(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146751
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】低糖質麺
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20241004BHJP
【FI】
A23L7/109 Z
A23L7/109 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012160
(22)【出願日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2023058562
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥悟
(72)【発明者】
【氏名】村田 安興
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA02
4B046LB07
4B046LC07
4B046LC08
4B046LC17
4B046LG01
4B046LG02
4B046LG16
4B046LG21
4B046LG29
4B046LP01
4B046LP10
4B046LP15
4B046LP40
(57)【要約】
【課題】色味や風味が良好な難消化性澱粉を含む低糖質麺を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも1種類以上のグルテンを含む、色差計で測定したL値が73以上となるグルテン組成物を配合することで、難消化性澱粉を含む低糖質麺における色のくすみやグルテン臭を低減し、色味や風味が良好な低糖質麺を提供することができる。なお、本発明に係るグルテン組成物は、スプレードライ法により製造された活性グルテンを含むことが好ましい。スプレードライ法により製造された活性グルテンを含むことにより、製麺性や食感が向上する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉と、難消化性澱粉と、グルテン組成物を含む低糖質麺であって、
前記グルテン組成物は、少なくとも1種類以上のグルテンを含み、以下の方法で色差を測定した時のL値が73以上である、低糖質麺。
(L値の測定方法)
前記小麦粉80gと前記グルテン組成物20gを混合した後、水50gを加えて60秒間混捏し、厚さが10mmとなるように延ばした生地について、色差計を用いてL値を測定する。
【請求項2】
前記グルテン組成物は、スプレードライ法により製造された活性グルテンを含む、請求項1記載の低糖質麺。
【請求項3】
前記グルテン組成物を、原料粉中の総添加澱粉量に対して、10~50重量%含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の低糖質麺。
【請求項4】
前記グルテン組成物は、前記スプレードライ法により製造された活性グルテンを、原料粉中の総添加澱粉量に対して、3重量%以上含むことを特徴とする、請求項3記載の低糖質麺。
【請求項5】
さらに、エーテル化澱粉を含む、請求項1又は2記載の低糖質麺。
【請求項6】
前記エーテル化澱粉を原料粉中の難消化性澱粉含量に対して5~50重量%含むことを特徴とする、請求項5記載の低糖質麺。
【請求項7】
前記低糖質麺が即席めんであることを特徴とする請求項1又は2記載の低糖質麺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難消化性澱粉を含有する通常よりも低糖質な麺類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、糖質を低減した食品や、食物繊維を多く摂取できる食品が注目されている。
【0003】
麺類における糖質制限や食物繊維摂取の方法としては、麺原料に難消化澱粉を利用することで、糖質の消化吸収を抑制しつつ、食物繊維を摂取するという方法が知られている。難消化性澱粉に限らず、各種食物繊維を添加することが有効であり、食物繊維の種類としては、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、低分子のセルロース、キトサン、サイリウム種皮などが挙げられる。
