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特開2024-146873感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146873
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241004BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/004 512
H05K3/28 D
H05K3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052258
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023058953
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 光世
(72)【発明者】
【氏名】森 花菜
(72)【発明者】
【氏名】松野 匠
(72)【発明者】
【氏名】東海 裕之
【テーマコード(参考)】
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC54
2H225AD02
2H225AD06
2H225AE12P
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AN36P
2H225AN39P
2H225AN94P
2H225AP03P
2H225AP09P
2H225AP15P
2H225BA16P
2H225BA17P
2H225CA13
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA27
5E314AA45
5E314BB02
5E314CC01
5E314CC02
5E314CC07
5E314CC15
5E314EE03
5E314FF02
5E314FF04
5E314FF05
5E314FF06
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】可視光領域から近赤外領域の広い範囲において隠蔽性に優れる黒色を有しながらも、解像性にも優れる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)黒色着色剤と、(D)青色着色剤と、(E)近赤外線吸収剤と、を含んでなる感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物を、表面を化学研磨した全面銅箔基板の銅箔面に塗布して膜厚10μmの硬化物を作製し、前記硬化物の表面を、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にて測定したL*a*b*表色系のa*およびb*を、それぞれa*1およびb*1とし、同条件にて膜厚30μmの硬化物を作製して同条件にて測定したL*a*b*表色系のa*およびb*を、それぞれa*2およびb*2とした場合において、前記感光性樹脂組成物を塗布する銅箔の表面を、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にて測定したL*a*b*表色系のL*、a*およびb*が、それぞれ58<L*<75、16<a*<22、22<b*<27の範囲であり、|a*1-a*2|として算出される色差Δa*、および|b*1-b*2|として算出される色差Δb*が、それぞれ下記式:
Δa*<0.2
Δb*<0.2
を満足することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)黒色着色剤と、(D)青色着色剤と、(E)近赤外線吸収剤と、を含んでなる感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物を、表面を化学研磨した全面銅箔基板の銅箔面に塗布して膜厚10μmの硬化物を作製し、前記硬化物の表面を、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にて測定したL*a*b*表色系のa*およびb*を、それぞれa*1およびb*1とし、同条件にて膜厚30μmの硬化物を作製し、同条件にて測定したL*a*b*表色系のa*およびb*を、それぞれa*2およびb*2とした場合において、
前記感光性樹脂組成物を塗布する銅箔の表面を、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にて測定したL*a*b*表色系のL*、a*およびb*が、それぞれ58<L*<75、16<a*<22、22<b*<27の範囲であり、
|a*1-a*2|として算出される色差Δa*、および|b*1-b*2|として算出される色差Δb*が、それぞれ下記式:
Δa*<0.2
Δb*<0.2
を満足することを特徴とする、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)黒色着色剤は、可視光領域380~780nmにおいて、380~500nmに最小吸収値があり、500~780nmに最大吸収値がある、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)青色着色剤は、可視光領域380~780nmにおいて、380~600nmに最小吸収値があり、600~780nmに最大吸収値がある、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)黒色着色剤は、前記最大吸収値と前記最小吸収値との差が20%以上である、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)黒色着色剤に対して、前記(D)青色着色剤が固形分換算で、15~25質量%の割合で含まれる、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)黒色着色剤に対して、前記(E)近赤外線吸収剤が固形分換算で、100~300質量%の割合で含まれる、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
第一のフィルムと、前記第一のフィルムの一方の面に請求項1に記載の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥した樹脂層とを備えた、ドライフィルム。
【請求項8】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物、または請求項7に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させた硬化物。
【請求項9】
JIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したL*が、15以下である、請求項8に記載の硬化物。
【請求項10】
波長500~800nmにおける透過率が5%以下である、請求項8に記載の硬化物。
【請求項11】
