(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146665
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】化学蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20241004BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F28D20/00 G
F28D7/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084196
(22)【出願日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2023057576
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】中井 淳也
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 宏太
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA08
(57)【要約】
【課題】収容部から蓄熱体が流出するのを抑制可能で、挿通部材が熱ダメージを受けにくく、挿通部材に熱応力が発生しにくい化学蓄熱装置を提供することを課題とする。
【解決手段】化学蓄熱装置1は、収容部22を内部に区画し、挿通孔210が開設された壁部21を有する筒状の内側容器2と、収容部22に配置される蓄熱体4と、挿通孔210を介して収容部22に挿入される挿通部材5と、内側容器2を外側から覆い、反応媒体が流動する外側流路32を区画する筒状の外側容器3と、外側流路32と収容部22とを連通する反応媒体流路201と、挿通孔210と挿通部材5との隙間Cに介装され、壁部21に固定され、蓄熱体4が反応媒体と反応し膨張する際の膨張圧により変形し、隙間Cを狭くするシール部材92と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を内部に区画し、挿通孔が開設された壁部を有する筒状の内側容器と、
前記収容部に配置される蓄熱体と、
前記挿通孔を介して前記収容部に挿入される挿通部材と、
前記内側容器を外側から覆い、反応媒体が流動する外側流路を区画する筒状の外側容器と、
前記外側流路と前記収容部とを連通する反応媒体流路と、
前記挿通孔と前記挿通部材との隙間に介装され、前記壁部に固定され、前記蓄熱体が前記反応媒体と反応し膨張する際の膨張圧により変形し、前記隙間を狭くするシール部材と、
を備える化学蓄熱装置。
【請求項2】
前記挿通部材は、前記蓄熱体と熱の授受を行う熱媒体が通過する熱媒体流路を内部に区画する伝熱部材であり、
前記外側流路は、前記外側容器の内面と、前記内側容器の外面と、の間に区画され、
前記シール部材は、前記挿通孔と前記伝熱部材との前記隙間に介装される請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項3】
前記収容部に前記伝熱部材が配置された状態で、前記収容部に収容された前記蓄熱体が未だ一度も前記反応媒体と反応していない状態を初期状態として、
前記シール部材は、前記初期状態の前記蓄熱体が前記反応媒体と反応し膨張する際の前記膨張圧により変形し、前記隙間を狭くする請求項2に記載の化学蓄熱装置。
【請求項4】
前記蓄熱体は、前記反応媒体との反応により、前記伝熱部材に向かって膨張可能である請求項2に記載の化学蓄熱装置。
【請求項5】
前記内側容器に対する、前記伝熱部材の配置数は、単一または複数である請求項2に記載の化学蓄熱装置。
【請求項6】
前記蓄熱体に対する、前記伝熱部材のパス数は、一回または複数回である請求項2に記載の化学蓄熱装置。
【請求項7】
前記挿通部材は、前記反応媒体流路を内部に区画する流路部材であり、
前記シール部材は、前記挿通孔と前記流路部材との前記隙間に介装される請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【請求項8】
前記流路部材は、自身の外面に前記反応媒体流路が開口する、管状流路部材または中空板状流路部材である請求項7に記載の化学蓄熱装置。
【請求項9】
前記外側容器に対する、前記内側容器の配置数は、単一または複数である請求項1に記載の化学蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学反応熱を利用して可逆的に蓄熱、放熱を行うことができる化学蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の放熱管は、芯管と外管と蓄熱室とを備えている。芯管の内部には、媒液が流通している。蓄熱室は、芯管と外管との間に区画されている。蓄熱室には、蓄熱剤が充填されている。蓄熱室を密閉するため、芯管は外管にロウ付けされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
芯管を外管にロウ付けすると、施工時に芯管が熱ダメージを受けるおそれがある。また、芯管が外管に固定されてしまうため、芯管の熱変形が阻害されてしまう。よって、芯管に熱応力が発生しやすい。そこで、本開示は、収容部から蓄熱体が流出するのを抑制可能であって、例えば伝熱部材や流路部材などの挿通部材が熱ダメージを受けにくく、挿通部材に熱応力が発生するのを抑制可能な化学蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するため、本開示の化学蓄熱装置は、収容部を内部に区画し、挿通孔が開設された壁部を有する筒状の内側容器と、前記収容部に配置される蓄熱体と、前記挿通孔を介して前記収容部に挿入される挿通部材と、前記内側容器を外側から覆い、反応媒体が流動する外側流路を区画する筒状の外側容器と、前記外側流路と前記収容部とを連通する反応媒体流路と、前記挿通孔と前記挿通部材との隙間に介装され、前記壁部に固定され、前記蓄熱体が前記反応媒体と反応し膨張する際の膨張圧により変形し、前記隙間を狭くするシール部材と、を備えることを特徴とする。ここで、「隙間を狭くする」とは、隙間の少なくとも一部を狭くすることをいう。「隙間を狭くする」には、隙間を0にする(封止する)場合も含まれる。
【0006】
内側容器の壁部の挿通孔には、挿通部材が挿通されている。挿通孔の内周面と挿通部材の外面との間には、隙間が区画されている。シール部材は、当該隙間に配置されている。シール部材は、蓄熱体の膨張圧により変形し、隙間を狭くする。このため、収容部から蓄熱体が流出するのを抑制することができる。また、シール部材は壁部に固定されている。シール部材つまり内側容器に対して、挿通部材は、相対的に移動可能である。このため、挿通部材に熱応力が発生するのを抑制することができる。また、シール部材は挿通部材に固定されていない。このため、シール部材を壁部に固定する際に、挿通部材が熱ダメージを受けるのを抑制することができる。
【0007】
(1-1)上記(1)の構成において、前記シール部材は、前記壁部に固定される固定部と、前記固定部に連なり、前記蓄熱体が前記反応媒体と反応し膨張する際の膨張圧により塑性変形可能な変形部と、を有する構成とする方がよい。本構成によると、膨張圧により塑性変形した変形部に、永久歪みが残留する。このため、膨張後の蓄熱体が収縮する場合であっても、隙間を狭くした状態を維持することができる。
【0008】
(1-2)上記(1-1)の構成において、前記シール部材は、前記挿通孔の孔軸方向から見て、前記挿通孔の径方向内側に配置され、前記孔軸方向に延在する筒状を呈し、前記シール部材の前記変形部は、前記挿通孔の孔軸方向に延在するスリットと、前記スリットを挟んで前記挿通孔の周方向に隣り合う変形片と、を有し、前記蓄熱体が前記反応媒体と反応し膨張する際の膨張圧により、前記スリットを挟んで前記周方向に隣り合う前記変形片同士が互いに重複することにより縮径変形し、前記隙間を狭くする構成とする方がよい。本構成によると、シール部材の変形部の縮径変形代を、隣り合う変形片同士が互いに重複することにより、消費することができる。このため、変形部が縮径変形しても、変形部にシワが発生するのを抑制することができる。
【0009】
(1-3)上記いずれかの構成において、前記シール部材は、前記挿通孔の孔軸方向から見て、前記挿通孔の径方向内側において周方向に並ぶ複数のシール片を有し、複数の前記シール片のうち、隣り合う一対の前記シール片同士の間には、互いが周方向に部分的に重複してなる重複部が設定され、前記蓄熱体が前記反応媒体と反応し膨張する際の膨張圧により、前記重複部の周方向幅が大きくなることにより縮径変形し、前記隙間を狭くする構成とする方がよい。本構成によると、シール部材の変形部の縮径変形代を、重複部の周方向幅が大きくなることにより、消費することができる。このため、変形部が縮径変形しても、変形部にシワが発生するのを抑制することができる。
【0010】
(1-4)上記いずれかの構成において、前記シール部材は、金属箔製である構成とする方がよい。本構成によると、蓄熱体の膨張圧に耐えうる強度と蓄熱体の発熱に耐えうる耐熱性を合わせ持つうえ、シール部材の製造コストを削減することができる。
【0011】
(2)上記いずれかの構成において、前記挿通部材は、前記蓄熱体と熱の授受を行う熱媒体が通過する熱媒体流路を内部に区画する伝熱部材であり、前記外側流路は、前記外側容器の内面と、前記内側容器の外面と、の間に区画され、前記シール部材は、前記挿通孔と前記伝熱部材との前記隙間に介装される構成とする方がよい。
【0012】
内側容器の壁部の挿通孔には、伝熱部材が挿通されている。挿通孔の内周面と伝熱部材の外面との間には、隙間が区画されている。シール部材は、当該隙間に配置されている。シール部材は、蓄熱体の膨張圧により変形し、隙間を狭くする。このため、収容部から蓄熱体が流出するのを抑制することができる。また、シール部材は壁部に固定されている。シール部材つまり内側容器に対して、伝熱部材は、相対的に移動可能である。このため、伝熱部材に熱応力が発生するのを抑制することができる。また、シール部材は伝熱部材に固定されていない。このため、シール部材を壁部に固定する際に、伝熱部材が熱ダメージを受けるのを抑制することができる。
【0013】
(3)上記いずれかの構成において、前記収容部に前記伝熱部材が配置された状態で、前記収容部に収容された前記蓄熱体が未だ一度も前記反応媒体と反応していない状態を初期状態として、前記シール部材は、前記初期状態の前記蓄熱体が前記反応媒体と反応し膨張する際の前記膨張圧により変形し、前記隙間を狭くする構成とする方がよい。本構成によると、初期状態から初回の反応により、シール部材を変形させ、隙間を狭くすることができる。
【0014】
(4)上記いずれかの構成において、前記蓄熱体は、前記反応媒体との反応により、前記伝熱部材に向かって膨張可能である構成とする方がよい。本構成によると、蓄熱体と伝熱部材とを密着させやすい。このため、蓄熱体と伝熱部材との間の熱交換効率を向上させることができる。
【0015】
(4-1)上記いずれかの構成において、前記外側容器は、円筒状または多角形筒状を呈する構成とする方がよい。外側容器を円筒状または多角形筒状とし、かつ内側容器の軸直断面形状を外側容器の軸直断面形状と相似形にすると、外側容器内のデッドスペースを減少させることができる。
【0016】
外側容器を円筒状にすると、外側容器が多角形筒状である場合と比較して、局所的な応力集中を抑制することができるため、外側容器の耐圧性を向上させることができる。したがって、外側容器の壁部の厚さを減少することができる。このため、畜熱密度を大きくすることができる。
【0017】
外側容器を多角形筒状にすると、外側容器が円筒状である場合と比較して、外側容器と隣接装置との間の隙間が大きくなりにくい。このため、化学蓄熱装置の設置場所(例えば工場など)のデッドスペースを減少させることができる。
【0018】
(5)上記いずれかの構成において、前記内側容器に対する、前記伝熱部材の配置数は、単一または複数である構成とする方がよい。内側容器に対する伝熱部材の配置数が単一の場合、伝熱部材の配置数が複数の場合と比較して、蓄熱体に対する反応媒体の拡散性が伝熱部材により阻害されにくい。このため、反応媒体の拡散性を向上させることができる。
【0019】
外側容器の内部に複数の内側容器を配置し、各々の内側容器の収容部に伝熱部材を配置する場合(内側容器に対する伝熱部材の配置数が単一の場合)を想定する。この場合、隣り合う内側容器間にデッドスペースが発生してしまう。これに対して、外側容器の内部に単一の内側容器を配置し、当該内側容器の収容部に複数の伝熱部材を配置する場合を想定する。この場合、上記デッドスペースに対応する部分に、蓄熱体を充填することができる。したがって、収容部におけるデッドスペースを減少させることができる。
【0020】
(6)上記いずれかの構成において、前記蓄熱体に対する、前記伝熱部材のパス数は、一回または複数回である構成とする方がよい。蓄熱体に対する伝熱部材のパス数が一回の場合、伝熱部材のパス数が複数回の場合と比較して、熱媒体流路が湾曲しにくい。このため、熱媒体の圧力損失を低減することができる。また、熱媒体が相変化する場合(一例として、熱媒体が水(液体)から水蒸気(気体)に相変化する場合)、熱媒体の逆流を抑制することができる。
【0021】
蓄熱体に対する伝熱部材のパス数が複数の場合、伝熱部材のパス数が一回の場合と比較して、熱媒体流路が湾曲しやすい。また、蓄熱体の内部における熱媒体流路の流路長が長くなりやすい。このため、本構成の化学蓄熱装置は、長時間に亘って安定した出力が要求される用途に適している。
【0022】
(7)上記いずれかの構成において、前記挿通部材は、前記反応媒体流路を内部に区画する流路部材であり、前記シール部材は、前記挿通孔と前記流路部材との前記隙間に介装される構成とする方がよい。
【0023】
