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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146460
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 45/00 20060101AFI20241004BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241004BHJP
【FI】
C08L45/00
C08K7/14
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059365
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 慎介
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BK001
4J002DA027
4J002DA037
4J002DE077
4J002DE107
4J002DE127
4J002DE137
4J002DE147
4J002DE187
4J002DE237
4J002DG047
4J002DJ017
4J002DJ047
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD017
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】流動性に優れるとともに、成形体に優れた剛性およびウェルド強度を発揮させ得る樹脂組成物の提供。
【解決手段】環状オレフィン系樹脂、ガラス繊維および粒状フィラーを含む樹脂組成物であって、前記環状オレフィン系樹脂の含有量が、前記環状オレフィン系樹脂と前記ガラス繊維の合計含有量100質量部当たり、30質量部以上90質量部以下であり、前記粒状フィラーの含有量が、前記環状オレフィン系樹脂と前記ガラス繊維の合計含有量100質量部当たり、0.05質量部以上5質量部未満である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂、ガラス繊維および粒状フィラーを含む樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系樹脂の含有量が、前記環状オレフィン系樹脂と前記ガラス繊維の合計含有量100質量部当たり、30質量部以上90質量部以下であり、
前記粒状フィラーの含有量が、前記環状オレフィン系樹脂と前記ガラス繊維の合計含有量100質量部当たり、0.05質量部以上5質量部未満である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記粒状フィラーの平均粒子径が0.01μm以上0.1μm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状オレフィン系樹脂の含有量が、前記環状オレフィン系樹脂と前記ガラス繊維の合計含有量100質量部当たり、35質量部以上60質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の樹脂組成物を成形してなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形体に補強や各種機能を付与することを目的として、当該成形体の材料である樹脂組成物にフィラーを配合することが行われている。
【0003】
具体的には、特許文献1では、結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物と、ウィスカと、白色顔料とを所定の量比で含んでなる樹脂組成物が開示されている。そして、特許文献1によれば、当該樹脂組成物は、高温環境下でも変性せず、また光反射率も低下しない光反射体を得るのに好適に使用され得る。
また、特許文献2では、結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物と、ガラスフィラーとを所定の量比で含んでなる樹脂組成物が開示されている。そして、特許文献2によれば、当該樹脂組成物は、容易に成形でき、かつ優れた成形性を示す、高誘電率、低誘電正接材料として使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-178580号公報
【特許文献2】特開2013-256596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の樹脂組成物には、流動性を更に向上させるという点において未だ改善の余地があった。また、上記従来の樹脂組成物を用いて得られる成形体には、剛性を一層高めることも求められていた。特に、上記従来の樹脂組成物を用いて射出成形により形成した成形体では、金型内で溶融樹脂が合流する部分にウェルドが発生し、当該ウェルドが脆弱である(即ち、成形体がウェルド強度に劣る)という問題が生じる場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、流動性に優れるとともに、成形体に優れた剛性およびウェルド強度を発揮させ得る樹脂組成物の提供を目的とする。
また、本発明は、剛性およびウェルド強度に優れる成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、環状オレフィン系樹脂、ガラス繊維および粒状フィラーをそれぞれ所定の割合で含有する樹脂組成物が流動性に優れるとともに、当該樹脂組成物を用いれば剛性およびウェルド強度に優れる成形体を形成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明によれば、下記〔1〕~〔3〕の樹脂組成物、および下記〔4〕の成形体が提供される。
