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  • 特開-光学積層体及び巻回体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146765
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】光学積層体及び巻回体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020967
(22)【出願日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2023058272
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名田 敬之
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB26
2H149BA02
2H149BA15
2H149CA02
2H149EA12
2H149FA12X
2H149FA24W
2H149FA33W
2H149FB01
2H149FB05
2H149FD47
(57)【要約】
【課題】セパレーターを良好に剥離し、任意の被着体へ容易に貼合可能な光学積層体を提供する。
【解決手段】光学積層体は、表面保護フィルム、第1保護層、光吸収異方性層、第2保護層、第1粘着剤層、及びセパレーターがこの順に積層されている。表面保護フィルム及びセパレーターはいずれも延伸ポリエステルフィルムを含む。表面保護フィルムと第1保護層との間の剥離力F1[N/25mm]、及び、セパレーターと第1粘着剤層との間の剥離力F2[N/25mm]は、式(4)~(6)の関係を満たす。第1保護層の表面保護フィルム側の表面から、第2保護層の第1粘着剤層側の表面までの距離は、30μm以下である。
0.05≦F1≦0.30 (4)
0.02≦F2≦0.15 (5)
0.02≦F1-F2 (6)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護フィルム、第1保護層、光吸収異方性層、第2保護層、第1粘着剤層、及びセパレーターがこの順に積層された光学積層体であって、
前記表面保護フィルム及び前記セパレーターは、いずれも延伸ポリエステルフィルムを含み、
前記光吸収異方性層は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含み、かつ、下記式(1)~(3)の関係を満たし、
前記表面保護フィルムと前記第1保護層との間の剥離力F1[N/25mm]、及び、前記セパレーターと前記第1粘着剤層との間の剥離力F2[N/25mm]は、下記式(4)~(6)の関係を満たし、
前記第1保護層の前記表面保護フィルム側の表面から、前記第2保護層の前記第1粘着剤層側の表面までの距離は、30μm以下である、光学積層体。
Az>(Ax+Ay)/2 (1)
0.001≦Ax≦0.1 (2)
Ax(z=60°)/Ax≧5 (3)
0.05≦F1≦0.30 (4)
0.02≦F2≦0.15 (5)
0.02≦F1-F2 (6)
[式(1)~(3)中、
Ax、Ay、及びAzは、前記光吸収異方性層の波長380nm以上780nm以下の範囲における吸収極大波長の吸光度であって、それぞれx軸方向、y軸方向、及びz軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。
Ax(z=60°)は、前記吸収極大波長における吸光度であって、前記y軸を回転軸として、前記光吸収異方性層を60°回転させたときの前記x軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。
ここで、前記x軸は、前記光吸収異方性層の面内の任意の一方向であり、
前記y軸は、前記光吸収異方性層の面内において前記x軸に直交する方向であり、
前記z軸は、前記x軸及び前記y軸に直交する方向である。]
【請求項2】
前記表面保護フィルムに含まれる延伸ポリエステルフィルムの厚みは、30μm以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記セパレーターに含まれる延伸ポリエステルフィルムの厚みは、30μm以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記表面保護フィルムは、延伸ポリエステルフィルムと第2粘着剤層との積層体である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記表面保護フィルム及び前記セパレーターに含まれる延伸ポリエステルフィルムはいずれも、二軸延伸ポリエステルフィルムである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記表面保護フィルムと前記第1保護層とは直接接している、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記第1保護層と前記光吸収異方性層とは直接接している、又は、前記第1保護層と前記光吸収異方性層との間に配向層のみを有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記光吸収異方性層と前記第2保護層とは直接接している、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記重合性液晶化合物は、スメクチック相を形成する液晶化合物である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記第1保護層の厚みは、28μm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記第2保護層の厚みは、15μm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の光学積層体を巻回した巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体及びそれを巻回した巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置において、白表示時に正面から視認した場合の正面色相と斜方から視認した場合の斜方色相との色相差を低減するために、二色性色素を含む垂直配向液晶硬化膜と水平配向位相差フィルムとを有する積層体を用いることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-076920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
垂直配向液晶硬化膜は、有機EL表示装置又は円偏光板等の被着体に貼合して使用するため、一方の表面にセパレーター付きの粘着剤層が積層されることがある。垂直配向液晶硬化膜の他方の表面は、製造や輸送に伴う汚れが付着したり傷が発生したりすることを抑制するために、表面保護フィルムが剥離可能に積層されることがある。垂直配向液晶硬化膜にセパレーター付きの粘着剤層及び表面保護フィルムが積層された積層体は、セパレーターを剥離することによって露出した粘着剤層を被着体に貼合した後、表面保護フィルムが剥離される。
【0005】
特に垂直配向液晶硬化膜が薄膜である場合、積層体からセパレーターを剥離しようとすると、セパレーターのみを剥離することができなかったり、積層体を吸引固定している吸引ステージから積層体が浮き上がったり、垂直配向液晶硬化膜にクラック様の縞模様が発生したり、粘着剤層が破断したりすることがあった。
【0006】
本発明は、光吸収異方性層を含む光学積層体であって、セパレーターを良好に剥離し、任意の被着体へ容易に貼合可能な光学積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の光学積層体及び巻回体を提供する。
〔1〕 表面保護フィルム、第1保護層、光吸収異方性層、第2保護層、第1粘着剤層、及びセパレーターがこの順に積層された光学積層体であって、
前記表面保護フィルム及び前記セパレーターは、いずれも延伸ポリエステルフィルムを含み、
前記光吸収異方性層は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含み、かつ、下記式(1)~(3)の関係を満たし、
前記表面保護フィルムと前記第1保護層との間の剥離力F1[N/25mm]、及び、前記セパレーターと前記第1粘着剤層との間の剥離力F2[N/25mm]は、下記式(4)~(6)の関係を満たし、
前記第1保護層の前記表面保護フィルム側の表面から、前記第2保護層の前記第1粘着剤層側の表面までの距離は、30μm以下である、光学積層体。
Az>(Ax+Ay)/2 (1)
0.001≦Ax≦0.1 (2)
Ax(z=60°)/Ax≧5 (3)
0.05≦F1≦0.30 (4)
0.02≦F2≦0.15 (5)
0.02≦F1-F2 (6)
[式(1)~(3)中、
Ax、Ay、及びAzは、前記光吸収異方性層の波長380nm以上780nm以下の範囲における吸収極大波長の吸光度であって、それぞれx軸方向、y軸方向、及びz軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。
Ax(z=60°)は、前記吸収極大波長における吸光度であって、前記y軸を回転軸として、前記光吸収異方性層を60°回転させたときの前記x軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。
ここで、前記x軸は、前記光吸収異方性層の面内の任意の一方向であり、
前記y軸は、前記光吸収異方性層の面内において前記x軸に直交する方向であり、
前記z軸は、前記x軸及び前記y軸に直交する方向である。]
〔2〕 前記表面保護フィルムに含まれる延伸ポリエステルフィルムの厚みは、30μm以上である、〔1〕に記載の光学積層体。
〔3〕 前記セパレーターに含まれる延伸ポリエステルフィルムの厚みは、30μm以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体。
〔4〕 前記表面保護フィルムは、延伸ポリエステルフィルムと第2粘着剤層との積層体である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔5〕 前記表面保護フィルム及び前記セパレーターに含まれる延伸ポリエステルフィルムはいずれも、二軸延伸ポリエステルフィルムである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔6〕 前記表面保護フィルムと前記第1保護層とは直接接している、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔7〕 前記第1保護層と前記光吸収異方性層とは直接接している、又は、前記第1保護層と前記光吸収異方性層との間に配向層のみを有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔8〕 前記光吸収異方性層と前記第2保護層とは直接接している、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔9〕 前記重合性液晶化合物は、スメクチック相を形成する液晶化合物である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔10〕 前記第1保護層の厚みは、28μm以下である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔11〕 前記第2保護層の厚みは、15μm以下である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔12〕 〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の光学積層体を巻回した巻回体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光吸収異方性層を含む光学積層体からセパレーターを良好に剥離し、任意の被着体へ容易に貼合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、光学積層体及び巻回体の好ましい実施形態について説明する。
【0011】
<光学積層体>
図1は、本発明の一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。光学積層体10は、表面保護フィルム11、第1保護層12、光吸収異方性層13、第2保護層14、第1粘着剤層15、及びセパレーター16がこの順に積層されている。
【0012】
表面保護フィルム11と第1保護層12とは直接接していてもよい。表面保護フィルム11は通常、第1保護層12に対して剥離可能に積層される。第1保護層12と光吸収異方性層13とは直接接していてもよく、第1保護層12と光吸収異方性層13との間に配向層のみを有していてもよい。光吸収異方性層13と第2保護層14とは直接接していてもよい。第2保護層14と第1粘着剤層15とは直接接していてもよい。第1粘着剤層15とセパレーター16とは通常、直接接している。セパレーター16は通常、第1粘着剤層15に対して剥離可能に積層される。
【0013】
表面保護フィルム11及びセパレーター16は、いずれも延伸ポリエステルフィルムを含む。表面保護フィルム11及びセパレーター16は、好ましくは、いずれも二軸延伸ポリエステルフィルムを含む。表面保護フィルム11及びセパレーター16に含まれる延伸ポリエステルフィルムは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0014】
表面保護フィルム11は、延伸ポリエステルフィルムと第2粘着剤層との積層体であってもよく、延伸ポリエステルフィルムと第2粘着剤層とは直接接していてもよい。表面保護フィルム11が第2粘着剤層を有する場合、光学積層体10において、第2粘着剤層側が第1保護層12側に配置される。表面保護フィルム11が第2粘着剤層を有することにより、光学積層体10を屈曲させたときに、第2粘着剤層の応力緩和により光吸収異方性層13にクラックが発生することを抑制できる。
【0015】
表面保護フィルム11は、延伸ポリエステルフィルムの表面が離型処理されたものであってもよい。
【0016】
表面保護フィルム11は、延伸ポリエステルフィルムと剥離力調整層との積層体であってもよく、延伸ポリエステルフィルムと剥離力調整層とは直接接していてもよい。光学積層体10において剥離力調整層側が第1保護層12側に配置される場合、剥離力調整層と第1保護層とが直接接していることが好ましい。これにより、延伸ポリエステルフィルムに第2粘着剤層を積層する工程を省略でき、光学積層体10としての全体厚みを小さくできるため、光学積層体10の屈曲性の向上に有利である。剥離力調整層は、例えばシランカップリング剤等を用いて形成できる。
【0017】
セパレーター16は、延伸ポリエステルフィルムの表面が離型処理されたものであってもよい。セパレーター16は、延伸ポリエステルフィルムと剥離力調整層との積層体であってもよく、延伸ポリエステルフィルムと剥離力調整層とは直接接していてもよい。セパレーター16が剥離力調整層を有する場合、剥離力調整層と第1粘着剤層とが直接接していることが好ましい。剥離力調整層は、例えばシランカップリング剤等を用いて形成できる。
【0018】
光吸収異方性層13は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含み、かつ、下記式(1)~(3)の関係を満たす。
Az>(Ax+Ay)/2 (1)
0.001≦Ax≦0.1 (2)
Ax(z=60°)/Ax≧5 (3)
[式(1)~(3)中、
Ax、Ay、及びAzは、光吸収異方性層13の波長380nm以上780nm以下の範囲における吸収極大波長の吸光度であって、それぞれx軸方向、y軸方向、及びz軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。
Ax(z=60°)は、上記吸収極大波長における吸光度であって、y軸を回転軸として、光吸収異方性層13を60°回転させたときのx軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。
ここで、x軸は、光吸収異方性層13の面内の任意の一方向であり、
y軸は、光吸収異方性層13の面内においてx軸に直交する方向であり、
z軸は、x軸及びy軸に直交する方向である。]
【0019】
光吸収異方性層13が上記式(1)~(3)の関係を満たすことにより、光吸収異方性層13の平面に対して垂直方向に、二色性色素の吸収軸が配向していると考えられるため、光吸収異方性層13は、正面方向からの光を効果的に透過し、斜め方向からの光を効果的に吸収することができる。
【0020】
上記式(1)におけるz方向の吸光度Azは、光吸収異方性層13の側面に光を入射させて測定することになるため、測定が難しい。そこで、測定光である直線偏光の振動面と、光吸収異方性層13のx-y平面とのなす角を90°としたとき、この振動面に対して、光吸収異方性層13のx-y平面を直線偏光の入射方向に30°及び60°傾けて測定することによりz方向の吸光度Azを見積もることができる。
【0021】
具体的には、次の方法等で見積もることができる。
y軸を回転軸として光吸収異方性層13を30°及び60°回転させた状態で、Axを測定した直線偏光と同一の直線偏光を入射することにより、吸光度Ax(z=30°)及び吸光度Ax(z=60°)をそれぞれ測定する。同様に、x軸を回転軸として光吸収異方性層13を30°及び60°回転させた状態で、Ayを測定した直線偏光と同一の直線偏光を入射することにより、吸光度Ay(z=30°)及び吸光度Ay(z=60°)をそれぞれ測定する。
