(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146265
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】検出器検知装置および測定機
(51)【国際特許分類】
G01R 31/68 20200101AFI20241004BHJP
G01B 5/28 20060101ALI20241004BHJP
G01R 31/54 20200101ALI20241004BHJP
【FI】
G01R31/68
G01B5/28 102
G01R31/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059059
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】下地 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】金松 敏裕
【テーマコード(参考)】
2F062
2G014
【Fターム(参考)】
2F062AA66
2F062CC22
2F062CC23
2F062EE01
2F062EE62
2F062FF03
2F062GG51
2F062HH04
2G014AA13
2G014AB59
2G014AB60
2G014AC08
(57)【要約】
【課題】コネクタに対する検出器の接続有無を検知できる検出器検知装置を提供する。
【解決手段】検出器検知装置は、測定機のコネクタ34を介して、コネクタ34に接続された検出器25から検出信号Vdが入力される検知回路53と、コネクタ34に対する検出器25の接続有無を判定する判定部622と、備え、検知回路53は、検出器25の基準電位よりも低い第1電位を有する第1グランドGND1と、第1グランドGND1に電気的に接続されると共にコネクタ34から検出信号Vdが入力され、入力電圧Vcと所定の閾値電圧Vthとを比較するコンパレータ533と、を有し、判定部622は、コンパレータ533から出力される二値化信号Vbに基づいて、コネクタ34に対する検出器25の接続有無を判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定機のコネクタを介して、前記コネクタに接続された検出器から検出信号が入力される検知回路と、
前記コネクタに対する前記検出器の接続有無を判定する判定部と、備え、
前記検知回路は、
前記検出器の基準電位よりも低い第1電位を有する第1グランドと、
前記第1グランドに電気的に接続されると共に前記コネクタから前記検出信号が入力され、入力電圧と所定の閾値電圧とを比較するコンパレータと、を有し、
前記判定部は、前記コンパレータから出力される二値化信号に基づいて、前記コネクタに対する前記検出器の接続有無を判定する、検出器検知装置。
【請求項2】
前記検知回路は、
前記検出器の基準電位と等しい第2電位を有する第2グランドと、
前記第1グランドまたは前記第2グランドのいずれか一方に選択的に接続され、前記コンパレータの基準電位を前記第1電位と前記第2電位との間で切り替える切替部と、をさらに有し、
前記切替部の切り替え動作を制御する切替制御部をさらに備える、請求項1に記載の検出器検知装置。
【請求項3】
前記検知回路は、前記検出信号の交流成分を減衰させることで前記コンパレータに入力される前記入力電圧を形成するフィルタをさらに有する、請求項1に記載の検出器検知装置。
【請求項4】
前記第1グランドは、接地電位を有する、請求項1に記載の検出器検知装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の検出器検知装置と、
前記コネクタと、
前記コネクタに着脱可能に接続され、測定対象の表面の変位に応じた前記検出信号を出力する前記検出器と、
前記検出器から出力される前記検出信号に基づいて、前記測定対象の表面性状を測定する測定部と、を備える、測定機。
【請求項6】
請求項2に記載の検出器検知装置を備え、
前記切替部は、前記切替制御部の制御により、前記判定部による判定時に前記第1グランドに接続され、前記測定部による測定時に前記第2グランドに接続される、請求項5に記載の測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出器検知装置および測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象に接触するスタイラスと、スタイラスの変位に応じて振幅が変化する検出信号を出力する検出器と、検出信号に基づいて測定対象の表面性状などを測定する制御部とを備える測定機が知られている(例えば特許文献1参照)。このような測定機では、測定に適したスタイラスを使用できるように、スタイラスおよび検出器を含む検出ユニットが交換可能に構成されることが一般的である。検出ユニットの交換時には、検出ユニットのプラグが測定機本体のコネクタに差し込まれることで、検出器がコネクタを介して制御部に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したような測定機では、検出ユニットのプラグがコネクタに十分に差し込まれなかったり、コネクタから意図せずに抜けかけたり等、検出器がコネクタに電気的に接続されない場合がある。このような場合、ユーザは、測定機が測定不能になる原因をすぐに把握することができず、原因の特定に時間を要する。また、測定機のメーカーは、測定機が測定不能になる原因についてユーザから問い合わせを受けるため、問い合わせ対応のための負担がかかる。
