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特開2024-146241シリカ-チタニア複合酸化物粉末、および樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146241
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】シリカ-チタニア複合酸化物粉末、および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059025
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】青木 博男
(72)【発明者】
【氏名】沼田 昌之
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA37
4G072BB05
4G072BB13
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH28
4G072JJ03
4G072JJ46
4G072LL01
4G072LL02
4G072MM03
4G072MM40
4G072RR11
4G072TT05
4G072TT30
4G072UU09
(57)【要約】
【課題】 シリコーン樹脂やエポキシ樹脂の添加剤として好適に用いられるシリカ-チタニア複合酸化物粉末、すなわち、適度な屈折率と結晶型と比表面積を有し、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂の透明性維持と粘度特性調整の両者を付与できるシリカ-チタニア複合酸化物粉末、を提供する。
【解決手段】 以下の条件(1)~(3)を全て満足することを特徴とするシリカ-チタニア複合酸化物粉末。
(1)波長589nmでの屈折率が1.47~1.61
(2)結晶型が非晶質
(3)表面積が150~400m/g
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の条件(1)~(3)を全て満足することを特徴とするシリカ-チタニア複合酸化物粉末。
(1)波長589nmでの屈折率が1.47~1.61
(2)結晶型が非晶質
(3)表面積が150~400m/g
【請求項2】
請求項1に記載のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なシリカ-チタニア複合酸化物粉末に関する。詳しくは、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の透明性を維持しながら粘度特性を調整できる添加剤として好適に用いられるシリカ-チタニア複合酸化物粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率が1.47~1.61の範囲にあるシリコーン樹脂やエポキシ樹脂はチクソ性や増粘性といった粘度特性を調整された後、LED等の光学素子の透明封止材として用いられる。
【0003】
樹脂の粘度特性調整においては、煙霧シリカ粉末が添加剤として用いられるが、煙霧シリカの屈折率は前記樹脂の屈折率と一致しておらず、透明性が維持できないため、光学用途には不適である課題があった。
【0004】
屈折率が前記樹脂に一致する添加剤として、シリカ-チタニア複合酸化物粉末がある(特許文献1、2)。しかし、従来の当該粉末は比表面積が小さいため、粉末を構成する粒子の粒子同士の相互作用や樹脂と粒子の相互作用が弱く、粘度調整効果が発現しない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-036168号公報
【特許文献2】特開2020-070223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂の添加剤として好適に用いられるシリカ-チタニア複合酸化物粉末、すなわち、適度な屈折率と結晶型と比表面積を有し、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂の透明性維持と粘度特性調整の両者を付与できるシリカ-チタニア複合酸化物粉末、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、有機ケイ素化合物であるシロキサンと有機チタン化合物であるチタンアルコキシドとの混合ガスを、特定の条件で燃焼せしめることで、前記課題を達成したシリカ-チタニア複合酸化物粉末を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の条件を全て満足することを特徴とするシリカ-チタニア複合酸化物粉末である。
(1)波長589nmでの屈折率が1.47~1.61
(2)結晶型が非晶質
(3)比表面積が150~400m/g
