(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146822
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】樹脂及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 75/02 20160101AFI20241004BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08G75/02
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045119
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023058018
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】淺津 悠司
(72)【発明者】
【氏名】出▲崎▼ 光
【テーマコード(参考)】
4J030
【Fターム(参考)】
4J030BA04
4J030BB14
4J030BC02
4J030BC08
4J030BC16
4J030BC24
4J030BC37
4J030BF19
4J030BG25
(57)【要約】
【課題】高い屈折率を示すことができ、耐熱性にも優れる新たな樹脂を提供する。
【解決手段】式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂。式(I)中、-S-Z-S-は式(II)で表される単量体に由来する構成単位を表し、Lは単結合又は2価の基を表す。式(II)中、nは0~3のいずれかの整数を表し、複数あるnは同一であっても異なっていてもよい。Rは1価の置換基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。式(II)中の2つの-SH基は、ナフタレン環の1位及び6位、又は、2位及び7位の位置に結合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂。
[式(I)中、
-S-Z-S-は、式(II)で表される単量体に由来する構成単位を表し、
Lは、単結合又は2価の基を表す。]
[式(II)中、
nは0~3のいずれかの整数を表し、複数あるnは同一であっても異なっていてもよい。
Rは1価の置換基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
式(II)中の2つの-SH基は、ナフタレン環の1位及び6位、又は、2位及び7位の位置に結合する。]
【請求項2】
Lは、置換基を有していてもよい2価の脂肪族鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基、及びこれらの組み合わせである2価の基からなる群より選択される2価の炭化水素基であり、
前記2価の炭化水素基に含まれる1以上の-CH2-は、-O-、-S-、-NR1A-(R1Aは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、又は-SO2-で置換されていてもよい請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
前記2価の脂肪族鎖状炭化水素基及び前記2価の脂環式炭化水素基は、いずれも飽和の炭化水素基である請求項2に記載の樹脂。
【請求項4】
直鎖状の分子構造を有する請求項1に記載の樹脂。
【請求項5】
前記2価の脂肪族鎖状炭化水素基及び前記2価の脂環式炭化水素基は、炭素数が20以下である請求項2に記載の樹脂。
【請求項6】
請求項1に記載の樹脂を含む組成物。
【請求項7】
溶剤をさらに含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の樹脂又は請求項6若しくは7に記載の組成物から形成される成形物。
【請求項9】
請求項1に記載の樹脂又は請求項6若しくは7に記載の組成物から形成される導光板。
【請求項10】
請求項8に記載の成形物を含む表示装置。
【請求項11】
請求項8に記載の成形物を含む固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂及びそれを含む組成物に関する。また、本発明は、該樹脂又は該組成物から形成される成形物、該樹脂又は該組成物から形成される導光板、該成形物を含む表示装置、及び該成形物を含む固体撮像素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器の分野において高屈折材料が要望されている。高屈折材料によりレンズを得ることができ、レンズにより光学機器内の光路を制御することができる。固体撮像素子において各光電変換素子への集光効率を向上させる目的でレンズが用いられ、また表示装置において画素からの光の取り出し効率を向上させる目的でレンズが用いられている。従来、種々の高屈折材料の開発がなされており、高屈折化のための手法の一つとして無機フィラーを添加することが知られている。一方で、無機フィラーの凝集による光散乱や加工時の金属イオンによる周囲の汚染など、無機フィラーの添加が種々の問題を引き起こす場合もある。また、有機系の高屈折材料としては、例えば特定の(メタ)アクリレート化合物を含む組成物が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、高い屈折率を示すことができ、耐熱性にも優れる新たな樹脂を提供することにある。本発明の他の目的は、該樹脂を含む組成物、該樹脂又は該組成物から形成される成形物、該樹脂又は該組成物から形成される導光板、該成形物を含む表示装置、及び該成形物を含む固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下を含む。
〔1〕 式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂。
[式(I)中、
-S-Z-S-は、式(II)で表される単量体に由来する構成単位を表し、
Lは、単結合又は2価の基を表す。]
[式(II)中、
nは0~3のいずれかの整数を表し、複数あるnは同一であっても異なっていてもよい。
Rは1価の置換基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
式(II)中の2つの-SH基は、ナフタレン環の1位及び6位、又は、2位及び7位の位置に結合する。]
〔2〕 Lは、置換基を有していてもよい2価の脂肪族鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基、及びこれらの組み合わせである2価の基からなる群より選択される2価の炭化水素基であり、
前記2価の炭化水素基に含まれる1以上の-CH
2-は、-O-、-S-、-NR
1A-(R
1Aは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、又は-SO