内側容器の壁部の挿通孔には、流路部材が挿通されている。挿通孔の内周面と流路部材の外面との間には、隙間が区画されている。シール部材は、当該隙間に配置されている。シール部材は、蓄熱体の膨張圧により変形し、隙間を狭くする。このため、収容部から蓄熱体が流出するのを抑制することができる。また、シール部材は壁部に固定されている。シール部材つまり内側容器に対して、流路部材は、相対的に移動可能である。このため、流路部材に熱応力が発生するのを抑制することができる。また、シール部材は流路部材に固定されていない。このため、シール部材を壁部に固定する際に、流路部材が熱ダメージを受けるのを抑制することができる。
【0024】
(8)上記いずれかの構成において、前記流路部材は、自身の外面に前記反応媒体流路が開口する、管状流路部材または中空板状流路部材である構成とする方がよい。本構成によると、管状流路部材または中空板状流路部材を介して、反応媒体を蓄熱体の内部に供給することができる。また、蓄熱体の内部から反応媒体を回収することができる。なお、管状流路部材と中空板状流路部材とを併用してもよい。
【0025】
(8-1)上記いずれかの構成において、前記反応媒体流路は、前記蓄熱体に対して複数の箇所で開口する内側流路であり、前記外側容器は、下記の(A)~(C)から選ばれる構成とする方がよい。(A)前記内側容器を外側から覆い、自身の内面と、前記内側容器の外面と、の間に前記外側流路を区画する外側容器。(B)前記内側容器を外側から覆い、内部に環状の前記外側流路を区画する二重管状の外側マニフォールド。(C)内部に前記外側流路を区画する外側供給管。
【0026】
(A)~(C)のいずれかの構成によると、内側流路は、蓄熱体に対して複数の箇所で開口している。このため、反応媒体を蓄熱体の全体に拡散させやすい。また、蓄熱体の全体から反応媒体を回収しやすい。
【0027】
(A)の構成によると、内側容器の外面を利用して、外側流路を区画することができる。すなわち、内側容器の壁部を隔てて、内側に収容部を、外側に外側流路を区画することができる。このため、省スペース性に優れている。(B)の構成によると、内側容器から独立して、外側流路を配置することができる。このため、内側容器の壁部を経由して、蓄熱体と外側流路との間で熱が伝わるのを、抑制することができる。また、内側容器を取り囲むように、環状の外側流路を配置することができる。(C)の構成によると、内側容器から独立して、外側流路を配置することができる。このため、内側容器の壁部を経由して、蓄熱体と外側流路との間で熱が伝わるのを、抑制することができる。なお、(A)~(C)を適宜組み合わせてもよい。例えば、(A)と(B)、(A)と(C)、(B)と(C)、(A)と(B)と(C)を併用してもよい。
【0028】
(9)上記いずれかの構成において、前記外側容器に対する、前記内側容器の配置数は、単一または複数である構成とする方がよい。外側容器に対する内側容器の配置数が単一の場合、内側容器の配置数が複数の場合と比較して、内側容器同士の隙間が発生しない。このため、外側容器内のデッドスペースを減少させることができる。
【0029】
外側容器に対する内側容器の配置数が複数の場合、内側容器の配置数が単一の場合と比較して、複数の内側容器に蓄熱体を分配することができる。このため、蓄熱体に対する反応媒体の拡散性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示の化学蓄熱装置によると、収容部から蓄熱体が流出するのを抑制することができる。また、例えば伝熱部材や流路部材などの挿通部材が熱ダメージを受けるのを抑制することができる。また、挿通部材に熱応力が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、第一実施形態の化学蓄熱装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、同化学蓄熱装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同化学蓄熱装置の部分透過斜視図である。
【
図4】
図4は、同化学蓄熱装置の前後方向断面図である。
【
図7】
図7(A)は、
図5の枠VIIA内の拡大図である。
図7(B)は、
図6の枠VIIB内の拡大図である。
【
図8】
図8(A)は、初期状態における
図5の枠VIIA内の拡大図である。
図8(B)は、初期状態における
図6の枠VIIB内の拡大図である。
【
図9】
図9は、第二実施形態の化学蓄熱装置の斜視図である。
【
図12】
図12は、同化学蓄熱装置の複数の内側容器、伝熱部材、複数の間接支持部材の分解斜視図である。
【
図15】
図15は、第三実施形態の化学蓄熱装置の前後方向断面図である。
【
図17】
図17は、第四実施形態の化学蓄熱装置の、初期状態における部分透過斜視図である。
【
図18】
図18は、第五実施形態の化学蓄熱装置の、初期状態における部分透過斜視図である。
【
図19】
図19は、第六実施形態の化学蓄熱装置の前後方向部分断面図である。
【
図20】
図20は、第七実施形態の化学蓄熱装置の前後方向部分断面図である。
【
図21】
図21は、第八実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図である。
【
図23】
図23は、第九実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図である。
【
図25】
図25は、第十実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図である。
【
図26】
図26は、第十一実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図である。
【
図27】
図27は、第十二実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図である。
【
図28】
図28は、その他の実施形態(その1)の化学蓄熱装置の前後方向部分断面図である。
【
図29】
図29は、その他の実施形態(その2)の化学蓄熱装置の軸直方向部分断面図である。
【
図30】
図30(A)~
図30(D)は、その他の実施形態(その3~その6)の化学蓄熱装置の軸直方向断面図である。
【
図31】
図31(A)~
図31(G)は、その他の実施形態(その7~その13)の化学蓄熱装置の軸直方向部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の化学蓄熱装置の実施の形態について説明する。以降の図において、前後方向は、内側容器、外側容器の軸方向(筒軸の延在方向)に対応している。上下方向および左右方向のうち少なくとも一方は、内側容器、外側容器の軸直方向(軸方向に対して直交する方向。横断面方向。径方向)に対応している。
【0033】
<第一実施形態>
図1に、本実施形態の化学蓄熱装置の斜視図を示す。
図2に、同化学蓄熱装置の分解斜視図を示す。
図3に、同化学蓄熱装置の部分透過斜視図を示す。
図4に、同化学蓄熱装置の前後方向(軸方向)断面図を示す。
図5に、
図4の枠V内の拡大図を示す。
図6に、
図4のVI-VI方向(軸直方向)断面図を示す。なお、
図4は、
図6のIV-IV方向断面に対応する。
【0034】
図1においては、外側容器3の内部の内側容器2、伝熱部材5(曲管部51)、伝熱部材取付板81、間接支持部材87を点線で示す。
図2においては、内側容器2の貫通孔201を省略して示す。
図3においては、内側容器2、伝熱部材取付板81、間接支持部材87を透過して、内側容器2の内部(収容部22)の部材(伝熱部材5、直接支持部材7)を示す。また、貫通孔201、蓄熱体4、シール部材92を省略して示す。
【0035】
[化学蓄熱装置の構成]
まず、本実施形態の化学蓄熱装置1の構成について説明する。
図1~
図6に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は、内側容器2と、外側容器3と、蓄熱体4と、複数の伝熱部材5と、複数の直接支持部材7と、反応媒体給排管80と、伝熱部材取付板81と、熱媒体給排筒82と、隔壁83と、熱媒体供給管84と、熱媒体排出管85と、端板86と、複数の間接支持部材87と、二つの脚部88と、複数のシール部材92と、を備えている。
【0036】
(内側容器2)
図2、
図4、
図6に示すように、内側容器(反応器)2は、金属製であって、前後方向(水平方向)に延在し、前側に開口する有底円筒状を呈している。すなわち、内側容器2の筒軸A1(
図4、
図6参照)は、前後方向(重力方向(上下方向)に対して、直交(交差)する方向)に延在している。
【0037】
内側容器2は、壁部(側周壁部20、端壁部21)と、収容部22と、を備えている。側周壁部20は、前後方向に延在する円筒状を呈している。端壁部21は、上下左右方向(垂直方向)に延在する円板状を呈している。端壁部21は、側周壁部20の後端開口を封止している。端壁部21は、複数の挿通孔210を備えている。挿通孔210は、端壁部21を、前後方向に貫通している。
【0038】
図1、
図2、
図5、
図6に示すように、側周壁部20は、複数の貫通孔201を備えている。貫通孔201は、本開示の「反応媒体流路」の概念に含まれる。側周壁部20は、パンチングメタルである。貫通孔201は、内側容器2の外部(後述する外側流路32)と収容部22とを連通している。貫通孔201の大きさ(孔径)は、水蒸気が通過可能であって、蓄熱体4の蓄熱材粒子が通過しにくい大きさに設定されている。複数の貫通孔201は、側周壁部20の全体に亘って、配置されている。収容部22は、壁部の内部に配置されている。収容部22は、壁部の内面により区画されている。
【0039】
(外側容器3、脚部88)
図1、
図2、
図4、
図6に示すように、外側容器3は、金属製であって、前後方向に延在し、前側に開口する有底円筒状を呈している。すなわち、外側容器3の筒軸A2(
図4、
図6参照)は、前後方向に延在している。外側容器3は、内側容器2を、外側(筒軸A1、A2を中心とする径方向外側および後側(軸方向一方))から覆っている。筒軸A1と筒軸A2とは一致している。すなわち、外側容器3は、内側容器2と同軸上に配置されている。
【0040】
外側容器3は、側周壁部30と、端壁部31と、を備えている。側周壁部30は、前後方向に延在する円筒状を呈している。端壁部31は、側周壁部30の後端開口を封止している。端壁部31は、取付孔310を備えている。取付孔310は、端壁部31の径方向中心を、筒軸A2に沿って、前後方向に貫通している。
【0041】
外側容器3は、外側流路32を区画している。具体的には、外側流路32は、外側容器3の内面と、内側容器2の外面と、の間に区画されている。
図6に示すように、軸直方向断面において、外側流路32は、筒軸A2を中心とする円環状を呈している。
【0042】
図1に示すように、二つの脚部88は、外側容器3の前後両端部に配置されている。二つの脚部88は、工場の床面(図略)に立設されている。二つの脚部88は、外側容器3つまり化学蓄熱装置1を下側から支持している。
【0043】
(蓄熱体4)
図4~
図6に示すように、蓄熱体4は、収容部22に充填されている。蓄熱体4は、化学蓄熱材(脱水後は酸化カルシウム、水和後は水酸化カルシウム)製の蓄熱材粒子と、粘土鉱物と、を含んでいる。蓄熱体4は、水蒸気(H
2O)との化学反応(水和反応、脱水反応)により膨張、収縮可能である。水蒸気は、本開示の「反応媒体」の概念に含まれる。
【0044】
収容部22(詳しくは、収容部22のうち、部材(複数の伝熱部材5、複数の直接支持部材7)が配置されていない部分)の容積は、水和反応による膨張後の蓄熱体4の体積よりも、小さい。このため、膨張後(水和反応後)において、蓄熱体4は、内側容器2の内面(収容部22を区画する面)、後述する複数の伝熱部材5の外面、複数の直接支持部材7の外面に圧接している。言い換えると、蓄熱体4は、これらの部材により拘束されている。
【0045】
(伝熱部材5)
図3~
図6に示すように、伝熱部材5は、金属製であって、U字の円管状を呈している。すなわち、伝熱部材5は、二つの直管部50と、曲管部51と、を備えている。直管部50は、前後方向に延在している。二つの直管部50は、上下方向に対向して配置されている。二つの直管部50は、各々、前端部(後述する伝熱部材取付板81の取付孔810に固定されている部分)および後端部(端壁部21の挿通孔210に挿通されている部分)を除いて、収容部22に収容されている。直管部50の外周面は、蓄熱体4に当接している。曲管部51は、後側に膨らむC字状に延在している。曲管部51は、二つの直管部50の後端部同士を連結している。曲管部51は、外側流路32に配置されている。このため、伝熱部材5は、二つの直管部50により、蓄熱体4を二回通過している。伝熱部材5は、内部に熱媒体流路52を区画している。熱媒体は、熱媒体流路52を流動可能である。熱媒体は、伝熱部材5の直管部50の壁部を介して、蓄熱体4と熱の授受を行う。
図6に示すように、収容部22において、複数の伝熱部材5の直管部50は、上下左右方向に並んでいる。
図4に示すように、複数の伝熱部材5の直管部50は、収容部22(つまり蓄熱体4)の全体に配置されている。
【0046】
(直接支持部材7)
図3、
図4、
図6に示すように、直接支持部材7は、金属製であって、上下左右方向に延在する円板状を呈している。直接支持部材7は、収容部22に配置されている。直接支持部材7の外周面は、内側容器2の側周壁部20の内周面(収容部22を区画する面)に当接している。
【0047】
図4に示すように、複数の直接支持部材7は、所定間隔ずつ離間して、前後方向に並置されている。複数の直接支持部材7は、収容部22を、前後方向に並ぶ複数の部屋220に仕切っている。直接支持部材7は、複数の支持孔70を備えている。支持孔70は、直接支持部材7を前後方向に貫通している。支持孔70には、伝熱部材5の直管部50が挿通されている。支持孔70つまり直接支持部材7は、伝熱部材5を、直接支持している。また、直接支持部材7は、伝熱部材5を、直接位置決めしている。
【0048】
(シール部材92)
図7(A)に、
図5の枠VIIA内の拡大図を示す。
図7(B)に、
図6の枠VIIB内の拡大図を示す。なお、
図7(A)、
図7(B)においては、初期状態のシール部材92を点線で示す。また、隙間Cを強調して示す。
図7(A)、
