(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146577
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 19/04 20060101AFI20241004BHJP
F16L 19/025 20060101ALI20241004BHJP
F16L 21/02 20060101ALI20241004BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F16L19/04
F16L19/025
F16L21/02 E
F16L21/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059560
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健
(72)【発明者】
【氏名】鉢嶺 清円
【テーマコード(参考)】
3H014
3H015
【Fターム(参考)】
3H014EA01
3H015BA04
3H015BB01
3H015BB05
3H015BC01
(57)【要約】
【課題】管継手と管の接続後にナットが緩むことを確実に防止できるとともに、再施工時に再利用可能な管継手を提供する。
【解決手段】管継手1は、本体ねじ部21を有する継手本体2と、本体ねじ部21に螺合可能なナットねじ部31を有するナット3と、継手本体2に設けられたシール部材4とを備え、継手本体2とナット3とが締め付けられることで、管Pの一部がシール部材4に押圧されて管Pが接続され、ナット3に装着され、継手本体2の側に向かって伸び、ナット3の緩み時において継手本体2の側の掛止部に引っ掛かる、突起を有するナット緩み防止部材5を備え、ナット緩み防止部材5は周方向の一箇所に切れ目を有するC字状の基部を有し、該基部がナット3の外周側に装着され、突起は、ナットに形成された係合穴を通って、基部から伸びている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ねじ部を有する継手本体と、前記本体ねじ部に螺合可能なナットねじ部を有するナットと、前記継手本体に設けられたシール部材とを備え、
前記継手本体と前記ナットとが締め付けられることで、管の一部が前記シール部材に押圧されて前記管が接続される管継手において、
前記ナットに装着され、前記継手本体の側に向かって伸び、前記ナットの緩み時において前記継手本体の側の掛止部に引っ掛かる、突起を有するナット緩み防止部材を備え、
前記ナット緩み防止部材は周方向の一箇所に切れ目を有するC字状の基部を有し、該基部が前記ナットの外周側に装着され、前記突起は、前記ナットに形成された係合穴を通って、前記基部から伸びていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記突起は、径方向内側に向かって伸びる根元部と、該根元部から屈曲し、径方向内側かつ周方向一方側へ伸びる先端部とを有し、前記根元部が前記ナットの前記係合穴に係合されていることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記ナット緩み防止部材の平面視において、前記根元部の幅は、前記先端部の幅よりも大きくなっていることを特徴とする請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記ナット緩み防止部材は、前記基部の一対の端部に外周方向へ突出した耳部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の管継手。
【請求項5】
前記係合穴は、前記ナットの軸方向端部に開口した溝状の穴であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の管継手。
【請求項6】
本体ねじ部を有する継手本体と、前記本体ねじ部に螺合可能なナットねじ部を有するナットと、前記継手本体に設けられたシール部材とを備え、
前記継手本体と前記ナットとが締め付けられることで、管の一部が前記シール部材に押圧されて前記管が接続される管継手において、
前記ナットに装着され、前記継手本体の側に向かって伸び、前記ナットの緩み時において前記継手本体の側の掛止部に引っ掛かる、突起を有するナット緩み防止部材を備え、