2-で置換されていてもよい〔1〕に記載の樹脂。
〔3〕 前記2価の脂肪族鎖状炭化水素基及び前記2価の脂環式炭化水素基は、いずれも飽和の炭化水素基である〔2〕に記載の樹脂。
〔4〕 直鎖状の分子構造を有する〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の樹脂。
〔5〕 前記2価の脂肪族鎖状炭化水素基及び前記2価の脂環式炭化水素基は、炭素数が20以下である〔2〕に記載の樹脂。
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の樹脂を含む組成物。
〔7〕 溶剤をさらに含む〔6〕に記載の組成物。
〔8〕 〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の樹脂又は〔6〕若しくは〔7〕に記載の組成物から形成される成形物。
〔9〕 〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の樹脂又は〔6〕若しくは〔7〕に記載の組成物から形成される導光板。
〔10〕 〔8〕に記載の成形物を含む表示装置。
〔11〕 〔8〕に記載の成形物を含む固体撮像素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高い屈折率を示すことができ、耐熱性にも優れる新たな樹脂を提供することができる。また、該樹脂を含む組成物、該樹脂又は該組成物から形成される成形物、該樹脂又は該組成物から形成される導光板、該成形物を含む表示装置、及び該成形物を含む固体撮像素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<樹脂>
本発明に係る樹脂は、式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(以下、「樹脂(I)」ともいう)である。樹脂(I)は、高い屈折率を示すことができ、また、優れた耐熱性を示すことができる。さらに、樹脂(I)は、優れた耐溶剤性を示し得る。
[式(I)中、
-S-Z-S-は、式(II)で表される単量体に由来する構成単位を表し、
Lは、単結合又は2価の基を表す。
Sは、硫黄原子を表す。]
【0008】
[式(II)中、
nは0~3のいずれかの整数を表し、複数あるnは同一であっても異なっていてもよい。
Rは1価の置換基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
式(II)中の2つの-SH基は、ナフタレン環の1位及び6位、又は、2位及び7位の位置に結合する。]
【0009】
式(I)中のZは、式(II)が有する2つの-SH基以外の構造部分である。
式(II)で表される単量体は、Rで表される1価の置換基を0個~6個有し得る。該置換基を有する場合、該置換基は、ナフタレン環において、-SH基が結合していない位置に結合される。式(II)は、Rで表される1以上の1価の置換基を有する場合、該1以上の1価の置換基が、-SH基が結合している位置を除くナフタレン環の1~8位の任意の位置に結合していてもよいことを表す。
【0010】
樹脂(I)は、Zが互いに異なる複数種の繰り返し単位を有していてもよく、Lが互いに異なる複数種の繰り返し単位を有していてもよく、Z及びLの両方が互いに異なる複数種の繰り返し単位を有していてもよい。
【0011】
式(I)で表される繰り返し単位中の-S-Z-S-の構造部分を形成する単量体は、上記式(II)で表される単量体(II)である。
【0012】
式(II)におけるRは1価の置換基を表し、1価の置換基としては、1価の炭化水素基やその他の置換基が挙げられる。1価の炭化水素基を表すRとしては、Rが複数ある場合はそれぞれ独立して、例えば、置換基を有していてもよい1価の脂肪族鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、及びこれらの2以上の組み合わせからなる1価の基(アラルキル基等)等の1価の炭化水素基が挙げられる。
【0013】
1価の炭化水素基に含まれる1以上の-CH2-は、-O-、-S-、-NR1B-(R1Bは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、又は-SO2-で置換されていてもよい。なお、1価の炭化水素基に含まれる-CH2-が、-O-で置換された基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基等のアルコキシアルキル基等が挙げられる。
【0014】
1価の脂肪族鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基及び1価の芳香族炭化水素基が有し得る置換基とは、これらの炭化水素基において最も鎖長が長い分子鎖を主鎖とするとき、この主鎖に対して側鎖として結合する原子又は原子団をいう。
【0015】
1価の脂肪族鎖状炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族鎖状炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基等が挙げられる。
1価の脂肪族鎖状炭化水素基の炭素数は、通常1以上20以下であり、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは1以上4以下、なおさらに好ましくは1又は2である。
【0016】
1価の脂肪族鎖状炭化水素基が有していてもよい置換基の具体例としては、例えば、2価の脂肪族鎖状炭化水素基が有していてもよい置換基の具体例として後述するものが挙げられる。1価の脂肪族鎖状炭化水素基は、1又は2以上の置換基を有することができる。
1価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基及び1価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基についても同様である。
【0017】
1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基が挙げられ、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロ[1.1.0]ブチル基、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基、ビシクロ[2.2.2.]オクチル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基(アダマンチル基)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、ビシクロ[4.3.2]ウンデシル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデシル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
