(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146473
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】基板の検査装置、基板の検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241004BHJP
C30B 29/30 20060101ALI20241004BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/66 N
C30B29/30 A
C30B29/30 B
C30B15/00 Z
H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059388
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】毛利 建
【テーマコード(参考)】
4G077
4M106
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BC32
4G077BC37
4G077CF10
4G077GA06
4G077HA11
4M106AA01
4M106BA04
4M106CA08
4M106CB19
4M106DB04
4M106DB07
4M106DJ04
(57)【要約】
【課題】基板状態でポーリング不良を検出することが可能な基板の検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基板を設置する基板用ステージと、
前記基板用ステージに設置した前記基板の表面または裏面に対して光を照射する光源と、
前記基板の表面のうち、前記光源により光を照射した部分を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像を処理し、ポーリング不良の領域を識別できるようにする画像処理手段と、を有し、
前記基板が強誘電体材料の単結晶基板である基板の検査装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を設置する基板用ステージと、
前記基板用ステージに設置した前記基板の表面または裏面に対して光を照射する光源と、
前記基板の表面のうち、前記光源により光を照射した部分を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像を処理し、ポーリング不良の領域を識別できるようにする画像処理手段と、を有し、
前記基板が強誘電体材料の単結晶基板である基板の検査装置。
【請求項2】
前記基板は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムの単結晶基板である請求項1に記載の基板の検査装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、前記撮像手段により得られた画像について、ポーリング不良の領域が識別できるようにコントラストを調整する請求項1または請求項2に記載の基板の検査装置。
【請求項4】
基板用ステージに設置された基板の表面または裏面に対して、光源から光を照射する光照射工程と、
前記基板の表面のうち、前記光源により光を照射した部分を撮像手段により撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で得られた画像を処理し、ポーリング不良の領域を識別できるようにする画像処理工程と、を有し、
前記基板が強誘電体材料の単結晶基板である基板の検査方法。
【請求項5】
前記基板は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムの単結晶基板である請求項4に記載の基板の検査方法。
【請求項6】
前記画像処理工程では、前記撮像工程で得られた画像について、ポーリング不良の領域が識別できるようにコントラストを調整する請求項4または請求項5に記載の基板の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の検査装置、基板の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル酸リチウム(LiTaO3(「LT」と略称することもある。))やニオブ酸リチウム(LiNbO3(「LN」と略称することもある。))等の強誘電体単結晶はSAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)デバイス用の材料として広く用いられている。
