(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146299
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】加工状態検出装置、加工状態検出方法、プログラム、ダイシング装置及び学習モデル生成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241004BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20241004BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20241004BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20241004BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/78 F
B24B49/14
B24B55/02 D
B24B27/06 M
B23Q17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059106
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】篠原 大也
(72)【発明者】
【氏名】清水 翼
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C047
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C029EE01
3C034AA13
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3C158DA17
5F063AA13
5F063AA48
5F063BA45
5F063BA48
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5F063DE11
5F063DE32
5F063DE33
5F063FF22
5F063FF57
(57)【要約】
【課題】相互に関連する複数の温度要因の変化に対する加工状態の検出を実現し得る、加工状態検出装置、加工状態検出方法、プログラム、ダイシング装置及び学習モデル生成方法を提供する。
【解決手段】加工状態検出装置(140)は、環境温度履歴、ブレード供給水温度履歴及び発熱体供給水温度履歴を取得し(150)、環境温度履歴特徴量、ブレード供給水温度履歴特徴量及び発熱体供給水温度履歴特徴量を導出し(152)、環境温度履歴特徴量、ブレード供給水温度履歴特徴量及び発熱体供給水温度履歴特徴量を含む温度履歴特徴量に基づいて加工誤差を予測する際に(154)、温度履歴特徴量と加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、温度履歴特徴量が入力されると加工誤差の予測値を出力する学習モデル(158)が適用される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードを用いて加工対象物の加工を施す際の加工状態を検出する加工状態検出装置であって、
加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴を取得する環境温度履歴取得部と、
前記ブレードへ供給されるブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴を取得するブレード供給水温度履歴取得部と、
前記加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水の温度履歴を表す発熱体供給水温度履歴を取得する発熱体供給水温度履歴取得部と、
前記環境温度履歴の特徴を表す環境温度履歴特徴量、前記ブレード供給水温度履歴の特徴を表すブレード供給水温度履歴特徴量及び前記発熱体供給水温度履歴の特徴を表す発熱体供給水温度履歴特徴量を導出する温度履歴特徴量導出部と、
前記環境温度履歴特徴量、前記ブレード供給水温度履歴特徴量及び前記発熱体供給水温度履歴特徴量を含む温度履歴特徴量に基づいて、加工誤差を予測する加工誤差予測部と、
を備え、
前記加工誤差予測部は、前記温度履歴特徴量と前記加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、前記温度履歴特徴量が入力される場合に前記加工誤差を出力する学習モデルが適用される加工状態検出装置。
【請求項2】
加工状態の履歴を表す加工状態履歴を取得する加工状態履歴取得部と、
前記加工状態履歴の特徴量を導出する加工状態履歴特徴量導出部と、
を備え、
前記加工誤差予測部は、前記温度履歴特徴量に加工状態履歴特徴量を加味して、前記加工誤差を予測する請求項1に記載の加工状態検出装置。
【請求項3】
前記温度履歴特徴量導出部は、
前記環境温度履歴特徴量として、前記加工環境の温度及び単位時間あたりの前記加工環境の温度の変化量を取得し、
前記ブレード供給水温度履歴特徴量として、前記ブレード供給水の温度及び単位時間あたりの前記ブレード供給水の温度の変化量を取得し、
前記発熱体供給水温度履歴特徴量として、前記発熱体供給水の温度及び単位時間あたりの前記発熱体供給水の温度の変化量を取得し、
前記学習モデルは、
前記加工環境の温度と単位時間あたりの前記加工環境の温度の変化量との組み合わせ、前記ブレード供給水の温度と単位時間あたりの前記ブレード供給水の温度の変化量との組み合わせ及び前記発熱体供給水の温度と単位時間あたりの前記発熱体供給水の温度の変化量との組み合わせを入力とし、前記加工誤差を出力とする学習を実施して生成される請求項1に記載の加工状態検出装置。
【請求項4】
前記温度履歴特徴量導出部は、
前記環境温度履歴特徴量として、前記加工環境の温度、単位時間あたりの前記加工環境の温度の変化量及び前記加工環境の温度の変化の向きを取得し、
前記ブレード供給水温度履歴特徴量として、前記ブレード供給水の温度、単位時間あたりの前記ブレード供給水の温度の変化量及び前記ブレード供給水の温度の変化の向きを取得し、
前記発熱体供給水温度履歴特徴量として、前記発熱体供給水の温度、単位時間あたりの前記発熱体供給水の温度の変化量及び前記発熱体供給水の温度の変化の向きを取得し、
前記学習モデルは、
前記加工環境の温度と、単位時間あたりの前記加工環境の温度の変化量と、前記加工環境の温度の変化の向きとの組み合わせ、前記ブレード供給水の温度と、単位時間あたりの前記ブレード供給水の温度の変化量と、前記ブレード供給水の温度の変化の向きとの組み合わせ及び前記発熱体供給水の温度と、単位時間あたりの前記発熱体供給水の温度の変化量と、前記発熱体供給水の温度の変化の向きとの組み合わせを入力とし、前記加工誤差を出力とする学習を実施して生成される請求項1に記載の加工状態検出装置。
【請求項5】
前記温度履歴特徴量導出部は、
前記環境温度履歴特徴量として、前記加工環境の温度及び前記加工環境の温度の積算を取得し、
前記ブレード供給水温度履歴特徴量として、前記ブレード供給水の温度及び前記ブレード供給水の温度の積算を取得し、
前記発熱体供給水温度履歴特徴量として、前記発熱体供給水の温度及び前記発熱体供給水の温度の積算を取得し、
前記学習モデルは、
前記加工環境の温度と、前記加工環境の温度の積算との組み合わせ、前記ブレード供給水の温度と、前記ブレード供給水の温度の積算との組み合わせ及び前記発熱体供給水の温度と、前記発熱体供給水の温度の積算との組み合わせを入力とし、前記加工誤差を出力とする学習を実施して生成される請求項1に記載の加工状態検出装置。
【請求項6】
前記加工に適用される加工条件を取得する加工条件取得部と、
加工条件ごとの前記学習を実施して生成された複数の第1学習モデルの中から、加工条件に応じて、前記加工誤差予測部に適用される学習モデルを選択する学習モデル選択部と、
を備えた請求項1から5のいずれか一項に記載の加工状態検出装置。
【請求項7】
ブレードを用いて加工対象物の加工を施す際の加工状態を検出する加工状態検出方法であって、
制御装置が、
加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴を取得する環境温度履歴取得工程と、
前記ブレードへ供給されるブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴を取得するブレード供給水温度履歴取得工程と、
前記加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水の温度履歴を表す発熱体供給水温度履歴を取得する発熱体供給水温度履歴取得工程と、
前記環境温度履歴の特徴を表す環境温度履歴特徴量、前記ブレード供給水温度履歴の特徴を表すブレード供給水温度履歴特徴量及び前記発熱体供給水温度履歴の特徴を表す発熱体供給水温度履歴特徴量を導出する温度履歴特徴量導出工程と、
前記環境温度履歴特徴量、前記ブレード供給水温度履歴特徴量及び前記発熱体供給水温度履歴特徴量を含む温度履歴特徴量に基づいて、加工誤差を予測する加工誤差予測工程と、
を実行し、
前記加工誤差予測工程は、前記温度履歴特徴量と前記加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、前記温度履歴特徴量が入力される場合に前記加工誤差を出力する学習モデルが適用される加工状態検出方法。
【請求項8】
ブレードを用いて加工対象物の加工を施す際の加工状態を検出するプログラムであって、
制御装置が、
加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴を取得する環境温度履歴取得機能、
前記ブレードへ供給されるブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴を取得するブレード供給水温度履歴取得機能、