このとき、Ax(z=30°)<Ax(z=60°)かつAy(z=30°)=Ay(z=60°)であれば、Ax(z=30°)<Ax(z=60°)<Ax(z=90°)=Azであり、かつAy(z=30°)<Ay(z=60°)かつAx(z=30°)=Ax(z=60°)であれば、Ay(z=30°)<Ay(z=60°)<Ay(z=90°)=Azであるから、必然的に式(1)の関係を満たすということができる。
ここで、Ax(z=90°)は、y軸を回転軸として光吸収異方性層13を90°回転させた状態で、Axを測定した直線偏光と同一の直線偏光を入射することにより測定される吸光度である。Ay(z=90°)は、x軸を回転軸として光吸収異方性層13を90°回転させた状態で、Axを測定した直線偏光と同一の直線偏光を入射することにより測定される吸光度である。
【0022】
特に、光吸収異方性層13のx-y平面に吸収異方性がない場合、すなわちAx及びAyが等しい場合においては、Ax(z=30°)=Ay(z=30°)かつAx(z=60°)=Ay(z=60°)である。ここで、Ax(z=30°)=Ay(z=30°)=A(z=30°)とし、Ax(z=60°)=Ay(z=60°)=A(z=60°)とし、Ax(z=90°)=Ay(z=90°)=A(z=90°)とする。そうすると、A(z=30°)<A(z=60°)であれば、A(z=30°)<A(z=60°)<A(z=90°)=Azの関係を満たす。さらに、A(z=30°)>(Ax+Ay)/2であれば、必然的にAzは式(1)を満たすということができる。
【0023】
上記Ax及びAyは、光吸収異方性層13の正面方向の吸光度を意味し、Ax及びAyの値が小さいほど光吸収異方性層13中の二色性色素が平面に対して垂直方向に精度よく配向しているといえる。Ax及びAyの値は0.3以下であることが好ましい。Ax及びAyの値が0.3を超える場合には光吸収異方性層13の正面方向における着色が強くなるため、光吸収異方性層13を表示装置に適用した際の正面透過色相が劣る傾向にあることから、Ax及びAyの値はそれぞれ独立して、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.02以下である。また、Ax及びAyの値の下限値はそれぞれ独立して、通常0.001以上であり、0.003以上であってもよく、0.005以上であってもよい。上記式(2)の関係を満たす光吸収異方性層13は、光吸収異方性層13の平面に対して垂直方向に、二色性色素の吸収軸が精度よく配向しているといえる。吸光度Axが0.10を超える場合には光吸収異方性層13の正面方向における着色が強くなるため、例えば円偏光板等と組み合わせて有機EL表示装置に適用した際の正面色相が劣る傾向にある。
【0024】
光吸収異方性層13において、AxとAyとは同じ値であることが好ましい。AxとAyとが異なる場合、光吸収異方性層13の面内で吸収異方性を有することになり、光吸収異方性層13を表示装置に適用した場合に、正面色相への着色が大きくなる傾向にある。
【0025】
上記式(3)中のAx(z=60°)/Axは、その数値が大きいほど優れた光吸収異方性を示し、好ましくは5超であり、より好ましくは7以上であり、さらに好ましくは10以上であり、また、好ましくは50以下である。
【0026】
上記式(3)の関係を満たす光吸収異方性層13は、その平面に対して垂直方向に二色性色素の吸収軸が配向していると考えられるため、光吸収異方性層13は、斜め方向からの光を効果的に吸収することができる。
【0027】
上記Ax(z=60°)は、光吸収異方性層13の斜方の吸光度を意味し、表示装置の斜めに漏れ出る光に応じて適宜選択することが可能である。Ax(z=60°)は、1.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。また、下限値は通常0.001以上であり、0.003以上であってもよく、その必要性から0.01以上である。
【0028】
上記式(1)~(3)の関係を満たす光吸収異方性層13は、例えば、光吸収異方性層13の厚み、光吸収異方性層13の製造工程の条件、光吸収異方性層13を得るための光吸収異方性層形成用組成物に含まれる二色性色素及び重合性液晶化合物の種類又は含有量等によって調整することができる。
【0029】
表面保護フィルム11と第1保護層12との間の剥離力F1[N/25mm]、及び、セパレーター16と第1粘着剤層15との間の剥離力F2[N/25mm]は、下記式(4)~(6)の関係を満たす。
0.05≦F1≦0.30 (4)
0.02≦F2≦0.15 (5)
0.02≦F1-F2 (6)
【0030】
剥離力F1は、好ましくは0.08N/25mm以上0.28N/25mm以下であり、より好ましくは0.1N/25mm以上0.25N/25mm以下であり、0.12N/25mm以上0.23N/25mm以下であってもよい。剥離力F2は、好ましくは0.03N/25mm以上0.13N/25mm以下であり、より好ましくは0.05N/25mm以上0.10N/25mm以下であり、0.06N/25mm以上0.08N/25mm以下であってもよい。剥離力F1と剥離力F2との差(F1-F2)は、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.04以上であり、0.05以上であってもよく、0.07以上であってもよく、通常0.2以下である。
【0031】
剥離力F1は、表面保護フィルム11に含まれる延伸ポリエステルフィルムの離型処理等による表面の状態、表面保護フィルム11が第2粘着剤層を含む場合は第2粘着剤層を形成するために用いる粘着剤組成物の組成、表面保護フィルム11が剥離力調整層を含む場合は、剥離力調整層を形成するために用いるシランカップリング剤等の種類、表面保護フィルム11及び第1保護層12の貼合面の表面処理等によって調整することができる。剥離力F2は、セパレーター16の離型処理等による表面の状態、第1粘着剤層15を形成するために用いる粘着剤組成物の組成、セパレーター16及び第1粘着剤層15の貼合面の表面処理等によって調整することができる。剥離力F1及びF2は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0032】
第1保護層12の表面保護フィルム11側の表面から、第2保護層14の第1粘着剤層15側の表面までの距離Dは、30μm以下である。距離Dは、好ましくは28μm以下であり、25μm以下であってもよく、20μm以下であってもよく、通常2μm以上であり、5μm以上であってもよい。距離Dが小さくなると、光学積層体を表面保護フィルムが内側となるように屈曲させたときの屈曲部分における視認性が低下することを抑制しやすくなる。
【0033】
光学積層体10から表面保護フィルム11及びセパレーター16を除いた積層体は、有機EL表示装置又は反射防止フィルムとしての円偏光板等の被着体に積層されて用いられる。これにより、表示装置の画像を視認する角度によって色味が変化することを抑制することができる。
【0034】
光学積層体10から表面保護フィルム11及びセパレーター16を除いた積層体を被着体に積層する場合、例えば次のように行われる。まず、吸引孔を有する吸引ステージ上に、表面保護フィルム11側が吸引ステージ側となるように、光学積層体10を吸引固定する。この状態で、光学積層体10のセパレーター16を剥離する。次いで、セパレーター16を剥離することによって露出した第1粘着剤層15を被着体に貼合する。その後、適宜のタイミングで表面保護フィルム11を剥離すればよい。光学積層体10のように距離Dが小さい場合、セパレーターを剥離する動きに光学積層体全体が追随しやすくセパレーターのみが剥離されにくかったり、光学積層体を吸引固定している吸引ステージから光学積層体が浮き上がったり、セパレーターの剥離に伴い、第1保護層、光吸収異方性層、第2保護層、及び1粘着剤層のうちのいずれにクラック様の縞模様が発生したり、これらの層が破断したりすることがある。しかし、光学積層体10は、上記式(4)~(6)の関係を満たすため、セパレーター16のみを良好に剥離させることができ、被着体に容易に貼合することができる。
【0035】
<巻回体>
巻回体は、光学積層体10をロール状に巻回したものである。光学積層体10は上記で説明したものを用いることができる。巻回体を構成する光学積層体10は、好ましくは長尺の光学積層体である。
【0036】
巻回体のロール径(直径)は、例えば50mm以上1000mm以下であることができる。ロール状に巻回されて巻回体となる長尺の光学積層体は、例えば、巻回体の巻回方向である長さ方向に5m以上10000m以下の長さを有していてもよく、5m以上5000m以下であってもよく、100m以上5000m以下であってもよく、500m以上3000m以下であってもよく、1000m以上3000m以下であってもよい。巻回体の巻回軸方向である幅方向に300mm以上5000mm以下の長さを有していてもよく、500mm以上3000mm以下であってもよく、500mm以上2500mm以下であってよく、500mm以上2000mm以下であってもよい。
【0037】
以下、光学積層体が有する層、当該層に含まれる成分等について詳述する。
【0038】
(表面保護フィルム)
表面保護フィルムは、延伸ポリエステルフィルムを含む。表面保護フィルムは、延伸ポリエステルフィルムと第2粘着剤層との積層体であってもよく、延伸ポリエステルフィルムの表面を離型処理したものであってもよく、延伸ポリエステルフィルムと剥離力調整層との積層体であってもよい。離型処理としては、離型剤等の塗布等により離型層を形成する方法が挙げられる。離型剤としては、シリコーン系離型剤及びフッ素系離型剤等が挙げられる。延伸ポリエステルフィルムは、好ましくは二軸延伸ポリエステルフィルムである。剥離力調整層は、例えばシランカップリング剤の塗布等によって形成できる。
【0039】
延伸ポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは35μm以上であり、40μm以上であってもよく、通常100μm以下である。第2粘着剤層の厚みは、5μm以上であり、10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよく、通常30μm以下である。
【0040】
延伸ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを一軸延伸又は二軸延伸したフィルムであり、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを二軸延伸したフィルムである。
【0041】
延伸ポリエステルフィルムの温度23℃、相対湿度55%における引張弾性率は、好ましくは4000MPa以上であり、5000MPa以上であってもよく、6000MPa以上であってもよく、通常20000MPa以下である。上記引張弾性率は、引張試験機の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が5cmとなるように、長さ100mm×幅25mm大きさの試験片の長辺方向の両端を挟み、温度23℃、相対湿度55%の環境下、引張速度1mm/分で試験片を引張り、得られる応力-ひずみ曲線における初期の直線の傾きから、算出することができる。
【0042】
(第1保護層)
第1保護層は、光吸収異方性層を支持することができる。第1保護層は、光吸収異方性層を形成するための光吸収異方性層形成用組成物が塗布される層であることができる。第1保護層は、単層構造であってもよく多層構造であってもよい。光吸収異方性層を形成する際に配向層を用いる場合、第1保護層の表面のうちの光吸収異方性層が形成される側に配向層を形成すればよい。
【0043】
第1保護層は、フィルム基材、コーティング層、及びガラス基材のうちの1種以上を含むことができる。第1保護層は、フィルム基材又はコーティング層を含むことが好ましく、フィルム基材とコーティング層等の他の層との積層体であってもよい。
【0044】
フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂;シクロ系又はノルボルネン構造を有する環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリステル系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルのうちの少なくとも一方をいう。(メタ)アクリロイル等の表記についても同様である。
【0045】
フィルム基材として、市販のセルロースエステル樹脂フィルムを用いてもよい。このようなセルロースエステル樹脂フィルムとしては、“フジタックフィルム”(富士写真フイルム株式会社製);“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が挙げられる。
【0046】
フィルム基材を構成する環状オレフィン樹脂として、市販の環状オレフィン系樹脂を用いてもよい。このような環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)(Ticona社(独)製)、“アートン”(登録商標)(JSR株式会社製)、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)(以上、日本ゼオン株式会社製)及び“アペル”(登録商標)(三井化学株式会社製)が挙げられる。これらの環状オレフィン系樹脂は、溶剤キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜することにより、フィルム基材とすることができる。
【0047】
フィルム基材として、市販の環状オレフィン系樹脂基材を用いてもよい。このような環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)、“SCA40”(登録商標)(以上、積水化学工業株式会社製)、“ゼオノアフィルム”(登録商標)(オプテス株式会社製)及び“アートンフィルム”(登録商標)(JSR株式会社製)が挙げられる。
【0048】
第1保護層がコーティング層である場合、例えば、フィルム基材にコーティング層を形成し、当該コーティング層上に光吸収異方性層を形成した後、フィルム基材を剥離することにより、コーティング層を第1保護層としてもよい。この場合、フィルム基材のコーティング層が形成される側の表面に、離型剤等の塗布等により離型層を形成する離型処理を行うことにより、フィルム基材が剥離しやすくなる。剥離するフィルム基材は、上記した表面保護フィルムとして用いてもよい。
【0049】
コーティング層としては、フィルム基材の表面にハードコート剤、易接着組成物、又はカップリング剤等を塗布して形成した層、反応性モノマー又は反応性を有するポリマー等を塗布した後に、活性エネルギー線を照射してこれらをグラフト重合させることにより形成された層等が挙げられる。コーティング層を有するフィルム基材としては、コーティング層としてハードコート層を有するハードコートフィルムが好ましい。第1保護層がハードコートフィルムである場合、ハードコート層側に光吸収異方性層が積層されることが好ましい。コーティング層としてはハードコート層が好ましい。
【0050】
ハードコート層は、活性エネルギー線硬化型樹脂を含む硬化性組成物の硬化物層であることが好ましく、紫外線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物層であることがより好ましい。紫外線硬化型樹脂を含む硬化性組成物は、硬化性成分として(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましく、ハードコート層は(メタ)アクリル系樹脂で形成されていることが好ましい。(メタ)アクリル化合物は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよい。
【0051】
(メタ)アクリル化合物としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリレート化合物;多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物等のウレタン(メタ)アクリレート化合物;多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物等のエポキシ(メタ)アクリレート化合物;カルボキシル基変性エポキシ(メタ)アクリレート化合物;ポリエステル(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレート化合物又はウレタン(メタ)アクリレート化合物が好ましく、多官能(メタ)アクリレート化合物とウレタン(メタ)アクリレートとを組合せることがより好ましい。
【0052】
多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは60質量部以上95質量部以下であり、さらに好ましくは70質量部以上90質量部以下である。本明細書において、硬化性組成物の固形分とは、硬化性組成物に溶剤が含まれる場合、硬化性組成物から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0053】
硬化性組成物は、硬化性成分に加えて、重合開始剤を含むことができる。重合開始剤としては、光重合開始剤及びラジカル重合開始剤等が挙げられ、公知の重合開始剤を用いることができる。
【0054】
硬化性組成物は、フィルム基材に塗布した後、活性エネルギー線を照射することにより、(メタ)アクリル化合物等の硬化性成分を重合させて硬化させることができる。
【0055】
ハードコート層は、JIS K 5600-5-4:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に規定される鉛筆硬度試験(フィルム基材をガラス板の上に置いて測定する)で8B又はそれより硬い値を示すことが好ましく、5B又はそれよりも硬くてもよい。
【0056】
第1保護層の光吸収異方性層が形成される側の表面には、表面処理を施してもよい。表面処理方法としては、第1保護層の上記表面に、真空から大気圧の雰囲気下でコロナ処理又はプラズマ処理する方法、レーザー処理する方法、オゾン処理する方法、火炎処理する方法、第1保護層の上記表面をケン化処理する方法等が挙げられる。