【0005】
本発明は、コネクタに対する検出器の接続有無を検知できる検出器検知装置および測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る検出器検知装置は、測定機のコネクタを介して、前記コネクタに接続された検出器から検出信号が入力される検知回路と、前記コネクタに対する前記検出器の接続有無を判定する判定部と、備え、前記検知回路は、前記検出器の基準電位よりも低い第1電位を有する第1グランドと、前記第1グランドに接続されると共に前記コネクタから前記検出信号が入力され、入力電圧と所定の閾値電圧とを比較するコンパレータと、を有し、前記判定部は、前記コンパレータから出力される二値化信号に基づいて、前記コネクタに対する前記検出器の接続有無を判定する。
このような構成によれば、コネクタに対する検出器の電気的な接続有無に応じて、コンパレータには、検出信号または第1グランドが入力される。すなわち、コネクタに対する検出器の電気的な接続有無に応じて、コンパレータに対する入力電圧に差異が生じるため、コンパレータは、コネクタに対する検出器の接続有無に応じた二値化信号を出力できる。このため、判定部は、二値化信号に基づいてコネクタに対する検出器の電気的な接続有無を判定できる。
このような検出器検知装置が測定機に搭載されることにより、測定機のコネクタに対する検出器の接続不良に起因する測定不能について、その原因を把握することが容易になる。また、測定機メーカーにおける問い合わせ対応のための負担を軽減できる。
【0007】
本発明の一形態に係る検出器検知装置において、前記検知回路は、前記検出器の基準電位と等しい第2電位を有する第2グランドと、前記第1グランドまたは前記第2グランドのいずれか一方に選択的に接続され、前記コンパレータの基準電位を前記第1電位と前記第2電位との間で切り替える切替部と、をさらに有し、前記切替部の切り替え動作を制御する切替制御部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、検知回路の接続先を第1グランドと第2グランドとの間で切り替えることにより、検知機能をON/OFFできる。検出器検知装置が搭載された測定機では、測定時に切替部を第2グランドに接続することで検知機能がOFFされ、測定に対するノイズ等の影響を抑制できる。
【0008】
本発明の一形態に係る検出器検知装置において、前記検知回路は、前記検出信号の交流成分を減衰させることで前記コンパレータに入力される前記入力電圧を形成するフィルタをさらに有することが好ましい。
このような構成によれば、検出器の接続有無による入力電圧の差が明確になるため、コンパレータに入力する閾値電圧の設定が容易となる。また、検出器の電気的な接続有無をより正確に判定できる。
【0009】
本発明の一形態に係る検出器検知装置において、前記第1グランドは、接地電位を有することが好ましい。
このような構成によれば、検出器の接続有無に応じたコンパレータの入力電圧の差異を発生可能にしつつ、検知回路において消費される電力を抑制できる。
【0010】
本発明の一形態に係る測定機は、上述のいずれかの検出器検知装置と、前記コネクタと、前記コネクタに着脱可能に接続され、測定対象の変位に応じた前記検出信号を出力する前記検出器と、前記検出器から出力される前記検出信号に基づいて、前記測定対象の表面性状を測定する測定部と、を備える。
このような構成によれば、上述した検出器検知装置の効果と同様の効果を奏する。
【0011】
本発明の一形態に係る測定機において、前記切替部は、前記切替制御部の制御により、前記判定部による判定時に前記第1グランドに接続され、前記測定部による測定時に前記第2グランドに接続されることが好ましい。
このような構成では、必要に応じて検知機能がON/OFFされることにより、検出器の有無を問題なく判定しつつ、測定に対するノイズの影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の検出器検知装置を含む表面性状測定機を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態の検知回路および制御部を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態の検出器検知方法を説明するフローチャートである。