1価の脂環式炭化水素基の炭素数は、通常3以上20以下であり、好ましくは3以上10以下、より好ましくは3以上6以下であり、さらに好ましくは5又は6である。
【0018】
1価の芳香族炭化水素基は、単環であっても多環であってもよく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基等が挙げられる。1価の芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6以上20以下であり、好ましくは6以上10以下である。
【0019】
式(II)におけるRの他の例としては、Rが複数ある場合はそれぞれ独立して、例えば、ヒドロキシ基;アミノ基、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等の1つ又は2つの炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基;ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、オキサゾリニル基、チアゾリル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、チエニル基、ピロリル基及びフリル基等の炭素数4~20の脂肪族複素環基又は炭素数3~20の芳香族複素環基等のヘテロ環基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;カルボキシ基;スルホ基;チオール基;ホルミル基;-SF3基;-SF5基が挙げられる。
【0020】
単量体(II)としては、式(II-1)で表される単量体(II-1)及び式(II-2)で表される単量体(II-2)が挙げられる。単量体(II-1)は、置換基Rを有していてもよい1,6-ナフタレンジチオールであり、単量体(II-2)は、置換基Rを有していてもよい2,7-ナフタレンジチオールである。
[式(II-1)及び式(II-2)中、n及びRの意味は式(II)における意味と同じである。]
【0021】
式(I)において、Lは単結合又は2価の基を表す。2価の基であるLとしては、例えば、置換基を有していてもよい2価の脂肪族鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、及びこれらの2以上の組み合わせである2価の基(アラルキレン基等)等の2価の炭化水素基が挙げられる。
2価の炭化水素基に含まれる1以上の-CH2-は、-O-、-S-、-NR1A-(R1Aは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、又は-SO2-で置換されていてもよい。
【0022】
2価の脂肪族鎖状炭化水素基及び2価の脂環式炭化水素基は、それぞれ、飽和の炭化水素基であってもよいし、不飽和の炭化水素基であってもよい。2価の脂肪族鎖状炭化水素基及び2価の脂環式炭化水素基は、それぞれ、好ましくは飽和の炭化水素基である。
【0023】
2価の基であるLは、好ましくは、置換基を有していてもよい2価の脂肪族鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基、及びこれらの組み合わせである2価の基からなる群より選択される2価の炭化水素基である。
【0024】
2価の脂肪族鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基が有し得る置換基とは、2つのS原子間を結合する分子鎖(2価の脂肪族鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、又はこれらの2以上の組み合わせである2価の基)を主鎖とするとき、この主鎖に対して側鎖として結合する原子又は原子団をいう。
【0025】
2価の脂肪族鎖状炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族鎖状炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基、ウンデカンジイル基、ドデカンジイル基、トリデカンジイル基、テトラデカンジイル基、ペンタデカンジイル基、ヘキサデカンジイル基、ヘプタデカンジイル基、オクタデカンジイル基、ノナデカンジイル基、エイコサンジイル基等のアルカンジイル基等が挙げられる。
2価の脂肪族鎖状炭化水素基の炭素数は、通常1以上30以下であり、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上10以下、さらに好ましくは1以上4以下であり、1又は2であってもよい。
【0026】
2価の脂肪族鎖状炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基(例えば、アルキルオキシカルボニル基等)、シアノ基、1価の脂肪族鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。2価の脂肪族鎖状炭化水素基は、1又は2以上の置換基を有することができる。
2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基及び2価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基についても同様である。
【0027】
置換基である1価の脂肪族鎖状炭化水素基及び1価の脂環式炭化水素基は、それぞれ、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
置換基である1価の脂肪族鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基及び1価の芳香族炭化水素基の具体例としては、それぞれ、例えば、式(II)におけるRである1価の脂肪族鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基及び1価の芳香族炭化水素基の具体例として上述したものが挙げられる。
【0028】
2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基が挙げられ、具体的には、シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、シクロノナンジイル基、シクロデカンジイル基等の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロ[1.1.0]ブタンジイル基、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプタンジイル基、ビシクロ[3.2.1]オクタンジイル基、ビシクロ[2.2.2.]オクタンジイル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジイル基(アダマンタンジイル基)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジイル基、ビシクロ[4.3.2]ウンデカンジイル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジイル基等の多環の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、通常3以上30以下であり、好ましくは3以上20以下、より好ましくは3以上10以下であり、5又は6であってもよい。
