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特開2024-146161感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146161
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241004BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 512
H05K3/28 D
H05K3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058897
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 沙和子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大地
(72)【発明者】
【氏名】花里 謙
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勉
(72)【発明者】
【氏名】川田 早良
(72)【発明者】
【氏名】濱島 喬介
(72)【発明者】
【氏名】志村 優之
【テーマコード(参考)】
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC55
2H225AC63
2H225AC72
2H225AD02
2H225AD06
2H225AE14P
2H225AN36P
2H225AN39P
2H225AN61P
2H225AN62P
2H225AN65P
2H225AN82P
2H225AN94P
2H225AN98P
2H225AP11P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA27
5E314AA32
5E314AA42
5E314BB06
5E314BB11
5E314BB12
5E314CC01
5E314CC15
5E314EE01
5E314EE03
5E314FF02
5E314FF03
5E314FF04
5E314FF05
5E314FF19
5E314GG24
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】調製後に所要期間が経過した後であっても、高い解像性を有するとともに、塗工性にも優れた感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)光重合開始剤、および(D)シリカを含む感光性樹脂組成物であって、前記(D)シリカが、ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子を含み、前記粒子の平均粒子径が3~40nmである、感光性樹脂組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)光重合開始剤、および(D)シリカを含む感光性樹脂組成物であって、
前記(D)シリカが、ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子を含み、前記粒子の平均粒子径が3~40nmである、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)シリカが、前記感光性樹脂組成物の全固形分に対して、質量基準で5~70%の配合割合で含まれる、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
熱硬化触媒をさらに含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
第一のフィルムと、前記第一のフィルムの一方の面に請求項1に記載の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥した樹脂層とを備えた、ドライフィルム。
【請求項5】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物、または請求項4に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させた硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物からなる被膜を備えた、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器などに用いられるプリント配線板において、プリント配線板に電子部品を実装する際のはんだリフローなどの工程においてプリント配線板の不要な部分にはんだが付着するのを防止するために、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域にソルダーレジスト層が形成されている。ソルダーレジスト層は、基板に感光性樹脂組成物を塗布、乾燥し、露光、現像によりパターン形成した後、パターン形成された樹脂を加熱ないし光照射によって本硬化させる、いわゆるフォトソルダーレジストによって形成されるのが主流となっている。また、上記したような液状の感光性樹脂組成物を使用することなく、感光性のドライフィルムを使用してソルダーレジスト層を形成することも提案されている。
【0003】
これら感光性樹脂組成物や感光性ドライフィルムには、露光、現像が可能なようにアルカリ可溶性の感光性樹脂成分が含まれており、必要に応じてその他の光重合性モノマーや、耐熱性や基板密着性等を考慮してエポキシ等の熱硬化性成分が含まれている。また、線膨張係数を低減してソルダーレジスト層の剥離や基板の反りを抑制するため、感光性樹脂組成物には無機フィラーが配合されることがある(特許文献1等)。無機フィラーの中でも特に球状シリカは充填性に優れ、熱膨張係数が低いことから、ソルダーレジストの特性向上に広く用いられている。
【0004】
また、近年、電子部品の小型化、高性能化が求められるなか、電子部品を実装するプリント配線板も小型化・高密度化が求められており、集積度の高いプリント配線板を製造するため、高い解像性を有するソルダーレジストを形成可能な感光性樹脂組成物の開発が進められている。例えば、感光性樹脂組成物中にフィラーとして最大粒子径が1μm以下のシリカを分散させることにより、光散乱を効果的に抑制することができるため、微細な開口パターンの形成が可能であることが知られている(特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-72834号公報