前記加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水の温度履歴を表す発熱体供給水温度履歴を取得する発熱体供給水温度履歴取得機能、
前記環境温度履歴の特徴を表す環境温度履歴特徴量、前記ブレード供給水温度履歴の特徴を表すブレード供給水温度履歴特徴量及び前記発熱体供給水温度履歴の特徴を表す発熱体供給水温度履歴特徴量を導出する温度履歴特徴量導出機能、及び
前記環境温度履歴特徴量、前記ブレード供給水温度履歴特徴量及び前記発熱体供給水温度履歴特徴量を含む温度履歴特徴量に基づいて、加工誤差を予測する加工誤差予測機能を実現するプログラムであって、
前記加工誤差予測機能は、前記温度履歴特徴量と前記加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、前記温度履歴特徴量が入力される場合に前記加工誤差を出力する学習モデルが適用されるプログラム。
【請求項9】
ブレードを用いて加工対象物を加工する加工部と、
前記加工対象物の加工状態を検出する加工状態検出部と、を備えたダイシング装置であって、
前記加工状態検出部は、
加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴を取得する環境温度履歴取得部と、
前記ブレードへ供給されるブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴を取得するブレード供給水温度履歴取得部と、
前記加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水の温度履歴を表す発熱体供給水温度履歴を取得する発熱体供給水温度履歴取得部と、
前記環境温度履歴の特徴を表す環境温度履歴特徴量、前記ブレード供給水温度履歴の特徴を表すブレード供給水温度履歴特徴量及び前記発熱体供給水温度履歴の特徴を表す発熱体供給水温度履歴特徴量を導出する温度履歴特徴量導出部と、
前記環境温度履歴特徴量、前記ブレード供給水温度履歴特徴量及び前記発熱体供給水温度履歴特徴量を含む温度履歴特徴量に基づいて、加工誤差を予測する加工誤差予測部と、
を備え、
前記加工誤差予測部は、前記温度履歴特徴量と前記加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、前記温度履歴特徴量が入力される場合に前記加工誤差を出力する学習モデルが適用されるダイシング装置。
【請求項10】
前記加工誤差予測部から出力される加工誤差に基づき、前記加工部の補正の要否を判定する判定部を備えた請求項9に記載のダイシング装置。
【請求項11】
前記加工誤差予測部は、規定の期間が経過した後の加工誤差を予測し、
前記判定部は、前記予測された加工誤差が規定のしきい値を超える場合に、前記加工部の補正が必要である旨の判定結果を導出する請求項10に記載のダイシング装置。
【請求項12】
前記加工誤差予測部は、前記加工誤差の単位時間あたりの変化量及び前記加工誤差の変化の方向に基づいて、規定の期間が経過した後の加工誤差を予測する請求項11に記載のダイシング装置。
【請求項13】
加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴、加工対象物を加工するブレードへ供給されるブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴及び前記加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水の温度履歴を表す発熱体供給水温度履歴を含む温度履歴特徴量と、前記加工対象物を加工する際の加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、前記温度履歴特徴量が入力される場合に前記加工誤差を出力する学習モデルを生成する学習モデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工状態検出装置、加工状態検出方法、プログラム、ダイシング装置及び学習モデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを加工するダイシング装置は、幅広い環境下において高精度の加工の実現が要求されている。ダイシング工程において高精度の加工を実現するには、室温及び水温等の装置の設置環境の管理が非常に重要である。例えば、室温の変化が大きい環境下では、装置に具備される各ユニットの熱膨張及び熱収縮に起因する加工精度の低下が懸念される。
【0003】
一般に、ダイシング装置は、あらゆる温度範囲における加工精度を保証しているのではなく、使用温度範囲が規定されている。ダイシング装置は、規定されている使用温度範囲において運用されることで規定の加工精度が保証される。
【0004】
特許文献1は、温度センサを用いて加工位置付近の雰囲気温度をモニタリングし、モニタリングされたシャフトの温度に基づいてスピンドル移動機構の送り量及びワークテーブルの送り量の少なくともいずれかに補正をかけるダイシング装置が記載される。同文献に記載の装置は、スピンドルの時間に対する変位特性等の各種のデータマップを備え、データマップに対応させて加工点の位置ズレを推測し、ワークの送りに補正をかけながら切断分割作業が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、設備環境の関係等に起因して、規定の使用温度範囲を満たす装置の使用が困難となるユーザが存在し得る。使用温度範囲から外れた環境において装置が使用される場合、カッターセット及びカーフチェックなどの補正を適当なタイミングにおいて実施し、補正がされた状態において規定の加工精度を満足しているかが判断される。補正のタイミングの設定及び加工精度の最終判断は、ユーザが行う場合があり得る。
【0007】
また、一年間の室温変化が大きい場合などは、装置が稼働する時期に合わせて装置の運用を変えるなどの対応が必要になり得る。更に、室温及び各種の水温などの外乱要素を独立する複数のパラメータとして補正を実施してもよいが、複数の温度要因が関わり合う場合が大半であり、精度のよい補正の実現は困難である。
【0008】
特許文献1に記載の装置は、複数のパラメータのそれぞれについて補正マップを具備しており、パラメータごとの補正は可能であるが、複数の温度要因が関わり合う場合への対応は困難である。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、相互に関連する複数の温度要因の変化に対する加工状態の検出を実現し得る、加工状態検出装置、加工状態検出方法、プログラム、ダイシング装置及び学習モデル生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1態様に係る加工状態検出装置は、ブレードを用いて加工対象物の加工を施す際の加工状態を検出する加工状態検出装置であって、加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴を取得する環境温度履歴取得部と、ブレードへ供給されるブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴を取得するブレード供給水温度履歴取得部と、加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水の温度履歴を表す発熱体供給水温度履歴を取得する発熱体供給水温度履歴取得部と、環境温度履歴の特徴を表す環境温度履歴特徴量、ブレード供給水温度履歴の特徴を表すブレード供給水温度履歴特徴量及び発熱体供給水温度履歴の特徴を表す発熱体供給水温度履歴特徴量を導出する温度履歴特徴量導出部と、環境温度履歴特徴量、ブレード供給水温度履歴特徴量及び発熱体供給水温度履歴特徴量を含む温度履歴特徴量に基づいて、加工誤差を予測する加工誤差予測部と、を備え、加工誤差予測部は、温度履歴特徴量と加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、温度履歴特徴量が入力される場合に加工誤差を出力する学習モデルが適用される加工状態検出装置である。
【0011】
本開示に係る加工状態検出装置によれば、相互に関連する環境温度の変化、ブレード供給水温度の変化及び発熱体供給水温度の変化に対する加工状態が検出される。これにより、温度履歴に応じた補正を実施し得る。
【0012】
ブレード供給水は、切削水、ブレード冷却水及び洗浄水が含まれ得る。発熱体供給水は、発熱体冷却水が含まれ得る。発熱体は、スピンドル、カメラ及びこれらを支持する支持部材が含まれ得る。
【0013】
第2態様に係る加工状態検出装置は、第1態様の加工状態検出装置において、加工状態の履歴を表す加工状態履歴を取得する加工状態履歴取得部と、加工状態履歴の特徴量を導出する加工状態履歴特徴量導出部と、を備え、加工誤差予測部は、温度履歴特徴量に加工状態履歴特徴量を加味して、加工誤差を予測してもよい。
【0014】
かかる態様によれば、現実の加工状態の変動が加味された加工状態が検出され、現実の加工状態の変動に応じた補正を実施し得る。
【0015】
第3態様に係る加工状態検出装置は、第1態様に係る加工状態検出装置において、温度履歴特徴量導出部は、環境温度履歴特徴量として、加工環境の温度及び単位時間あたりの加工環境の温度の変化量を取得し、ブレード供給水温度履歴特徴量として、ブレード供給水の温度及び単位時間あたりのブレード供給水の温度の変化量を取得し、発熱体供給水温度履歴特徴量として、発熱体供給水の温度及び単位時間あたりの発熱体供給水の温度の変化量を取得し、学習モデルは、加工環境の温度と単位時間あたりの加工環境の温度の変化量との組み合わせ、ブレード供給水の温度と単位時間あたりのブレード供給水の温度の変化量との組み合わせ及び発熱体供給水の温度と単位時間あたりの発熱体供給水の温度の変化量との組み合わせを入力とし、加工誤差を出力とする学習を実施して生成されてもよい。
【0016】
かかる態様によれば、各種の温度に対して、単位時間あたりの各種の温度の変化量が考慮された加工状態の検出が実現される。
【0017】
