(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146123
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】移動床吸着用多孔質成型体
(51)【国際特許分類】
B01J 20/18 20060101AFI20241004BHJP
C01B 39/54 20060101ALI20241004BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20241004BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20241004BHJP
B01D 53/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B01J20/18 C
C01B39/54
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01D53/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058849
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】大西 良治
(72)【発明者】
【氏名】引間 脩
(72)【発明者】
【氏名】武脇 隆彦
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012CA01
4D012CA03
4D012CB11
4D012CC07
4D012CG01
4G066AA20A
4G066AA22A
4G066AA50A
4G066AA61B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA25
4G066BA35
4G066BA36
4G066CA35
4G066CA43
4G066FA21
4G066FA26
4G066FA28
4G066FA37
4G073BA02
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA69
4G073BA70
4G073BA75
4G073BB04
4G073BB47
4G073BB80
4G073CZ17
4G073CZ59
4G073FB01
4G073FB02
4G073FB14
4G073FB23
4G073FB50
4G073GA03
4G073UA06
4G073UB60
(57)【要約】
【課題】優れた強度を有し、吸着材として熱交換器に用いる際に流動させても形状、粒径等を維持し得る、高い吸着容量を有する、移動床吸着用多孔質成型体、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】アルミノフォスフェートゼオライトとバインダーを含む移動床吸着用多孔質成型体であって、粒径範囲が50~5000μmであり、かつ、圧縮強度が2MPa以上である、移動床吸着用多孔質成型体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノフォスフェートゼオライトとバインダーを含む移動床吸着用多孔質成型体であって、粒径範囲が50~5000μmであり、かつ、圧縮強度が2MPa以上である、移動床吸着用多孔質成型体。
【請求項2】
25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01以上、0.30以下の範囲で相対蒸気圧が0.15変化したときに、水の吸着量変化が0.12g/g以上である相対蒸気圧域を有する、請求項1に記載の移動床吸着用多孔質成型体。
【請求項3】
移動床吸着用多孔質成型体中のSi、P、Al、Me(但し、Meは、アルミノフォスフェート骨格中のAlの一部に置換しうるヘテロ原子を表す)のモル比が下記式を満足する、請求項1に記載の移動床吸着用多孔質成型体。
1.02≦(Si+P)/(Al+Me)≦1.4
【請求項4】
少なくともアルミノフォスフェート類及びバインダー前駆体を含む反応混合物から得られ、前記バインダー前駆体が下記式(I)の化合物またはシリカゾルを含むことを特徴とする請求項1に記載の移動床吸着用多孔質成型体。
【化1】
〔ただし式(I)において、Rは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であり、R'は、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルケニル基またはアルキニル基であり、nは、1ないし100の数である。〕
【請求項5】
0.1~5μmの細孔径範囲の細孔容積が、0.05cc/g以上0.5cc/g以下である請求項1に記載の移動床吸着用多孔質成型体。
【請求項6】
少なくともアルミノフォスフェート類とバインダー前駆体とを含む反応性混合物を、転動造粒により造粒する、請求項1~5のいずれか1項に記載の移動床吸着用多孔質成型体の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の多孔質成型体を用いる、移動床吸着方法。
【請求項8】