【0009】
〔1〕環状オレフィン系樹脂、ガラス繊維および粒状フィラーを含む樹脂組成物であって、前記環状オレフィン系樹脂の含有量が、前記環状オレフィン系樹脂と前記ガラス繊維の合計含有量100質量部当たり、30質量部以上90質量部以下であり、前記粒状フィラーの含有量が、前記環状オレフィン系樹脂と前記ガラス繊維の合計含有量100質量部当たり、0.05質量部以上5質量部未満である、樹脂組成物。
このように、環状オレフィン系樹脂、ガラス繊維および粒状フィラーをそれぞれ上述した量比で含有する樹脂組成物は、流動性に優れる。また、当該樹脂組成物を用いれば、剛性およびウェルド強度に優れる成形体を作製することができる。
【0010】
〔2〕前記粒状フィラーの平均粒子径が0.01μm以上0.1μm以下である、上記〔1〕に記載の樹脂組成物。
なお、本発明において、粒状フィラーの「平均粒子径」とは、電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径を意味し、より詳細には本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0011】
〔3〕前記環状オレフィン系樹脂の含有量が、前記環状オレフィン系樹脂と前記ガラス繊維の合計含有量100質量部当たり、35質量部以上60質量部以下である、上記〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物。
環状オレフィン系樹脂とガラス繊維の量比が上述した範囲内である樹脂組成物によれば、成形体の剛性およびウェルド強度を一層高めることができる。
【0012】
〔4〕上記〔1〕~〔3〕の何れかに記載の樹脂組成物を成形してなる、成形体。
このように、上述した何れかの樹脂組成物を成形してなる成形体は、剛性およびウェルド強度に優れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流動性に優れるとともに、成形体に優れた剛性およびウェルド強度を発揮させ得る樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、剛性およびウェルド強度に優れる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、本発明の成形体を作製する際に用いることができる。また、本発明の成形体は、特に限定されることなく、例えば、医療機器部品や分析機器部品などの一部または全部を構成する部材として用いることができる。
【0015】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂、ガラス繊維、および粒状フィラーを含むことを必要とし、任意に、環状オレフィン系樹脂、ガラス繊維および粒状フィラー以外の成分(その他の成分)を含むことができる。
【0016】
そして、本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂、ガラス繊維、および粒状フィラーを所定の量比で含むため、流動性に優れる上、当該樹脂組成物を用いれば、剛性およびウェルド強度に優れる成形体を作製することができる。かかる本発明の樹脂組成物を用いることで、上記の効果が得られる理由は定かではないが、以下の通りであると推察される。
【0017】
まず、本発明の樹脂組成物は、機械的強度などに優れる環状オレフィン系樹脂と、成形体の剛性を向上させ得るフィラー(ガラス繊維および粒状フィラー)を含む。ここで、樹脂組成物にフィラーを配合すると、成形体の剛性を向上させ得る一方で、樹脂組成物の流動性が低下してしまうことが知られている。しかし、環状オレフィン系樹脂に、ガラス繊維と粒状フィラーというアスペクト比の異なる二種類のフィラーを所定の量比で配合すると、樹脂組成物の流動性を大きく低下させることなく、成形体の剛性およびウェルド強度を向上させ得ることが、本発明者の検討により新たに明らかになった。換言すると、本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂に、ガラス繊維および粒状フィラーを所定の量比で配合してなるため、樹脂組成物の流動性の向上と、成形体の剛性およびウェルド強度の向上とを良好に両立することができる。
【0018】
<環状オレフィン系樹脂>
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、環状オレフィンの開環重合体、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物、および環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体などが挙げられる。これらの環状オレフィン系樹脂は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
そして、樹脂組成物の流動性を更に向上させつつ成形体の剛性およびウェルド強度を一層高める観点からは、環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物であることが好ましい。
【0019】
<<環状オレフィンの開環重合体>>
環状オレフィンの開環重合体は、1種類または複数種類の環状オレフィンが開環重合された重合体である。
【0020】
環状オレフィンの具体例としては、特に限定されないが、1環(単環)、2環、3環、4環、および5環以上の環状オレフィン、ならびに環に置換基を有するこれらの誘導体が挙げられる。
【0021】
1環(単環)の環状オレフィンとしては、特に限定されないが、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン等が挙げられる。
【0022】