請求項8に記載の硬化物からなる被膜を備えたプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関し、より詳細にはソルダーレジスト等の絶縁層の形成に好適に使用できる感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物を用いたドライフィルム、感光性樹脂組成物またはドライフィルムの硬化物、およびそれら硬化物を用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の最外層に使用されることが多いソルダーレジストは、その用途等により、黒色化を要求される場合がある。例えば、LED関連配線板でLED光を際立たせるために光の吸収性の良い黒色にしたり、配線板の導体パターンを見えにくくするために高い隠蔽性を有した黒色にすることが求められる場合がある。また、光学センサー等の電子素子を実装するプリント配線板では、外部からの余計な光が入り込まないようセンサー周りを隠す材料が必要であり、可視光域から近赤外領域における高い遮光性が要求される。
【0003】
上記したような用途に使用する感光性樹脂組成物として、カーボンブラックを着色剤として用いた黒色感光性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、隠蔽性に優れる感光性樹脂組成物は光の透過率も低くなるため、露光時のパターニングの解像性が低下する傾向にある。そのため、部品の高精細化が進むほど、従来の黒色感光性樹脂組成物では対応が難しくなりつつある。
【0004】
上記のような問題に対して、特定の有機着色顔料を用いることで、露光時の光(紫外光領域の波長)の透過性を確保しつつ可視光領域での光の透過率の低い黒色硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、感光性樹脂組成物に使用されている多くの着色剤は近赤外領域である750nm以降の透過率が急激に高くなる傾向にあり、広い波長領域での遮光性(隠蔽性)を確保するため、近赤外線吸収剤を添加することも行われている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-257045号公報
【特許文献2】特開2014-63091号公報
【特許文献3】特開2015-86357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2で提案されている黒色硬化性樹脂組成物は、紫外線領域の透過率が高く解像性に優れるものであるものの、450nm程度の波長領域まで透過率が比較的高いため、少し赤みがかった黒色を呈するという問題がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、可視光領域から近赤外領域の広い範囲において隠蔽性に優れる黒色を有しながらも、解像性にも優れる感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題に対して本発明者らが検討を行ったところ、黒色着色剤と青色着色剤とを併用しながら、近赤外吸収剤を添加することにより、可視光領域から近赤外領域の広い範囲において隠蔽性に優れる黒色を有しながらも、解像性にも優れる感光性樹脂組成物が得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0010】
[1] (A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)黒色着色剤と、(D)青色着色剤と、(E)近赤外線吸収剤と、を含んでなる感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物を、表面を化学研磨した全面銅箔基板の銅箔面に塗布して膜厚10μmの硬化物を作製し、前記硬化物の表面を、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にて測定したL*a*b*表色系のa*およびb*を、それぞれa*1およびb*1とし、同条件にて膜厚30μmの硬化物を作製して同条件にて測定したL*a*b*表色系のa*およびb*を、それぞれa*2およびb*2とした場合において、
前記感光性樹脂組成物を塗布する銅箔の表面を、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にて測定したL*a*b*表色系のL*、a*およびb*が、それぞれ58<L*<75、16<a*<22、22<b*<27の範囲であり、
|a*1-a*2|として算出される色差Δa*、および|b*1-b*2|として算出される色差Δb*が、それぞれ下記式:
Δa*<0.2
Δb*<0.2
を満足することを特徴とする、感光性樹脂組成物。
[2] 前記(C)黒色着色剤は、可視光領域380~780nmにおいて、380~500nmに最小吸収値があり、500~780nmに最大吸収値がある、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 前記(D)青色着色剤は、可視光領域380~780nmにおいて、380~600nmに最小吸収値があり、600~780nmに最大吸収値がある、[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] 前記(C)黒色着色剤は、前記最大吸収値と前記最小吸収値との差が20%以上である、[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[5] 前記(C)黒色着色剤に対して、前記(D)青色着色剤が固形分換算で、15~25質量%の割合で含まれる、[1]~[4]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[6] 前記(C)黒色着色剤に対して、前記(E)近赤外線吸収剤が固形分換算で、100~300質量%の割合で含まれる、[1]~[5]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[7] 第一のフィルムと、前記第一のフィルムの一方の面に[1]~[6]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥した樹脂層とを備えた、ドライフィルム。
[8] [1]~[6]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、または[7]に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させた硬化物。
[9] JIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したL*が、15以下である、[8]に記載の硬化物。
[10] 波長500~800nmにおける透過率が5%以下である、[8]または[9]に記載の硬化物。
[11] [8]~[10]のいずれか一項に記載の硬化物からなる被膜を備えたプリント配線板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、黒色着色剤と青色着色剤とを併用しながら、近赤外吸収剤を添加することにより、可視光領域から近赤外領域の広い範囲において隠蔽性に優れる黒色を有しながらも、解像性にも優れる感光性樹脂組成物を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[感光性樹脂組成物]