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、屈折率が1.47~1.61で光学用途に用いられるシリコーン樹脂やエポキシ樹脂の範囲にあり、かつ、粒子内の組成が均一な非晶質であるため、これらの樹脂に添加したとき、樹脂の透明性を維持し、組成物として極めて高い透明性を発揮する。加えて、比表面積が150~400m/gと高いため、粒子同士の相互作用や樹脂と粒子の相互作用が強く、樹脂に添加したとき、チクソ性や増粘性といった粘度調整効果が発現する。すなわち、本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、光学用途の樹脂への添加剤、樹脂組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、
(1)波長589nmでの屈折率が1.47~1.61
(2)結晶型が非結晶
(3)比表面積が150~400m/g
の全てを満足することを特徴とする。
【0011】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末の波長589nmでの屈折率は1.47~1.61である。屈折率が当該範囲にあるため、透明封止材に用いられるシリコーン樹脂やエポキシ樹脂にこれを添加したとき、これらの樹脂は透明性を損なうことがなく、優れた性能を示す。
【0012】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末の波長589nmでの屈折率は、液浸法で測定される値である。すなわち、屈折率の温度依存性が分かっている液体を分散媒とし、これに測定対象の粉末を分散させる。その後、当該分散液の波長589nmでの透明性(透過率あるいは吸光度)の温度依存性を計測し、最も透明率が高く(吸光度が低く)なる分散液温度を求める。そして、その温度での分散媒の屈折率を当該粉末の屈折率とする。
【0013】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、その結晶型が非晶質である。結晶型はXRD測定によって特定される。XRDパターンにてピークが検出されないケースが非晶質である。シリカ-チタニア複合酸化物内に生成し得る結晶相として、アナターゼ型チタニアとルチル型チタニアが挙げられるが、シリカ-チタニア複合酸化物粉末において結晶相が確認されることは、粉末を構成する粒子の内部が分相し成分が空間的に不均一になっていることを意味する。この状態は異なる屈折率を有する粉末の混合物と同じであり、仮に屈折率が上述の範囲にあっても、透明性効果は発現しない。透明性発現には空間的に均一であること、すなわち、結晶型が非晶質であることが不可欠な特徴である。
【0014】
なお、シリカ-チタニア複合酸化物内にチタニアが分相、析出すると当該粉末が光触媒活性を示すため、これを樹脂に添加すると樹脂の劣化要因となり、その意味でも添加剤として不適である。
【0015】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物は、比表面積が150~400m/gである。比表面積は窒素吸着BET1点にて測定される。比表面積が150m/g未満であると、これを樹脂に添加したときに、粉末を構成する粒子の粒子同士の相互作用や樹脂と粒子の相互作用が弱いため、チクソ性や増粘性といった粘度調整効果が発現しない。さらに、比表面積は、粉末を構成する粒子の1次粒子径の指標になるが、150m/g未満の粉末の1次粒子径は大きいため、光を散乱し易く、透明性発現効果に劣る。一方、比表面積が400m/gを上回る場合、粉末を構成する粒子が小さく、粒子表面での曲率が大きい。曲率が大きいと、表面を構成する原子の化学結合が歪む結果、表面の反応活性が高くなり、樹脂と化学反応し易くなるため、粘度調整の添加剤としては不適になる。透明性と反応活性の点で比表面積200~350m/gがさらに好ましい態様である。
【0016】
透明性発現や粘度調整の観点で粉末は分散し易いほうが好ましい。すなわち、本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末の分散性指数nは2.5以上であることが好ましい。ここで、分散性指数nは、当該粉末を0.25質量%濃度で含有する水懸濁液の波長460nmの光に対する吸光度τ460と波長700nmの光に対する吸光度τ700を使って、n = ln(τ460 / τ700 ) / ln( 700 / 460 )で算出される指数である。分散性指数nは分散粒子径と関係があり、分散粒子径が小さくなるほどに分散性指数nは大きくなる。分散性指数nが大きい粉末は、媒体に小さい粒子として分散されやすく、透明性発現やチクソ性や増粘性の点で好適である。