【0029】
2価の芳香族炭化水素基は、単環であっても多環であってもよく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6以上20以下であり、好ましくは6以上10以下である。
【0030】
1つの好ましい実施形態において、式(I)中のLは、置換基を有していてもよい2価の脂肪族鎖状炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の脂環式炭化水素基であり、好ましくは、置換基を有していてもよい2価の脂肪族鎖状炭化水素基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアルカンジイル基である。該2価の脂肪族鎖状炭化水素基、該2価の脂環式炭化水素基及び該アルカンジイル基に含まれる1以上の-CH2-は、-O-、-S-、-NR1A-(R1Aは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、又は-SO2-で置換されていてもよい。
該2価の脂肪族鎖状炭化水素基及び該アルカンジイル基の炭素数は、通常1以上30以下であり、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上10以下、さらに好ましくは1以上4以下であり、1又は2であってもよい。該2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、通常3以上30以下であり、好ましくは3以上20以下、より好ましくは3以上10以下であり、5又は6であってもよい。
【0031】
Lの好ましい例は、例えば下記構造である。
a)Lが、炭素数1以上4以下のアルカンジイル基である。
アルカンジイル基の炭素数は、1以上3以下であってもよく、1又は2であってもよい。アルカンジイル基は、置換基を有していてもよい。
【0032】
b)Lが、炭素数1以上4以下のアルカンジイル基であり、かつ、アルカンジイル基に含まれる1以上の-CH2-は、-O-、-S-、-NR1A-(R1Aは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、又は-SO2-で置換されている。
アルカンジイル基の炭素数は、1以上3以下であってもよく、1又は2であってもよい。アルカンジイル基は、置換基を有していてもよい。アルカンジイル基に含まれる1以上の-CH2-は、好ましくは、-O-、-S-、-CO-、又は-SO2-で置換されている。置換される-CH2-の数は、1以上3以下であってもよく、1又は2であってもよい。
【0033】
c)Lが、炭素数3以上10以下の飽和の脂環式炭化水素基であるか、又は、該脂環式炭化水素基と、炭素数1以上4以下のアルカンジイル基との組み合わせである。
該組み合わせは、1又は2以上の該脂環式炭化水素基と、1又は2以上の該アルカンジイル基との組み合わせであってもよい。アルカンジイル基の炭素数は、1以上3以下であってもよく、1又は2であってもよい。脂環式炭化水素基及びアルカンジイル基は、それぞれ、置換基を有していてもよい。
【0034】
d)Lが、炭素数3以上10以下の飽和の脂環式炭化水素基であるか、又は、該脂環式炭化水素基と、炭素数1以上4以下のアルカンジイル基との組み合わせであり、かつ、アルカンジイル基に含まれる1以上の-CH2-は、-O-、-S-、-NR1A-(R1Aは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)、-CO-、又は-SO2-で置換されている。
該組み合わせは、1又は2以上の該脂環式炭化水素基と、1又は2以上の該アルカンジイル基との組み合わせであってもよい。アルカンジイル基の炭素数は、1以上3以下であってもよく、1又は2であってもよい。脂環式炭化水素基及びアルカンジイル基は、それぞれ、置換基を有していてもよい。アルカンジイル基に含まれる1以上の-CH2-は、好ましくは、-O-、-S-、-CO-、又は-SO2-で置換されている。置換される-CH2-の数は、1以上3以下であってもよく、1又は2であってもよい。
【0035】
樹脂(I)において、2価の基であるLの具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。ただし、Lは、下記のものに限定されるものではない。下記式中、*は、単量体(II)が有する-SH基に由来するS原子との結合手を示す。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(I)としては、式(I)中の-S-Z-S-が式(II-1)で表される単量体に由来する構成単位であり、かつ、式(I)中のLが上記具体例から選択されるものである樹脂が挙げられ、また、式(I)中の-S-Z-S-が式(II-2)で表される単量体に由来する構成単位であり、かつ、式(I)中のLが上記具体例から選択されるものである樹脂が挙げられる。
さらに、樹脂(I)としては、式(I)中の-S-Z-S-が式(II-1)で表される単量体に由来する構成単位であり、かつ、式(I)中のLが単結合である樹脂が挙げられ、また、式(I)中の-S-Z-S-が式(II-2)で表される単量体に由来する構成単位であり、かつ、式(I)中のLが単結合である樹脂が挙げられる。
【0042】
樹脂(I)は、例えば単量体(II)が単量体(II-1)であるとき、ナフタレン環の1位に結合するS原子とナフタレン環の6位に結合するS原子とがLを介して結合した結合構造(「1,6-結合構造」ともいう)、1位に結合するS原子と1位に結合するS原子とがLを介して結合した結合構造(「1,1-結合構造」ともいう)、6位に結合するS原子と6位に結合するS原子とがLを介して結合した結合構造(「6,6-結合構造」ともいう)を有し得る。樹脂(I)は、1,6-結合構造、1,1-結合構造及び6,6-結合構造からなる群より選択される1種以上の結合構造を有していてよい。
【0043】
樹脂(I)は、直鎖状の分子構造を有することが好ましい。直鎖状の分子構造を有するとは、式(I)で表される繰り返し単位が直鎖状に連結していることを意味する。樹脂(I)は、これを構成する高分子の主鎖間を結合する架橋構造を有しないことが好ましい。
後述するように、樹脂(I)は、単量体(II)と、式(I)中のLを形成する単量体(III)とを反応させることによって製造することができる。樹脂(I)が直鎖状の分子構造を有するために、単量体(III)は、単量体(II)の-SH基と反応してS原子とLとの間に結合を形成できる部位(官能基)を2つ有する化合物であることが好ましい。