【
図4】第1実施形態の検知回路を示す模式図であって、検出器がコネクタに接続されている場合を説明する図である。
【
図5】(A)は検出信号を示すフラフであり、(B)~(E)は
図4の検知回路におけるA点~E点の電圧を示すグラフである。
【
図6】第1実施形態の検知回路を示す模式図であって、検出器がコネクタに接続されていない場合を説明する図である。
【
図7】(A)~(D)は
図6の検知回路におけるA点~D点の電圧を示すグラフである。
【
図8】(A)~(D)は、比較例の検知回路において
図7に対応するA点~D点の電圧を示すグラフである。
【
図9】第2実施形態の表面性状測定機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態に係る検出器検知装置1について
図1~
図7を参照して説明する。本実施形態の検出器検知装置1は、表面性状測定機10に搭載されて使用されるものであり、表面性状測定機10における検出器25の電気的な接続有無を判定する。
【0014】
[表面性状測定機]
まず、本実施形態の表面性状測定機10の全体構成について簡単に説明する。表面性状測定機10は、
図1に示すように、測定対象の表面の変位を検出する検出ユニット2と、検出ユニット2を移動させる駆動ユニット3と、ユーザインタフェイス4と、各種制御を行う制御ユニット5と、を備える。この表面性状測定機10は、測定対象の表面に沿って当該表面の上下方向(Z方向)の変位を測定することで、測定対象の表面性状を測定することができる。
【0015】
検出ユニット2は、支点を中心に揺動可能なアーム21と、アーム21の先端に突設されたスタイラス23(触針)と、アーム21の後端に設けられたコア24と、コア24のZ方向の変位量を検出する検出器25と、検出器25に電気的に接続されたプラグ26とを備える。
【0016】
本実施形態の検出器25は、
図2に示すように、差動コイルとして構成され、Z方向に並んで和動接続された2つのコイル251,252を備える。2つのコイル251,252の間の中点25cには、信号出力線Ldが接続されている。
コア24がZ方向に移動すると、コア中心24cと2つのコイル251,252の間の中点25cとの間のZ方向のギャップDが変化する。後述する発振回路51から発生する交流電圧が2つのコイル251,252の両端に印加されると、このギャップDに対応して、2つのコイル251,252のインピーダンス(インダクタンス)がそれぞれ変化し、2つのコイル251,252の誘導電圧に電圧差が生じる。検出器25は、ギャップDに応じて振幅が変化する交流電圧を検出信号Vdとして信号出力線Ldに出力する。
【0017】
プラグ26は、
図2では省略されるが、検出器25のコイル251,252および中点25cのそれぞれに接続される複数の端子を含む。
図1に示すように、プラグ26がコネクタ34に十分に差し込まれた状態では、プラグ26の各端子は、コネクタ34を介して、制御ユニット5に電気的に接続される。
なお、本実施形態のプラグ26は、コネクタ34に対する脱着が可能である。このため、本実施形態の表面性状測定機10では、検出ユニット2を交換することができる。
【0018】
駆動ユニット3は、モータ31と、モータ31に連結された送りねじ機構32と、送りねじ機構32によってZ方向に直交する測定方向(X方向)に移動するスライド部33と、スライド部33に支持されたコネクタ34と、駆動ユニット3を収容するケース35とを備える。
送りねじ機構32は、公知の構成を有するものであり、モータ31の動力によってコネクタ34をX方向に移動させる。また、送りねじ機構32には、X方向におけるスライド部33の移動量を検出するためのエンコーダが設けられている。
【0019】
コネクタ34は、検出ユニット2を保持可能に構成される。送りねじ機構32により、スライド部33がX方向に移動する際、コネクタ34および検出ユニット2はスライド部33と一体にX方向に移動する。また、コネクタ34は、制御ユニット5から延びる各配線群Lcに接続されている。
【0020】
ユーザインタフェイス4は、各種情報を表示する表示部41と、ユーザによる入力操作を受け付ける操作部42とを有する。操作部42は、操作ボタンであってもよいし、表示部41と共に構成されるタッチディスプレイでもよい。
【0021】
[制御ユニット]
制御ユニット5は、
図2に示すように、回路部50および制御部60を備える。回路部50は、発振回路51、平衡トランス52、検知回路53、信号処理回路54を備える。なお、図示を省略するが、制御ユニット5は、回路部50が搭載された基板を有し、この基板には、フレームに接地された第1グランドGND1と、各種回路の基準電位となるアナロググランドである第2グランドGND2とが形成されている。本実施形態において、第1グランドGND1の電位(第1電位)は0Vであり、第2グランドGND2の電位(第2電位)は、0Vよりも大きい所定電位(例えば+2.5V)である。