【0057】
第1保護層の厚みは、好ましくは28μm以下であり、0.5μm以上25μm以下であってもよく、1μm以上20μm以下であってもよく、1μm以上15μm以下であってもよく、1μm以上10μm以下であってもよく、1μm以上5μm以下であってもよい。第1保護層の厚みが小さくなると、光学積層体を表面保護フィルムが内側となるように屈曲させたときの屈曲部分における視認性が低下することを抑制しやすくなる。
【0058】
第1保護層が含んでいてもよいフィルム基材の厚みは、実用的な取り扱いができる程度の質量である点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。この観点から、フィルム基材の厚みは、5μm以上28μm以下であることが好ましく、10μm以上25μm以下であることがより好ましく、10μm以上23μm以下であることがさらに好ましい。
【0059】
第1保護層が含んでいてもよいコーティング層の厚みは、薄すぎると強度が低下し、厚すぎると割れ等が発生する傾向がある。この観点から、コーティング層の厚みは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましく、1μm以上10μm以下であることがさらに好ましく、1μm以上5μm以下であることがよりさらに好ましい。
【0060】
第1保護層の温度23℃、相対湿度55%における引張弾性率は、好ましくは100MPa以上10000MPa以下であり、200MPa以上8000MPa以下であってもよく、300MPa以上6000MPa以下であってもよい。上記引張弾性率は、上記した方法によって測定することができる。
【0061】
(光吸収異方性層)
光吸収異方性層は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含む。光吸収異方性層は、1種の重合性液晶化合物の重合体を含んでいればよく、2種以上の重合性液晶化合物の重合体を含んでいてもよい。光吸収異方性層は、1種の二色性色素を含んでいればよく、2種以上の二色性色素を含んでいてもよい。
【0062】
光吸収異方性層は、重合性液晶化合物及び二色性色素を含む光吸収異方性層形成用組成物を用いて形成することができる。光吸収異方性形成用組成物は、固形分として、重合性液晶化合物及び二色性色素に加えて、後述するように、重合性基を有する非液晶性化合物、及び、重合開始剤、レベリング剤、配向促進剤、酸化防止剤、光増感剤等の添加剤を含むことができる。そのため、光吸収異方性層は、重合性基を有する非液晶性化合物の重合体及び添加剤を含んでいてもよい。
【0063】
重合性液晶化合物は、好ましくはスメクチック相を形成する液晶化合物である。重合性液晶化合物の重合体は、液晶性を示してもよく、液晶性を示さなくてもよい。光吸収異方性層は、重合性液晶化合物及び二色性色素を含む光吸収異方性層形成用組成物から形成することができ、光吸収異方性層形成用組成物中の重合性液晶化合物が重合硬化した液晶硬化膜(重合性液晶化合物の硬化物層)であってもよい。重合性液晶化合物の重合体は、重合性液晶化合物どうしが重合したものであるが、重合性液晶化合物に重合性基を有する非液晶性化合物が重合していてもよく、重合性液晶化合物に二色性色素が重合していてもよい。
【0064】
光吸収異方性層中の重合性液晶性化合物の重合体の含有量は、光吸収異方性層100質量部に対して、40質量部以上99.9質量部以下であることが好ましく、60質量部以上99質量部以下であってもよく、70質量部以上99質量部以下であってもよい。重合性液晶性化合物の重合体の含有量が上記範囲内であると、光吸収異方性層を形成するときの重合性液晶性化合物の重合体の配向性が高くなる傾向がある。光吸収異方性層における重合性液晶性化合物の重合体の含有割合は、光吸収異方性層を形成するために用いる光吸収異方性層形成用組成物の固形分100質量部に対する重合性液晶化合物(2種以上を含む場合はその合計量)の割合として算出することができる。光吸収異方性層形成用組成物の固形分とは、光吸収異方性層形成用組成物から有機溶剤等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
【0065】
光吸収異方性層における二色性色素の含有量は、光吸収異方性層100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上20質量部以下であってもよく、1質量部以上10質量部以下であってもよく、1質量部以上5質量部以下であってもよい。光吸収異方性層における二色性色素の含有割合は、光吸収異方性層形成用組成物の固形分100質量部に対する二色性色素の割合として算出することができる。光吸収異方性層が2種以上の二色性色素を含む場合の二色性色素の含有量は、その合計量をいう。
【0066】
光吸収異方性層の厚みは、0.2μm以上5.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以上4.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上3.0μm以下であることがさらに好ましい。光吸収異方性層の厚みが小さくなると、斜め方向からの光吸収が弱くなりやすく、厚みが大きくなると二色性色素の配向が乱れやすくなるため、正面方向の透過特性が低下しやすい。
【0067】
光吸収異方性層の第2保護層が形成される側の表面には、表面処理を施してもよい。表面処理方法としては、光吸収異方性層の上記表面に、真空から大気圧の雰囲気下でコロナ処理又はプラズマ処理する方法、レーザー処理する方法、オゾン処理する方法、火炎処理する方法等が挙げられる。
【0068】
(重合性液晶化合物)
光吸収異方性層形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物は、ホストゲスト相互作用により二色性色素を配向させるために用いられる。重合性液晶化合物は、分子内に1つ以上の重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。
【0069】
重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、及びオキセタニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性はサーモトロピック液晶でもリオトロピック液晶でもよいが、上記した二色性色素と混合する場合には、サーモトロピック液晶が好ましい。本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルのうちの少なくとも一方をいう。(メタ)アクリル等の表記についても同様である。
【0070】
重合反応により重合性液晶化合物の重合体を形成し、当該重合体及び二色性色素を含む膜として、光吸収異方特性を発現する際には、重合性液晶化合物が示す液晶状態は、スメクチック相であり、高次スメクチック相であることが高性能化の観点から好ましい。中でも、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相、又はスメクチックL相を形成する高次スメクチック重合性液晶化合物がより好ましく、スメクチックB相、スメクチックF相又はスメクチックI相を形成する高次スメクチック重合性液晶化合物がさらに好ましい。重合性液晶化合物が形成する液晶相がこれらの高次スメクチック相であると、光吸収異方特性のより高い光吸収異方性層を製造することができる。このように光吸収異方特性の高い光吸収異方性層は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られるものである。当該ブラッグピークは分子配向の周期構造に由来するピークであり、光吸収異方性層は、その周期間隔が3~6Åであることができる。光吸収異方性層は、スメクチック相の状態で配向した重合性液晶化合物の重合体を含むことが、より高い光吸収異方特性が得られるという観点から好ましい。
【0071】
重合性液晶化合物はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもよく、ポリマーであってもよい。このような重合性液晶化合物としては、公知のものを用いることができ、例えば特開2020-76920号公報及び特許第6728581号公報等に記載のものが挙げられる。
【0072】
(二色性色素)
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、分子の短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。二色性色素としては、可視光を吸収する特性を有する特性を有することが好ましく、波長380~680nmの範囲に吸収極大波長(λmax)を有するものがより好ましい。
【0073】
このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、及びアントラキノン色素等が挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、及びスチルベンアゾ色素等が挙げられ、好ましくはビスアゾ色素及びトリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、2種以上を組み合わせてもよいが、光吸収異方性層において光吸収異方性が求められる波長範囲に応じて、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0074】
アゾ色素としては、式(I)で表される化合物(以下、場合により「化合物(I)」という)が挙げられる。
(-N=N-K-N=N-K (I)
[式(I)中、
及びKは、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
は、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表す。
pは1~4の整数を表す。
pが2以上の整数である場合、複数のKは互いに同一でも異なっていてもよい。
可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0075】
1価の複素環基としては、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール等の複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0076】
及びKにおけるフェニル基、ナフチル基及び1価の複素環基、並びにKにおけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基及び2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基等の置換又は無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つ又は2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は、-NHである。)が挙げられる。
【0077】
化合物(I)の中でも、式(I-1)~式(I-8)のいずれかで表される化合物が好ましく、式(I-1)~式(I-3)のいずれかで表される化合物がより好ましく、式(I-1)及び式(I-3)のうちのいずれかで表される化合物がさらに好ましい。
【0078】
【化1】
【0079】
[式(I-1)~(I-8)中、
~B30は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(置換アミノ基及び無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子又はトリフルオロメチル基を表す。
n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表す。
n1が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0080】
上記アントラキノン色素としては、式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【化2】

[式(I-9)中、
~Rは、互いに独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR又はハロゲン原子を表す。
は、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0081】
上記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化3】

[式(I-10)中、
~R15は、互いに独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR又はハロゲン原子を表す。
Rxは、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0082】
上記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化4】

[式(I-11)中、
16~R23は、互いに独立に、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SR又はハロゲン原子を表す。
は、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0083】
式(I-9)、式(I-10)及び式(I-11)において、Rの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基及びナフチル基が挙げられる。
【0084】
上記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物及び式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化5】

[式(I-12)中、
及びDは、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表す。
【化6】

n5は1~3の整数を表す。]
【化7】

[式(I-13)中、
及びDは、互いに独立に、式(I-13a)~式(I-13h)のいずれかで表される基を表す。
【化8】

n6は1~3の整数を表す。]
【0085】
これらの二色性色素の中でも、配向性の観点から、アゾ色素が好ましい。
【0086】
光吸収異方性層形成用組成物中の二色性色素の含有量(2種以上を含む場合はその合計量)は、良好な光吸収特性を得る観点から、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常1質量部以上60質量部以下であり、好ましくは1質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上20質量部以下である。二色性色素の含有量がこの範囲より少ないと光吸収が不十分となり、十分な光吸収異方特性が得られず、この範囲よりも多いと、重合性液晶化合物の液晶分子の配向を阻害する場合がある。
【0087】
(光吸収異方性層の形成方法)
光吸収異方性層は、例えば、第1保護層上に光吸収異方性層形成用組成物を塗布して形成することができる。光吸収異方性層形成用組成物は、重合性液晶化合物及び二色性色素を含み、後述する重合性基を有する非液晶性化合物、溶媒及び添加剤等を含んでいてもよい。
【0088】
光吸収異方性層形成用組成物の塗布によって形成された塗布層には、溶剤等を除去するための乾燥処理を行う。乾燥処理後の塗布層に活性エネルギー線の照射等を行って重合性液晶化合物を重合することにより、光吸収異方性層形成用組成物の硬化物層(液晶硬化膜)としての光吸収異方性層を第1保護層上に形成することができる。光吸収異方性層形成用組成物は、第1保護層表面に塗布してもよく、第1保護層の表面に形成された配向層の表面に塗布してもよい。
【0089】
光吸収異方性層形成用組成物を塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法等の塗布法、フレキソ法等の印刷法等の公知の方法が挙げられる。
【0090】
第1保護層上に形成された光吸収異方性層形成用組成物の塗布層には乾燥処理を行うことが好ましい。光吸収異方性層形成用組成物が溶剤を含む場合、塗布層を乾燥することにより、塗布層中の溶剤を除去することができる。乾燥方法としては、公知の方法が挙げられ、自然乾燥法、加熱乾燥法、通風乾燥法、減圧乾燥法等のうちの1以上の方法が挙げられる。
【0091】
乾燥処理における乾燥条件は、光吸収異方性層形成用組成物に含まれる成分によって適宜決定することができる。例えば、乾燥処理における乾燥温度は、50℃以上150℃以下であり、60℃以上120℃以下であってもよい。乾燥処理における乾燥時間は、15秒以上10分以下であり、0.5分以上5分以下であってもよい。
【0092】
乾燥処理において加熱処理を行う場合、光吸収異方性層形成用組成物に含まれ重合性液晶化合物を相転移させる液晶相転移温度以上の温度に加熱することにより、塗布層中の溶剤を除去しながら、重合性液晶化合物を配向させることができる。特に、スメクチック相を形成する重合性液晶化合物を光吸収異方性層の面に対して垂直方向に配向させる場合には、スメクチック相に転移する温度域で加熱することが好ましい。これにより、光吸収異方性層の面に対して垂直方向に、重合性液晶化合物を配向させることができ、重合性液晶化合物の配向に伴い、二色性色素も配向させることができる。
【0093】
第1保護層上に形成された塗布層を乾燥した後は、重合性液晶化合物及び二色性色素を配向させた状態で活性エネルギー線を照射して重合性液晶化合物を重合硬化させることにより、光吸収異方性層を形成することができる。
【0094】
