変化する制御では、制御周波数fcが低い範囲においては、所要の応答速度が得られるが、制御周波数fcが高い範囲においては、所要の応答速度が得られ難い。そこで、上述したように、本実施形態では、制御部30は、制御周波数fcが高い範囲においては、利得部電流供給部41をフィードバック制御する。これにより、制御周波数fcが高い範囲においても、所要の応答速度が得られ易くなる。また、上述したように、本実施形態では、制御部30は、制御周波数fcが低い範囲においては、利得部電流供給部41をフィードバック制御せず、ヒータ電力供給部42をフィードバック制御する。これにより所要の応答速度を確保しながら、利得部電流供給部41から供給される電流によるエネルギ消費を抑制することができる。
【0042】
以上、説明したように、本実施形態によれば、波長可変レーザ素子10の出力するレーザ光L1,L2の波長のフィードバック制御において、制御周波数fcのより広い範囲において、所要の応答速度を確保しやすくなる。また、ヒータ12aによって必要な箇所(導波部12)を効率良く加熱することにより、例えば、より広い範囲を加熱した場合に比べて応答速度を高めたり、エネルギ消費を抑制できたりといった効果が得られる。
【0043】
[第2実施形態]
第2実施形態の波長可変レーザ装置100は、上記第1実施形態と同様の構成を備えている。ただし、本実施形態では、制御部30による制御方法が、上記第1実施形態とは相違している。
【0044】
具体的に、本実施形態では、制御部30は、ヒータ電力供給部42についてはフィードバック制御するものの、利得部電流供給部41についてはフィードバック制御せず、フィードフォワード制御する。すなわち、制御部30は、電極11aに供給する電流の電流値Igおよびヒータ12aに供給する電流の電流値Ihを、例えば、以下の式(1-2)および(2-1)により決定する。
Ig=f1(λt) ・・・(1-2)
Ih=Ihp+Gh×Δλ ・・・(2-1)
ここに、f1(λt)は、目標波長λtに応じて異なる値に設定された、経時変化しない電流値である。電流値f1(λt)は、第一電流値の一例である。なお、式(2-1)は、上記第1実施形態と同じである。
【0045】
図3は、目標波長λtに対応した電流値f1(λt)の算出に用いるテーブルT1の一例である。テーブルT1では、目標波長λtの離散的な値λt11,λt12,λt13,・・・に対して、それぞれ、電流値f1(λt)の値Ig1,Ig2,Ig3,・・・が一対一で設定されている。
【0046】
制御部30は、テーブルT1を参照して、目標波長λtに対応した電流値f1(λt)を取得し、電流値Igを決定する。具体的に、例えば、目標波長λtが、テーブルT1に記述されている値λt11,λt12,λt13,・・・である場合には、制御部30は、当該値λt11,λt12,λt13,・・・に対応してテーブルT1に記述されている電流値f1(λt)を電流値Igとする。また、目標波長λtが、テーブルT1に記述された値λt11,λt12,λt13,・・・以外の値である場合、制御部30は、例えば、当該テーブルT1に設定された値λt11,λt12,λt13,・・・のうち、目標波長λtに最も近い二つの値に対応した二つの電流値f1(λt)を用いた線形補間により、当該目標波長λtに対応したf1(λt)を算出し、当該算出した値を電流値Igとする。
【0047】
図4は、電流値Ihによるフィードバック制御だけを行う場合において、波長λ(目標波長λt)が異なる場合における電流値Ihと波長λとの関係の一例を示すグラフであり、図5は、電流値Ihによるフィードバック制御と電流値Igのフィードフォワード制御とを行う場合において、波長λ(目標波長λt)が異なる場合における電流値Ihと波長λとの関係の一例を示すグラフである。また、図5中には、本実施形態による電流値Igのフィードフォワード制御を行わなかった場合における、電流値Ihと波長λとの関係を示すグラフが、二点鎖線で示されている。
【0048】
図4図5から明らかとなるように、本実施形態によれば、制御部30は、波長λが比較的長い場合において、利得部電流供給部41に対する経時変化しない電流値f1(λt)によるフィードフォワード制御を行うことにより、電流値Ihによる目標波長λtへのフィードバック制御を、より電流値Ihが低い範囲で行うことができるようになる。一例として、図4に示されるように、フィードフォワード制御を行わなかった場合には目標波長λt2とするのに電流値Ihrが必要であったのに対し、図5のように当該フィードフォワード制御を行うことにより、目標波長λt2とするのにより低い電流値Ih2で済むことになる。すなわち、本実施形態によれば、電流値Ihの供給についてエネルギ消費を抑制できるという効果が得られる。
【0049】
[第3実施形態]
第3実施形態の波長可変レーザ装置100は、上記第1実施形態と同様の構成を備えている。ただし、本実施形態では、制御部30による制御方法が、上記第1実施形態および第2実施形態とは相違している。
【0050】
具体的に、本実施形態では、制御部30は、ヒータ電力供給部42に対しては、目標波長λtと波長の検出値との偏差を小さくするフィードバック制御を行うものの、利得部電流供給部41に対しては、目標波長λtに応じて異なる値に設定された電力値と現在の電力値との偏差を小さくするフィードバック制御を行う。すなわち、制御部30は、電極11aに供給する電流の電流値Igおよびヒータ12aに供給する電流の電流値Ihを、例えば、以下の式(1-3)および(2-1)により決定する。