前記ナット緩み防止部材は周方向の一箇所に切れ目を有するC字状の基部を有し、該基部は、径方向に貫通した貫通孔を有しておらず、前記管継手と前記管との接続が完了した後に、前記ナット緩み防止部材を前記ナットから取り外し可能に構成されていることを特徴とする管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の接続に用いられるメカニカル接続方式の管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屋内給水給湯用などの配管には一般配管用ステンレス鋼鋼管が使用されている。一般配管用ステンレス鋼鋼管の接続方式には、継手本体にナットをねじ止めすることで管を接続するメカニカル接続方式の管継手が広く使用されている。また、このような管継手において、振動などによってナットが緩むことを防止するため、ナットの緩み止め防止機能を有するものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ナットに装着され、本体側に向かって伸びる爪部を有するナット緩み防止部材と、継手本体に装着され、爪部の先端のエッジが押圧されるリング部材とを備える管継手が開示されている。これにより、管を接続した後にナットが緩むことを防止することが可能で、かつ、製造が容易で製造コストを低く抑えることができる旨が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ナットに固定された板状の部材であり、ナットの周方向よりも内側に向かって伸びた爪を有するリングと、ボディの周方向に連続して設けられた歯であって、ボディの中心軸に平行な面でなる壁を備える歯とを備えるメカニカル管継手が開示されている。これにより、ナットの締め付けが完了する任意の回転位置においてナットの緩みを防止することができることなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6889830号公報
【特許文献2】特許第6724925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、管継手は、施工完了後の改修工事などで配管やり直し(再施工)が行われる場合がある。例えば、特許文献1に記載された管継手は、ナットの緩み止め機能を有しているものの、施工完了後にナットを緩めることを想定していない。そのため、ナットの手締め後や施工完了後に無理にナットを緩めようとすると、ナットに装着した緩み止め用の部品であるナット緩み防止部材が外れ、ナットの緩み止め機能が失われる(ナットを使用できなくなる)場合がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された管継手は、緩み止め用の部品であるリングが、メカニカル継手と管との接合が完了した後に、リングをナットから解除可能に構成されているが、解除の際に強い力を与えるとリングの一部が変形し、リングを再利用できなくなるおそれがある。
【0008】
再施工の際に、元々使用されていたナットなどの部品を新品へ交換する場合には、配管を切断する必要がある。しかし、高所、局所、閉所などに施工された配管の場合、配管を切断してナットなどを新品に交換することが困難な場合がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、管継手と管の接続後にナットが緩むことを防止できるとともに、再施工時に再利用可能な管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の管継手は、本体ねじ部を有する継手本体と、本体ねじ部に螺合可能なナットねじ部を有するナットと、継手本体に設けられたシール部材とを備え、継手本体とナットとが締め付けられることで、管の一部がシール部材に押圧されて管が接続される管継手において、ナットに装着され、継手本体の側に向かって伸び、ナットの緩み時において継手本体の側の掛止部に引っ掛かる、突起を有するナット緩み防止部材を備え、ナット緩み防止部材は周方向の一箇所に切れ目を有するC字状の基部を有し、該基部がナットの外周側に装着され、突起は、ナットに形成された係合穴を通って、基部から伸びていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、突起は、径方向内側に向かって伸びる根元部と、該根元部から屈曲し、径方向内側かつ周方向一方側へ伸びる先端部とを有し、根元部がナットの係合穴に係合されていてもよい。
【0012】
また、本発明において、ナット緩み防止部材の平面視において、根元部の幅は、先端部の幅よりも大きくなっていてもよい。
【0013】
また、本発明において、ナット緩み防止部材は、基部の一対の端部に外周方向へ突出した耳部を有してもよい。
【0014】