第4態様に係る加工状態検出装置は、第1態様に係る加工状態検出装置において、温度履歴特徴量導出部は、環境温度履歴特徴量として、加工環境の温度、単位時間あたりの加工環境の温度の変化量及び加工環境の温度の変化の向きを取得し、ブレード供給水温度履歴特徴量として、ブレード供給水の温度、単位時間あたりのブレード供給水の温度の変化量及びブレード供給水の温度の変化の向きを取得し、発熱体供給水温度履歴特徴量として、発熱体供給水の温度、単位時間あたりの発熱体供給水の温度の変化量及び発熱体供給水の温度の変化の向きを取得し、学習モデルは、加工環境の温度と、単位時間あたりの加工環境の温度の変化量と、加工環境の温度の変化の向きとの組み合わせ、ブレード供給水の温度と、単位時間あたりのブレード供給水の温度の変化量と、ブレード供給水の温度の変化の向きとの組み合わせ及び発熱体供給水の温度と、単位時間あたりの発熱体供給水の温度の変化量と、発熱体供給水の温度の変化の向きとの組み合わせを入力とし、加工誤差を出力とする学習を実施して生成されてもよい。
【0018】
かかる態様によれば、各種の温度に対して、単位時間あたりの各種の温度の変化量及び各種の温度の変化の向きが考慮された加工状態の検出が実現される。
【0019】
第5態様に係る加工状態検出装置は、第1態様に係る加工状態検出装置において、温度履歴特徴量導出部は、環境温度履歴特徴量として、加工環境の温度及び加工環境の温度の積算を取得し、ブレード供給水温度履歴特徴量として、ブレード供給水の温度及びブレード供給水の温度の積算を取得し、発熱体供給水温度履歴特徴量として、発熱体供給水の温度及び発熱体供給水の温度の積算を取得し、学習モデルは、加工環境の温度と、加工環境の温度の積算との組み合わせ、ブレード供給水の温度と、ブレード供給水の温度の積算との組み合わせ及び発熱体供給水の温度と、発熱体供給水の温度の積算との組み合わせを入力とし、加工誤差を出力とする学習を実施して生成されてもよい。
【0020】
かかる態様によれば、各種の温度に対して、各種の温度の積算が考慮された加工状態の検出が実現される。
【0021】
第6態様に係る加工状態検出装置は、第1態様から第5態様のいずれか一態様に係る加工状態検出装置において、加工に適用される加工条件を取得する加工条件取得部と、加工条件ごとの学習を実施して生成された複数の第1学習モデルの中から、加工条件に応じて、加工誤差予測部に適用される学習モデルを選択する学習モデル選択部と、を備えてもよい。
【0022】
かかる態様によれば、加工条件に応じた学習モデルが適用される加工状態の検出が実現される。
【0023】
本開示の第7態様に係る加工状態検出方法は、ブレードを用いて加工対象物の加工を施す際の加工状態を検出する加工状態検出方法であって、制御装置が、加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴を取得する環境温度履歴取得工程と、ブレードへ供給されるブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴を取得するブレード供給水温度履歴取得工程と、加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水の温度履歴を表す発熱体供給水温度履歴を取得する発熱体供給水温度履歴取得工程と、環境温度履歴の特徴を表す環境温度履歴特徴量、ブレード供給水温度履歴の特徴を表すブレード供給水温度履歴特徴量及び発熱体供給水温度履歴の特徴を表す発熱体供給水温度履歴特徴量を導出する温度履歴特徴量導出工程と、環境温度履歴特徴量、ブレード供給水温度履歴特徴量及び発熱体供給水温度履歴特徴量を含む温度履歴特徴量に基づいて、加工誤差を予測する加工誤差予測工程と、を実行し、加工誤差予測工程は、温度履歴特徴量と加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、温度履歴特徴量が入力される場合に加工誤差を出力する学習モデルが適用される加工状態検出方法である。
【0024】
本開示に係る加工状態検出方法によれば、本開示に係る加工状態検出装置と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0025】
本開示に係る加工状態検出方法において、第2態様から第6態様のいずれか一態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、加工状態検出装置において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担う加工状態検出方法の構成要素として把握することができる。
【0026】
本開示の第8態様に係るプログラムは、ブレードを用いて加工対象物の加工を施す際の加工状態を検出するプログラムであって、制御装置が、加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴を取得する環境温度履歴取得機能、ブレードへ供給されるブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴を取得するブレード供給水温度履歴取得機能、加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水の温度履歴を表す発熱体供給水温度履歴を取得する発熱体供給水温度履歴取得機能、環境温度履歴の特徴を表す環境温度履歴特徴量、ブレード供給水温度履歴の特徴を表すブレード供給水温度履歴特徴量及び発熱体供給水温度履歴の特徴を表す発熱体供給水温度履歴特徴量を導出する温度履歴特徴量導出機能、及び環境温度履歴特徴量、ブレード供給水温度履歴特徴量及び発熱体供給水温度履歴特徴量を含む温度履歴特徴量に基づいて、加工誤差を予測する加工誤差予測機能を実現するプログラムであって、加工誤差予測機能は、温度履歴特徴量と加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、温度履歴特徴量が入力される場合に加工誤差を出力する学習モデルが適用されるプログラムである。
【0027】
本開示に係るプログラムによれば、本開示に係る加工状態検出装置と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0028】
本開示に係るプログラムにおいて、第2態様から第6態様のいずれか一態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、加工状態検出装置において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担うプログラムの構成要素として把握することができる。
【0029】
本開示の第9態様に係るダイシング装置は、ブレードを用いて加工対象物を加工する加工部と、加工対象物の加工状態を検出する加工状態検出部と、を備えたダイシング装置であって、加工状態検出部は、加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴を取得する環境温度履歴取得部と、ブレードへ供給されるブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴を取得するブレード供給水温度履歴取得部と、加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水の温度履歴を表す発熱体供給水温度履歴を取得する発熱体供給水温度履歴取得部と、環境温度履歴の特徴を表す環境温度履歴特徴量、ブレード供給水温度履歴の特徴を表すブレード供給水温度履歴特徴量及び発熱体供給水温度履歴の特徴を表す発熱体供給水温度履歴特徴量を導出する温度履歴特徴量導出部と、環境温度履歴特徴量、ブレード供給水温度履歴特徴量及び発熱体供給水温度履歴特徴量を含む温度履歴特徴量に基づいて、加工誤差を予測する加工誤差予測部と、を備え、加工誤差予測部は、温度履歴特徴量と加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、温度履歴特徴量が入力される場合に加工誤差を出力する学習モデルが適用されるダイシング装置である。
【0030】
本開示に係るダイシング装置によれば、本開示に係る加工状態検出装置と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0031】
本開示に係るダイシング装置において、第2態様から第6態様のいずれか一態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、加工状態検出装置において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担うダイシング装置の構成要素として把握することができる。
【0032】
第10態様に係るダイシング装置は、第9態様に係るダイシング装置において、加工誤差予測部から出力される加工誤差に基づき、加工部の補正の要否を判定する判定部を備えてもよい。
【0033】
かかる態様によれば、加工誤差に基づく、加工部の補正の要否を判定し得る。
【0034】
第11態様に係るダイシング装置は、第10態様に係るダイシング装置において、加工誤差予測部は、規定の期間が経過した後の加工誤差を予測し、判定部は、予測された加工誤差が規定のしきい値を超える場合に、加工部の補正が必要である旨の判定結果を導出してもよい。
【0035】
かかる態様によれば、将来の加工誤差の予測に基づく、加工部の補正の要否を判定し得る。
【0036】
第12態様に係るダイシング装置は、第11態様に係るダイシング装置において、加工誤差予測部は、加工誤差の単位時間あたりの変化量及び加工誤差の変化の方向に基づいて、規定の期間が経過した後の加工誤差を予測してもよい。
【0037】
かかる態様によれば、加工誤差の変化の方向が考慮された加工誤差の予測に基づき、加工部の補正の要否を判定し得る。
【0038】
