(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146829
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 327/40 20060101AFI20241004BHJP
C07C 327/42 20060101ALI20241004BHJP
C07C 327/46 20060101ALI20241004BHJP
C07D 277/68 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C07C327/40
C07C327/42
C07C327/46
C07D277/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047840
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2023057609
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】森岡 公平
(72)【発明者】
【氏名】古川 達也
(72)【発明者】
【氏名】飛田 憲之
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC47
4H006BD70
4H006BE10
4H006BE13
4H006TN30
4H006TN60
(57)【要約】
【課題】向上した生産性を有する、水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩の製造方法を提供すること。
【解決手段】水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の製造方法であって、下記工程:
(1)カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)とチオアミド化剤(B)とを疎水性溶媒中で反応させて、エステル基を有するチオアミド化合物(C)を得る工程;
(2)得られたエステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に、チオアミド化剤(B)およびその残渣を分解可能な塩基性化合物(D-1)と水とを添加した後、分液操作により水層を抜き取り、チオアミド化剤(B)およびその残渣の水溶性分解物を除去する工程;および
(3)工程(2)により得られるエステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に、該チオアミド化合物(C)のエステル基を加水分解可能な塩基性化合物(D-2)および水を添加した後、分液操作によりチオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液を得る工程
を含み、
前記塩基性化合物(D-1)が前記塩基性化合物(D-2)より弱い塩基性を有する、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の製造方法であって、下記工程:
(1)カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)とチオアミド化剤(B)とを疎水性溶媒中で反応させて、エステル基を有するチオアミド化合物(C)を得る工程;
(2)得られたエステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に、チオアミド化剤(B)およびその残渣を分解可能な塩基性化合物(D-1)と水とを添加した後、分液操作により水層を抜き取り、チオアミド化剤(B)およびその残渣の水溶性分解物を除去する工程;および
(3)工程(2)により得られるエステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に、該チオアミド化合物(C)のエステル基を加水分解可能な塩基性化合物(D-2)および水を添加した後、分液操作によりチオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液を得る工程
を含み、
前記塩基性化合物(D-1)が前記塩基性化合物(D-2)より弱い塩基性を有する、方法。
【請求項2】
塩基性化合物(D-1)が、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一ナトリウム、及び、リン酸一水素二ナトリウムからなる群から選ばれる1以上の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩基性化合物(D-2)が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び、テトラブチルアンモニウムヒドリドからなる群から選ばれる1以上の化合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)が、それぞれ置換基を有してもよい、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フラン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環およびチエノチオフェン環からなる群から選択される芳香族環構造を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)が式(A1):
【化1】
[式中、
R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数3~8の脂環式炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のチオエーテル基、炭素数1~8のスルホニル基およびハロゲン原子からなる群から選択される基を表し、
R
5は単結合、アルキレン基または炭素数3~8の二価の脂環式炭化水素基を表し、
R
6は炭素数1~4のアルキル基を表す]
で示されるアミド化合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)が式(E1):
【化2】
[式中、
R
1~R
5は、それぞれ、前記式(A1)のR
1~R
5と同じ意味を表し、
Mは、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を表し、
mはMで表されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の価数を表す]