重合性液晶化合物を重合させる方法としては、光重合が好ましい。光重合は、第1保護層上に光吸収異方性層形成用組成物が塗布された塗布層を含む積層構造体に活性エネルギー線を照射することにより実施される。照射する活性エネルギー線としては、塗布層に含まれる重合性液晶化合物の種類(特に、重合性液晶化合物が有する光重合性官能基の種類)、光重合開始剤を含む場合には光重合開始剤の種類、及びそれらの量に応じて適宜選択される。具体的には、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線、及びγ線からなる群より選択される一種以上の光が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点、及び光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって光重合可能なように、重合性液晶化合物の種類を選択することが好ましい。
【0095】
活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0096】
紫外線照射強度は、通常、10mW/cm~3,000mW/cmである。紫外線照射強度は、好ましくはカチオン重合開始剤又はラジカル重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分であり、より好ましくは5秒~3分であり、さらに好ましくは10秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回又は複数回照射すると、その積算光量は、10mJ/cm~3,000mJ/cm、好ましくは50mJ/cm~2,000mJ/cm、より好ましくは100mJ/cm~1,000mJ/cmである。積算光量がこの範囲以下である場合には、重合性液晶化合物の硬化が不十分となり、第1保護層上の光吸収異方性層を被着体に転写する際に良好な転写性が得られない場合がある。逆に、積算光量がこの範囲以上である場合には、光吸収異方性層が着色する場合がある。
【0097】
(重合性基を有する非液晶性化合物)
重合性基を有する非液晶性化合物(以下、「非液晶性化合物」ということがある。)は、重合性基を有し、液晶性を有していない化合物である。非液晶性化合物が有する重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。これらの中でも、好ましい重合性基は、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、及びオキセタニル基であり、より好ましい重合性基は、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基であり、さらに好ましい重合性基は、(メタ)アクリロイルオキシ基である。非液晶性化合物中の重合性基は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよいが、重合性液晶性化合物が有する重合性基と同一の重合性基であることが好ましい。
【0098】
非液晶性化合物が有する重合性基の個数は、特に制限されず、例えば1~20個であってもよいが、光吸収異方性層の膜強度をより高めやすい観点からは、好ましくは2~10個、より好ましくは3~6個である。非液晶性化合物が重合性基を2以上有する場合、該重合性基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0099】
非液晶性化合物としては、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。重合性基を有する非液晶性化合物としての単官能アクリレート及び多官能アクリレートは非液晶性であることから、メソゲン構造を有しないものが好ましい。単官能アクリレート及び多官能アクリレートは、分子内にウレタン構造、アミノ構造、エポキシ構造、エチレングリコール構造、及び/又はポリエステル構造を含んでいてもよい。
【0100】
(溶剤)
光吸収異方性層形成用組成物に含まれていてもよい溶剤としては、重合性液晶化合物を完全に溶解し得るものが好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
光吸収異方性層形成用組成物中の溶媒の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物の総量に対して、50~98質量%が好ましい。換言すると、光吸収異方性層形成用組成物における固形分の含有量は、2~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。該固形分の含有量が50質量%以下であると、光吸収異方性層形成用組成物の粘度が低くなることから、光吸収異方性層を略均一な厚みに形成しやすくなり、光吸収異方性層にムラが生じにくくなる傾向がある。かかる固形分の含有量は、製造しようとする光吸収異方性層の厚みを考慮して定めることができる。
【0102】
(添加剤)
光吸収異方性層形成用組成物は、光重合開始剤又は熱重合開始剤等の重合開始剤、レベリング剤、配向促進剤、酸化防止剤、光増感剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0103】
光吸収異方性層形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、光吸収異方性層形成用組成物が重合性液晶化合物等の重合反応に関与する化合物を含む場合に用いられ、当該化合物の重合反応を開始し得る化合物である。重合性液晶化合物の重合反応を開始する重合開始剤としては、サーモトロピック液晶の相状態に依存しないという観点から、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0104】
光重合開始剤は、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物であれば、公知の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0105】
光重合開始剤は、公知の光重合開始剤を用いることができる。例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、
自己開裂型のベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物等、及び、
水素引き抜き型のベンゾフェノン系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。
【0106】
酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等を使用することができる。
【0107】
低温での反応効率に優れるという観点から、光重合開始剤は、自己開裂型の光重合開始剤が好ましく、特にアセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0108】
光吸収異方性層形成用組成物中の重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、通常0.1~30質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~8質量部である。重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を行うことができる。
【0109】
光吸収異方性層形成用組成物は、レベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤とは、光吸収異方性層形成用組成物の流動性を調整し、光吸収異方性層形成用組成物を塗布して得られる膜をより平坦にする機能を有する添加剤である。光吸収異方性層形成用組成物は、シリコン系レベリング剤、ポリアクリレート系レベリング剤、パーフルオロアルキル系等のフッ素系レベリング剤を含むことができ、シリコンレベリング剤を含むことが好ましい。光吸収異方性層形成用組成物がシリコン系レベリング剤を含むことにより、光吸収異方性層のブロッキングを抑制しやすくなる。光吸収異方性層形成用組成物がシリコンレベリング剤を含有する場合、その含有量は、例えば光吸収異方性層における含有量として説明する後述の範囲が挙げられる。
【0110】
シリコン系レベリング剤は、ケイ素原子を含むレベリング剤であって、ポリオルガノシロキサン骨格を有するレベリング剤等を用いることが好ましい。ポリオルガノシロキサン中のケイ素原子(シロキサン結合を形成するケイ素原子)に結合した基としては、炭化水素基等が挙げられる。中でも、好ましくは炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のエステル基、及びアリール基であり、より好ましくはメチル基及びフェニル基であり、さらに好ましくはメチル基である。上記ケイ素原子に結合した基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。シロキサン単位の繰り返し数(重合度)は、特に限定されないが、2~10000が好ましく、より好ましくは3~5000、さらに好ましくは5~1000である。
【0111】
シリコン系レベリング剤は、市販品を使用することができる。シリコン系レベリング剤の市販品としては、例えばBYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-313、BYK-315N、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-342、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-370、BYK-377、BYK-378、BYK-3455、BYK-UV3510(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KF-945、KF-6015、KF-6020(以上、信越化学工業(株)製)、TEGORad2300、TEGORad2200N、TEGORad2011(デグサ社製)、ポリエーテル鎖中に(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性基が付加しているものとして、BYK-UV3500、BYK-UV3505、BYK-3510、BYK-UV3530、BYK-UV3570、BYK-UV3575、BYK-UV3576(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP-422、KP-416、KP-418、KP-410、KP-411、KP-412、KP-413、KP-423、KP-414、KP-415、KP-420、KP-983(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0112】
シリコン系レベリング剤は、光吸収異方性層に含まれる重合性液晶化合物の重合体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上5.0質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上3.0質量部以下であり、さらに好ましくは0.05質量部以上2.0質量部以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量部以上1.0質量部以下であり、特に好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。重合性液晶化合物重合体の含有量、及びシリコン系レベリング剤の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の重合性液晶化合物及びシリコン系レベリング剤の含有量として算出することができる。シリコン系レベリング剤の含有量が上記の範囲内であることにより、光学フィルムのヘイズを上記した範囲に調整しやすくなる。シリコン系レベリング剤の含有量が5.0質量部以下であることにより、第1保護層に光吸収異方性層形成用組成物を塗布したときのハジキを抑制しやすくなる。
【0113】
第1保護層表面に直接光吸収異方性層形成用組成物を塗布する場合(配向層を用いない場合)、光吸収異方性層形成用組成物は、配向促進剤を含むことが好ましい。配向促進剤は、所望の方向への重合性液晶化合物の液晶配向を促進させる材料を意味する。重合性液晶化合物の垂直方向への配向を促進させる配向促進剤としては、非金属原子からなるイオン性化合物及び非イオン性シラン化合物等が挙げられる。光吸収異方性層を形成する光吸収異方性層形成用組成物は、非金属原子からなるイオン性化合物及び非イオン性シラン化合物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、非金属原子からなるイオン性化合物及び非イオン性シラン化合物をともに含むことがより好ましい。
【0114】
シラン化合物としては、後述する非イオン性シラン化合物や、シラン含有イオン性化合物等が使用可能であり、これらのシラン化合物を使用することにより垂直配向規制力を高めることができる。これらのシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その他材料と混合して使用してもよい。シラン化合物が非イオン性シラン化合物である場合には、垂直配向規制力を高めやすい観点から分子末端にアルキル基を有するシラン化合物が好ましく、炭素数3~30のアルキル基を有するシラン化合物がより好ましい。
【0115】
光吸収異方性層形成用組成物が非金属原子からなるイオン性化合物を含む場合、第1保護層上に形成された光吸収異方性層形成用組成物の乾燥塗膜では、静電相互作用によって重合性液晶化合物に対する垂直配向規制力が発現し、乾燥塗膜内において重合性液晶化合物が第1保護層の表面に対して垂直方向に配向する傾向にある。これにより、重合性液晶化合物が垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜である光吸収異方性層を形成することができる。
【0116】
非金属原子からなるイオン性化合物としては、例えば、オニウム塩(より具体的には、窒素原子がプラスの電荷を有する第四級アンモニウム塩、第三級スルホニウム塩、及びリン原子がプラスの電荷を有する第四級ホスホニウム塩等)が挙げられる。これらのオニウム塩のうち、重合性液晶化合物の垂直配向性をより向上させ得る観点から第四級オニウム塩が好ましく、入手性及び量産性を向上させる観点から、第四級ホスホニウム塩又は第四級アンモニウム塩がより好ましい。オニウム塩は分子内に2つ以上の第四級オニウム塩部位を有していてもよく、オリゴマーやポリマーであってもよい。
【0117】
イオン性化合物の分子量は、100以上10,000以下であることが好ましい。分子量が上記の範囲内であると、光吸収異方性層形成用組成物の塗布性を確保したまま重合性液晶化合物の垂直配向性を向上させやすい。イオン性化合物の分子量は、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは3000以下である。
【0118】
イオン性化合物のカチオン成分としては、例えば、無機のカチオン及び有機のカチオンが挙げられる。中でも、重合性液晶化合物の配向欠陥を生じ難いことから、有機のカチオンが好ましい。有機のカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0119】
イオン性化合物は一般的に対アニオンを有する。上記カチオン成分の対イオンとなるアニオン成分としては、例えば、無機のアニオン及び有機のアニオンが挙げられる。中でも、重合性液晶化合物の配向欠陥を生じ難いことから、有機のアニオンが好ましい。なお、カチオンとアニオンとは、必ずしも一対一の対応となっている必要があるわけではない。
【0120】
アニオン成分としては、具体的に例えば、以下のようなものが挙げられる。
クロライドアニオン〔Cl〕、
ブロマイドアニオン〔Br〕、
ヨーダイドアニオン〔I〕、
テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl 〕、
ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔AlCl 〕、
テトラフルオロボレートアニオン〔BF 〕、
ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF 〕、
パークロレートアニオン〔ClO 〕、
ナイトレートアニオン〔NO 〕、
アセテートアニオン〔CHCOO〕、
トリフルオロアセテートアニオン〔CFCOO〕、
フルオロスルホネートアニオン〔FSO 〕、
メタンスルホネートアニオン〔CHSO 〕、
トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CFSO 〕、
p-トルエンスルホネートアニオン〔p-CHSO 〕、
ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(FSO〕、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CFSO〕、
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CFSO〕、
ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF 〕、
ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF 〕、
ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF 〕、
ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF 〕、
ジメチルホスフィネートアニオン〔(CHPOO〕、
(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF) 〕(例えば、nは1~3の整数を表す)、
ジシアナミドアニオン〔(CN)〕、
チオシアンアニオン〔SCN〕、
パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔CSO 〕、
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(CSO〕、
パーフルオロブタノエートアニオン〔CCOO-〕、及び、
(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CFSO)(CFCO)N〕。
【0121】
イオン性化合物の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分との組合せから適宜選択することができる。具体的なカチオン成分とアニオン成分の組合せである化合物としては、以下のようなものが挙げられる。
【0122】
(ピリジニウム塩)
N-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ヘキシルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-オクチルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム p-トルエンスルホネート、及び、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム p-トルエンスルホネート。
【0123】
(イミダゾリウム塩)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム p-トルエンスルホネート、
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム メタンスルホネート等。
【0124】
(ピロリジニウム塩)
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム p-トルエンスルホネート等。
【0125】
(アンモニウム塩)
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
テトラヘキシルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
トリオクチルメチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネート、
1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,1,1-トリブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,1,1-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルブチル)-1,1,1-トリブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルブチル)-1,1,1-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-{(3-トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}-N,N,N-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及び、
N-[2-{3-(3-トリメトキシシリルプロピルアミノ)-1-オキソプロポキシ}エチル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0126】
(ホスホニウム塩)
トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウム ビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリブチルメチルホスホニウムビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[(トリメトキシシリル)メチル]ホスホニウム ビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[4-(トリメトキシシリル)ブチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリブチル-1-[(トリメトキシシリル)メチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリブチル-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及び、
1,1,1-トリブチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ホスホニウ ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
これらのイオン性化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
重合性液晶化合物の垂直配向性をより向上させ得る観点から、イオン性化合物はカチオン部位の分子構造中にSi元素及び/又はF元素を有していることが好ましい。イオン性化合物がカチオン部位の分子構造中にSi元素及び/又はF元素を有していると、イオン性化合物を光吸収異方性層の表面に偏析させやすくなる。中でも、構成する元素が全て非金属元素であるイオン性化合物として、下記イオン性化合物(ii)~(iv)等が好ましい。
【0128】
イオン性化合物(ii):
【化9】

イオン性化合物(iii):
【化10】

イオン性化合物(iv)
【化11】
【0129】
重合性液晶化合物の垂直配向性を向上させる方法として、例えば、ある程度鎖長の長いアルキル基を有する界面活性剤を用いて基材表面を処理する方法が知られている(例えば、「液晶便覧」の第2章 液晶の配向と物性(丸善株式会社発行)等を参照)。このような界面活性剤により液晶化合物の垂直配向性を向上させる方法はイオン性化合物にも適用することができる。すなわち、ある程度鎖長の長いアルキル基を有するイオン性化合物を用いて第1保護層表面を処理することにより、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に向上させることができる。
【0130】
具体的には、イオン性化合物が下記関係:
5<M<16
を満たすことが好ましい。上記関係のMは、下記式:
M=(プラスの電荷を有する原子上に直接結合される置換基の内、分子鎖末端までの共有結合数が最も多い置換基の、プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数)÷(プラスの電荷を有する原子の数)
で表される。
イオン性化合物が上記した関係を満たすことにより、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に向上させることができる。
【0131】
イオン性化合物の分子中にプラスの電荷を有する原子が2つ以上存在する場合、プラスの電荷を有する原子を2つ以上有する置換基については、基点として考えるプラスの電荷を有する原子から数えて最も近い別のプラスの電荷を有する原子までの共有結合数を、上記Mの定義に記載の「プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数」とする。イオン性化合物が繰返し単位を2つ以上有するオリゴマーやポリマーである場合には、構成単位を一分子として考え、上記Mを算出する。プラスの電荷を有する原子が環構造に組み込まれている場合、環構造を経由して同プラスの電荷を有する原子に至るまでの共有結合数、又は環構造に結合している置換基の末端までの共有結合数のうち、共有結合数が多い方を上記Mの定義に記載の「プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数」とする。
【0132】
光吸収異方性層形成用組成物がイオン性化合物を含む場合、その含有量は、通常、光吸収異方性層形成用組成物の固形分に対して0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~4質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることがさらに好ましい。イオン性化合物の含有量が上記範囲内であると、光吸収異方性層形成用組成物の良好な塗布性を維持しながら、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に促進させることができる。
【0133】
光吸収異方性層形成用組成物が非イオン性シラン化合物を含む場合、非イオン性シラン化合物が光吸収異方性層形成用組成物の表面張力を低下させ、第1保護層上に光吸収異方性層形成用組成物から形成された乾燥塗膜においては、乾燥塗膜の第1保護層とは反対側の面に非イオン性シラン化合物が存在し、重合性液晶化合物に対する垂直配向規制力を高め、乾燥塗膜内において重合性液晶化合物が第1保護層表面に対して垂直方向に配向する傾向にある。これにより、重合性液晶化合物が垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜である光吸収異方性層を形成することができる。
【0134】
非イオン性シラン化合物は、非イオン性であってSi元素を含む化合物である。非イオン性シラン化合物としては、例えば、ポリシランのようなケイ素ポリマー、シリコーンオイル及びシリコーンレジンのようなシリコーン樹脂、並びにシリコーンオリゴマー、シルセスシロキサン及びアルコキシシランのような有機無機シラン化合物(より具体的には、シランカップリング剤等)、レベリング剤の項に記載のシラン含有化合物等が挙げられる。
【0135】
非イオン性シラン化合物は、シリコーンモノマータイプのものであってもよく、シリコーンオリゴマー(ポリマー)タイプのものであってもよい。シリコーンオリゴマーを(単量体)-(単量体)コポリマーの形式で示すと、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメルカプトプロピル基含有のコポリマー;メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー及びメルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメルカプトメチル基含有のコポリマー;3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー及び3-メタクリロキシイルオプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー及び3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなアクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;ビニルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー及びビニルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなビニル基含有のコポリマー;3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー及び3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなアミノ基含有のコポリマー等が挙げられる。これらの非イオン性シラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、隣接する層との密着性をより向上させる観点から、シランカップリング剤が好ましい。
【0136】
シランカップリング剤は、末端にビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、カルボキシ基、及びヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種のような官能基と、少なくとも1つのアルコキシシリル基又はシラノール基とを有するSi元素を含む化合物である。これらの官能基を適宜選定することにより、光吸収異方性層の機械的強度の向上、光吸収異方性層の表面改質、光吸収異方性層と隣接する層(例えば、第1保護層)との密着性向上等の特異な効果を付与することが可能となる。密着性の観点からは、シランカップリング剤がアルコキシシリル基ともう1つの異なる反応基(例えば、上記官能基)とを有するシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤が、アルコキシシリル基と極性基とを有するシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤がその分子内に少なくとも1つのアルコキシシリル基と、少なくとも1つの極性基とを有すると、重合性液晶化合物の垂直配向性がより向上しやすく、垂直配向促進効果が顕著に得られる傾向にある。極性基としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアヌレート基、メルカプト基、カルボキシ基及びヒドロキシ基が挙げられる。極性基はシランカップリング剤の反応性を制御するために適宜置換基又は保護基を有していてもよい。
【0137】
シランカップリング剤としては、具体的に例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、及び3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランが挙げられる。
【0138】
市販のシランカップリング剤としては、例えば、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22-161A、KF6001、KBM-1003、KBE-1003、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-573、KBM-575、KBM-9659、KBE-585、KBM-802、KBM-803、KBE-846、及びKBE-9007のような信越化学工業(株)製のシランカップリング剤が挙げられる。
【0139】
光吸収異方性層形成用組成物が非イオン性シラン化合物を含む場合、その含有量は、通常、光吸収異方性層形成用組成物の固形分に対して0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~4質量%であることがより好ましく、0.1質量%~3質量%であることがさらに好ましい。非イオン性シラン化合物の含有量が前記範囲内であると、光吸収異方性層形成用組成物の良好な塗布性を維持しながら、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に促進させることができる。
【0140】
光吸収異方性層形成用組成物が、イオン性化合物及び非イオン性シラン化合物の両方を含むことにより、第1保護層上に光吸収異方性層形成用組成物から形成された乾燥塗膜においては、イオン性化合物に由来する静電相互作用と、非イオン性シラン化合物に由来する表面張力低下効果により、重合性液晶化合物の垂直配向がより促進されやすくなる。これにより、重合性液晶化合物がより精度よく垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜である光吸収異方性層を形成することができる。
【0141】
(配向層)
配向層は、重合性液晶化合物の液晶配向を容易にする。液晶配向の状態は、配向層及び重合性液晶化合物の性質によって変化し、その組み合わせは任意に選択することができる。
【0142】
配向規制力は、配向層が配向性ポリマーから形成されている場合は、表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能である。配向層が光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に配向規制力を調整することができる。また、重合性液晶化合物の表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、液晶配向を制御することもできる。
【0143】
配向層としては、配向層上に光吸収異方性層を形成する際に使用される溶剤に不溶であり、また、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向層としては、配向性ポリマーからなるポリマー配向層、光配向層及びグルブ(groove)配向層、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、長尺のロール状フィルムに適用する場合には、配向方向を容易に制御できる点で、光配向層が好ましい。
【0144】
配向層の厚みは、通常10nm~5000nmの範囲であり、好ましくは10nm~1000nmの範囲であり、より好ましくは30~300nmである。
【0145】
ラビング配向層に用いられる配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル類等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
ラビングする方法としては、第1保護層を構成する層に配向性ポリマー組成物を塗布し、アニールすることによって第1保護層表面を構成するように形成された配向性ポリマーの膜を、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに接触させる方法が挙げられる。
【0147】
光配向層は、光反応性基を有するポリマーやオリゴマー又はモノマーからなる。光配向層は、第1保護層を構成する層に光配向層を形成するための組成物を塗布した塗布層に偏光を照射することで配向規制力が得られる。照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点で光配向層がより好ましい。