前記多孔質成型体が吸着材であり、水または二酸化炭素が吸着質である、請求項7に記載の移動床吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動床吸着用多孔質成型体、該成型体の製造方法、及び該成型体を用いる移動床吸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトには、International Zeolite Association(IZA)の規定による結晶性シリケート類、結晶性アルミノフォスフェート類などが含まれる。ゼオライトは、吸着材、触媒、分離材、洗剤のビルダーとして広く用いられる。
近年、省エネルギーの観点から、ゼオライト、メソポーラス材料等の多孔性物質を吸着材として用いる吸着ヒートポンプが研究開発されている。
【0003】
吸着ヒートポンプ用の吸着材として、例えば、骨格構造にアルミニウムとリンとヘテロ原子を少なくとも含むゼオライトが提案されている(特許文献1)。しかしながら、造粒の詳細は検討されていない。
吸着材の製法として、例えば、原料粉体の圧粉工程及びグラインダー間で破砕・研磨する磨砕工程を有する造粒法が知られており、粒径は0.05~2mmが好適とされている(特許文献2)。しかしながら、吸着材を吸着ヒートポンプに使用する場合、熱交換器に固定化して使用されるが、該吸着材は、充填密度や吸着特性の点で必ずしも満足のいくものではない。
また、吸着ヒートポンプ用の吸着材として、装置の小型化の観点から、0.5g/cc以上の嵩密度を有する吸着材を使用した吸着ヒートポンプが知られており、粒径が100~150μmである吸着材が示されている。しかしながら、該吸着材は、珪素及び酸素を主体とする高密度多孔体で、吸着特性の点で必ずしも満足のいくものではなかった(特許文献3)。
【0004】
一方、骨格構造にアルミニウムとリンを含むアルミノフォスフェート類は、従来、主に触媒の分野への適用が知られており、メタノールの軽質オレフィンへの変換等の、化学プロセスの触媒として、アルミノフォスフェート類のうち、リンの一部をケイ素で置換したシリコアルミノフォスフェートを、カオリンやシリカゾル等のバインダー成分とともに噴霧乾燥により数十~数百μmに造粒した触媒が開示されている(特許文献4、特許文献5)。
【0005】
しかしながら、触媒として使用されるこれらの造粒物は、強度を高めるため、バインダー成分の割合を40質量%またはそれ以上と極めて高いものにする必要があり、吸着式ヒートポンプ用吸着材に適用するには、強度や嵩密度が不十分で実用上問題があるか、或いは吸着容量が不充分となり、装置が大型化する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-372332号公報
【特許文献2】特開2001-38188号公報
【特許文献3】特開平9-264633号公報
【特許文献4】米国特許第4973792号公報
【特許文献5】米国特許第5095163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題に対して、実質的にアルミノフォスフェート類とバインダーを含む造粒物が提案されている(特開2005-272296)。この造粒物は、優れた強度を有し、吸着材として熱交換器に固定化して用いる場合等に高い充填密度を達成することができる。
ところで、連続稼動の吸着式ヒートポンプは、2器の吸着器、1器の凝縮器、及び1器の蒸発器で構成され、凝縮器、蒸発器には環境温度の熱交換流体、冷房、冷凍戻り温度の熱交換流体を、2器の吸着器には吸着過程では熱交換流体を、脱着過程では高温熱源温度の熱交換流体を交互に供給し、蒸発器から連続的に冷房、冷凍用の冷熱を取り出すことが可能である。
そして、ゼオライト等の吸着体は容器等に詰められて使用され、その機能が低下するとそのゼオライトを含んだ容器ごと交換することが行われるため、ゼオライト等の吸着体自体は、いったん容器に詰められた後は上からの重さに耐えるという静的な荷重に対して耐性があればよく、特に問題は発生しなかった。
【0008】
しかしながら、上述のような、2器の吸着器を有する吸着式ヒートポンプは大型になりやすいため、ゼオライト等の吸着体を流動床のように動かしながら、使用する方法が模索されている。このような態様の場合には、上記のような静的な荷重への耐性のみでは足りず、流動に伴って、ゼオライト等の吸着体はより硬度が要求され、耐摩耗性、耐衝撃性等の物性が要求される。
また、吸着体が流動する場合には、好ましい流動状態を維持するために、吸着体の粒度が均一であることが好ましく、形状についても特定の形状を有することが好ましいと考えられる。
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、優れた強度を有し、吸着材として熱交換器に用いる際に流動させても形状、粒径等を維持し得る、高い吸着容量を有する、移動床吸着用多孔質成型体、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、アルミノフォスフェート類とバインダーを含み、特定粒径範囲の多孔質成型体であって、特定の細孔容積を有し、特定の圧縮強度の多孔質成型体が、上記課題を解決し得ることを見出し本発明に到達した。
【0010】
本発明は、以下の要旨を含む。
[1]アルミノフォスフェートゼオライトとバインダーを含む移動床吸着用多孔質成型体であって、粒径範囲が50~5000μmであり、かつ、圧縮強度が2MPa以上である、移動床吸着用多孔質成型体。