本開示の第13態様に係る学習モデル生成方法は、加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴、加工対象物を加工するブレードへ供給されるブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴及び加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水の温度履歴を表す発熱体供給水温度履歴を含む温度履歴特徴量と、加工対象物を加工する際の加工誤差とを学習データとして学習した学習済の学習モデルであり、温度履歴特徴量が入力される場合に加工誤差を出力する学習モデルを生成する学習モデル生成方法である。
【0039】
本開示に係る学習モデル生成方法によれば、本開示に係る加工状態検出装置、加工状態検出方法、プログラム及びダイシング装置に適用される学習済の学習モデルを生成し得る。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、相互に関連する環境温度の変化、ブレード供給水温度の変化及び発熱体供給水温度の変化に対する加工状態が検出される。これにより、温度履歴に応じた補正を実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は実施形態に係るダイシング装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は
図1に示す加工部の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3はスピンドル先端部の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は
図1に示すダイシング装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は
図1に示す加工状態検出部の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は実施形態に係る加工状態検出方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は
図5に示す解析部に適用される処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は
図5に示す加工誤差予測部に適用される学習モデルの模式図である。
【
図10】
図10は単位時間あたりの温度の変化量の説明図である。
【
図12】
図12は温度履歴特徴量の第1変形例の説明図である。
【
図13】
図13は温度履歴特徴量の第2変形例の説明図である。
【
図14】
図14は温度履歴特徴量の第3変形例の説明図である。
【
図15】
図15は第3変形例に係る温度履歴特徴量が学習データとして用いられる学習モデルの生成方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明については、適宜、省略される。
【0043】
[実施形態に係るダイシング装置の構成例]
図1は実施形態に係るダイシング装置の概略構成を示す斜視図である。なお、
図1に示すX方向及びY方向は、互いに直交する方向であり、ダイシング装置が載置される面に対して平行となる方向を表す。また、Z方向は、X方向及びY方向に対して直交する方向であり、ダイシング装置が載置される面と直交する方向に対して平行となる方向を表す。
【0044】
図1に示すダイシング装置10は、一対のブレード12、12が対向して配置されるツインスピンドルダイサーと称されるダイシング装置である。ダイシング装置10は、一対のブレード12、12と、先端部にブレード12が装着された高周波モータ内蔵型の一対のスピンドル14、14と、加工対象物であるワークWが載置されてワークWを吸着保持するワークテーブル16と、を具備する加工部18を備える。加工部18は、XY平面に対して平行となる面において、ワークWとブレード12を相対的に移動させ、ブレード12を用いてワークWを切削加工する。なお、切削加工は、ダイシング加工等と称され得る。ワークWの材料の例として、シリコン及びシリコンカーバイドなどの半導体材料が挙げられる。ワークWの材料の他の例として、サファイア、ガラス及び石英等の半導体材料以外の材料が挙げられる。
【0045】
ダイシング装置10は、ワークWの表面を撮像するカメラ19と、加工済みのワークWをスピン洗浄する洗浄部20と、複数枚のワークWが収納されるカセットが載置されるロードポート22と、ワークWを搬送する搬送装置24を備える。カメラ19等のそれぞれは、規定の位置に配置される。ダイシング装置10は、ダイシング装置10の各部の動作を統括制御する制御装置26を備える。制御装置26は、ダイシング装置10の内部に配置される。
【0046】
制御装置26は、本発明の装置制御手段の一例でコンピュータが適用される。制御装置26として機能するコンピュータは、1つ以上のプロセッサ及び1つ以上のコンピュータ可読媒体を備える。コンピュータは、コンピュータ可読媒体に記憶される1つ以上命令を含むプログラムをプロセッサが実行して、ダイシング装置10における各種の機能を実現する。なお、制御装置26の電気的構成の詳細は後述する。
【0047】
ダイシング装置10は表示部46を備える。表示部46は、制御装置26に電気接続され、ダイシング加工の結果、ブレード12の部分損等の状態及び各種のデータ等の各種の情報を表示する。表示部46として、タッチパネル付きディスプレイ装置を適用し得る。ダイシング装置10のオペレータは、タッチパネルを用いて制御装置26に対する加工条件の設定及びブレード12の状態を判定するための閾値など、各種の情報を入力することができる。
【0048】
[加工部の構成例]
図2は
図1に示す加工部の概略構成を示す斜視図である。同図に示す加工部18は、Xテーブル34を備える。Xテーブル34は、Xベース28に設けられる一対のXガイド30、30を用いてガイドされ、リニアモータ32を用いてX方向に駆動される。また、Xテーブル34の上面にはθ方向に回転する回転テーブル36が立設される。回転テーブル36には、ワークテーブル16が設けられている。ワークテーブル16は、Xテーブル34を用いてX方向に移動し、かつ、回転テーブル36を用いてθ方向に回転する。なお、θ方向は、Z方向に対して平行となる方向に延在する回転軸の回りを回転する方向を表す。
【0049】
加工部18は、Xベース28を跨ぐ位置に配置される門型に構成されたYベース38を備える。Yベース38の前面38Aには、一対のYテーブル42、42が設けられる。一対のYテーブル42、42は、Yベース38の前面38Aに固定された一対のYガイド40、40を用いてガイドされ、Y駆動装置を用いてY方向に駆動される。Y駆動装置は、モータ及び送りねじ装置を備える。
【0050】
一対のYテーブル42、42のそれぞれには、一対のZテーブル44、44のそれぞれが設けられる。Zテーブル44は、Yテーブル42に設けられたZガイドを用いてガイドされ、Z駆動装置を用いてZ方向に駆動される。Z駆動装置は、Y駆動装置と同様の構成を適用し得る。なお、Y駆動装置、Zガイド及びZ駆動装置の図示は省略される。
【0051】
一対のZテーブル44、44のそれぞれには、一対のスピンドル14、14が対向した状態で固定される。一対のスピンドル14、14のそれぞれの先端部に装着された一対のブレード12、12は、Y方向に沿って対向して配置される。
【0052】
一対のブレード12、12のそれぞれは、Y方向についてインデックス送りされ、かつ、Z方向について切り込み送りされる。また、ワークテーブル16はX方向について切削送りされ、かつ、θ方向に回転する。これらの動作は、
図1に示す制御装置26を用いて制御される。
【0053】
図3はスピンドル先端部の構成例を示す斜視図である。
図3に示すスピンドル14の先端部には、ブレード12を覆うホイールカバー54が取り付けられる。ホイールカバー54は、カバー前部56、カバー後部58、ノズルブロック60及びガイドブロック72等を含んで構成される。カバー後部58には、ホース62が接続される。ホース62を介して供給される切削水は、ホイールカバー54に具備されるノズル63から、回転中のブレード12へ向けて噴射される。ノズルブロック60には、ホース64が接続される。ホース64を介して供給されるブレード冷却水は、ホイールカバー54に具備される一対のノズル66、66から、ブレード12を用いて加工が実施されるワークWの加工点へ向けて噴射される。
【0054】
図示を省略するが、ダイシング装置10は、スピンドル14、カメラ19を含む顕微鏡、Z軸構造体及びスケール支持部などの装置内部の発熱体を冷却する発熱体冷却水が用いられる。すなわち、ダイシング装置10は、ブレード12以外の発熱体に対して発熱体冷却水を供給する第2冷却水供給部を備える。また、ダイシング装置10は、洗浄水を供給する洗浄水供給部を備える。
【0055】
切削水、ブレード冷却水及び洗浄水を含むブレード供給水の流路は、それぞれの供給先へ分岐されて装置内へ放出される開放系の流路を構成する。一方、発熱体冷却水は、スピンドルモータ、顕微鏡(カメラ19)などの発熱体、Z軸構造体、スケール支持部などの発熱体と、同一の温度にする必要がある部位(Z軸構造体、スケール支持部)などを冷却するために流す市水等の工業用水であり、発熱体冷却水の流路は閉鎖系の流路を構成する。
【0056】
ダイシング装置10は、ブレード12の刃先12Aに発生する部分損を検出するブレード破損検出装置48を備える。ダイシング装置10に具備される制御装置26は、ブレード破損検出装置48の検出結果に基づき、ブレード12の状態を把握する。
【0057】
ブレード破損検出装置48は、光検出ユニット50を備える。光検出ユニット50は、ホイールカバー54のX方向の中央位置においてホイールカバー54に取り付けられ、ブレード12の加工位置に対してZ方向における反対側の位置に配置される。光検出ユニット50は、投光部68及び受光部70を備える。投光部68は、投光側配線80が接続され、受光部70は受光側配線84が接続される。
【0058】