【0004】
このうち難消化性澱粉を麺原料として配合すると、一般に製麺性が悪く、食感は弾力が弱く、粉っぽくなったりザラつきが生じたりするなどの問題がある。
【0005】
難消化性澱粉を含む低糖質麺の食感を改善する方法として、特許文献1に、小麦、タピオカ、トウモロコシ及び甘藷のいずれか1つ以上に由来する難消化性澱粉と、糊化開始温度が低い加工澱粉と、蛋白を所定量含有する方法が開示されている。また、低糖質麺の製麺性を改善する方法としては、特許文献2に、難消化性澱粉、α化澱粉及び小麦グルテンを用いる方法が開示されている。しかしながら、これらの従来技術を用いて製造された低糖質麺は、製麺性や食感は改善されるものの、色味や風味については改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2018/216706号公報
【特許文献2】特開2019―50769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、色味や風味が良好な難消化性澱粉を含む低糖質麺を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、難消化性澱粉を含む低糖質麺の色味や風味の改善について鋭意検討した結果、少なくとも1種類以上のグルテンを含む、色差計で測定したL値が73以上となるグルテン組成物を配合することで、色味や風味が良好な低糖質麺が得られることを新たに見出し、本発明が完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、小麦粉と、難消化性澱粉と、少なくとも1種類以上のグルテンを含んでなる色差計で測定したL値が73以上となるグルテン組成物と、を含有することを特徴とする低糖質麺である。
【0010】
また、本発明に係る低糖質麺のグルテン組成物は、スプレードライ法により製造された活性グルテンを含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る低糖質麺は、グルテン組成物を原料粉中の総添加澱粉量に対して10~50重量%含むことが好ましい。さらに、スプレードライ法により製造された活性グルテンを、原料粉中の総添加澱粉量に対して3重量%以上含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る低糖質麺は、エーテル化澱粉を含むことが好ましい。エーテル化澱粉の配合量としては、原料粉中の難消化性澱粉含量に対して5~50重量%であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る低糖質麺の麺の種類としては、即席めんが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
当該発明によれば、色味や風味が良好な難消化性澱粉を含む低糖質麺を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の内容について実施例を含めて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明において製造する麺の種類は、通常の当技術分野で知られるいかなるものであってもよく、うどん、そば、中華麺、パスタ、マカロニ、麺皮などが挙げられる。
【0016】
1. 主原料粉配合
本発明に係る主原料粉としては、小麦粉、難消化性澱粉は必須であるが、これら以外として、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉等の穀粉及び馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の各種澱粉を単独で使用しても、または混合して使用してもよい。前記澱粉として、生澱粉、α化澱粉並びにアセチル化澱粉、エーテル化澱粉、及び架橋澱粉等の加工澱粉等を使用することもできる。
【0017】
・小麦粉