[2]25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01以上、0.30以下の範囲で相対蒸気圧が0.15変化したときに、水の吸着量変化が0.12g/g以上である相対蒸気圧域を有する、上記[1]に記載の移動床吸着用多孔質成型体。
[3]移動床吸着用多孔質成型体中のSi、P、Al、Me(但し、Meは、アルミノフォスフェート骨格中のAlの一部に置換しうるヘテロ原子を表す)のモル比が下記式を満足する、上記[1]または[2]に記載の移動床吸着用多孔質成型体。
1.02≦(Si+P)/(Al+Me)≦1.4
[4]少なくともアルミノフォスフェート類及びバインダー前駆体を含む反応混合物から得られ、前記バインダー前駆体が下記式(I)の化合物を含むことを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載の移動床吸着用多孔質成型体。
【0011】
【化1】
〔ただし式(I)において、Rは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であり、R'は、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルケニル基またはアルキニル基であり、nは、1ないし100の数である。〕
【0012】
[5]0.1~5μmの細孔径範囲の細孔容積が、0.05cc/g以上0.5cc/g以下である上記[1]~[4]のいずれかに記載の移動床吸着用多孔質成型体。
[6]少なくともアルミノフォスフェート類とバインダー前駆体とを含む反応性混合物を、転動造粒により造粒する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の移動床吸着用多孔質成型体の製造方法。
[7]上記[1]~[5]のいずれかに記載の多孔質成型体を用いる、移動床吸着方法。
[8]前記多孔質成型体が吸着材であり、水または二酸化炭素が吸着質である、上記[7]に記載の移動床吸着方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた強度を有し、吸着材として熱交換器に用いる際に流動させても形状、粒径等を維持し得る、高い吸着容量を有する、移動床吸着用多孔質成型体、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1と比較例2の水蒸気吸着等温線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
[多孔質成型体]
本発明の多孔質成型体は移動床吸着用多孔質成型体であって、アルミノフォスフェートゼオライトとバインダーを含み、粒径範囲が50~5000μmであり、0.1~5μmの細孔径範囲の細孔容積が、0.05cc/g以上0.5cc/g以下であり、かつ、圧縮強度が2MPa以上であることを特徴とする。
ここで、圧縮強度の測定および計算はJIS28841-1993「圧縮強度」に記載された方法に準拠して行う。具体的には、一定速度で粒子を圧縮し得られる圧裂時の応力(単位:Nまたはgf)を「平松の方法」に従って圧縮強度(単位:MPa)に換算する。なお平松の方法とは「日本鉱業会誌vol.81、No.932、1024頁(1965年)」に記載されている。
【0017】
本発明の多孔質成型体は、その形状は特に限定されないが、移動床に使用するため、角型形状よりも、角のない丸型形状が好ましい。丸型形状であると、角がないために、摩擦により削れることが少なく、粉状になりにくい。より具体的には、平均真球度が0.70以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましく、0.80以上であることがさらに好ましい。上限に関しては特に限定されず、1.0(真球)であってもよい。ただし生産性の点から0.99以下、より好ましくは0.98以下が好ましい。
なお、真球度は、実施例に記載の方法で測定した値である。
【0018】
本発明の多孔質成型体の粒径は、長径、短径のある場合はその平均を指し、レーザー回折、顕微鏡観察等により測定される。本発明の多孔質成型体の平均粒径は、好ましくは60μm以上であり、一方、3000μm以下が好ましく、さらに好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、特に好ましくは600μm以下である。
【0019】
多孔質成型体の平均粒径が小さすぎると、吸着材層中の吸着質の拡散が阻害され、粒径が大きすぎると該多孔質成型体粒子の強度が低下する。なお、上記平均粒径の多孔質成型体は、通常、多孔質成型体を製造する際の条件の制御、必要により粉砕した後篩い分けすることにより所望粒径範囲のものを取得することができる。
【0020】
本発明の多孔質成型体は、特に限定されないが、通常細孔径0.1~5μmの範囲の細孔容積が0.05cc/g以上0.5cc/g以下であり、好ましくは0.1cc/g以上である。一方、0.45cc/g以下が好ましく、さらに好ましくは0.4cc/g以下である。
細孔容積がこれらの下限値以上であると、細孔への吸着質の拡散が速くなり、吸着速度が高くなるため好ましい。他方、細孔容積が上限値以下であると嵩密度が適切な範囲となり、吸着質の吸着効率が高くなるため好ましい。なお、細孔径0.1~5μmの範囲の細孔容積は、水銀圧入法で測定される。