【0022】
発振回路51は、互いに逆相の正弦波である交流電圧を発生する。発振回路51により発生された交流電圧は、平衡トランス52およびコネクタ34を介して検出器25の両端に印加される。平衡トランス52は第2グランドGND2に接続されており、検出器25の基準電位は、第2グランドGND2の電位となる。
【0023】
検知回路53は、検出器25と信号処理回路54との間を接続する信号出力線Ldに接続される。この検知回路53は、交流増幅器531、フィルタ532、コンパレータ533、および、切替部534を有する。
【0024】
交流増幅器531は、検出信号Vdの振幅を増幅する。なお、交流増幅器531は、検知回路53および信号処理回路54に共有される。換言すると、信号出力線Ldは、交流増幅器531の下流側において、信号処理回路54に向かう主配線と、フィルタ532に向かう分岐配線とに分かれる。
【0025】
フィルタ532は、交流増幅器531の下流側の分岐配線に接続され、交流増幅器531で増幅された検出信号Vdの交流成分を減衰させる。このフィルタ532としては、高周波成分を取り除くローパスフィルタなどを利用できる。
【0026】
コンパレータ533は、フィルタ532から入力される入力電圧Vcと所定の閾値電圧Vthとを比較し、比較結果を二値化信号Vbとして出力する。例えば、コンパレータ533は、入力電圧Vcが閾値電圧Vth以上である場合、二値化信号VbとしてHIGH信号(以下H信号)を出力する。また、コンパレータ533は、入力電圧Vcが閾値電圧Vthよりも小さな場合、二値化信号VbとしてLOW信号(以下L信号)を出力する。
なお、閾値電圧Vthは、図示が省略された閾値電圧発生器によりコンパレータ533に入力される。この閾値電圧Vthは、例えば、第1グランドGND1の電位(0V)と、第2グランドGND2の電位(+2.5V)との間に設定されればよく、第2グランドGND2の電位の半分程度であることが好ましい。
【0027】
切替部534は、2入力1出力のマルチプレクサとして構成される。切替部534は、第1グランドGND1に接続された第1入力端子534Aと、第2グランドGND2に接続された第2入力端子534Bと、コネクタ34と交流増幅器531との間の配線に接続された出力端子534Cとを備える。切替部534は、後述の制御部60から入力される制御信号Sに基づいて、第1入力端子534Aまたは第2入力端子534Bの一方を出力端子534Cに接続する。これにより、切替部534は、検知回路53の基準電位を、第1グランドGND1の電位と、第2グランドGND2の電位との間で切り替えることができる。
【0028】
信号処理回路54は、交流増幅器531の下流側の本配線に接続され、公知の表面性状測定機の信号処理回路と同様の構成を有する。例えば、信号処理回路54は、検出信号Vdから直流信号である変位信号Voutを形成する回路、ノイズフィルタおよびアナログデジタル変換回路などを含み、信号処理後の変位信号Voutを制御部60に出力する。
【0029】
制御部60は、メモリ等により構成される記憶部61と、マイクロプロセッサ等により構成される演算処理部62と、を有する。演算処理部62は、記憶部61に記憶されたプログラムを読み込み実行することで、切替制御部621、判定部622、通知部623および測定部624として機能する。
切替制御部621は、切替部534の切り替え動作を制御する。
判定部622は、検知回路53から入力される二値化信号Vbに基づいて、コネクタ34に対する検出器25の電気的な接続有無を判定する。
通知部623は、判定部622による判定結果を表示部41などに出力する。
測定部624は、信号処理回路54から入力される変位信号Voutと、駆動ユニット3のエンコーダから入力されるX方向の移動量とに基づいて、測定対象の表面性状を算出する。
なお、上述した構成のうち、検知回路53および判定部622は、検出器検知装置1を構成している。
【0030】
[検出器検知方法]
本実施形態の表面性状測定機10における検出器検知方法について、
図3のフローチャートを参照して説明する。例えば、表面性状測定機10は、電源が入力されたとき(または、ユーザの操作によって測定処理を行う旨の指示を受け付けたとき)、
図3のフローチャートを開始する。
【0031】
まず、切替制御部621は、切替部534に対して制御信号Sを出力し、切替部534の出力端子534Cを第1入力端子534Aに接続させる(
図4参照)。これにより、切替部534が第1グランドGND1に接続され、検知回路53の基準電位は、第1グランドGND1の電位(0V)となる(ステップS1)。これにより検知機能がONになる。