本発明に係る主原料粉である小麦粉としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉等を単独で使用しても、または混合して使用してもよい。小麦粉の配合量は主原料粉中の割合として、5~75重量%配合することが好ましい。5%よりも少ない場合、小麦の風味に欠け、75%よりも多い場合、難消化性澱粉の添加量が減り、糖質低減の効果が小さくなる。
【0018】
・難消化性澱粉
本発明に係る主原料粉である難消化性澱粉としては、高アミロース澱粉の湿熱処理澱粉、リン酸架橋澱粉およびリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉が挙げられる。澱粉の原料種としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉及び米粉澱粉などが挙げられる。食物繊維含量が60重量%以上のものが好ましく、80重量%以上のものが特に好ましい。難消化性澱粉の配合量は、糖質を低減する点で多いほど好ましいが、配合量が増加するにつれて、ざらつきや粉っぽさも増すと同時に、製麺性が低下して、グルテン等のつなぎ剤を多く配合する必要があり、風味も悪くなる。そのため、好ましい添加量としては、原料粉中に10~50重量%である。
【0019】
・エーテル化澱粉
本発明に係る小麦粉、難消化性澱粉以外の主原料粉の配合は、特に限定はしないが、食感の点で、エーテル化澱粉を用いることが好ましく、馬鈴薯由来のエーテル化澱粉を使用することが特に好ましい。エーテル化澱粉の配合量としては、原料粉中の難消化性澱粉含量に対して5~50重量%含むことが好ましい。5重量%以下の場合、ざらつきや粉っぽさの改善効果が小さく、50重量%よりも多い場合、小麦粉の配合量が減量して小麦風味が弱くなること、または難消化性澱粉の配合量が減少して糖質低減効果が減少することがある。エーテル化馬鈴薯澱粉はその他の加工澱粉と比較して膨化が強いため、即席めんのような膨化した麺に配合すると、麺の色が一層白く、くすみが少ない外観に優れた麺を得ることができる。また、エーテル化馬鈴薯澱粉の場合、α化した澱粉であるとべたついて製麺のために添加できる量が限られるので、α化していないエーテル化馬鈴薯澱粉を使用するか、α化したエーテル化馬鈴薯澱粉を製麺可能な範囲で使用した後、残りはα化していないエーテル化馬鈴薯澱粉を使用することが好ましい。
【0020】
2. 副原料配合
本発明に係る副原料としては、グルテンは必須であるが、これ以外は、通常の製麺方法で一般的に使用されている卵、かんすい、食塩、リン酸塩類、増粘剤、麺質改良剤、pH調整剤、色素、香料及び保存料等を添加することができる。これらは主原料粉と一緒に粉体で添加しても、練水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。
【0021】
・グルテン組成物
本発明で使用される難消化性澱粉やエーテル化澱粉などの添加する澱粉には、グルテンが含まれていないため、製麺性を得るためには、グルテンを添加する必要がある。本発明に係るグルテン組成物は、1種類以上のグルテンを含み、色差計で測定したL値が73以上である。L値が73以上であればグルテンの種類は特に限定されず、単独で用いても、複数のグルテンを混合して用いてもよい。また、由来となる穀物や分離方法は特に限定されず、生グルテンであっても各種乾燥方法を用いて粉末化された活性グルテンのいずれであってもよいが、小麦(デュラム粉含む)由来の活性グルテンが好ましい。添加量としては、少なすぎると製麺性や食感が悪く、多すぎても食感が硬く、製麺性が悪くなるため、原料粉中の総添加澱粉量に対して、10~50重量%であることが好ましい。なお、本発明における総添加澱粉量は、難消化性澱粉やエーテル化澱粉などの添加する澱粉の総重量であり、小麦粉等の穀粉内に含まれる澱粉については含まない。
【0022】
色差の値は次のような方法で測定する。原料粉に使用する小麦粉80gとグルテン組成物20gを混合した後、水50gを加えて60秒間混捏し、厚みが10mmとなるように延ばした生地について、色差計(コニカミノルタ製:型番CR―410)でL値を測定する。L値が73以上の場合、色味が良好で異味がなく風味もよい麺になるが、73より低い場合は色味がくすみ、グルテン臭が生じて小麦風味が弱まる。