また、本発明において、係合穴は、ナットの軸方向端部に開口した溝状の穴であってもよい。
【0015】
本発明の管継手は、本体ねじ部を有する継手本体と、本体ねじ部に螺合可能なナットねじ部を有するナットと、継手本体に設けられたシール部材とを備え、継手本体とナットとが締め付けられることで、管の一部がシール部材に押圧されて管が接続される管継手において、ナットに装着され、継手本体の側に向かって伸び、ナットの緩み時において継手本体の側の掛止部に引っ掛かる、突起を有するナット緩み防止部材を備え、ナット緩み防止部材は周方向の一箇所に切れ目を有するC字状の基部を有し、該基部は、径方向に貫通した貫通孔を有しておらず、管継手と管との接続が完了した後に、ナット緩み防止部材をナットから取り外し可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の管継手は、上記の構成にすることにより、管継手と管の接続後にナットが緩むことを防止できるとともに、再施工時などでもナットやナット緩み防止部材を再利用可能である。例えば、作業者が施工現場で接続状態の管継手のナットを緩めた後、ナットに再度緩み防止用の部品を装着することで、再施工時にナットを交換することなく管継手を再利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における管継手の部分断面図である。
【
図2】第1実施形態におけるナット緩み防止部材および相手部材の断面図である。
【
図3】第1実施形態における継手本体および相手部材の斜視図である。
【
図4】第1実施形態におけるナットの斜視図である。
【
図5】第1実施形態におけるナット緩み防止部材がナットに装着された状態の斜視図である。
【
図6】第1実施形態におけるナット緩み防止部材の平面図である。
【
図7】第1実施形態におけるナット緩み防止部材の別例の平面図である。
【
図9】第1実施形態におけるナット緩み防止部材の動作を示す模式図である。
【
図10】第2実施形態におけるナット緩み防止部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、ここで説明する実施の形態は、本発明の実施の形態を例示するものにすぎず、本発明の実施の形態はここに例示する形態に限られない。
【0019】
(第1実施形態)
本発明に係る管継手の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の管継手の部分断面図である。
図1の左側は、管継手1と管Pとの接続が完了している状態を示している。
図1の右側は、管継手1と管Pとを接続させる前の状態を示している。
図1には、管継手1の中心軸である軸線CAを境界として、軸線CAより紙面上側に管継手1の断面形状が図示され、軸線CAより紙面下側に管継手1の外観形状が図示されている。
【0020】
図1に示すように、管継手1は、本体ねじ部21を有する継手本体2と、本体ねじ部21に螺合可能なナットねじ部31を有するナット3と、継手本体2に設けられたシール部材4とを備え、継手本体2とナット3とが締め付けられることで、管Pの一部がシール部材4に押圧されて管Pが接続される。
【0021】
管継手1では、管Pは端部に向かってテーパ状に拡げられた拡大部P1が設けられている。管Pは、継手本体2とナット3とが締め付けられることにより、継手本体2のテーパ外周面22とナット3のテーパ内周面32との間に拡大部P1が挟み付けられて管継手1に接続される。このとき、シール部材4は、拡大部P1の内面で押圧されて、拡大部P1の内面と継手本体2とをシールする。本発明に係る管継手は、
図1に例示されたシールの構造を有するものに限られず、継手本体とナットとを締め付けることによりパッキンが圧縮される構造のものであれば、どのような構造のものであってもよい。
【0022】
また、接続される管の形状も、
図1に例示された管の端部に向かってテーパ状に拡げられた拡大部が形成されたものに限られず、継手本体とナットが締め付けられることで、管の一部がシール部材に押圧されて管が接続されるものであれば、どのような形状であってもよい。また、本発明の管継手において、シール部材に押圧される管における押圧位置は管の端部でなくてもよい。
【0023】
図1において、管継手1はさらに、管Pの接続後のナット3の緩みを防止するためのナット緩み防止部材5と、ナット緩み防止部材5に接触してナット3が緩む方向へ回転することを防止する相手部材6とを備えている。
【0024】
ナット緩み防止部材5と、相手部材6との関係について
図2を用いて説明する。
図2は、接続が完了した状態におけるナット緩み防止部材および相手部材の断面図である。
