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特開2024-146776リキッドインキ組成物、印刷物、PTP用蓋材、及びPTP包材
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  • 特開-リキッドインキ組成物、印刷物、PTP用蓋材、及びPTP包材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146776
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】リキッドインキ組成物、印刷物、PTP用蓋材、及びPTP包材
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20241004BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09D11/10
B32B27/30 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027816
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023059427
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】中町 和政
(72)【発明者】
【氏名】岡田 守弘
【テーマコード(参考)】
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB10
4F100AB33
4F100AB33A
4F100AJ04C
4F100AK04
4F100AK23
4F100AK23C
4F100AK25C
4F100AK51C
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA04
4F100CA13
4F100CA19
4F100CA19C
4F100EJ65B
4F100GB15
4F100GB18
4F100HB31
4F100HB31C
4F100JA07
4F100JA07C
4F100JJ03
4F100JK06
4F100JL10
4F100JL14B
4F100YY00C
4J039AB02
4J039AB08
4J039AD07
4J039AD10
4J039AE04
4J039BB01
4J039BC03
4J039BC07
4J039BC16
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE12
4J039CA01
4J039DA02
4J039EA37
4J039EA47
4J039EA48
4J039FA01
4J039FA02
4J039GA02
4J039GA03
4J039GA04
4J039GA09
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】150℃程度の低温で焼き付けを行っても、金属箔に対する密着性が良好なリキッドインキ組成物を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂を含有し、前記バインダー樹脂は、最も含有量が多い成分がポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする、リキッドインキ組成物である。前記バインダー樹脂の総量中の前記ポリビニルブチラール樹脂の割合は、50質量%より多いことが好ましい。また、前記ポリビニルブチラール樹脂は、重量平均分子量が5,000~150,000であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂を含有し、
前記バインダー樹脂は、最も含有量が多い成分がポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする、リキッドインキ組成物。
【請求項2】
前記バインダー樹脂の総量中の前記ポリビニルブチラール樹脂の割合が、50質量%より多い、請求項1に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルブチラール樹脂は、重量平均分子量が5,000~150,000である、請求項1に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項4】
更に、ケトン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びセルロース樹脂(但し、硝化綿樹脂を除く。)からなる群から選択される少なくとも一種を、前記バインダー樹脂の総量中、0.1~49質量%含有する、請求項1に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項5】
更に、ワックスを含有する、請求項1に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項6】
更に、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、及びアルコール系溶剤からなる群から選択される少なくとも一種の溶剤を含有する、請求項1に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項7】
硝化綿樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しない、請求項1に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項8】
金属箔用である、請求項1に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のリキッドインキ組成物を使用したことを特徴とする、印刷物。
【請求項10】
基材層と、脱離性を有するプライマー層と、請求項1に記載のリキッドインキ組成物からなる層をこの順に具える、請求項9に記載の印刷物。
【請求項11】
請求項9に記載の印刷物を具えることを特徴とする、PTP用蓋材。
【請求項12】
OPニス層と、請求項1に記載のリキッドインキ組成物からなる層と、硬質アルミ箔と、請求項1に記載のリキッドインキ組成物からなる層と、ヒートシール層と、をこの順に具える、請求項11に記載のPTP用蓋材。
【請求項13】
請求項12に記載のPTP用蓋材を具えることを特徴とする、PTP包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リキッドインキ組成物、印刷物、PTP用蓋材、及びPTP包材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品等を包装するために、PTP包材(プレス・スルー・パッケージ)が用いられている(特許文献1参照)。該PTP包材は、医薬品等の内容物を収容する容器と、蓋材とから構成されている。容器は、内容物を収容するポケット状の凹部と、該凹部の端部に設けられたフランジ部とを具える。また、前記蓋材(即ち、PTP用蓋材)は、基材となる金属箔(例えば、硬質アルミ箔)と、該金属箔の一方の面上に順次形成された印刷層及びOPニス層と、前記金属箔のもう一方の面上に順次形成された印刷層及びヒートシール層と、を具える。そして、容器の凹部に医薬品等の内容物を収容した後、容器のフランジ部に蓋材のヒートシール層を接触させ、熱融着することで包装を行っている。
【0003】
前記PTP用蓋材の印刷層は、通常、バインダー樹脂と、顔料と、溶剤と、ワックス等の添加剤と、を含むリキッドインキ組成物から形成されており、該リキッドインキ組成物中のバインダー樹脂としては、硝化綿樹脂等が主に用いられている。
また、食品等に用いられる包材の場合、内容物の種類又は使用目的に応じて、プラスチックフィルム等の素材の表側から印刷する表刷り印刷、あるいは印刷絵柄の向き又は色の刷り順を逆にする裏刷り印刷などが選択され、様々な被印刷体あるいはラミネート加工が利用される。
従来、この様なラミネート加工に使用されるインキには、優れた分散性と高い皮膜物性とを両立しうるバインダー樹脂の組み合わせとして、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(PVC)樹脂とが広く用いられてきた。
【0004】
しかし、持続可能な開発目標で代表されるように、人体又は環境への悪影響を及ぼしうる物質を低減する循環型社会の構築といった時代の潮流を受けて、食品包材を取り巻く法規制は世界的に厳しくなってきている。特に近年、パッケージに使用される成分及びその食品へのマイグレーションの規制等の厳格化が要求されている。また、脱プラスチックの動きも加速しており、パッケージのリサイクル性の需要が高まっている。そのため、グラビアインキ製品開発において、人体又は環境への安全性が担保された材料を用いてインキ及びパッケージ構成材料を設計する必要が生じている。
中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(PVC)は、以下の(a)及び(b)の理由からパッケージのリサイクルを阻害する物質として懸念されている。
(a)塩化ビニル等の塩素系樹脂は、リサイクルの熱分解工程において塩化水素が脱離し塩酸が発生することにより機器又は配管の腐食原因となりうる。
(b)廃棄物を焼却した際に生じるエネルギーを再利用するサーマルリサイクルにおおいて、塩素系樹脂を焼却するとダイオキシン等の環境ホルモンが排出されうる。
そのため、例えば塩素を含まないPVCフリー化といった、環境対応型インキの開発が今後求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-2922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、医薬品等を包装するためのPTP包材用の蓋材の製造においては、蓋材を構成する金属箔の原反(例えば、硬質アルミ箔原反)に対して、前記リキッドインキ組成物を用いて印刷を行った後、通常200℃程度の高温での焼き付けが行われている。ここで、作業効率を向上させ、また、金属箔原反が熱から受けるダメージを低減するためには、150℃程度のより低温での焼き付けが望まれる。しかしながら、150℃程度の低温での焼き付けは、金属箔に対する印刷層の密着性の低下を引き起こす。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、金属箔に対する密着性が良好なリキッドインキ組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、硝化綿及び塩素系樹脂を使用しない環境対応型のリキッドインキ組成物を使用した、基材と印刷層の間の密着性が良好な、印刷物、PTP用蓋材、及びPTP包材を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、バインダー樹脂を含有するリキッドインキ組成物において、バインダー樹脂の主成分(即ち、最も含有量が多い成分)をポリビニルブチラール樹脂とすることで、該リキッドインキ組成物を金属箔に印刷し、150℃程度の低温で焼き付けを行って印刷層を形成しても、金属箔に対する印刷層の密着性が良好であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、上記課題を解決する本発明のリキッドインキ組成物、印刷物、PTP用蓋材、及びPTP包材の要旨構成は、以下の通りである。