本発明による感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)黒色着色剤と、(D)青色着色剤と、(E)近赤外線吸収剤とを必須成分として含む。そして、本発明においては、前記感光性樹脂組成物を、表面を化学研磨した全面銅箔基板の銅箔面に塗布して膜厚10μmの硬化物を作製し、前記硬化物の表面を、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にて測定したL*a*b*表色系のa*およびb*を、それぞれa*1およびb*1とし、同条件にて膜厚30μmの硬化物を作製し、同条件にて測定したL*a*b*表色系のa*およびb*を、それぞれa*2およびb*2とした場合において、
前記感光性樹脂組成物を塗布する銅箔の表面を、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にて測定したL*a*b*表色系のL*、a*およびb*が、それぞれ58<L*<75、16<a*<22、22<b*<27の範囲であり、
|a*1-a*2|として算出される色差Δa*、および|b*1-b*2|として算出される色差Δb*が、それぞれ下記式:
Δa*<0.2
Δb*<0.2
を満足することを特徴とするものである。
【0013】
すなわち、本発明においては、所定の全面銅箔基板の銅箔面に、膜厚が異なる感光性樹脂組成物の硬化物(硬化被膜)を形成した場合に、a*およびb*の変化(色差)が所定範囲内となるように、(C)黒色着色剤と(D)青色着色剤とを併用するとともに、(E)近赤外線吸収剤を配合することにより、可視光領域から近赤外領域の広い範囲において隠蔽性に優れる黒色を有しながらも、解像性にも優れる感光性樹脂組成物を実現することができる。この理由は定かではないが以下のように推察できる。すなわち、プリント配線板等の表面に硬化物からなる被膜を設けた際の当該硬化物の隠蔽力は、感光性樹脂組成物中の可視光・近赤外領域における光学密度の高さに依存するものの、膜厚が異なる硬化物とした場合にその色差Δa*およびΔb*が所定範囲内であるような光学密度を有する感光性樹脂組成物とすることで、硬化物からなる被膜の下地にその領域の光が届きにくく、かつ反射光を吸収するので色味が変化しにくいものと考えられる。
【0014】
本発明において、L*a*b*表色系のL*、a*およびb*は、JIS Z 8729に準拠して測定することができる。また、膜厚の異なる硬化物のa*およびb*をそれぞれ測定することで、色差Δa*、および色差Δb*を算出することができる。具体的には、以下の(1)~(7)の手順に従って測定することができる。
(1)まず、35μm厚の銅箔を全面に貼合せた全面銅箔基板の銅箔面を、メック株式会社製のCZ-8101Bを用いてエッチングレート1μmで化学研磨(粗化処理)したプリント配線板を準備する。感光性樹脂組成物を塗布する全面銅箔基板表面の色調は、銅箔の種類や化学研磨条件によっても異なり得るが、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にて測定した化学研磨後の銅箔表面のL*a*b*表色系のL*、a*およびb*が、それぞれ58<L*<75、16<a*<22、22<b*<27の範囲であれば、従来公知の全面銅箔基板や従来公知の化学研磨方法を使用することができる。例えば、銅箔表面をメック株式会社製のCZ-8101Bや、CZ-8100Mなどを用いてエッチングレート0.05~3μmで化学研磨することができる。また、L*、a*およびb*の測定は、コ二カミノルタ株式会社製の分光光度計CM-2600dを用いることができる。
(2)次いで、表面を化学研磨したプリント配線板の銅箔面に、感光性樹脂組成物をアプリケーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥して、樹脂層を形成する。
(3)続いて、樹脂層に、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いて、露光を行い、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行う。
(4)露光、現像を行った樹脂層に、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、170℃で60分加熱して樹脂層を硬化させて、銅箔上に厚さ10μmの硬化物が形成された基板を作製する。
(5)このようにして得られた基板の硬化物表面を、分光光度計(コニカミノルタ株式会社製、CM-2600d)を用いて、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にてL*a*b*表色系のa*およびb*を測定する。
(6)感光性樹脂組成物の塗布量を変えて銅箔上に厚さ30μmの硬化物が形成された基板を作製する以外は、厚さ10μmの硬化物が形成された基板の作製と同様にして、L*a*b*表色系のa*およびb*を測定する。
(7)測定した各a*およびb*から色差Δa*およびΔb*を算出する。
【0015】
化学研磨の処理剤としては、従来公知の処理剤を使用することができ、例えば、塩化銅系、過硫酸塩系、硫酸/過酸化水素系、ギ酸、有機酸系等が挙げられる。具体的には、塩化銅系としてはマクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社製のMultiPrep 200、過硫酸塩系としてはマクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社製のマイクロクリーン、ME-301、PR-820、硫酸/過酸化水素系としては四国化成工業株式会社製のGB-1000F、GB-1400、GB-200、GB-3100、GB-4300、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社製のマルチボンド100、マルチボンド150、マルチボンドMP、Metex G-5、Metex G-6、ME-501、ME-602、ME-605、ME-709、三菱ガス化学トレーディング株式会社製のCPE-900、EMR-7000、有機酸系としてはメック株式会社製のCZ-8100、CZ-8101、CZ-8201等が挙げられる。
【0016】
以下、本発明の感光性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