図2に示すように、ナット緩み防止部材5は、ナット3に装着され、継手本体2の側に向かって伸びる突起51を有する。突起51は、具体的には、後述する基部52から、周方向よりも内側に向かって伸びる。管継手1は、継手本体2に装着され、ナット3が継手本体2に締め付けられるときに突起51が接触する相手部材6を備えている。また、この突起51は、ナット3の緩み時においては、相手部材6の外周側に設けられている凸部(掛止部61)に先端が引っ掛かり、ナット3が継手本体2に対して緩む方向へ回転することを妨げる。
【0025】
図3は、第1実施形態における継手本体および相手部材の斜視図である。
図3に示すように、相手部材6は、継手本体2の本体ねじ部21と胴部23の間に形成された環状溝に、継手本体2に対して円周方向に回転しないように固定され装着されている。相手部材6は、円周方向の一部が切り欠かれており、外径を拡大および縮小することができる。これにより、相手部材6を、継手本体2に形成された環状溝に装着できる。相手部材6の継手本体2への固定は、接着材を相手部材6の内面と環状溝の外面の間に塗布することで行うことができる。接着材には、金属同士を接着することに適しているエポキシ樹脂系の接着材などを用いることができる。また、相手部材6の継手本体2への固定は、接着材などの化学的結合による固定の他に、継手本体の環状溝に突起または窪みなどからなる掛止部を設け、その掛止部に相手部材6の一部を引っ掛けることによって、相手部材6が円周方向へ移動しないように固定する機械的な固定であってもよい。また、相手部材6の外径は、ナットに装着されたナット緩み防止部材の突起の先端部が描く軌道の直径よりも、全周にわたって大きくなるように設けられている。
【0026】
なお、継手本体は、別部材として相手部材を備えていなくてもよく、継手本体の外周面に、ナットの緩み時において突起が引っ掛かる掛止部が直接形成されていてもよい。この場合、継手本体は、例えば、本体ねじ部と胴部の間で円周方向に複数の凹部と凸部が交互に直接形成される。この構成において、ナットが継手本体に締め付けられるときには、突起が継手本体に直接接触する一方、ナットの緩み時においては、突起の先端が継手本体の掛止部に引っ掛かることができる。
【0027】
図4は、第1実施形態におけるナットの斜視図である。
図4に示すように、ナット3は、管を通す貫通穴33と、軸方向端部に中心軸方向に沿って突出するように形成された円筒部34とを有している。
図4において、円筒部34には、円周方向に所定の間隔(
図4のナット3では約60度間隔)毎に、切り欠かれた係合穴34aが6個形成されており、係合穴34aと係合穴34aの間には円弧片34bが6個形成されている。ナット緩み防止部材は、突起をナット3の端部から中心軸方向に沿って係合穴34aに差し込むようにしてナット3に装着される。
図4において、係合穴34aは、ナット3の軸方向端部に開口した溝状の穴で構成されている。また、ナット3の端部(円筒部34)には、装着されたナット緩み防止部材が脱落することを防止するために、外周方向へ突出した段部34cが形成されている。なお、円筒部34には、段部34cが形成されていなくてもよい。
【0028】
図5には、
図4のナット3にナット緩み防止部材5が装着された状態を示す。
図5に示すように、ナット緩み防止部材5は、ナット3の外周側に装着されている。具体的には、ナット緩み防止部材5のC字状の基部52がナット3の円筒部34の外周側に装着されており、突起51は、ナット3に形成された係合穴34aを通ってナット3の周方向よりも内側へ向かって伸びている。
図5では、ナット緩み防止部材5は、基部52が5個の円弧片34bの外周面を覆うように装着されており、1個の円弧片は一部が覆われていない状態となっている。なお、その1個の円弧片の周方向両側にはナット緩み防止部材5の耳部53が位置している。ナット緩み防止部材5は、ナット3に装着されているため、継手本体2にねじ込む方向にナット3を回転させると、ナット緩み防止部材5もナット3と共に同じ方向に回転する。
図5において、ナット緩み防止部材5のナット3への装着は、ナット緩み防止部材5を外径が拡大するように弾性変形させて段部34cを乗り越えさせることによって行われる。ナット緩み防止部材5の外径の拡大は、向かい合う耳部53を、例えば、所定の工具を使って離れる方向に変位させることで行われる。工具としては、例えば、C型止め輪の取り付け工具などを使用することができる。この場合、耳部53には、工具の先端が係合可能な係合部(例えば、軸方向に貫通した貫通穴)が形成されていることが好ましい。なお、ナット緩み防止部材5の外径の拡大は、向かい合う耳部53を、工具を使用せず作業者の手で変位させることによって行うこともできる。