【0009】
[1] バインダー樹脂を含有し、
前記バインダー樹脂は、最も含有量が多い成分がポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする、リキッドインキ組成物。
上記[1]に記載の本発明のリキッドインキ組成物は、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、金属箔に対する密着性が良好である。
【0010】
[2] 前記バインダー樹脂の総量中の前記ポリビニルブチラール樹脂の割合が、50質量%より多い、[1]に記載のリキッドインキ組成物。
上記[2]に記載のリキッドインキ組成物は、150℃程度の低温で焼き付けを行った際の金属箔に対する密着性が更に向上している。
【0011】
[3] 前記ポリビニルブチラール樹脂は、重量平均分子量が5,000~150,000である、[1]又は[2]に記載のリキッドインキ組成物。
上記[3]に記載のリキッドインキ組成物に用いる重量平均分子量が5,000~150,000であるポリビニルブチラール樹脂は、入手し易く、また、かかるポリビニルブチラール樹脂を使用することで、流動性と分散性のバランスに優れたインキを得ることができる。
【0012】
[4] 更に、ケトン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びセルロース樹脂(但し、硝化綿樹脂を除く。)からなる群から選択される少なくとも一種を、前記バインダー樹脂の総量中、0.1~49質量%含有する、[1]~[3]のいずれか一つに記載のリキッドインキ組成物。
上記[4]に記載のリキッドインキ組成物は、インキとしての物性が向上しており、印刷適性に優れる。
【0013】
[5] 更に、ワックスを含有する、[1]~[4]のいずれか一つに記載のリキッドインキ組成物。
上記[5]に記載のリキッドインキ組成物は、巻取りの際のブロッキングを防止でき、加工し易い。
【0014】
[6] 更に、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、及びアルコール系溶剤からなる群から選択される少なくとも一種の溶剤を含有する、[1]~[5]のいずれか一つに記載のリキッドインキ組成物。
上記[6]に記載のリキッドインキ組成物においては、バインダー樹脂の溶解性が良好である。
【0015】
[7] 硝化綿樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しない、[1]~[6]のいずれか一つに記載のリキッドインキ組成物。
上記[7]に記載のリキッドインキ組成物は、環境及び健康の観点から好ましい。
【0016】
[8] 金属箔用である、[1]~[7]のいずれか一つに記載のリキッドインキ組成物。
上記[1]~[7]のいずれかに記載のリキッドインキ組成物は、金属箔用のリキッドインキ組成物として特に有用である。
【0017】
[9] [1]~[8]のいずれか一つに記載のリキッドインキ組成物を使用したことを特徴とする、印刷物。
上記[9]に記載の本発明の印刷物は、印刷部分の密着性が良好である。
【0018】
[10] 基材層と、脱離性を有するプライマー層と、[1]~[8]のいずれか一つに記載のリキッドインキ組成物からなる層をこの順に具える、[9]に記載の印刷物。
上記[10]に記載の印刷物は、脱離性を有するプライマー層を有することにより、リキッドインキ組成物からなる層(印刷層)の剥離又は基材層の剥離を容易とすることができ、基材層のリサイクル性を向上させることができる。
【0019】
[11] [9]又は[10]に記載の印刷物を具えることを特徴とする、PTP用蓋材。
上記[11]に記載の本発明のPTP用蓋材は、基材に対する印刷層の密着性が良好である。
【0020】
[12] OPニス層と、[1]~[8]のいずれか一つに記載のリキッドインキ組成物からなる層と、硬質アルミ箔と、[1]~[8]のいずれか一つに記載のリキッドインキ組成物からなる層と、ヒートシール層と、をこの順に具える、[11]に記載のPTP用蓋材。
上記[12]に記載のPTP用蓋材においては、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、リキッドインキ組成物からなる層と硬質アルミ箔との間の密着性が良好であり、また、150℃程度の低温で焼き付けを行うことで、硬質アルミ箔の熱による損傷を低減できる。
【0021】
[13] [11]又は[12]に記載のPTP用蓋材を具えることを特徴とする、PTP包材。
上記[12]に記載の本発明のPTP包材は、PTP用蓋材部分の作製において150℃程度の低温で焼き付けが行われていても、印刷層と金属箔との間の密着性に優れ、また、150℃程度の低温で焼き付けが行われていることで、金属箔の耐久性が高い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、金属箔に対する密着性が良好なリキッドインキ組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、かかるリキッドインキ組成物を使用した、基材と印刷層の間の密着性が良好な、印刷物、PTP用蓋材、及びPTP包材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態のPTP用蓋材の一例の断面図である。
図2】本実施形態のPTP包材の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明のリキッドインキ組成物、印刷物、PTP用蓋材、及びPTP包材を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0025】
<定義>
本明細書において、「リキッドインキ組成物」とは、グラビアインキ、フレキソインキ等の、印刷版を使用する印刷方法に適用されるリキッド状の印刷用インキを指し、好ましくはグラビアインキ又はフレキソインキであり、また、単に「インキ組成物」と呼ぶことがある。
また、以下の説明で用いる「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。
また「部」とは全て「質量部」を示し、「インキ全量」とは、溶剤等の揮発性成分を全て含んだインキの全量を示し、「インキ固形分全量」とは、揮発性成分を含まない、不揮発性成分のみの全量を示す。
【0026】
<リキッドインキ組成物>
本実施形態のリキッドインキ組成物は、バインダー樹脂を含有し、該バインダー樹脂は、隣接する層(例えば、金属箔等)への密着性を向上させる作用を有する。そして、本実施形態のリキッドインキ組成物において、前記バインダー樹脂は、最も含有量が多い成分(即ち、バインダー樹脂の主成分)がポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする。
【0027】
従来のPTP用蓋材の印刷層に用いられるリキッドインキ組成物は、バインダー樹脂の主成分が硝化綿樹脂等であり、150℃程度の低温で焼き付けを行うと、金属箔に対する密着性が低かった。そのため、従来のリキッドインキ組成物では、200℃程度の高温で焼き付けを行わざるを得ず、作業効率が低下し、また、金属箔が熱からダメージを受けていた。これに対して、本実施形態のリキッドインキ組成物は、バインダー樹脂の主成分がポリビニルブチラール樹脂であることで、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、金属箔に対する密着性が良好である。そのため、本実施形態のリキッドインキ組成物を用いることで、150℃程度の低温での焼き付けが可能となり、焼き付けの作業効率が向上し、また、金属箔が熱から受けるダメージを低減することができる。
【0028】
(バインダー樹脂)
本実施形態のリキッドインキ組成物のバインダー樹脂は、最も含有量が多い成分がポリビニルブチラール樹脂(「主樹脂」とも呼ぶ。)であり、更に他のバインダー樹脂(「助樹脂」とも呼ぶ。)を含有してもよい。
なお、本明細書において、「バインダー樹脂」とは、結合作用を有する樹脂を指し、樹脂の中でも、後述のワックスは除かれる。
【0029】
-ポリビニルブチラール樹脂-
前記ポリビニルブチラール樹脂は、金属箔に対する密着性を向上させる作用に優れる。また、ポリビニルブチラール樹脂は、構成元素が炭素原子、水素原子、酸素原子のみであるため、環境に対しても優しい。
【0030】
前記ポリビニルブチラール樹脂としては、特に限定なく公知のものを使用することができる。該ポリビニルブチラール樹脂として、一般的には、ポリビニルアルコールにブチルアルデヒドを公知の反応によりアセタール化することにより得られた反応物を使用することができる。
【0031】
前記ポリビニルブチラール樹脂は、重量平均分子量が5,000~150,000であることが好ましく、5,000~60,000であることが更に好ましい。重量平均分子量が5,000~150,000であるポリビニルブチラール樹脂は、入手し易く、また、かかるポリビニルブチラール樹脂を使用することで、流動性と分散性のバランスに優れたインキを得ることができる。
【0032】
前記ポリビニルブチラール樹脂のガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、50℃~120℃の範囲であることが好ましく、55℃~115℃の範囲が更に好ましく、60~110℃の範囲がより一層好ましい。なお、本明細書において、ガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0033】
前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量は、10質量%~40質量%の範囲にあることが好ましく、15質量%~30質量%であることがより好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキを得ることができる。
【0034】
前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル基量は、8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。ポリビニルブチラール樹脂のアセチル基量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキを得ることができる。
【0035】
前記バインダー樹脂の総量中の前記ポリビニルブチラール樹脂の割合は、50質量%より多いことが好ましい。ここで、該割合は、固形分での割合を指す。バインダー樹脂の総量中の前記ポリビニルブチラール樹脂の割合が50質量%より多いと、リキッドインキ組成物の金属箔に対する密着性が更に向上する。また、バインダー樹脂の総量中の前記ポリビニルブチラール樹脂の割合は、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより一層好ましく、80質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい(即ち、バインダー樹脂の全てがポリビニルブチラール樹脂であってもよい)。