で示されるチオアミド化合物カルボン酸塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
塩基性化合物(D-3)の存在下、請求項1または2に記載の方法により得られるチオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液に酸化剤(F)を添加して、カルボキシル基を有するベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)を得ることを含む、ベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法により得られるベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)と酸との反応によりベンゾチアゾールカルボン酸(H)を得ることを含む、ベンゾチアゾールカルボン酸塩(H)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネル表示装置(FPD)に用いられる、偏光板、位相差板等の光学フィルムに適用され得る材料の中間体として、水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩が用いられている。
非特許文献1には、無溶媒下で、ジカルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物とチオアミド化剤とを反応させることによりエステル基を有するチオアミド化合物を含む溶液を得、溶液をシリカゲルカラムにより精製した後に、濃縮し乾燥させて、エステル基を有するチオアミド化合物を粉体として取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】European Journal of Medical Chemistry,123(2016),514-522
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法では、チオアミド化合物のカルボン酸塩の前駆体であるエステル基を有するチオアミド化合物を取り出すために濃縮工程および乾燥工程を含むため、工業スケールでの製造には適さない。
【0005】
本発明では、向上した生産性を有する、水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な実施形態を提供するものである。
[1] 水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の製造方法であって、下記工程:
(1)カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)とチオアミド化剤(B)とを疎水性溶媒中で反応させて、エステル基を有するチオアミド化合物(C)を得る工程;
(2)得られたエステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に、チオアミド化剤(B)およびその残渣を分解可能な塩基性化合物(D-1)と水とを添加した後、分液操作により水層を抜き取り、チオアミド化剤(B)およびその残渣の水溶性分解物を除去する工程;および
(3)工程(2)により得られるエステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に、該チオアミド化合物(C)のエステル基を加水分解可能な塩基性化合物(D-2)および水を添加した後、分液操作によりチオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液を得る工程
を含み、
前記塩基性化合物(D-1)が前記塩基性化合物(D-2)より弱い塩基性を有する、方法。
[2] 塩基性化合物(D-1)が、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一ナトリウム、及び、リン酸一水素二ナトリウムからなる群から選ばれる1以上の化合物である、[1]に記載の方法。
[3] 塩基性化合物(D-2)が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び、テトラブチルアンモニウムヒドリドからなる群から選ばれる1以上の化合物である、[1]または[2]に記載の方法。
[4] カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)が、それぞれ置換基を有してもよい、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フラン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環およびチエノチオフェン環からなる群から選択される芳香族環構造を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)が式(A1):
【化1】
[式中、
R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数3~8の脂環式炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のチオエーテル基、炭素数1~8のスルホニル基およびハロゲン原子からなる群から選択される基を表し、
R
5は単結合、アルキレン基または炭素数3~8の二価の脂環式炭化水素基を表し、
R
6は炭素数1~4のアルキル基を表す]
で示されるアミド化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)が式(E1):
【化2】
[式中、
R
1~R
5は、それぞれ、前記式(A1)のR
1~R
5と同じ意味を表し、
Mは、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を表し、
mはMで表されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の価数を表す]
で示されるチオアミド化合物カルボン酸塩である、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 塩基性化合物(D-3)の存在下、[1]または[2]に記載の方法により得られるチオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液に酸化剤(F)を添加して、カルボキシル基を有するベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)を得ることを含む、ベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)の製造方法。