【0023】
本発明に係る、グルテン組成物の配合は、特に限定されないが、製麺性や食感の点で、スプレードライ法により製造された活性グルテン(以下、スプレードライグルテンと記載する)を用いることが好ましい。
【0024】
通常、活性グルテンの製造方法としては、スプレードライ法、フラッシュドライ法、真空乾燥法、凍結乾燥法などが挙げられる。スプレードライ法は、生グルテンに酢酸やアンモニアを加えてpH調整し、低粘度のグルテン分散液を調製した後、乾熱気中に噴霧して瞬間的に乾燥させる方法であり、フラッシュドライ法は、生グルテンを細かく裁断しながら気流中で乾燥させる方法である。真空乾燥法は、生グルテンを低温の高真空下で乾燥させる方法であり、凍結乾燥法は、真空乾燥法よりも更に高い真空度で生グルテン中の水分を昇華させて乾燥させる方法である。
【0025】
スプレードライグルテンは、原料粉中の総添加澱粉量に対して3重量%以上含むことが好ましい。スプレードライグルテンが少ないと、製麺性や食感に優れない。また、スプレードライグルテンの色調が悪い場合は、スプレードライグルテンが多いと、グルテン組成物の色差が悪くなるため、グルテン組成物の色調が悪くない程度に添加することが好ましい。
【0026】
(2)混捏工程
麺原料を混捏することによって、麺生地を製造する。具体的には、小麦粉、難消化性澱粉等の主原料粉に、グルテン組成物等の副原料を加え、粉体混合した後、さらに水に食塩、リン酸塩及びアルカリ剤等の副原料を溶解させた練水を加え、ミキサーを用いて各原料が均一に混ざるように良く混捏してドウを製造する。なお、混捏に使用するミキサーは特に限定されず、バッチ型ミキサーやフロージェットミキサー、真空ミキサー等を適宜使用できる。
【0027】
この時、練水による加水が多いと生地が早期に団子状になりやすく、その後の麺帯作製や圧延が行いづらくなる。そのため、好ましい練水による加水量としては、ドウの温度にもよるが、麺帯水分が30~45質量%、より好ましくは35~40質量%となるように加水することが好ましい。
【0028】
(3)製麺工程
次いで作製したドウから麺線を作製する。作製方法としては、常法に従って行えばよく、エクストルーダ等を用いてドウを押し出して麺線を作成する方法や、ドウをロールにより粗麺帯とした後、複合等により麺帯とし、さらにロールにより複数回圧延し、所定の麺帯厚とした後、切刃と呼ばれる切出しロール又は包丁切りにより麺帯を切出し、麺線を作製する方法が挙げられる。麺帯を作製してから麺線を作製する場合、エクストルーダを用いて麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよく、また、複数の麺帯を合わせて多層構造を持つ麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよい。複数の麺帯を合わせて多層構造とする場合には、外層の難消化性澱粉の配合量を少なく、内層の難消化性澱粉の配合量を多くすることで、調理時や加工時の難消化性澱粉由来の食物繊維の流出が抑えられるだけでなく、表面が滑らかでつるみのある食感が得られやすい。エクストルーダ等を用いて押出し麺帯または押出し麺線を作製する場合は、減圧下で行うことが好ましい。次いで作製した麺線を適当な長さで切断し、生麺線とする。
【0029】
上記生麺線は、打ち粉等をした後に包装して生めんとしてもよく、該生麺線を蒸煮及び/または茹で処理を行い、蒸しめんまたは茹でめんとしてもよい。茹でめんをpH調整、密封、殺菌した場合にはチルドめんや生タイプ即席めんとすることができる。また、生麺線を乾燥して、乾めんや半乾めんとしてもよく、生麺を蒸煮及び/または茹で等の処理を行い、冷凍して冷凍めんとすることもできる。
【0030】
また、即席めんの場合は、生麺線を必要により蒸煮及び/または茹で処理を行い、乾燥することで製造することができる。乾燥方法は特に限定されず、即席めんの製造において一般的に使用されている乾燥方法を適用することができる。具体的には、フライ(油揚げ)乾燥のほか、熱風乾燥、真空凍結乾燥、マイクロ波乾燥、低温での送風乾燥といったノンフライ乾燥が挙げられ、これらを組み合わせて実施することもできる。処理フライ乾燥処理の場合は通常130~160℃で1~3分間、熱風乾燥処理の場合は通常60~120℃で15~180分間程度の処理を実施する。乾燥処理後の水分量としては、フライ乾燥処理の場合で1~5重量%、熱風乾燥処理の場合で2~12質量%とすればよい。