【0036】
-他のバインダー樹脂-
前記ポリビニルブチラール樹脂(主樹脂)以外のバインダー樹脂(助樹脂)としては、ケトン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等が挙げられ、更には、ポリアミド樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂等を挙げることもできる。これらの中でも、他のバインダー樹脂(助樹脂)としては、ケトン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びセルロース樹脂(但し、硝化綿樹脂を除く。)が好ましい。
【0037】
前記他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量は、バインダー樹脂の総量中、0.1~49質量%の範囲が好ましい。他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量が、バインダー樹脂の総量中、0.1質量%以上であると、インキの物性が向上し、印刷適性が向上する。また、他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量が、バインダー樹脂の総量中、49質量%以下であると、ポリビニルブチラール樹脂(主樹脂)の割合を増やすことができ、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、金属箔に対する密着性を向上させ易い。また、他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量の上限については、バインダー樹脂の総量中、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より一層好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0038】
なお、本実施形態のリキッドインキ組成物は、バインダー樹脂として、硝化綿樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しないことが好ましい。硝化綿樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しないリキッドインキ組成物は、環境及び健康の観点から好ましい。
医薬品のPTP包材用インキとして、硝化綿樹脂を使用した製品において、発がん性のNDMA(N-ニトロソジメチルアミン)が検出されており、該NDMAの発生原因として、インキ原料の硝化綿が疑われているが、リキッドインキ組成物が、バインダー樹脂として、硝化綿樹脂を含有しないことで、かかる懸念を解消できる。
また、海外(EU等の一部地域)では、塩素系樹脂(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等)の使用が制限されており、リキッドインキ組成物が、バインダー樹脂として、塩素系樹脂を含有しないことで、全世界への輸出が可能となる。
また、リキッドインキ組成物中の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の含有量をより少なく乃至含有しない構成とすることにより、当該インキを用いた軟包装材のリサイクル性を向上させることができる。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂のような塩化ビニル系の樹脂を含有する場合、リサイクル設備を腐食させる弊害が生じるが、塩化ビニル系のモノマーの含有量をより少なくすることにより、リサイクル設備の腐食を防止できるためである。
【0039】
--ケトン系樹脂--
前記ケトン系樹脂としては、公知のものを挙げることができ、例えば、ホルムアルデヒド樹脂、シクロヘキサノン・ホルムアルデヒド樹脂、ケトンアルデヒド縮合樹脂等を好適に用いることができる。
【0040】
--ロジン系樹脂--
前記ロジン系樹脂は、ロジン骨格を有する樹脂であれば特に限定されないが、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル、ロジンフェノール、重合ロジン等が好ましい。また、ロジン系樹脂は、軟化点(環球法による)が90~200℃であることが好ましい。
【0041】
--ポリウレタン樹脂--
前記ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得たポリウレタン樹脂であれば特に限定されない。
【0042】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種又は2種以上を併用してもよい。該ポリオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール等の飽和又は不飽和の低分子ポリオール類(1);これらの低分子ポリオール類(1)と、セバシン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、或いはこれらの無水物と、を脱水縮合又は重合させて得られるポリエステルポリオール類(2);環状エステル化合物、例えば、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール類(3);前記低分子ポリオール類(1)等と、例えば、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等と、の反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(4);ポリブタジエングリコール類(5);ビスフェノールAに酸化エチレン又は酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(6);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えば、アクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルと、を共重合することによって得られるアクリルポリオール(7)等が挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリエーテルポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど公知汎用のものでよい。
本発明のポリウレタン樹脂は、ポリオールとしては、ポリエステルポリオールを用いることが好ましく、ポリエステルポリオール類(2)及びポリエーテルポリオールを用いることがより好ましい。
【0043】
前記ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。該ポリイソシアネートとして、具体的には、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート等を用いることができる。これらのポリイソシアネートは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
また、前記ポリウレタン樹脂には、鎖伸長剤を使用することもできる。鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等、分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
また、前記ポリウレタン樹脂には、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類や、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
前記ポリウレタン樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000であることが好ましく、15,000~80,000の範囲がより好ましい。
尚、本発明において、数平均及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0047】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0048】
〔標準ポリスチレン〕
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0049】
--アクリル樹脂--
前記アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性モノマーが共重合したものであれば特に限定されない。重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートと、メタクリレートとの両方を指す。重合法も、特に限定はなく、公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合法等で得たものを使用することができる。
【0050】
前記アクリル樹脂は、重量平均分子量が5,000~200,000であることが好ましく、10,000~100,000の範囲がより好ましい。
【0051】
--セルロース樹脂--
前記セルロース樹脂(繊維素系樹脂)としては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロースエステル樹脂、硝化綿樹脂(「ニトロセルロース」とも呼ぶ。)、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等が挙げられるが、環境及び健康の観点から、硝化綿樹脂以外のものが好ましい。前記セルロースエステル樹脂は、アルキル基を有することが好ましく、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。前記セルロース樹脂としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
【0052】
前記セルロース樹脂は、重量平均分子量が5,000~200,000であることが好ましく、10,000~50,000であることが更に好ましい。また、前記セルロース樹脂は、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。セルロース樹脂を使用することで、耐ブロッキング性、耐擦傷性、その他のインキ被膜物性が向上することが期待できる。
【0053】
--ポリエステル樹脂--
前記ポリエステル樹脂としては、アルコールとカルボン酸とを公知のエステル化重合反応を用いて反応させてなるポリエステル樹脂であれば特に限定されない。
【0054】
前記アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビド等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、多官能アルコールが好ましい。
【0055】
前記カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、リノール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能カルボン酸が好ましい。