【特許文献2】特開2012-242592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、小径のシリカは経時的に凝集しやすい傾向がある。小径のシリカが凝集すると、感光性樹脂組成物中やドライフィルム中で粒として現れ、フィルム塗工した際に欠点不良を引き起こす場合があった。また、小径のシリカを使用しているにもかかわらず、シリカの凝集により解像性が低下する場合があった。したがって、高い解像性を担保するために小径シリカを感光性樹脂組成物中に分散させた場合、長期間保存することができず、速やかに塗工し、パターン形成する必要があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、調製後に所要期間が経過した後であっても、高い解像性を有するとともに、塗工性にも優れた感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題に対して本発明者らが検討を行ったところ、シリカ微粒子として、特定のシリカゾルからなるシリカ微粒子であれば、感光性樹脂組成物の調製から所要期間が経過した後であっても、高い解像性を有するとともに、塗工性にも優れた感光性樹脂組成物が得られる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0009】
[1] (A)カルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)光重合開始剤、および(D)シリカを含む感光性樹脂組成物であって、
前記(D)シリカが、ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子を含み、前記粒子の平均粒子径が3~40nmである、感光性樹脂組成物。
[2] 前記(D)シリカが、前記感光性樹脂組成物の全固形分に対して、質量基準で5~70%の配合割合で含まれる、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 熱硬化触媒をさらに含む、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] 第一のフィルムと、前記第一のフィルムの一方の面に[1]に記載の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥した樹脂層とを備えた、ドライフィルム。
[5] [1]に記載の感光性樹脂組成物、または[4]に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させた硬化物。
[6] [5]に記載の硬化物からなる被膜を備えた、プリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、調製後に所要期間が経過した後であっても、高い解像性を有するとともに、塗工性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲には、その両端の数値が含まれるものとする。
【0012】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)光重合開始剤、および(D)シリカを含む。以下、感光性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0013】
<(A)カルボキシル基含有樹脂>
本発明による感光性樹脂組成物に含まれる(A)カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種カルボキシル基含有樹脂を使用できる。特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、すなわち光重合性モノマーを併用する必要がある。(A)カルボキシル基含有樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
(A)カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0015】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0016】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0017】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物との反応物の部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0018】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0019】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0020】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0021】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0022】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0023】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0024】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0025】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0026】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0027】
これらカルボキシル基含有樹脂は、前記列挙したもの限らず使用することができ、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。上記したなかでも、カルボキシル基含有樹脂(10)、(11)のごときフェノール性水酸基を有する化合物を出発原料として合成されるカルボキシル基含有樹脂は、HAST耐性、PCT耐性に優れるため好適に用いることができる。
【0028】
(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40~150mgKOH/gであることが好ましい。(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g以上とすることにより、アルカリ現像が良好になる。また、酸価を150mgKOH/gを以下とすることで、良好なレジストパターンの描画をし易くできる。より好ましくは、50~130mgKOH/gである。
【0029】
(A)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上とすることにより、タックフリー性能や解像度を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下とすることで、現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。より好ましくは、5,000~15,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0030】
(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量は、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、10~50質量%であることが好ましい。10質量%以上とすることにより塗膜強度を向上させることができる。また50質量%以下とすることで粘性が適当となり印刷性が向上する。より好ましくは、10~40質量%である。