本発明の多孔質成型体は、2MPa以上、更に好ましくは2.5MPa以上、特に好ましくは3MPa以上の圧縮強度を有する。圧縮強度は高い方が好ましいが、通常4MPa程度以下である。圧縮強度が小さすぎると、流動状態で使用するに際し、粉化する等の問題がある。
【0021】
この値は、流動状態で使用される場合の互いに摺動してしまうことが多く発生すること、落下するような状況が考えられること、さらに多数の成型体が雪崩のように動くことを考えると従来多く用いられる打錠成型などでは圧縮強度が不足する。
その一例として単一の粒子で考えても、シリコアルミノフォスフェート成型体を移動床用に使用する場合には、100cmの高さから落下させても破砕しない程度の強度が必要と考えられる。ゼオライトの比重を2として実施例で用いた2mm径の成型体一粒の質量は0.00837g、空気抵抗を無視するとv=√2ghだから、4.43m/sで別の成型体または床にあたるので、衝撃力F(N)は作用時間を10msとして、F=3.70N、圧力1.18MPaと計算される。実際には多数の成型体が同時に動くことを考えると、少なくとも圧縮強度2MPaは必要になると考えられる。
【0022】
また、嵩密度は、通常0.5g/cc以上、好ましくは0.6g/cc以上である。嵩密度が上記下限値以上であると、流動させる多孔質成型体の吸着質の吸着効率を維持することができる。
【0023】
本発明の多孔質成型体は、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01~0.30の範囲で相対蒸気圧が0.15変化したときに、水の吸着量が0.12g/g以上変化するものが好ましく、吸着量変化が0.15g/g以上であるものが更に好ましく、0.17g/g以上がより好ましい。上記吸着量変化が大きい場合には、吸着ヒートポンプ等に使用する場合の吸着材量を少なくすることができるため、装置をコンパクトにできるメリットがある。また、水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01での吸着量は0.15g/g以下が好ましく、0.12g/g以下が更に好ましく、0.10g/g以下が特に好ましい。
【0024】
本発明の多孔質成型体は、上記物性を満足する限りその成形方法は特に限定されないが、特に、後述の通りアルミノフォスフェート類をケイ素含有バインダー、より具体的にはシリコーン類あるいは珪酸液を用いて造粒し、必要により篩い分け等により粒径を調整することにより得ることが可能であり、かつ好ましい。さらに、該バインダー前駆体に由来して、本発明の造粒物中のSi、P、Al、Me(ヘテロ原子)のモル比は、下記式を満足するのが好ましい。
1.02≦(Si+P)/(Al+Me)≦1.4
【0025】
なお、Meは、アルミノフォスフェート骨格中のAlの一部に置換しうるヘテロ原子であり、その含有量は0であってもよい。
アルミノフォスフェートがその骨格構造にSi及び/又はMeを含む場合、Alの一部がMeに、Pの一部がSiに置換されるため、かかるアルミノフォスフェート類の組成式はAl1-xMexP1-ySiyO4となり、この組成式から明らかなように、(P+Si)/(Al+Me)のモル比は1である。ここで、バインダー前駆体がケイ素を主成分とするならば、アルミノフォスフェート骨格成分以外からケイ素が導入されるので、(P+Si)/(Al+Me)のモル比は1より大きな値を示す。本発明の多孔質成型体においては、(P+Si)/(Al+Me)のモル比は、好ましくは1.02以上であり、更に好ましくは1.05以上である。この値が小さすぎると、強度が低下する傾向がある。一方、1.4以下が好ましく、更に好ましくは1.2以下である。この値が大きすぎると、アルミノフォスフェート類に対するバインダーの割合が多くなるため、吸着容量が低下する傾向がある。
なお、多孔質成型体中のこれらの元素の存在割合は、多孔質成型体を含酸素雰囲気、550℃で焼成後、塩酸・フッ化水素酸等に溶解し、ICP法等の元素分析を行うことにより決定される。さらに、多孔質成型体中のバインダーに含まれるシリカは、ケイ素を骨格成分に含むアルミノフォスフェート類が溶解する塩酸に溶解しないため、シリコアルミノフォスフェート類と区別して定量することも可能である。
【0026】
<アルミノフォスフェートゼオライト>
本発明の多孔質成型体で用いるアルミノフォスフェートゼオライトは、International Zeolite Association (IZA)の規定による結晶性アルミノフォスフェートを意味し、骨格構造を構成する原子がアルミニウム及びリンであり、その一部が他の原子(Me:ヘテロ原子)で置換されていてもよい。中でも、(I)アルミニウムがMe1で表されるヘテロ原子(但し、Me1は周期表第3または第4周期に属し、2A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族(Alを除く)の元素から選ばれる少なくとも一種類の元素を示す。)で一部置換されたMe-アルミノフォスフェート、(II)リンがMe2で表されるヘテロ原子(但し、Me2は周期表第3または第4周期に属する4B族元素)で置換されたMe-アルミノフォスフェート、あるいは、(III)アルミニウムとリンの両方がそれぞれヘテロ原子Me1、Me2で置換されたMe-アルミノフォスフェートが吸着特性の点から好ましい。
【0027】