図7(B)に示すように、挿通孔210には、伝熱部材5の直管部50が、前後方向に移動可能に挿通されている。
図4に示すように、直管部50は、後述する伝熱部材取付板81の取付孔810に固定されている。また、直管部50は、直接支持部材7の支持孔70により、支持されている。このため、
図7(A)、
図7(B)に示すように、挿通孔210の内周面と、直管部50の外周面と、の間には、全周的に隙間Cが区画されている。
【0049】
シール部材92は、隙間Cに配置されている。シール部材92は、厚さ20μm程度のステンレス箔製であって、円筒状を呈している。シール部材92は、固定部920と、変形部921と、を備えている。固定部920は、シール部材92の後端に配置されている。固定部920は、挿通孔210の内周面に接合されている。変形部921は、固定部920の前側に配置されている。後述する放熱時(水和反応時)の塑性変形により、変形部921は、直管部50の外周面に全面的に当接(面接触)している。このため、隙間Cは、シール部材92により封止されている。
【0050】
(反応媒体給排管80)
図1、
図2、
図4に示すように、反応媒体給排管80は、金属製であって、短軸円管状を呈している。反応媒体給排管80は、外側容器3の端壁部31の取付孔310に取り付けられている。反応媒体給排管80を介して、外側容器3の外部から外側流路32に、水蒸気が供給される。また、反応媒体給排管80を介して、外側流路32から外側容器3の外部に、水蒸気が排出される。
【0051】
(伝熱部材取付板81)
図1~
図4に示すように、伝熱部材取付板81は、金属製であって、上下左右方向に延在する円板状を呈している。伝熱部材取付板81は、内側容器2および外側容器3の前側に配置されている。伝熱部材取付板81は、内側容器2および外側容器3の前側開口を封止している。伝熱部材取付板81は、複数の取付孔810を備えている。取付孔810は、伝熱部材取付板81を前後方向に貫通している。取付孔810には、伝熱部材5の直管部50の前端部が取り付けられている。取付孔810つまり伝熱部材取付板81は、伝熱部材5を支持している。また、伝熱部材取付板81は、伝熱部材5を固定している。
【0052】
(熱媒体給排筒82)
図1、
図2、
図4に示すように、熱媒体給排筒82は、金属製であって、前後方向に延在する短軸円筒状を呈している。熱媒体給排筒82は、伝熱部材取付板81の前側に配置されている。伝熱部材取付板81は、熱媒体給排筒82の後端開口を封止している。熱媒体給排筒82は、筒軸A1、A2上に配置されている。熱媒体給排筒82は、二つの取付孔820を備えている。取付孔820は、熱媒体給排筒82の壁部を上下方向に貫通している。二つの取付孔820は、上下方向に対向して配置されている。
【0053】
(隔壁83)
図2、
図4に示すように、隔壁83は、金属製であって、前後左右方向(水平方向)に延在する平板状を呈している。隔壁83は、熱媒体給排筒82の内部空間を、下側の供給室830と、上側の排出室831と、に仕切っている。供給室830は下側の取付孔820に、排出室831は上側の取付孔820に、各々連通している。伝熱部材5の熱媒体流路52の一端(上流端)は、供給室830に連通している。伝熱部材5の熱媒体流路52の他端(下流端)は、排出室831に連通している。
【0054】
(熱媒体供給管84、熱媒体排出管85、端板86)
図1、
図2、
図4に示すように、熱媒体供給管84は、金属製であって、短軸円管状を呈している。熱媒体供給管84は、熱媒体給排筒82の下側の取付孔820に取り付けられている。熱媒体供給管84を介して、熱媒体給排筒82の外部から供給室830に、熱媒体が供給される。熱媒体排出管85は、金属製であって、短軸円管状を呈している。熱媒体排出管85は、熱媒体給排筒82の上側の取付孔820に取り付けられている。熱媒体排出管85を介して、排出室831から熱媒体給排筒82の外部に、熱媒体が排出される。端板86は、金属製であって、上下左右方向に延在する円板状を呈している。端板86は、熱媒体給排筒82の前端開口を封止している。
【0055】
(間接支持部材87)
図1~
図6に示すように、間接支持部材87は、金属製であって上下左右方向に延在する歯車円環状を呈している。間接支持部材87は、内側容器2の側周壁部20の外周面と、外側容器3の側周壁部30の内周面と、の間に配置されている。間接支持部材87により、内側容器2の側周壁部20の外周面と、外側容器3の側周壁部30の内周面と、の間に外側流路32が確保されている。複数の間接支持部材87は、前後方向に、所定間隔ずつ離間して配置されている。間接支持部材87の外周面には、径方向内側に凹む複数の開口部870が配置されている。複数の開口部870は、周方向に所定間隔ずつ離間して配置されている。開口部870を介して、外側流路32の各部は、前後方向に互いに連通している。間接支持部材87は、内側容器2を支持している。また、間接支持部材87は、内側容器2を位置決めしている。また、間接支持部材87は、内側容器2、直接支持部材7を介して、伝熱部材5を間接的に支持している。また、間接支持部材87は、内側容器2、直接支持部材7を介して、伝熱部材5を間接的に位置決めしている。
【0056】
(反応媒体ルートR1、熱媒体ルートR2)
図4~
図6に示すように、化学蓄熱装置1の外部と、収容部22の蓄熱体4と、の間には、外部から蓄熱体4に向かって、反応媒体給排管80、外側流路32、貫通孔201を経由する、水蒸気用の反応媒体ルートR1が設定されている。
【0057】
図4に示すように、熱媒体供給管84と熱媒体排出管85との間には、熱媒体供給管84から熱媒体排出管85に向かって、供給室830、熱媒体流路52、排出室831を経由する、熱媒体用の熱媒体ルートR2が設定されている。
【0058】
[化学蓄熱装置の動き]
次に、本実施形態の化学蓄熱装置1の動きについて説明する。前述したように、蓄熱体4は、化学蓄熱材(脱水後は酸化カルシウム、水和後は水酸化カルシウム)製の蓄熱材粒子と、粘土鉱物と、を含んでいる。ここで、複数の蓄熱材粒子を含む造粒体を「蓄熱材顆粒」とする。また、収容部22に伝熱部材5が配置された状態で、収容部22に収容された蓄熱体4が未だ一度も水和反応していない状態を「初期状態」とする。
【0059】
(放熱時、水和反応時)
図8(A)に、初期状態における
図5の枠VIIA内の拡大図を示す。
図8(B)に、初期状態における
図6の枠VIIB内の拡大図を示す。なお、
図8(A)、
図8(B)においては、変形後のシール部材92を点線で示す。
図8(A)、
図8(B)に示すように、初期状態においては、シール部材92は、前後方向に延在する直管状を呈している。変形部921は、直管部50の外周面から離間している。
【0060】
初期状態における蓄熱体4の蓄熱材顆粒中の蓄熱材粒子は、酸化カルシウム製である。放熱時においては、
図4~
図6に示す反応媒体ルートR1を介して、蓄熱体4の全体に水蒸気を供給する。水蒸気の供給により、蓄熱体4の化学蓄熱材(酸化カルシウム)は、以下の水和反応により、放熱し、水酸化カルシウムとなる。なお、Q1は放熱量である。
CaO+H
2O→Ca(OH)
2+Q1
水和反応により、蓄熱体4は膨張し、内側容器2の内面(収容部22を区画する面)、伝熱部材5の外面、直接支持部材7の外面に圧接する。すなわち、蓄熱体4は、これらの部材により拘束される。
【0061】
また、
図8(A)、
図8(B)に示すように、変形部921には、蓄熱体4から、縮径方向(直管部50の管軸A3に向かう方向)に、膨張圧(膨張荷重)Fが加わる。このため、変形部921は、縮径変形し、伝熱部材5の外周面に密着する。すなわち、シール部材92は、
図7(A)、
図7(B)に示すように、隙間Cを封止する。
【0062】
水和反応により発生した熱Q1は、蓄熱体4、直接支持部材7、伝熱部材5の壁部を介して、熱媒体流路52の熱媒体に移動する。熱Q1により加熱された熱媒体は、熱媒体ルートR2を介して、外部に流出する。
【0063】
(蓄熱時、脱水反応時)
蓄熱時においては、
図4~
図6に示す熱媒体ルートR2に高温の熱媒体を流動させる。熱媒体の熱は、伝熱部材5の壁部、直接支持部材7を介して、蓄熱体4に移動する。当該熱により加熱された蓄熱体4の化学蓄熱材(水酸化カルシウム)は、以下の脱水反応により、蓄熱し、酸化カルシウムとなる。なお、Q2は蓄熱量である。
Ca(OH)
2+Q2→CaO+H
2O
脱水反応により発生した水蒸気(H
2O)は、反応媒体ルートR1(
図4、
図5に示す矢印方向と反対方向)を介して、化学蓄熱装置1の外部に排出される。なお、変形部921の変形は塑性変形である。このため、変形部921には、永久歪みが残留する。したがって、蓄熱時に蓄熱体4が収縮しても、変形部921は伝熱部材5の外周面に密着したままである。すなわち、シール部材92は、隙間Cを封止したままである。
【0064】
[作用効果]
次に、本実施形態の化学蓄熱装置1の作用効果について説明する。
図5~
図7(B)に示すように、内側容器2の端壁部21の挿通孔210には、伝熱部材5の直管部50が挿通されている。挿通孔210の内周面と直管部50の外周面(外面)との間には、隙間Cが区画されている。シール部材92は、当該隙間Cに配置されている。
図7(A)~
図8(B)に示すように、初期状態に対して、シール部材92は、蓄熱体4の膨張圧Fにより変形し、隙間Cを封止する(隙間Cを狭くする)。このため、収容部22から蓄熱体4が流出するのを抑制することができる。また、シール部材92の固定部920は、挿通孔210の内周面つまり端壁部21に固定されている。他方、シール部材92の変形部921は、直管部50の外周面に当接している。変形部921は、直管部50の外周面に固定されていない。このため、シール部材92つまり内側容器2に対して、直管部50つまり伝熱部材5は、相対的に移動可能である。したがって、伝熱部材5に熱応力が発生するのを抑制することができる。
【0065】
また、シール部材92を端壁部21に固定する作業は、伝熱部材5を挿通孔210に挿通する前に、施工される。このため、伝熱部材5が熱ダメージを受けるのを抑制することができる。また、仮に、シール部材92を端壁部21に固定する作業が、伝熱部材5を挿通孔210に挿通した後に、施工される場合であっても、シール部材92は伝熱部材5に固定されない。このため、伝熱部材5が熱ダメージを受けるのを抑制することができる。
【0066】
シール部材92は、端壁部21に固定される固定部920と、固定部920に連なり、蓄熱体4の膨張圧Fにより塑性変形可能な変形部921と、を備えている。
図7(A)、
図7(B)に示すように、膨張圧Fにより塑性変形した変形部921には、永久歪みが残留している。このため、膨張後の蓄熱体4が収縮する場合であっても(勿論、膨張後の蓄熱体4が収縮しなくてもよい)、隙間Cを封止した状態を維持することができる。
【0067】
シール部材92は、ステンレス箔性である。このため、シール部材92の製造コストを削減することができる。シール部材92は、初期状態から初回の水和反応時の蓄熱体4の膨張圧Fにより変形し、隙間Cを封止する。本実施形態の化学蓄熱装置1によると、高い膨張圧Fを利用して、シール部材92を変形させ、隙間Cを封止することができる。
【0068】
蓄熱体4は、水和反応により、伝熱部材5に向かって膨張可能である。このため、蓄熱体4と伝熱部材5とを密着させやすい。したがって、蓄熱体4と、熱媒体流路52の熱媒体と、の間の熱交換効率を向上させることができる。
図4~
図6に示す収容部22の容積は、水和反応による膨張後の蓄熱体4の体積よりも、小さい。このため、収容部22にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。また、蓄熱体4の膨張時において、蓄熱体4を貫通孔201に押し付けることができる。このため、反応効率を高くすることができる。
【0069】
図6に示すように、外側容器3は、円筒状を呈しており、また外側容器3と内側容器2とは互いに相似形であるため、外側容器3内のデッドスペースを減少させることができる。また、外側容器3を円筒状にすると、外側容器3が多角形筒状である場合と比較して、局所的な応力集中を抑制することができるため、外側容器3の耐圧性を向上させることができる。したがって、外側容器3の壁部(側周壁部30、端壁部31)の厚さを減少することができる。
【0070】
内側容器2の配置数によらず、蓄熱体4の体積が一定の場合を想定する。
図1に示すように、外側容器3に対する内側容器2の配置数は単一である。このため、内側容器2の配置数が複数の場合と比較して、内側容器2の壁部(側周壁部20、端壁部21)の体積を小さくすることができる。したがって、外側容器3内のデッドスペースを減少させることができる。
【0071】
外側容器3の内部に複数の内側容器2を配置し、各々の内側容器2の収容部22に伝熱部材5を配置する場合(内側容器2に対する伝熱部材5の配置数が単一の場合)を想定する。この場合、隣り合う内側容器2間にデッドスペースが発生してしまう。これに対して、
図3~
図6に示すように、内側容器2に対する、伝熱部材5の配置数は、複数である。このため、上記デッドスペースに対応する部分に、蓄熱体4を充填することができる。したがって、収容部22におけるデッドスペースを減少させることができる。また、伝熱部材5の配置数が単一の場合と比較して、伝熱部材5の表面積を広くすることができる。したがって、熱媒体と蓄熱体4との間の熱交換効率を高くすることができる。
【0072】
図4に示すように、蓄熱体4に対する伝熱部材5のパス数は二回である。このため、伝熱部材5のパス数が一回の場合と比較して、伝熱部材5は曲管部51を備えている。すなわち、熱媒体流路52が湾曲している。また、伝熱部材5のパス数が一回の場合(伝熱部材5が単一の直管部50だけを備える場合)と比較して、蓄熱体4の内部における熱媒体流路52の流路長が長くなる。このため、本実施形態の化学蓄熱装置1は、長時間に亘って安定した出力が要求される用途に適している。
【0073】
図5、
図6に示すように、貫通孔201は、収容部22の蓄熱体4に向かって開口している。このため、貫通孔201を介して、蓄熱体4の外面に水蒸気を供給することができる。また、貫通孔201を介して、蓄熱体4の外面から水蒸気を回収することができる。