【0056】
前記ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が500~6,000であることが好ましく、1,400~5,500であることが更に好ましい。
【0057】
--塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂--
前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであれば、特に限定されない。分子量としては、重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000のものが更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中、酢酸ビニルモノマー由来の構造は1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は70~95質量%であることが好ましい。この場合、有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、耐擦傷性等が良好となる。また、有機溶剤への溶解性の観点から、ビニルアルコール構造由来の水酸基を含むものも好ましい。水酸基価としては、20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は、50℃~90℃であることが好ましい。
【0058】
(着色剤)
本実施形態のリキッドインキ組成物は、着色剤を含有することが好ましい。該着色剤としては、着色顔料、白色顔料いずれの顔料でもよい。
前記着色剤としては、顔料が好ましく、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている有機顔料、無機顔料を挙げることができる。
【0059】
前記有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系等の顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また、未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。以下に有機顔料として好ましいものの具体的な例を挙げる。
【0060】
黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック9、C.I.ピグメントブラック20等が挙げられる。
【0061】
藍色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー24:1、C.I.ピグメントブルー25、C.I.ピグメントブルー26、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー61、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー64、C.I.ピグメントブルー75、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントブルー80等が挙げられる。
【0062】
緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン36等が挙げられる。
【0063】
赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド20、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド43、C.I.ピグメントレッド46、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド48:5、C.I.ピグメントレッド48:6、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド49:3、C.I.ピグメントレッド52、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド53:2、C.I.ピグメントレッド53:3、C.I.ピグメントレッド54、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58、C.I.ピグメントレッド58:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:3、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド63:3、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド89、C.I.ピグメントレッド95、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド119、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド136、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド164、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド181、C.I.ピグメントレッド182、C.I.ピグメントレッド183、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド210、C.I.ピグメントレッド211、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド237、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド239、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド247、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド251、C.I.ピグメントレッド253、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド257、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド263、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド266、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド271、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド279等が挙げられる。
【0064】
紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット2、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット3:1、C.I.ピグメントバイオレット3:3、C.I.ピグメントバイオレット5:1、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット19(γ型、β型)、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット25、C.I.ピグメントバイオレット27、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット31、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントバイオレット50、等が挙げられる。
【0065】
黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメント、イエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185およびC.I.ピグメントイエロー213等が挙げられる。
【0066】
橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ37、C.I.ピグメントオオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、又はC.I.ピグメントオレンジ74等が挙げられる。
【0067】
茶色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、又はC.I.ピグメントブラウン26等が挙げられる。
【0068】
中でも、好ましい顔料として、黒色顔料としてC.I.ピグメントブラック7、藍色顔料としてC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン7、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、黄色顔料としてC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、橙色顔料としてC.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも一種又は二種以上を使用することが好ましい。
【0069】
前記無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では、酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは、白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンは、シリカ及び/又はアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0070】
白色以外の無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコン等が挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは、輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
【0071】
前記着色剤は、リキッドインキ組成物の濃度・着色力を確保するのに充分な量、即ち、インキ総質量に対して1~60質量%、インキ中の固形分全量に対して10~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は、1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0072】
(ワックス)
本実施形態のリキッドインキ組成物は、ワックスを含有することが好ましい。ワックスを含有するリキッドインキ組成物は、巻取りの際のブロッキングを防止でき、加工し易い。
【0073】
前記ワックスとしては、リキッドインキ分野で公知のポリオレフィンワックスや、脂肪酸アマイド系ワックスを使用することが好ましい。前記ポリオレフィンワックスとしては、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等が挙げられる。前記脂肪酸アマイド系ワックスとしては、飽和脂肪酸アマイドであるステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、不飽和脂肪酸アマイドであるエルカ酸アミド、置換アマイド、芳香族アマイド等が挙げられる。