ここで、骨格構造を構成しているMe、Al及びPの構成割合(モル比)は、通常、下記式1-1~3-1のモル比であり、好ましくは、下記式1-2~3-2である。xが上記範囲より小さいと、吸着質の圧力が低い領域での吸着量が小さくなったり、合成が困難となる傾向があり、上記範囲より大きいと、合成時に不純物が混入しやすい傾向がある。又、y、zが上記範囲外であると、合成が困難である。
0≦x≦0.3 ・・・1-1
(xは、Me、Al、Pの合計に対するMeのモル比を示す)
0.2≦y≦0.6 ・・・2-1
(yは、Me、Al、Pの合計に対するAlのモル比を示す)
0.3≦z≦0.6 ・・・3-1
(zは、Me、Al、Pの合計に対するPのモル比を示す)
0.01≦x≦0.3 ・・・1-2
(xは、Me、Al、Pの合計に対するMeのモル比を示す)
0.3≦y≦0.5 ・・・2-2
(yは、Me、Al、Pの合計に対するAlのモル比を示す)
0.4≦z≦0.5 ・・・3-2
(zは、Me、Al、Pの合計に対するPのモル比を示す)
【0028】
Meは、1種でも2種以上含まれていてもよい。好ましいMe(Me1、Me2)は、周期表第3、第4周期に属する元素である。Me1は2価の状態でイオン半径が0.3Å以上、0.8Å以下であるのが好ましく、更に好ましくは2価、4配位の状態でイオン半径が0.4Å以上、0.7Å以下である。上記の中でも、合成の容易さ、吸着特性の点から、Fe,Co,Mg,Znから選ばれる少なくとも一種類の元素であるのが好ましく、特にFeであるのが好ましい。Me2は、周期表第3または第4周期に属する4B族元素であり、好ましくはSiである。
【0029】
また、本発明のアルミノフォスフェート類は、そのフレームワーク密度(FD)が、通常、13T/nm3以上20T/nm3以下、好ましくは、13.5T/nm3以上であり、更に好ましくは14T/nm3以上であり、一方、19T/nm3以下が好ましく、17.5T/nm3以下が更に好ましい。ここで、T/nm3は、単位体積nm3あたり存在するT原子(ゼオライトの1nm3当たりの酸素以外の骨格を構成する元素の数)を意味し、フレームワーク密度:FDを示す単位である。上記範囲未満では、構造が不安定となる傾向があり耐久性が低下する問題があり、一方、上記範囲を越えると吸着容量が小さくなり、吸着材としての使用に適さなくなる傾向がある。
【0030】
また、本発明のアルミノフォスフェート類は、その構造としては、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで、AEI、AEL、AET、AFI、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、ATO、ATS、CHA、ERI、LEV、VFIが挙げられ、中でも、吸着特性、耐久性の点から、AEI、AEL、AFI、CHA、LEVから選ばれるいずれかであるのが好ましく、特にCHA,AFIが好ましい。
【0031】
<バインダー>
本発明におけるバインダーは、多孔質成型体中のアルミノフォスフェートゼオライトを結合している成分である。本発明の多孔質成型体は、少なくともアルミノフォスフェートゼオライトとバインダー前駆体を含む混合物を造粒及び加熱することにより得るため、通常、バインダーは後述のバインダー前駆体が架橋結合等により変性しているものである。但し、バインダーは、成型時に必要に応じて添加される成分が多孔質成型体中に残存している場合、その成分をも含む。
【0032】
本発明のバインダー前駆体としては、シリコーン類、珪酸液、特定のシリカゾルあるいはアルミナゾル等の無機バインダーが用いられる。ここで、シリコーン類とは、主鎖にポリシロキサン結合を有するオリゴマーを称し、ポリシロキサン結合の主鎖の置換基の一部が加水分解をうけてOH基となったものも含む。それらの中でも、室温~300℃の低温で縮合が進行するケイ素含有化合物であるバインダー前駆体が好ましい。シリケート、珪酸液は室温~300℃程度の低温で縮合反応が進行する。上述の「特定のシリカゲル」とはこのような低温で縮合反応が進行するものを意味する。またシリカゾルを使用することも簡易かつ安全性が高い点から好ましい。
また、多孔質成型体の圧縮強度の観点から、シリコーン類あるいは珪酸液が好ましい。このなかでも特に、造粒工程で加水分解によってアルコール等の有機化合物が発生しないため、珪酸液が最も好ましい。
なお、シリコーン類は、ポリシロキサン結合を有する化合物であって、例えば下記構造の化合物又はその部分加水分解物を挙げることができる。
【0033】
【0034】
〔ただし式(I)において、Rは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であり、R'は、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルケニル基またはアルキニル基であり、nは、1ないし100の数である。〕
Rは、好ましくはC1~C6のアルキル基、C6~C12のアリール基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、C1~C6のアルコキシ基、又はC6~C12のアリールオキシ基が挙げられ、これらは任意に置換されていてもよい。更に好ましくは、それぞれ独立に非置換のアルコキシ基、アルキル基、アリールオキシ基が挙げられ、特に好ましくは、アルコキシ基であり、中でもエトキシ基あるいはメトキシ基が好ましく、最も好ましいのはメトキシ基である。