【0017】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末に対する化学式はSi 1-x Ti ( 0 ≦ x ≦ 1)で表される。x = 0の場合がシリカ、x = 1の場合がチタニアに該当する。xは粉末におけるSiモル数とTiモル数の和に対するTiモル数の比、すなわち、x = Tiモル数 / ( Siモル数 + Tiモル数 )、である。本発明ではこれのmol%表示をTiモル比(mol%)と呼ぶ。すなわち、Tiモル比(mol%) = 100×Tiモル数 / ( Siモル数 + Tiモル数 )、である。Tiモル比はXRF測定で特定できる。シリカ-チタニア複合酸化物粉末の屈折率はTiモル比に比例して増加する。本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末については、概ね、屈折率 = 1.46 + 0.06 × Tiモル比(mol%) / 10、の関係が存在する。
【0018】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末の製造方法は時に制限されないが、シロキサンとチタンアルコキシドとの混合物の燃焼法、すなわち、シロキサンとチタンアルコキシドの混焼法、にて製造することができる。
【0019】
シロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0020】
チタンアルコキシドとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ-i-プロポキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラ-s-ブトキシチタン、テトラ-t-ブトキシチタン等が挙げられる。
【0021】
なお、前記シロキサンのうち一種類、あるいは複数種類と前記チタンアルコキシドのうち一種類、あるいは複数種類とを混合して使用することができる。
【0022】
シロキサンとチタンアルコキシドの混焼法においては、用いるバーナの形状は特に限定されないが、同心円多重管バーナであることが、点火の容易さや燃焼安定性等の点で好ましい。同心円多重管バーナは、中心および中心管から同心円状に広がる複数の環状管より構成される。
【0023】
以下、中心管および3本の環状管から構成される同心円4重管バーナを用いた方法を詳述する。
【0024】
前記バーナに導入するガスの概要は次の通りである。中心管にはシロキサンとチタンアルコキシドの両者を含有するガスを導入する。中心管の外側にある第1環状管には、可燃性ガスを含有するガスを導入する。第1環状管の外側にある第2環状管には支燃性ガスを導入する。第2環状管の外側にある第3環状管には空気等のガスを導入する。以下、中心管、第1環状管、第2環状管、第3環状管の順で詳しく述べる。
【0025】
まず、中心管には、気化したシロキサンとチタンアルコキシドと酸素を予め混合し導入する。この際、シロキサン、チタンアルコキシド、酸素の他に、窒素などの不活性ガスを混合してもよい。また、酸素源として空気を利用してもよい。
【0026】
シリカ-チタニア複合酸化物粉末の屈折率は、当該粉末の原料であるシロキサンとチタンアルコキシドに含有されるSiモル数とTiモル数とから算出される原料Tiモル比を指標に調整することができる。ここで、原料Tiモル比は、原料Tiモル比(mol%) = 100×原料に含有されるTiモル数/ ( 原料に含有されるSiモル数 + 原料に含有されるTiモル数 )、である。
【0027】
前記を、シロキサンとしてオクタメチルシクロテトラシロキサン(略称D)を、チタンアルコキシドとしてテトラ-i-プロポキシチタン(略称TTPO)を原料として用いたケース、すなわち、DとTTPOの混焼法を例にとって説明する。
【0028】
の1分子当たりのSi含有量は4原子、Ti含有量は0原子である。TTPOの1分子当たりのSi含有量は0原子、Ti含有量は1原子である。このことから、DとTTPOの混焼法での原料Tiモル比は、原料Tiモル比(mol%) = 100×TTPO供給モル数 / ( 4×D供給モル数 + TTPO供給モル数 )、として求めることができる。
【0029】
所望の屈折率とするためには、次のように粉末の製造を進めることができる。まず、所望の屈折率 = 1.46 + 0.06 × 原料Tiモル比(mol%) / 10、が満足されるよう、原料Tiモル比を設定する。次に、設定した原料Tiモル比を使って、原料Tiモル比(mol%) = 100×TTPO供給モル数 / ( 4×D供給モル数 + TTPO供給モル数 )、が満足されるようD供給モル数とTTPO供給モル数を製造条件として定める。そして、定めた条件にて製造を実施する。製造後、得られたシリカ-チタニア複合酸化物粉末の屈折率を測定し、所望値からずれがあれば、所望値になるまでずれに応じて原料Tiモル比の増減微調整を繰り返せばよい。
【0030】
結晶型と比表面積は、中心管の原料濃度を指標に調整できる。ここで、中心管の原料濃度は、中心管に供給されるガスのモル数をのみを使って、原料濃度(mol%) = 100×( シロキサンのモル数 + チタンアルコキシドのモル数 ) / 中心管に供給されるガスの総モル数、で求められる。