【0031】
本発明に係る低糖質麺の麺類は特に限定されないが、麺が膨化するフライ麺やノンフライ麺などの即席めんの場合、エーテル化馬鈴薯澱粉を使用することで、他の澱粉と比較して食感だけでなく、色調もより良好となるため好ましい。
【0032】
また、本発明に係る低糖質麺の麺の種類は、特に白い色の麺が好ましく、うどん、そうめん、ひやむぎ、ほうとうなどの麺が好ましい。
【実施例0033】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0034】
<試験1:グルテンの種類の検討>
グルテンの色味の検討のため、下記グルテン資材を用いて表1記載のグルテン組成物を用意した。小麦粉(株式会社ニップン:No.2)80gに各種グルテン組成物20gを混合し、水50gを加えて60秒間混捏した後、厚さが10mmとなるように延ばした生地について、色差計(コニカミノルタ製:型番CR―410)を用いてL値を測定した。それぞれについて3サンプル作製して測定し、平均した数値を下記表1に示す。
(グルテン素材)
グルテンA:Wheto pro 80(エー・ディー・エム株式会社)
グルテンB:AグルSS(グリコ栄養食品株式会社)
グルテンC:V―75(グリコ栄養食品株式会社)
なお、グルテンBはスプレードライ製法、グルテンCはフラッシュドライ製法で製造されたものである。
【0035】
【0036】
(試験例1―1)
小麦粉(中力粉)200g、難消化性澱粉(タピオカリン酸架橋澱粉(食物繊維含量85%))500g、加工澱粉(エーテル化馬鈴薯澱粉)100gを混合した主原料粉に、グルテン組成物1を200g加えて混合し、食塩20gとリン酸塩3gを水450mlに溶解した練水を加え、ミキサーにて15分間混捏し、麺生地(ドウ)を作製した。
【0037】
作製したドウを複合して麺帯を作製し、ロール圧延にて1.50mmまで麺帯を圧延した後、9番角のロール切刃にて麺帯を切断し、麺線とした。その後、その後100℃で2分間蒸煮し、30cmにカットした麺120gをフライ乾燥用リテーナーに入れ、150℃2分間フライし、低糖質フライ麺サンプル(うどん)を製造した。試験結果を表3に示す。
【0038】
(試験例1-2~1-9)
試験例1おいて、表2記載の配合に基づき、各グルテン組成物を用いた点を除いて、試験例1と同様の方法でフライ麺を作製した。各試験における結果を表3に示す。
【0039】
作製した低糖質フライ麺について、熟年のパネラー6名により官能評価を行った。低糖質フライ麺75gをカップにいれ、熱湯を400ml注ぎ、蓋をして5分間静置した後、軽くほぐしてから喫食し、色味、風味、製麺性、食感について評価した。色味、風味、製麺性の評価は以下の4段階で行った。食感の評価は2種類用い、試験1及び2は評価1、試験3及び4は評価2の5段階で行った。色味、風味、製麺性の評価は〇以上、食感の評価は3以上で合格とした。
<色味の評価>
◎:くすみがなく、非常に良好である。
〇:くすみが少なく、良好である。
△:ややくすみがあり、やや不良である。
×:くすんでおり、不良である。
<風味の評価>
◎:異味がなく小麦の風味が強く感じられる。
〇:異味が少なく、小麦の風味が感じられる。
△:やや異味が感じられ、小麦の風味が弱い。
×:異味が強く、小麦の風味がほとんど感じられない。
<製麺性の評価>
◎:麺帯や麺線切れがなく、非常に良好である。
〇:麺帯や麺線切れが少なく、良好である。
△:麺帯や麺線切れが生じ、やや不良である。
×:麺帯や麺線切れが多く、製麺が困難である。
<食感の評価1>
5:十分に粘弾性やしなやかさがあり、非常に良好である。
4:粘弾性がありしなやかで、良好である。
3:やや粘弾性が劣るがしなやか、又はややしなやかさが劣るが粘弾性があり、概ね可である。
2:粘弾性としなやかさに欠け、やや不良である。
1:著しく粘弾性としなやかさに欠け、不良である。
<食感の評価2>
5:十分に調理感があり、粉っぽさもほとんど感じられず非常に良好である。