2環の環状オレフィンとしては、特に限定されないが、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、5-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5,5-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクタデシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-プロペニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン等が挙げられる。
【0023】
3環の環状オレフィンとしては、特に限定されないが、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン、以下、「DCP」と略記することがある。)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3-エン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-3,9-ジエン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-4,9-ジエン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-9-エン、5-シクロペンチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン等が挙げられる。
【0024】
4環の環状オレフィンとしては、特に限定されないが、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン(単に「テトラシクロドデセン」ともいう。)、9-メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-プロペニル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう。)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ-4,6,8,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9,9a,10-ヘキサヒドロアントラセンともいう。)等が挙げられる。
【0025】
5環以上の環状オレフィンとしては、特に限定されないが、(E)9-シクロペンチル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキシル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキセニル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]-4-ペンタデセン、9-フェニル-シクロペンチル-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,16]-14-エイコセン等が挙げられる。
【0026】
上記環状オレフィンの誘導体が環に有する置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基等が挙げられる。
【0027】
環状オレフィンは、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。そして環状オレフィンとしては、得られる成形体の剛性およびウェルド強度を一層高める観点からDCPが好ましい。
【0028】
環状オレフィンの開環重合体の調製方法としては、特に限定されることはなく、上述した環状オレフィンを開環重合させるための既知の方法、例えば、メタセシス重合などを用いることができる。
【0029】
環状オレフィンの開環重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。
また、環状オレフィン開環重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1以上4以下、より好ましくは1.5以上3.5以下である。
なお、本発明において、環状オレフィンの開環重合体などの重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)による標準ポリイソプレン換算値である。
【0030】
<<環状オレフィンの開環重合体の水素添加物>>
環状オレフィンの開環重合体の水素添加物は、上述した環状オレフィンの開環重合体が水素添加されたものである。
環状オレフィンの開環重合体に水素添加する方法としては、特に限定されることはなく、既知の方法を用いることができ、例えば、上記環状オレフィンの開環重合体の溶液に、ニッケルおよびパラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素添加触媒を添加して、当該開環重合体中の炭素-炭素二重結合を水素添加する方法などが挙げられる。
また、水素添加率としては、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。
なお、水素添加率は、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0031】
<<環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体>>
環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体は、通常、環状オレフィンと鎖状オレフィンとが付加共重合された重合体である。
【0032】