[8] [7]に記載の方法により得られるベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)と酸との反応によりベンゾチアゾールカルボン酸(H)を得ることを含む、ベンゾチアゾールカルボン酸塩(H)の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、向上した生産性を有する、水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の製造方法は、下記工程:
(1)カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)とチオアミド化剤(B)とを疎水性溶媒中で反応させて、エステル基を有するチオアミド化合物(C)を得る工程;
(2)得られたエステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に、チオアミド化剤(B)およびその残渣を分解可能な塩基性化合物(D-1)と水とを添加した後、分液操作により水層を抜き取り、チオアミド化剤(B)およびその残渣の水溶性分解物を除去する工程;および
(3)工程(2)により得られるエステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に、該チオアミド化合物(C)のエステル基を加水分解可能な塩基性化合物(D-2)および水を添加した後、分液操作によりチオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液を得る工程
を含み、
塩基性化合物(D-1)が塩基性化合物(D-2)より弱い塩基性を有する。
【0009】
<工程(1)>
工程(1)は、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)とチオアミド化剤(B)とを疎水性溶媒中で反応させて、エステル基を有するチオアミド化合物(C)を製造する工程である。
【0010】
チオアミド化剤の使用量は、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)1モル当量に対して、好ましくは0.5~1.0モル当量であり、より好ましくは0.5~0.8モル当量であり、さらに好ましくは0.5~0.6モル当量である。
【0011】
チオアミド化反応の温度は、好ましくは60~90℃であり、より好ましくは65~85℃であり、さらに好ましくは70~80℃である。チオアミド化反応の時間は、好ましくは2~12時間であり、より好ましくは2~8時間であり、さらに好ましくは2~6時間である。
上記の温度範囲及び時間範囲でチオアミド化反応を行うことにより、反応収率が向上し、生産性がより高くなる傾向がある。
【0012】
<カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)>
カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)は、目的とする水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の構造に応じて適宜選択される。カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)としては、例えば、それぞれ置換基を有してもよい、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フラン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環およびチエノチオフェン環からなる群から選択される芳香族環構造を有する化合物が挙げられ、式(A1):
【化3】
[式中、
R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数3~8の脂環式炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のチオエーテル基、炭素数1~8のスルホニル基およびハロゲン原子からなる群から選択される基を表し、
R
5は単結合、アルキレン基または炭素数3~8の二価の脂環式炭化水素基を表し、
R
6は炭素数1~4のアルキル基を表す]
で示されるアミド化合物であることが好ましい。カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)は、所望する構造に応じて公知の有機合成法を用いることにより合成できる。
【0013】
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
炭素数3~8の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1~8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基等が挙げられる。
炭素数1~8のチオエーテル基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等が挙げられる。
炭素数1~8のスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、n-ヘプチルスルホニル基、n-オクチルスルホニル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
アルキレン基としては、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ペンタン-2,4-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、2-メチルブタン-1,4-ジイル基等が挙げられる。
炭素数3~8の二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基等が挙げられる。
【0014】
カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)としては、具体的に例えば、式(A1)中のR
1~R
6がそれぞれ下記の置換基である化合物(A1-1)~(A1-13)が挙げられ、化合物(A1-3)が好ましい。
【表1】
【0015】
<チオアミド化剤>
チオアミド化剤としては、例えばローソン試薬、五硫化二リンなどが挙げられ、好ましくはローソン試薬である。