【0029】
図5において、係合穴34aは、ナット緩み防止部材5の突起51に対して、嵌り合うようにして係合されてもよく、隙間をもって(ジャストフィットでなく所定の遊びを有して)係合されてもよい。また、係合穴34aは、突起51に対応する位置に同数設けられている。なお、係合穴34aは、突起51よりも多く設けられていてもよく、少なくとも突起51と対応する位置に設けられていればよい。
【0030】
図6(a)は、第1実施形態におけるナット緩み防止部材の平面図である。
図6(a)に示すように、ナット緩み防止部材5は、周方向の一箇所に切れ目を有するC字状の基部52と、基部52から周方向よりも内側に向かって伸びる突起51と、基部52の一対の端部に外周方向へ突出した耳部53と、を有している。ナット緩み防止部材5は、管継手と管との接続が完了した後に、中心軸方向へ沿ってスライドすることで、ナットから取り外し可能に構成されている。本実施形態の管継手は、接続完了後にナット3を緩める際に、上述のとおりナット緩み防止部材5をナット3から取り外すことができるので、ナット3を緩めるときにナット緩み防止部材5(特に突起51)やナット3を破損させることがない。この形態の管継手によれば、再施工が可能であるとともに部材を再利用できる。なお、接続完了後にナット3を緩める際には、ナット3からナット緩み防止部材5を取り外さず、ナット緩み防止部材5が装着された状態でナット3を回転させて緩めてもよい。この場合、再施工する際のナット3およびナット緩み防止部材5は新品を使用することが好ましい。ナット緩み防止部材5を構成する材料には、加工が容易で、適度な弾性を有し、耐食性にも優れた材料を用いることが好ましい。なお、ナット緩み防止部材5は、耳部53を有していなくてもよい。施工性の観点から、ナット緩み防止部材5は、他の部材に対してスライドさせたりする際の持ち手として耳部を有することが好ましい。
【0031】
ナットへ装着する前の自由状態のナット緩み防止部材5において、基部52の内径Dは、ナットの円筒部34の外径と同じか、円筒部34の外径よりも小さいことが好ましい。本明細書において「自由状態」とは、ナット緩み防止部材5にいずれの外力も作用しておらず、ナット緩み防止部材5の外径が拡大も縮小もしていない状態のことをいう。内径Dが円筒部34の外径よりも小さい場合、ナット緩み防止部材5がナットに密着することができ、突起51がより深く掛止部に引っ掛かることができ、緩み防止性に特に優れる。内径Dは、例えば、20~100mmとすることができる。基部52は、例えば、断面矩形に形成されている。基部52の径方向の幅および軸方向の厚みは、例えば、1.0~5.0mmとすることができ、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。基部52は、上述の通りC字状であるので、一対の対向する端部同士を離間させることによって弾性変形させて拡径させることができる。
【0032】
図6(a)において、ナット緩み防止部材5は、6個の突起51を有している。6個の突起51は、基部52の内周側において周方向に約60度毎に設けられている。突起51の数は、少なくとも1個以上であり、継手のサイズや必要なナット緩み防止性能に応じて、例えば3~10個の範囲で適宜選択することができる。なお、上述した突起51の個数は例示であって、突起51の個数は上記範囲の個数に限られない。
【0033】
隣接する突起51同士の間隔は、周方向に等間隔であってもよいし、異なる間隔であってもよい。隣接する突起51同士が等間隔で配置される場合、突起51間の角度θ1(突起同士の間隔)は、例えば、10~120度とすることができる。なお、上述した角度θ1は例示であって、角度θ1は上記範囲の角度に限られない。
【0034】
突起について、
図6(b)を用いて詳細に説明する。
図6(b)は、突起の拡大図である。
図6(b)に示すように、突起51は、径方向内側に向かって伸びる根元部54と、根元部54から屈曲し、径方向内側かつ周方向一方側(ナットの締め付け方向と逆側)へ伸びる先端部55とを有している。また、本実施形態において、根元部54は、ナットの係合穴に係合してナットに装着される(
図5参照)。ナット緩み防止部材5の平面視において、根元部54の幅W
2は、先端部55の幅W
3よりも大きくなっている。この場合、根元部54は、ナットを回転させる際に係合穴から周方向に力を受けても変形しにくいため、係合穴から外れにくい。また、先端部55は、ナットを継手本体へ締め付ける際に、突起51が継手本体側の掛止部の上に乗り上がるように弾性変形しやすい。