【0003】
強誘電体単結晶は、産業的には、主にチョクラルスキー法(Cz法)で白金等の坩堝を用いて、大気もしくは20体積%程度の低酸素濃度の窒素-酸素混合雰囲気下で育成される。そして、育成後、育成時の残留歪を取り除くための熱処理と、結晶全体の電気的な極性を揃えて単一分極とするためのポーリング処理と、を行った後に、単結晶を切断・研磨加工して基板を作製していた。
【0004】
特許文献1には、(イ)チョクラルスキー法引上げタンタル酸リチウム単結晶の引上げ方向の両端を切断研磨する工程、(ロ)上記切断研磨した単結晶をその研磨面から観察検査する工程、(ハ)上記検査した単結晶を単一分域化する工程、および(ニ)上記単一分域化した単結晶を、レーザー光および/または偏光を用いてその研磨面から観察検査する工程、を具備してなることを特徴とする単一分域化タンタル酸リチウム単結晶の製造方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献1には、従来技術として、ポーリング処理後の単結晶について、ポーリングの良否を調べる方法として、結晶体の側面部をけずりエッチングすることによって調べる方法、結晶体の両端に振動子をつけて音速を測定する方法、インピーダンスメーターを用いて結晶の共振点を調べる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたポーリングの良否を調べる方法は、いずれも基板加工前の単結晶状態で検査する方法である。このため、微細なポーリング不良等、基板状態とした際に問題となるポーリング不良が検出できないという問題点があった。
【0008】
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、基板状態でポーリング不良を検出することが可能な基板の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
基板を設置する基板用ステージと、
前記基板用ステージに設置した前記基板の表面または裏面に対して光を照射する光源と、
前記基板の表面のうち、前記光源により光を照射した部分を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた画像を処理し、ポーリング不良の領域を識別できるようにする画像処理手段と、を有し、
前記基板が強誘電体材料の単結晶基板である基板の検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、本発明の一側面では、基板状態でポーリング不良を検出することが可能な基板の検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る基板の検査装置の側面図である。
【
図2】
図2は、ポーリング不良の検出状態を説明する基板表面の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いながら説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[基板の検査装置]
本発明の発明者らは、基板状態でポーリング不良を検出することが可能な基板の検査装置について検討を行った。検討を行う中で、基板の表面に、光源から光を照射した場合に、基板にポーリング不良が生じた際に、特異的な画像が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
図1に、本実施形態の基板の検査装置の側面図を示す。なお、
図1は本実施形態の基板の検査装置の構成を説明するために模式的に示したものである。
【0014】
本実施形態の基板の検査装置10は、
図1に示すように、基板12を設置する基板用ステージ11と、光源13と、撮像手段14と、画像処理手段15と、を有することができる。なお、光源13に替えて、光源131を有することもできる。
【0015】
以下、本実施形態の基板の検査装置10が有する各部材について説明する。
(1)本実施形態の基板の検査装置が有する各部材について
以下、本実施形態の基板の検査装置10が有する各部材について説明する。
(1-1)基板用ステージ、基板
基板用ステージ11は、検査を行う基板を設置するステージであり、その構成は特に限定されない。
【0016】