【0016】
<疎水性溶媒>
本明細書において、疎水性溶媒とは、25℃の水1Lに対する溶解度が300g以下の溶媒を意味する。疎水性溶媒としては、例えば、
ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;
メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;
等が挙げられる。
中でも、疎水性溶媒としては、芳香族系溶媒が好ましい。疎水性溶媒は、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
疎水性溶媒の使用量は、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)とチオアミド化剤との反応に十分な量であれば特に限定されない。各成分が十分に溶解して反応が効率よく進行し得るよう、例えば、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)1質量部に対して1~80質量部であってよく、好ましくは2~50質量部である。
【0018】
<疎水性溶媒以外の溶媒>
工程(1)において、疎水性溶媒に加えて疎水性溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。疎水性溶媒以外の溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサン又はヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;乳酸エチル等のエステル系溶媒;ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド又はヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;メタノール等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
疎水性溶媒以外の溶媒を使用する場合、その使用量は、疎水性溶媒1質量部に対して、好ましくは0.001~10質量部であり、より好ましくは0.001~1質量部であり、さらに好ましくは0.001~0.5質量部である。
【0020】
<エステル基を有するチオアミド化合物(C)>
エステル基を有するチオアミド化合物(C)は、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)の構造に対応して決まる。例えば、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)として、前記式(A1)で示されるアミド化合物を用いる場合、エステル基を有するチオアミド化合物(C)は、式(C1)で示される化合物である。
[式中、
R
1~R
6は、それぞれ上記と同じ意味を表す]
【0021】
<工程(2)>
工程(2)は、得られたエステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に、チオアミド化剤(B)およびその残渣を分解可能な塩基性化合物(D-1)と水とを添加した後、分液操作により水層を抜き取り、チオアミド化剤(B)およびその残渣の水溶性分解物を除去する工程である。水の存在下、塩基性化合物(D-1)によりチオアミド化剤(B)およびその残渣を分解し、これを分液操作によって除去することにより、次工程への溶液接続が可能となる。このため、工程(2)の操作を採用する本発明の方法は、高い生産効率で水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩の製造を可能にする。また、チオアミド化剤(B)およびその残渣を効果的に分解、除去することができ、最終的に、チオアミド化剤(B)等に由来する不純物が少なく、高い純度で水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)を得ることができる。
【0022】
塩基性化合物(D-1)の使用量は、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)1モル当量に対して、好ましくは2.0~6.0モル当量であり、より好ましくは3.0~5.0モル当量であり、さらに好ましくは4.0~4.6モル当量である。
【0023】
水の使用量は、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)1質量部に対して、好ましくは0.5~50質量部であり、より好ましくは1~20質量部であり、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0024】
エステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に塩基性化合物(D-1)と水とを添加した後、チオアミド化剤(B)およびその残渣と塩基性化合物(D-1)とを反応させる。この反応温度は、好ましくは25~70℃であり、より好ましくは30~60℃であり、さらに好ましくは30~50℃である。反応の時間は、好ましくは2~36時間であり、より好ましくは4~24時間であり、さらに好ましくは6~16時間である。
上記の温度範囲及び時間範囲で反応を行うことにより、反応収率が向上し、生産性がより高くなる傾向がある。
【0025】
<塩基性化合物(D-1)>
塩基性化合物(D-1)としては、例えば、
アンモニア、メチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等のアミン化合物;
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;
水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;
水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の4級アンモニウムの水酸化物;
炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;
炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;
炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;
炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩;
クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;
が挙げられる。中でも、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一ナトリウム、及び、リン酸一水素二ナトリウムからなる群から選択される化合物が好ましい。塩基性化合物(D-1)は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明において、塩基性化合物(D-1)としては、後述する塩基性化合物(D-2)より弱い塩基性を示す化合物が用いられ、工程(3)で用いる塩基性化合物(D-2)との関係においてより弱い塩基性を示す化合物から適宜選択することができる。工程(2)において、塩基性化合物(D-1)として弱塩基性の化合物を用いることにより、エステル基を有するチオアミド化合物(C)のエステル加水分解の発生を抑制しながら、チオアミド化剤(B)およびその残渣の分解、除去が可能になり、目的物である水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)を高い収率で得ることができる。
なお、塩基性化合物(D-1)および塩基性化合物(D-2)における塩基性の強弱は、例えばイオン化定数(pKa)によって判断できる。
【0027】
<水>
工程(2)は水の存在下で行うが、水に加えて、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類を含んでいてもよい。
アルコール類を含む場合、その含有量は、水1質量部に対して、好ましくは0.0001~0.1質量部であり、より好ましくは0.0001~0.05質量部であり、さらに好ましくは0.0005~0.01質量部である。
【0028】
工程(2)において、反応混合液から水層を回収する方法は特に限定されず、当業者に既知の分液方法を用いることができる。
【0029】
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)により得られるエステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に、該チオアミド化合物(C)のエステル基を加水分解可能な塩基性化合物(D-2)および水を添加した後、分液操作によりチオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液を得る工程である。
【0030】
塩基性化合物(D-2)の使用量は、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)1モル当量に対して、好ましくは0.8~4.0モル当量であり、より好ましくは0.8~2.0モル当量であり、さらに好ましくは1.0~1.3モル当量である。
【0031】
水の使用量は、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)1質量部に対して、好ましくは0.5~50質量部であり、より好ましくは1~20質量部であり、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0032】
エステル基を有するチオアミド化合物(C)を含む疎水性溶媒中に塩基性化合物(D-2)と水とを添加した後、エステル基を有するチオアミド化合物(C)と塩基性化合物(D-2)とを反応させる。この反応温度は、好ましくは25~70℃であり、より好ましくは30~60℃であり、さらに好ましくは35~55℃である。反応の時間は、好ましくは1~20時間であり、より好ましくは2~15時間であり、さらに好ましくは2~10時間である。
上記の温度範囲及び時間範囲で反応を行うことにより、反応収率が向上し、生産性がより高くなる傾向がある。
【0033】
<塩基性化合物(D-2)>
本発明において、塩基性化合物(D-2)としては、前記塩基性化合物(D-1)より強い塩基性を示す塩基性化合物を用いる。塩基性化合物(D-2)としては、例えば、
アンモニア、メチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等のアミン化合物;
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;
水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;
水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の4級アンモニウムの水酸化物;
炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;
炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;
炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;
炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩;
クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;
が挙げられ、工程(2)で用いる塩基性化合物(D-1)との関係においてより強い塩基性を示す化合物から適宜選択することができる。本発明の一実施形態において、塩基性化合物(D-2)は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び、テトラブチルアンモニウムヒドリドからなる群から選択される化合物であることが好ましい。
【0034】
工程(3)において、反応混合液からチオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液を回収する方法は特に限定されず、当業者に既知の分液方法を用いることができる。
【0035】
<水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)>
工程(3)により、水溶液中に溶解した状態で水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)が得られる。水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)は、出発材料となるカルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)の構造に応じて決まる、本発明の一実施形態において、水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)は、例えば、式(E1)であらわされる。