【0031】
<(B)エポキシ樹脂>
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)エポキシ樹脂を含む。
【0032】
(B)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(B)エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
【0034】
感光性樹脂組成物における(B)エポキシ樹脂のエポキシ基の当量は、(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の当量1に対して、固形分換算で0.5~2.5であることが好ましい。0.5当量以上とすることで、硬化物におけるカルボキシル基の残存を防止して、良好な耐熱性や耐アルカリ性、電気絶縁性等を得ることができる。また、上記配合量を2.5当量以下とすることで、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することを防止して、硬化物の強度等を良好に確保することができる。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、エポキシ樹脂以外の熱硬化性成分が含まれていてもよい。熱硬化性成分としては、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用のものが挙げられる。
【0036】
<(C)光重合開始剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、上記した(A)カルボキシル基含有樹脂や後記する光重合性モノマーを光重合させるために(C)光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤;ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンゾインアルキルエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プモルフォリノのアセトフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系光重合開始剤;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール系光重合開始剤;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル系光重合開始剤;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤;等を挙げることができる。これら光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
市販されるα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。
市販されるアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、IGM Resins社製のOmnirad 819等が挙げられる。
市販されるチタノセン系光重合開始剤としては、Yueyang Kimoutain Sci-tech Co.,Ltd.製のJMT-784、湖北固潤科技股分有限公司製のGR-FMT等が挙げられる。
【0038】
また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式(I)で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【化1】
【0039】
上記式中、Xは、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、炭素数1~10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5-ピロール-ジイル、4,4’-スチルベン-ジイル、4,2’-スチレン-ジイルを表し、nは0または1の整数である。
【0040】
特に、上記式中、X、Yが、それぞれ、メチル基またはエチル基であり、Zがメチルまたはフェニルであり、nが0であり、Arが、フェニレン、ナフチレン、チオフェンまたはチエニレンであるオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0041】
上記した光重合開始剤以外にも、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物等を光重合開始剤として使用することができる。
しかしながら、これらは、単独で光重合開始剤として、使用するより、上記した光重合開始剤と併用して、光重合開始助剤または増感剤として使用することが好ましい。
上記した中でも、深部硬化性という観点から、チオキサントン化合物および3級アミン化合物が好ましく、チオキサントン化合物がより好ましい。また、上記化合物2種以上を併用してもよい。
【0042】
感光性樹脂組成物における(C)光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。これにより、深部の硬化性を向上することができる。
【0043】
また、感光性樹脂組成物が、上記ベンゾイン化合物等を光重合開始助剤等として含む場合、その配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。これにより、深部の硬化性を向上することができる。
【0044】
<(D)シリカ>
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)シリカとして、ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子を含む。当該シリカゾルは、ケイ酸ナトリウム(NaSiO、「水ガラス」とも呼ばれる)を原料として中和またはイオン交換によりシリカゾルとしたものである。本発明においては、上記した特定のシリカゾルからなる平均粒子径が3~40nmの粒子を使用する。また、上記粒子の平均粒子径は、10~30nmであることが好ましい。
【0045】
なお、本発明において、シリカの平均粒子径は、一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含めた平均粒子径(D50)であり、レーザー回折式粒子径分布測定装置と動的光散乱法による測定装置により求めることができる。例えば、レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EXII(測定範囲:0.02~2,000μm)を用いればよく、測定範囲を下回る場合は、動的光散乱法による測定装置としてマイクロトラック・ベル社製のNanotrac Wave II UT151(測定範囲:0.8~6,500nm)で測定すればよい。
【0046】