本実施形態の基板の検査装置においては、基板用ステージ11上に設置した基板12の表面12Aまたは裏面12Bに対して光を照射できる。そして、光源13から基板12の表面12Aに対して光を照射した場合には、光源13からの光を、基板12の表面12Aで反射した、反射光を撮像手段14により撮像できる。
【0017】
これに対して、光源13に替えて、光源131から、基板12の裏面12Bに対して光を照射した場合には、基板12の裏面12Bから表面12Aに透過した透過光を撮像手段14により撮像できる。このため、基板12の裏面12Bに対して光を照射する場合、基板用ステージ11は、光源131からの光を、基板12の裏面12Bに照射できるように構成されていることが好ましい。すなわち、例えば基板用ステージ11の少なくとも基板12を配置する部分のうち、光源131からの光を照射する部分は、係る光源131からの光を透過できるように構成しておくことが好ましい。
【0018】
具体的には、基板用ステージ11の基板12を配置する部分のうち、少なくとも光源131からの光を照射する部分について、光源131からの光の透過率が高い透明な材料で形成することができる。また、基板用ステージ11の基板12を配置する部分のうち、少なくとも光源131からの光を照射する部分について開口部を設ける構成とすることもできる。
【0019】
基板用ステージ11にはその他に任意の部材を設けておくこともできる。
【0020】
例えば後述する照射領域制御手段17により、基板12上の照射領域の位置を変化させるために基板用ステージ11上に配置した基板12の位置を変化させる場合、基板用ステージ11を水平方向に移動できるように、基板用ステージ11に移動機構を設けることもできる。
【0021】
基板用ステージ11には、例えば基板用ステージ11に設置した基板12の傾きを補正し、水平にする手段、例えば後述する傾き補正手段を設けておくこともできる。
【0022】
本実施形態の基板の検査装置によれば、基板12のポーリング不良の有無を検査できる。このため、本実施形態の基板の検査装置10では、検査を行う基板12として、ポーリング処理を要する基板を用いることができ、例えば強誘電体材料の単結晶基板を用いることができる。強誘電体材料の単結晶基板である基板12の具体的な材料は特に限定されないが、基板12は、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO3)、またはニオブ酸リチウム(LiNbO3)の単結晶基板であることが好ましい。
【0023】
なお、基板12の裏面12Bに光源131からの光を照射する場合、該基板12は、光源131からの光の少なくとも一部を透過できるように厚さ等が選択されていることが好ましい。
【0024】
基板12の形状は特に限定されないが、例えば円板形状の基板を用いることができる。また、基板12には、必要に応じて基板12の結晶方位等を示すためのオリエンテーションフラットやノッチ等が設けられていてもよい。
(1-2)光源
光源13、光源131は、基板用ステージ11に設置した基板12の表面12Aまたは裏面12Bに光を照射する部材である。光源13、光源131は、基板12の表面12Aまたは裏面12Bに光を照射できるように構成されていればよく、光源の種類等の具体的な構成については特に限定されない。
【0025】
光源13、光源131の発光手段としては、例えば蛍光灯や、有機または無機のエレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード、ディスプレイ等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0026】
光源13、光源131から基板12上に光を照射した際に、光源および基板の位置を動かさずに、基板12の表面12Aに形成される所定量以上の輝度の光を反射または透過する領域を照射領域とした場合、該照射領域のサイズや形状は限定されない。照射領域は、例えば帯状等の形状を有し、基板12の表面12Aの一部に形成されても良く、基板12の表面12A全体に形成されても良い。
【0027】
照射領域が、基板12の表面12Aの全体ではなく、一部に形成される場合、検査を行っている間に該照射領域を基板12の表面12A上で移動させ、照射領域が基板12の表面12Aの全体を通過することが好ましい。このため、本実施形態の基板の検査装置10は、照射領域が基板12の表面12A全体を通過できるように、基板および光源から選択された1以上の部材を移動させる照射領域制御手段17を有することもできる。照射領域制御手段17については後述する。
【0028】
なお、上記照射領域における光の輝度は特に限定されず、例えば基板の材質等に応じて、ポーリング不良が検出できるように予備試験等を行い決定することができる。
