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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146307
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ポリシロキサン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20241004BHJP
   C08G 77/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C07F7/18 X CSP
C08G77/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059119
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】海野 雅史
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ユジア
(72)【発明者】
【氏名】五月女 聖
(72)【発明者】
【氏名】飯島 孝幸
【テーマコード(参考)】
4H049
4J246
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP04
4H049VP05
4H049VP06
4H049VP07
4H049VP08
4H049VP09
4H049VP10
4H049VQ02
4H049VQ79
4H049VR22
4H049VR23
4H049VR41
4H049VR42
4H049VS16
4H049VS87
4H049VU20
4H049VV02
4H049VV06
4H049VV12
4H049VV16
4H049VW02
4H049VW35
4J246AA03
4J246AB01
4J246BA02X
4J246BB021
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA24X
4J246CA34X
4J246FA291
4J246FA431
4J246FA451
4J246FA461
4J246FC121
4J246FC291
4J246FE13
4J246GB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】1分子中のケイ素原子数が少ない低分子量ポリシロキサンを製造する方法。
【解決手段】特定のリチウムシラノレートと、非プロトン性極性溶媒及び無極性溶媒の存在下、特定のオルガノシロキサンを重合させて、下式(3)で表されるポリシロキサンを製造する。[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]モル比は5~100。オルガノシロキサン/リチウムシラノレートモル比は0.01~2。

(R1、R2は、C1~12の飽和脂肪族炭化水素基、芳香族基、又はC2~12のz-直鎖アルケニル基。R3、R5はH、C1~12の飽和脂肪族炭化水素基、芳香族基、又はC2~12のz-アルケニル基。R4はC1~12の飽和脂肪族炭化水素基。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)で表されるリチウムシラノレート(I)と、非プロトン性極性溶媒及び無極性溶媒の存在下、下記式(1)で表されるオルガノシロキサン(D3)を重合させて、下記式(3)で表されるポリシロキサンを製造する、ポリシロキサンの製造方法であって、
前記非プロトン性極性溶媒と無極性溶媒とのモル比([無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒])が5~100であって、前記オルガノシロキサン(D3)と前記リチウムシラノレート(I)のモル比([D3]/[I])が0.01~2であるポリシロキサンの製造方法。
【化1】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。)
【化2】
(式中、R3は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。R4は置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基を表す。)
【化3】
(式中、R1及びR2は前記式(1)におけるR1及びR2と同義であり、R3及びR4は前記式(2)におけるR3及びR4と同義である。R5は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。nは1~13の整数である。)
【請求項2】
1分子中に含まれるケイ素原子数が3~15である、下記式(3)で表されるポリシロキサン。
【化4】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。R3は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。R4は置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基を表す。R5は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。nは1~13の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサンの製造方法として、リチウム触媒を用いて環状オルガノシロキサンをアニオン重合することにより直鎖ポリシロキサンを得る方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1には、このアニオン重合に用いる溶媒について、「活性水素を有しない極性溶媒が望ましく、・・・・・・活性水素を有する溶媒では重合反応が阻害され、非極性溶媒の場合には全くといって良いほど重合反応が進まない。」と記載され、特許文献1の実施例では、テトラヒドロフランが使用されている。特許文献1の実施例では、触媒成分のブチルリチウムをヘキサン溶液として用いており、反応系には極性溶媒であるテトラヒドロフランと無極性溶媒であるヘキサンとが共存するが、その割合(モル比)は、特許文献1の実施例1では[ヘキサン/テトラヒドロフラン]=0.002、実施例2では[ヘキサン/テトラヒドロフラン]=0.001である。
【0003】