【0074】
図1に示すように、複数の貫通孔201は、側周壁部20の全体に亘って、所定間隔ずつ離間して、分布している。このため、水蒸気を蓄熱体4の全体に拡散させやすい。また、蓄熱体4の全体から水蒸気を回収しやすい。
図7に示す貫通孔201の孔径は、初期状態における蓄熱体4の平均粒径(例えば、レーザー回折法により求められる粒度分布(粒径分布)のメディアン径)よりも小さい。このため、平均粒径以上の蓄熱体4が収容部22から流出するのを、抑制することができる。
【0075】
図1、
図2、
図4~
図6に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は外側容器3を備えている。このため、内側容器2の外面を利用して、外側流路32を区画することができる。すなわち、内側容器2の壁部(側周壁部20、端壁部21)を隔てて、内側に収容部22を、外側に外側流路32を区画することができる。このため、省スペース性に優れている。
【0076】
図4、
図6に示すように、蓄熱体4の内部には、水蒸気が通過し蓄熱体4に向かって開口する反応媒体流路を内部に区画する流路部材が、配置されていない。このため、収容部22内の蓄熱密度を大きくすることができる。また、化学蓄熱装置1の部品点数を削減し、構造を簡単にすることができる。また、収容部22に流路部材が配置されている場合と比較して、収容部22の形状を単純にすることができる。このため、蓄熱体4を、収容部22の隅々にまで充填することができる。したがって、収容部22にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。
【0077】
図3~
図6に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は、蓄熱体4の内部に、直接支持部材7を備えている。直接支持部材7は、伝熱部材5を直接支持している。このため、伝熱部材5が変形しにくい。具体的には、伝熱部材5が、前端部(伝熱部材取付板81に固定されている部分)を支点に、片持ち梁状に下側に湾曲しにくい。したがって、蓄熱体4に対する伝熱部材5の位置が変化しにくく、蓄熱体4と伝熱部材5との間に隙間が発生しにくい。よって、放熱時において、蓄熱体4の全体から伝熱部材5に、熱を回収しやすい。また、蓄熱時において、伝熱部材5から蓄熱体4の全体に、熱を供給しやすい。このように、本実施形態の化学蓄熱装置1によると、蓄放熱時における伝熱効率を高くすることができる。
【0078】
図1~
図6に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は、内側容器2と外側容器3との間に、間接支持部材87を備えている。間接支持部材87は、内側容器2を支持している。このため、内側容器2が変形しにくい。具体的には、内側容器2が、前端部(伝熱部材取付板81に固定されている部分)を支点に、片持ち梁状に下側に湾曲しにくい。したがって、
図6に示す環状の外側流路32の流路面積がばらつく(上側部分が広くなり、下側部分が狭くなる)のを、抑制することができる。
【0079】
また、内側容器2を片持ち梁状に支持する場合、内側容器2の湾曲を抑制するために、内側容器2自体の構造を重厚化する必要がある。このため、熱ロスが増加する。これに対して、間接支持部材87を配置すると、内側容器2自体の構造を重厚化する必要がない。このため、熱ロスを削減することができる。
【0080】
図4、
図5に示すように、間接支持部材87は、内側容器2、直接支持部材7を介して、伝熱部材5を間接的に支持している。このため、蓄熱体4に対する伝熱部材5の位置が変化しにくい。よって、放熱時において、蓄熱体4の全体から伝熱部材5に、熱を回収しやすい。また、蓄熱時において、伝熱部材5から蓄熱体4の全体に、熱を供給しやすい。よって、蓄放熱時における伝熱効率を高くすることができる。また、間接支持部材87と直接支持部材7とは、側周壁部20を介して、径方向に並んでいる。このため、伝熱部材5の位置決め精度が高い。
【0081】
内側容器2は、蓄放熱に伴う蓄熱体4の体積変化(膨張、収縮)、蓄熱体4の自重、内側容器2の自重などにより、経時的に変形しやすい。内側容器2が変形すると、蓄熱体4に対する伝熱部材5の位置が変化してしまう。この点、内側容器2は、間接支持部材87により補強、支持されている。このため、内側容器2が変形しにくい。したがって、蓄熱体4に対する伝熱部材5の位置が変化しにくい。よって、蓄放熱時における反応効率を高くすることができる。
【0082】
図3に示すように、内側容器2の内部(収容部22)には、複数の伝熱部材5、複数の直接支持部材7が、入り組んで配置されている。このため、収容部22の形状は複雑である。この点、初期状態における蓄熱体4は、蓄熱材顆粒の集合体(粉状体)である。このため、初期状態から初回の放熱時(水和反応時)において蓄熱体4が膨張する際、蓄熱材顆粒は、適度に解砕しながら(例えば、蓄熱材顆粒は、塊状体(複数の蓄熱材粒子の結合体)や蓄熱材粒子などに、崩壊しながら)、収容部22の形状に沿って、収容部22の隅々にまで行き渡ることができる。したがって、収容部22の形状が複雑であるにもかかわらず、収容部22にデッドスペースが発生するのを、抑制することができる。
【0083】
また、蓄熱体4が適度に解砕しながら膨張するため、蓄熱体4が成形体(蓄熱材粒子や蓄熱材顆粒のプレス成形体を焼成したもの。本開示の「蓄熱体」の概念には、当該成形体も含まれる。)である場合と比較して、膨張圧を小さくすることができる。したがって、内側容器2や収容部22に配置されている各部材(伝熱部材5、直接支持部材7)に過度な耐圧構造(例えば、壁部の壁厚増加、補強、材料変更など)を付与する必要がない。
【0084】
<第二実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、外側容器の内部に、複数の内側容器が配置されている点である。また、内側容器の前後一対の端壁部に、各々、シール部材が配置されている点である。また、直接支持部材が配置されていない点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0085】
図9に、本実施形態の化学蓄熱装置の斜視図を示す。
図10に、同化学蓄熱装置の分解斜視図を示す。
図11に、同化学蓄熱装置の部分透過斜視図を示す。
図12に、同化学蓄熱装置の複数の内側容器、伝熱部材、複数の間接支持部材の分解斜視図を示す。
図13に、同化学蓄熱装置の前後方向断面図を示す。
図14に、
図13の枠XIV内の拡大図を示す。
【0086】
これらの図において、
図1(
図9に対応)、
図2(
図10に対応)、
図3(
図11に対応)、
図4(
図13に対応)と対応する部位については、同じ符号で示す。また、
図9においては、外側容器3の内部の内側容器2、伝熱部材5、伝熱部材取付板81、間接支持部材87を点線で示す。また、
図11においては、伝熱部材取付板81、間接支持部材87を透過して、内側容器2を示す。また、蓄熱体4を省略する。また、
図14においては、
図13の枠XIV内のうち、前後方向両端部のみを示す。
【0087】
[化学蓄熱装置の構成]
まず、本実施形態の化学蓄熱装置1の構成について説明する。
図9~
図14に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1は、複数の内側容器2と、外側容器3と、蓄熱体4と、伝熱部材5と、反応媒体給排管80と、伝熱部材取付板81と、熱媒体給排筒82と、隔壁83と、熱媒体供給管84と、熱媒体排出管85と、端板86と、複数の間接支持部材87と、二つの脚部88と、複数のシール部材92と、を備えている。
【0088】
(内側容器2)
図9~
図14に示すように、内側容器2は、金属製であって、前後方向(水平方向)に延在する有底円筒状を呈している。すなわち、内側容器2の筒軸A1(
図14参照)は、前後方向に延在している。複数の内側容器2は、前後方向に所定間隔ずつ離間して、後述する伝熱部材5の直管部50に環装されている。内側容器2は、壁部(側周壁部20、前後二つの端壁部21)と、収容部22と、を備えている。側周壁部20は、前後方向に延在する円筒状を呈している。端壁部21は、上下左右方向(垂直方向)に拡がる円板状を呈している。前側の端壁部21は側周壁部20の前端開口を、後側の端壁部21は側周壁部20の後端開口を、各々封止している。端壁部21の径方向中央には、挿通孔210が開設されている。挿通孔210には、後述する伝熱部材5が挿通されている。内側容器2の壁部(側周壁部20、前後二つの端壁部21)の内部には、収容部22が区画されている。
図9、
図11、
図14に示すように、側周壁部20は、複数の貫通孔201を備えている。複数の貫通孔201は、側周壁部20の全体に亘って、配置されている。
【0089】
(外側容器3)
図9、
図10、
図13に示すように、外側容器3は、全ての内側容器2を、外側(
図13に示す筒軸A2を中心とする径方向外側および後側(軸方向一方))から覆っている。外側容器3は、側周壁部30と、端壁部31と、を備えている。側周壁部30は、前後方向に延在する円筒状を呈している。外側容器3は、外側流路32を区画している。具体的には、外側流路32は、外側容器3の内面と、複数の内側容器2の外面と、の間に区画されている。
【0090】
(伝熱部材5)
図9~
図13に示すように、伝熱部材5は、前端部(後述する伝熱部材取付板81の取付孔810に固定されている部分)を除いて、外側容器3に収容されている。伝熱部材5は、金属製であって、U字の円管状を呈している。すなわち、伝熱部材5は、二つの直管部50と、曲管部51と、を備えている。前述したように、直管部50には、複数の内側容器2が環装されている。
【0091】
(シール部材92)
図14に示すように、内側容器2の前後一対の挿通孔210には、各々、シール部材92が配置されている。前側のシール部材92において、変形部921は、固定部920に対して、後側(収容部22側)に連なっている。後側のシール部材92において、変形部921は、固定部920に対して、前側(収容部22側)に連なっている。前後一対の隙間Cは、各々、シール部材92により封止されている。
【0092】
(間接支持部材87)
図9~
図13に示すように、複数の間接支持部材87は、内側容器2の側周壁部20と、外側容器3の側周壁部30と、の間に配置されている。間接支持部材87により、側周壁部20と側周壁部30の間に外側流路32が確保されている。複数の間接支持部材87は、前後方向に、所定間隔ずつ離間して配置されている。間接支持部材87は、金属製であって、上下左右方向(垂直方向)に延在する円板状を呈している。間接支持部材87は、左右二つの開口部870と、上下二つの支持孔871と、を備えている。二つの開口部870、二つの支持孔871は、各々、間接支持部材87を前後方向に貫通している。開口部870を介して、外側流路32の各部は、前後方向に互いに連通している。支持孔871には、内側容器2の側周壁部20が挿通されている。支持孔871つまり間接支持部材87は、側周壁部20を支持している。また、間接支持部材87は、側周壁部20を位置決めしている。また、間接支持部材87は、内側容器2を介して、伝熱部材5を間接的に支持している。また、間接支持部材87は、内側容器2を介して、伝熱部材5を間接的に位置決めしている。
【0093】
(反応媒体ルートR1、熱媒体ルートR2)
図13、
図14に示すように、化学蓄熱装置1の外部と、収容部22の蓄熱体4と、の間には、外部から蓄熱体4に向かって、反応媒体給排管80、外側流路32、貫通孔201を経由する、水蒸気用の反応媒体ルートR1が設定されている。
【0094】
熱媒体供給管84と熱媒体排出管85との間には、熱媒体供給管84から熱媒体排出管85に向かって、供給室830、熱媒体流路52、排出室831を経由する、熱媒体用の熱媒体ルートR2が設定されている。
【0095】
[作用効果]
次に、本実施形態の化学蓄熱装置1の作用効果について説明する。本実施形態の化学蓄熱装置1と第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。
【0096】
図14に示すように、内側容器2の前後一対の挿通孔210には、各々、シール部材92が配置されている。このため、前後一対の挿通孔210のうち、少なくとも一方を介して、収容部22から蓄熱体4が流出するのを抑制することができる。また、伝熱部材5に熱応力が発生するのを抑制することができる。また、伝熱部材5が熱ダメージを受けるのを抑制することができる。
【0097】
図9に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1によると、単一の外側容器3に対して、複数の内側容器2が配置されている。このため、内側容器2の配置数が単一の場合と比較して、複数の内側容器2に蓄熱体4を分配することができる。したがって、蓄熱体4に対する水蒸気の拡散性を向上させることができる。
【0098】
図14に示すように、本実施形態の化学蓄熱装置1によると、単一の内側容器2に対して、単一の伝熱部材5が配置されている。このため、伝熱部材5の配置数が複数の場合と比較して、蓄熱体4に対する水蒸気の拡散性が伝熱部材5により阻害されにくい。したがって、水蒸気の拡散性を向上させることができる。
【0099】
図13に示すように、間接支持部材87は、内側容器2、蓄熱体4を介して、伝熱部材5を間接的に支持している。言い換えると、間接支持部材87は、内側容器2を介して、蓄熱体4および伝熱部材5を間接的に支持している。このため、蓄熱体4に対する伝熱部材5の位置が変化しにくい。よって、蓄熱体4の全体から伝熱部材5に、熱を回収しやすい。また、伝熱部材5から蓄熱体4の全体に、熱を供給しやすい。
【0100】
<第三実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、伝熱部材が、U字管状ではなく、直管状を呈している点である。また、反応媒体給排管の代わりに、反応媒体供給管および反応媒体排出管が配置されている点である。また、熱媒体給排筒の代わりに、熱媒体供給筒および熱媒体排出筒が配置されている点である。また、収容部が、内側容器の側周壁部と、前後一対の伝熱部材取付板と、により区画されている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0101】