【0035】
根元部54の幅W2は、例えば、0.50~4.0mmとすることができる。また、先端部55の幅W3は、例えば、根元部54の幅W2の0.20~1.0倍とすることができる。
【0036】
先端部55の伸びる方向と、先端部55の頂部(最内周部)が描く軌道上における頂部の接線とがなす角度θ3は、例えば、10~90度とすることができる。角度θ3は、ナット3の締め付け時に要する力と、ナット3の緩みを防止する能力に応じて適宜設定される。
【0037】
耳部について、再度
図6(a)を用いて説明する。ナット緩み防止部材5は、上述のように対向する一対の耳部53、53を有している。
図6(a)において、耳部53、53間の周方向の角度θ
2(各耳部の円周方向端面同士の間隔)は、約40度となっている。角度θ
2は、例えば、30~150度とすることができる。角度θ
2は、ナット3へのナット緩み防止部材5の着脱しやすさと確実な緩み防止の観点から、例えば30~150度の範囲で適宜設定される。また、耳部53の径方向の幅(突出幅)W
1は、例えば、1.0~4.0mmとすることができる。耳部53は、この位の大きさであると適度に持ちやすい。また、外径側に過度に突出していないので、継手本体2とナット3とを締め付ける際の施工性に優れる。
【0038】
図7は、ナット緩み防止部材の別例の平面図である。
図7に示すように、ナット緩み防止部材5Aは、
図6に示したナット緩み防止部材5と比べ、隣接する突起51、51間の角度が異なっている。
図7において、隣接する突起51、51間の角度は、角度θ
aと、角度θ
aよりも大きい角度θ
bの2種類がある。各突起51は、周方向の角度θ
aと、角度θ
bで交互に離間するように設けられている。なお、ナット緩み防止部材5Aの形態は、ナット3の大きさや、形状に応じて適宜設定できる。
【0039】
なお、
図7のように複数の突起51が周方向に角度θ
a、角度θ
b、角度θ
a、と交互に配置される場合、別の場所に設けられた突起51、51間の角度θ
a(または角度θ
b)と、角度θ
a(または角度θ
b)とは、略同一(例えば、±2度異なる程度)の角度でもよい。
【0040】
図7において、耳部53、53間の周方向の角度θ
2は、約80度となっている。また、角度θ
2は、角度θ
aよりも大きく、角度θ
bよりも小さくなるように構成されている。
【0041】
図8は、相手部材の斜視図である。
図8に示すように、相手部材6は、周方向の一箇所に切れ目を有するC字状の基部62と、基部62の外周側に設けられる凸部(掛止部61)とを有している。掛止部61の高さ(基部の外周面と掛止部の外周面との距離)は、例えば、1.0mmである。
図8において、相手部材6は、掛止部61を12個有している。12個の掛止部61は、周方向に約30度毎に設けられている。掛止部61の数は、例えば、3~36個とすることができる。掛止部61の数は、確実な緩み防止の観点から、ナット緩み防止部材5の突起51が確実に引っ掛かるように、突起51の数よりも多いことが好ましい。
【0042】
次に、第1実施形態におけるナット緩み防止部材の動作について、
図9の模式図を用いて説明する。
【0043】
まず、
図9(a)は、ナット3の締め付け時の動作を示している。
図9(a)に示すように、ナット緩み防止部材5の突起51の先端部は、周方向一方側へ屈曲して伸びており、締め付け時の回転方向とは反対側に向かって伸びている。そのため、掛止部61を乗り越える抵抗が少なく、突起51が掛止部61を容易に乗り越えることができる。また、突起51は、掛止部61を乗り越えるときに弾性的に屈曲して締め付け抵抗の増加と減少を繰り返すとともに音を発する。これにより、施工者はナット3の締め付け途中の状態を、感触とともに音からも知ることができる。よって、作業者は、ナット3の締め付けが進むにつれて、得られる感触および音の間隔が徐々に長くなっていくことを体感しやすく、ナット3の締め付けの完了が分かりやすい。
【0044】
一方、
図9(b)、(c)は、ナット3を緩める方向に力が作用した場合の動作を示している。これらの図の長い矢印は、ナット3が継手本体に対してシール部材の圧縮が解除される方向(ナット3を緩める方向)を示している。
【0045】
図9(b)では、管継手と管との接続が完了した後に、外部から受ける振動などによってナット3が緩もうとする際のナット緩み防止部材5と掛止部61の間の相互作用を説明する。この際、ナット3が緩もうとすると、突起51の先端部が継手本体側の掛止部61に引っ掛かって突起51を圧縮させようとする力(抵抗力)が働く。振動などで働く力は工具等を使ってナット3を緩める力に対して比較的小さく、その突起51の抵抗力を超えられないため、突起51は掛止部61を乗り越えることができず、ナット3を緩める方向への回転が妨げられる。