特許文献1の製造方法では、低分子領域で分子量の制御を行って1分子中のケイ素原子数が15以下であるような低分子量ポリシロキサンを得ることは難しい。このため、特許文献1の実施例1で製造されたポリシロキサンは、1分子中に含まれるケイ素原子数が実施例1では20、実施例2では32と、高分子量のポリシロキサンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-98631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、1分子中のケイ素原子数が少ない低分子量ポリシロキサンの製造方法、特に1分子中のケイ素原子数が3以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上であり、15以下、好ましくは13以下、より好ましくは11以下、さらに好ましくは9以下、最も好ましくは7以下に制御された低分子量ポリシロキサンの製造方法と、1分子中のケイ素原子数が3以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上であり、15以下、好ましくは13以下、より好ましくは11以下、さらに好ましくは9以下、最も好ましくは7以下に制御された低分子量ポリシロキサンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、環状オルガノシロキサンの開環重合を行う際に、非プロトン性極性溶媒と無極性溶媒とを所定の割合で併用することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0007】
[1] 下記式(2)で表されるリチウムシラノレート(I)と、非プロトン性極性溶媒及び無極性溶媒の存在下、下記式(1)で表されるオルガノシロキサン(D3)を重合させて、下記式(3)で表されるポリシロキサンを製造する、ポリシロキサンの製造方法であって、
前記非プロトン性極性溶媒と無極性溶媒とのモル比([無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒])が5~100であって、前記オルガノシロキサン(D3)と前記リチウムシラノレート(I)のモル比([D3]/[I])が0.01~2であるポリシロキサンの製造方法。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R3は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。R4は置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基を表す。)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、R1及びR2は前記式(1)におけるR1及びR2と同義であり、R3及びR4は前記式(2)におけるR3及びR4と同義である。R5は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。nは1~13の整数である。)
【0014】
[2] 1分子中に含まれるケイ素原子数が3~15である、下記式(3)で表されるポリシロキサン。
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。R3は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。R4は置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基を表す。R5は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。nは1~13の整数である。)
【発明の効果】
【0017】
本発明に従って、環状オルガノシロキサンの開環重合を行う際に、非プロトン性極性溶媒と無極性溶媒とを所定の割合で併用することにより、1分子中のケイ素原子数が少ない低分子量ポリシロキサン、特に分子量が小さい範囲で1分子中のケイ素原子数が制御されたポリシロキサンを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されるものではない。
【0019】
本発明のポリシロキサンの製造方法は、下記式(2)で表されるリチウムシラノレート(I)と、非プロトン性極性溶媒及び無極性溶媒の存在下、下記式(1)で表されるオルガノシロキサン(D3)を重合させて、下記式(3)で表されるポリシロキサンを製造する、ポリシロキサンの製造方法であって、
前記非プロトン性極性溶媒と無極性溶媒とのモル比([無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒])が5~100であって、前記オルガノシロキサン(D3)と前記リチウムシラノレート(I)のモル比([D3]/[I])が0.01~2であることを特徴とする。
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。)
【0022】
【化2】
【0023】
(式中、R3は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。R4は置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基を表す。)
【0024】
【化3】
【0025】
(式中、R1及びR2は前記式(1)におけるR1及びR2と同義であり、R3及びR4は前記式(2)におけるR3及びR4と同義である。R5は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。nは1~13の整数である。)
【0026】
<オルガノシロキサン(D3)>
本発明で用いるオルガノシロキサン(D3)は、下記式(1)で表される化合物である。
【0027】
【化1】
【0028】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。)
【0029】
R1及びR2の、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基としては、直鎖又は分岐の炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基は立体障害が小さいという理由で好ましい。
これらの飽和脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、フェニル基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、エーテル基等が挙げられる。