環状オレフィンとしては、上述した環状オレフィンの開環重合体の調製に用いられる環状オレフィンと同様のものを用いることができる。中でも、環状オレフィンとしては、ノルボルネンが好ましい。
【0033】
鎖状オレフィンの具体例としては、上述した環状オレフィンと共重合可能であれば、特に限定されることはなく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどの炭素数2以上20以下の直鎖状または分岐状のオレフィンが挙げられる。
鎖状オレフィンは、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、鎖状オレフィンとしては、エチレンが好ましい。
【0034】
環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体の調製方法としては、特に限定されることはなく、上述した環状オレフィンと鎖状オレフィンとを共重合させるための既知の方法を用いることができる。
【0035】
ここで、本発明の樹脂組成物に含まれる環状オレフィン系樹脂は、成形体の剛性を一層高める観点から、結晶性であることが好ましい。なお、本発明において、環状オレフィン系樹脂が「結晶性である」とは、JIS K7121に従う示差走査熱量測定(DSC)法に従う測定により、融点が検出されることを意味する。
【0036】
<ガラス繊維>
本発明の樹脂組成物に配合するガラス繊維の形態としては、特に限定されないが、例えば、チョップドストランド、ミルドファイバー、フィラメント、クロス、ステープルヤーン等が挙げられる。
なお、ガラス繊維は、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
ここで、本発明の樹脂組成物に含まれるガラス繊維は、平均直径が5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。樹脂組成物中のガラス繊維の平均直径が上記下限値以上であれば、樹脂組成物の流動性を更に向上させることができる。また、樹脂組成物中のガラス繊維の平均直径が上記上限値以下であれば、成形体の剛性を一層高めることができる。
【0038】
そして、本発明の樹脂組成物に含まれるガラス繊維は、平均長さが0.13mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.26mm以上であることが更に好ましく、3.2mm以下であることが好ましく、2.6mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることが更に好ましい。樹脂組成物中のガラス繊維の平均長さが上記下限値以上であれば、成形体の剛性を一層高めることができる。また、樹脂組成物中のガラス繊維の平均長さが上記上限値以下であれば、樹脂組成物の流動性を更に向上させることができる。
なお、樹脂組成物中に含まれるガラス繊維の「平均直径」および「平均長さ」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0039】
また、樹脂組成物中におけるガラス繊維のアスペクト比(長径/短径)は、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることが更に好ましく、250以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、150以下であることが更に好ましい。樹脂組成物中のガラス繊維のアスペクト比が上記下限値以上であれば、成形体の剛性を一層高めることができる。また、樹脂組成物中のガラス繊維のアスペクト比が上記上限値以下であれば、樹脂組成物の流動性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、ガラス繊維の「アスペクト比」は、ガラス繊維の平均直径に対する平均長さの比(平均長さ/平均直径)を算出することにより求めることができる。
【0040】
ここで、ガラス繊維は表面処理されていることが好ましい。表面処理に用いる表面処理剤としては、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤、不飽和カルボン酸またはその無水物などが挙げられる。シランカップリング剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ヘキサメチルシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。また、不飽和カルボン酸またはその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸無水物;などが挙げられる。これらの中でも、ジカルボン酸およびその無水物が好ましい。なお、表面処理剤は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
<粒状フィラー>
粒状フィラーとしては、特に限定されることなく、炭素系粒状フィラーおよび非炭素系粒状フィラーを用いることができる。
炭素系粒状フィラーとしては、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;黒鉛ブラック、ケッチェンブラック、酸化ブラックなどのカーボンブラック;が挙げられる。
非炭素系粒状フィラーとしては、例えば、アルミナ(Al)、タルク(MgSi10(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化亜鉛(ZnO)、シリカ(SiO)、酸化チタン(III)(Ti)、酸化チタン(IV)(TiO)、チタン酸カリウム(KTiO)[nは1以上12以下の整数である。]、硫酸バリウム(BaSO)、三酸化アンチモン(Sb)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))などが挙げられる。