このように、シリカとして、特定のシリカゾルからなる平均粒子径が3~40nmの粒子を使用することにより、感光性樹脂組成物の調製から所要期間が経過した後であっても、高い解像性を有するとともに、塗工性にも優れた感光性樹脂組成物とすることができる(換言すると、貯蔵安定性に優れた感光性樹脂組成物が得られる)。この理由は定かではないが、以下のように推察することができる。すなわち、形成した塗膜の解像性を向上させる観点からは、平均粒子径が40nm以下の小径なシリカを添加する方が好ましいが、上記したように、小径のシリカが感光性樹脂組成物中に存在すると、小径のシリカが感光性樹脂組成物中で凝集してしまい、感光性樹脂組成物中やドライフィルム中で粒として現れ、フィルム塗工した際に欠点不良を引き起こしてしまう場合があり塗工性が悪化する。本発明においては、ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子を用いることで、平均粒子径が40nm以下のシリカであっても長期間にわたって感光性樹脂組成物中での凝集を抑制することが出来るため、高い解像性を有するとともに塗工性にも優れた感光性樹脂組成物が得られる。これは、ケイ素アルコキシドから誘導されたシリカゾルを用いた従来のシリカ粒子では原料に有機基を含むために当該有機基を焼き切るための加熱が必要であるのに対し、上記のようなケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルは有機基を含まない。その製造工程の違いが、感光性樹脂組成物中でのシリカ微粒子の凝集に影響を及ぼしているものと推測できる。
【0047】
上記したシリカゾルからなる粒子の製造方法は特に限定されるものではないが、一例として、ケイ酸ナトリウムを原料としてケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラスとも呼ばれる)を調製し、ケイ酸ナトリウム水溶液に対して酸を添加することによりコロイドシリカを得て、コロイドシリカをイオン交換樹脂で処理した後、塩基を添加してpHを調整することでシリカゾルが得られる。シリカゾルからなる粒子の平均粒子径は、コロイドシリカを調製する際の水溶液濃度によって調整することができる。具体的には、特開平06-16414号公報に記載されているような公知の方法によって、所望の平均粒子径を有するシリカゾルからなる粒子を得ることができる。
【0048】
ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子は、表面処理されていることが好ましい。ここで表面処理とは、樹脂成分との相溶性を向上させるための処理のことを言う。また、シリカの表面に硬化性反応基を導入可能な表面処理が施されていてもよい。ここで、硬化性反応基とは、(A)カルボキシル基含有樹脂や(B)エポキシ樹脂などの硬化性化合物と硬化反応する基であれば特に限定されず、光硬化性反応基でも熱硬化性反応基でもよい。光硬化性反応基としては、メタクリル基、アクリル基、ビニル基、スチリル基等が挙げられ、熱硬化性反応基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、イミノ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。シリカの表面に硬化性反応基を導入する方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いて導入すればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等でシリカの表面を処理すればよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を用いることができる。なお、硬化性反応基を有しない表面処理されたシリカとしては、例えば、シリカ-アルミナ表面処理、チタネート系カップリング剤処理、アルミネート系カップリング剤処理、有機処理がされたシリカ等が挙げられる。
【0049】
ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子の平均粒子径の調整は、製造時の条件によって行うことができる。また、ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子として、平均粒子径が上記範囲にある市販品をそのまま用いてもよい。具体例として、日産化学株式会社製のスノーテックス(登録商標):(品番)ST-XS、ST-S、ST-30、ST-50-T、ST-UP、ST-PS-S、ST-PS-M、ST-OXS、ST-OS、ST-O、ST-O-40、ST-OUP、ST-PS-SO、ST-PS-MO、ST-NXS、ST-NS、ST-N、ST-N-40、ST-CXS、ST-C、ST-CM、ST-AK;日産化学株式会社製のオルガノシリカゾル:(品番)MA-ST-M、IPA-ST、IPA-ST―UP、NPC-ST-30、PGM-ST、PGM-ST―UP、DMAC-ST、NMP-ST、MEK-ST-40、MEK-ST-UP、MIBK-ST、CHO-ST-M、EAC-ST、PMA-ST、TOL-ST、MEK-AC-2140Z、PGM-AC-2140Y、PGM-AC-3140Y、MIBK-AC-2140Z、MEK-EC-2130Y、MEK-EC-2430Z、EP-M2130Y、EP-M2230Y等が挙げられる。
【0050】
ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子は、スラリー状態で配合されていてもよい。スラリー状態で配合することによって、高分散化が容易であり、凝集を防止して上記特定範囲の平均粒子径のシリカとして取り扱いが容易になる。
【0051】
ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(D)シリカとして、上記したケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子以外の、他のシリカが含まれていてもよい。他のシリカとしては、溶融シリカ、球状シリカ、無定形シリカ、結晶性シリカ等が挙げられ、なかでも球状シリカが好ましい。他のシリカの製造方法は特に限定されないが、平均粒子径の小さいシリカが得られることからゾル-ゲル法が好ましい。
【0053】
(D)シリカの配合量は、感光性樹脂組成物の固形分全量基準で5~70質量%であることが好ましく、7~60質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは10~50質量%である。(D)シリカの配合量が上記範囲内であるとより解像性が良好となる。
【0054】
<熱硬化触媒>
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)エポキシ樹脂や、他の熱硬化性成分の硬化を促進するための熱硬化触媒を含んでいてもよい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。
【0055】