【0148】
光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起、若しくは、異性化反応、二量化反応、光架橋反応又は光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こすものが、配向性に優れる点で好ましい。以上のような反応を生じうる光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基がより好ましい。
【0149】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基等が挙げられる。反応性の制御が容易であるという点や光配向時の配向規制力の発現の観点から、カルコン基及びシンナモイル基が好ましい。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基等や、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0150】
偏光を照射する形式は、光配向層を形成するための組成物の塗布層の膜面から直接偏光を照射する形式でも、下地層側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外光)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レーザー等が挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプがより好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外光の発光強度が大きいため好ましい。上記した光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光を照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラー等の偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0151】
(第2保護層)
第2保護層は、光吸収異方性層に含まれる二色性色素の拡散を抑制し、光吸収異方性層の損傷を抑制することができる。第2保護層は、例えば、水溶性ポリマーを含む樹脂組成物(以下、「水溶性ポリマー含有樹脂組成物」ともいう。)から形成される層、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む光硬化性組成物から形成される層等が挙げられる。水溶性ポリマーは、一般に二色性色素と極性が大きく異なることから二色性色素の拡散防止効果に優れるため、第2保護層は、好ましくは、水溶性ポリマー含有樹脂組成物から形成される層である。
【0152】
水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリルアミド系ポリマー;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及び、(メタ)アクリル酸又はその無水物-ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系ポリマー;カルボキシビニル系ポリマー;ポリビニルピロリドン;デンプン類;アルギン酸ナトリウム;又はポリエチレンオキシド系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0153】
第2保護層が水溶性ポリマー含有樹脂組成物から形成される層である場合、該層における水溶性ポリマーの含有量は、好ましくは75質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは85質量%以上である。
【0154】
第2保護層が水溶性ポリマー含有樹脂組成物から形成される層である場合、該層の緻密性を高めるために架橋剤を用いることにより架橋構造を導入してもよい。架橋剤としては、例えば、グリオキシル酸塩等のイオン結合性架橋剤及びエポキシ系架橋剤等の水溶性架橋剤;耐水性付与を目的として、イソシアネート系架橋剤、グリオキザール及びグリオキザール誘導体等の多価アルデヒド系架橋剤、塩化ジルコニウム系又はチタンラクテート系等の金属化合物系架橋剤等の疎水性架橋剤が挙げられる。
【0155】
架橋剤の添加量は、架橋剤の種類等に応じて適宜決定すればよい。例えば、水溶性ポリマー100質量部に対して、0.1~100質量部であってよく、好ましくは1~50質量部、より好ましくは10~30質量部である。架橋剤の含有量が上記範囲であると、緻密な第2保護層を形成することができる。
【0156】
水溶性ポリマー含有樹脂組成物は、通常、水溶性ポリマーを溶剤に溶解させた溶液として調製される。溶剤は、用いる水溶性ポリマーに応じて選択すればよいが、典型的には、水、アルコール、水とアルコールの混合物等が挙げられ、水が好ましい。
【0157】
水溶性ポリマー及び架橋剤等の第2保護層を構成する成分に溶剤を添加することにより得られる水溶性ポリマー含有樹脂組成物の固形分濃度は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは2~30質量%、さらに好ましく3~15質量%である。水溶性ポリマー含有樹脂組成物の固形分濃度が上記範囲内であると該組成物の粘度が低くなることから、塗工性や取扱性が良好となる。
【0158】
水溶性ポリマー含有樹脂組成物は、水溶性ポリマー、架橋剤、及び水等の溶剤に加えて、添加剤等の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、防腐剤、レベリング剤等が挙げられる。水溶性ポリマー含有樹脂組成物が添加剤等の他の成分を含む場合、その量は、該樹脂組成物の固形分に基づき、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0159】
水溶性ポリマーや架橋剤等の必要成分を溶剤に溶解させて調製した水溶性ポリマー含有樹脂組成物は、光吸収異方性層の第1保護層とは反対側の表面に塗布し、塗膜中の溶剤を乾燥、除去して硬化させることにより、第2保護層を形成することができる。
【0160】
水溶性ポリマー含有樹脂組成物を塗布する方法は特に限定されず、例えば光吸収異方性層形成用組成物を塗布する方法が挙げられる。
【0161】
水溶性ポリマー含有樹脂組成物の塗膜から第2保護層を形成するための乾燥温度や時間等は特に限定されず、用いる水溶性ポリマー含有樹脂組成物の組成等に応じて適宜決定すればよい。乾燥処理は、例えば、熱風を吹き付けること等によって行なうことができ、その温度は、通常40~100℃、好ましくは60~100℃の範囲内である。また、乾燥時間は通常、10~600秒である。
【0162】
光硬化性組成物に含まれる活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、及びシリコーン系樹脂等が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂は、好ましくはエポキシ系樹脂である。
【0163】
光硬化性組成物は、光吸収異方性層の第1保護層とは反対側の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射することによって形成することにより、第2保護層を形成することができる。上記したように、光吸収異方性層の第2保護層が形成される側の表面には、表面処理を施してもよい。
【0164】
第2保護層の厚みは、好ましくは15μm以下であり、0.1μm以上12μm以下であってもよく、好ましくは0.5μm以上10μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0165】
第2保護層の温度23℃、相対湿度55%における引張弾性率は、好ましくは100MPa以上5000MPa以下であり、200MPa以上4000MPa以下であってもよく、300MPa以上1000MPa以下であってもよい。上記引張弾性率は、上記した方法によって測定することができる。
【0166】
(第1粘着剤層、第2粘着剤層)
第1粘着剤層及び第2粘着剤層(以下、「粘着剤層」ともいう。)は、粘着剤組成物を用いて形成することができる。粘着剤組成物又は粘着剤組成物の反応生成物は、それ自体を被着体に貼り付けることで接着性を発現するものであり、いわゆる感圧型接着剤と称されるものである。また、後述する活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層は、活性エネルギー線を照射することにより、架橋度や接着力を調整することができる。
【0167】
粘着剤組成物としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、シリコーンポリマー、ポリビニルエーテル等のベースポリマーを含有する粘着剤組成物を用いることができる。また、粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、又は、熱硬化型粘着剤組成物等であってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性(リワーク性)、耐候性、耐熱性等に優れるアクリル樹脂をベースポリマーとした粘着剤組成物が好適である。粘着剤層は、(メタ)アクリル樹脂、架橋剤、シラン化合物を含む粘着剤組成物の反応生成物から構成されることが好ましく、その他の成分を含んでいてもよい。
【0168】
粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、例えば、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、シリコーンポリマー、ポリビニルエーテル等のベースポリマーを含むことができる。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型粘着剤、熱硬化型粘着剤等であってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性(リワーク性)、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル樹脂をベースポリマーとした粘着剤が好適である。粘着剤層は、(メタ)アクリル樹脂、架橋剤、シラン化合物を含む粘着剤の反応生成物から構成されることが好ましく、その他の成分を含んでいてもよい。
【0169】
粘着剤層は、活性エネルギー線硬化型粘着剤を用いて形成してもよい。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、上記した粘着剤組成物に、多官能性アクリレート等の紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層を形成した後に紫外線を照射して硬化させることにより、より硬い粘着剤層を形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、紫外線や電子線等のエネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有している。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線照射前においても粘着性を有しているため、被着体に密着し、エネルギー線の照射により硬化して密着力を調整することができる性質を有する。
【0170】
第1粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常5μm以上300μm以下であり、10μm以上250μm以下であってもよく、15μm以上100μm以下であってもよく、20μm以上50μm以下であってもよい。
【0171】
第2粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常5μm以上100μm以下であり、10μm以上80μm以下であってもよく、12μm以上50μm以下であってもよく、15μm以上30μm以下であってもよい。
【0172】
(セパレーター)
セパレーターは、延伸ポリエステルフィルムを含む。延伸ポリエステルフィルムは、好ましくは二軸延伸ポリエステルフィルムである。延伸ポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは35μm以上であり、40μm以上であってもよく、通常100μm以下である。
【0173】
延伸ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを一軸延伸又は二軸延伸したフィルムであり、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを二軸延伸したフィルムである。
【0174】
セパレーターは、延伸ポリエステルフィルムの片面に離型処理が施されていてもよく、延伸ポリエステルフィルムと剥離力調整層との積層体であってもよい。離型処理としては、離型剤等の塗布等により離型層を形成する方法が挙げられる。離型剤としては、シリコーン系離型剤及びフッ素系離型剤等が挙げられる。剥離力調整層は、例えばシランカップリング剤の塗布等によって形成できる。
【0175】
延伸ポリエステルフィルムの温度23℃、相対湿度55%における引張弾性率は、好ましくは4000MPa以上であり、5000MPa以上であってもよく、6000MPa以上であってもよく、通常20000MPa以下である。上記引張弾性率は、上記した方法によって測定することができる。
【実施例0176】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。実施例及び比較例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、質量%及び質量部である。
【0177】
[表面保護フィルムの作製及び準備]
(粘着剤組成物(a)の調製)
撹拌機、温度計、還流冷却及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2-エチルヘキシルアクリレート93部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート5.5部、アクリル酸1.5部とともに溶剤(酢酸エチル)を60部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を2時間かけて滴下し、65℃で6時間反応を行って、アクリル樹脂溶液を得た。アクリル樹脂溶液に含まれるアクリル系ポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算値で約50万であった。
【0178】
上記で得たアクリル樹脂溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対して、帯電防止剤としての1-オクチルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩2.0部を加え撹拌した後、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体:東ソー株式会社製)1.5部を加えて撹拌混合して粘着剤組成物(a)を得た。
【0179】
(表面保護フィルム(1)~(3)の作製)
厚みが38μm、50μm、及び75μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「延伸PETフィルム」ともいう。)(1)~(3)を用意し、上記で得た粘着剤組成物(a)を塗布した後、温度90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、厚みが15μmの第2粘着剤層(1)を形成し、表面保護フィルム(1)~(3)を得た。表面保護フィルム(1)、(2)、及び(3)が有する延伸PETフィルム(1)、(2)、及び(3)の厚みは、それぞれ38μm、50μm、及び75μmであった。
【0180】
(表面保護フィルム(4)の作製)
シランカップリング剤であるKBM-5103(信越シリコーン製)をo-キシレンに対して、0.25%となるように溶解し、剥離力調整層形成用組成物(1)を調製した。片面に離型処理が施された延伸PETフィルム(厚み38μm、リンテック社製SP-PLR382050)の離型処理された面とは反対側の面に、バーコーターを用いて剥離力調整層形成用組成物(1)を塗布し、オーブンにて温度120℃で1分間乾燥して、厚み40nmの剥離力調整層(1)を形成し、これを表面保護フィルム(4)とした。
【0181】
(表面保護フィルム(5)の作製)
片面に離型処理が施された延伸PETフィルム(厚み38μm)に代えて、片面に離型処理が施された延伸PETフィルム(厚み75μm、フジコー社製CAO)を用いたこと以外は、表面保護フィルム(4)の作製と同じ手順で表面保護フィルム(5)を作製した。
【0182】
(表面保護フィルム(6)の準備)
表面保護フィルム(6)として、片面に離型処理が施された延伸PETフィルム(厚み38μm、リンテック社製SP-PLR382050)を準備した。
【0183】
(表面保護フィルム(7)の準備)
表面保護フィルム(6)として、片面に離型処理が施された延伸PETフィルム(厚み75μm、フジコー社製CAO)を準備した。
【0184】
[光吸収異方性層形成用組成物の調製]
(光吸収異方性層形成用組成物(1)の調製)
下記に示す成分を混合し、温度80℃で1時間撹拌することにより、光吸収異方性層形成用組成物(1)を得た。
重合性液晶化合物(1):75部
重合性液晶化合物(2):25部
二色性色素(1):1部
重合開始剤(イルガキュア369、BASF社製):6部
重合性基を有する非液晶性化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能)):1.5部
レベリング剤(F-556、DIC社製):0.25部