【0031】
中心管の原料濃度を希薄にするほど、比表面積は高くなる一方で、火炎温度が低温になるため、結晶型は非晶質になりにくくなる。一方、該濃度を濃厚にするほど、高火炎温度のため結晶型は非晶質になりやすい一方で、比表面積は低くなる。本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を得るには、中心管の原料濃度の範囲を0.8~1.2mol%の範囲することが好ましい。0.8mol%を下回ると、火炎温度が低くなりすぎて、チタニアが結晶相として析出、粉末を構成する粒子内部が結晶を含む分相構造となり、非晶質でなくなる。また、1.2mol%を上回ると、比表面積を150m/g以上に保てなくなる。結晶型と比表面積の両立の点で、中心管の原料濃度を0.9~1.2mol%にすることがより好ましい態様である。
【0032】
屈折率、結晶型、比表面積の調整は前記の通りであるが、これ以外にも、本発明のシリカ-チタニア複合酸化物を製造するには、さらに、中心管に供給するガスに関し、下記の2つの指標の調整が必要である。
【0033】
一つは、中心管のO濃度である。ここで、中心管のO濃度は、O濃度(mol%) = 100×中心管に供給するOモル数 / 中心管に供給する可燃性ガス以外のガスの総モル数、である。
【0034】
もう一つは、中心管のROである。ここで、ROは、RO = 中心管に供給するOモル数 / 中心管に供給する可燃性ガスが化学量論的に完全燃焼するのに必要なOモル数、である。
【0035】
特に、中心管にDとTTPOと純酸素と純窒素と空気を供給する場合について、O濃度とROの算出式を示すと、それぞれ、O濃度(mol%) = 100×( 純酸素モル数 + 0.21×空気モル数 ) / ( 純酸素モル数 + 純窒素モル数 + 空気モル数 )、RO = ( 純酸素モル数 + 0.21×空気モル数 ) / ( 16×Dモル数 + 18×TTPOモル数 )、である。ここで、1モルのDが化学量論的に完全燃焼するのに16モルのOが、1モルのTTPOが化学量論的に完全燃焼するのに18モルのOが、必要であることを使った。
【0036】
濃度は18mol%以上にする必要がある。18mol%を下回ると、燃焼反応速度が遅すぎる結果、反応が進行しない。このため、燃焼反応が完徹せず、本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を得ることができない。
【0037】
また、ROは0.2以上にする必要がある。0.2を下回ると、原料であるシロキサンとチタンアルコキシドが不完全燃焼し、固体の炭素あるいは固体の炭化物が生成し、本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を得ることができない。
【0038】
中心管の外側にある第1環状管には、燃焼補助火炎形成のため水素や炭化水素などの可燃性ガスを導入する。このとき、窒素などの不活性ガス、および/ または空気などの支燃性ガスを混合してもよい。混合比としては、例えば、可燃性ガス濃度(mol%) = 100×第1環状管に供給する可燃性ガスの総モル数 / 第1環状管に供給するガスの総モル数、を指標とすればよい。
【0039】
第1環状管における可燃性ガスの量は、火炎が形成できる程度であれば適宜設定して良いが、安定した火炎を形成しやすい点で、補助燃料比R を0.005~0.5の範囲にすることが望ましい。ここで、R = 第1環状管に供給する可燃性ガスが化学量論的に完全燃焼するのに必要なOモル数 / 中心管に供給する可燃性ガスが化学量論的に完全燃焼するのに必要なOモル数、である。R が0.5より大きい場合は格別な効果はなく、経済的に不利になる。0.005より小さい場合は燃焼が不安定となり、火炎が形成されない。また、固体の炭素あるいは固体の炭化物の発生を防ぐには、第1環状管に供給する可燃性ガスの種類は、炭素原子を含まない水素やアンモニア等の可燃性ガスが好ましく、特に水素が好ましい。
【0040】
第1環状管の外側にある第2環状管には、燃焼補助火炎形成のため酸素などの支燃性ガスを導入する。このとき、窒素などの不活性ガスを混合しても良い。混合比としては、例えば、O濃度(mol%) = 100×第2環状管に供給するOモル数 / 第2環状管に供給するガスの総モル数、を指標とすればよい。
【0041】
第2環状管における支燃性ガスの量は、火炎が形成できる程度であれば適宜設定して良いが、支燃性酸素比Rが0.1~2.0となるように供給することが望ましい。ここで、R = 第2環状管に供給するOモル数/ 中心管に供給する可燃性ガスが化学量論的に完全燃焼するのに必要なOモル数、である。2.0より大きい場合は格別な効果はなく、経済的に不利になる。0.1より小さい場合は燃焼が不安定となり、火炎が形成されない。
【0042】
第3環状管には、火炎のガス流れを整えるために、純酸素や空気や純窒素、あるいは、それらの混合ガスを供給する。経済性の点で空気の使用が好適な態様である。