これらの粒状フィラーは、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上述した中でも、粒状フィラーとしては、樹脂組成物の流動性を更に向上させつつ成形体の剛性およびウェルド強度を一層高める観点から、カーボンブラック、アルミナが好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
【0043】
<<平均粒子径>>
ここで、粒状フィラーは、平均粒子径が0.01μm以上であることが好ましく、0.015μm以上であることがより好ましく、0.1μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましく、0.07μm以下であることが更に好ましい。粒状フィラーの平均粒子径が0.01μm以上であれば、成形体の剛性を一層高めることができる。また、粒状フィラーの平均粒子径が0.1μm以下であれば、樹脂組成物の流動性を更に向上させることができる。
【0044】
そして、粒状フィラーのアスペクト比(長径/短径)は、通常5以下であり、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。粒状フィラーのアスペクト比が上記値以下であれば、樹脂組成物の流動性を更に向上させるとともに、成形体のウェルド強度を一層高めることができる。また、粒状フィラーのアスペクト比は、1以上であり、1超であってもよい。
なお、本発明において、粒状フィラーの「アスペクト比」は、任意の50個の粒状フィラーについて、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。なお径が均一であり長径と短径が特定できない場合、アスペクト比は1となる。
【0045】
<各成分の含有量>
ここで、樹脂組成物中の環状オレフィン系樹脂の含有量は、環状オレフィン系樹脂とガラス繊維の合計含有量100質量部当たり、30質量部以上90質量部以下であることが必要であり、35質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、45質量部以上であることが更に好ましく、80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることが更に好ましく、55質量部未満であることが特に好ましい。樹脂組成物中の環状オレフィン系樹脂の含有量が、環状オレフィン系樹脂とガラス繊維の合計含有量100質量部当たり30質量部未満であると、樹脂組成物を調製する際に十分な混練を行うことができない虞があり、また成形体のウェルド強度が低下する。一方、樹脂組成物中の環状オレフィン系樹脂の含有量が、環状オレフィン系樹脂とガラス繊維の合計含有量100質量部当たり90質量部超であると、成形体の剛性が低下する。
【0046】
そして、樹脂組成物中の粒状フィラーの含有量は、環状オレフィン系樹脂とガラス繊維の合計含有量100質量部当たり、0.05質量部以上5質量部未満であることが必要であり、0.06質量部以上であることが好ましく、0.07質量部以上であることがより好ましく、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが更に好ましい。樹脂組成物中の粒状フィラーの含有量が、環状オレフィン系樹脂とガラス繊維の合計含有量100質量部当たり0.05質量部未満であると、樹脂組成物の流動性が低下するとともに、成形体のウェルド強度が低下する。一方、樹脂組成物中の粒状フィラーの含有量が、環状オレフィン系樹脂とガラス繊維の合計含有量100質量部当たり5質量部以上であると、樹脂組成物の流動性が低下する。
【0047】
<その他の成分>
その他の成分としては、特に限定されないが、酸化防止剤、耐湿剤、離型剤、難燃剤、抗菌剤、木粉、カップリング剤、可塑剤、着色剤、滑剤、シリコンオイル、発泡剤、界面活性剤、熱可塑性エラストマー、赤外線吸収剤、耐光安定剤などのその他の添加剤を配合することもできる。その他の成分は、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物は、特に限定されることなく、例えば、上述した必須の含有成分である環状オレフィン系重合体、ガラス繊維、および粒状フィラー、ならびに任意に用いられるその他の成分を良好に混合させ得る方法により調製することができる。そのような方法としては、例えば、環状オレフィン系重合体、ガラス繊維、および粒状フィラー、ならびに任意に用いられるその他の成分の混合物を溶融混練機に供給し、環状オレフィン系重合体を溶融状態にして混練する方法が挙げられる。なお、得られた樹脂組成物は、任意の方法によりペレット状などに成形してもよい。
混練するために、例えば単軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の溶融混練機を用いることができる。混練温度は、好ましくは200℃以上、より好ましくは240℃以上、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下である。また、混練するに際しては、各成分を一括して混練しても数回に分けて添加しながら混練してもよい。
【0049】
ここで、ガラス繊維は、樹脂組成物を調製する際の混合により切断され、そのアスペクト比が短くなる場合がある。この点を踏まえ、得られる樹脂組成物におけるガラス繊維のアスペクト比を「ガラス繊維」の項で上述した好適範囲内に良好に収める観点から、樹脂組成物の調製に用いる材料としての(即ち、混合前の)ガラス繊維のアスペクト比は、150以上であることが好ましく、180以上であることがより好ましく、200以上であることが更に好ましく、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、600以下であることが更に好ましい。