[式中、
R
1~R
5は、それぞれ、前記式(A1)のR
1~R
5と同じ意味を表し、
Mは、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を表し、
mはMで表されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の価数を表す]
【0036】
アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムが挙げられる。また、アルカリ土類金属原子としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。中でもMは、好ましくはカリウムである。
【0037】
<ベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)>
塩基性化合物(D-3)の存在下、上記方法に従い得られるチオアミド化合物カルボン酸塩(E)に酸化剤(F)を添加することにより、カルボキシル基を有するベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)を得ることができる。
【0038】
塩基性化合物(D-3)としては、例えば、塩基性化合物(D-1)および/または(D-2)として用い得るものとして挙げた塩基性化合物を用いることができる。
【0039】
塩基性化合物(D-3)の使用量は、チオアミド化合物カルボン酸塩(E)1モル当量に対して、好ましくは1~20モル当量であり、より好ましくは2~10モル当量である。
【0040】
酸化剤(F)としては、例えば、フェリシアン化カリウム、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、鉄アセチルアセトナート、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、塩化ルテニウム(III)等が挙げられる。酸化助剤として、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウム等と組み合わせて使用してもよい。
【0041】
酸化剤(F)の使用量は、チオアミド化合物カルボン酸塩(E)1モル当量に対して、好ましくは1~10モル当量であり、より好ましくは2~5モル当量である。
【0042】
上記塩基性化合物(D-3)の存在下、チオアミド化合物カルボン酸塩(E)に酸化剤(F)を添加することによりカルボキシル基を有するベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)を得る工程は、通常、水の存在下で行われる。水の使用量は、チオアミド化合物カルボン酸塩(E)1質量部に対して、好ましくは10~30質量部であり、より好ましくは15~25質量部である。この際、水を単独で使用してもよいし、非プロトン性極性溶媒と組み合わせて使用してもよい。そのような非プロトン性極性溶媒は、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0043】
上記工程の温度は、好ましくは15~40℃であり、より好ましくは20~35℃である。また、反応時間は、好ましくは2~15時間であり、より好ましくは4~10時間である。
【0044】
上記工程により、カルボキシル基を有するベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)の水溶液が得られる。カルボキシル基を有するベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)は、チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の構造に応じて決まる、本発明の一実施形態において、カルボキシル基を有するベンゾチアゾールカルボン酸塩(G)は、例えば、式(G1)で表される。
[式中、
R
1~R
5は、それぞれ、前記式(A1)のR
1~R
5と同じ意味を表し、
Mは、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を表し、
mはMで表されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の価数を表す]
【0045】
アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムが挙げられる。また、アルカリ土類金属原子としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。中でもMは、好ましくはカリウムである。
【0046】
<ベンゾチアゾールカルボン酸(H)>
上記で得られたカルボキシル基を有するベンゾチアゾール酸塩(G)と酸とを反応させることにより、ベンゾチアゾールカルボン酸(H)を得ることができる。
【0047】
ここで用いる酸としては、カルボキシル基を有するベンゾチアゾール酸塩(G)を中和し得るものであれば特に限定されるものではなく、無機酸および有機酸のいずれも使用することができる。無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸およびホウ酸等が挙げられる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0048】
上記工程における酸の量は、カルボキシル基を有するベンゾチアゾール酸塩(G)1モルに対して、好ましくは1~5モル、より好ましくは1~3モルである。
【0049】
カルボキシル基を有するベンゾチアゾール酸塩(G)に酸を加える工程は任意の方法で実施することができる。例えば所定の量の酸を一度にカルボキシル基を有するベンゾチアゾール酸塩(G)の水溶液に加えた後に撹拌する方法、カルボキシル基を有するベンゾチアゾール酸塩(G)の水溶液に酸を連続的に滴下して混合する方法等が挙げられる。ベンゾチアゾールカルボン酸(H)の収率、ろ過性を向上させるために、カルボキシル基を有するベンゾチアゾール酸塩(G)の水溶液に酸を連続的に滴下させる方法が好ましい。
【0050】
酸を混合後、水溶液中の結晶をろ過等の既知の方法で分離し、水等で洗浄後、乾燥することによってベンゾチアゾールカルボン酸(H)を得ることができる。
【0051】
上記工程により、ベンゾチアゾールカルボン酸(H)が得られる。ベンゾチアゾールカルボン酸(H)は、カルボキシル基を有するベンゾチアゾール酸塩(G)の構造に応じて決まる、本発明の一実施形態において、ベンゾチアゾールカルボン酸(H)は、例えば、式(H1)で表される。