【0044】
樹脂(I)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは500以上1000000以下、より好ましくは750以上100000以下であり、さらに好ましくは1000以上50000以下であり、特に好ましくは1500以上25000以下である。重量平均分子量(Mw)が上記範囲であることは、樹脂(I)の耐熱性及び/耐溶剤性を向上させるうえで有利である。
GPCによる分子量の測定は、後述する実施例の項の記載に従って行うことができる。
【0045】
<樹脂の製造方法>
樹脂(I)は、単量体(II)と、式(I)中のLを形成しうる単量体(III)とを反応させることによって製造することができる。単量体(III)は、単量体(II)の-SH基と反応してS原子とLとの間に結合を形成できる部位(官能基)を有する化合物である。以下、この部位(官能基)を「反応性官能基」ともいう。単量体(III)は、式(I)で表される繰り返し単位を形成するために2以上の反応性官能基を有し、好ましくは2つの反応性官能基を有する。上記反応において、単量体(III)を2種以上用いてもよく、単量体(II)を2種以上用いてもよい。
【0046】
単量体(III)の第1の例は、反応性官能基が脱離基である単量体(III)である。脱離基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホナート基、パラトルエンスルホナート基、ベンゼンスルホナート基、メタンスルホナート基、イミダゾール-1-イル基等が挙げられる。第1の例において単量体(III)は、好ましくは、脱離基を2つ有し、より好ましくは、ハロゲン原子を2つ有する。第1の例において単量体(III)は、例えば、LV-L-LVで表される化合物である。Lは、式(I)中のLと同じ意味であり、LVは脱離基である。
反応性官能基がハロゲン原子である単量体(III)の具体例としては、上で列挙した2価の基であるLの具体例において、*の位置にハロゲン原子が導入された化合物が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましい。
【0047】
単量体(III)の第2の例は、反応性官能基が反応性不飽和基である単量体(III)である。反応性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、ビニルスルホニル基等が挙げられる。第2の例において単量体(III)は、好ましくは、反応性不飽和基を2つ有し、より好ましくは、ビニル基を2つ有する。反応性官能基が反応性不飽和基である単量体(III)を用いると、例えば反応性不飽和基がビニル基である場合、該ビニル基は、単量体(II)の-SH基との反応により-CH2-CH2-基に変換され、該基はLの一部となる。
【0048】
使用する単量体(III)の量は、単量体(II)の1モルに対して、例えば0.5~50モルであり、好ましくは0.6~40モルである。ただし、単量体(III)が溶媒を兼ねる場合は、上記に限らず、単量体(III)を過剰に用いてもよい。
【0049】
単量体(II)と単量体(III)との反応は、塩基の存在下に行ってもよい。2種以上の塩基を併用してもよい。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド;アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、DBU、DABCO、ピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,6-ジt-ブチルピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド等の有機塩基が挙げられる。
使用する塩基の量は、単量体(II)の1モルに対して、例えば0.01~10モルであり、好ましくは0.5~5モルである。
【0050】
単量体(II)と単量体(III)との反応は、形成される高分子の末端を封止するための末端封止剤の存在下に実施されてもよい。末端封止剤は、反応の初期から存在していてもよいし、反応途中から投入されてもよい。末端封止剤としては、Lの反応性官能基と反応可能な基を1つ有する化合物が挙げられる。このような基としては、-SH基が挙げられる。末端封止剤を使用する場合、末端封止剤の量は、単量体(II)の1モルに対して、例えば0.001~0.5モルであり、好ましくは0.05~0.3モルである。
【0051】
単量体(II)と単量体(III)との反応は、溶媒中で実施されてもよい。単量体(III)が溶媒を兼ねてもよい。溶媒としては、水のほか、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、アルコール類、グライム類、エステル類、脂肪族ニトリル類、スルホキシド類、アミド類等の有機溶媒が挙げられる。2種以上の溶媒を併用してもよい。有機溶媒として、具体的には以下の溶媒が例示される。
【0052】
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン、2-オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等
芳香族炭化水素類:ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、アニソール、ニトロベンゼン、アニリン、テトラリン、デュレン等
ハロゲン化芳香族炭化水素:クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等
脂肪族炭化水素:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等
ハロゲン化脂肪族炭化水素類:ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエタン等
エーテル類:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等
アルコール類:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサフルオロイソプロパノール等
グライム類:メチルジグライム、エチルジグライム、トリグライム、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル等
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等
脂肪族ニトリル類:アセトニトリル等
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド、スルホラン等
アミド類:N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等。
【0053】
単量体(II)と単量体(III)との反応の温度は、例えば-80~200℃であり、好ましくは0~150℃である。得られた樹脂(I)は、常法により単離、精製することができる。