【0029】
また、光源13、光源131から照射する光の波長も特に限定されず、評価を行う基板12において少なくとも一部の光を反射もしくは透過し、撮像手段14により反射もしくは透過した光を撮像できる光であれば良い。このため、光源13、光源131が発する光は、例えば赤外線光、可視光、紫外線光のいずれでも良いが、光の波長によっては撮像手段が高価になったり、そのサイズが大きくなったりする場合があるため、光源が発する光は、可視光を含むことが好ましい。
【0030】
なお、基板の検査装置10は、光源13と、光源131とのいずれか一方のみを有していても良いが、光源13と、光源131との両方を有することもできる。基板の検査装置10が光源13と光源131との両方を有する場合、検査する基板12の厚さ等に応じて、用いる光源を選択することもできる。
(1-3)撮像手段
撮像手段14は、基板12の表面12Aのうち、光源13または光源131により光を照射した部分を撮像できる。
【0031】
光源13から基板12の表面12Aに光を照射する場合、撮像手段14は、基板12の表面12Aに照射し、反射した光を撮像できる。
【0032】
また、光源131から基板12の裏面12Bに光を照射する場合、撮像手段14は、基板12の裏面12Bに照射し、基板12の裏面12Bから、基板12の表面12Aに透過した光を撮像できる。
【0033】
より具体的には、撮像手段14は、基板12の表面12Aに形成される所定量以上の輝度の光を反射または透過する領域である既述の照射領域を撮像することができる。
【0034】
撮像手段14の構成は特に限定されない。撮像手段14としては、各種撮像素子を備えるカメラモジュールを用いることができる。撮像素子としては、例えばCMOS(complementary metal oxide semiconductor)センサや、CCD(Charge Coupled Device)センサなどの半導体撮像素子や光電管、撮像管等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0035】
撮像手段14が撮像する画像は、動画であっても静止画であっても良い。動画の場合、例えば後述する画像処理手段15により、撮像した画像のうち任意のタイミングでの撮像領域の静止画を複数枚抽出してつなぎ合わせることができる。
【0036】
また、撮像手段14は、照射領域の形状等によっては、線状(帯状)の照射領域を撮像できる手段であれば足りるため、撮像手段14は、例えばラインスキャンカメラとすることもできる。ラインスキャンカメラとは、撮像素子が直線状に配列され、線状(帯状)の領域を撮像できるカメラモジュールを意味する。
【0037】
撮像手段14は、基板の検査装置10の図示しない筐体に固定しておくこともできる。ただし、係る形態に限定されず、撮像手段14は、他の部材とは別に三脚等を用いて固定しておくこともできる。
(1-4)画像処理手段、出力手段
画像処理手段15は、撮像手段14で撮像した画像を処理し、ポーリング不良の領域を識別できるようにすることができる。
【0038】
画像処理手段は、ASIC(application specific integrated circuit:特定用途向け集積回路)などであって、撮像手段14で撮像した画像の処理を担当する。
【0039】
画像処理手段15では、撮像手段14が撮像した画像から、必要に応じて照射領域に対応する例えば帯状の画像を切り出し、照射領域の移動方向に沿って並べ、つなぎ合わせることで、基板の表面全体の画像を形成することができる。
【0040】
撮像手段14で動画を撮像した場合には、画像処理手段は所定のタイミングで静止画を複数枚抽出し、必要に応じてつなぎ合わせることもできる。
【0041】
そして、画像処理手段15で作成した画像は出力手段16に出力することもでき、得られた画像中のコントラストの違いにより、得られた画像からポーリング不良を検出できる。このため、画像処理手段15は、撮像手段14により得られた画像について、ポーリング不良の領域が識別できるようにコントラストを調整することが好ましい。
【0042】
なお、ポーリング不良の領域とは、ポーリング処理が不十分で、分極方向が揃っていない領域や、結晶内の異物や、気泡等を含む領域を意味する。ポーリング処理は、強誘電体材料の結晶に特有の工程であり、強誘電体結晶の特性である自発分極で生じる電気的な極性を一方方向に揃える工程、処理である。
【0043】