4:調理感があり、粉っぽさが少なく、良好である。
3:調理感がやや不足するが、粉っぽさは少なく概ね可である。
2:調理感が不足して粉っぽさがやや目立ち、やや不良である。
1:著しく調理感が不足して粉っぽく、不良である。
【0040】
【0041】
【0042】
色味や風味については、試験例1-1、1-4~1-7、1-9が示すように、L値が73以上のグルテン組成物を使用した場合、評価が高かった。一方で、試験例1-2、1-3、1-8が示すように、L値が73未満のグルテン組成物を用いた場合は、くすみや異味が生じてどちらの評価も低かった。
【0043】
以上のことから、L値が73以上のグルテン組成物を用いることで、色味や風味が良好な麺が得られることが示唆された。
【0044】
また、製麺性については、試験例1-2、1-4~1-8が示すように、グルテンBを含む試験区の方が、含まない試験区と比較して評価が高かった。グルテンAとグルテンBの配合比率が9:1~5:5の間においては、グルテンBの比率が上昇するにつれて麺帯の伸展性が増して評価が向上した。5:5を超えると麺帯強度が低下して評価がやや低下するものの、評価としては良好であった。
【0045】
さらに、食感についても、試験例1-2、1―4~1-8が示すように、グルテンBを含む試験区の方が、含まない試験区と比較して評価が高かった。グルテンAとグルテンBの配合比率が9:1~5:5の間においては、グルテンBの比率が上昇するにつれて粘弾性やしなやかさが増して評価が向上した。5:5を超えるとやや粘弾性が低下するものの、評価としては良好であった。
【0046】
以上のことから、食感を考慮すると、グルテン組成物中にスプレードライグルテンを10重量%以上含むことが好ましく、製麺性まで考慮すると、30重量%以上含むことが好ましいことが示唆された。
【0047】
<試験2:グルテン組成物の配合量の検討>
(試験例2―1)
小麦粉(中力粉)340g、難消化性澱粉(タピオカリン酸架橋澱粉(食物繊維含量85%))500g、加工澱粉(エーテル化馬鈴薯澱粉)100gを混合した主原料粉に、グルテン組成物6を60g加えて混合し、食塩20gとリン酸塩3gを水450mlに溶解した練水を加え、ミキサーにて15分間混捏し、麺生地(ドウ)を作製した。その後の製麺工程は試験例1と同様に行い、低糖質フライ麺を製造した。官能評価についても試験例1と同様の方法で行った。試験結果を表5に示す。
【0048】
(試験例2-2~2-3)
試験例2-1おいて、表4記載の配合に基づき、小麦粉と、グルテン組成物6の配合量を変更した点を除いて、試験例1と同様の方法でフライ麺を作製した。各試験における結果を表5に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
色味や風味については、試験例2-1~2-3が示すように、原料粉中の総澱粉添加量に対するグルテン添加量が増加するにつれて、評価が低下する傾向にあったが、グルテン添加量が最大の試験例2-3でもいずれの評価も高かった。
【0052】
また、製麺性については、試験例2-2が最も評価が高かった。試験例2-2と比較すると、試験例2-1はやや麺帯が弱く、試験例2-3はやや伸展性が低下したが、いずれも評価は良好な範囲であった。
【0053】
さらに、食感についても、試験例2-2が最も評価が高かった。試験例2-2と比較すると、試験例2-1の場合は粘弾性が劣り、試験例2-3の場合はややしなやかさが劣ったが、いずれも評価は良好な範囲であった。
【0054】
以上のことから、製麺性や食感を考慮すると、グルテン添加量は原料粉中の総澱粉添加量に対して10~50重量%含むのが好ましいことが示唆された。さらに、試験1の結果と合わせると、食感を考慮すると、スプレードライグルテンを原料粉中の総澱粉添加量に対して1重量%以上含むことが好ましく、製麺性まで考慮すると、3重量%以上含むことが好ましい。
【0055】
<試験3:加工澱粉の検討>
(試験例3―1)
小麦粉(中力粉)200g、難消化性澱粉(タピオカリン酸架橋澱粉(食物繊維含量85%))500g、エーテル化馬鈴薯澱粉100gを混合した主原料粉に、グルテン組成物6を200g加えて混合し、食塩20gとリン酸塩3gを水450mlに溶解した練水を加え、ミキサーにて15分間混捏し、麺生地(ドウ)を作製した。その後の製麺工程は試験例1と同様に行い、低糖質フライ麺を製造した。官能評価については、食感の評価2を用いる点を除いて、試験例1と同様の方法で行った。試験結果を表7に示す。