【0074】
前記ワックスの含有量としては、特に限定はなく、公知の範囲でよいが、通常は、リキッドインキ組成物の全固形分に対し0.1~20質量%の範囲が好ましい。
【0075】
(溶剤)
本実施形態のリキッドインキ組成物は、溶剤(好ましくは、有機溶剤)を含有することでき、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、及びアルコール系溶剤からなる群から選択される少なくとも一種の溶剤を含有することが好ましい。芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、及びアルコール系溶剤は、上述したポリビニルブチラール樹脂(主樹脂)や、他のバインダー樹脂(助樹脂)の溶解性が良好である。リキッドインキ組成物中の溶剤の含有量は、10~90質量%の範囲が好ましい。
【0076】
前記芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等が挙げられる。前記ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。前記エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。前記アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イノプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらを1種単独又は2種以上の混合物で用いることができる。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤やケトン系溶剤を用いないことがより好ましい。
【0077】
本実施形態のリキッドインキ組成物には、揮発性成分として有機溶剤と共に、水を含有させてもよい。水の含有量はインキ組成物全量の10質量%未満であることが好ましい。水の添加により、インキの乾燥性を制御することができ、特にグラビア印刷では、その特徴であるインキ転移量の少ないグラデーション部をきれいに再現することができる。更に、インキ組成物全量の1~5質量%の範囲であることが、印刷適性が良好となることから、特に好ましい。また、このような水の添加により、使用する有機溶剤成分を低減することも可能である。水は、有機溶剤に予め添加して含水の有機溶媒としてもよいし、別途特定量の水を添加してもよい。
【0078】
(その他)
本実施形態のリキッドインキ組成物は、更に必要に応じて、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等を含むこともできる。
【0079】
前記顔料を溶剤に安定に分散させるには、前記バインダー樹脂単独でも分散可能であるが、更に顔料を安定に分散させるため、分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性等の界面活性剤を使用することができる。例えば、ポリエチレンイミンにポリエステル付加させた櫛型構造高分子化合物、或いはα-オレフィンマレイン酸重合物のアルキルアミン誘導体等が挙げられる。具体的には、ソルスパーズシリーズ(ZENECA)、アジスパーシリーズ(味の素)、ホモゲノールシリーズ(花王)等を挙げることができる。また、BYKシリーズ(ビックケミー)、EFKAシリーズ(EFKA)等も適宜使用できる。分散剤は、インキ組成物の保存安定性の観点からインキ組成物の総質量に対して0.05質量%以上、ラミネート適性の観点から5質量%以下でインキ組成物中に含まれることが好ましく、更に好ましくは、0.1~2質量%の範囲である。
【0080】
本実施形態のリキッドインキ組成物は、インキ全量中の、ポリビニルブチラール樹脂(主樹脂)の含有量が5~30質量%であることが好ましく、他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量が0~10質量%であることが好ましく、着色剤の含有量が0~45質量%であることが好ましく、溶剤の含有量が10~90質量%であることが好ましく、他の添加剤(ワックス等)の含有量が0~10質量%であることが好ましい。
【0081】
(製法)
本実施形態のリキッドインキ組成物は、バインダー樹脂、着色剤等を溶剤中に溶解及び/又は分散させることにより製造することができる。例えば、顔料(着色剤)をバインダー樹脂により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物等を配合することによりインキ組成物を製造することができる。
【0082】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル等を用いることができる。
インキ組成物中に気泡や予期せずに粗大粒子等が含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過等により取り除くことが好ましい。濾過器としては、従来公知のものを使用することができる。
【0083】
前記方法で製造されたインキ組成物の粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。なお、前記粘度は、トキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキ組成物の粘度は、使用される原材料の種類や量、例えば、バインダー樹脂、着色剤、溶剤等を適宜選択することにより調整することができる。また、インキ組成物中の顔料の粒度及び粒度分布を調節することによりインキ組成物の粘度を調整することもできる。
【0084】
(硬化剤)
本実施形態のリキッドインキ組成物には、硬化剤を使用してもよい。
なお、本実施形態のリキッドインキ組成物は、1液であっても、印刷に適用でき、印刷における作業性に優れる。即ち、本実施形態のリキッドインキ組成物は、硬化剤を使用しない1液タイプ、硬化剤を使用する2液タイプのいずれにおいても、インキの分散性、流動性等に優れる。
【0085】
前記硬化剤としては、有機溶剤系のグラビアインキで汎用の硬化剤が挙げられ、例えば、イソシアネート系の硬化剤が挙げられる。
【0086】
本実施形態のリキッドインキ組成物には、硬化剤として、メラミン樹脂を使用しないことが好ましい。リキッドインキ組成物に、硬化剤として、メラミン樹脂を使用しないことで、ホルムアルデヒドの発生を抑制することができる。
【0087】
前記硬化剤の添加量としては、硬化効率の観点からリキッドインキ組成物の全固形分に対し0.3質量%~10.0質量%の範囲が好ましく、1.0質量%~7.0質量%の範囲がより好ましい。
【0088】
(用途)
本実施形態のリキッドインキ組成物は、種々の対象への印刷に適用できるが、金属箔用のリキッドインキ組成物として特に有用である。上述の通り、本実施形態のリキッドインキ組成物は、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、金属箔に対する密着性が高いため、金属箔用として特に有用である。
【0089】
<印刷物>
本実施形態の印刷物は、上述の、本実施形態のリキッドインキ組成物を使用したことを特徴とする。本実施形態の印刷物は、本実施形態のリキッドインキ組成物が用いられているため、印刷部分の密着性が良好である。
【0090】
前記印刷物としては、基材の上に、前記リキッドインキ組成物からなる層(印刷層)を設けたもの等が挙げられる。ここで、基材としては、用途に応じて適宜選択でき、金属箔、樹脂フィルム、紙等が挙げられるが、金属箔が好ましい。該金属箔としては、アルミニウム箔等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、A-PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、BOPP(2軸延伸ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、Ny(ナイロン)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)等を原料とするものが挙げられる。これらのフィルムは、アルミなどの金属蒸着層、シリカやアルミナ、これらの二元蒸着等の金属酸化物の蒸着層を有するものであってもよい。また、紙としては、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるものが挙げられる。該製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。より具体的には各種印刷用紙、グラビア用紙、クラフト紙、ケント紙、コピー紙、更紙、新聞紙等の非塗工紙;微塗工紙;アート紙、片アート紙、コート紙、片コート紙、軽量コート紙等の塗工紙;上質紙;重量用、一般用、特殊用の両更クラフト紙;筋入りクラフト紙、片艶クラフト紙等の未ざらし包装紙;純白ロール紙;両更さらしクラフト紙、片艶さらしクラフト紙等のさらしクラフト紙;その他さらし包装紙;パラフィン紙等の樹脂含侵紙、ボール紙や板紙、これら紙にアルミニウム等の金属を蒸着した蒸着紙、これら紙とアルミニウム箔等の金属箔を貼り合わせた貼合紙等が挙げられる。
【0091】
前記基材上への印刷層の形成は、グラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、孔版インキ、インクジェットインク等各種印刷インキにより、従来、基材への印刷に用いられてきた一般的な印刷方法で実施できる。印刷層は、基材の一方の面に設けられていてもよいし、両方の面に設けられていてもよい。
【0092】
印刷層は、単層であってもよいし、複数の印刷層があってもよい。印刷層が複数ある場合は、各印刷層に使用するインキ組成物は同一のものであっても良いし、同一の組成で顔料のみが違うものであっても良いし、異なる組成であっても良い。
【0093】
当該印刷層が複数ある場合としては、例えば、白色インキにより形成された第一の印刷層と、着色されたカラーのインキ組成物より形成された第二の印刷層とをこの順に有する印刷物とすることができる。また、着色されたカラーのインキ組成物より形成された第一の印刷層と、白色インキにより形成された第二の白印刷層、及び第三の白印刷層とをこの順に有する印刷物とする等、任意に構成できる。第二又は第三の印刷層をオーバープリントニスとする場合は、顔料等の着色剤を含まなくてもよい。
【0094】
ベースインキは、グラビア印刷、又はフレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、印刷に供される。
【0095】
(ラミネート積層体)
本開示は、基材と、当該基材面上の少なくとも一部に軟包装用ラミネート用インキ組成物を印刷した印刷層とを有するラミネート積層体としてもよい。なお、前記基材面上の印刷層は、基材の表面と印刷層とが直接又は間接的に当接していればよい。
【0096】
本実施形態の好ましいラミネート積層体の構成としては、例えば、以下の(1)~(5)が挙げられる。
(1)基材/接着層/印刷層/基材
(2)基材/接着層/基材/印刷層/接着層/基材