【0035】
R'は、好ましくは、C1~C6のアルキル基、C6~C12のアリール基、C2~C6のアルケニル基またはC2~C6のアルキニル基であり、これらは任意に置換されていてもよい。好ましくは非置換のC1~C5のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基あるいはエチル基、最も好ましくはメチル基である。
【0036】
上記式(I)の部分加水分解物は、R,R'の少なくとも一部が加水分解によりOH基となったものである。
繰り返し単位nは、通常2~100であり、好ましく2~50、さらに好ましくは3~30である。
nの値に応じて、式(I)の化合物は、ここでは、モノマーの形で、あるいは長鎖の形態で、任意に分岐オリゴマー長鎖の形態で、存在する。
本発明のシリコーン類としては、慣用的に、メチルシリケート、エチルシリケートと称されているアルキルシリケートが含まれる。
【0037】
また、本発明における珪酸液は、珪酸アルカリ溶液からアルカリ金属イオンを除去したものである。
アルカリ金属イオンの除去は、例えば、イオン交換等の公知の方法が採用でき、例えば、特許第3540040号公報、特開2003-26417号公報に記載されているように、珪酸ナトリウム溶液をH+型のカチオン交換樹脂と接触させて調製される。
【0038】
珪酸アルカリは、珪酸ナトリウム以外に、珪酸カリウム、あるいはこれらの混合物が使用できるが、入手しやすさの観点から珪酸ナトリウムが好ましい。H+型カチオン交換樹脂は、市販品、例えばダイアイオンSKT-20L、アンバーライトIR-120Bなどを常法によりH+型にイオン交換して用いる。
使用するカチオン交換樹脂の必要量は、公知の知見により選択されるが、通常、少なくとも珪酸アルカリ中のアルカリ金属イオン量と同等以上のカチオン交換容量が得られる量である。イオン交換は流通式、バッチ式のいずれも可能であるが、通常は流通式が採用される。
【0039】
珪酸液中のSiO2濃度は、通常1~10質量%、好ましくは2~8質量%である。この範囲より濃度が低すぎると多孔質成型体の強度が低下する傾向があり、一方、濃度が高すぎると珪酸液の安定性が低下する傾向がある。
珪酸液は、安定化剤として少量のアルカリ金属イオン、有機アミン、四級アンモニウムのような有機塩基を含有していてもよい。これら安定化剤の濃度は、アルカリ金属イオンを例に挙げると、通常1質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以下、特に0.0005~0.15質量%が好ましい。
【0040】
この範囲よりアルカリ金属イオン濃度が高すぎると吸着容量が低下する傾向がある。アルカリ金属イオン濃度の制御は、100ppm程度以下までアルカリ金属イオンを除去した珪酸液にアルカリ金属水酸化物、珪酸ナトリウム等の可溶性塩を添加してもよいし、イオン交換条件によって残留するアルカリ金属イオン濃度を制御してもよい。
【0041】
本発明の多孔質成型体を得るには、シリコーン類あるいは珪酸液をバインダー前駆体として用い、後述の第3工程での焼成温度を好ましい範囲から選択するのが特に好ましい。
【0042】
(造粒方法)
本発明の多孔質成型体は、以下の3つの工程を含む工程により製造される。
(1)少なくともアルミノフォスフェート類及びバインダー前駆体を混合して反応混合物を調製する第1工程
(2)第1工程で得られた反応混合物を、押出し成型、攪拌造粒又は噴霧造粒し、必要により粉砕及び/又は篩い分けすることにより造粒物前駆体を得る第2工程
(3)第2工程で得られた造粒物前駆体を150℃ないし700℃の範囲内の温度で焼成する第3工程
【0043】
(第1工程)
第1工程では少なくともアルミノフォスフェート類及びバインダー前駆体を混合して反応混合物を調製する。
反応混合物中のアルミノフォスフェート類とバインダー前駆体の配合割合は、通常、アルミノフォスフェート100質量部に対して、バインダー前駆体が酸化物換算で2~40質量部、好ましくは5~30質量部の割合で使用する。この範囲より少なすぎると圧縮強度が低下する傾向があり、多すぎると吸着容量が低下する傾向となる。
【0044】
また、通常、反応混合物には水を配合する。その配合割合は、成型方法にもよるが通常、アルミノフォスフェート類に対して10~500質量%である。例えば押し出し成型、または撹拌造粒の場合、10~50質量部、好ましくは10~30質量部であり、噴霧乾燥の場合は30質量部~400質量部、好ましくは40質量部~220質量部である。
また、該反応混合物には、混練、押し出しの際の特性に応じて、流動性を高める目的で、メチルセルロース等のセルロース類、澱粉、ポリビニルアルコール等の可塑剤を加えてもよい。その配合割合は、アルミノフォスフェート100質量部に対して0.1~5質量部、好ましくは0.5~2質量部である。添加量が多すぎると造粒物の強度が低下する傾向にある。
なお、造粒に用いられる原料アルミノフォスフェートの平均粒径は、通常15μm以下、好ましくは10μm以下であり、下限は、通常1μmである。必要に応じて、ジェットミル等の乾式粉砕またはボールミル等の湿式粉砕を行ってもよい。
【0045】
(第2工程)
第2工程では、第1工程で得られた反応混合物を、押出し成型、攪拌造粒又は噴霧造粒し、必要により粉砕及び/又は篩い分けすることにより造粒物前駆体を得る。