上記した化合物に限られるものではなく、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基と(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基との反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用することができる。
【0056】
熱硬化触媒は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化触媒の配合量は、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性や硬化被膜の耐熱性の観点から、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して固形分換算で0.01~30質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましい。
【0057】
<無機フィラー>
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記した(D)シリカ以外にも、フィラーとして他の無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーとしては、公知のものを使用でき、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、カオリン、クレー、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、ノイブルグ珪土、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバンおよび硫酸バリウム等が挙げられる。これら無機フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、(D)シリカ以外の無機フィラーも、シリカ同様に表面処理がなされていてもよい。
【0058】
上記した(D)シリカ以外の無機フィラーは、分散性等の観点から、平均粒子径(D50)が0.1~700nmであることが好ましく、0.1~400nmであることがより好ましい。なお、平均粒子径は上記した定義と同義である。
【0059】
感光性樹脂組成物における(D)シリカ以外の無機フィラーの配合量は、(D)シリカの配合量との関係において適宜調整することができるが、通常0~20質量%の範囲で調整される。
【0060】
<光重合性モノマー>
本発明の感光性樹脂組成物は、光重合性モノマーを含んでいてもよい。光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート類;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキサイド誘導体のモノまたはジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのアルキレンオキサイド付加物あるいはε-カプロラクトン付加物等の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等のフェノール類またはこれらのアルキレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルのアクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオール等のポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくともいずれか1種から適宜選択して用いることができる。このような光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。
【0061】
光重合性モノマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。光重合性モノマーの配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、固形分換算で0.5~50質量部であることが好ましい。配合量が0.5質量部以上であると、光硬化性が良好であり、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像において、パターン形成がしやすい。また、配合量が50質量部以下であると、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られる。
【0062】
<その他の成分>
本発明による感光性樹脂組成物は、上記した成分以外にも必要に応じて、着色剤、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0063】
本発明の感光性樹脂組成物には、調製のし易さや塗布性の観点から有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
感光性樹脂組成物における有機溶剤の配合量は、感光性樹脂組成物を構成する材料に応じ適宜変更することができ、例えば、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して固形分換算で30~300質量部とすることができる。
【0065】
本発明の感光性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いてもよい。また、液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0066】
<ドライフィルム>
本発明の感光性樹脂組成物は、第一のフィルムと、当該第一のフィルム上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。本発明によるドライフィルムにおける第一のフィルムとは、基板等の基材上に、ドライフィルム上に形成された感光性樹脂組成物からなる樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には少なくとも樹脂層に接着しているものをいう。第一のフィルムは、ラミネート後の工程において、樹脂層から剥離しても良い。特に、本発明においては露光後の工程において、樹脂層から剥離することが好ましい。
【0067】
ドライフィルムを作製するには、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第一のフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、1~150μm、好ましくは5~60μmの範囲で適宜選択される。
【0068】
第一のフィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を第一のフィルムとして使用することもできる。
【0069】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0070】
第一のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0071】