【0030】
R1及びR2の置換されていてもよい芳香族基とは、芳香族環がケイ素原子に直接結合しており、その芳香族環にはメチル基等のアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。好ましくはアルキル基で置換された芳香族基、又は無置換の芳香族基等の極性を持たないものがよく、より好ましくは無置換のフェニル基である。
【0031】
R1及びR2の置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)とは、ケイ素原子との結合側とは反対側の端部に二重結合を有し、かつ置換基を有していてもよい好ましくは炭素数2~12のアルケニル基であり、より好ましくは、炭素数2~7のアルケニル基、即ち、メチレン基が0~5個直列に連結し、先端にビニル基を有するものが挙げられる。具体的には、ビニル基(エテニル基)、ビニルメチル基(2-プロペニル基)、2-ビニルエチル基(3-ブテニル基)などが挙げられる。
また、これらのアルケニル基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基、アルケニル基、フェニル基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、エーテル基等が挙げられるが、好ましくは置換基を有さないアルケニル基であり、好ましくは置換基を有さないビニル基(エテニル基)である。
【0032】
前記式(1)で表されるオルガノシロキサン(D3)としては、具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサンなどが挙げられる。中でも、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、トリメチルトリビニルシクロトリシロキサンが好ましく、ヘキサメチルシクロトリシロキサンがより好ましい。このように、ケイ素原子に結合する基であるR1及びR2が、メチル基、エチル基、ビニル基のように嵩が低いものは、開環平衡反応が開環側に傾くため、重合反応が進行し易い。
【0033】
<リチウムシラノレート(I)>
本発明で用いるリチウムシラノレート(I)は、下記式(2)で表される化合物である。
【0034】
【化2】
【0035】
(式中、R3は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。R4は置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基を表す。Meはメチル基である。)
【0036】
R3の置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)としては、式(1)のR1及びR2の置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)として例示したものが挙げられ、好ましいものも同様である。
R4の置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基としては、R1及びR2の置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基として例示したものが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、n-ブチル基、t-ブチル基は原料試薬の入手が容易という理由で好ましい。
【0037】
本発明で用いるリチウムシラノレート(I)は公知の方法を用いて製造することができる。例えば、シクロトリシロキサン等のシロキサン環状体に、リチウム金属化合物又はリチウム金属を当量以上直接反応させることにより得ることができる。
リチウム金属化合物としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、フェニルブチルリチウム等が挙げられる。これらの化合物は、適切な溶媒に希釈して用いてもよい。また、リチウム金属化合物は、ハロゲン化化合物とリチウム金属をin-situで反応させて得ることもできる。
【0038】
リチウムシラノレート(I)は不安定であるため、in-situで製造することが好ましい。例えば、1当量のシクロトリシロキサンに3当量のリチウム金属化合物を添加して3当量のリチウムシラノレートを生成させることが好ましい。1当量のシクロトリシロキサンに対し、3当量未満のリチウム金属化合物を加えた場合でも、3当量を超えるリチウム金属化合物を加えた場合でも、生成するリチウムシラノレートのモル量は加えたリチウム金属化合物のモル量に等しくなる。
【0039】
<オルガノシロキサン(D3)とリチウムシラノレート(I)のモル比>
本発明に係るオルガノシロキサン(D3)の開環重合反応で用いるオルガノシロキサン(D3)とリチウムシラノレート(I)のモル比([D3]/[I])は0.01以上であり、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。一方、2以下であり、1.5以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。この比率が小さすぎると、未反応オルガノシロキサン(D3)が不足し重合反応が進みにくい傾向にある。一方、この比率が大きすぎると溶媒に対するオルガノシロキサン(D3)の量が過剰になるため、溶け残るオルガノシロキサン(D3)が生じて量比のコントロールが効かなくなる傾向にある。
【0040】
なお、[D3]/[I]モル比の計算方法については、後述の実施例の項において説明する。
【0041】
<非プロトン性極性溶媒>
非プロトン性溶媒とは、分子中にプロトン供与体となり得る基質を持たず、かつ分子内にダイポールモーメントがあるような溶媒である。
【0042】
本発明で用いる非プロトン性極性溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどが挙げられる。中でも、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルが好ましい。これらの非プロトン性極性溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
<無極性溶媒>