図15に、本実施形態の化学蓄熱装置の前後方向(軸方向)断面図を示す。なお、
図4と対応する部位については、同じ符号で示す。また、内側容器2を部分断面図で示す。
図16に、
図15の枠XVI内の拡大図を示す。
【0102】
外側容器3は、金属製であって、前後方向に延在する円筒状を呈している。外側容器3は、前後方向に開口している。外側容器3の前後両端部の開口は、各々、伝熱部材取付板81a、81bにより、封止されている。
【0103】
側周壁部30の前端部の下側部分には、第一の取付孔300が開設されている。取付孔300には、短軸円管状の反応媒体供給管80aが取り付けられている。反応媒体供給管80aを介して、外側容器3の外部から外側流路32に、水蒸気が供給される。
【0104】
側周壁部30の後端部の上側部分には、第二の取付孔300が開設されている。取付孔300には、短軸円管状の反応媒体排出管80bが取り付けられている。反応媒体排出管80bを介して、外側流路32から外側容器3の外部に、水蒸気が排出される。
【0105】
内側容器2は、金属製であって、前後方向に延在する円筒状を呈している。内側容器2は、前後方向に開口している。内側容器2の前後両端部の開口は、各々、伝熱部材取付板81a、81bにより、封止されている。収容部22は、側周壁部20と、前後一対の伝熱部材取付板81a、81bと、により区画されている。側周壁部20、伝熱部材取付板81a、81bは、本開示の「壁部」の概念に含まれる。
【0106】
熱媒体排出筒82aは、金属製であって、前後方向に延在する短軸円筒状を呈している。熱媒体排出筒82aは、前側の伝熱部材取付板81aの前側に配置されている。伝熱部材取付板81aは、熱媒体排出筒82aの後端開口を封止している。伝熱部材取付板81aの取付孔810には、伝熱部材5が固定されている。端板86aは、熱媒体排出筒82aの前端開口を封止している。
【0107】
熱媒体排出筒82aの内部には、排出室831が区画されている。熱媒体排出筒82aの上側部分には、取付孔820aが開設されている。取付孔820aには、熱媒体排出管85が取り付けられている。熱媒体排出管85を介して、排出室831から熱媒体排出筒82aの外部に、熱媒体が排出される。
【0108】
熱媒体供給筒82bは、金属製であって、前後方向に延在する短軸円筒状を呈している。熱媒体供給筒82bは、後側の伝熱部材取付板81bの後側に配置されている。伝熱部材取付板81bは、熱媒体供給筒82bの前端開口を封止している。伝熱部材取付板81bには、取付孔810(伝熱部材取付板81a参照)ではなく、挿通孔811が開設されている。
【0109】
伝熱部材5は、直管状を呈している。伝熱部材5の前端(下流端)は、前側の伝熱部材取付板81aの取付孔810に取り付けられている。伝熱部材5の後端(上流端)は、後側の伝熱部材取付板81bの挿通孔811に、前後方向に移動可能に挿通されている。伝熱部材5は、蓄熱体4を経由して、後側の供給室830と、前側の排出室831と、を連通している。伝熱部材5は、前後方向に蓄熱体4を一回だけ貫通している。
【0110】
熱媒体供給筒82bの内部には、供給室830が区画されている。熱媒体供給筒82bの下側部分には、取付孔820bが開設されている。取付孔820bには、熱媒体供給管84が取り付けられている。熱媒体供給管84を介して、熱媒体供給筒82bの外部から供給室830に、熱媒体が供給される。
【0111】
図16に示すように、伝熱部材取付板81bの挿通孔811には、伝熱部材5が挿通されている。前述のとおり、伝熱部材5は、伝熱部材取付板81aの取付孔810により、片持ち梁状に支持されている。このため、挿通孔811の内周面と、伝熱部材5の外周面と、の間には、全周的に隙間Cが区画されている。
【0112】
シール部材92は、隙間Cに配置されている。固定部920は、挿通孔811の内周面に接合されている。放熱時(水和反応時)の塑性変形により、変形部921は、伝熱部材5の外周面に全面的に当接(面接触)している。このため、隙間Cは、シール部材92により封止されている。
【0113】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。
図16に示すように、伝熱部材取付板81bの挿通孔811には、シール部材92が配置されている。このため、挿通孔811を介して、収容部22から蓄熱体4が流出するのを抑制することができる。また、伝熱部材5に熱応力が発生するのを抑制することができる。また、伝熱部材5が熱ダメージを受けるのを抑制することができる。なお、収容部22の後側の伝熱部材取付板81bに取付孔810を配置し、収容部22の前側の伝熱部材取付板81aに挿通孔811を配置してもよい。
【0114】
本実施形態の化学蓄熱装置1のように、任意の単一の伝熱部材5が、一回だけ蓄熱体4を通過してもよい。すなわち、蓄熱体4に対する伝熱部材5のパス数を、一回に設定してもよい。この場合、伝熱部材5のパス数が複数回の場合と比較して、熱媒体流路52が湾曲しにくい。また、蓄熱体4の内部における熱媒体流路52の流路長が短くなりやすい。このため、熱媒体の圧力損失を低減することができる。また、熱媒体が相変化する場合(一例として、熱媒体が水(液体)から水蒸気(気体)に相変化する場合)、熱媒体の逆流を抑制することができる。
【0115】
本実施形態の化学蓄熱装置1のように、反応媒体供給管80a、外側流路32、複数の貫通孔201、収容部22の蓄熱体4、複数の貫通孔201、外側流路32、反応媒体排出管80bを経由する、水蒸気用の反応媒体ルートR1を設定してもよい。
【0116】
放熱時(水和反応時)において、水蒸気は、反応媒体供給管80a、外側流路32、複数の貫通孔201を介して、外部から蓄熱体4に供給される。蓄熱時(脱水反応時)において、水蒸気は、複数の貫通孔201、外側流路32、反応媒体排出管80bを介して、蓄熱体4から外部に排出される。このように、一方通行式の反応媒体ルートR1を設定してもよい。
【0117】
本実施形態の化学蓄熱装置1のように、熱媒体の供給系(熱媒体供給筒82b、供給室830、熱媒体供給管84)と排出系(熱媒体排出筒82a、排出室831、熱媒体排出管85)とを、別々に配置してもよい。
【0118】
<第四実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、シール部材が、複数のシール片を有している点である。ここでは、相違点について説明する。
図17に、本実施形態の化学蓄熱装置の、初期状態における部分透過斜視図を示す。なお、
図7(A)~
図8(B)と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0119】
図17に示すように、シール部材92は、複数のシール片92aを備えている。シール片92aは、ステンレス箔製であって、前後方向に長い矩形状を呈している。複数のシール片92aは、部分的に径方向(管軸A3を中心とする円の径方向)に重複(積層)しながら、挿通孔210の内周面を全周的に覆っている。すなわち、周方向に隣り合う一対のシール片92aの間には、重複部Dが形成されている。
【0120】
任意のシール片92aの固定部920aは、挿通孔210の内周面、および周方向両隣りの一対のシール片92aの固定部920aに、接合されている。なお、
図17に点線ハッチングで示す部分は、固定部920aのうち、挿通孔210の内周面に接合されている部分である。シール部材92の固定部920は、複数の固定部920aの集合物である。変形部921aは、固定部920aから前側に延在している。任意のシール片92aの変形部921aは、周方向両隣りの一対のシール片92aの変形部921aと、重複部Dを介して重複している。シール部材92の変形部921は、複数の変形部921aの集合物である。
【0121】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。前出の
図7(A)~
図8(B)に示すように、初期状態に対して、シール部材92の変形部921は、蓄熱体4の膨張圧Fにより縮径変形し、隙間Cを封止する。この際、変形部921は縮径変形する。
【0122】
ここで、仮に、重複部Dが設定されていない場合、縮径変形に伴い、変形部921にシワが発生するおそれがある(この場合も、本開示の「隙間を狭くする」の概念に含まれる。)。このため、シワにより形成された隙間を介して、収容部22から蓄熱体4が流出するおそれがある。
【0123】
この点、
図17に示すように、周方向に隣り合う変形部921a間には、重複部Dが設定されている。変形部921が縮径変形する際、重複部Dの周方向幅は大きくなる。このため、変形部921にシワが発生するのを抑制することができる。よって、より確実に、挿通孔210の内周面と直管部50の外周面との隙間を封止することができる。
【0124】
<第五実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第四実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、シール部材が、複数のスリットと、複数の変形片と、を有している点である。ここでは、相違点について説明する。
図18に、本実施形態の化学蓄熱装置の、初期状態における部分透過斜視図を示す。なお、
図17と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0125】
図18に示すように、シール部材92は、ステンレス箔製であって、前後方向(挿通孔210の孔軸方向)に延在する円筒状を呈している。シール部材92は、固定部920と変形部921とを備えている。固定部920は、挿通孔210の内周面に接合されている。変形部921は、固定部920から前側に延在している。変形部921は、複数の変形片921bと、複数のスリットSと、を備えている。複数の変形片921bは、周方向に並んでいる。変形片921bは、前後方向に延在している。スリットSは、周方向に隣り合う一対の変形片921b間に配置されている。スリットSは、前後方向に延在している。
【0126】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第四実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。前出の
図7(A)~
図8(B)に示すように、初期状態に対して、シール部材92の変形部921は、蓄熱体4の膨張圧Fにより縮径変形し、隙間Cを封止する。この際、変形部921は縮径変形する。
【0127】
ここで、仮に、スリットSが配置されていない場合、縮径変形に伴い、変形部921にシワが発生するおそれがある(この場合も、本開示の「隙間を狭くする」の概念に含まれる。)。このため、シワにより形成された隙間を介して、収容部22から蓄熱体4が流出するおそれがある。
【0128】
この点、
図18に示すように、周方向に隣り合う変形片921b間には、スリットSが配置されている。変形部921が縮径変形する際、周方向に隣り合う変形片921b同士は、スリットSで互いに交差し、重複する。このため、変形部921にシワが発生するのを抑制することができる。よって、より確実に、挿通孔210の内周面と直管部50の外周面との隙間を封止することができる。
【0129】
<第六実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、シール部材が、端壁部の内面に固定されている点である。ここでは、相違点について説明する。
図19に、本実施形態の化学蓄熱装置の前後方向部分断面図を示す。なお、
図19に示す部分は、
図5、
図7(A)の枠VIIA内に対応している。
図7(A)と対応する部位については、同じ符号で示す。
図19に示すように、シール部材92の固定部920は、端壁部21の内面(収容部22側の面)に接合されている。
【0130】
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。
図8(A)に示す膨張圧Fは、固定部920を端壁部21の内面に押し付ける方向に作用する。このため、固定部920が端壁部21の内面から剥離するのを抑制することができる。
【0131】
<第七実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、シール部材が、端壁部の外面に固定されている点である。ここでは、相違点について説明する。
図20に、本実施形態の化学蓄熱装置の前後方向部分断面図を示す。なお、
図20に示す部分は、
図5、
図7(A)の枠VIIA内に対応している。
図7(A)と対応する部位については、同じ符号で示す。
図20に示すように、シール部材92の固定部920は、端壁部21の外面(外側流路32側の面)に接合されている。
【0132】
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の化学蓄熱装置のように、固定部920は、端壁部21の外面に接合されていてもよい。こうすると、蓄熱体4が外側流路32に流出するのを抑制することができる。また、収容部22のみならず、挿通孔210の孔内においても、挿通孔210の前後方向全長に亘って、変形部921(伝熱性の高い金属箔)を介して、蓄熱体4と伝熱部材5との間で熱の授受を行うことができる。
【0133】
<第八実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、内側容器の側周壁部に複数の挿通孔が開設されている点である。また、当該挿通孔に、管状流路部材が挿通されている点である。ここでは、相違点について説明する。
【0134】
図21に、本実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図を示す。
図22に、
図21の枠XXII内の拡大図を示す。なお、
図6、
図7(A)と対応する部位については、同じ符号で示す。また、隙間Cを強調して示す。
【0135】