(3)基材/接着層/第一の印刷層/第二の印刷層/基材
(4)基材/接着層/バリア層/印刷層/接着層/基材
(5)基材/印刷層/接着層/基材
【0097】
しかし、本実施形態のラミネート積層体は、上記(1)~(5)に限定されず、さらに追加の基材を含んでいてもよい。基材を複数含む場合は、基材は同じものであってもよいし、違うものであってもよい。また、基材はシール可能なシーラントフィルムや、ヒートシール剤等によるシーラント層を含む多層フィルム等の基材であってもよく、シール可能な層をシーラント層と呼称する。
【0098】
また、複数の接着層は同じ組成であってもよいし、あるいは異なる組成であってもよい。さらに、接着層の接着強度を向上するため、アンカーコート層を間に挟んでもよい。
【0099】
また、上記構成(1)~(5)においては、基材と基材との間の層は接着層を介して積層された積層体とする構成を例示した。しかし、本開示の別の態様としては、接着層を設けずに溶融した樹脂を押出すことによる押出しラミネート構成としてもよい。押出しラミネーションの場合、押出し樹脂はポリエチレン又はポリプロピレンを用いることが好ましい。その場合、印刷層の上にイミン系、ブタジエン系、イソシアネート系のアンカーコート層を設けて該アンカーコート層の上に樹脂を溶融押出ししてもよい。
【0100】
また、本開示の積層体は、印刷層または接着剤層と接触する層として脱離可能なプライマー層を有する構成としてもよい。即ち、本実施形態の印刷物は、基材層と、脱離性を有するプライマー層と、上述の本実施形態のリキッドインキ組成物からなる層(印刷層)をこの順に具える構成としてもよい。脱離可能なプライマー層を有することにより、印刷層の剥離又は複数のフィルムの剥離を容易とすることができ、フィルムのリサイクル性を向上させることができ、また、再生プラスチックの品質を向上させることができる。
【0101】
プライマー層は、例えばアルカリ溶液での処理により基材から脱離可能な皮膜とすることが好ましい。アルカリ溶液での処理により基材から脱離可能な層は公知のものを用いることができ、例えば、アルカリ溶液中で加水分解等により溶解したり、もしくは膨潤したりして、基材から脱離するものである。アルカリ溶液での処理により基材から脱離可能な皮膜が形成できれば、ブライマー層を形成するプライマー層形成用組成物の種類としては、特に制限はないが、例えば、ウレタン樹脂やポリビニルアルコールを含有する組成物が好ましく、あるいは酸性基を有する樹脂を含有する組成物も好ましい。
【0102】
ここで、酸性基を有する樹脂としては、例えば、酸価を有するポリウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂やロジン変性フマル酸樹脂等の酸価を有する樹脂や;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸あるいはこれらの酸無水物等のカルボキシル基を有する重合性モノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性モノマー、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性モノマー等の、酸性基を有する重合性モノマーを共重合させた、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(無水)マレイン酸樹脂、テルペン-(無水)マレイン酸樹脂等のラジカル共重合体である樹脂や;酸変性されたポリオレフィン樹脂等が挙げられ、これを単数あるいは複数混合して使用することができる。
【0103】
プライマー層形成用組成物には、上述した樹脂の他、有機溶剤や水性溶剤等の溶剤や添加剤等が含有されてもよい。添加剤としては、例えば、上述のインキ層形成用組成物に添加可能な助剤や酸性添加物と同様のものを挙げることができる。
【0104】
<PTP用蓋材>
本実施形態のPTP用蓋材は、上述の、本実施形態の印刷物を具えることを特徴とする。本実施形態のPTP用蓋材は、基材に対する印刷層の密着性が良好である。
【0105】
本実施形態のPTP用蓋材は、OPニス層と、前記リキッドインキ組成物からなる層と、金属箔と、前記リキッドインキ組成物からなる層と、ヒートシール層と、をこの順に具えることが好ましい。ここで、リキッドインキ組成物からなる層(印刷層)及び金属箔(基材)が、上述の印刷物に相当する。かかる構成のPTP用蓋材においては、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、リキッドインキ組成物からなる層と金属箔との間の密着性が良好であり、また、150℃程度の低温で焼き付けを行うことで、金属箔の熱による損傷を低減できる。
【0106】
一好適態様として、本実施形態のPTP用蓋材は、OPニス層と、前記リキッドインキ組成物からなる層と、硬質アルミ箔と、前記リキッドインキ組成物からなる層と、ヒートシール層と、をこの順に具えることが好ましい。かかる構成のPTP用蓋材においては、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、リキッドインキ組成物からなる層と硬質アルミ箔との間の密着性が良好であり、また、150℃程度の低温で焼き付けを行うことで、硬質アルミ箔の熱による損傷を低減できる。
【0107】
次に、本実施形態のPTP用蓋材を、図面を参照しながら、更に詳細に説明する。
図1は、本実施形態のPTP用蓋材の一例の断面図である。図1に示すPTP用蓋材10は、金属箔1と、該金属箔1の両面上に設けられたリキッドインキ組成物からなる層(印刷層)2,3と、一方のリキッドインキ組成物からなる層(印刷層)2の金属箔1と接しない側上に設けられたOPニス層4と、もう一方のリキッドインキ組成物からなる層(印刷層)3の金属箔1と接しない側上に設けられたヒートシール層5と、を具える。換言すると、図1に示すPTP用蓋材10は、OPニス層4と、一方のリキッドインキ組成物からなる層2と、金属箔1と、もう一方のリキッドインキ組成物からなる層3と、ヒートシール層5と、をこの順に具えている。
【0108】
(金属箔)
前記金属箔1としては、種々の金属からなる箔を利用でき、中でも、硬質アルミ箔が好ましい。
ここで、硬質アルミ箔(「硬質アルミニウム箔」とも呼ぶ。)とは、原料のアルミニウムを、例えば、ロール等により200μm~5μm程度まで圧延して薄く伸ばした箔であり、原料のアルミニウムを圧延して薄く伸ばした後、400℃前後で熱を加えて柔らかくした軟質アルミ箔とは、区別される。
【0109】
前記金属箔1の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、5μm~100μmが好ましく、5μm~50μmがより好ましい。
【0110】
(リキッドインキ組成物からなる層(印刷層))
前記リキッドインキ組成物からなる層(印刷層)2,3には、上述の本実施形態のリキッドインキ組成物を適用することができる。
【0111】
前記PTP用蓋材は、バーコードを印刷する等のために、金属箔の上にベタ印刷層を設け、更にその上に文字印刷層を設けることが好ましい。特に、医薬品用のPTP用蓋材には、誤認防止の観点から、バーコードを印刷する必要がある場合が有り、金属箔上にバーコード(文字印刷層)を直接印刷して形成しても、読み取りが困難な場合がある。これに対して、金属箔の上に一旦ベタ印刷によりベタ印刷層を設け、更にその上にバーコード(文字印刷層)を印刷して形成することで、バーコードを読み取り易くすることができる。
ここで、ベタ印刷層及び文字印刷層には、上述のリキッドインキ組成物を使用することができる。ベタ印刷層は、一色で全面印刷を行って形成した層であり、文字印刷層を鮮明にする観点から、白等の淡色が好ましい。また、ベタ印刷層には、上述のリキッドインキ組成物において、着色剤として白色顔料等の淡色の顔料を配合したものを使用できる。ベタ印刷層は、リキッドインキ組成物をベタ印刷して形成することができる。
なお、文字印刷層は、通常は、文字を印刷して形成される層であるが、印刷の目的に応じて、文字の代わりに、バーコード、模様、絵等を印刷した層も、本明細書では、文字印刷層に含めるものとする。
【0112】
前記リキッドインキ組成物からなる層(印刷層)2,3の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm~5μmが好ましく、0.1μm~3μmがより好ましい。
【0113】
前記金属箔等の基材への塗工法としては、例えば、バーコーター、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法が挙げられる。基材へのリキッドインキ組成物の塗膜量としては、0.5~5g/m2が好ましく、乾燥条件は120~200℃で5~100秒の範囲が好ましい。
【0114】
(OPニス層)
前記OPニス層(「オーバープリントニス層」、「オーバーコート層」、「トップコート層」とも呼ばれる。)4には、ポリビニルブチラール樹脂;エポキシ樹脂とアミノ樹脂のブレンド;硝化綿樹脂、酢酸セルロース、セルロースプロピオネート、セルロースブチラート等のセルロース樹脂;フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(以後EOと称する場合がある)付加物等のベンゼン環、及び/又はシクロペンタンジオール、ジメチロールトリシクロデカン等の脂環式骨格を有したポリエステル樹脂;ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシネート等の脂環式イソシアネート、及び/又はイソシアヌルトリイソシアネートと、ポリオール、及び/又はトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを結合したウレタン樹脂等を使用することができる。また、前述のイソシアネートを使用したポリイソシアネートを硬化剤に使用しても良い。また、スチレン、フェノキシジエチレングリコールアクリレート等のベンゼン環と不飽和二重結合を有する化合物、及び/又はイソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等の脂環式構造と不飽和二重結合を有する化合物、及び(メタ)アクリレート等のラジカル共重合体も好ましく使用できる。
【0115】
前記OPニス層は、着色していてもよいし、着色していなくてもよい。OPニス層を着色する場合、前記樹脂に着色剤を添加すればよく、該着色剤としては、上述のリキッドインキ組成物の項で述べた着色剤を使用することができる。
【0116】
前記OPニス層4の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1μm~10μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましい。
【0117】
(ヒートシール層)
前記ヒートシール層5は、ヒートシール性を付与する公知の熱可塑性樹脂を主たる樹脂成分として含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有することができる。
【0118】