無極性溶媒とは、比誘電率が6より小さい常温常圧で液体の単体化合物を指す。本発明で用いる無極性溶媒としては、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。中でも、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、ジエチルエーテルが好ましく、特に好ましくはn-ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテルである。これらの無極性溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
<無極性溶媒と非プロトン性極性溶媒のモル比>
本発明においては、無極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とを無極性溶媒と非プロトン性極性溶媒のモル比([無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒])が5~100の範囲となるように、これらを併用する。このモル比が100を超え、無極性溶媒が多く、非プロトン性極性溶媒が少ないと、原料であるオルガノシロキサン(D3)が溶けずに反応が進行しない傾向がある。一方、このモル比が5未満で、無極性溶媒が少なく、非プロトン性極性溶媒が多いと、反応が速すぎて、分子量の小さい領域でケイ素原子数が制御されたポリシロキサンを得ることが困難になる傾向がある。このような観点から[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]は、5~100であり、5~60が好ましく、5~50がより好ましい。
【0045】
なお、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]モル比の計算方法については、後述の実施例の項において説明する。
【0046】
<反応温度>
本発明における反応温度は、-20~80℃が好ましく、-10~40℃がより好ましく、0~30℃が更に好ましい。
【0047】
<反応時間>
本発明における反応時間は5~48時間が好ましく、5~24時間がより好ましい。
【0048】
<ポリシロキサン>
無極性溶媒と非プロトン性極性溶媒とを所定のモル比で併用する本発明のポリシロキサンの製造方法によれば、分子量が小さい範囲で1分子中のケイ素原子数が制御されたポリシロキサンを製造することができ、好ましくは1分子中に含まれるケイ素原子数が3~15である、下記式(3)で表される本発明のポリシロキサンを製造することができる。
【0049】
【化3】
【0050】
(式中、R1及びR2は前記式(1)におけるR1及びR2と同義であり、R3及びR4は前記式(2)におけるR3及びR4と同義である。R5は水素原子、置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、又は置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)を表す。nは1~13の整数である。)
【0051】
式(3)中のR1、R2、R3、R4は前記の通りである。
【0052】
R5の置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)としては、式(1)のR1及びR2の置換されていてもよい炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)として例示したものが挙げられ、好ましいものも同様である。
R5は、特に好ましくは官能基変換の容易性から水素原子または置換されていてもよい炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)であり、さらに好ましくは水素原子または置換されていない炭素数2~12のz-直鎖アルケニル基(ここで、zはアルケニル基の二重結合の位置を示す数値であり、アルケニル基の炭素数-1の整数である。)である。
nは1以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、13以下、好ましくは11以下、より好ましくは9以下、さらに好ましくは7以下、最も好ましくは5以下である。
【0053】
前記式(3)で表される本発明のポリシロキサンの1分子中に含まれるケイ素原子数は3以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上であり、15以下、好ましくは13以下、より好ましくは11以下、さらに好ましくは9以下、最も好ましくは7以下である。
なお、ここで、ポリシロキサンの1分子中に含まれるケイ素原子数は、H-NMRチャートにおける末端官能基とケイ素原子上の置換基のピークの積分比から算出される値であり、より具体的には、後述の実施例の項に記載の方法で求められる。
ただし、R1~R5の全てがメチル基の場合、H-NMRによる1分子中のケイ素原子数の算出が困難なため、他の方法を採用することが望ましい。
【実施例0054】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
[測定・算出方法]
以下における各種パラメータの測定・算出方法は以下の通りである。
【0056】
<1分子中のケイ素原子数>
得られたサンプル7mgを重クロロホルム0.98gに溶かして、日本電子社核磁気共鳴装置を用いて400MHzの磁場をかけて室温条件でH-NMR測定を実施した。得られたチャートの帰属を行い、末端ケイ素原子上の置換基と繰り返し単位であるケイ素原子上の置換基とのピークの積分比(a:b)を算出した。ピークの積分比をそれぞれの置換基に帰属される水素原子数(c,d)で除することにより、1分子中に含まれる置換基数の比(a/c:b/d)を算出した。このa,b,c,d及び、式(1)中のR1とR2から決定される定数mを用いて、下式からポリシロキサン1分子中のケイ素原子数(x)を決定した。ここでmは式(1)中のR1とR2が同じ時m=2であり、式(1)中のR1とR2が異なる時m=1である。
x=1/m(b/d / a/c -1)+1
【0057】
<リチウムシラノレート量>
以下の実施例ではリチウム金属化合物としてn-ブチルリチウムを選択し、シクロトリシロキサンと反応させてリチウムシラノレートをin-situで得た。各実施例におけるn-ブチルリチウムの添加量を物質量に換算した値をリチウムシラノレート量(mol)とした。
【0058】
<[D3]/[I]モル比>
モル比([D3]/[I])は、加えたオルガノシロキサン(D3)のモル量を加えたリチウム金属化合物のモル量で除することで算出した。