溶剤(o-キシレン):300部
【0185】
重合性液晶化合物(1)及び(2)は、下記に示す構造を有し、lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)記載の方法にしたがって合成した。
・重合性液晶化合物(1):
【化12】

・重合性液晶化合物(2):
【化13】
【0186】
二色性色素(1)は、下記に示す構造を有する特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ系色素を用いた。クロロホルム溶液中で測定した二色性色素(1)の極大吸収波長は、600nmであった。
・二色性色素(1):
【化14】
【0187】
(光吸収異方性層形成用組成物(2)の調製)
溶剤(o-キシレン)を溶剤(シクロペンタノン)に変更したこと以外は、光吸収異方性層形成用組成物(1)の調製と同じ手順で光吸収異方性層形成用組成物(2)を調製した。
【0188】
(光吸収異方性層形成用組成物(3)の調製)
下記に示す各成分を混合し、80℃で1時間撹拌することにより、光吸収異方性層形成用組成物(3)を得た。
重合性液晶化合物(1):75部
重合性液晶化合物(2):25部
二色性色素(1):2.5部
二色性色素(2):2.5部
二色性色素(3):2.5部
重合開始剤(イルガキュア369、BASF社製):6部
レベリング剤(ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製):1.2部
溶剤(o-キシレン):250部
【0189】
二色性色素(2)及び(3)は、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ色素を用いた。
・二色性色素(2):
【化15】

・二色性色素(3):
【化16】
【0190】
(光吸収異方性層形成用組成物(4)の調製)
重合性液晶化合物(3)及び重合性液晶化合物(4)を質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「F-556」0.25質量部、二色性色素(1)1.5質量部、特願2016-514802号公報を参考にして調整した下記に示すイオン性化合物(分子量:645)1.5質量部、シランカップリング剤「KBE-9103」(信越化学工業株式会社製)0.5質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間撹拌することにより、光吸収異方性層形成用組成物(4)を得た。
【0191】
・重合性液晶化合物(3)
【化17】
【0192】
・重合性液晶化合物(4)
【化18】
【0193】
・イオン性化合物
【化19】
【0194】
[水溶性ポリマー含有樹脂組成物の調製]
以下の合成スキームにしたがって、下記に示す構造単位からなる水溶性ポリマーを得た。
【化20】
【0195】
ジメチルスルホキシド400g中に、分子量1000のポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社製)20gと、求核剤としてN,N-ジメチル-4-アミノピリジンを0.55mg、トリエチルアミン4.6gを溶解し、撹拌しながら温度60℃まで昇温した。その後、ジメチルスルホキシド50g中にメタクリル酸無水物10.5gを溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、温度60℃で14時間加熱撹拌することにより反応させた。得られた反応溶液を室温まで冷却後、反応溶液中にメタノール481gを加えて完全に混合するように撹拌することにより、反応溶液とメタノールとの比率(質量)が1:1となるように調整した。この溶液中に1500mLのアセトンを徐々に加えることで、水溶性ポリマーを晶析法により結晶化させた。得られた白色結晶を含む溶液を濾過し、アセトンでよく洗浄した後に真空乾燥することにより、水溶性ポリマーを20.2g得た。得られた水溶性ポリマーを水に溶解させ、水溶性ポリマー含有樹脂組成物としての3%の水溶性ポリマー水溶液を調製した。
【0196】
[光硬化性組成物の調製]
下記に示す成分を混合した後、脱泡して、光硬化性組成物を調製した。なお、光カチオン重合開始剤は、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、その部数は固形分量で示す。
・カチオン重合性化合物(1)[3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(商品名:OXT-221、東亞合成(株)製)]:60.0部
・カチオン重合性化合物(2)[3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:CEL2021P、(株)ダイセル製)]:32.5部
・カチオン重合性化合物(3)[2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(商品名:EHPE3150、(株)ダイセル製)]:7.5部
・光カチオン重合開始剤[CPI-100P(サンアプロ(株)製、50質量%溶液)]:2.3部
・光増感剤[9,10-ジブトキシアントラセン]:1.0部
・光増感助剤[1,4-ジエトキシナフタレン]:1.0部
【0197】
[粘着剤組成物(b)の調製]
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル81.8部、アクリル酸ブチル90.0部、アクリル酸メチル5.0部及びアクリル酸5.0部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.15部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。重合開始剤を添加した後、1時間この温度で保持し、次いで内温を54~56℃に保ちながら酢酸エチルを添加速度17.3部/hrで反応容器内へ連続的に加え、(メタ)アクリル系樹脂の濃度が35%となった時点で酢酸エチルの添加を止め、さらに酢酸エチルの添加開始から6時間経過するまでこの温度で保温した。最後に酢酸エチルを加えて(メタ)アクリル系樹脂の濃度が20%となるように調節し、アクリル樹脂溶液を調製した。得られたアクリル樹脂は、重量平均分子量Mwが160万、分子量分布Mw/Mnが4.5であった。なお、Mw及びMnは、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel GMHHR-H(S)」を2本直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、試料濃度2mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した。
【0198】
上記で得たアクリル樹脂溶液の固形分100部に対して、架橋剤(東ソー株式会社製:商品名「コロネートL」(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%))を有効成分ベースで0.15部、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製:商品名「KBM-403」)を0.2部添加し、更に固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物(b)を得た。
【0199】
[粘着剤層付きセパレーターの作製]
(粘着剤層付きセパレーター(1)の作製)
セパレーター(1)として、離型処理が施された延伸PETフィルム(リンテック社製SP-PLR382050、厚み38μm)を用い、この延伸PETフィルムの離型処理面に、上記で得た粘着剤組成物(b)を塗工して乾燥することにより、厚み20μmの第1粘着剤層(1)を形成した。これにより、セパレーター(1)/第1粘着剤層(1)の層構造を有する粘着剤層付きセパレーター(1)を得た。
【0200】
(粘着剤層付きセパレーター(2)の作製)
セパレーター(2)として、片面に離型処理が施された延伸PETフィルム(厚み75μm、フジコー社製CAO)を用い、この延伸PETフィルムの離型処理面に、上記で得た粘着剤組成物(b)を塗工して乾燥することにより、厚み25μmの第1粘着剤層(2)を形成した。これにより、セパレーター(2)/第1粘着剤層(2)の層構造を有する粘着剤層付きセパレーター(2)を得た。
【0201】
(粘着剤層付きセパレーター(3)の作製)
シランカップリング剤であるKBE-903(信越シリコーン製)をo-キシレンに対して0.25%となるように溶解し、剥離力調整層形成用組成物(2)を調製した。離型処理が施された延伸PETフィルム(厚み38μm)(リンテック社製SP-PLR382050)の離型処理面に、バーコーターを用いて剥離力調整層形成用組成物(2)を塗布し、オーブンにて温度120℃で1分間乾燥して、厚み40nmの剥離力調整層(2)を形成した。これをセパレーター(3)とした。
【0202】
セパレーター(3)の剥離力調整層(2)に、上記で得た粘着剤組成物(b)を塗工して乾燥することにより、厚み20μmの第1粘着剤層(1)を形成した。これにより、セパレーター(3)/第1粘着剤層(1)の層構造を有する粘着剤層付きセパレーター(3)を得た。
【0203】
(粘着剤層付きセパレーター(4)の作製)
離型処理が施された延伸PETフィルム(リンテック社製SP-PLR382050、厚み38μm)の離型処理面にコロナ処理を3回行ったものを、セパレーター(4)とした。コロナ処理は、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で実施した。上記で得た粘着剤組成物(b)をコロナ処理した面に塗工して乾燥することにより、厚み20μmの第1粘着剤層(1)を形成した。これにより、セパレーター(4)/第1粘着剤層(1)の層構造を有する粘着剤層付きセパレーター(4)を得た。
【0204】
〔実施例1〕
第1保護層(1)としてのトリアセチルセルロースフィルム(KC2UA、コニカミノルタ(株)製、厚み25μm)に、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回コロナ処理を施した。切り出した第1保護層のコロナ処理面にバーコーターを用いて、上記で調製した光吸収異方性層形成用組成物(1)を塗布した後、温度100℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥した。次いで、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、重合性液晶化合物及び二色性色素が塗膜平面に対して垂直配向した光吸収異方性層(1)を形成した。光吸収異方性層(1)の厚みは、1.0μmであった。これにより、第1保護層(1)/光吸収異方性層(1)の層構造を有する第1積層体(1)を得た。
【0205】
次いで、第1積層体(1)の光吸収異方性層(1)上に、コロナ処理を施した後、バーコーターを用いて、上記で調製した水溶性ポリマー含有樹脂組成物を塗布し、温度100℃で2分間乾燥して、水溶性ポリマーの膜からなる厚み1μmの第2保護層(1)を形成した。これにより、第1保護層(1)/光吸収異方性層(1)/第2保護層(1)の層構造を有する第2積層体(1)を得た。
【0206】
第2積層体(1)の第2保護層(1)側と、粘着剤層付きセパレーター(1)の第1粘着剤層(1)側とを貼合し、第2積層体の第1保護層(1)側と表面保護フィルム(1)の第2粘着剤層(1)側とを貼合し、光学積層体(1)を得た。光学積層体(1)の層構造は、表面保護フィルム(1)(延伸PETフィルム(1)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(1)/光吸収異方性層(1)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0207】
〔実施例2〕
表面保護フィルム(1)の第2粘着剤層(1)と、第2積層体の第1保護層(1)側に、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回コロナ処理を施したこと以外は、実施例1と同じ手順で光学積層体(2)を得た。光学積層体(2)の層構造は、表面保護フィルム(1)(延伸PETフィルム(1)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(1)/光吸収異方性層(1)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0208】
〔実施例3〕
第1積層体(1)の光吸収異方性層(1)上に、コロナ処理を施した後、バーコーターを用いて、光硬化性組成物を塗布し、UVAの積算光量が約500mJ/cm(測定器:FusionUV社製UV Power PuckIIによる測定値)となるように紫外線を照射し、光硬化性組成物を硬化させて第2保護層(2)を形成した。第2保護層(2)の厚みは3μmであった。これにより、第1保護層(1)/光吸収異方性層(1)/第2保護層(2)の層構造を有する第2積層体(2)を得た。
【0209】
第2積層体(1)に代えて第2積層体(2)を用いたこと以外は、実施例1と同じ手順で光学積層体(3)を得た。光学積層体(3)の層構造は、表面保護フィルム(1)(延伸PETフィルム(1)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(1)/光吸収異方性層(1)/第2保護層(2)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0210】
〔実施例4〕
第1保護層(1)に代えて、第1保護層(2)としてシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(ZF14-023、日本ゼオン社製、厚み23μm)を用い、光吸収異方性層形成用組成物(1)に代えて光吸収異方性層形成用組成物(2)を用いたこと以外は、実施例1と同じ手順で光学積層体(4)を得た。光吸収異方性層(2)の厚みは1.0μmであった。光学積層体(4)の層構造は、表面保護フィルム(1)(延伸PETフィルム(1)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(2)/光吸収異方性層(2)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0211】
〔実施例5〕
第1保護層(2)に代えて、第1保護層(3)としてシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(ZF14-023、日本ゼオン社製、厚み13μm)を用いたこと以外は、実施例4と同じ手順で光学積層体(5)を得た。光学積層体(5)の層構造は、表面保護フィルム(1)(延伸PETフィルム/第2粘着剤層(1))/第1保護層(3)/光吸収異方性層(2)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0212】
〔実施例6〕
表面保護フィルム(1)に代えて表面保護フィルム(2)を用いたこと以外は、実施例5と同じ手順で光学積層体(6)を得た。光学積層体(6)の層構造は、表面保護フィルム(2)(延伸PETフィルム(2)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(3)/光吸収異方性層(2)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0213】
〔実施例7〕
表面保護フィルム(1)に代えて表面保護フィルム(3)を用いたこと以外は、実施例5と同じ手順で光学積層体(7)を得た。光学積層体(7)の層構造は、表面保護フィルム(3)(延伸PETフィルム(3)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(3)/光吸収異方性層(2)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0214】
〔実施例8〕
粘着剤層付きセパレーター(1)に代えて粘着剤層付きセパレーター(2)を用いたこと以外は、実施例7と同じ手順で光学積層体(8)を得た。光学積層体(8)の層構造は、表面保護フィルム(3)(延伸PETフィルム(3)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(3)/光吸収異方性層(2)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(2)/セパレーター(2)であった。
【0215】
〔実施例9〕
(延伸PETフィルム付き第1保護層(4)の作製)
下記の成分を混合し、温度50℃で4時間撹拌することにより、ハードコート層形成用組成物(以下、「HC層形成用組成物」ともいう。)を得た。
下記構造を有する多官能アクリレート化合物(新中村化学(株)製、「NKエステル A-DPH」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):50部
【化21】

ウレタンアクリレートポリマー(ダイセル・オルネクス(株)製、「エベクリル4858」、官能基数:2、重量平均分子量:450、単位分子量あたりの官能基数は44.4×10-4):50部
ラジカル重合開始剤(BASF社製、「イルガキュア907」(2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン)):3部
溶剤(メチルエチルケトン):10部
【0216】
離型処理が施された延伸PETフィルム(リンテック社製SP-PLR382050)の離型処理面にコロナ処理を施した後、上記で調製したHC層形成用組成物をバーコート法(#2 30mm/s)により塗布した。得られたHC層形成用組成物の塗膜にUV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量500mJ/cm(365nm基準)の紫外線を照射することにより、厚み2μmのハードコート層を形成し、このハードコート層を第1保護層(4)とした。厚みは、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)により測定した。これにより、延伸PETフィルム/第1保護層(4)の層構造を有する延伸PETフィルム付き第1保護層(3)を得た。