図21に示すように、内側容器2の壁部(側周壁部20、端壁部)の一部を構成する側周壁部20は、複数の取付孔200と、複数の挿通孔202と、を備えている。取付孔200は、側周壁部20を上下方向に貫通している。複数の取付孔200は、側周壁部20の前後方向全長に亘って、配置されている。複数の取付孔200は、側周壁部20の下側部分に配置されている。複数の取付孔200は、二列(延在方向は前後方向、並置方向は左右方向)に並んでいる。
【0136】
挿通孔202は、側周壁部20を上下方向に貫通している。複数の挿通孔202は、側周壁部20の前後方向全長に亘って、配置されている。複数の挿通孔202は、側周壁部20の上側部分に配置されている。複数の挿通孔202は、二列(延在方向は前後方向、並置方向は左右方向)に並んでいる。挿通孔202と取付孔200とは、上下方向(軸直方向断面において、内側容器2の筒軸A1を中心とする円の直径方向)に対向している。
【0137】
管状流路部材6は、金属製であって、上下方向に延在する直管状を呈している。管状流路部材6の下端部(管状流路部材6の軸方向一端部)は、取付孔200に取り付けられている。他方、管状流路部材6の上端部(管状流路部材6の軸方向他端部)は、挿通孔202に挿通されている。
【0138】
管状流路部材6は、上下両端部(取付孔200、挿通孔202に収容されている部分)を除いて、収容部22に収容されている。管状流路部材6は、蓄熱体4の内部に配置されている。管状流路部材6の外面は、蓄熱体4に当接している。
【0139】
管状流路部材6は、内部に内側流路60を区画している。内側流路60は、本開示の「反応媒体流路」の概念に含まれる。内側流路60は、二つの外側開口部600と、複数の内側開口部601と、を備えている。二つの外側開口部600は、管状流路部材6の上下両端部に開設されている。すなわち、二つの外側開口部600は、内側容器2の取付孔200、挿通孔202を介して、内側容器2の外部(外側流路32)に開口している。複数の内側開口部601は、管状流路部材6の壁部(収容部22に配置されている部分)に開設されている。内側開口部601は、蓄熱体4に向かって開口している。内側開口部601の大きさ(口径)は、水蒸気が通過可能であって、蓄熱体4の蓄熱材粒子が通過しにくい大きさに設定されている。
【0140】
複数の内側開口部601は、管状流路部材6の壁部の全体に亘って分布している。また、複数の内側開口部601は、蓄熱体4の上下方向全長に亘って分布している。水蒸気は、内側流路60を通過可能である。水蒸気は、内側開口部601を介して、蓄熱体4に供給される。並びに、水蒸気は、内側開口部601を介して、蓄熱体4から排出される。収容部22において、複数の管状流路部材6は、前後左右方向に並んでいる。複数の管状流路部材6は、収容部22(つまり蓄熱体4)の全体に配置されている。
【0141】
図22に示すように、挿通孔202の内周面と、管状流路部材6の外周面と、の間には、全周的に隙間Cが区画されている。シール部材92は、隙間Cに配置されている。シール部材92は、厚さ20μm程度のステンレス箔製であって、円筒状(詳しくは、挿通孔202の内周面形状(側周壁部20の湾曲形状)に合わせて斜めに切断された円筒状)を呈している。シール部材92は、固定部920と、変形部921と、を備えている。固定部920は、シール部材92の上端に配置されている。固定部920は、挿通孔202の内周面に接合されている。変形部921は、固定部920の下側に配置されている。放熱時(水和反応時)の塑性変形により、変形部921は、管状流路部材6の外周面に全面的に当接(面接触)している。このため、隙間Cは、シール部材92により封止されている。
【0142】
本実施形態の化学蓄熱装置と、第一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の化学蓄熱装置によると、蓄熱体4の内部には、管状流路部材6が配置されている。管状流路部材6の内部には、内側流路60が区画されている。内側流路60の内側開口部601は、蓄熱体4に向かって開口している。このため、内側流路60を介して、蓄熱体4の内部に水蒸気を供給することができる。したがって、蓄熱体4の全体に水蒸気が拡散しやすい。また、内側流路60を介して、蓄熱体4の内部から水蒸気を回収することができる。したがって、蓄熱体4の全体から水蒸気を回収しやすい。このように、本実施形態の化学蓄熱装置1によると、蓄放熱時における反応効率を高くすることができる。
【0143】
本実施形態の化学蓄熱装置によると、シール部材92は、伝熱部材5の直管部50の周囲、および管状流路部材6の周囲に配置されている。すなわち、第一のシール部材92は、第一実施形態の化学蓄熱装置と同様に、端壁部21の挿通孔210の内周面と、伝熱部材5の直管部50の外周面(外面)と、の間に介装されている。他方、第二のシール部材92は、側周壁部20の挿通孔202の内周面と、管状流路部材6の外周面(外面)と、の間に介装されている。このため、第一実施形態の化学蓄熱装置同様の作用効果(上述の第一のシール部材92による作用効果)に加えて、管状流路部材6周囲の隙間Cを介して収容部22から蓄熱体4が流出するのを抑制することができる。また、管状流路部材6に熱応力が発生するのを抑制することができる。また、管状流路部材6が熱ダメージを受けるのを抑制することができる。また、蓄熱体4の膨張圧により塑性変形した変形部921には、永久歪みが残留している。このため、膨張後の蓄熱体4が収縮する場合であっても、隙間Cを封止した状態を維持することができる。
【0144】
シール部材92は、伝熱部材5の周囲および管状流路部材6の周囲のうち、少なくとも一方に配置すればよい。例えば、シール部材92は、本実施形態のように、伝熱部材5の周囲および管状流路部材6の周囲に配置してもよい。また、伝熱部材5の周囲だけに配置してもよい。また、管状流路部材6の周囲だけに配置してもよい。
【0145】
側周壁部20における取付孔200と挿通孔202との配置は上下逆であってもよい。すなわち、取付孔200を側周壁部20の上側部分に、挿通孔202を側周壁部20の下側部分に、各々開設してもよい。この場合、管状流路部材6の上端部(固定端部)が、取付孔200に固定される。他方、管状流路部材6の下端部(自由端部)が、シール部材92付きの挿通孔202に挿通される。
【0146】
<第九実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第八実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、管状流路部材の代わりに中空板状流路部材が配置されている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
図23に、本実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図を示す。
図24に、
図23の枠XXIV内の拡大図を示す。なお、
図21と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0147】
内側容器2の側周壁部20は、複数のスリット202aを備えている。スリット202aは、本開示の「挿通孔」の概念に含まれる。スリット202aは、側周壁部20を左右方向に貫通している。複数のスリット202aは、側周壁部20の左側部分と右側部分とに配置されている。左側部分、右側部分の各々において、複数のスリット202aは、二列(延在方向は前後方向、並置方向は上下方向)に並んでいる。複数のスリット202aは、部屋220(前出の
図4、
図5に示すように、収容部22が複数の直接支持部材7で仕切られて区画される空間)に対応して、配置されている。任意の単一の部屋220には、上下二段に、左右一対のスリット202aが配置されている。
【0148】
中空板状流路部材6aは、金属製であって、前後左右方向(水平方向)に延在する平板状を呈している。中空板状流路部材6aは、収容部22に配置されている。中空板状流路部材6aは、左右一対のスリット202aに取り付けられている。任意の単一の部屋220には、上下二段に、二つの中空板状流路部材6aが配置されている。上下二段の中空板状流路部材6aは、部屋220を上下三つの小部屋220aに区画している。
【0149】
中空板状流路部材6aは、内部に内側流路60を区画している。内側流路60は、本開示の「反応媒体流路」の概念に含まれる。内側流路60は、二つの外側開口部600と、複数の内側開口部601と、を備えている。二つの外側開口部600は、中空板状流路部材6aの左右両端部に開設されている。すなわち、二つの外側開口部600は、内側容器2の左右一対のスリット202aを介して、内側容器2の外部(外側流路32)に開口している。複数の内側開口部601は、中空板状流路部材6aの壁部(収容部22に配置されている部分)に開設されている。内側開口部601は、蓄熱体4に向かって開口している。内側開口部601の大きさ(口径)は、水蒸気が通過可能であって、蓄熱体4の蓄熱材粒子が通過しにくい大きさに設定されている。
【0150】
複数の内側開口部601は、中空板状流路部材6aの壁部の全体に亘って分布している。また、複数の内側開口部601は、部屋220の前後方向全長に亘って分布している。水蒸気は、内側流路60を通過可能である。水蒸気は、内側開口部601を介して、蓄熱体4に供給される。並びに、水蒸気は、内側開口部601を介して、蓄熱体4から排出される。
【0151】
スリット202aの内周面と、中空板状流路部材6a(外側開口部600付近の部分。スリット202aに収容されている部分)の外周面と、の間には、隙間Cが区画されている。シール部材92は、隙間Cに配置されている。隙間Cは、シール部材92により封止されている。なお、中空板状流路部材6aの自重が作用するため、隙間Cのうち、上側部分は隙間幅が広い。他方、下側部分は隙間幅が狭い。
【0152】
本実施形態の化学蓄熱装置と、第八実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の化学蓄熱装置1は中空板状流路部材6aを備えている。このため、内側流路(反応媒体流路)60を介して、水蒸気を蓄熱体4の内部に供給することができる。また、蓄熱体4の内部から水蒸気を回収することができる。
【0153】
蓄熱体4は、蓄放熱に伴う体積変化(膨張、収縮)により、微粉化しやすい。蓄熱体4の微粉は、収容部22を自重により流下しやすい。このため、収容部22における蓄熱体4の密度は、上側部分が疎に、下側部分が密に、なりやすい。この点、中空板状流路部材6aは、任意の単一の部屋220を、複数の小部屋220aに区画している。このため、上側の小部屋220aから下側の小部屋220aに、蓄熱体4が流下しにくい。したがって、収容部22における蓄熱体4の密度の偏在を、抑制することができる。
【0154】
本実施形態の化学蓄熱装置によると、シール部材92は、中空板状流路部材6aの周囲に配置されている。このため、中空板状流路部材6a周囲の隙間Cを介して収容部22から蓄熱体4が流出するのを抑制することができる。また、中空板状流路部材6aに熱応力が発生するのを抑制することができる。また、中空板状流路部材6aが熱ダメージを受けるのを抑制することができる。また、蓄熱体4の膨張圧により塑性変形したシール部材92には、永久歪みが残留している。このため、膨張後の蓄熱体4が収縮する場合であっても、隙間Cを封止した状態を維持することができる。
【0155】
中空板状流路部材6aは、前後左右方向(水平方向)に延在している。並びに、当該中空板状流路部材6aが挿通される二つのスリット202aは、左右方向(水平方向)に対向している。このため、重力が作用しても、中空板状流路部材6aが二つのスリット202aから脱落しにくい。したがって、中空板状流路部材6aの左右両端部を、各々、シール部材92を介して、スリット202aに挿通することができる。なお、二つのスリット202aのうち、いずれか一方のスリット202aに、中空板状流路部材6aを固定してもよい。また、前後上下方向(垂直方向)に延在する中空板状流路部材6aにより、部屋220を、左右複数の小部屋220aに区画してもよい。
【0156】
<第十実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第八実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、管状流路部材の代わりに二重管状流路部材が配置されている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0157】
図25に、本実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図を示す。なお、
図21と対応する部位については、同じ符号で示す。収容部22には、二重管状流路部材6bが配置されている。二重管状流路部材6bは、本開示の「流路部材」の概念に含まれる。二重管状流路部材6bは、金属製であって、幹部材61と、複数の枝部材62と、を備えている。
【0158】
幹部材61は、前後方向に延在する二重円管状を呈している。幹部材61は、外周壁部63と、内周壁部64と、を備えている。内周壁部64は、外周壁部63の径方向内側に配置されている。外周壁部63と内周壁部64とは、同軸上(筒軸A1上)に配置されている。幹部材61の前端部は、
図4に示す伝熱部材取付板81に固定されている。幹部材61の後端部は、端壁部21に固定されている。
【0159】
幹部材61の内部(外周壁部63と内周壁部64との間)には、内側流路60が区画されている。内側流路60は、本開示の「反応媒体流路」の概念に含まれる。軸直方向断面において、内側流路60は、筒軸A1を中心とする円環状を呈している。収容部22は、幹部材61を挟んで、外側収容部22aと、内側収容部22bと、を備えている。外側収容部22a、内側収容部22bには、各々、蓄熱体4が充填されている。外側収容部22aは、側周壁部20と外周壁部63との間に区画されている。外周壁部63の外面は、外側収容部22aの蓄熱体4に当接している。内側収容部22bは、内周壁部64の径方向内側に区画されている。内周壁部64の内面は、内側収容部22bの蓄熱体4に当接している。