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて公知の熱可塑性樹脂を適宜選択することができ、例えば、α-オレフィン樹脂、スチレン樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、アクリル/オレフィン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硝化綿樹脂、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリアミド樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、良好なヒートシール性を付与できる点から、α-オレフィン樹脂が好ましい。
【0119】
前記α-オレフィン樹脂としては、例えば、α-オレフィン単量体の単重合体(ポリエチレン単重合体、ポリプロピレン単重合体等);α-オレフィン単量体を主成分とした共重合体(プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体等)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0120】
前記ヒートシール層の厚み比率としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、PTP用蓋材の総厚みに対して、20%~60%が好ましく、30%~60%がより好ましい。
前記ヒートシール層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1μm~10μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましい。
【0121】
前記ヒートシール層は、基材上に、直接又は任意の層(例えば、印刷層)を介して配置される。前記ヒートシール層の形成方法としては、前記樹脂等を溶媒に分散又は溶解させたヒートシール剤を塗工して設けることができる。このようなヒートシール剤としては、市販品のホットメルトシール剤を使用することもできる。ヒートシール剤は、PTP用蓋材の最外面の所望の面に全面又は部分的に塗工することができる。
【0122】
前記ヒートシール剤としては、特に限定されず、上述のヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解したタイプ、水又は水性の有機溶剤に溶解したタイプ、水又は水性の有機溶剤中に分散させたエマルジョンタイプ等、いずれの形態のものであってもよい。
【0123】
有機溶剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤;等が挙げられる。また、水性の有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系;アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系;エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル;等が挙げられる。
【0124】
前記ヒートシール剤は、他の成分を更に含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、ワックス、フィラー等の滑剤、消泡剤、可塑剤、レベリング剤、乳化剤、分散安定剤、界面活性剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤、酸化防止剤、架橋剤、硬化剤、硬化触媒、光安定剤、紫外線吸収剤、光触媒性化合物、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、帯電防止剤等が挙げられる。
【0125】
(アンカーコート層)
前記PTP用蓋材は、前記リキッドインキ組成物からなる層と、前記ヒートシール層との間に、アンカーコート層を更に具えてもよい。
特に、医薬品用のPTP用蓋材の場合、ヒートシール層は、内容部の医薬品に直接接触するため、着色剤を含まないことが好ましい。そのため、リキッドインキ組成物からなる層(例えば、上述の文字印刷層)の上に着色した層を設けたい場合は、ヒートシール層との間に、アンカーコート層を設け、該アンカーコート層を着色することが好ましい。
前記アンカーコート層には、上述のヒートシール層と同様の樹脂を使用でき、また、着色剤を添加することが好ましい。アンカーコート層に用いる着色剤としては、上述のリキッドインキ組成物の項で述べた着色剤を使用することができる。また、前記アンカーコート層は、例えば、原料の塗布液をベタ塗りして形成することができる。
前記アンカーコート層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1μm~10μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましい。
【0126】
(PTP用蓋材の好適実施形態)
前記PTP用蓋材の好適実施形態としては、以下の構成のものが挙げられる。なお、以下の表記においては、各層を積層順に記載している。また、OPニス層については、着色の有る場合と、着色の無い場合を区分けするために、「OPニス層(着色無し)」、「OPニス層(着色有り)」とそれぞれ表記する。
【0127】
第1実施形態: OPニス層(着色無し)/文字印刷層/硬質アルミ箔/文字印刷層/ヒートシール層(着色無し)
第2実施形態: OPニス層(着色無し)/文字印刷層/ベタ印刷層/硬質アルミ箔/文字印刷層/ヒートシール層(着色無し)
第3実施形態: OPニス層(着色無し)/文字印刷層/ベタ印刷層/硬質アルミ箔/ベタ印刷層/文字印刷層/ヒートシール層(着色無し)
第4実施形態: OPニス層(着色無し)/文字印刷層/硬質アルミ箔/ベタ印刷層/文字印刷層/ヒートシール層(着色無し)
【0128】
上記の第1~第4の実施例形態のPTP用蓋材は、OPニス層及びヒートシール層のいずれも着色されておらず、文字印刷層をそのまま視認できる。
第2実施形態では、OPニス層側の文字印刷層をより視認し易くするために、OPニス層側の文字印刷層と硬質アルミ箔との間にベタ印刷層が設けられている。
第4実施形態では、ヒートシール層側の文字印刷層をより視認し易くするために、ヒートシール層側の文字印刷層と硬質アルミ箔との間にベタ印刷層が設けられている。
また、第3実施形態では、OPニス層側及びヒートシール層側の両方の文字印刷層をより視認し易くするために、硬質アルミ箔の両面にベタ印刷層が設けられている。
【0129】
第5実施形態: OPニス層(着色有り)/文字印刷層/硬質アルミ箔/文字印刷層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第6実施形態: OPニス層(着色有り)/文字印刷層/ベタ印刷層/硬質アルミ箔/文字印刷層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第7実施形態: OPニス層(着色有り)/文字印刷層/ベタ印刷層/硬質アルミ箔/ベタ印刷層/文字印刷層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第8実施形態: OPニス層(着色有り)/文字印刷層/硬質アルミ箔/ベタ印刷層/文字印刷層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
【0130】
上記の第5~第8の実施例形態のPTP用蓋材は、OPニス層が着色されている一方、ヒートシール層は着色されていない。また、内容物側の文字印刷層の上に着色した層を設けるため、着色されているアンカーコート層を文字印刷層とヒートシール層との間に設けている。
第6実施形態では、OPニス層側の文字印刷層をより視認し易くするために、OPニス層側の文字印刷層と硬質アルミ箔との間にベタ印刷層が設けられている。
第8実施形態では、ヒートシール層側の文字印刷層をより視認し易くするために、ヒートシール層側の文字印刷層と硬質アルミ箔との間にベタ印刷層が設けられている。
また、第7実施形態では、OPニス層側及びヒートシール層側の両方の文字印刷層をより視認し易くするために、硬質アルミ箔の両面にベタ印刷層が設けられている。
【0131】
第9実施形態: OPニス層(着色無し)/文字印刷層/硬質アルミ箔/文字印刷層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第10実施形態: OPニス層(着色無し)/文字印刷層/ベタ印刷層/硬質アルミ箔/文字印刷層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第11実施形態: OPニス層(着色無し)/文字印刷層/ベタ印刷層/硬質アルミ箔/ベタ印刷層/文字印刷層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第12実施形態: OPニス層(着色無し)/文字印刷層/硬質アルミ箔/ベタ印刷層/文字印刷層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
【0132】
上記の第9~第12の実施例形態のPTP用蓋材は、OPニス層及びヒートシール層のいずれも着色されていない。但し、内容物側の文字印刷層の上に着色した層を設けるため、着色されているアンカーコート層を文字印刷層とヒートシール層との間に設けている。
第10実施形態では、OPニス層側の文字印刷層をより視認し易くするために、OPニス層側の文字印刷層と硬質アルミ箔との間にベタ印刷層が設けられている。
第12実施形態では、ヒートシール層側の文字印刷層をより視認し易くするために、ヒートシール層側の文字印刷層と硬質アルミ箔との間にベタ印刷層が設けられている。
また、第11実施形態では、OPニス層側及びヒートシール層側の両方の文字印刷層をより視認し易くするために、硬質アルミ箔の両面にベタ印刷層が設けられている。
【0133】
第13実施形態: OPニス層(着色有り)/文字印刷層/硬質アルミ箔/文字印刷層/ヒートシール層(着色無し)
第14実施形態: OPニス層(着色有り)/文字印刷層/ベタ印刷層/硬質アルミ箔/文字印刷層/ヒートシール層(着色無し)
第15実施形態: OPニス層(着色有り)/文字印刷層/ベタ印刷層/硬質アルミ箔/ベタ印刷層/文字印刷層/ヒートシール層(着色無し)
第16実施形態: OPニス層(着色有り)/文字印刷層/硬質アルミ箔/ベタ印刷層/文字印刷層/ヒートシール層(着色無し)
【0134】
上記の第13~第16の実施例形態のPTP用蓋材は、OPニス層が着色されている一方、ヒートシール層は着色されていない。但し、内容物側の文字印刷層の上に着色した層を設けるため、着色されているアンカーコート層を文字印刷層とヒートシール層との間に設けている。
第14実施形態では、OPニス層側の文字印刷層をより視認し易くするために、OPニス層側の文字印刷層と硬質アルミ箔との間にベタ印刷層が設けられている。
第16実施形態では、ヒートシール層側の文字印刷層をより視認し易くするために、ヒートシール層側の文字印刷層と硬質アルミ箔との間にベタ印刷層が設けられている。
また、第15実施形態では、OPニス層側及びヒートシール層側の両方の文字印刷層をより視認し易くするために、硬質アルミ箔の両面にベタ印刷層が設けられている。
【0135】