なお、ポーリング不良の領域は、得られた画像から目視で検出しても良く、画像処理手段15により、他の部分と一定量以上のコントラストの違いがある場合にはポーリング不良として検出するように構成しても良い。
【0044】
画像処理手段15は、例えばAI(artificial intelligence)を備えておくことができ、上述のようにして撮像手段14により撮像した基板12の画像から、基板のポーリング不良を検出し、通知するように構成することもできる。
【0045】
なお、画像処理手段は、1つのASIC内で、ソフトウェア的に実現することもできるが、例えば複数のASICを設ける等して、一部または全部をハードウェアで実現してもよい。
(2)任意の部材について
本実施形態の基板の検査装置は、上述の各部材以外にも任意の部材をさらに有することもできる。
(2-1)出力手段
基板の検査装置10は、出力手段16を有することもできる。出力手段16は、画像処理手段15と通信可能に構成でき、画像処理手段15で作成した画像を出力できる。
【0046】
出力手段16の構成は特に限定されず、例えば各種ディスプレイ等の表示手段や、プリンター等の印刷手段とすることができる。
(2-2)照射領域制御手段
既述の様に、本実施形態の基板の検査装置では、基板12の表面12Aのうち、照射領域を撮像手段14により撮像することができる。そして、照射領域が、基板12の表面12Aの一部の領域の場合、照射領域の位置を変化させながら、照射領域を撮像できる。この場合、得られた照射領域の画像をつなぎ合わせることで、検査を行う部分の画像、例えば基板の表面全体の画像が得られるまで、照射領域の位置の変更と、撮像とを繰り返し実施することが好ましい。
【0047】
そこで、本実施形態の基板の検査装置は、基板12の表面12Aに形成した照射領域の位置を変化させる照射領域制御手段17を有することができる。
【0048】
照射領域制御手段17は、例えば照射領域の形状が帯形状の場合、照射領域を該照射領域の長手方向と直交する方向に移動させることができる。この場合、例えば照射領域制御手段17は、基板用ステージ11と、光源13または光源131と、のうち、少なくとも一方の移動を制御することができる。
【0049】
そこで、例えば基板用ステージ11と、光源13または光源131と、から選択された少なくとも1つの部材に、各部材を移動させるための駆動手段、例えばモーター等を設けておくことができる。そして、照射領域制御手段17は、係る駆動手段と接続しておき、その変位量や変位の方向を制御することができる。
【0050】
なお、照射領域の移動に伴い、撮像手段14もあわせて移動できるように構成することもできる。
【0051】
照射領域の移動方向は照射領域の長手方向と直交する方向に限定されるものではなく、例えば照射領域が、基板の周方向に沿って回転するように構成することもできる。この場合、基板用ステージ11に、基板12が水平面内で回転するように、モーター等の駆動手段を配置し、該駆動手段に照射領域制御手段17を接続しておくことができる。
【0052】
照射領域制御手段17が基板の表面に形成した照射領域を移動させ、これにあわせて撮像手段14により照射領域を撮像し、照射領域を撮像した画像をつなぎ合わせた場合に、検査を行う部分の画像、例えば基板の表面12A全体の画像が形成できることが好ましい。このため、例えば最初に基板12の表面12Aの任意の端部である第1の端部に照射領域を形成することが好ましい。そして、該照射領域を、該照射領域の長手方向と直交する方向に沿って、第1の端部の反対側、すなわち第1の端部と基板の中心とを通る直線が基板の端部と直交する第2の端部まで移動させることが好ましい。上述のように照射領域の位置を移動させ、撮像することが、効率的かつ基板表面を隙間なく撮像できるため好ましい。
【0053】
照射領域制御手段17により照射領域を移動させる際、例えば照射領域を一定量移動させる毎に撮像手段14により照射領域を撮像し、既述の画像処理手段15によりつなぎ合わせることができる。そして、撮像手段14により撮像した複数枚の照射領域の画像をつなぎ合わせることで検査を行う部分の画像、例えば基板の表面全体の画像を形成することが好ましい。このため、撮像手段によりn回目に照射領域を撮像した後、n+1回目に照射領域を撮像するまでに照射領域制御手段により照射領域を移動させる距離と、つなぎ合わせる画像の幅、すなわち照射領域の幅とが一致するように照射領域を移動させることが好ましい。
(2-3)傾き補正手段
本実施形態の基板の検査装置は、例えば基板を水平にする傾き補正手段をさらに有することもできる。傾き補正手段は例えば既述の基板用ステージや、本実施形態の基板の検査装置の躯体に設けておき、光源に対して、検査を行う基板の表面が水平になるように、傾きを補正するように構成することができる。