第一のフィルム上に本発明の感光性樹脂組成物の樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な第二のフィルムを積層することが好ましい。本発明によるドライフィルムにおける第二のフィルムとは、基板等の基材上にドライフィルムの樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際、ラミネート前に樹脂層から剥離するものをいう。
【0072】
樹脂層から剥離可能な第二のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、第二のフィルムを剥離するときに樹脂層と第一のフィルムとの接着力よりも樹脂層と第二のフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0073】
第二のフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0074】
<硬化物>
本発明の硬化物は、上記した感光性樹脂組成物、または上記したドライフィルムの樹脂層を硬化して得られるものである。
【0075】
<プリント配線版>
本発明のプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の感光性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、第一のフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0076】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0077】
ドライフィルムの形態である場合には、基材上への貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0078】
本発明の感光性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、基材表面に感光性樹脂組成物を塗布した後、揮発乾燥を行うことが好ましい。揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより基材に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0079】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。ドライフィルムの場合には、露光後、ドライフィルムから第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより、基材上にパターニングされた硬化物を形成する。なお、ドライフィルムの形態である場合、特性を損なわない範囲であれば、露光前にドライフィルムから第一のフィルムを剥離して、露出した樹脂層を露光および現像しても良い。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【0080】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0081】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0082】
上記のようにして基材上に硬化被膜を形成した後、基材上に電子素子等の部品がはんだリフロー処理により実装される。はんだリフロー処理は従来公知の方法により行うことができる。また、はんだリフローは、例えば245~260℃で5~10秒の処理条件により行うのが一般的である。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムは、プリント配線板等の電子部品製造用として好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用される。その際、本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムを用いて、上記した方法等により硬化物を形成する。本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層が絶縁性である場合、好適には、ソルダーレジストまたはカバーレイまたは層間絶縁層を形成するために使用される。特にパッケージ基板に用いられるソルダーレジスト等の永久塗膜の形成の用途に好適に使用することができる。また、本発明による感光性樹脂組成物は、ソルダーダムを形成するために使用してもよい。
【実施例0084】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0085】
<合成例1(カルボキシル基含有樹脂Aの合成)>
温度計、窒素導入装置、アルキレンオキサイド導入装置、および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショウノールCRG951」、アイカ工業株式会社製、OH当量:119.4)119.4質量部、水酸化カリウム1.19質量部、およびトルエン119.4質量部を導入し、撹拌しながら系内を窒素置換し、昇温した。次に、プロピレンオキサイド63.8質量部を徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56質量部を添加および混合しながら水酸化カリウムを中和して、ノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液[固形分:62.1%;水酸基価:182.2mgKOH/g(307.9g/eq.)]を得た。このプロピレンオキサイド反応溶液は、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキサイドが平均1.08モル付加したものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液293.0質量部、アクリル酸43.2質量部、メタンスルホン酸11.53質量部、メチルハイドロキノン0.18質量部およびトルエン252.9質量部を、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら110℃で12時間反応させた。反応により生成した水12.6質量部を、トルエンとの共沸混合物として留出させた。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35質量部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1質量部でトルエンを置換しながら留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5質量部およびトリフェニルフォスフィン1.22質量部を、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部を徐々に加え、95~101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。