【0054】
<組成物>
本発明に係る組成物(以下、「組成物(I)」ともいう)は、樹脂(I)と、樹脂(I)以外の他の成分とを含む。組成物(I)は、樹脂(I)を2種以上含んでいてもよい。組成物(I)を用いて、樹脂(I)を含む成形物を形成することができる。成形物とは、所望の形状に成形された物をいう。
組成物(I)は、樹脂(I)を含むため、高い屈性率及び優れた耐熱性を示し得る。また、組成物(I)は、優れた耐溶剤性を示し得る。
【0055】
組成物(I)における樹脂(I)の含有率は、組成物(I)の固形分の総量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、また、100質量%以下でもよく、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下であり、90質量%以下又は80質量%以下であってもよい。
【0056】
組成物(I)の固形分の総量とは、組成物(I)に含まれる成分のうち、溶剤を除いた成分の合計を意味する。組成物の固形分中における各成分の含有率は、液体クロマトグラフィ又はガスクロマトグラフィ等の公知の分析手段で測定することができる。組成物(I)の固形分中における各成分の含有率は、該組成物調製時の配合から算出されてもよい。
【0057】
組成物(I)に含まれる上記他の成分としては、例えば、樹脂(I)以外の樹脂、溶剤、添加剤等が挙げられる。添加剤としては、例えば、無機粒子、充填剤、重合開始助剤、増感剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、防汚剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤等が挙げられる。組成物(I)は、上記他の成分を2種以上含んでいてもよい。組成物(I)が添加剤を含む場合、添加剤を2種以上併用してもよい。
樹脂(I)以外の樹脂としては、高屈折率樹脂が挙げられる。高屈折率樹脂とは、波長550nmにおける屈折率が1.60以上である樹脂をいう。
【0058】
組成物(I)は、1種又は2種以上の溶剤を含んでいてもよい。溶剤は、好ましくは、樹脂(I)を溶解又は分散させることができるものであり、より好ましくは、さらに樹脂(I)以外の他の成分を溶解又は分散させることができるものである。溶剤としては、例えば、上で例示した有機溶媒を用いることができる。
【0059】
組成物(I)における溶剤の含有率は、組成物(I)の総量に対する組成物(I)に含まれる全溶剤の合計質量の割合である。組成物(I)が溶剤を含む場合、組成物(I)における溶剤の含有率は、組成物(I)の固形分100質量部に対して、好ましくは60質量部以上、より好ましくは80質量部以上であり、また、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1000質量部以下である。組成物(I)が溶剤を含む場合、組成物(I)の固形分濃度は、好ましくは1~60質量%、より好ましくは2~50質量%である。
【0060】
<成形物>
本発明は、樹脂(I)又は組成物(I)から形成される成形物を提供する。成形物は、樹脂(I)を含む。成形物の形状は特に制限されず、フィルム(膜)状、板状、レンズ形状、粉状、粒状、非球粒子状、破砕粒子状、多孔質状、塊状連続体、繊維状、管状、中空糸状等を含む、成形物の用途等に応じた任意の形状であってよい。
【0061】
成形物は、樹脂(I)を含むため、高い屈性率及び優れた耐熱性を示し得る。また、成形物は、優れた耐溶剤性を示し得る。
【0062】
組成物(I)から成形物を得る方法としては、特に限定されず、基板上に膜を形成する方法、基板上に膜を形成してその後エッチング等により成形を行う方法、射出成形方法、注型重合成形方法等が挙げられる。
【0063】
基板上に成形物としての膜を形成する場合、組成物(I)を基板に塗布し、必要に応じて乾燥を行って樹脂膜を形成することにより成形物を得ることができる。成形物はパターニングされた樹脂膜であってもよい。フォトリソグラフ法、インクジェット法、印刷法等の方法によってパターニングすることによりパターニングされた樹脂膜を得ることができる。パターニング方法は、フォトリソグラフィ法であることが好ましい。
【0064】
基板としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミナケイ酸塩ガラス、表面をシリカコートしたソーダライムガラス等のガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂板、シリコン、上記基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜等を形成したもの等を用いることができる。組成物(I)の基板への塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、スリットアンドスピンコート法等が挙げられる。
【0065】
樹脂(I)、組成物(I)及び成形物は、高屈折率を示すことができ、また、組成物(I)及びその成形物においてそれらの屈折率は、組成物(I)の組成等を調整することにより所望の屈折率に制御することができる。樹脂(I)、組成物(I)及び成形物は、波長550nmにおける屈折率が、1.65以上、1.68以上、1.70以上、1.72以上、1.75以上、さらには1.80以上であり得る。波長550nmにおける屈折率は、例えば1.90以下であり、1.85以下であってもよい。
【0066】
<成形物の用途>
本発明によると高屈折率を有する成形物、又は所望の屈折率を有する成形物を得ることができる。成形物の用途としては、例えば、ガラス代替品とその表面コーティング材;住居、施設、輸送機器等の窓ガラス、採光ガラス及び光源保護ガラス用のコーティング材;住居、施設、輸送機器等のウインドウフィルム;住居、施設、輸送機器等の内外装材及び内外装用塗料及び該塗料によって形成させる塗膜;アルキド樹脂ラッカー塗料及び該塗料によって形成される塗膜;アクリルラッカー塗料及び該塗料によって形成される塗膜;蛍光灯、水銀灯等の紫外線を発する光源用部材;精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレイから発生する電磁波等の遮断用材;食品、化学品、薬品等の容器又は包装材;ボトル、ボックス、ブリスター、カップ、特殊包装用、コンパクトディスクコート、農工業用シート又はフィルム材;印刷物、染色物、染顔料等の退色防止剤;ポリマー支持体用(例えば、機械及び自動車部品のようなプラスチック製部品用)の保護膜;印刷物オーバーコート;インクジェット媒体被膜;積層艶消し;オプティカルライトフィルム;安全ガラス/フロントガラス中間層;エレクトロクロミック/フォトクロミック用途;オーバーラミネートフィルム;太陽熱制御膜;日焼け止めクリーム、シャンプー、リンス、整髪料等の化粧品;スポーツウェア、ストッキング、帽子等の衣料用繊維製品及び繊維;カーテン、絨毯、壁紙等の家庭用内装品;プラスチックレンズ、コンタクトレンズ、義眼等の医療用器具;光学フィルタ、バックライトディスプレーフィルム、プリズム、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズ、及び後述するマイクロレンズ、ピックアップレンズ等)、鏡、写真材料等の光学用品;金型膜、転写式ステッカー、落書き防止膜、テープ、インク等の文房具;標示板、標示器等とその表面コーティング材;光学装置等に用いられる基板;光導波路(例えば導光板等)回折格子;プリズム;ビームスプリッター;ホログラム;LED封止材;等を挙げることができる。