【0160】
複数の内側開口部601は、幹部材61の壁部(外周壁部63、内周壁部64)の全体に亘って分布している。複数の内側開口部601は、蓄熱体4の前後方向全長に亘って分布している。外周壁部63の内側開口部601は、外側収容部22aの蓄熱体4に向かって開口している。内周壁部64の内側開口部601は、内側収容部22bの蓄熱体4に向かって開口している。
【0161】
枝部材62は、径方向(軸直方向断面において、筒軸A1を中心とする円の径方向)に延在する直管状を呈している。枝部材62は、幹部材61と、内側容器2の側周壁部20と、を連結している。枝部材62の径方向内端は、外周壁部63に固定されている。枝部材62の径方向外端は、側周壁部20の挿通孔202に挿入されている。挿通孔202の内周面と、枝部材62の外周面と、の間には、隙間Cが区画されている。シール部材92は、隙間Cに配置されている。隙間Cは、シール部材92により封止されている。
【0162】
外側開口部600は、枝部材62の径方向外端に配置されている。外側開口部600は、外側流路32(側周壁部20と側周壁部30との間の部分)に開口している。複数の枝部材62は、所定間隔ずつ離間して、前後方向に並置されている。
【0163】
伝熱部材5は、幹部材61の径方向両側に亘って、延在している。具体的には、一対の直管部50a、50bのうち、径方向外側の直管部50aは、外周壁部63の径方向外側を、前後方向に延在している。直管部50aの後端部は、端壁部21の挿通孔210aに挿通されている。挿通孔210aの内周面と、直管部50aの外周面と、の間には、隙間Cが区画されている。シール部材92は、隙間Cに配置されている。隙間Cは、シール部材92により封止されている。
【0164】
径方向内側の直管部50bは、内周壁部64の径方向内側を、前後方向に延在している。直管部50bの後端部は、端壁部21の挿通孔210bに挿通されている。挿通孔210bの内周面と、直管部50bの外周面と、の間には、隙間Cが区画されている。シール部材92は、隙間Cに配置されている。隙間Cは、シール部材92により封止されている。曲管部51は、直管部50aの後端部と、直管部50bの後端部と、を径方向に連結している。
【0165】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第八実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の化学蓄熱装置1は二重管状流路部材6bを備えている。このため、内部空間形状が環状の内側流路60を介して、水蒸気を蓄熱体4の内部に供給することができる。また、蓄熱体4の内部から水蒸気を回収することができる。
【0166】
内側流路60は、蓄熱体4に対して複数の箇所で開口している。このため、水蒸気を蓄熱体4の全体に拡散させやすい。また、蓄熱体4の全体から水蒸気を回収しやすい。また、複数の内側開口部601は、幹部材61の外周壁部63、内周壁部64(収容部22に配置されている部分)の全体に亘って、所定間隔ずつ離間して、分布している。また、複数の内側開口部601は、蓄熱体4の前後方向全長に亘って、所定間隔ずつ離間して、分布している。このため、水蒸気を蓄熱体4の全体に拡散させやすい。また、蓄熱体4の全体から水蒸気を回収しやすい。
【0167】
本実施形態の化学蓄熱装置1によると、シール部材92は、枝部材62の周囲の隙間C、径方向外側の直管部50aの周囲の隙間C、径方向内側の直管部50bの周囲の隙間Cに、各々配置されている。このため、これらの隙間Cを介して収容部22から蓄熱体4が流出するのを抑制することができる。また、枝部材62、直管部50a、50bに熱応力が発生するのを抑制することができる。また、枝部材62、直管部50a、50bが熱ダメージを受けるのを抑制することができる。また、蓄熱体4の膨張圧により塑性変形したシール部材92には、永久歪みが残留している。このため、膨張後の蓄熱体4が収縮する場合であっても、隙間Cを封止した状態を維持することができる。
【0168】
<第十一実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第八実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、管状流路部材が、上下方向ではなく、前後方向に延在している点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0169】
図26に、本実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図を示す。なお、
図21と対応する部位については、同じ符号で示す。管状流路部材6は、蓄熱体4の内部に配置されている。管状流路部材6の外面は、蓄熱体4に当接している。管状流路部材6は、幹部材61と、複数の枝部材62と、を備えている。
【0170】
幹部材61は、前後方向に延在する直管状を呈している。幹部材61の前端部は、
図4に示す伝熱部材取付板81に固定されている。幹部材61の後端部は、端壁部21に固定されている。複数の内側開口部601は、幹部材61の壁部の全体に亘って分布している。また、複数の内側開口部601は、蓄熱体4の前後方向全長に亘って分布している。
【0171】
枝部材62は、径方向(軸直方向断面において、筒軸A1を中心とする円の径方向)に延在する直管状を呈している。枝部材62は、幹部材61と、内側容器2の側周壁部20と、を連結している。枝部材62の径方向内端は、幹部材61に固定されている。枝部材62の径方向外端は、側周壁部20の挿通孔202に挿入されている。挿通孔202の内周面と、枝部材62の外周面と、の間には、隙間Cが区画されている。シール部材92は、隙間Cに配置されている。隙間Cは、シール部材92により封止されている。
【0172】
外側開口部600は、枝部材62の径方向外端に配置されている。外側開口部600は、外側流路32(側周壁部20と側周壁部30との間の部分)に開口している。複数の枝部材62は、所定間隔ずつ離間して、前後方向に並置されている。
【0173】
伝熱部材5の一対の直管部50は、各々、前後方向に延在している。直管部50の後端部は、端壁部21の挿通孔210に挿通されている。挿通孔210の内周面と、直管部50の外周面と、の間には、隙間Cが区画されている。シール部材92は、隙間Cに配置されている。隙間Cは、シール部材92により封止されている。曲管部51は、一対の直管部50の後端部同士を径方向に連結している。
【0174】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第八実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の化学蓄熱装置1のように、枝部材62を介して、蓄熱体4の内部に埋設された幹部材61に、水蒸気を供給してもよい。
【0175】
本実施形態の化学蓄熱装置1によると、シール部材92は、枝部材62の周囲の隙間C、直管部50の周囲の隙間Cに、各々配置されている。このため、これらの隙間Cを介して収容部22から蓄熱体4が流出するのを抑制することができる。また、枝部材62、直管部50に熱応力が発生するのを抑制することができる。また、枝部材62、直管部50が熱ダメージを受けるのを抑制することができる。また、蓄熱体4の膨張圧により塑性変形したシール部材92には、永久歪みが残留している。このため、膨張後の蓄熱体4が収縮する場合であっても、隙間Cを封止した状態を維持することができる。
【0176】
<第十二実施形態>
本実施形態の化学蓄熱装置と、第十一実施形態の化学蓄熱装置との相違点は、主に、外側マニフォールドが配置されている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
図27に、本実施形態の化学蓄熱装置の軸直方向断面図を示す。なお、
図26と対応する部位については、同じ符号で示す。内側容器2の径方向外側には、外側マニフォールド3aが環装されている。外側マニフォールド3aは、本開示の「外側容器」の概念に含まれる。外側マニフォールド3aの軸直方向断面の筒軸A2と、内側容器2の軸直方向断面の筒軸A1と、は一致している。外側マニフォールド3aは、内側容器2を径方向外側から覆っている。外側マニフォールド3aは、金属製であって、二重円筒状を呈している。
【0177】
外側マニフォールド3aは、外周壁部33と、内周壁部34と、を備えている。内周壁部34は、円筒状を呈している。内周壁部34は、内側容器2の側周壁部20の径方向外側に配置されている。内周壁部34には、複数の取付孔300が開設されている。取付孔300と側周壁部20の挿通孔202とは、径方向に並んでいる。外周壁部33は、内周壁部34の径方向外側に配置されている。外周壁部33と内周壁部34との間には、外側流路32が区画されている。軸直方向断面において、外側流路32は、筒軸A2を中心とする円環状を呈している。枝部材62の径方向外端は、取付孔300に固定されている。枝部材62の径方向内端は、幹部材61に固定されている。枝部材62は、挿通孔202を貫通している。挿通孔202の内周面と、枝部材62の外周面と、の間には、隙間Cが区画されている。シール部材92は、隙間Cに配置されている。隙間Cは、シール部材92により封止されている。
【0178】
本実施形態の化学蓄熱装置1と、第十一実施形態の化学蓄熱装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の化学蓄熱装置1のように、内側容器2の径方向外側に、外側マニフォールド3aを配置してもよい。そして、外側マニフォールド3aに、外側流路32を設定してもよい。本実施形態の化学蓄熱装置1によると、内側容器2から独立して、外側マニフォールド3a(つまり外側流路32)を配置することができる。内側容器2と外側マニフォールド3aとの間には、空間が介在している。このため、内側容器の壁部を経由して、蓄熱体4と外側流路32との間で熱が伝わるのを、抑制することができる。また、内側容器2を取り囲むように、円環状の外側流路32を配置することができる。
【0179】
<その他>
以上、本開示の化学蓄熱装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0180】
図28に、その他の実施形態(その1)の化学蓄熱装置の前後方向部分断面図を示す。なお、
図28に示す部分は、
図5、
図7(A)の枠VIIA内に対応している。
図7(A)と対応する部位については、同じ符号で示す。
図28に示すように、蓄熱体4からの膨張圧により、変形部921が径方向に波打つように変形してもよい。この場合であっても、隙間Cを封止することができる。なお、隙間Cを完全に封止することができなくてもよい。すなわち、
図28に点線で示す初期状態に対して、隙間Cの少なくとも一部を狭くすることができればよい。
【0181】
図29に、その他の実施形態(その2)の化学蓄熱装置の軸直方向部分断面図を示す。なお、
図29に示す部分は、
図6、
図7(B)の枠VIIB内に対応している。
図7(B)と対応する部位については、同じ符号で示す。
図29に示すように、蓄熱体4からの膨張圧により、変形部921にシワWが発生してもよい。この場合であっても、隙間Cを封止することができる。なお、隙間Cを完全に封止することができなくてもよい。すなわち、
図29に点線で示す初期状態に対して、隙間Cの少なくとも一部を狭くすることができればよい。
【0182】
このように、水和反応後(蓄熱体4から膨張圧が加わった後)の変形部921の形状は特に限定しない。初期状態に対して、隙間Cの少なくとも一部を狭くすることができればよい。また、脱水反応時(蓄熱体4収縮時)に、変形部921が部分的に弾性復元してもよい。
【0183】
図30(A)~
図30(D)に、その他の実施形態(その3~その6)の化学蓄熱装置の軸直方向断面図を示す。なお、
図6と対応する部位については、同じ符号で示す。
図30(A)に示すように、内側容器2の側周壁部20、外側容器3の側周壁部30は、各々、四角形筒状であってもよい。
図30(B)に示すように、内側容器2の側周壁部20、外側容器3の側周壁部30は、各々、八角形筒状であってもよい。
図30(C)に示すように、内側容器2の側周壁部20は、楕円筒状であってもよい。外側容器3の側周壁部30は、四角形筒状であってもよい。すなわち、側周壁部20の形状と側周壁部30の形状とは、一致(相似)していても、異なっていてもよい。
図30(D)に示すように、内側容器2の側周壁部20、外側容器3の側周壁部30は、各々、角部に面取部を有する、四角形筒状であってもよい。
【0184】
図30(A)~
図30(D)に示すように、側周壁部20、30の形状は特に限定しない。側周壁部20、30は、円形(真円形、楕円形)、多角形(三角形、四角形、六角形、八角形など)などであってもよい。収容部22における伝熱部材5の配置数は、単一(
図30(D))であっても、複数(
図30(A)~
図30(C))であってもよい。
【0185】
[初期状態について]
前述のとおり、初期状態とは、収容部22に伝熱部材5が配置された状態で、収容部22に収容された蓄熱体4が未だ一度も水和反応していない状態をいう。収容部22に伝熱部材5が配置される前の状態における、蓄熱体4の水和反応履歴は特に限定しない。収容部22に伝熱部材5が配置される前に、蓄熱体4を水和反応させてもよい。
【0186】
[構造]
上述の実施形態の化学蓄熱装置1のうち、任意の実施形態の化学蓄熱装置1の部材は、他の実施形態の化学蓄熱装置1に、組み込むことができる。例えば、
図19、
図20に示すシール部材92を、
図14、
図26、
図27に示す挿通孔210、
図25に示す挿通孔210a、210b、
図16に示す挿通孔811、
図22、
図25~
図27に示す挿通孔202、
図24に示すスリット202aに組み込んでもよい。
【0187】
(内側容器2、外側容器3(外側マニフォールド3aを含む))