【0032】
次に、判定部622は、検知回路53から入力される二値化信号Vbに基づいて、検出器25がコネクタ34に電気的に接続されているか否かを判定する(ステップS2)。
【0033】
例えば、
図4は、検出器25がコネクタ34に電気的に接続されている状態を示す。
図4では、説明のために、検知回路53内に計測点A~Dが設定される。
図5(A)~
図5(E)の各グラフは、電源入力時点からの検出信号Vdの電圧(例えば
図4中の検出信号と記載された計測点の電圧)、および、
図4中の計測点A~Dにおける電圧を示す。
検出器25がコネクタ34に電気的に接続されている場合、検出器25は、第2グランドGND2を基準電位とする交流成分を含んだ検出信号Vdを出力する(
図5(A)参照)。検知回路53には、検出器25から検出信号Vdが入力され(
図5(B)参照)、この検出信号Vdは、交流増幅器531により振幅を増幅された後(
図5(C)参照)、フィルタ532により交流成分を減衰される(
図5(D)参照)。ここで、コンパレータ533には、交流成分を減衰された検出信号Vdの電圧が入力電圧Vcとして入力される。この入力電圧Vcは、検出信号Vdの基準電位、すなわち第2グランドGND2にほぼ等しいため、閾値電圧Vthよりも高くなる(
図5(D)参照)。コンパレータ533は、入力電圧Vcと閾値電圧Vthとを比較することで、二値化信号VbとしてH信号を出力する(
図5(E)参照)。判定部622は、H信号に基づいて、検出器25がコネクタ34に電気的に接続されていると判定する(ステップS2;YES)。
【0034】
ステップS2でYESと判定された場合、切替制御部621は、切替部534に対して制御信号Sを出力し、切替部534の出力端子534Cを第2入力端子534Bに接続させる(
図2参照、ステップS3)。これにより、切替部534が第2グランドGND2に接続され、検知回路53の基準電位は、第2グランドGND2の電位(+2.5V)となる。これにより検知機能がOFFされることになる。
その後、測定部624は、ユーザからの指示に従って測定処理を行う(ステップS4)。以上により、
図3のフローチャートが終了する。
【0035】
一方、
図6は、プラグ26がコネクタ34に十分に差し込まれていない等の何等かの原因により、検出器25がコネクタ34に電気的に接続されていない場合を示す。
図6では、
図4と同様、説明のために、検知回路53内に計測点A~Dが設定される。
図7(A)~
図7(D)の各グラフは、計測点A~Dにおける電圧を示す。
検出器25がコネクタ34に電気的に接続されていない場合、検知回路53に入力される検出信号Vdが存在しない。このため、検知回路53内の計測点A~測定点Cにおける電圧は、検知回路53の基準電位、すなわち第1グランドGND1の電位(0V)となる(
図7(A)~(C)参照)。ここで、コンパレータ533には、第1グランドGND1の電位(0V)が入力電圧Vcとして入力される。この入力電圧Vcは、閾値電圧Vthよりも小さい(
図7(C)参照)。よって、コンパレータ533は、入力電圧Vcと閾値電圧Vthとを比較することで、二値化信号VbとしてL信号を出力する(
図7(D)参照)。判定部622は、L信号に基づいて、検出器25がコネクタ34に電気的に接続されていないと判定する(ステップS2;NO)。
【0036】
ステップS2でNOと判定された場合、切替制御部621は、切替部534に対して制御信号Sを出力し、切替部534の出力端子534Cを第2入力端子534Bに接続させる(
図2参照、ステップS5)。これにより、切替部534が第2グランドGND2に接続され、検知回路53の基準電位は、第2グランドGND2の電位(+2.5V)となる。これにより検知機能がOFFされることになる。
【0037】
その後、通知部623は、検出器25がコネクタ34に電気的に接続されていない旨の通知を表示部41などに出力する(ステップS5)。これにより、ユーザは、検出器25が接続不良状態であることを知ることができる。以上により、
図3のフローチャートが終了する。
【0038】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の検出器検知装置1は、上述したように、表面性状測定機10のコネクタ34を介して、コネクタ34に接続された検出器25から検出信号Vdが入力される検知回路53と、コネクタ34に対する検出器25の接続有無を判定する判定部622と、備え、検知回路53は、検出器25の基準電位よりも低い第1電位を有する第1グランドGND1と、第1グランドGND1に接続されると共にコネクタ34から検出信号Vdが入力され、入力電圧Vcと所定の閾値電圧Vthとを比較するコンパレータ533と、を有し、判定部622は、コンパレータ533から出力される二値化信号Vbに基づいて、コネクタ34に対する検出器25の接続有無を判定する。