【0054】
以上に説明した本実施形態の基板の検査装置によれば、光源、撮像手段、基板用ステージ、画像処理手段を備えたシンプルな装置構成により、容易に基板表面のポーリング不良を検出することが可能になる。
[基板の検査方法]
次に、本実施形態の基板の検査方法について説明する。なお、本実施形態の基板の検査方法は、既述の基板の検査装置を用いて好適に実施することができる。このため、既に説明した事項については一部説明を省略する。
【0055】
本実施形態の基板の検査方法は、以下の光照射工程、撮像工程、および画像処理工程を有することができる。
【0056】
以下、各工程について説明する。
(1)基板の検査方法が有する各工程について
(1-1)光照射工程
光照射工程では、基板用ステージ11上に設置された基板12の表面12Aまたは裏面12Bに対して、光源13または光源131から光を照射することができる。これにより、基板12の表面12Aに既述の照射領域を形成することができる。
【0057】
光照射工程は、後述の撮像工程を実施している間、継続して実施できる。
(1-2)撮像工程
撮像工程では、基板の表面のうち、光源により光を照射した部分を撮像手段により撮像できる。
【0058】
光照射工程において、光源13から基板12の表面12Aに光を照射する場合、撮像工程で、撮像手段14は、基板12の表面12Aに照射し、反射した光を撮像できる。
【0059】
また、光照射工程において、光源131から基板12の裏面12Bに光を照射する場合、撮像工程において、撮像手段14は、基板12の裏面12Bに照射し、基板12の裏面12Bから、基板12の表面12Aに透過した光を撮像できる。
【0060】
より具体的には、撮像手段14は、基板12の表面12Aに形成される所定量以上の輝度の光を反射または透過する領域である既述の照射領域を撮像することができる。撮像工程では、少なくとも照射領域を撮像できればよく、照射領域を含む基板12の表面12A全体を撮像しても良い。
【0061】
撮像工程で撮像する画像は、動画であっても良く、静止画であっても良い。
(1-3)画像処理工程
画像処理工程では、撮像工程で得られた画像を処理し、ポーリング不良の領域を識別できるようにすることができる。
【0062】
画像処理工程では、撮像工程で撮像した画像から、必要に応じて照射領域に対応する例えば帯状の画像を切り出し、照射領域の移動方向に沿って並べ、つなぎ合わせることで、基板の表面全体の画像を形成することができる。
【0063】
撮像工程で動画を撮像した場合には、画像処理工程では所定のタイミングで静止画を複数枚抽出し、必要に応じてつなぎ合わせることもできる。
【0064】
そして、画像処理工程で得られた画像中のコントラストの違いにより、得られた基板12の表面12Aの画像からポーリング不良を検出できる。具体的には、
図2の領域21内の白色部の様に、他の部分よりもコントラストの高い領域として、ポーリング不良の領域を検出、識別できる。
【0065】
このため、画像処理工程は、撮像工程で得られた画像について、ポーリング不良の領域が識別できるようにコントラストを調整することが好ましい。
【0066】
なお、ポーリング不良は、得られた画像から目視で検出しても良く、画像処理工程により、他の部分と一定量以上のコントラストの違いがある場合にはポーリング不良として検出するように構成しても良い。
【0067】
また、画像処理工程では、例えばAI(artificial intelligence)を用い、上述のようにして得られた基板表面の画像から、基板のポーリング不良を検出し、通知するように構成することもできる。
【0068】
以上に説明した本実施形態の基板の検査方法によれば、光源、撮像手段、基板用ステージ、画像処理手段を備えたシンプルな装置構成により、容易に基板のポーリング不良を検出することが可能になる。
(2)任意の工程について
本実施形態の基板の検査方法は他にも任意の工程をさらに有することもできる。
(2-1)照射位置変更工程
光照射工程において、基板12の表面12Aに形成される照射領域が、基板12の表面12Aの一部の領域の場合、本実施形態の基板の検査方法は、照射領域の位置を変化させる照射位置変更工程を有することもできる。照射位置変更工程では、既述の照射領域制御手段により、基板12の表面12Aに形成した照射領域の位置を変化させることができる。照射領域制御手段については既に説明したので、説明を省略する。
【0069】