【0067】
成形物は、光学機器に用いられる光学用品であるレンズとして好適に用いられる。光学機器としては、固体撮像素子、表示装置等が挙げられる。固体撮像素子において各光電変換素子への集光効率を向上させる目的でレンズが用いられ、また表示装置において画素からの光の取り出し効率を向上させる目的でレンズが用いられている。レンズはマイクロレンズであってもよい。表示装置としては、液晶表示装置、有機EL表示装置等に好適に用いられる。
【0068】
高屈折率材料としては、酸化ジルコニウムや酸化チタン等の無機化合物が従来知られている。しかし、無機化合物からなる高屈折率材料を含む成形物を作製する場合などにおいて、エッチングが進行しにくいなど成形が容易でないことがあり、また、成形時に高屈折率材料が飛散して汚染の問題を生じることがある。有機化合物である本発明の高屈折材料を用いることにより上記問題を解決することができる。
【0069】
<導光板>
本発明は、樹脂(I)又は組成物(I)から形成される導光板を提供する。導光板は、樹脂(I)を含む。導光板の形状としては、フィルム(膜)状、板状等であり、表面に凹凸形状を有していてもよい。また、導光板の厚みは用途に応じて適宜設計でき、例えば、0.05mm~3.0mmであり、AR(拡張現実)ディスプレイ用途に使用される場合、好ましくは0.1mm~1.0mmである。
導光板の550nmにおける屈折率は、好ましくは1.2~2.2であり、より好ましくは1.4~2.0、さらに好ましくは1.5~1.9である。
導光板の厚み100mm~200mm、波長380~780nmにおける平均透過率は、好ましくは85%以上である。
導光板の厚み100mm~200mmの透過率の三刺激値X,Y,Zは好ましくは85%以上である。三刺激値X,Y,ZはCIE1931XYZの等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)と導光板の透過率から求められる。すなわち、下式の導光板の透過率を分光放射輝度L(λ)として計算される。波長λは380~780nmである。
導光板は、樹脂(I)又は組成物(I)を成形して得られる。成形方法としては、シート押出成形や、射出成形、圧縮成形等の公知の方法を用いることができる。
【実施例0070】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特に断りのない限り質量基準である。
【0071】
[実施例1:樹脂(I-1)の合成]
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、1,6-ナフタレンジチオール3部、N,N-ジメチルホルムアミド75部、ビス(クロロメチル)スルフィド2.5部、炭酸セシウム15部を上記フラスコに加えて、50℃で5時間撹拌した。得られた混合物を精製して、2.7部の樹脂(I-1)を得た。
樹脂(I-1)は、式(I)で表される繰り返し単位を有し、式(I)中の-S-Z-S-は1,6-ナフタレンジチオールに由来する構成単位であり、Lは-CH2-S-CH2-である。
【0072】
GPC測定による樹脂(I-1)の重量平均分子量(Mw)は11000であり、数平均分子量(Mn)は5300であった。
GPC測定は以下の条件で行った。他の実施例についても同じ条件でGPC測定を行った。
装置;K2479((株)島津製作所製)
カラム;TSKgel SuperAWM-H×2(6.0mmI.D.×150mm×2本)
カラム温度;40℃
溶媒;N-メチルピロリドン(10mM 臭化リチウム)
流速;0.4mL/min
注入量;10μL
検出器;RI
校正用標準物質 ;TSK STANDARD POLYSTYRENE F-40、F-4、F-288、A-2500、A-500(東ソー(株)製)
【0073】
[実施例2:樹脂(I-2)の合成]
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、1,6-ナフタレンジチオール1部、ジクロロメタン20部、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム0.03部、ジエチルメチルアミン1.1部を上記フラスコに加えて、室温下で5時間撹拌した。得られた混合物を精製して、1.0部の樹脂(I-2)を得た。
樹脂(I-2)は、式(I)で表される繰り返し単位を有し、式(I)中の-S-Z-S-は1,6-ナフタレンジチオールに由来する構成単位であり、Lは-CH2-である。また、樹脂(I-2)は、少量の2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムの存在下に合成されているため、高分子鎖の両末端に、末端基として-S-CH2-CH2-SO3Hを有する。
【0074】
GPC測定による樹脂(I-2)の重量平均分子量(Mw)は3100であり、数平均分子量(Mn)は990であった。
【0075】
[実施例3:樹脂(I-3)の合成]
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、1,6-ナフタレンジチオール3部、テトラヒドロフラン60部、カルボニルジイミダゾール2.6部を上記フラスコに加えて、室温下で5時間撹拌した。得られた混合物を精製して、3.3部の樹脂(I-3)を得た。
樹脂(I-3)は、式(I)で表される繰り返し単位を有し、式(I)中の-S-Z-S-は1,6-ナフタレンジチオールに由来する構成単位であり、Lは-CO-である。
【0076】
GPC測定による樹脂(I-3)の重量平均分子量(Mw)は520であり、数平均分子量(Mn)は370であった。
【0077】
[実施例4:樹脂(I-4)の合成]
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、1,6-ナフタレンジチオール3部、ジクロロメタン20部、チオグリコール酸0.11部、ジエチルメチルアミン5.4部を上記フラスコに加えて、室温下で5時間撹拌した。得られた混合物を精製して、2.8部の樹脂(I-4)を得た。
樹脂(I-4)は、式(I)で表される繰り返し単位を有し、式(I)中の-S-Z-S-は1,6-ナフタレンジチオールに由来する構成単位であり、Lは-CH2-である。また、樹脂(I-4)は、少量のチオグリコール酸の存在下に合成されているため、高分子鎖の両末端に、末端基として-S-COOHを有する。
【0078】