このような構成によれば、複雑なアルゴリズムを必要としない簡単な構成により、コネクタ34に対する検出器25の電気的接続の有無を判定することができる。
【0039】
ここで、検知回路53の基準電位が第2グランドGND2の電位に等しい場合を比較例とする。このような比較例は、本実施形態の検知機能がOFFされた状態に相当し、検出器25の接続有無によっては、コンパレータ533に入力される入力電圧Vcがほぼ変化しない。例えば、検出器25がコネクタ34に電気的に接続されている場合、検知回路53内の計測点A~測定点Cにおける電圧は、
図5と同様であるが、検出器25がコネクタ34に電気的に接続されていない場合、検知回路53内の計測点A~測定点Cにおける電圧は、
図8に示すようになる。特に、
図8(C)に示すように、コンパレータ533に入力される入力電圧Vcは、第2グランドGND2の電位に等しくなるため、閾値電圧Vthよりも高くなる。よって、コンパレータ533は、検出器25がコネクタ34に電気的に接続されている場合と同様にH信号を出力する(
図8(D)参照)。よって、比較例において、判定部622は、検出器25がコネクタ34に電気的に接続されていないことを判定できない。
【0040】
一方、本実施形態では、検知機能がONされた状態において、検知回路53の基準電位が第1グランドGND1の電位である。これにより、コネクタ34に対する検出器25の電気的な接続有無に応じてコンパレータ533に対する入力電圧Vcに差異が生じるため、コンパレータ533は、コネクタ34に対する検出器25の電気的な接続有無に応じた二値化信号Vbを出力できる。このため、判定部622は、二値化信号Vbに基づいてコネクタ34に対する検出器25の電気的な接続有無を判定できる。
【0041】
また、本実施形態の検出器検知装置1を組み込んだ表面性状測定機10では、コネクタ34に対する検出器25の接続不良に起因する測定不能について、その原因を把握することが容易になる。また、測定機メーカーにおける問い合わせ対応のための負担を軽減できる。
さらに、本実施形態の検出器検知装置1は、上述したように、複雑なアルゴリズムを必要としないため、少ない部品点数によって実現される。このため、小型化された表面性状測定機10に対して検出器検知装置1を容易に組み込むことができる。
【0042】
本実施形態において、検知回路53は、検知回路53の基準電位として検出信号Vdの基準電位と等しい第2電位を供給する第2グランドGND2と、第1グランドGND1または第2グランドGND2のいずれか一方に選択的に接続され、検知回路53の基準電位を第1電位と第2電位との間で切り替える切替部534と、を備え、演算処理部62は、切替部534の切り替える動作を制御する切替制御部621をさらに備える。すなわち、本実施形態の検出器検知装置1は、検知回路53の接続先を第1グランドGND1と第2グランドGND2との間で切り替えることにより、検知機能をON/OFFできるように構成されている。
例えば、検出器25の接続有無の判定時、切替部534が第1グランドGND1に接続されることで、検知機能がONされる。これにより、信号出力線Ldを流れる検出信号Vdを利用して検出器25の接続を検知できる。
また、測定時、切替部534が第2グランドGND2に接続されることで、検知機能がOFFされる。これにより、測定精度への影響を抑えることができる。具体的には、信号出力線Ldに接続される検知回路53の基準電位が検出器25の基準電位(=第2グランドGND2)と等しくなることにより、信号出力線Ldを流れる検出信号Vdに対するノイズの影響を低減することができる。
したがって、本実施形態では、必要に応じて検知機能をON/OFFすることにより、判定および測定の各処理を問題なく行うことができる。
【0043】
本実施形態の検知回路53は、検出信号Vdの交流成分を減衰させることでコンパレータ533に入力される入力電圧Vcを形成するフィルタ532をさらに有する。
このような構成によれば、検出器25の接続有無による入力電圧Vcの差が明確になるため、コンパレータ533に入力する閾値電圧Vthの設定が容易となる。また、検出器25の電気的な接続有無をより正確に判定できる。
【0044】
本実施形態において、第1グランドGND1は、接地されている。このような構成によれば、検出器25の接続有無に応じた入力電圧Vcの差異を発生可能にしつつ、検知回路53において消費される電力を抑制できる。このような構成は、特に、表面性状測定機10がハンディタイプの電池式である場合に有効である。
【0045】
本実施形態において、検知回路53は、交流増幅器531の下流側に接続されている。仮に、検知回路53が交流増幅器531の上流側に接続された場合、検知回路53から信号出力線Ldに加わるノイズなどの影響が交流増幅器531によって増幅されてしまう。一方、本実施形態では、検知回路53が交流増幅器531の下流側に接続されていることで、検知回路53から信号出力線Ldに加わるノイズ等の影響が増幅されないため、当該影響を最小限に抑えることができる。