[式中、R
1~R
5は、それぞれ、前記式(A1)のR
1~R
5と同じ意味を表す。]
【実施例0052】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。なお、本明細書中の「%」及び「部」は、特に記載のない限り、それぞれ質量%及び質量部を意味する。
【0053】
<実施例1>
(工程(1))
温度計を設置した500mL四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気として、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)として、上記式(A1)で示されるアミド化合物において、表2に記載の置換基を有するアミド化合物(A1-1)20.2gとチオアミド化剤(B)としてローソン試薬21.3g(化合物(A1-1)1モル当量に対して0.6モル当量)とをキシレン63.0g中、75℃で5時間反応させて、エステル基を有するチオアミド化合物(C1-1)を含む溶液を得た。
【0054】
(工程(2))
得られた溶液中に、塩基性化合物(D-1)として炭酸水素ナトリウム40.3g(化合物(A1-1)1モル当量に対して4.4モル当量)と水161.2g(化合物(A1-1)1質量部に対して8.0質量部)とを添加し、40℃で12時間反応させた後、分液操作により水層を抜き取った。水76.6g(化合物(A1-1)1質量部に対して3.8重量部)を加え撹拌し油層を水で洗浄後、水層を抜き取った。
【0055】
(工程(3))
工程(2)により得られた溶液中に、塩基性化合物(D-2)として水酸化カリウム5.6g(化合物(A1-1)1モル当量に対して1.1モル当量)と水16.9g(化合物(A1-1)1質量部に対して3.0質量部)とを添加し、45℃で4時間反応させた後、分液操作によりチオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液を得た。
なお、炭酸水素ナトリウムは水酸化カリウムより弱塩基性の化合物である。
得られた水溶液を、後述する条件においてHPLC測定にて分析した結果、チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の収率は87%であった。また、チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の純度は面積百分率93%であった。さらに、チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液中の固形分に対するICP発光分析を行い、定量したP含有量は620ppmであった。
【0056】
<実施例2~25および参考例1>
表2に示す通り、それぞれ、カルボン酸エステル基を有する疎水性アミド化合物(A)の種類、塩基性化合物(D-1)、塩基性化合物(D-2)の種類および/または使用量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして水溶性チオアミド化合物カルボン酸塩(E)を得た。
なお、実施例2~25のいずれにおいても、塩基性化合物(D-1)として使用した塩基性化合物は、塩基性化合物(D-2)として使用した塩基性化合物よりも弱塩基性の化合物である。また、表2中のR6について、Et:エチル基、Me:メチル基、Bu:ブチル基、Cy:シクロヘキサン-1,4-ジイル基を表す。
【0057】
<HPLCの測定条件>
装置:株式会社島津製作所社製 LC-20AT
カラム:Kinetex_2.6μm_C18、100Å、100mm×4.6mm
移動相:A液;0.1%(v/v)TFA含有水
B液;0.1%(v/v)TFA含有アセトニトリル
グラジエント条件:
B液;10%→(30min)→100%(5min)
温度:40℃
流速:1.0mL/分
注入量:5μL
検出器:UV(254nm)
【0058】
(収率の評価基準)
上記HPLC測定の結果に基づき、各実施例における収率を以下の基準に基づき評価した。結果を表2に示す。
A:85%以上
B:70%以上85%未満
C:60%以上70%未満
D:60%未満
【0059】
(純度の評価基準)
上記HPLC測定の結果に基づき、各実施例における純度を以下の基準に基づき評価した。結果を表2に示す。
A:90%以上
B:70%以上90%未満
C:60%以上70%未満
D:60%未満
【0060】
<ICP発光分析>
ICP発光分析装置を用いて、チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液中のリン含有量(P含有量)を測定し、チオアミド化合物カルボン酸塩(E)の水溶液中の固形分に対するP含有量を算出した。
(リン含量の評価基準)
上記ICP発光分析の結果に基づき、各実施例におけるP含量を以下の基準に基づき評価した。結果を表2に示す。
A:700ppm未満
B:700ppm以上1500ppm未満
C:1500ppm以上
【0061】
【0062】
<実施例26>
温度計を設置した500mL四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気として、塩基性化合物(D-3)として25%KOH水溶液31g、酸化剤(F)としてフェリシアン化カリウム44g、水160gを仕込んだ溶液に、実施例3にて得たチオアミド化合物カルボン酸塩(E)水溶液35gを室温で6時間かけて滴下し、その後1時間反応させ、ベンゾチアゾールカルボン酸(G)へ誘導した。
【0063】
続いて、ベンゾチアゾールカルボン酸(G)を含む水溶液に40%硫酸4.9gを室温で5時間かけて滴下することでベンゾチアゾールカルボン酸(H)の粉体を析出させた。得られた粉体は濾過することで回収し、水42gで洗浄した。50℃で乾燥させ、白色粉体として7.7g取得した。後述する条件においてHPLC測定にて分析した結果、収率72.0%、LC純度78.0%であった。
【0064】
反応に用いるチオアミド化合物カルボン酸塩(E)水溶液に含まれるリン化合物の含有量が少ない場合に、ベンゾチアゾールカルボン酸(H)にリン化合物の含有量も低減することができる。
【0065】
<HPLCの測定条件>
装置:株式会社島津製作所社製 LC-20AT
カラム:Kinetex_2.6μm_C18、100Å、100mm×4.6mm
移動相:A液;10mMギ酸アンモニウム水
B液;アセトニトリル
グラジエント条件:
B液;10%→(30min)→100%(5min)
温度:40℃
流速:1.0mL/分
注入量:5μL
検出器:UV(254nm)