GPC測定による樹脂(I-4)の重量平均分子量(Mw)は34000であり、数平均分子量(Mn)は2400であった。
【0079】
[実施例5:樹脂(I-5)の合成]
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、1,6-ナフタレンジチオール3部、ジクロロメタン60部、ジエチルメチルアミン5.4部を上記フラスコに加えて、室温下で5時間撹拌した。得られた混合物を精製して、2.9部の樹脂(I-5)を得た。
樹脂(I-5)は、式(I)で表される繰り返し単位を有し、式(I)中の-S-Z-S-は1,6-ナフタレンジチオールに由来する構成単位であり、Lは-CH2-である。
【0080】
GPC測定による樹脂(I-5)の重量平均分子量(Mw)は22000であり、数平均分子量(Mn)は2500であった。
【0081】
[実施例6:樹脂(I-6)の合成]
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、1,6-ナフタレンジチオール1.5部、ジメチルホルムアミド15部、ジクロロ酢酸メチル2.2部、ジエチルメチルアミン1.5部を上記フラスコに加えて、室温下で5時間撹拌した。得られた混合物を精製して、1.7部の樹脂(I-6)を得た。
樹脂(I-6)は、式(I)で表される繰り返し単位を有し、式(I)中の-S-Z-S-は1,6-ナフタレンジチオールに由来する構成単位であり、Lは-CH(COOCH3)-である。
【0082】
GPC測定による樹脂(I-6)の重量平均分子量(Mw)は14000であり、数平均分子量(Mn)は7900であった。
【0083】
[実施例7:樹脂(I-7)の合成]
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、1,6-ナフタレンジチオール1.5部、ジメチルホルムアミド15部、ジクロロ酢酸2.2部、ジエチルメチルアミン2部を上記フラスコに加えて、室温下で5時間撹拌した。得られた混合物を精製して、1.0部の樹脂(I-7)を得た。
樹脂(I-7)は、式(I)で表される繰り返し単位を有し、式(I)中の-S-Z-S-は1,6-ナフタレンジチオールに由来する構成単位であり、Lは-CH(COOH)-である。
【0084】
GPC測定による樹脂(I-7)の重量平均分子量(Mw)は830であり、数平均分子量(Mn)は420であった。
【0085】
[実施例8:樹脂(I-8)の合成]
ジムロート冷却管及び温度計を設置した4つ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、1,6-ナフタレンジチオール1.5部、アセトン37部、純水5部、水酸化ナトリウム0.7部、ビス(ビニルスルホン)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン2.5部を上記フラスコに加えて、室温下で5時間撹拌した。得られた混合物を精製して、1.0部の樹脂(I-8)を得た。
樹脂(I-8)は、式(I)で表される繰り返し単位を有し、式(I)中の-S-Z-S-は1,6-ナフタレンジチオールに由来する構成単位であり、Lは-CH2-CH2-SO2-(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジイル)-SO2-CH2-CH2-である。
【0086】
GPC測定による樹脂(I-8)の重量平均分子量(Mw)は65000であり、数平均分子量(Mn)は12000であった。
【0087】
[実施例9:組成物の調製]
樹脂(I-1)10質量部、及び溶剤としての1,1,2,2,-テトラクロロエタン90質量部をフラスコに入れ、攪拌して液状の組成物を得た。組成物を目視したところ透明であり、配合成分が均一に溶解されていることが確認された。
【0088】
[実施例10~13、比較例1:組成物の調製]
使用する樹脂の種類を樹脂(I-1)から表1に示される樹脂に変更したこと以外は、実施例1と同様にして液状の組成物を得た。実施例10~13及び比較例1の組成物は、目視したところ透明であり、配合成分が均一に溶解されていることが確認された。
【0089】
比較例1の組成物に含まれる樹脂(Y1)は下記構造を有するポリ(アセナフチレン)〔シグマアルドリッチ社製〕である。
【0090】
[評価試験]
(1)樹脂の屈折率
上記で調製した組成物を、無アルカリガラス(EagleXG、厚み0.7mm、コーニング社製)上に約3cc滴下し、700rpm、20秒の条件でスピンコーター(MS-B100、ミカサ製)を用いてスピンコートして、塗布層を形成した。塗布層が形成された無アルカリガラス板を60℃で2分間加熱し、さらに100℃で3分間加熱することにより塗布層を乾燥させて、樹脂膜が形成された無アルカリガラスを得た。触針式膜厚計(DekTak XT、Bruker製)で無アルカリガラス上の樹脂膜の膜厚を測定したところ約1.0μmであった。
【0091】
樹脂膜が形成された無アルカリガラスについて、積分球ユニット(ISV-922、日本分光製)付き可視紫外分光光度計(V-650、日本分光製)を用いて、波長300nmから800nmにおける透過スペクトルと反射スペクトルを測定した。透過スペクトルと反射スペクトルから反射スペクトルの干渉による増減を減算処理して平滑化して得られた真の反射スペクトルのうち、波長550nmの値と無アルカリガラス(EagleXG、コーニング製)の屈折率から波長550nmにおける樹脂膜の屈折率をフレネルの公式(ヘクト光学I原著5版、丸善出版、2018年、p.209-p.226)に基づいて算出した。結果を表1に示す。
【0092】
(2)樹脂の耐熱性
上記(1)と同じ方法で作製した樹脂膜が形成された無アルカリガラスを、260℃に加熱されたホットプレート上で5分間静置した。ホットプレートによる加熱前後の樹脂膜の波長450nmにおける透過率変化(透過率変化=加熱前透過率-加熱後透過率)を求め、以下の評価基準に従って樹脂の耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
A:透過率変化が0%以上2%未満
B:透過率変化が2%以上5%未満
C:透過率変化が5%以上
【0093】
(3)耐溶剤性
上記(1)と同じ方法で作製した樹脂膜(膜厚約1.0μm)が形成された無アルカリガラスを、23℃のアセトンに10分間浸漬した。浸漬前後の樹脂膜の外観変化を観察するとともに、浸漬前後の膜厚保持率(膜厚保持率=浸漬後膜厚÷浸漬前膜厚)を求め、以下の評価基準に従って樹脂の耐溶剤性を評価した。結果を表1に示す。
A:外観変化がなく、膜厚保持率が100%以下90%以上
B:外観変化がなく、膜厚保持率が90%未満80%以上
C:外観変化がなく、膜厚保持率が80%未満
D:浸漬後に硬化膜が白濁し、膜厚保持率が80%未満
【0094】
【0095】
[実施例14:導光板の製造]
4cm角のガラス板上に実施例5で作製した樹脂(I-5)を1gのせ、0.5mm厚みのガラス板をスペーサーとして上からさらに4cm角のガラスをのせて、ホットプレートで120℃で加熱し、厚み0.5mmの導光板を作製した。