【0046】
以上の第1実施形態では、インダクタンス方式の検出器25に本発明を適用する場合を説明したが、本発明はLVDT方式の検出器にも適用可能であり、その一例を以下の第2実施形態で説明する。
【0047】
[第2実施形態]
第2実施形態の表面性状測定機10について説明する。第2実施形態の表面性状測定機10は、制御ユニット5Aの構成以外、第1実施形態とほぼ同様の構成を備える。以下では、第1実施形態と同様の構成には同一符号を利用し、その説明を省略または簡略化する。
【0048】
図9に示すように、第2実施形態に係る制御ユニット5Aは、差動トランスとして構成された検出器25Aを有する。この検出器25Aは、Z方向に並んで差動接続された2つの2次コイル253,254を備える。また、2次コイル253,254には、信号出力線Ld1,Ld2が接続されている。
【0049】
発振回路51から発生する交流電圧が1次コイル55に印加されると、コア24のZ方向の変位に応じて、2次コイル253,254の誘導電圧に電圧差(差動電圧)が生じる。検出器25Aは、コア24の変位に応じて振幅が変化する検出信号Vd1,Vd2を信号出力線Ld1,Ld2に出力する。
【0050】
第2実施形態において、第1実施形態で説明した検知回路53は、信号出力線Ld1,Ld2のいずれか一方に接続されればよい。例えば、
図9は、信号出力線Ld2に接続された検知回路53を例示している。また、第2実施形態における検出器25の検知方法は、第1実施形態と同様である。
【0051】
このような第2実施形態においても、第1実施形態と同様、複雑なアルゴリズムを必要としない簡単な構成により、コネクタ34に対する検出器25Aの電気的な接続有無を判定することができる。
【0052】
[変形例]
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形および改良等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0053】
上記各実施形態において、第1グランドGND1は、接地電位(0V)であることに限定されず、第2グランドGND2の電位よりも低い任意の電位を有してもよい。
【0054】
上記各実施形態において、検知回路53は、交流増幅器531を有さなくてもよい。例えば、検知回路53に入力される検出信号Vdが増幅されずに、フィルタ532に入力されてもよい。
また、上記各実施形態において、検知回路53は、フィルタ532を有さなくてもよい。このような場合、検出信号Vdに由来する入力電圧Vcの振幅の下限と、第1グランドGND1の電位との間に閾値電圧Vthが設定されていれば、コンパレータ533は、二値化信号Vbを問題なく出力できる。
【0055】
上記各実施形態において、切替部534は、測定部624による測定時、接続先を第2グランドGND2に切り替えず、第1グランドGND1に接続されたままでもよい。換言すると、検知回路53は、切替部534を含まず、第1グランドGND1に接続されるものであってもよい。このような変形例では、測定部624による測定時、検出器25の基準電位と第1グランドGND1との電位差によるノイズが生じるが、高度な精度を要求しない測定であれば測定可能である。
【0056】
上記各実施形態では、検出器検知装置1を表面性状測定機10に利用する場合について説明しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の検出器検知装置は、検出器が脱着されるような任意の測定機に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…検出器検知装置、10…表面性状測定機、2…検出ユニット、21…アーム、23…スタイラス、24…コア、24c…コア中心、25,25A…検出器、25c…中点、251…コイル、252…コイル、253…2次コイル、254…2次コイル、26…プラグ、3…駆動ユニット、31…モータ、32…送りねじ機構、33…スライド部、34…コネクタ、35…ケース、4…ユーザインタフェイス、41…表示部、42…操作部、5,5A…制御ユニット、50…回路部、51…発振回路、52…平衡トランス、53…検知回路、531…交流増幅器、532…フィルタ、533…コンパレータ、534…切替部、534A…第1入力端子、534B…第2入力端子、534C…出力端子、54…信号処理回路、55…1次コイル、60…制御部、61…記憶部、62…演算処理部、621…切替制御部、622…判定部、623…通知部、624…測定部、GND1…第1グランド、GND2…第2グランド、Ld,Ld1,Ld2…信号出力線、S…制御信号、Vb…二値化信号、Vc…入力電圧、Vd,Vd1,Vd2…検出信号、Vout…変位信号、Vth…閾値電圧。