押出し成型、攪拌造粒又は噴霧造粒に使用する装置は、公知の押し出し成型機、撹拌造粒機、あるいは噴霧乾燥機が使用できる。粒径範囲が50~200μmでは噴霧造粒が、200μm~5000μm、特に500~5000μmでは転動造粒または攪拌造粒が好適である。
【0046】
撹拌造粒の場合、通常、アルミノフォスフェート類とバインダー前駆体および可塑剤を室温で混合し、次いで所定量の水を加えて造粒(撹拌)を行う。造粒時間に特に制限はないが通常1分から120分、好ましくは2分から30分である。造粒時間が短すぎると造粒が不十分で造粒物の粒度分布が広くなり、長すぎると造粒時に系内の水分が揮発して水分管理が難しくなる。造粒後は必要に応じて50℃から150℃で乾燥することにより造粒物前駆体を得る。
【0047】
転動造粒を採用することにより、バインダーが酸化物換算で10質量%程度であっても、焼成後においては、例えば、粒径1mm程度、圧縮強度が6~10MPaと高く、0.1~5μmの範囲の細孔容積が0.2~0.4ml/gである球状の造粒物を得ることもできる。1mm程度の粒径とする場合には、必要に応じて核としてシリカ、アルミナ、シリカ-アルミナなどの粒子を用い、その周りにバインダーとアルミノフォスフェートを付着させて造粒してもよい。
【0048】
押し出し成型の場合、通常、アルミノフォスフェート類、バインダー前駆体、可塑剤及び水を加えて混練して、次いで押し出し成型機で成型する。成型の際の圧力には特に制限はないが、通常、5~500kgf/cm2程度である。造粒後、通常、50℃から150℃程度の温度で乾燥して粉砕、分級を行って目的の造粒物前駆体を得る。
噴霧乾燥の場合、アルミノフォスフェート類、バインダー前駆体、可塑剤及び水を加えて混合したスラリーを噴霧乾燥機に導入して行われる。条件としては、原料スラリーの固形物濃度は通常、20~70質量%程度であり、噴霧乾燥機入口温度は150℃から450℃程度、出口温度は60℃から225℃程度の範囲が好ましい。造粒物前駆体の粒径は、噴霧された液滴の大きさに依存し、スラリー供給速度、スラリー濃度、さらに、噴霧形式にも依存する。なお、噴霧乾燥温度の低温化によって、造粒物の強度は強くなり、嵩密度は高密度化する傾向にあるが、低すぎると、乾燥前に壁面に到達する粒子の割合が増加し、収率が低下するので、上記範囲のなかで比較的高めに設定するのがよい。
なお、造粒物中のアルミノフォスフェート類は、その合成に使用される鋳型(テンプレート)を含有する状態で第2工程まで実施されるように上記条件を選定するのが好ましい。
【0049】
(第3工程)
第3工程では、第2工程で得られた造粒物前駆体を150℃ないし900℃の範囲内の温度で焼成する。該温度は、好ましくは200℃以上であり、更に好ましくは250℃以上、特に好ましくは300℃以上である。一方、800℃以下が好ましく、さらに好ましくは700℃以下である。上記温度範囲で焼成することにより、実質的にバインダー前駆体の架橋結合が達成され、高い造粒物の圧縮強度が得られるとともに、製造される造粒物の吸着及び触媒特性も良好となる。焼成温度が高すぎるとアルミノフォスフェートの構造が破壊され、吸着容量が低下することとなる。一方、焼成温度が低過ぎると、バインダー前駆体、好ましくはアルキルシリケートの架橋が十分に進まず、また、テンプレートが十分に除去されず吸着容量が低下する傾向がある。
【0050】
焼成工程においては、固定床、流動層、回転炉等の公知の焼成方式が適用できるが、焼成の均一性、温度制御の容易さの観点から、流動層、回転炉が好ましい。焼成ガスは、焼成により発生する揮発性物質、水分を迅速に除去するため、流通させるのが好ましい。焼成ガスとしては、空気等の含酸素ガス、窒素等の不活性ガスが使用可能であるが、アルミノフォスフェート類合成原料に由来して存在する有機テンプレート等の燃焼による発熱を制御するため、空気を窒素等の不活性ガスで希釈した、希釈含酸素ガスが好適に用いられる。
【0051】
[移動床吸着方法]
本発明の多孔質成型体は移動床吸着方法に好適に用いることができる。特に、本発明の多孔質成型体を吸着材として用い、吸着質として水または二酸化炭素を用いることが好ましい。
【実施例0052】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例により限定されるものではない。
【0053】
(評価方法)
<粒径>
粒径の測定に関しては、目標とする粒径が大きい(通常目標が500μm以上の)場合には、目視または必要に応じ光学顕微鏡を用いて、明らかに破片であるものを除いて標準的な大きさの粒子を50個程度実測し、平均値をとればよい。簡易的な方法としてはふるい分けを行い、そのふるい分けた篩の中央値を粒径として、重量による重みづけを行った平均値を用いてもよい。目標粒径が500μm以下になるような場合には、粒子が10個以上見える倍率にしたSEMにて数枚のSEM写真を撮影し、そこから平均的な粒子の粒径を50個以上測定し、その平均を求めるとよい。
【0054】
<細孔容積>
0.1~5μmの細孔径範囲の細孔容積は、水銀圧入法により、細孔分布曲線から求めた。具体的には、マイクロメトリックス社製オートポア9200型細孔分布測定装置を使用し、測定条件は平衡時間10秒、接触角130度、表面張力484dyne/cm、測定圧力範囲20~59500psiとする。
【0055】