【0046】
続いて、
図9(c)では、管継手と管との接続が完了した後に、再施工時などにおいてナット3を継手本体から外す際のナット緩み防止部材5と掛止部61の間の相互作用を説明する。工具などを用いてナット3が緩む方向へ強制的に回転させて接続を解除させようとした場合、この緩ませようとする力(強制弛緩力)は突起51の抵抗力よりも大きくなる。その結果、ナット緩み防止部材5の基部52が拡径するように動作することなどによって、突起51が、掛止部61を乗り越えやすくなる。このような作用は、ナット緩み防止部材5がC字状の基部52を有し、その基部52がナット3の外周側に装着されていることで、例えばナット緩み防止部材がナット3の内周側に装着される場合に比べて、ナット3の動作の自由度が高くなるためである。
【0047】
このように、上記の管継手は、通常時にはナット3の緩み止めの機能を果たしつつも、再施工時などにおいて大きな力を作用させた場合には、ナット3の緩み止め機能を解除させることができる。緩み止め機能を解除した後には、ナット緩み防止部材5を端部側に向けてスライドすることで、ナット3から取り外すことができる。
【0048】
また、上記の管継手では、ナット緩み防止部材5の突起51はナット3の係合穴34aを通って伸びており、ナット3を緩める方向に強く回転させた場合であっても、ナット3自体には影響せずナット3を再利用することができる。
【0049】
上記
図4などでは、ナット3に設けられる係合穴34aとして溝状の穴を採用したが、例えば、係合穴34aを独立した穴としてもよい。この場合、ナット緩み防止部材5のナット3への装着は、ナット緩み防止部材5を拡径させることで行われる。なお、係合穴34aが溝状の穴である場合には、中心軸方向へ沿ってスライドすることでナット3へ着脱できる。
図4に示すナット3の場合、段部34cを乗り越えられる程度にナット緩み防止部材5を拡径させながらスライドすることでナット3へ着脱できるので、独立した貫通穴の場合のようにナット緩み防止部材5を大きく拡径させる必要がない。そのため、係合穴34aを溝状の穴とした方が、ナット3への着脱の際にナット緩み防止部材5に過度な力が掛かりにくいため、再利用の観点などから好ましい。また、ナット3に段部34cが形成されておらず、自由状態のナット緩み防止部材5の基部52の内径Dが円筒部34の外径と同じか、円筒部34の外径よりも大きい場合、ナット緩み防止部材5を拡径することなくスライドするだけでナット3へ着脱できる。
【0050】
(第2実施形態)
本発明に係る管継手の第2実施形態について
図10を用いて説明する。
図10は、第2実施形態におけるナット緩み防止部材の平面図である。第2実施形態において、ナット緩み防止部材5Bは、ナットの内周側に装着される。ナット緩み防止部材5Bは、周方向の一箇所に切れ目を有するC字状の基部52と、基部52から周方向よりも外側へ向かって伸びる突起(固定用突起51a)と、内側へ向かって伸びる突起(掛止用突起51b)とを有している。固定用突起51aは、ナットに形成された係合穴を通って伸び、後述する根元部54が係合穴に係合してナットに装着される。また、掛止用突起51bは、ナットの緩み時において継手本体の側の掛止部に引っ掛かるように構成されている。なお、ナット緩み防止部材5Bは、基部52の一対の端部に外周方向へ突出した耳部を有してもよい。この場合、耳部に対応する箇所の係合穴を固定用突起51aが係合する穴よりも大きく形成し、耳部を係合穴に係合させてもよい。
【0051】
図10において、固定用突起51aは、基部52の外周側で、掛止用突起51bの後側に掛止用突起51bと同数設けられている。固定用突起51aの形状は、径方向外側に向かって伸びる根元部54と、根元部54から屈曲し、径方向外側かつ周方向一方側へ伸びる先端部55とを有している。固定用突起51aの先端部55は、掛止用突起51bの先端部55の伸びる方向と反対方向に向かって伸びている。固定用突起51aと掛止用突起51bそれぞれの先端部55、55の伸びる方向が上記関係であることにより、ナット3を緩める方向にナット3に力が作用したときに、ナット3とナット緩み防止部材5Bが回転方向に相対移動することをより強固に防止できる。なお、固定用突起51aは、基部52の外周側であれば任意の場所に設けることができ、掛止用突起51bと異なる数が設けられていてもよい。また、固定用突起51aは、径方向外側に向かって伸びる部分のみから構成され、先端が屈曲していなくてもよい。なお、本実施形態の掛止用突起51bの形状や、数、配置については、上述したナット外周側に装着するナット緩み防止部材と同様の構成とすることができる。