Ig=Igp+Ggh×(f2(λt)-Ih) ・・・(1-3)
Ih=Ihp+Gh×Δλ ・・・(2-1)
ここに、f2(λt)は、目標波長λtに応じて異なる値に設定された、経時変化しない電流値であり、第一電力値の一例である。また、電流値Ihは、現在の電流値であり、現在の電力値の一例である。Gghは、本実施形態における利得部制御ゲインである。なお、式(2-1)は、上記第1実施形態と同じである。
【0051】
図6は、目標波長λtに対応した電流値f2(λt)の算出に用いるテーブルT2の一例である。テーブルT2では、目標波長λtの離散的な値λt21,λt22,λt23,・・・に対して、それぞれ、電流値f2(λt)の値Ih1,Ih2,Ih3,・・・が一対一で設定されている。
【0052】
制御部30は、当該テーブルT2を参照して、目標波長λtに対応した電流値f2(λt)を取得し、電流値Igを決定する。具体的に、例えば、目標波長λtが、テーブルT2に記述されている値λt21,λt22,λt23,・・・である場合には、制御部30は、当該値λt21,λt22,λt23,・・・に対応してテーブルT2に記述されている電流値f2(λt)に基づいて式(1-3)から電流値Igを算出する。また、目標波長λtが、テーブルT2に記述された値λt21,λt22,λt23,・・・以外の値である場合、制御部30は、例えば、当該テーブルT2に設定された値λt21,λt22,λt23,・・・のうち、目標波長λtに最も近い二つの値に対応した二つの電流値f2(λt)を用いた線形補間により、当該目標波長λtに対応したf2(λt)を算出し、当該算出した電流値f2(λt)に基づいて式(1-3)から電流値Igを算出する。
【0053】
図7は、電流値Ihによるフィードバック制御を行う範囲において、電流値Ihと波長λとの関係の一例を示すグラフである。また、図7中には、本実施形態における式(1-3)による利得部電流供給部41に対するフィードバック制御を行わなかった場合かつ電熱部が経時劣化などの劣化をしている場合における、電流値Ihと波長λとの関係を示すグラフが、二点鎖線で示されている。ここで、電熱部の劣化は、同じ量の熱を発するために供給する電流が増加するように劣化するとする。
【0054】
図7から明らかとなるように、本実施形態によれば、制御部30は、利得部電流供給部41に対する目標波長λtに応じて異なる値に設定された電力値と現在の電力値との偏差を小さくするフィードバック制御を行うことにより、当該フィードバック制御を行わない場合には目標波長λtとするために電流値Ih+Δhが必要だったところ、電流値Ihによる目標波長λtへのフィードバック制御を電流値Ihで行うことができるようになる。すなわち、本実施形態によれば、電流値Ihの供給についてエネルギ消費を抑制できるという効果が得られる。
【0055】
また、本実施形態によれば、この制御における電流値Ihの目標値としての電流値f2(λt)と現在の電流値Ihとの偏差が大きいほど、Igに割り当てられる制御量(ΔIg)が大きくなり、波長制御における、利得部電流供給部41に対するフィードバック制御による寄与度をより高めることができるため、ヒータ12aが劣化して、当該ヒータ12aの加熱によっては波長λを可変制御し難くなってきた場合に、効果を奏するものであると言える。
【0056】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0057】
例えば、制御部、電流供給部、および電力供給部は、上記実施形態には限定されず、それぞれ、アナログ回路、ディジタル回路、あるいはアナログ回路とディジタル回路とが混在する回路、として構成されうる。また、第一電流値または第一電力値の設定は、上記実施形態のようなテーブルに基づく設定および算出には限定されず、例えば、目標波長の範囲に対応したデータの値やマップが設定されてもよいし、関数として設定されてもよい。また、第一電流値または第一電力値のデータ、テーブル、マップ、関数等はプログラムに記述されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…波長可変レーザ素子
11…利得部
11a…電極
12…導波部
12a…ヒータ(電熱部)
20…波長検出部
30…制御部
41…利得部電流供給部(電流供給部)
42…ヒータ電力供給部(電力供給部)
100…波長可変レーザ装置
f1(λt)…電流値(第一電流値)
f2(λt)…電流値(第一電力値)
Gh…ヒータ制御ゲイン
Gg,Ggh…利得部制御ゲイン
Ig,Ig1,Ig2,Ig3…値(電流値)
Ih,Ih1,Ih2,Ih3,Ihr…値(電流値)
L1,L2…レーザ光
T1,T2…テーブル
X…方向(第二方向)
Z…方向(第一方向)
λ…波長
λt…目標波長
λt1…波長(第一波長)
λt2…波長(第二波長)
λt11,λt12,λt13,λt21,λt22,λt23…(目標波長の)値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7