光検出ユニット50に具備される投光部68及び受光部70は、Y方向についてブレード12を挟んで互いに対向する位置に配置される。投光部68は、LEDなどの投光素子が具備される。投光部68は、複数のLEDが含まれるLEDアレイが具備されてもよい。投光素子は、投光側配線80を介して電源装置から電力が供給される。なお、電源装置の図示を省略する。
【0059】
受光部70は、投光部68からブレード12へ向けて照射された光の少なくとも一部を受光する。受光部70は、フォトダイオード等の受光素子が具備される。受光部70は、複数のフォトダイオードが含まれるフォトダイオードアレイが具備されてもよい。受光素子は、受光光量に応じた電流値を有する検出信号を出力する。受光素子から出力される検出信号は、受光側配線84を介して制御装置26へ送信される。
【0060】
[ダイシング装置の電気的構成]
図4は
図1に示すダイシング装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。制御装置26は、システム制御部100を備える。システム制御部100は、ダイシング装置10に具備される各種の制御部を統括的に制御する。システム制御部100は、コンピュータ可読媒体120へのデータ等の書き込み及びコンピュータ可読媒体120からのデータ等の読み出しを制御する。
【0061】
制御装置26は、加工制御部102を備える。加工制御部102は、システム制御部100から送信される指令信号に基づき、加工部18の各部の動作を制御する。加工制御部102は、加工部18に具備されるX駆動装置、Y駆動装置、Z駆動装置及びθ駆動装置の動作を制御する駆動制御部として機能する。また、加工制御部102は、スピンドル14の動作を制御するスピンドル制御部として機能する。
【0062】
制御装置26は、撮影データ取得部104を備える。撮影データ取得部104は、カメラ19を用いて撮影され、生成されたワークWの撮影データを取得する。撮影データ取得部104を用いて取得されたワークWの撮影データは、アライメントの際、及びカーフチェック等の際にワークWの加工誤差の把握に使用される。
【0063】
制御装置26は、ブレード供給水温度取得部106、発熱体供給水温度取得部108及び室温取得部110を備える。ブレード供給水温度取得部106は、ブレード供給水温度検出部130を用いて検出される切削水、ブレード冷却水及び洗浄水の温度を取得する。ブレード供給水温度取得部106は、規定のサンプリング周期を適用して切削水等の温度の時系列データを取得する。
【0064】
発熱体供給水温度取得部108は、発熱体供給水温度検出部132を用いて検出される発熱体冷却水の温度を取得する。発熱体供給水温度取得部108は、規定のサンプリング周期を適用して発熱体冷却水の温度の時系列データを取得する。
【0065】
室温取得部110は、室温検出部134を用いて検出される室温を検出する。室温は、ダイシング装置10が設置される環境における環境温度として把握される。室温取得部110は、規定のサンプリング周期を適用して室温の時系列データを取得する。ブレード供給水温度取得部106、発熱体供給水温度取得部108及び室温取得部110に適用されるサンプリング周期は、同一であってもよいし、互いに相違してもよい。ブレード供給水温度検出部130、発熱体供給水温度検出部132及び室温検出部134は、温度センサを備える。温度センサは、接触式でもよし、非接触式でもよい。
【0066】
制御装置26は、液供給制御部112を備える。液供給制御部112は、システム制御部100から送信される指令信号に基づき、液供給装置136の動作を制御する。すなわち、液供給制御部112は、ブレード供給水及び発熱体供給水の供給タイミング及び供給量を制御する。
【0067】
液供給装置136は、ブレード供給水を供給するブレード供給水供給部、及び発熱体供給水を供給する発熱体供給水供給部を備えてもよい。ブレード供給水供給部は、切削水を供給する切削水供給部、ブレード冷却水を供給するブレード冷却水供給部及び洗浄水を供給する洗浄水供給部を備えもよい。
【0068】
液供給制御部112は、ブレード供給水供給制御部及び発熱体供給水供給制御部を備えてもよい。ブレード供給水供給制御部は、切削水供給制御部、ブレード冷却水供給制御部及び洗浄水供給制御部を備えてもよい。
【0069】
制御装置26は、ブレード情報取得部114を備える。ブレード情報取得部114は、ブレード破損検出装置48から出力されるブレード12の検出結果を取得する。制御装置26は、ブレード12の検出結果に基づいて、ブレード12の部分損の有無を判定する。
【0070】
制御装置26は、加工状態取得部116を備える。加工状態取得部116は、スピンドル14の回転数等の現実の加工状態を表すパラメータを取得する。加工状態取得部116は、加工制御部102を用いて設定される加工条件に基づき、現実の加工状態を表すパラメータを取得してもよい。加工状態取得部116は、加工状態が変化してからの時間を取得してもよい。例えば、発熱体冷却水の供給開始からの時間、各チャネルの加工開始からの時間が取得されてもよい。また、スピンドル14の回転数の変更、加工中のカッターセット(摩耗量測定)及びカーフチェックが実施される場合は、スピンドル14の回転数の変更からの時間、加工中のカッターセット等の実施時点からの時間が取得されてもよい。
【0071】
制御装置26は、加工状態検出部140を備える。加工状態検出部140は、ワークWの加工中において取得される各種の温度情報、及び現実の加工状態に基づいてワークWの加工誤差を予測する。加工状態検出部140は、加工誤差の単位時間あたりの変化量及び変化量の方向に基づいて、規定の期間が経過した後の加工誤差を予測してもよい。加工状態検出部140は、ワークWの加工誤差が大きくなりそうな危険状態を予測する。
【0072】
加工状態検出部140は、ワークWの加工誤差が大きくなりそうな危険状態が予測された場合に、加工部18の補正の要否を判定する判定部として機能し得る。加工状態検出部140は、予測される加工誤差が規定のしきい値を超える場合に、加工部18の補正が必要である旨の判定結果を導出してもよい。
【0073】
制御装置26は、学習モデル記憶部164を備える。学習モデル記憶部164は、加工状態検出部140へ適用される加工誤差の予測に用いられる学習モデルが記憶される。なお、加工誤差の予測の詳細は後述する。
【0074】
図4に示すシステム制御部100等の各種の処理部のハードウェアは、1つ以上のプロセッサが適用される。1つのプロセッサを用いて、1つの処理部又は2つ以上の処理部が実現されてもよいし、複数のプロセッサを用いて、1つの処理部が実現されてもよい。
【0075】
プロセッサとして、汎用的な処理デバイスであるCPU(Central Processing Unit)を備えてもよいし、特定の処理に特化した処理デバイスを備えてもよい。複数のプロセッサは、同一の種類であってもよいし、互いに異なる複数の種類であってもよい。
【0076】
制御装置26は、コンピュータ可読媒体120を備える。非一時的な有体物であるコンピュータ可読媒体120は、主記憶装置であるメモリ122及び補助記憶装置であるストレージ124を備える。コンピュータ可読媒体120は、半導体メモリ、ハードディスク装置及びソリッドステートドライブ装置等を使用し得る。コンピュータ可読媒体120は、複数のデバイスの任意の組み合わせを使用し得る。
【0077】
なお、ハードディスク装置は、英語表記のHard Disk Driveの省略語であるHDDと称され得る。ソリッドステートドライブ装置は、英語表記のSolid State Driveの省略語であるSSDと称され得る。
【0078】
制御装置26は、入出力インターフェース126及び通信インターフェース128を備える。表示部46は、入出力インターフェース126を介して制御装置26と接続される。入出力インターフェース126は、USB(Universal Serial Bus)などの各種の規格を適用し得る。
【0079】
制御装置26は、通信インターフェース128を介して外部装置とのデータ通信を実施する。通信インターフェース128の通信形態は、有線通信及び無線通信のいずれを適用してもよい。制御装置26は、通信インターフェース128を介してネットワークへ接続され、外部装置と通信可能に接続されてもよい。ネットワークは、LAN(Local Area Network)等を適用し得る。なお、ネットワークの図示を省略する。
【0080】
図4には、
図1等に示すダイシング装置10の加工に関する処理部等の主要な構成要素が図示される。ダイシング装置10は、
図4に図示されない処理部等の構成要素が含まれていてもよい。
【0081】
[加工状態検出部の構成例]
図5は
図4に示す加工状態検出部の電気的構成を示す機能ブロック図である。加工状態検出部140は、温度履歴生成部150、加工状態履歴生成部151、温度履歴特徴量導出部152、加工状態履歴特徴量導出部153、加工誤差予測部154及び解析部156を備える。加工誤差予測部154は、学習済の学習モデル158を備える。
【0082】
温度履歴生成部150は、ブレード供給水温度取得部106から送信される切削水等のブレード供給水の温度から、ブレード供給水の温度履歴を生成する。ブレード供給水の温度履歴は、ブレード供給水の温度の時系列データが適用される。
【0083】
また、温度履歴生成部150は、発熱体供給水温度取得部108から送信される発熱体冷却水の温度から、発熱体冷却水の温度履歴を生成する。発熱体冷却水の温度履歴更は、発熱体冷却水の温度の時系列データが適用される。更に、温度履歴生成部150は、室温取得部110から送信される室温から、室温の履歴を生成する。室温の履歴は、室温の時系列データが適用される。
【0084】
なお、実施形態に記載の温度履歴生成部150は、ブレード供給水の温度履歴を表すブレード供給水温度履歴を取得するブレード供給水温度履歴取得部の一例であり、プログラムがブレード供給水温度履歴取得機能を実現するハードウェアの一例である。
【0085】
また、実施形態に記載の温度履歴生成部150は、加工対象物の加工の際に発熱する発熱体へ供給される発熱体供給水温度履歴を取得する発熱体供給水温度履歴取得部の一例であり、プログラムが発熱体供給水温度履歴取得機能を実現するハードウェアの一例である。