内側容器2の形状は特に限定しない。直筒状(I字筒状)、曲筒状(C字筒状、S字筒状など)、直筒部と曲筒部とを適宜組み合わせた形状(J字筒状、U字筒状など)であってもよい。円(真円形、楕円形など)筒状、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形など)筒状であってもよい。内側容器2が直筒状の場合、内側容器2の軸方向は特に限定しない。水平方向、垂直方向(重力方向)、水平方向および垂直方向に対して傾斜する方向であってもよい。内側容器2に関する上述の事項は、外側容器3についても同様である。
【0188】
外側容器3の形状と内側容器2の形状とは、同一であっても異なっていてもよい。例えば、外側容器3が多角形筒状、内側容器2が円筒状であってもよい。あるいは、その逆であってもよい。また、外側容器3と内側容器2とは、同軸上に配置されていても、配置されていなくてもよい。すなわち、外側容器3の筒軸A2と内側容器の筒軸A1とは、一致していても異なっていてもよい。互いの筒軸A1、A2が異なる場合、二つの筒軸A1、A2は、平行に配置されていても、互いに交差する方向に配置されていてもよい。外側容器3に対する内側容器2の配置数は特に限定しない。単一の外側容器3に対して、単一または複数の内側容器2を配置してもよい。
【0189】
(伝熱部材5、流路部材(管状流路部材6、中空板状流路部材6a、二重管状流路部材6b))
伝熱部材5の形状は特に限定しない。伝熱部材5が管状である場合、直管状(I字管状)、曲管状(C字管状、S字管状など)、直管部と曲管部とを適宜組み合わせた形状(J字管状、U字管状など)であってもよい。円形管状、多角形管状であってもよい。伝熱部材5は、内部に熱媒体流路52を区画し、外面が蓄熱体4に当接する中空板状であってもよい。また、伝熱部材5は、内部に環状の熱媒体流路52を区画し、外面および内面が蓄熱体4に当接する二重管状(外周壁部の形状と内周壁部の形状とは、同一でも異なっていてもよい)であってもよい。伝熱部材5が直管状、平板状の場合、伝熱部材5の軸方向は特に限定しない。水平方向、垂直方向、水平方向および垂直方向に対して傾斜する方向であってもよい。また、蓄熱体4の内部における伝熱部材5の配置数は特に限定しない。単一でも複数でもよい。また、蓄熱体4の内部に対する伝熱部材5のパス数は特に限定しない。単一でも複数でもよい。また、蓄熱体4の内部における伝熱部材5の位置は特に限定しない。伝熱部材5に関する上述の事項は、後述の流路部材についても同様である。また、伝熱部材5の外面(蓄熱体4に当接する面)および内面(熱媒体に当接する面)のうち少なくとも一方に、伝熱面積拡張部材(フィンなど)を配置してもよい。
【0190】
貫通孔201の代わりに、あるいは貫通孔201と共に、化学蓄熱装置1に流路部材を配置してもよい。流路部材の内部には、反応媒体が流通する反応媒体流路が区画されている。反応媒体流路の一端は、外側流路32に開口している。反応媒体流路の他端は、収容部22(蓄熱体4の内部)に開口している。流路部材を配置すると、反応媒体流路を介して、蓄熱体4の内部に反応媒体を供給することができる。また、反応媒体流路を介して、蓄熱体4から反応媒体を回収することができる。
【0191】
また、貫通孔201(反応媒体流路)の少なくとも一部に、水蒸気が通過可能であって、蓄熱体4の蓄熱材粒子が通過しにくいフィルタを配置してもよい。
図31(A)~
図31(G)に、その他の実施形態(その7~その13)の化学蓄熱装置の軸直方向部分断面図を示す。なお、
図31(A)~
図31(G)に示す部分は、
図6の枠XXXI内に対応している。
図31(A)に示すように、貫通孔201にフィルタ(多孔質体)90aを埋設してもよい。
図31(B)に示すように、
図31(A)のフィルタ90aに加えて、貫通孔201の孔軸方向一方(側周壁部20の外側)の開口を、フィルタ(多孔質シート)90bで覆ってもよい。
図31(C)に示すように、
図31(A)のフィルタ90aに加えて、貫通孔201の孔軸方向他方(側周壁部20の内側)の開口を、フィルタ90bで覆ってもよい。
図31(D)に示すように、
図31(A)のフィルタ90aに加えて、貫通孔201の孔軸方向両外側の開口を、各々、フィルタ90bで覆ってもよい。
図31(E)に示すように、貫通孔201の孔軸方向一方の開口を、フィルタ90bで覆ってもよい。
図31(F)に示すように、貫通孔201の孔軸方向他方の開口を、フィルタ90bで覆ってもよい。
図31(G)に示すように、貫通孔201の孔軸方向両外側の開口を、各々、フィルタ90bで覆ってもよい。
図31(A)~
図31(G)によると、貫通孔201にフィルタ90a、90bが配置されていない場合と比較して、より確実に、水蒸気の通過許容と、蓄熱体4の漏出抑制と、を両立させることができる。
【0192】
また、
図31(A)~
図31(D)によると、蓄熱体4が貫通孔201に入り込むのを、抑制することができる。また、内側容器2の壁部(側周壁部20、端壁部21)自体がフィルタ(多孔質体)90aである場合と比較して、貫通孔201ごとにフィルタ90aが配置されているため、任意のフィルタ90aに入ったクラックが、他のフィルタ90aに伝播しにくい。
【0193】
また、
図31(B)、
図31(D)、
図31(E)、
図31(G)によると、貫通孔201の孔軸方向一方(側周壁部20の外側)の開口を、フィルタ(多孔質シート)90bで覆っているため、蓄熱体4が外側流路32に入り込むのを、抑制することができる。
【0194】
また、
図31(C)、
図31(D)、
図31(F)、
図31(G)によると、貫通孔201の孔軸方向他方(側周壁部20の内側)の開口を、フィルタ(多孔質シート)90bで覆っているため、蓄熱体4が貫通孔201に入り込むのを、抑制することができる。以上まとめると、フィルタは、貫通孔201の孔内、孔外(孔軸方向両外側のうち、少なくとも一方)のうち、少なくとも一方に配置すればよい。なお、フィルタ90a、90bを、
図21、
図24~
図27に示す内側開口部601の少なくとも一部に配置してもよい。
【0195】
(シール部材92)
シール部材92の形状(挿通孔210の孔軸方向形状、孔軸方向に対して直交する方向の形状)、配置、配置数等は特に限定しない。形状について、シール部材92は円筒状(無端環状)であっても、部分円筒状(有端環状、C字環状)であっても、多角形筒状(例えば、
図24に示すシール部材92は前後方向に長い四角形筒状)であってもよい。この場合であっても、初期状態に対して、隙間Cを狭くすることができる。配置について、固定部920の固定対象部は、端壁部21や伝熱部材取付板81b以外であってもよい。配置数について、単一の挿通孔210(あるいは挿通孔811)に、複数のシール部材92を配置してもよい。シール部材92の特性について、脱水反応時(蓄熱体4収縮時)に、変形部921が部分的に弾性復元してもよい。固定部920の固定方法について、固定部920の固定対象部(端壁部21、伝熱部材取付板81bなど)に対する固定方法は特に限定しない。溶接、接着、ロウ付け、締結具(ボルト、ねじ、釘など)などにより固定すればよい。
【0196】
本開示のシール部材92の配置場所は特に限定しない。シール部材92は、内側容器2の壁部、伝熱部材取付板81、81a、81b、直接支持部材7などに開設された孔(挿通孔202、202a、210、210a、210b、取付孔810、挿通孔811、支持孔70など)と、当該孔に挿入される挿通部材と、の隙間に介装されていればよい。挿通部材の種類は特に限定しない。伝熱部材5、流路部材(内部に、反応媒体が流通する反応媒体流路が区画されている。反応媒体流路の一端は外側流路32に、他端は収容部22(蓄熱体4の内部)に、各々開口している。)などが挙げられる。蓄熱体4が膨張する前の状態における隙間Cの隙間幅は、全周的に一定でも、異なっていてもよい。例えば、重力の影響などにより、隙間Cのうち、上側部分が広く、下側部分が狭く(隙間幅0を含む)なっていてもよい。シール部材92の変形機構は特に限定しない。弾性変形であっても、塑性変形であってもよい。また、蓄熱体4が繰り返し膨張、収縮するのに応じて、シール部材92の永久歪みが徐々に増加してもよい。
【0197】
(支持部材)
直接支持部材7の形状は特に限定しない。板状、棒状などであってもよい。収容部22における直接支持部材7の配置数は特に限定しない。単一でも複数でもよい。直接支持部材7は、内側容器2と別部材であってもよい。また、直接支持部材7は、内側容器2と一体化されていてもよい。伝熱部材5の配置数と、直接支持部材7の配置数と、は同一でも異なっていてもよい。単一の伝熱部材5を複数の直接支持部材7で支持してもよい。複数の伝熱部材5を単一の直接支持部材7で支持してもよい。複数の伝熱部材5を複数の直接支持部材7で支持してもよい。収容部22における直接支持部材7の位置は特に限定しない。伝熱部材5の軸方向長さ、強度、複数の部屋220の容積などを考慮して、直接支持部材7の位置を決めればよい。化学蓄熱装置1に、直接支持部材7が配置されていなくてもよい。
【0198】
間接支持部材87の形状は特に限定しない。板状、棒状などであってもよい。外側流路32における間接支持部材87の配置数は特に限定しない。単一でも複数でもよい。間接支持部材87は、内側容器2、外側容器3と別部材であってもよい。間接支持部材87は、内側容器2または外側容器3と一体化されていてもよい。内側容器2の配置数と、間接支持部材87の配置数と、は同一でも異なっていてもよい。単一の内側容器2を複数の間接支持部材87で支持してもよい。複数の内側容器2を単一の間接支持部材87で支持してもよい。複数の内側容器2を複数の間接支持部材87で支持してもよい。外側流路32における間接支持部材87の位置は特に限定しない。内側容器2の軸方向長さ、強度などを考慮して、間接支持部材87の位置を決めればよい。化学蓄熱装置1に、間接支持部材87が配置されていなくてもよい。開口部870の形状、配置数、位置などは特に限定しない。外側流路32の全体が、開口部870を介して、連通すればよい。
【0199】
[材料]
化学蓄熱装置1を構成する各部材(内側容器2、外側容器3、伝熱部材5、直接支持部材7、間接支持部材87、反応媒体給排管80、反応媒体供給管80a、反応媒体排出管80b、伝熱部材取付板81、81a、81b、熱媒体給排筒82、熱媒体排出筒82a、熱媒体供給筒82b、隔壁83、熱媒体供給管84、熱媒体排出管85、端板86、86a、86b、シール部材92)の材質は特に限定しない。強度、比熱、作動温度などを考慮して、金属(例えば、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、鉄など)、セラミック、樹脂などを用いればよい。
【0200】
シール部材92の材質は特に限定しない。ステンレス、アルミニウムなどの金属であってもよい。あるいは、樹脂であってもよい。シール部材92を金属箔製とすると、簡単にシール部材92を塑性変形させることができる。
【0201】
蓄熱体4の蓄熱材粒子に用いられる化学蓄熱材の種類は特に限定しない。例えば、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Baなど)の化合物(酸化物、水酸化物、炭酸化物、塩化物、硫酸化物など)であってもよい。化合物は、アルカリ土類金属を一種以上含んでいればよい。具体的には、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、マグネシウムとカルシウムの複合水酸化物、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、マグネシウムとカルシウムの複合酸化物などであってもよい。
【0202】
蓄熱材粒子の平均一次粒子径は特に限定しない。例えば、0.1μm以上10μm以下であればよい。平均一次粒子径は、例えば、レーザー回折法により求められる蓄熱材粒子の粒度分布(粒径分布)のメディアン径である。
【0203】
蓄熱体4に含まれる粘土鉱物の種類は特に限定しない。例えば、セピオライト、アタパルジャイト、カオリナイト、ベントナイトなどであってもよい。これらの粘土鉱物は、単体で、あるいは二種以上混合して、用いることができる。粘土鉱物の繊維径は特に限定しない。
【0204】
蓄熱体4の形態は特に限定しない。粉体状であっても、塊状であってもよい。塊状の場合、成形体(蓄熱材粒子や蓄熱材顆粒のプレス成形体を焼成したもの)であってもよい。反応媒体の種類は特に限定しない。化学蓄熱材の種類に応じて、例えば、水蒸気(水)、アンモニアなどを用いることができる。熱媒体の種類は特に限定しない。例えば、水蒸気(水)、オイル(シリコンオイルなど)、空気、溶融塩などを用いることができる。反応媒体、熱媒体は、気体でも液体でもよい。流動性を有していればよい。
【符号の説明】
【0205】
1:化学蓄熱装置、2:内側容器、20:側周壁部(壁部)、201:貫通孔(反応媒体流路)、202:挿通孔、202a:スリット(挿通孔)、21:端壁部(壁部)、210:挿通孔、210a:挿通孔、210b:挿通孔、22:収容部、220:部屋、3:外側容器、3a:外側マニフォールド(外側容器)、30:側周壁部、300:取付孔、31:端壁部、310:取付孔、32:外側流路、4:蓄熱体、5:伝熱部材、50:直管部、51:曲管部、52:熱媒体流路、6:管状流路部材、6a:中空板状流路部材、6b:二重管状流路部材(流路部材)、60:内側流路(反応媒体流路)、600:外側開口部、601:内側開口部、7:直接支持部材、70:支持孔、80:反応媒体給排管、80a:反応媒体供給管、80b:反応媒体排出管、81:伝熱部材取付板、81a:伝熱部材取付板、81b:伝熱部材取付板(壁部)、810:取付孔、811:挿通孔、82:熱媒体給排筒、82a:熱媒体排出筒、82b:熱媒体供給筒、820:取付孔、820a:取付孔、820b:取付孔、83:隔壁、830:供給室、831:排出室、84:熱媒体供給管、85:熱媒体排出管、86:端板、86a:端板、87:間接支持部材、870:開口部、871:支持孔、88:脚部、90a:フィルタ、90b:フィルタ、92:シール部材、92a:シール片、920:固定部、920a:固定部、921:変形部、921a:変形部、921b:変形片、A1:筒軸、A2:筒軸、A3:管軸、C:隙間、D:重複部、F:膨張圧、R1:反応媒体ルート、R2:熱媒体ルート、S:スリット、W:シワ