【0050】
(成形体)
本発明の成形体は、上述した本発明の樹脂組成物を成形してなる。すなわち、本発明の成形体に含有される環状オレフィン系重合体、ガラス繊維、および粒状フィラー、ならびに任意に用いられるその他の成分は、「樹脂組成物」の項で上述したものである。また、本発明の成形体に含有される環状オレフィン系重合体、ガラス繊維および粒状フィラーの含有量の関係(含有量比)ならびに属性は、通常、樹脂組成物中におけるそれらの含有量の関係(含有量比)ならびに属性と同じである。
そして、本発明の成形体は、上述した本発明の樹脂組成物から形成されたものであるため、剛性およびウェルド強度に優れる。
【0051】
なお、本発明の成形体を作製する際の成形方法は、特に限定されず、成形体の所望の形状に応じて既知の成形方法から適宜選択し得る。このような既知の成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形、熱成形等が挙げられる。これらの中でも、成形方法として、射出成形を用いることが好ましい。
【実施例0052】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される単量体単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。そして、実施例および比較例において、環状オレフィン系樹脂の水素添加率、ガラス繊維の性状(平均長さ、平均直径)、粒状フィラーの平均粒子径、樹脂組成物のMFR向上率、ならびに、成形体の曲げ弾性率およびウェルド強度保持率は、以下の方法で評価した。
【0053】
<水素添加率>
溶媒として重クロロホルムを用いて、H-NMR測定を行い、水素化反応における水素添加率を算出した。
<ガラス繊維の性状>
実施例および比較例で調製した樹脂組成物を550℃で燃焼させて樹脂成分を除去した後、得られた灰分に溶剤を加えてガラス繊維を溶出させ、観測用基材の表面に塗布することで、ガラス繊維を観測可能な状態とした。そして、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて無作為に選択した50本のガラス繊維の直径(外径)および長さをそれぞれ測定した。そして、50本の長さの算術平均値を平均長さとし、50本の直径の算術平均値を平均直径として算出した。
<粒状フィラーの平均粒子径>
実施例および比較例で調製した樹脂組成物を550℃で燃焼させて樹脂成分を除去した後、得られた灰分に溶剤を加えて粒状フィラーを溶出させ、観測用基材の表面に塗布することで、個々の粒状フィラーを観測可能な状態とした。そして、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて無作為に選択した50個の粒状フィラーの粒子径を個別に観察し、得られた各粒状フィラーの画像に平面計測ツールで円を描き、描いた円の直径の最大値と最小値を直線計測にて測定した。そして、直径の最大値と最小値の算術平均値を粒状フィラーの粒子径とし、50個の粒状フィラーの粒子径の平均値を粒状フィラーの平均粒子径とした。
<MFR向上率>
実施例および比較例で調製した樹脂組成物のメルトマスフローレート(MFR)を、JIS K7210に準拠し、メルトインデクサ(東洋精機社製、製品名「F-F01」)を用いて、温度280℃、荷重2.16kgの条件で測定した。また、樹脂組成物の調製に用いた樹脂成分のメルトマスフローレート(MFR)を、同じ条件で、同様にして測定した。そして、樹脂組成物のMFRをP1(g/10分)とし、樹脂成分のMFRをP2(g/10分)として、下記式によりMFR向上率(%)を算出した。
MFR向上率(%)={(P1-P2)/P2}×100
このMFR向上率の値が高いほど、樹脂組成物が流動性に優れることを示す。
<曲げ弾性率>
成形体の剛性は、曲げ弾性率により評価した。具体的には、実施例および比較例で作製した成形体としての試験片(1)について、オートグラフ(島津製作所社製、製品名「AGS-5kNJ・TCR2」)を用いて、JIS K7171に準じて試験速度2mm/分で曲げ試験を行い、曲げ弾性率(GPa)を測定した。この曲げ弾性率の値が大きいほど、成形体が剛性に優れていることを示す。
<ウェルド強度保持率>
JIS K7171に準拠して、実施例および比較例で作製した成形体としての試験片(1)および(2)の曲げ強さ(MPa)をそれぞれ測定した。そして、試験片(1)(ウェルドのない試験片)の曲げ強さをFS1とし、試験片(2)(中央部にウェルドがある試験片)の曲げ強さをFS2として、下記式によりウェルド強度保持率(%)を求めた。
ウェルド強度保持率(%)={(FS2)/(FS1)}×100
このウェルド強度保持率の値が高いほど、成形体がウェルド強度に優れていることを示す。
【0054】
(製造例1)
<環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Aの合成>