【0217】
第1保護層(1)に代えて延伸PETフィルム付き第1保護層(4)を用い、光吸収異方性層形成用組成物(1)に代えて光吸収異方性層形成用組成物(3)を用いたこと以外は、実施例1で説明した第1積層体(1)の作製と同じ手順で第1積層体(2)を得た。光吸収異方性層(3)の厚みは1.0μmであった。第1積層体(2)は、延伸PETフィルム付き第1保護層(4)(延伸PETフィルム/第1保護層(4))/光吸収異方性層(3)の層構造を有する。
【0218】
第1積層体(1)に代えて第1積層体(2)を用いたこと以外は、実施例1で説明した手順で第2積層体(3)を得た。第2積層体(3)は、延伸PETフィルム付き第1保護層(4)(延伸PETフィルム/第1保護層(4))/光吸収異方性層(3)/第2保護層(1)の層構造を有する。
【0219】
第2積層体(3)の第2保護層(1)側と、粘着剤層付きセパレーター(1)の第1粘着剤層(1)側とを貼合した後、第2積層体(3)の延伸PETフィルムを剥離除去した。これにより露出した第1保護層(4)と、表面保護フィルム(1)の第2粘着剤層(1)側とを貼合し、光学積層体(9)を得た。光学積層体(9)の層構造は、表面保護フィルム(1)(延伸PETフィルム(1)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(4)/光吸収異方性層(3)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0220】
〔実施例10〕
表面保護フィルム(1)に代えて表面保護フィルム(3)を用い、粘着剤層付きセパレーター(1)に代えて粘着剤層付きセパレーター(2)を用いたこと以外は、実施例9と同じ手順で光学積層体(10)を得た。光学積層体(10)の層構造は、表面保護フィルム(3)(延伸PETフィルム(3)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(4)/光吸収異方性層(3)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(2)/セパレーター(2)であった。
【0221】
〔実施例11〕
表面保護フィルム(4)の剥離力調整層(1)にコロナ処理を施した後、上記で調製したHC層形成用組成物をバーコート法(#2 30mm/s)により塗布した。得られたHC層形成用組成物の塗膜にUV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量500mJ/cm(365nm基準)の紫外線を照射することにより、厚み2μmのハードコート層を形成し、このハードコート層を第1保護層(4)とした。厚みは、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)により測定した。これにより、表面保護フィルム(4)/第1保護層(4)の層構造を有する表面保護フィルム(4)付き第1保護層(4)を得た。
【0222】
第1保護層(1)に代えて表面保護フィルム(4)付き第1保護層(4)上に、実施例9で説明した手順で光吸収異方性層(3)を形成した。光吸収異方性層(3)の第1保護層(4)側とは反対側の表面にコロナ処理を施した後、バーコーターを用いて、上記で調製した水溶性ポリマー含有樹脂組成物を塗布し、温度100℃で2分間乾燥して、水溶性ポリマーの膜からなる厚み1μmの第2保護層(1)を形成した。この第2保護層(1)と、粘着剤層付きセパレーター(3)の第1粘着剤層(1)とを貼合して、光学積層体(11)を得た。光学積層体(11)の層構造は、表面保護フィルム(4)(延伸PETフィルム)/第1保護層(4)/光吸収異方性層(3)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(3)であった。
【0223】
〔実施例12〕
表面保護フィルム(4)に代えて表面保護フィルム(5)を用い、粘着剤層付きセパレーター(3)に代えて粘着剤層付きセパレーター(1)を用いたこと以外は、実施例11と同じ手順で光学積層体(12)を得た。光学積層体(12)の層構造は、表面保護フィルム(5)(延伸PETフィルム)/第1保護層(4)/光吸収異方性層(3)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0224】
〔比較例1〕
表面保護フィルム(5)に代えて表面保護フィルム(6)を用い、光吸収異方性層形成用組成物(3)に代えて光吸収異方性層形成用組成物(1)を用いたこと以外は、実施例12と同じ手順で光学積層体(c1)を得た。光学積層体(c1)の層構造は、表面保護フィルム(6)(延伸PETフィルム)/第1保護層(4)/光吸収異方性層(1)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0225】
〔比較例2〕
表面保護フィルム(3)の第2粘着剤層(1)と、第1保護層(4)との貼合にあたり、それぞれの貼合面にコロナ処理を施し、光吸収異方性層形成用組成物(3)に代えて光吸収異方性層形成用組成物(1)を用い、粘着剤層付きセパレーター(2)に代えて粘着剤層付きセパレーター(4)を用いたこと以外は、実施例10と同じ手順で光学積層体(c2)を得た。光学積層体(c2)の層構造は、表面保護フィルム(3)(延伸PETフィルム(3)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(4)/光吸収異方性層(1)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(4)であった。
【0226】
〔参考例1〕
(光配向層形成用組成物の調製)
特開2013-033249号公報に記載の下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間撹拌することにより、光配向層形成用組成物を得た。
下記に示す構造を有する光配向性ポリマー:2部
【化22】

溶剤(o-キシレン):98部
【0227】
(光配向層の形成)
第1保護層(5)としてのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(ZF14-050、日本ゼオン社製、厚み50μm)の表面にコロナ処理を施した後に、上記で調製した光配向層形成用組成物を塗布して、温度120℃で乾燥して乾燥被膜を得た。この乾燥被膜上に偏光UVを照射して光配向層を形成し、光配向層付きフィルムを得た。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長365nmで測定した強度が100mJの条件で行った。光配向層の厚みは100nmであった。
【0228】
光配向層付きフィルムの光配向層上に、光吸収異方性層形成用組成物(3)をバーコーターにより塗布し、温度120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥することにより重合性液晶化合物を液体相に相転移させた後、室温まで冷却して該重合性液晶化合物をスメクチック液晶状態に相転移させた。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量1000mJ/cm(365nm基準)の紫外線を、光吸収異方性層形成用組成物(3)から形成された層に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、該重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま重合させ、水平に配向した光吸収異方性層(4)を形成した。光吸収異方性層(4)上に、コロナ処理を施した後、バーコーターを用いて、上記で調製した水溶性ポリマー含有樹脂組成物を塗布し、温度100℃で2分間乾燥して、水溶性ポリマーの膜からなる厚み1μmの第2保護層(1)を形成した。さらに、粘着剤層付きセパレーター(1)の第1粘着剤層(1)と表面保護フィルム(1)とを貼合して、光学積層体(r1)を得た。光学積層体(r1)の層構造は、表面保護フィルム(1)(延伸PETフィルム(1)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(5)(COPフィルム)/光配向層/光吸収異方性層(4)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0229】
〔参考例2〕
第1保護層(2)(COPフィルム、ZF14-023)上にコロナ処理を実施し、バーコーターを用いて光吸収異方性層形成用組成物(4)を塗布し、120℃で60秒間加熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、光吸収異方性層(5)を形成した。光吸収異方性層(5)の厚みをエリプソメータ(日本分光株式会社製M-220)で測定したところ、1.2μmであった。
【0230】
表面保護フィルム(1)に代えて表面保護フィルム(3)を用い、第1保護層(1)と光吸収異方性層(1)との積層体に代えて、上記で得た第1保護層(2)上に光吸収異方性層(5)を形成した積層体を用いたこと以外は、実施例1と同じ手順で光学積層体(r2)を得た。光学積層体(r2)の層構造は、表面保護フィルム(3)(延伸PETフィルム(3)/第2粘着剤層(1))/第1保護層(2)/光吸収異方性層(5)/第2保護層(1)/第1粘着剤層(1)/セパレーター(1)であった。
【0231】
[厚みの測定]
厚みは、接触式膜厚計又はレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)を用いて測定した。
【0232】
[距離Dの測定]
光学積層体において、第1保護層の表面保護フィルム側の表面から、第2保護層の第1粘着剤層側の表面までの距離Dを、層断面からレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)を用いて測定した。結果を表1~表3に示す。
【0233】
[吸光度の測定]
光学積層体のうちの第1保護層/光吸収異方性層/第2保護層の積層構造部分を、厚み25μmの感圧式粘着剤(リンテック社製)を介して、4cm×4cm×厚み0.7mmのガラスに貼合し、これを試験片(1)とした。積層構造体は、第2保護層側をガラス側に配置した。参考例1では、光学積層体のCOPフィルム/光配向層/光吸収異方性層(r1)の積層構造部分を、光吸収異方性層(r1)側が上記ガラス側になるように、上記感圧式粘着剤を介して貼合して試験片(1)とした。試験片(1)を紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2450」)にセットして吸光度を測定し、Ax及びAx(z=60)を決定した。第1保護層及び第2保護層の吸光度は0(ゼロ)とみなせるため、測定用サンプル(1)について測定したAx及びAx(z=60)は、光吸収異方性層の吸光度といえる。結果を表1~表3に示す。
【0234】
x軸は光吸収異方性層の面内における任意の方向、y軸は膜面内においてx軸に垂直な方向、z軸は光吸収異方性層の厚み方向を意味する。Axは、光吸収異方性層の極大吸収波長における吸光度であって、x軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。Ax(z=60)は、y軸を回転軸として光吸収異方性層を60°回転させたときの極大吸収波長における吸光度であって、x軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。
【0235】
吸光度を測定する際には試験片(1)を紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2450」)にセットし、波長800nmの吸光度がゼロとなるように補正した後、Axを測定した。Ax(z=60)についても、同様に試験片(1)をセット・傾斜させた後、波長800nmの吸光度がゼロとなるように補正した後、Ax(z=60)を測定した。
【0236】
光吸収異方性層の上記式(1)の関係(Az>(Ax+Ay)/2)の充足性は、次の手順で判断した。
y軸を含むように試験片(1)を30°及び60°回転させた状態で、Axを測定したときと同一の直線偏光を入射することによりAx(z=30°)及びAx(z=60°)を測定し、同様に、x軸を含むように試験片(1)を30°及び60°回転させた状態で、Ayを測定したときと同一の直線偏光を入射することによりAy(z=30°)及びAy(z=60°)を測定した。
x-y平面に吸収異方性がない場合、すなわちAx及びAyが等しい場合においては、Ax(z=30°)=Ay(z=30°)かつAx(z=60°)=Ay(z=60°)であるから、Ax(z=30°)及びAy(z=30°)をA(z=30°)とし、Ax(z=60°)及びAy(z=60°)をA(z=60)とし、Ax(z=90°)及びAy(z=90°)をA(z=90)とした。
A(z=30°)<A(z=60°)の関係にある場合、A(z=30°)<A(z=60°)<A(z=90°)=Azの関係を満たすため、A(z=30°)>(Ax+Ay)/2又はA(z=60°)>(Ax+Ay)/2であれば、上記式(1)の関係を充足すると判断した。結果を表1~表3に示す。
【0237】
[剥離力F1及びF2の測定]
光学積層体から幅25mm×長さ100mmの大きさに切り出した試験片(2)を用いて、次の手順で剥離力F1及び剥離力F2の測定を行った。結果を表1~表3に示す。
【0238】
(剥離力F1の測定)
試験片(2)からセパレーターを剥離し、露出した第1粘着剤層をガラス基板に貼り付けた。その後、表面保護フィルムを長さ方向に端から50mm剥がした。この状態で、低速剥離試験時は、引張試験機(AUTOGRAPH AG-1S試験機、(株)島津製作所製)の上下つかみ具で、試験片(2)の長さ方向の一端を挟み、他方のつかみ部でガラス基板をつかみ、温度23℃、相対湿度50%の環境下、引張速度300mm/分で180°方向に引っ張って、剥がし、そのときの剥離力をチャートに記録した。高速剥離試験時は、高速剥離試験機(VPA-H100、協和界面科学製)を用いて、高速剥離試験機の一方のつかみ部で、上記で剥がした表面保護フィルムの長さ方向の一端(幅25mmの一辺)をつかみ、高速剥離試験機の他方のつかみ部でガラス基板をつかみ、温度23℃、相対湿度50%の条件下、剥離速度10000mm/minで180°方向に引っ張って剥がし、そのときの剥離力をチャートに記録した。測定開始直後と測定終了直前はデータが安定しないため、測定開始後20%のデータと測定終了後20%のデータをカットし、比較的安定している中間部分60%の範囲のみから平均値を算出し、これを剥離力F1[N/25mm]とした。
【0239】
(剥離力F2の測定)
ガラス基板(EAGLE XG、コーニング社製)の片面の全面に幅25mm×長さ22cmの両面テープ(ナイスタック(商品名)、ニチバン(株)社製)を長辺方向に並行して貼りつけ、試験片(2)の表面保護フィルム側の面を貼合した。その後、セパレーターを長さ方向に端から50mm剥がした。この状態で、剥離力F1の測定と同様に、セパレーターを第1粘着剤層から剥がし、そのときの剥離力をチャートに記録した。測定開始直後と測定終了直前はデータが安定しないため、測定開始後20%のデータと測定終了後20%のデータをカットし、比較的安定している中間部分60%の範囲のみから平均値を算出し、これを剥離力F2[N/25mm]とした。
【0240】
[剥離性の評価]
光学積層体を、2.5cm×20cmのサイズに切り出して試験片(3)とした。吸引ステージ上に、試験片(3)の表面保護フィルム側を置き、減圧吸引して固定した。この状態で、試験片(3)の長辺に沿って180°方向に、低速(約300mm/min)及び高速(約10000mm/min)の剥離速度でセパレーターを剥離し、それぞれの剥離速度での剥離性及び剥離後の外観を次の基準で評価した。
A:剥離性に異常がなく、剥離後の外観にも異常がみられない。
B:セパレーターの剥離時に表面保護フィルム側が吸引ステージから浮く場合がある。しかし、セパレーターの剥離を一旦停止した後に再度剥離すれば、良好に剥離でき、剥離後の外観にも異常がみられない。
C:セパレーターの剥離時に表面保護フィルム側が吸引ステージから浮く場合がある。また、光学積層体の第1保護層、光吸収異方性層、第2保護層、及び第1粘着剤層のうちのいずれかにクラック様の縞模様が発生する。
D:セパレーターの剥離時に表面保護フィルム側が吸引ステージから浮き、セパレーターを剥離できない。また、光学積層体の第1保護層、光吸収異方性層、第2保護層、及び第1粘着剤層のうちのいずれかにクラック様の縞模様が多数発生し、破断することがある。
【0241】
[屈曲性試験]
スーパーカッターを用いて光学積層体を長さ100mm×幅10mmのサイズに切り出して試験片(4)とした。耐屈曲試験機(TR技研株式会社製)を用いた円筒法マンドレル法により、試験片(4)の屈曲性試験を行った。屈曲性試験では、直径が2mmの円筒状の心棒(マンドレル)の周りに、表面保護フィルムが内側となるように試験片(4)を巻き付け、温度25°において試験片(4)の長辺を屈曲させ、その後、試験片を屈曲させる前の状態に戻し、屈曲部分での視認性を確認し、次の基準で評価した。
A:屈曲性試験の前後において、試験片(4)の屈曲部分の視認性の低下がみられなかった。
B:屈曲性試験の前後において、試験片(4)の屈曲部分の視認性の低下がわずかに確認された。
C:屈曲性試験の前後において、試験片(4)の屈曲部分の視認性の低下が確認された。
【0242】
【表1】
【0243】
【表2】
【0244】
【表3】
【符号の説明】
【0245】
10 光学積層体、11 表面保護フィルム、12 第1保護層、13 光吸収異方性層、14 第2保護層、15 第1粘着剤層、16 セパレーター。
図1