【0056】
(試験例3-2~3-7)
試験例3-1おいて、表6記載の配合に基づき、加工澱粉の種類を変更した点を除いて、試験例1と同様の方法でフライ麺を作製した。各試験における結果を表7に示す。
【0057】
【0058】
【0059】
色味や風味については、試験例3-1~3―7が示すように、製麺できず評価できなかった試験例3-7を除いて、全ての試験区の評価が同等に高かった。
【0060】
また、製麺性については、試験例3-7ではドウのべたつきが強く、製麺ができなかったが、その他の試験区は同等の製麺性であり、評価は良好であった。
【0061】
さらに、食感については、試験例3-1~3-3が示すように、エーテル化澱粉を用いた試験区でのみ評価が良好な範囲にあった。特に馬鈴薯由来のエーテル化澱粉を用いた試験例3-1の評価が高く、十分に調理感があって粉っぽさがほとんどない食感であった。また、試験例3-4、3-6が示すように、アセチル化澱粉を用いた試験区では、未加工澱粉を用いた試験区と比較すると調理感や粉っぽさが改善されるものの、エーテル化澱粉を用いた試験区よりは劣っており、評価が合格を下回った。
【0062】
以上のことから、食感を考慮すると、エーテル化澱粉を配合することが好ましく、このうちエーテル化馬鈴薯澱粉を配合することがより好ましい。
【0063】
<試験4:エーテル化馬鈴薯澱粉の配合量の検討>
(試験例4―1)
小麦粉(中力粉)290g、難消化性澱粉(タピオカリン酸架橋澱粉(食物繊維含量85%)500g、エーテル化馬鈴薯澱粉10gを混合した主原料粉に、グルテン組成物6を200g加えて混合し、食塩20gとリン酸塩3gを水450mlに溶解した練水を加え、ミキサーにて15分間混捏し、麺生地(ドウ)を作製した。その後の製麺工程は試験例1と同様に行い、低糖質フライ麺を製造した。官能評価については、食感の評価2を用いる点を除いて、試験例1と同様の方法で行った。試験結果を表9に示す。
【0064】
(試験例4-2~4-5)
試験例4-1おいて、表8記載の配合に基づき、小麦粉とエーテル化馬鈴薯澱粉の配合量を変更した点を除いて、試験例1と同様の方法でフライ麺を作製した。各試験における結果を表9に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
色味については、試験例4-1~4-5が示すように、色味についてはすべての試験区の評価が同等に高かった。
【0068】
風味については、試験例4-5のみ小麦粉が配合されていないため、評価が悪かった。エーテル化澱粉の添加量を増減させるにあたり、小麦粉の量を調製したため、試験例4-5の風味の評価が低下したが、グルテン組成物や難消化性澱粉の量を調製することによって、風味の評価を向上させることができると推測できる。
【0069】
以上のことから、エーテル化澱粉の配合量は難消化性澱粉量に対して2重量%以上配合することが好ましく、2~50重量%がより好ましい。
【0070】
また、製麺性については、試験例4-3が最も良好であった。製麺性は、原料小麦粉中のグルテンを含む総グルテン量の増減に伴い変化する傾向にあり、試験例4-1ではドウがやや硬く、試験例4-5ではドウが柔らかかったが、いずれも評価は良好な範囲にあった。
【0071】
さらに、食感については、試験例4-3まではエーテル化澱粉の添加量が増加するにつれて調理感が増して粉っぽさが減少し、評価が向上する傾向にあった。エーテル化澱粉の添加量が試験例4-3より増加した試験例4-4、4-5では、試験例4-3と比較して評価がやや劣るものの、良好な範囲にあった。
【0072】
以上のことから、食感を考慮すると、エーテル化澱粉の配合量は難消化性澱粉量に対して5重量%以上であることが好ましく、5~50重量%がより好ましい。
【0073】
以上説明したように、本発明は少なくとも1種類以上のグルテンを含む、L値が73以上のグルテン組成物を配合することで、色味や風味が良好な低糖質麺を製造することができるという優れた効果を有する。