【0059】
<[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]モル比>
非プロトン性極性溶媒の容量をvmL、無極性溶媒の容量をvmLとすると、非プロトン性極性溶媒と無極性溶媒のモル比([無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒])(y)は以下の式で表される。ここでρ、ρ、n、nはそれぞれ順に、非プロトン性極性溶媒の常温常圧での密度、無極性溶媒の常温常圧での密度、非プロトン性極性溶媒の分子量、無極性溶媒の分子量を表している。なお、下記実施例で用いたテトラヒドロフランはρ=0.889g/mL、n=72.11g/molであり、n-ヘキサンはρ=0.655g/mL、n=86.18g/molであり、トルエンはρ=0.867g/mL、n=92.14g/molであり、ジエチルエーテルはρ=0.713g/mL、n=74.12g/molである。
【0060】
【数1】
【0061】
[実施例1]
トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン(1.10mL、4.1mmol)と脱水トルエン(1.23mL)を100mLの3口ナスフラスコに入れて、アルゴン雰囲気下で溶解させた。メチルリチウム(1.04Mジエチルエーテル溶液、12.80mL、13.3mmol)を室温でゆっくり滴下し、滴下完了後30分撹拌を継続し、反応を進行させた。その後、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)(620mg、2.8mmol)と脱水テトラヒドロフラン(THF)(0.192mL、2.4mmol)をこの順で室温にて添加した。この反応液を室温で5時間撹拌し、Li末端をキャップする目的でジメチルクロロシラン(1.40mL、12.8mmol)を加えた後、一晩室温で撹拌した。反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムを用いて脱水を行った。得られた溶液に対してロータリーエバポレーターを用いて1.5時間かけて溶媒除去を行った。この操作により無色透明な液体(0.64g)が得られた。
【0062】
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.73~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.06~0.19ppmのピークの積分比が3.00:37.92であったことから、このポリシロキサン1分子には平均6.8個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、ジエチルエーテル量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す。
【0063】
[実施例2]
トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン(0.54mL、2.0mmol)と脱水トルエン(0.60mL)を100mLの3口ナスフラスコに入れて、アルゴン雰囲気下で溶解させた。メチルリチウム(1.04Mジエチルエーテル溶液、5.77mL、6.00mmol)を室温でゆっくり滴下し、滴下完了後30分撹拌を継続し、反応を進行させた。その後、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)(300mg、1.3mmol)と脱水テトラヒドロフラン(THF)(0.93mL、11.5mmol)をこの順で室温にて添加した。この反応液を室温で24時間撹拌し、Li末端をキャップする目的でジメチルクロロシラン(0.67mL、6.1mmol)を加えた後、一晩室温で撹拌した。反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムを用いて脱水を行った。得られた溶液に対してロータリーエバポレーターを用いて2時間かけて溶媒除去を行った。この操作により無色透明な液体(0.50g)が得られた。
【0064】
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.73~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.06~0.19ppmのピークの積分比が3.01:35.09であったことから、このポリシロキサン1分子には平均6.3個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、ジエチルエーテル量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す。
【0065】
[実施例3]
トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン(0.54mL、2.0mmol)と脱水トルエン(0.60mL)を100mLの3口ナスフラスコに入れて、アルゴン雰囲気下で溶解させた。メチルリチウム(1.04Mジエチルエーテル溶液、5.77mL、6.00mmol)を室温でゆっくり滴下し、滴下完了後30分撹拌を継続し、反応を進行させた。その後、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)(300mg、1.3mmol)と脱水テトラヒドロフラン(THF)(0.09mL、1.1mmol)をこの順で室温にて添加した。この反応液を室温で24時間撹拌し、Li末端をキャップする目的でジメチルクロロシラン(0.70mL、6.4mmol)を加えた後、一晩室温で撹拌した。反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムを用いて脱水を行った。得られた溶液に対してロータリーエバポレーターを用いて2時間かけて溶媒除去を行った。この操作により無色透明な液体(0.28g)が得られた。
【0066】
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.73~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.06~0.19ppmのピークの積分比が3.00:33.17であったことから、このポリシロキサン1分子には平均6.0個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、ジエチルエーテル量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す