【0086】
更に、実施形態に記載の温度履歴生成部150は、加工環境の温度履歴を表す環境温度履歴を取得する環境温度履歴取得部の一例であり、プログラムが環境温度履歴取得機能を実現するハードウェアの一例である。
【0087】
加工状態履歴生成部151は、加工状態取得部116を用いて取得される、現実の加工状態から、加工状態履歴を生成する。加工状態履歴の例として、スピンドル14の回転数の時系列データが挙げられる。なお、実施形態に記載の加工状態履歴生成部151は、加工状態の履歴を表す加工状態履歴を取得する加工状態履歴取得部の一例である。
【0088】
温度履歴特徴量導出部152は、ブレード供給水の温度履歴の特徴量、発熱体供給水の温度履歴の特徴量及び室温の履歴の特徴量を含む温度履歴特徴量を導出する。例えば、ブレード供給水の温度履歴の特徴量は、ブレード供給水の温度とブレード供給水の温度の傾きとのペアを適用し得る。
【0089】
すなわち、ブレード供給水の温度履歴の特徴量は、切削水の温度と切削水の温度の傾きのペア、ブレード冷却水の温度とブレード冷却水の温度の傾きとのペア及び洗浄水の温度と洗浄水の温度の傾きとのペアが含まれる。また、発熱体供給水の温度履歴の特徴量は、発熱体冷却水の温度と発熱体冷却水の温度の傾きとのペアが含まれる。
【0090】
ブレード供給水の温度の傾きは、ブレード供給水の温度が取得されたサンプリングタイミングにおける、単位時間あたりの温度変化として導出される。例えば、ブレード供給水の温度のサンプリング周期を単位時間として適用し、連続するサンプリングタイミングにおいて取得されたブレード供給水の温度を用いて、ブレード供給削水の温度変化の傾きを導出してもよい。
【0091】
発熱体供給水の温度履歴の特徴量は、発熱体供給水の温度と発熱体供給水の温度変化の傾きとのペアを適用し得る。発熱体供給水の温度変化の傾きは、発熱体供給水の温度が取得されたサンプリングタイミングにおける、単位時間あたりの温度変化として導出される。また、室温の履歴の特徴量は、室温と室温変化の傾きとのペアを適用し得る。室温変化の傾きは、室温が取得されたサンプリングタイミングにおける、単位時間あたりの温度変化として導出される。
【0092】
なお、実施形態に記載の温度履歴特徴量導出部152は、プログラムが温度履歴特徴量導出機能を実現するハードウェアの一例である。
【0093】
加工状態履歴特徴量導出部153は、加工状態履歴の特徴量を導出する。加工状態履歴の特徴量として、スピンドル14の回転数とスピンドル14の回転数の傾きとのペアが挙げられる。例えば、チャネル1の加工条件としてスピンドル14の回転数が40krpm(キロ回転毎分)と設定され、チャネル2の加工条件としてスピンドル14の回転数が50krpmと設定され、チャネル1、チャネル2の順に加工が実施される場合、加工中にスピンドル14の回転数が変化する。スピンドル14の回転数が変化に起因して、位置変動が発生することがある。すなわち、加工状態も時定数を有しており、加工誤差の予測に使用し得る。
【0094】
加工誤差予測部154は、学習済の学習モデル158を用いて、温度履歴の特徴量及び加工状態履歴の特徴量に基づいて、ワークWを加工する際の加工誤差を予測する。ここでいう温度履歴は、ブレード供給水の温度履歴、発熱体供給水の温度履歴、及び室温の履歴の総称である。
【0095】
学習モデル158は、温度履歴の特徴量と加工誤差との組を学習データとして、温度履歴の特徴量が入力されると、加工誤差の予測値を出力するように学習された学習済の学習モデルである。すなわち、学習モデル158の生成では、温度履歴の特徴量と加工誤差との組を学習データとする教師あり学習が実施される。換言すると、学習モデル158は、温度履歴特徴量が入力されると加工誤差の予測値を出力するように学習が実施される。
【0096】
学習モデル158に対して、任意のサンプリングタイミングにおいて取得された温度から導出される温度履歴の特徴量が入力されると、学習モデル158は、温度が取得されたサンプリングタイミングにおける加工誤差の予測値を出力する。
【0097】
学習モデル158は、ディープニューラルネットワーク等のニューラルネットワークが適用される。ニューラルネットワークの重み及びバイアスは、ソフトウェアを用いて学習をして導出される値が適用される。なお、ディープニューラルネットワークは、英語表記のDeep Neural Networkの省略語を用いてDNNと称され得る。
【0098】
学習モデル158は、加工状態履歴の特徴量と、加工誤差との組を学習データとして追加して学習した学習済みの学習モデルとして構成されてもよい。この学習モデル158は、温度履歴の特徴量及び加工状態履歴の特徴量が入力されると、加工誤差の予測値を出力する。
【0099】
なお、実施形態に記載の加工誤差予測部154は、プログラムが加工誤差予測機能を実現するハードウェアの一例である。
【0100】
解析部156は、加工誤差予測部154に具備される学習モデル158から出力される加工誤差の予測結果に基づいて、加工中における将来の加工誤差の遷移を予測する。解析部156は、規定の許容範囲を超える加工誤差の発生が予測される場合に、その旨を表す信号を解析結果として出力する。制御装置26は、規定の許容範囲を超える加工誤差の発生が予測される場合に、適宜のタイミングにおいて加工補正を実施し得る。
【0101】
加工状態検出部140は、加工条件取得部160を備える。加工条件取得部160は、加工制御部102からワークWの種類及びブレード12の種類等の加工部18に対して適用される加工条件を取得する。
【0102】
加工状態検出部140は、学習モデル選択部162を備える。学習モデル選択部162は、学習モデル記憶部164へ記憶される、加工条件ごとの学習が実施されて生成される複数の学習モデルの中から、加工条件取得部160を用いて取得される加工条件に対応する学習モデルを選択する。学習モデル選択部162を用いて選択された学習モデルは、加工誤差予測部154へ適用される。学習モデル記憶部164は、制御装置26の外部装置に具備されてもよい。なお、実施形態に記載の加工条件ごとの学習が実施されて生成される複数の学習モデルは、複数の第1学習モデルの一例である。
【0103】
[加工状態検出方法の手順]
図6は実施形態に係る加工状態検出方法の流れを示すフローチャートである。
図6に手順を示す加工状態検出方法は、コンピュータが適用される制御装置26が、規定のプログラムを実行して実現される。
【0104】
履歴情報生成工程S10では、
図5に示す温度履歴生成部150は、ブレード供給水の温度履歴、発熱体供給水の温度履歴及び室温の履歴等を生成する。履歴情報生成工程S10において、加工状態履歴生成部151は、加工状態履歴を生成する。履歴情報生成工程S10の後に履歴特徴量導出工程S12が実行される。なお、実施形態に記載の履歴情報生成工程S10は、環境温度履歴取得工程、ブレード供給水温度履歴取得工程及び発熱体供給水温度履歴取得工程の一例である。
【0105】
履歴特徴量導出工程S12では、温度履歴特徴量導出部152は、ブレード供給水の温度履歴特徴量等、発熱体供給水の温度履歴特徴量及び室温の履歴特徴量を生成する。履歴特徴量導出工程S12において、加工状態履歴特徴量生成部153は、加工状態履歴の特徴量を生成する。履歴特徴量導出工程S12後に加工誤差予測工程S14が実行される。なお、実施形態に記載の履歴特徴量導出工程S12は、温度履歴特徴量導出工程の一例である。
【0106】
加工誤差予測工程S14では、加工誤差予測部154は、学習モデル158を適用して、切削水の温度履歴特徴量、冷却水の温度履歴特徴量及び室温の履歴特徴量に対応する加工誤差を予測する。加工誤差予測工程S14は、学習モデル158の推論工程として把握される。加工誤差の予測結果は、
図5に示す解析部156へ出力される。加工誤差予測工程S14の後に、終了判定工程S16へ進む。
【0107】
終了判定工程S16では、加工状態検出部140は加工状態の検出を終了するか否かを判定する。終了判定工程S16において、規定の終了条件を満たしておらず、加工状態検出が継続されると判定される場合はNo判定となる。No判定の場合は履歴情報生成工程S10へ進み、終了判定工程S16においてYes判定となるまで、履歴情報生成工程S10から終了判定工程S16までの各工程が繰り返し実行される。
【0108】
一方、終了判定工程S16において、規定の終了条件を満たしており、加工状態検出が終了されると判定される場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、規定の終了処理が実施され、加工状態検出は終了される。
【0109】
加工誤差予測工程S14よりも前に、加工条件を取得する加工条件取得工程、及び加工条件に応じて学習モデルを選択する学習モデル選択工程が実行され、選択された学習モデルを用いて加工誤差予測工程S14が実行されてもよい。
【0110】
[解析部の処理の手順]
図7は
図5に示す解析部156に適用される処理の手順を示すフローチャートである。
図7に示す加工誤差取得工程S20では、
図5に示す解析部156は加工誤差予測部154から出力される加工誤差を取得する。具体的には、加工誤差取得工程S20では、
図6に示す加工誤差予測工程S14において予測された加工誤差の予測結果を取得する。加工誤差取得工程S20の後に加工誤差推移予測工程S22へ進む。
【0111】
加工誤差推移予測工程S22では、解析部156は今後の加工誤差の推移を予測する。すなわち、加工誤差推移予測工程S22では、加工誤差が増加しそうな危険状態が予測される。加工誤差が増加しそうな危険状態とは、このままの温度変化が続くとエラーになる状態である。
【0112】
具体的には、加工誤差推移予測工程S22において、加工誤差が増加する否かが予測され、加工誤差が増加すると予測される場合に、加工誤差の許容範囲を超えるか否かが予測される。加工誤差推移予測工程S22の後に加工誤差判定工程S24へ進む。
【0113】