【0052】
本実施形態において、ナットは、管継手と管との接続が完了した後に、継手本体に対して緩む方向へ大きな力で回転させることによって、ナット緩み防止部材の掛止用突起を変形させて、継手本体から外すことができる。
【0053】
本発明に係るナット緩み防止部材において、基部は、径方向に貫通した貫通孔や、スリット状の切り込みを有していないことが好ましい。この場合、ナット緩み防止部材の突起が継手本体側の掛止部から局所的に力を受けた場合に塑性変形しにくい。その結果、再施工時などにナット緩み防止部材を再利用しやすい。また、ナット緩み防止部材は、管継手の外部から存在の有無を判別するために、ナットの外周側に装着されることが好ましい。ナット緩み防止部材は、再利用された部品であるか否かを容易に判別できるようにするために、新品の管継手に装着されている部品と交換用の部品を異なる色彩で設けることが好ましい。
【0054】
第2実施形態のナット緩み防止部材5Bの場合、接続完了後にナットが緩もうとするときのナット緩み防止部材5Bと掛止部の間の相互作用は、上述した第1実施形態の場合と同様である(
図9(b)参照)。一方、ナットを継手本体から外すときのナット緩み防止部材5Bと掛止部の間の相互作用は、第1実施形態の場合と異なる。ナット緩み防止部材5Bは、ナット内周側に装着されるため、基部52の拡径が制限される。そのため、接続完了後にナットを強制的に緩ませる場合、掛止用突起と掛止部の間で力が掛かり、掛止用突起が変形する。その結果、掛止用突起51bが掛止部61を乗り越えることで、ナット3を緩む方向へ回転させることができる。ナット緩み防止部材5Bは、ナットとともに継手本体から外した後に、ナットの中心軸方向へ沿ってスライドすることにより、ナットから取り外すことができる。
【0055】
なお、本発明に係るナット緩み防止部材において、ナット緩み防止部材が装着されたナットを強制的に緩ませる場合のナット緩み防止部材の変形は、弾性変形であることが好ましい。この場合、一度管継手に利用したナット緩み防止部材を再利用できるので、再施工時などにナット緩み防止部材の取り換えが不要となる。また、ナット緩み防止部材の突起は、ナットの係合穴を通って伸びていることで、ナットを緩める方向に強く回転させた場合でも、ナット自体には影響せずナットを再利用できる。
【0056】
上述のように、ナットやナット緩み防止部材が再利用可能であることにより、再施工、改修などで継手本体を新品へ交換したり、配管経路変更で継手本体の品種変更をしたりする場合などに管の切断が不要となる。これにより、管を再利用できるので、特に高所、局所、閉所などの新規管の付け替えが困難な場所の管の接続に好適に用いることができる。また、仮にナット緩み防止部材が塑性変形して再利用できなくなった場合でも、ナットは再利用できるので、管を切断することなくナット緩み防止部材のみを交換することで、再施工前と同レベルのナット緩み防止性を発現できる。
【0057】
ナット緩み防止部材は、ナットに係合するとともに、継手本体側に引っ掛かり、管継手と管との接続が完了した後に、ナットから取り外し可能に構成されていればよく、上述した形状に限られない。
【0058】
管継手を構成する部材の材質としては、金属、合成樹脂、有機無機複合材料などから自由に選択することができる。ナット緩み防止部材の材料は、ナット緩み防止性、耐食性、汎用性などの要求される仕様に応じて適宜選択することができる。ナット緩み防止部材の材料としては、例えば、SUS304、SUS420J、SUS304-CSPなどを使用することができる。また、相手部材の材料としては、例えば、日本工業規格JISH3100に規定されているタフピッチ銅(C1100)などを使用することができる。
【0059】
以上のように、本発明の管継手によれば、管継手と管の接続後にナットが緩むことを防止できるとともに、再施工時などでもナットやナット緩み防止部材を再利用可能であるので、管切断が不要となり、高所、局所、閉所などでの屋内給水給湯用管の接続に好適である。
【符号の説明】
【0060】
1:管継手
2:継手本体
21:本体ねじ部
22:テーパ外周面
23:胴部
3:ナット
31:ナットねじ部
32:テーパ内周面
33:貫通穴
34:円筒部
34a:係合穴
34b:円弧片
34c:段部
4:シール部材
5、5A、5B:ナット緩み防止部材
51:突起
51a:固定用突起
51b:掛止用突起
52:基部
53:耳部
54:根元部
55:先端部
6:相手部材
61:掛止部
62:基部
CA:軸線
P:管
P1:拡大部