第1~第16の実施形態において、文字印刷層、ベタ印刷層の少なくとも一つの層として本実施形態のリキッドインキ組成物を用いることができる。OPニス層としては、例えばエポキシ/メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、ニトロセルロース系樹脂を用いることができる。ヒートシール層及びアンカーコート層としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を用いることができる。
なお、これらの実施形態は、本発明のPTP用蓋材の好適例の一部であり、本発明のPTP用蓋材には、種々の構成を採用することができる。
【0136】
上述した、本実施形態のPTP用蓋材は、構成部分のいずれも、硝化綿樹脂及び塩素系樹脂を含まないことが好ましい。硝化綿樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しないPTP用蓋材は、環境及び健康の観点から好ましい。より具体的には、PTP用蓋材が、硝化綿樹脂を含有しないことで、NDMA(N-ニトロソジメチルアミン)の発生の懸念を解消できる。また、PTP用蓋材が、塩素系樹脂を含有しないことで、全世界への輸出が可能となる。
【0137】
また、本実施形態のPTP用蓋材は、構成部分のいずれも、メラミン樹脂を含まないことが好ましい。PTP用蓋材が、メラミン樹脂を含有しないことで、ホルムアルデヒドの発生を抑制することができる。
【0138】
<PTP包材>
本実施形態のPTP包材は、上述の、本実施形態のPTP用蓋材を具えることを特徴とする。本実施形態のPTP包材は、150℃程度の低温で焼き付けが行われていても、印刷層と金属箔との間の密着性に優れ、また、150℃程度の低温で焼き付けが行われていることで、金属箔の耐久性が高い。
【0139】
次に、本実施形態のPTP包材(プレス・スルー・パッケージ)を、図面を参照しながら、更に詳細に説明する。
図2は、本実施形態のPTP包材の一例の断面図である。図2に示すPTP包材100は、医薬品等の内容物を収容する容器20と、該容器20に接着されたPTP用蓋材10と、から構成されている。容器20は、内容物30を収容するポケット状の凹部21と、該凹部21の端部に設けられたフランジ部22とを具える。凹部21には、医薬品(錠剤)等の内容物30が直接収容され、フランジ部22には、PTP用蓋材10(より具体的には、PTP用蓋材10のヒートシール層)が直接接着される。
【0140】
前記PTP用蓋材10には、上述の、本実施形態のPTP用蓋材を適用することができる。
【0141】
前記容器20には、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等からなる熱可塑性樹脂シートを使用することができる。
前記ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、環状オレフィンからなる樹脂等が挙げられる。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。
【0142】
本実施形態のPTP包材100は、上述したPTP用蓋材10及び容器20をヒートシール層により接着して用いられる。即ち、容器20の凹部21に医薬品(錠剤)等の内容物30を収容し、該容器20にPTP用蓋材10を、ヒートシール層を容器20側に向けて重ねて熱接着する方法により、PTP包材100を製造できる。
【0143】
本実施形態のPTP包材は、薬、タブレット、キャンディーやチョコレート等の食品等の包材として使用することができる。また、歯ブラシ、乾電池、おもちゃ等のブリスターパック用の包材としても使用することができる。
【0144】
上述した、本実施形態のPTP包材は、構成部品のいずれも、硝化綿樹脂及び塩素系樹脂を含まないことが好ましい。硝化綿樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しないPTP包材は、環境及び健康の観点から好ましい。より具体的には、PTP包材が、硝化綿樹脂を含有しないことで、NDMA(N-ニトロソジメチルアミン)の発生の懸念を解消できる。また、PTP包材が、塩素系樹脂を含有しないことで、全世界への輸出が可能となる。
【0145】
また、本実施形態のPTP包材は、構成部品のいずれも、メラミン樹脂を含まないことが好ましい。PTP包材が、メラミン樹脂を含有しないことで、ホルムアルデヒドの発生を抑制することができる。
【実施例0146】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。以下、「部」及び「%」は、特に言及が無い限り、いずれも質量基準によるものとする。
【0147】
なお、GPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は、東ソー(株)社製HLC8220システムを用い、以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用
カラム温度:40℃
移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0重量%
試料注入量:100マイクロリットル
検出器:示差屈折計
【0148】
<リキッドインキ組成物の調製及び評価>
表1に示す配合処方で、各成分を混合して、実施例及び比較例の各リキッドインキ組成物を調製した。なお、比較例1~4のリキッドインキ組成物については、使用前にメラミン樹脂溶液を添加して、印刷に使用した。
得られたリキッドインキ組成物に対して、以下の方法で、原反接着性、耐熱性(インキ滲み)、印刷適性を評価した。結果を表2に示す。
【0149】
(1)原反接着性
硬質アルミ原反に各リキッドインキ組成物を印刷した後、温度:150~200℃、時間:5~15秒で焼き付けを行った後、セロハンテープを貼り付け、該セロハンテープを剥離させ、インキ皮膜の剥がれを目視で判定し、1~5までの評点で分類した。該評点は、0.5刻みであり、1が不良、5が良好であることを示し、評点が大きい程、インキ皮膜の硬質アルミ原反への接着性が優れることを示す。評点の詳細を以下に示す。
5 : 全く剥離しない
4.5: 約 5%剥離
4 : 約10%剥離
3.5: 約20%剥離
3 : 約30%剥離
2.5: 約50%剥離
2 : 約70%剥離
1.5: 約80%剥離
1 : 完全に剥離(約100%剥離)
【0150】
(2)耐熱性(インキ滲み)
硬質アルミ原反に各リキッドインキ組成物を印刷した後、ヒートシールバーにて230℃、0.2Nで、40秒加圧し、文字インキの滲み(流れ)を目視で判定し、1~5までの評点で分類した。該評点は、0.5刻みであり、1が不良、5が良好であることを示し、評点が大きい程、インキの滲みが少なく、耐熱性が優れることを示す。
【0151】
(3)印刷適性
硬質アルミ原反に各リキッドインキ組成物を印刷した後、文字インキの滲みの状態を確認した。
実施例7については、文字が若干潰れていたが、その他の実施例及び比較例は、文字が鮮明であり、優れた印刷適性を有していた。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
*1 顔料1: 黄色顔料、DIC社製の商品名「SYMULER FAST YELLOW NIF」
*2 顔料2: 藍色顔料、DIC社製の商品名「FASTOGEN BLUE LDB78」
*3 顔料3: 墨色顔料、キャボット社製の商品名「カーボンブラック モーガルL」
*4 顔料4: 白色顔料、石原産業社製の商品名「タイペーク A-220」
【0155】
*5 硝化綿樹脂: 工業用硝化綿L1/4(ニトロセルロース、固形分70%、JIS K-6703により溶液濃度25.0%における粘度9.0~14.9%品、太平化学製品株式会社製)37.5部に、イソプロピルアルコール/酢酸エチル/トルエン(質量比で20/30/50の比率)の混合液を62.5部加え、充分混合し硝化綿樹脂溶液を作製した。該硝化綿樹脂溶液をリキッドインキ組成物の調製に使用した。表1中には、固形分としての含有量を示す。
【0156】
*6 ポリビニルブチラール樹脂: ポリビニルアルコールにブチルアルデヒドを反応させることにより得られたポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量19,000、水酸基量26質量%、ガラス転移点70℃、アセチル基量4質量%以下)を、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチルで25%溶液とし、これをポリビニルブチラール樹脂溶液とした。該ポリビニルブチラール樹脂溶液をリキッドインキ組成物の調製に使用した。表1中には、固形分としての含有量を示す。
【0157】
*7 ポリウレタン樹脂: 攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール233.38部(水酸基価:37.4mgKOH/g)とポリエチレングリコール2.36部(水酸基価:280.5mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート31.58部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率1.77質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル66.8部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン10.59部、シクロヘキシルアミン0.28部、酢酸エチル387.6部およびイソプロピルアルコール194.7部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度30.3質量%、樹脂固形分の重量平均分子量(Mw)は58,000であった。該ポリウレタン樹脂溶液をリキッドインキ組成物の調製に使用した。表1中には、固形分としての含有量を示す。
【0158】
*8 ケトン系樹脂: Evonik Tego Chemie GmbH社製の商品名「TEGO VARIPLUS SK」を添加、表1中には、固形分としての含有量を示す。
*9 PEワックス: 岐阜セラック社製の商品名「X-7019」を添加、表1中には、固形分としての含有量を示す。
*10 可塑剤: DIC社製の商品名「モノサイザーATBC」を添加、表1中には、固形分としての含有量を示す。
*11 メラミン樹脂: レゾナック社製の商品名「メラン X-81」を添加、表1中には、固形分としての含有量を示す。
*12 溶剤: リキッドインキ組成物中の溶剤の総量であり、上記のバインダー樹脂等の溶解に使用した溶剤以外に、メチルエチルケトン/酢酸ノルマルプロピル=1/1(質量比)を含む。
【0159】
表2から、本発明に従う実施例のリキッドインキ組成物は、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、硬質アルミ箔に対する密着性(接着性)に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明のリキッドインキ組成物は、種々の対象への印刷に適用でき、特には、金属箔への印刷用に有用である。
【符号の説明】
【0161】
10:PTP用蓋材
1:金属箔
2,3:リキッドインキ組成物からなる層(印刷層)
4:OPニス層
5:ヒートシール層
100:PTP包材
20:容器
21:凹部
22:フランジ部
30:内容物
図1
図2