内部を窒素置換した金属製耐圧反応容器に、有機溶媒であるシクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)のシクロヘキサン溶液(濃度70%)42.8部(ジシクロペンタジエンとして30部)、分子量調整剤である1-ヘキセン1.9部を加え、全容を53℃に加熱した。一方、開環重合触媒としての金属化合物であるテトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエン(有機溶媒)に溶解して得られた溶液に、開環重合触媒としての有機金属還元剤であるジエチルアルミニウムエトキシドのn-ヘキサン溶液(濃度19%)0.061部を加えて10分間撹拌し、開環重合触媒溶液を調製した。この開環重合触媒溶液を前記反応器内に添加し、53℃で4時間、開環重合反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液200部に、停止剤として、1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃で1時間撹拌し、重合反応を停止させた。その後、吸着剤であるハイドロタルサイト様化合物(製品名「キョーワード(登録商標)2000」、協和化学工業社製)を1部加えて、60℃に加温し、1時間撹拌した。濾過助剤(製品名「ラヂオライト(登録商標)#1500」、昭和化学工業社製)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(製品名「TCP-HX」、ADVANTEC東洋社製)を用いて、吸着剤を濾別し、ジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液を得た。この溶液の一部を用いて、ジシクロペンタジエン開環重合体の分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は28,100、数平均分子量(Mn)は8,750、分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
得られたジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液200部(重合体含有量30部)に、シクロヘキサン100部、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加し、水素圧6MPa、180℃で4時間水素添加反応を行なった。反応液は、固形分が析出したスラリー液であった。反応液を遠心分離することにより、固形分と溶液とを分離し、固形分を60℃で24時間減圧乾燥し、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Aとしてのジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物28.5部を得た。水素添加反応における不飽和結合の水素添加率は99%以上、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のガラス転移温度は98℃、融点は262℃であった。また、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
【0055】
(実施例1)
<樹脂組成物の調製>
環状オレフィン系樹脂としての環状オレフィンの開環重合体の水素添加物A(結晶性、以下「COP樹脂A」と略記する。)85部と、ガラス繊維(日東紡社製、製品名「汎用チョップドストランドFRTP用 3PE-957S」、平均長さ3mm、平均直径13μm、アスペクト比230.8)15部と、粒状フィラーとしてのカーボンブラック(三菱ケミカル社製、製品名「#10」、平均粒子径0.075μm、アスペクト比1)1.5部と、酸化防止剤としてのテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.2部とを混合後、二軸混練押出機(芝浦機械社製、製品名「TEM-35B」)を用い、280℃、100rpmの条件で混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のMFR向上率を評価した。結果を表1に示す。
<成形体の作製>
得られた樹脂組成物を用いて、以下の条件で、成形体としての試験片(1)および(2)を作製した。そして、試験片(1)および(2)を用いてウェルド強度保持率を評価し、試験片(1)を用いて曲げ弾性率を評価した。結果を表1に示す。
[作製条件]
射出成形機:FANUC社製、製品名「S-2000i」
シリンダー温度:280℃
金型温度:160℃
射出速度:30mm/秒
冷却時間:30秒
射出圧力(保圧):30MPa
スクリュー回転数:30rpm
背圧:30MPa
[試験片(1)]
ウェルドのない試験片(長さ80mm×幅10mm×厚み4mm)
[試験片(2)]
中央部にウェルドがある試験片(長さ80mm×幅10mm×厚み4mm)
【0056】
(実施例2)
樹脂組成物の調製時に、COP樹脂Aの使用量を85部から60部に変更し、ガラス繊維の使用量を15部から40部に変更し、粒状フィラーとしてのカーボンブラック(三菱ケミカル社製、製品名「#10」、平均粒子径0.075μm)に代えてカーボンブラック(三菱ケミカル社製、製品名「#650」、平均粒子径0.022μm)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例3)
樹脂組成物の調製時に、COP樹脂Aに代えて環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体C(ポリプラスチックス社製、製品名「TOPAS(登録商標)6013M」、ノルボルネンとエチレンとの共重合体、非結晶性、以下「COC樹脂C」と略記する。)を使用したこと以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例4)
樹脂組成物の調製時に、COP樹脂Aに代えて環状オレフィンの開環重合体の水素添加物B(日本ゼオン社製、製品名「ZEONEX(登録商標)690R」、非結晶性、以下「COP樹脂B」と略記する。)を使用したこと以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例5)
樹脂組成物の調製時に、COP樹脂Aの使用量を60部から45部に変更し、ガラス繊維の使用量を40部から55部に変更し、カーボンブラックの使用量を1.5部から0.07部に変更したこと以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例6)