このようにして、カルボキシル基含有樹脂Aの溶液(固形分:65質量%、固形分の酸価:87.7mgKOH/g)を得た。
【0086】
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表1に記載の各成分を配合し、3本ロールミルを用いて室温にて混合することにより、同表に記載の各感光性樹脂組成物を得た。なお、表中の各数値は質量部(固形分換算量)を示す。
【0087】
なお、下記表1中の各成分*1~*11は、以下のとおりである。
*1:ノボラック型エポキシ樹脂(ダウケミカル社製、176g/eq)
*2:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート希釈溶液、固形分75質量%)
*3:オキシムエステル系光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製)
*4:アシルフォフィンオキサイド系光重合開始剤(Omnirad 819、IGM Resins社製)
*5:ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子(日産化学株式会社製、平均粒子径12nm、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート希釈品、固形分42質量%)
*6:ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子(日産化学株式会社製、平均粒子径22nm、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート希釈品、固形分40質量%)
*7:ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子(日産化学株式会社製、平均粒子径45nm、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート希釈品、固形分30質量%)
*8:球状シリカ(株式会社アドマテックス社製、平均粒子径50nm、メタクリルシラン処理、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート希釈品、固形分60質量%)
*9:ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径12nm)
*10:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
*11:ジシアンジアミド
【0088】
【表1】
【0089】
<分散安定性の評価>
実施例1~2、比較例1~3の各感光性樹脂組成物について、JIS K5101およびJIS K5600に準拠して幅90mm、長さ240mm、最大深さ25μmのグラインドゲージを用いることにより、粒状法による分散度を確認した。分散度は、20粒以上確認された区間の距離(密集粒値)から評価した。上記の評価は、各感光性樹脂組成物を調製した直後(初期)と、室温環境(25℃の暗所)下に一か月保管した後(一ヶ月後)のそれぞれで行った。
【0090】
上記のようにして得られた分散度(密集粒値)を比較し、下記の評価基準により分散安定性の評価を行った。
〇:1か月後の密集粒値が12.5以下
△:1か月後の密集粒値が12.5より大きく、20以下
×:1か月後の密集粒値が20より大きい
評価結果は、下記の表2に示されるとおりであった。
【0091】
<製膜性の評価>
上記のようにして各感光性樹脂組成物を調製した直後に、アプリケーターを用いて第一のフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム(T-60、東レ株式会社製、厚さ38μm)の表面に乾燥後の膜厚が15μmとなるように塗布し、80℃で30分間乾燥してドライフィルム(初期)を作製した。
また、調製した各感光性樹脂組成物を室温環境(25℃の暗所)下で一ヵ月間放置した後、上記と同様にしてドライフィルム(1ヶ月後)を作製した。
【0092】
上記のようにして得られた、初期および1ヶ月後のドライフィルムについて、それぞれの乾燥塗膜表面1cm×1cm角の範囲を、光学顕微鏡を用いて倍率1000倍でピンホール等の欠陥の有無を観察し、下記の評価基準により製膜性の評価を行った。
○:ピンホール等の欠陥が無い
×:ピンホール等の欠陥が有る
評価結果は、下記の表2に示されるとおりであった。
【0093】
<解像性の評価>
メック株式会社製CZ-8100を使用して前処理した銅基板に、上記<製膜性の評価>のにおいて、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにした以外は同様の手法で作製した初期および1ヶ月後のドライフィルムを、真空ラミネーターを用いてそれぞれ加熱ラミネートした。この基板を、投影露光機を用いてステップタブレット(Photec41段)を介して露光した後、第一のフィルムを剥離し、30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧2kg/cmの条件で60秒間現像を行った。この基板をUVコンベア炉にて積算露光量2000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、150℃で60分間加熱硬化した。得られた硬化膜のうち、ステップタブレットで10段の感度を示す時の開口部をSEMにより観測し、下記の判定基準により解像性の評価を行った。
○…開口径φ50umにて良好な開口径
△…開口径φ60umにて良好な開口径
×…開口径φ60umにて良好な開口径が得られない
評価結果は、下記の表2に示されるとおりであった。
【0094】
【表2】
【0095】
表2からも明らかなように、シリカとして、ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子を含む感光性樹脂組成物(実施例1,2)は、組成物を調製した後に1ヶ月経過した場合であっても、組成物中におけるシリカの分散安定性が良好であり、優れた塗工性(製膜性)を有することがわかる。
また、実施例1,2の感光性樹脂組成物は、ケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子の平均粒子径が3~40nmであるため、組成物を調製した後に1ヶ月経過した場合であっても、高い解像性を有することがわかる。
【0096】
一方、比較例1の感光性樹脂組成物は、シリカとしてケイ酸ナトリウムから誘導されたシリカゾルからなる粒子を含むため分散性と製膜性は良好であるが、その平均粒子径が40nmを超えているため、組成物を調製した後に1ヶ月経過した後には解像性がやや低下することがわかる。
また、比較例2の感光性樹脂組成物は、シリカとして平均粒子径が50nmの球状シリカを含むため、分散安定性が劣り、組成物を調製した後に1ヶ月経過した後には製膜性が劣るとともに解像性が低下することがわかる。
また、比較例3の感光性樹脂組成物は、シリカとして平均粒子径が12nmのヒュームドシリカを含むため、分散安定性にやや劣り、組成物を調製した後に1ヶ月経過した後には製膜性が劣るとともに解像性が低下することがわかる。