加工誤差判定工程S24において、加工誤差が許容範囲内において推移すると予測される場合はNo判定となり、終了判定工程S28へ進む。一方、加工誤差判定工程S24において、加工誤差の許容範囲を超えると予測される場合はYes判定となり、加工位置補正工程S26へ進む。
【0114】
加工誤差判定工程S24において、Yes判定の場合にアラームが出力されてもよい。アラームの例として、
図1に示す表示部46への文字情報が表示される態様、及び音が用いられる態様が挙げられる。
【0115】
加工位置補正工程S26では、レシピ条件とは別にカーフチェックが実施され、現在の加工位置がチェックされ、現在の加工位置に基づき加工位置補正が実施される。すなわち、加工位置補正工程S26では、ダイシング装置10に具備される、加工位置がチェックされ、加工位置の誤差が許容範囲を超える場合に加工位置が補正されるという機能を適用して、レシピ条件より適時に加工位置の補正が実施される。加工位置補正工程S26の後に終了判定工程S28へ進む。
【0116】
終了判定工程S28では、解析処理が終了されるか否かが判定される。解析処理の終了の例として、ワークWの加工の終了及びエラーの発生に起因する終了等が挙げられる。終了判定工程S28において、解析処理が継続されると判定される場合はNo判定となる。No判定の場合は、加工誤差取得工程S20へ進み、終了判定工程S28においてYes判定となるまで、加工誤差取得工程S20から終了判定工程S28までの各工程が繰り返し実行される。
【0117】
一方、終了判定工程S28において、解析処理が終了されると判定される場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、規定の終了処理が実施され、解析処理の手順が終了される。
【0118】
[学習モデルの具体例]
図8は
図5に示す加工誤差予測部に適用される学習モデルの模式図である。学習モデル158は、ブレード供給水温度履歴特徴量、発熱体供給水温度履歴特徴量及び室温履歴特徴量が入力されると、ブレード供給水温度、発熱体供給水温度及び室温が取得されるタイミングにおける加工誤差の予測値を出力する。加工誤差の予測値は正解確率を表すスコアが付与される態様が適用し得る。学習モデル158は、現実の加工状態が加味される加工誤差の予測値を出力してもよい。
【0119】
ブレード供給水温度履歴特徴量は、ブレード供給水温度の取得タイミングにおけるブレード供給水温度、及びブレード供給水温度の取得タイミングにおける単位時間あたりのブレード供給水温度の変化量のペアを適用し得る。
【0120】
発熱体供給水温度履歴特徴量は、ブレード供給水温度の取得タイミングと同一の発熱体供給水温度の取得タイミングにおける発熱体供給水温度、及び発熱体供給水温度の取得タイミングにおける単位時間あたりの発熱体供給水温度の変化量のペアを適用し得る。
【0121】
室温履歴特徴量として、ブレード供給水温度の取得タイミングと同一の室温の取得タイミングにおける室温、及び室温の取得タイミングにおける単位時間あたりの室温の変化量のペアを適用し得る。加工状態履歴特徴量は、加工状態の取得タイミングにおける加工状態、及び加工状態の取得タイミングにおける単位時間あたりの加工状態の変化量のペアを適用し得る。ここでいう同一のタイミングとは、許容範囲のずれが含まれていてもよい。例えば、各温度のサンプリング周期未満のずれが生じているタイミングは、実質的に同一のタイミングと把握し得る。
【0122】
図8に示す加工誤差の予測値は、加工誤差が1.5マイクロメートルである確率が90パーセント、加工誤差が1.0マイクロメートルである確率が5パーセント、加工誤差が0.5マイクロメートルである確率が2パーセントであることを表す。なお、実施形態に記載の室温履歴特徴量は、環境温度履歴の特徴を表す環境温度履歴特徴量の一例である。
【0123】
[各種の温度変化に対する各部の温度が飽和するまでの時間]
室温の変化に対して各部の温度が飽和するまでの時間は、以下のとおりである。
ワーク:3分
テーブル:5分
スピンドル:10分
顕微鏡:10分
Z軸構造物:1時間
鋳物:8時間
ブレード供給水の温度変化又はブレード供給水のオフからオンへの切り替えに対して各部の温度が飽和するまでの時間は、以下のとおりである。
ワーク:1分以下
テーブル:3分
スピンドル:10分
顕微鏡:5分
Z軸構造物:20分
鋳物:1時間
発熱体供給水の温度変化又は発熱体供給水のオフからオンへの切り替えに対して各部の温度が飽和するまでの時間は、以下のとおりである。
スピンドル:2分
Z軸構造物:10分
スケール:2分
顕微鏡:1分
上記の温度値は、基準温度条件下における各温度を2℃変化させた場合に、各部の温度変化が概ね収束するまでの時間の目安である。
【0124】
例えば、顕微鏡は、室温の変化、ブレード供給水の温度変化及び発熱体供給水の温度変換の影響を受ける。室温が上昇した場合、顕微鏡を支持する部材の膨張に起因して、顕微鏡単体は、ワークWに対してY軸方向のマイナスの側へシフトする。しかし、ワークWの膨張に起因するY軸方向のプラスの側へのシフトも生じ、更に、Z軸構造物及び鋳物の温度変化が追いつくと、ワークWに対する伸びは若干緩和される。
【0125】
ブレード供給水の上昇は、切削状態においてのみ、顕微鏡を支持する部材の膨張に起因して、顕微鏡単体はワークWに対してY軸方向のマイナスの側へシフトする。但し、これは、ブレード供給水の温度が、室温基準温度より2℃高い状態から、4℃高い状態へシフトした場合であって、上昇後の温度が室温基準温度プラス2℃よりも低い場合はY軸方向のプラス側へのシフトとなる。また、ブレード供給水の温度変化に起因して、ワークWの膨張に起因するY軸方向の位置のシフト、スピンドル14の膨張に起因するY軸方向の位置のシフトが発生するために、2℃の温度上昇であっても、室温との温度差により、挙動が異なる。
【0126】
発熱体供給水の温度上昇は、顕微鏡を支持する部材の膨張及びカメラを支持する部材の膨張に起因して、ワークWに対して顕微鏡をY軸方向のマイナス側へシフトさせる。顕微鏡と同じ発熱体供給水が使用されるスピンドル14も同様に膨張し、スピンドル14のY軸方向の位置のシフトが発生する。一方、スケールが水冷される場合は、スピンドル14のシフトがキャンセルされる。
【0127】
各種の温度変化に対する時定数が異なり、かつ、基準温度条件下以外の条件では各時定数も異なる。これは、各部の温度勾配の変化、勾配の向きの反転に起因して生じる。そのために、ある時点の温度測定値に基づく、ワークWと顕微鏡との相互の位置ずれ、及びワークWとブレード12との相互の位置ずれに起因する加工誤差の推定は困難である。
【0128】
本実施形態では、加工開始以降の予め規定された時点から一定時間、各種の温度の変動をモニタし、適切な学習モデル158を用いて加工誤差が予測される。これにより、適切なタイミングにおいて補正が実施され、加工誤差の低減が可能となる。また、加工状態の履歴が加味された学習モデル158が用いられると、加工状態の変動に起因する加工誤差の低減化が実現される。
【0129】
[温度履歴の具体例]
図9は温度履歴の説明図である。
図9には、横軸が時間とされ、縦軸が温度とされるグラフ形式を用いて温度履歴を図示する。温度履歴は、規定のサンプリング周期が適用され、連続して取得される複数の温度の時系列データとして把握される。同図に示すように、温度履歴を構成する温度は、装置の使用温度範囲内の温度だけでなく、使用温度範囲外の温度が含まれ得る。
【0130】
室温の基準温度及び発熱体供給水の基準温度の例として22℃が挙げられる。また、ブレード供給水の基準温度の例として24℃が挙げられる。発熱体供給水の基準温度は、室温の基準温度と同じとしてもよい。ブレード供給水の基準温度は、室温の基準温度に対してプラス2℃と規定してもよい。
【0131】
図10は単位時間あたりの温度の変化量の説明図である。
図10には、
図9に示す温度履歴における領域200が拡大して図示される。なお、
図10には便宜上の時間軸及び便宜上の温度軸が図示される。
【0132】
[温度履歴特徴量の具体例]
図10に示すタイミングt1、タイミングt2、タイミングt3、タイミングt4及びタイミングt5のそれぞれは、温度Te1、温度Te2、温度Te3、温度Te4及び温度Te5の取得タイミングである。各タイミングの時間間隔dtは、温度のサンプリング周期である。
【0133】
各タイミングにおける単位時間あたりの温度の変化量は、温度履歴を表す関数の平均変化率として算出される。例えば、タイミングt2における単位時間あたりの温度の変化量は、(Te2-Te1)/dtである。同様に、タイミングt3における単位時間あたりの温度の変化量は、(Te3-Te2)/dtである。すなわち、iを1以上の整数とする場合に、i番目のタイミングtiにおける単位時間あたりの温度の変化量は、{Tei-Te(i-1)}/dtと表される。
【0134】
すなわち、温度履歴が関数を用いてf(t)と表される場合に、i番目のタイミングtiにおける単位時間あたりの温度の変化量は、温度履歴f(t)の1次微分係数df(ti)/dtと表される。
【0135】
図5に示す温度履歴特徴量導出部152は、温度履歴生成部150から
図9に示す温度履歴を取得すると、温度履歴特徴量として、温度取得タイミングごとの温度及び温度取得タイミングごとの単位時間あたりの温度の変化量を導出する。
【0136】
加工状態履歴特徴量は、温度履歴特徴量の温度に代わり、スピンドル14の回転数等を適用して、温度履歴特徴量と同様に表すことが可能である。すなわち、加工状態履歴特徴量導出部153は、加工状態履歴生成部151から加工履歴を取得し、加工状態履歴特徴量を導出し得る。
【0137】
[学習モデル生成方法]
図11は学習モデル生成方法の模式図である。
図5に示す学習済の学習モデル158の生成は、複数の学習データ収集工程S100、正解ラベル付与工程S102及び学習工程S104を含んで構成される。
【0138】
複数の学習データ収集工程S100では、制御装置26に記憶される用力情報と画像情報とを学習データとして収集する。用力情報は、装置の稼働期間における切削水の温度履歴、冷却水の温度履歴及び室温の履歴が含まれる。切削水の温度履歴、冷却水の温度履歴及び室温の履歴から、温度履歴特徴量Tef(t)が導出される。温度履歴特徴量Tef(t)は、異なるタイミングにおける複数の温度履歴特徴量を表す。