樹脂組成物の調製時に、COP樹脂Aの使用量を85部から35部に変更し、ガラス繊維の使用量を15部から65部に変更し、粒状フィラーとしてのカーボンブラック(三菱ケミカル社製、製品名「#10」、平均粒子径0.075μm)1.5部に代えてカーボンブラック(三菱ケミカル社製、製品名「#2600」、平均粒子径0.013μm)0.06部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例7)
樹脂組成物の調製時に、粒状フィラーとしてのカーボンブラック(三菱ケミカル社製、製品名「#650」、平均粒子径0.022μm)に代えてアルミナ(MKnano社製、製品名「MKN-Al-020」、平均粒子径0.02μm)を使用したこと以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
樹脂組成物の調製時に、ガラス繊維および粒状フィラーとしてのカーボンブラックを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0063】
(比較例2)
樹脂組成物の調製時に、粒状フィラーとしてのカーボンブラックの使用量を1.5部から0.03部に変更したこと以外は実施例2と同様にして、樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0064】
(比較例3)
樹脂組成物の調製時に、粒状フィラーとしてのカーボンブラックの使用量を1.5部から12部に変更したこと以外は実施例2と同様にして、樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0065】
(比較例4)
樹脂組成物の調製時に、環状オレフィン系樹脂としてのCOP樹脂Aの使用量を60部から95部に変更し、ガラス繊維の使用量を40部から5部に変更したこと以外は実施例2と同様にして、樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0066】
(比較例5)
環状オレフィン系樹脂としてのCOP樹脂Aの使用量を60部から25部に変更し、ガラス繊維の使用量を40部から75部に変更したこと以外は実施例2と同様にして、樹脂組成物の調製を試みた。しかしながら、樹脂組成物の調製時に十分な混練を行うことができなかった。そのため、各種評価も行うことができなかった。
【0067】
(比較例6)
樹脂組成物の調製時に、環状オレフィン系樹脂としてのCOP樹脂Aに代えて、その他の成分としてのポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂D(東レ社製、製品名「東レPPS樹脂トレリナ(登録商標)A900」、以下「PPS樹脂D」と略記する。)を使用したこと以外は、実施例2と同様にして、樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0068】
(比較例7)
樹脂組成物の調製時に、粒状フィラーとしてのカーボンブラックを使用しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、樹脂組成物および成形体を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0069】
なお、以下に示す表1および2中、
「COP樹脂A」は、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Aを示し
を示し、
「COP樹脂B」は、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物Bを示し
を示し、
「COC樹脂C」は、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体Cを示し
を示し、
「PPS樹脂D」は、ポリフェニレンサルファイド樹脂Dを示し、
「CB」は、カーボンブラックを示し、
「混練不可」は、樹脂組成物を調製する際に混練することができず、評価を行うことができなかったことを示す。
また、表1および2中、ガラス繊維のアスペクト比は、小数点第二位を四捨五入した値で表記した。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1~2より、環状オレフィン系樹脂、ガラス繊維および粒状フィラーをそれぞれ所定の割合で含む樹脂組成物を用いた実施例1~7では、流動性に優れる樹脂組成物と、剛性およびウェルド強度に優れる成形体を作製できていることがわかる。
一方、ガラス繊維および粒状フィラーを含まない樹脂組成物を用いた比較例1と、環状オレフィン系樹脂とガラス繊維の量比が所定範囲外である樹脂組成物を用いた比較例4では、実施例1~7に比べて、樹脂組成物の流動性が低下するとともに、成形体の剛性が低下していることがわかる。
また、環状オレフィン系樹脂とガラス繊維の合計に対する粒状フィラーの量比が所定範囲外である樹脂組成物を用いた比較例2および3では、実施例1~7に比べて、樹脂組成物の流動性が低下していることがわかる。
そして、環状オレフィン系樹脂とガラス繊維の量比が所定範囲外である比較例5では、樹脂組成物を混練できなかったことがわかる。
さらに、環状オレフィン系樹脂を含まない樹脂組成物を用いた比較例6と、粒状フィラーを含まない樹脂組成物を用いた比較例7では、実施例1~7に比べて、樹脂組成物の流動性が低下するとともに、成形体のウェルド強度が低下していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、流動性に優れるとともに、成形体に優れた剛性およびウェルド強度を発揮させ得る樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、剛性およびウェルド強度に優れる成形体を提供することができる。