<真球度>
SEM観察により、凝集していない一次粒子を平行線で挟み、その最小の長さ(短径長さM1)と最大の長さ(長径長さM2)の比(M1/M2)で表した指標であり(球形度S=M1/M2)、真球度が高いほど真球に近い。平均真球度はその平均値である。本発明では、SEM観察によって特にいびつな形のものは外し、任意の成型体10個を選択して球形度を測定し、その平均を求めて平均真球度とした。
【0056】
<吸着材造粒体の圧縮強度>
Instron製「5940シングルコラム卓上万能材料試験機」を用いて、日本工業規格JISZ8841(造粒物-強度試験方法)に則り、造粒体の強度試験方法にて評価した。なお造粒体の径は縦方向及び横方向の直径を測定し、その平均径とした。
測定の際には試料形状を粒子とし、変位速度2mm/minとした。各粒子の違いによる測定誤差を少なくする為、1種類のサンプルにつき10点の測定を行い、平均値を測定値として採用した。
【0057】
<水蒸気吸着等温線>
35℃における水蒸気吸着等温線を吸着等温線測定装置(ベルソープ18:日本ベル社製)で測定した。なお、ゼオライト膜複合体は、予め測定セルに入るよう適当なサイズに切断し、真空排気しながら120℃で5時間加熱乾燥させて測定に用いた。測定は、空気恒温槽温度50℃、吸着温度35℃、初期導入圧力3torr(4.00×102Pa)、飽和蒸気圧42.181torr(56.237×102Pa)、平衡時間500秒で行った。
【0058】
実施例1(シリコアルミノフォスフェートの調製)
水210.5質量部と85%リン酸83.7質量部の混合物に、擬ベーマイト(25質量%水含有、SASOL製CATAPAL C1)56.4質量部をゆっくりと加えて3時間攪拌混合した。これにヒュームドシリカ(Aerosil 200)6.2質量部を水210.5質量部に懸濁させたスラリーを加え、次いでモルホリン32.5質量部とトリエチルアミン41.5質量部を加えて3時間攪拌して、以下の組成を有する出発反応物質を得た。
0.25SiO2/Al2O3/0.875P2O5/0.9モルホリン/0.99トリエチルアミン/60H2O
【0059】
上記の出発反応物質をステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌しながら185℃で2日間反応させた。反応後冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて、沈殿物を回収した。その沈殿物をデカンテーションによって水で3回洗浄した後濾別し、100℃で乾燥した。XRD測定を行った結果、純粋なCHA構造のシリコアルミノフォスフェートであることが確認された。
【0060】
(成型体の製造:転動造粒)
シリコアルミノフォスフェートを100質量部と可塑剤として信越化学社製メトローズ(SM-100)1質量部を攪拌造粒機に仕込んで撹拌混合した。次にバインダー前駆体としてメチルシリケート(三菱ケミカル(株)製 MKSシリケート(登録商標)MS51、前記一般式(I)に於けるnの平均値:約5)20質量部を追加して撹拌混合した。混合原料を仕込んだポットミキサーに30rpmで回転させながら添加しつつ、水を噴霧して粒子を1~2mmまで成長させた。その後、ミキサーから造粒物を取り出して風乾後、減圧下、100℃で4hr乾燥し、篩にて1.60~2.38mmを篩い分けて回収し、造粒体を得た。該造粒体を5%酸素流通下、バッチロータリーキルンで700℃、6時間焼成し、本発明の多孔質成型体を得た。この多孔質成型体の真球度は0.96であり、圧縮強度は4.03MPaであった。また、粒径範囲はふるい分けを行っているため1.60~2.38mm範囲となる。
【0061】
比較例1
シリコアルミノフォスフェートをプレス成形・破砕して1.70~2.36mmを篩い分けて回収した。この造粒体の真球度は0.69であり、圧縮強度は1.84MPaであった。粒径範囲はふるい分けを行っているため1.70~2.38mm範囲となる。
【0062】
比較例2
実施例1で得られたシリコアルミノフォスフェートを造粒せずにそのまま700℃、6時間焼成したシリコアルミノフォスフェートの水蒸気吸着等温線は、本願実施例1の水蒸気吸着等温線と同じプロファイルを示した。すなわち、本実施例の成型体は、造粒による吸着特性の低下がほとんど認められず、シリコアルミノフォスフェートの吸着特性が維持されていることがわかった。
この結果を
図1に示す。
図1から相対蒸気圧0.01以上、0.30以下の範囲で相対蒸気圧が0.15変化したときに、水の吸着量変化が0.12g/g以上である相対蒸気圧域を有することが判る。このような領域を有している場合に表1中では〇とした。例えば実施例1では、水の吸着量が相対蒸気圧0.01以上の領域で急速に立ち上がり、相対蒸気圧が0.15以下である0.1程度変化しただけで、水の吸着量は0.2g/g程度増えていることが読み取れる。
【0063】
本発明の多孔質成型体によれば、ゼオライト等の吸着体を移動床のように動かしながら使用するヒートポンプにおいても、優れた耐摩耗性、耐衝撃性等の物性を有し、流動状態で使用しても、形状、粒径等を維持することができ、高い吸着容量を示す、多孔質成型体を提供することができる。本発明の多孔質成型体を用いることで、ヒートポンプを小型化することができ、自動車などの用途にも好適に使用することができる。したがって、本技術は工業的に価値ある技術である。