照射位置変更工程と、撮像工程とは、任意のタイミングで実施でき、例えば照射位置変更工程と、撮像工程は交互に、もしくは並行して実施できる。例えば、照射領域変更工程で照射領域の位置を変更した後、撮像工程で照射領域を撮像しても良く、照射領域変更工程で照射領域の位置を連続的に変更している間、任意のタイミングで撮像工程を実施し、照射領域を撮像しても良い。光照射工程は少なくとも撮像工程を行っている間実施していれば良いため、例えば撮像工程を実施するタイミングで実施しても良く、照射位置変更工程を実施している間も継続して実施しても良い。
【0070】
照射位置変更工程と、撮像工程とは、撮像工程で得られた照射領域の画像をつなぎ合わせた場合に検査を行う部分の画像、例えば基板の表面全体の画像が得られるまで繰り返し実施することが好ましい。
(2-2)傾き補正工程
例えば、基板用ステージに配置された基板を水平にする傾き補正工程をさらに有することもできる。
【0071】
基板水平に調整する具体的な方法は特に限定されないが、例えば基板用ステージ11や、基板の検査装置10の筐体(躯体)に水平度を調整する傾き補正手段を設けておき、自動または手動により水平度を調整することができる。
【実施例0072】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示した基板の検査装置10を用いて基板12の検査を行った。以下、各部材について説明する。
(1)基板の検査装置
(1-1)基板用ステージ、照射領域制御手段
図1に示した基板の検査装置10のうち、基板用ステージ11は、基板用ステージ11上に設置した基板12を固定できるように構成されている。そして、基板用ステージ11は、固定した基板12を、
図1中の矢印Aの方向、または矢印Aと反対の方向に移動できる照射領域制御手段17と接続されている。
【0073】
また、基板用ステージ11は、光源131からの光を透過できるように、透明なプラスチック部材により形成した。
(1-2)光源
光源131は、基板用ステージ11上に配置した基板12の裏面12Bに光を照射できる可視光領域の光を発する蛍光灯から構成した。そして、基板12の裏面12Bに光照射し、基板12の表面12Aで透過像が得られるよう、その配置を調整しておいた。
(1-3)撮像手段
撮像手段14としてはラインセンサカメラを備えたカメラモジュールを用いた。
(2)基板の検査方法
上記基板の検査装置10を用いて、以下の手順により基板12の検査を行った。
【0074】
まず、基板用ステージ11上に直径が約100mmの円板形状のタンタル酸リチウム基板を設置した。
(2-1)光照射工程
次いで、該基板12の表面12Aに、基板12の裏面12Bに照射した光の透過像が形成されるように、光源131から基板12の裏面12Bに対して光を照射した。
(2-2)撮像工程
そして、基板12の表面12Aのうち、光源131により光を照射した部分に当たる、基板12の裏面12Bから表面12Aに透過した光による照射領域を撮像手段により撮像した。
(2-3)光照射位置変更工程
上記光照射工程では、基板12の表面12Aに、基板12を透過した帯状の照射領域が形成された。このため、まず基板12の表面12Aの任意の端部である第1の端部に照射領域を形成した。その後、照射領域制御手段17により、基板12の位置を移動させ、該照射領域を、該照射領域の長手方向と直交する方向に沿って、第1の端部の反対側である第2の端部まで移動させた。第2の端部は、第1の端部と基板の中心とを通る直線が基板の端部と直交する端部になる。
【0075】
光照射位置変更工程で照射領域を移動させる際、照射領域を一定量移動させる毎に撮像工程を実施し、撮像手段14により照射領域を撮像した。また、光照射位置変更工程を実施している間、光源131から基板12の裏面12Bに光を照射しており、継続して光照射工程を実施した。
【0076】
なお、照射領域位置変更工程において、撮像工程を実施する間に照射領域を移動させる距離と、照射領域の幅とが一致するように照射領域を移動させた。
(2-4)画像処理工程
画像処理工程では、撮像工程で撮像した画像から、照射領域に対応する帯状の画像を切り出し、照射領域の移動方向に沿って並べ、つなぎ合わせることで、基板の表面全体の画像を形成した。
【0077】
そして、得られた基板の表面全体の画像を処理して、ポーリング不良の領域が識別できるようにコントラストを調整した。
【0078】
その結果、得られた画像から、
図2に示した領域21内の白色部のようなポーリング不良を目視で確認し、検出することができた。
【0079】
すなわち、基板状態でポーリング不良を検出することが可能であることを確認できた。