【0139】
温度履歴特徴量Tef(t)は、任意のタイミングtにおける複数の温度履歴特徴量を表す。温度履歴特徴量Tef(t)は、任意のタイミングtにおける切削水の温度履歴の特徴量、任意のタイミングtにおける冷却水の温度履歴の特徴量、任意のタイミングtにおける室温の履歴の特徴量を含んで構成される。
【0140】
画像情報は、装置のカーフチェックが実施される際に取得されるワークWの撮影データである。ワークWの撮影データから、加工誤差Er(t)が導出される。加工誤差Er(t)は、任意のタイミングtにおける複数の加工誤差を表す。
【0141】
正解ラベル付与工程S102では、複数の温度履歴特徴量Tef(t)のそれぞれに対して、正解ラベルとして加工誤差Er(t)を付与し、温度履歴特徴量Tef(t)と温度履歴特徴量Tef(t)に対応する加工誤差Er(t)との組を学習データとして生成する。
【0142】
学習工程S104では、正解ラベル付与工程S102において生成された学習データを用いて、温度履歴特徴量Tef(t)が学習モデル159の入力とされ、加工誤差Er(t)が正解データとされる教師あり学習が実施され、
図5に示す学習済の学習モデル158が生成される。
【0143】
ダイシング装置10を稼働させた際に記憶される用力情報及び画像情報を用いて、
図5に示す学習済の学習モデル158に対して、
図11に示す学習モデル生成の手順を適用して、再学習を実施してもよい。
【0144】
加工状態が加味される場合は、学習データ収集工程S100において、加工状態に関する学習データが収集され、正解ラベル付与工程S102及び学習工程S104を経て、加工状態が加味される学習モデル158が生成される。
【0145】
[温度特徴量の第1変形例]
図12は温度履歴特徴量の第1変形例の説明図である。第1変形例に係る温度履歴特徴量は、温度及び単位時間あたりの温度変化量に対して、温度変化の向きが追加される。温度変化の向きは、単位時間あたりの温度変化量が増加であるか又は減少であるかを表し、単位時間あたりの温度変化量を表す関数の平均変化率として算出し得る。換言すると、温度変化の傾きは、温度履歴が関数を用いてf(t)と表される場合に、i番目のタイミングtiにおける温度変化の方向は、温度履歴f(t)の2次微分係数d
2f(ti)/dt
2と表される。
【0146】
すなわち、第1変形例に係るブレード供給水温度履歴特徴量は、ブレード供給水温度、単位時間あたりのブレード供給水温度の変化量及びブレード供給水温度の変化の向きが適用される。第1変形例に係る発熱体供給水温度履歴特徴量は、発熱体供給水温度、単位時間あたりの発熱体供給水温度の変化量及び発熱体供給水温度の変化の向きが適用される。第1変形例に係る室温履歴特徴量は、室温、単位時間あたりの室温の変化量及び室温の変化の向きが適用される。温度履歴特徴量の第1変形例は、加工状態履歴特徴量の変形例にも適用可能である。
【0147】
[温度特徴量の第2変形例]
図13は温度履歴特徴量の第2変形例の説明図である。第2変形例に係る温度履歴特徴量は、単位時間あたりの温度特徴量の変化量に代わり、温度の総和が適用される。温度の総和は、温度履歴が関数を用いてf(t)と表される場合に、加工開始タイミングからタイミングtiまでの温度履歴f(t)の区間積分として算出される。
【0148】
すなわち、第2変形例に係るブレード供給水温度履歴特徴量は、ブレード供給水温度及びブレード供給水温度の総和が適用される。第2変形例に係る発熱体供給水温度履歴特徴量は、発熱体供給水温度及び発熱体供給水温度の総和が適用される。第2変形例に係る室温履歴特徴量は、室温及び室温の総和が適用される。温度履歴特徴量の第2変形例は、加工状態履歴特徴量の変形例にも適用可能である。
【0149】
なお、実施形態に記載のブレード供給水温度の総和は、ブレード供給水の温度の積算の一例である。実施形態に記載の発熱体供給水温度の総和は、発熱体供給水の温度の積算の一例である。実施形態に記載の室温の総和は、加工環境の温度の積算の一例である。
【0150】
[温度特徴量の第3変形例]
図14は温度履歴特徴量の第3変形例の説明図である。第3変形例に係る温度履歴特徴量は、温度特徴量として1時間ごとの温度履歴が適用される。すなわち、第3変形例に係るブレード供給水温度特徴量は、1時間ごとのブレード供給水の温度履歴が適用される。第3変形例に係る発熱体供給水温度特徴量は、1時間ごとの発熱体供給水の温度履歴が適用される。第3変形例に係る室温特徴量は、1時間ごとの室温の履歴が適用される。
【0151】
温度履歴の期間を表す1時間は、2時間及び3時間などであってもよく、加工誤差の変化の時定数に応じて規定し得る。温度履歴のサンプル数は3以上であればよいが、サンプル数が多いほど高精度に加工誤差の導出を実現し得る。
【0152】
図15は第3変形例に係る温度履歴特徴量が学習データとして用いられる学習モデルの生成方法の模式図である。同図に示す学習データ収集工程S101では、用力情報から取得される温度履歴特徴量Tef(t)として、1時間分の温度履歴が適用される。また、画像情報から1時間ごとの加工誤差Er(t)が取得される。
【0153】
正解ラベル付与工程S102として、1時間分の温度履歴が適用される温度履歴特徴量Tef(t)に対して、1時間ごとの加工誤差Er(t)が付与される。例えば、加工開始から1時間が経過するまでの分の温度履歴特徴量Tef(t)に対して、加工開始から1時間が経過したタイミングの加工誤差が付与される。
【0154】
学習工程S104では、温度履歴特徴量Tef(t)と加工誤差Er(t)との組を学習データとして、学習モデル159に対す入力が温度履歴特徴量Tef(t)とされ、加工誤差Er(t)が正解データとされる教師あり学習が実施され、
図5に示す学習済の学習モデル158が生成される。
【0155】
[加工状態検出装置及び加工状態検出への適用例]
図4及び
図5に示す加工状態検出部140は、ダイシング装置10に適用される加工状態検出装置として機能し得る。加工状態検出装置はコンピュータが適用される。加工状態検出装置の各種の機能は、コンピュータがプログラムを実行して実現される。
【0156】
また、
図6に示す履歴情報生成工程S10、履歴特徴量導出工程S12及び加工誤差予測工程S14は、コンピュータである加工状態検出装置が上記した各工程を実施する加工状態予測方法として把握される。
【0157】
[実施形態の作用効果]
実施形態に係るダイシング装置10は以下の作用効果を得ることが可能である。
【0158】
〔1〕
加工中における任意のタイミングにおける温度履歴特徴量に基づき、加工中の温度が取得されるタイミングにおける加工誤差が予測される。温度履歴特徴量は、ブレード供給水の温度履歴特徴量、発熱体供給水の温度履歴特徴量及び室温履歴特徴量が含まれる。これにより、オペレータの判断が困難な、互いに因果関係が存在する複数の温度要因であり、変化の時定数が異なる複数の温度要因について、温度変化に対する加工誤差の予測が可能となる。
【0159】
〔2〕
加工誤差の予測は、学習済の学習モデル158が適用される。学習モデル158は、温度履歴特徴量と加工誤差との組を学習データとする学習であり、温度履歴特徴量が入力されると加工誤差の予測値が出力されるように学習が実施され、生成される。これにより、加工誤差の予測精度の向上が見込まれる。
【0160】
〔3〕
温度履歴特徴量は、温度履歴が取得されるタイミングにおける温度及び温度履歴が取得されるタイミングにおける単位時間あたりの温度の変化量が適用される。これにより、単位時間あたりの温度の変化量が考慮された加工誤差の予測を実施し得る。
【0161】
〔4〕
温度履歴特徴量は、温度履歴が取得されるタイミングにおける温度、温度履歴が取得されるタイミングにおける単位時間あたりの温度の変化量及び温度変化の向きが適用される。これにより、温度の変化の向きが考慮された加工誤差の予測を実施し得る。
【0162】
〔5〕
温度履歴特徴量は、温度履歴が取得されるタイミングにおける温度及び温度履歴が取得されるタイミングにおける温度の総和が適用される。これにより、温度の総和が考慮された加工誤差の予測を実施し得る。
【0163】
〔6〕
加工中の任意のタイミングにおける加工状態履歴特徴量に基づき、加工中の加工状態の変化が加味される加工誤差が予測される。これにより、加工状態の変化に起因する加工誤差が低減化される。
【0164】
〔7〕
加工誤差の予測値から加工誤差の推移を予測する解析部を備える。これにより、オペレータの経験則に基づく判断に依存することがなく、適切なタイミングにおける加工位置の補正が実施される。
【0165】
〔8〕
ダイシング装置10を稼働させた際に記憶される用力情報及び画像情報を用いて、学習モデル158の再学習が実施される。これにより、装置の環境に対応する設定及び条件だしなどが不要であり、ダイシング装置10の稼働回数の増加に応じて、的確な加工位置の補正を実施し得る。
【0166】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。また、実施形態、変形例及び応用例は適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0167】
10…ダイシング装置、12…ブレード、14…スピンドル、18…加工部、26…制御装置(装置制御手段)、100…システム制御部、102…加工制御部、106…ブレード供給水温度取得部、108…発熱体供給水温度取得部、110…室温取得部、120…コンピュータ可読媒体、122…メモリ、130…ブレード供給水温度検出部、132…発熱体供給水温度検出部、134…室温検出部、140…加工状態検出部、150…温度履歴生成部、152…温度履歴特徴量導出部、154…加工誤差予測部、156…解析部、158…学習モデル、160…加工条件取得部、162…学習モデル選択部、164…学習モデル記憶部、Er…加工誤差、Tef…温度履歴特徴量