【0043】
上記のようにして製造したシリカ-チタニア複合酸化物は、金属フィルター、セラミックフィルター、バグフィルター等によるフィルター分離やサイクロン等による遠心分離で燃焼ガスと分離させて、回収され、粉末として取り出される。
【0044】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、その屈折率範囲、結晶型、比表面積範囲を利用して、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂をベースとしたLED等の光学素子向け透明封止材の粘度調整添加剤として使用することができる。
【実施例0045】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例および比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
なお、以下の実施例および比較例における各種の物性測定等は以下の方法による。
【0047】
(1)屈折率測定
ベンジルアルコール、1-ペンタノール、1-ブロモナフタレンを所定の質量比で混合し、屈折率測定用の混合溶媒を調製した。
【0048】
20mlのガラス容器(アズワン製ラボランスクリュー管瓶 型番No.5)に前記混合溶媒10gを投入した後、これに、予め120℃で1晩乾燥させたシリカ-チタニア複合酸化物粉末0.2gを加えた。その後、粉末入り混合溶媒を超音波細胞破砕器(BRANSON社製Sonifier SFX250、プローブ:1/4インチ)にて出力28%で1分間分散した。分散に際し、粉末入り混合溶媒は氷水浴で冷却した。
【0049】
粉末未添加の混合溶媒の波長589nmでの屈折率を、アタゴ社製デジタル屈折計RX-7000iにて、温度範囲10~40℃で測定した。
【0050】
分散した粉末入り混合溶媒の波長589nmでの吸光度を、温度制御用フォルダーを設置した日本分光社製分光光度計V-650にて、温度範囲10~40℃で測定した。なお、測定試料は光路長10mmの石英セルに入れて測定した。最小吸光度を示す温度での粉末未添加の混合溶媒の屈折率をシリカ-チタニア複合酸化物粉末の屈折率とした。
【0051】
(2)結晶型の測定(XRD測定)
結晶型はX線回折装置(リガク社製SmartLab)を用いて測定した。測定条件はCuKα線を用い、スキャン範囲2θ = 10~90 °、スキャンスピ-ド1 °/min、ステップ幅0.02 °とした。得られたX線回折パターンにてピークが検出されないケースを非晶質と判定した。
【0052】
(3)比表面積測定
柴田科学社製BET比表面積測定装置SA-1000を用い、窒素吸着BET1点法により測定した。
【0053】
(4)Tiモル比の測定(XRF測定)
Tiモル比は蛍光X線分析装置(リガク社製ZSX Primus IV)を用いて測定した。分析装置によって得られたSi量とTi量を使って、Tiモル比(mol%) = 100×Ti量 / ( Si量 + Ti量 )にてTiモル比を算出した。なお、Tiモル比算出式のSi量とTi量は物質量(モル数)基準のものである。
【0054】
(5)分散性指数測定
測定対象の粉末の濃度0.25質量%水懸濁液を、以下のように調製した。粉末0.05gと蒸留水20mlを30mlのガラス容器(アズワン製ラボランサンプル管瓶 型番No.6)に入れ、超音波細胞破砕器(BRANSON社製Sonifier II Model 250D、プローブ:1/4インチ)のプローブチップ下面が水面下15mmになるように試料入りガラス容器を設置し、出力20W、分散時間3分の条件で粉末を蒸留水に分散し、測定試料である粉末濃度0.25質量%水懸濁液を調製した。
【0055】
得られた水懸濁液の波長460nmの光に対する吸光度τ460と波長700nmの光に対する吸光度τ700を日本分光社製分光光度計V-630により測定した。なお、測定試料は光路長10mmの石英セルに入れて測定した。
【0056】
上記で得られたτ460とτ700を使って、分散性指数nを、 n = ln(τ460/τ700 )/ln( 700/460 )、にて算出した。
【0057】
実施例1~6、比較例1~5
下記のように、DとTTPOを同心円4重管バーナで燃焼させ、シリカ-チタニア複合酸化物粉末を製造した。なお、使用した同心円4重管バーナは2種類あり、一つは第3環状管外径と中心管径の比が4.0、もう一つは6.8である。それ以外の、中心管径、第1環状管、第2環状管、第3環状管内径の寸法は両者とも同一である。
【0058】
中心管に加熱気化したDならびにTTPOと純酸素と空気と純窒素を供給した。第1環状管に水素と純窒素を供給した。第2環状管に純酸素または純酸素と空気の混合ガスを供給した。第3環状管に空気を供給した。使用バーナ、製造条件、得られたシリカ-チタニア複合酸化物粉末の物性、屈折率測定で用いた混合溶媒の組成を、表1に示す。
【0059】
【表1】