【0067】
[実施例4]
用いるヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)の量を0.67g、3.0mmolに、用いるテトラヒドロフラン(THF)の量を0.50mL、6.2mmolに変更したこと以外は、実施例3と同様にしてポリシロキサンの合成を行った。
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.74~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.05~0.19ppmのピークの積分比が3:31.05であったことから、このポリシロキサン1分子には平均5.7個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、n-ヘキサン量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す。
【0068】
[実施例5]
用いるヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)の量を1.33g、6.0mmolに、用いるテトラヒドロフラン(THF)の量を0.30mL、3.7mmolに変更したこと以外は、実施例3と同様にしてポリシロキサンの合成を行った。
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.74~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.05~0.19ppmのピークの積分比が3:51.06であったことから、このポリシロキサン1分子には平均9.0個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、n-ヘキサン量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す。
【0069】
[実施例6]
トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン(0.54mL、2.0mmol)と脱水トルエン(2.20mL)を100mLの3口ナスフラスコに入れて、アルゴン雰囲気下で溶解させた。メチルリチウム(1.04Mジエチルエーテル溶液、5.77mL、6.0mmol)を室温でゆっくり滴下し、滴下完了後30分撹拌を継続し、反応を進行させた。その後、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)(2.00g、9.0mmol)と脱水ジメチルホルムアミド(DMF)(0.19mL、2.5mmol)をこの順で室温にて添加した。この反応液を室温で5時間撹拌し、Li末端をキャップする目的でジメチルクロロシラン(0.70mL、6.4mmol)を加えた後、一晩室温で撹拌した。反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムを用いて脱水を行った。得られた溶液に対してロータリーエバポレーターを用いて1.5時間かけて溶媒除去を行った。この操作により無色透明な液体が得られた。
【0070】
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.73~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.06~0.19ppmのピークの積分比が3:48.25であったことから、このポリシロキサン1分子には平均8.5個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、ジエチルエーテル量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す。
【0071】
[実施例7]
トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン(0.54mL、2.0mmol)と脱水トルエン(1.60mL)を100mLの3口ナスフラスコに入れて、アルゴン雰囲気下で溶解させた。メチルリチウム(1.04Mジエチルエーテル溶液、5.77mL、6.0mmol)を室温でゆっくり滴下し、滴下完了後に脱水ノルマルヘキサン(2.00mL)を加えた。30分撹拌を継続し、反応を進行させた後、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)(1.33g、6.0mmol)と脱水テトラヒドロフラン(THF)(0.30mL、3.7mmol)をこの順で室温にて添加した。この反応液を室温で5時間撹拌し、Li末端をキャップする目的でジメチルクロロシラン(0.70mL、6.4mmol)を加えた後、一晩室温で撹拌した。反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムを用いて脱水を行った。得られた溶液に対してロータリーエバポレーターを用いて1.5時間かけて溶媒除去を行った。この操作により無色透明な液体が得られた。
【0072】
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.73~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.06~0.19ppmのピークの積分比が3:42.32であったことから、このポリシロキサン1分子には平均7.6個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、ジエチルエーテル量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す。
【0073】
[実施例8]
トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン(0.54mL、2.0mmol)と脱水トルエン(0.60mL)を100mLの3口ナスフラスコに入れて、アルゴン雰囲気下で溶解させた。ノルマルブチルリチウム(1.6Mノルマルヘキサン溶液、3.80mL、6.0mmol)を室温でゆっくり滴下した。滴下完了後30分撹拌を継続し、反応を進行させた後、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)(0.67g、3.0mmol)と脱水テトラヒドロフラン(THF)(0.28mL、3.4mmol)をこの順で室温にて添加した。この反応液を室温で5時間撹拌し、Li末端をキャップする目的でジメチルクロロシラン(0.70mL、6.4mmol)を加えた後、一晩室温で撹拌した。反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムを用いて脱水を行った。得られた溶液に対してロータリーエバポレーターを用いて1.5時間かけて溶媒除去を行った。この操作により無色透明な液体が得られた。
【0074】
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.73~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.06~0.19ppmのピークの積分比が3:19.6であったことから、このポリシロキサン1分子には平均3.8個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、ジエチルエーテル量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す。
【0075】
[実施例9]
用いるヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)の量を1.33g、6.0mmolに、用いるテトラヒドロフラン(THF)の量を0.16mL、2.0mmolに変更したこと以外は、実施例8と同様にしてポリシロキサンの合成を行った。
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.74~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.05~0.19ppmのピークの積分比が3:35.94であったことから、このポリシロキサン1分子には平均6.5個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、n-ヘキサン量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す。
【0076】
[実施例10]
トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン(0.54mL、2.0mmol)と脱水トルエン(2.20mL)を100mLの3口ナスフラスコに入れて、アルゴン雰囲気下で溶解させた。ノルマルブチルリチウム(1.6Mノルマルヘキサン溶液、3.80mL、6.0mmol)を室温でゆっくり滴下した。滴下完了後30分撹拌を継続し、反応を進行させた後、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)(2.00g、9.0mmol)と脱水ジメチルホルムアミド(DMF)(0.15mL、1.9mmol)をこの順で室温にて添加した。この反応液を室温で5時間撹拌し、Li末端をキャップする目的でジメチルクロロシラン(0.70mL、6.4mmol)を加えた後、一晩室温で撹拌した。反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムを用いて脱水を行った。得られた溶液に対してロータリーエバポレーターを用いて1.5時間かけて溶媒除去を行った。この操作により無色透明な液体が得られた。
【0077】
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.73~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.06~0.19ppmのピークの積分比が3:26.28であったことから、このポリシロキサン1分子には平均4.9個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、ジエチルエーテル量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す。
【0078】
[実施例11]
トリメチルトリビニルシクロトリシロキサン(0.54mL、2.0mmol)と脱水トルエン(1.60mL)を100mLの3口ナスフラスコに入れて、アルゴン雰囲気下で溶解させた。ノルマルブチルリチウム(1.6Mノルマルヘキサン溶液、3.80mL、6.0mmol)を室温でゆっくり滴下し、滴下完了後に脱水ノルマルヘキサン(2.00mL)を加えた。30分撹拌を継続し、反応を進行させた後、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)(1.33g、6.0mmol)と脱水テトラヒドロフラン(THF)(0.16mL、2.0mmol)をこの順で室温にて添加した。この反応液を室温で5時間撹拌し、Li末端をキャップする目的でジメチルクロロシラン(0.70mL、6.4mmol)を加えた後、一晩室温で撹拌した。反応液をジエチルエーテルで3回抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、その後無水硫酸ナトリウムを用いて脱水を行った。得られた溶液に対してロータリーエバポレーターを用いて1.5時間かけて溶媒除去を行った。この操作により無色透明な液体が得られた。
【0079】
得られた無色透明の液体にH-NMR測定を実施したところ、目的物の生成が確認された。また、末端ビニル基に帰属される5.73~6.10ppmのピークとSi上メチル基に帰属される0.06~0.19ppmのピークの積分比が3:20.41であったことから、このポリシロキサン1分子には平均3.9個のSi原子が含まれていることになる。
本実施例におけるリチウムシラノレート(I)量、オルガノシロキサン(D3)量、[D3]/[I]、トルエン量、ジエチルエーテル量、THF量、[無極性溶媒]/[非プロトン性極性溶媒]、1分子中のケイ素原子数について表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1より、本発明の条件で合成を行うことによって、1分子中のケイ素原子量数が3以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上であり、15以下、好ましくは13以下、より好ましくは11以下、さらに好ましくは9以下、最も好ましくは7以下に制御されたポリシロキサンを得ることができることが分かる。