本発明による感光性樹脂組成物に含まれる(A)アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶される樹脂であれば何れでもよく、公知慣用のものが使用される。アルカリ可溶性樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例示としては、カルボキシル基含有樹脂や、フェノール性水酸基含有樹脂のような水溶性樹脂等が挙げられる。なかでも現像性に優れることより、カルボキシル基含有樹脂やフェノール性水酸基含有樹脂が好ましく、カルボキシル基含有樹脂がより好ましい。アルカリ可溶性樹脂が、カルボキシル基を含むことにより、アルカリ現像性とすることができる。また、感光性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを使用してもよい。カルボキシル基含有樹脂がエチレン性不飽和二重結合を有さない場合は、組成物を光硬化性とするために光重合性モノマーを併用する必要がある。エチレン性不飽和二重結合としては、アクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体由来のものが好ましい。
【0017】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0018】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0019】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0020】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物との反応物の部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0021】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0022】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0023】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0024】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0025】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0026】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0027】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0028】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0029】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0030】
これらカルボキシル基含有樹脂は、前記列挙したもの限らず使用することができ、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0031】
カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40~150mgKOH/gであることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g以上とすることにより、アルカリ現像が良好になる。また、酸価を150mgKOH/gを以下とすることで、良好なレジストパターンの描画をし易くできる。より好ましくは、50~130mgKOH/gである。
【0032】
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上とすることにより、タックフリー性能や解像度を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下とすることで、現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。より好ましくは、5,000~15,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0033】
上記した(A)アルカリ可溶性樹脂の配合量は、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、10~50質量%であることが好ましい。10質量%以上とすることにより塗膜強度を向上させることができる。また50質量%以下とすることで粘性が適当となり印刷性が向上する。より好ましくは、10~40質量%である。
【0034】
<(B)光重合開始剤>
本発明による感光性樹脂組成物は、上記した(A)アルカリ可溶性樹脂や後記する(D)光重合性モノマーを光重合させるために(B)光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤;ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンゾインアルキルエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン等のアセトフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系光重合開始剤;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール系光重合開始剤;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル系光重合開始剤;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤;等を挙げることができる。これら光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
市販されるα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。
市販されるアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、IGM Resins社製のOmnirad 819等が挙げられる。
市販されるチタノセン系光重合開始剤としては、Yueyang Kimoutain Sci-tech Co.,Ltd.製のJMT-784、湖北固潤科技股分有限公司製のGR-FMT等が挙げられる。
【0036】
また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式(I)で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【化1】
【0037】
上記式中、Xは、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、炭素数1~10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5-ピロール-ジイル、4,4’-スチルベン-ジイル、4,2’-スチレン-ジイルを表し、nは0または1の整数である。
【0038】
特に、上記式中、X、Yが、それぞれ、メチル基またはエチル基であり、Zがメチルまたはフェニルであり、nが0であり、Arが、フェニレン、ナフチレン、チオフェンまたはチエニレンであるオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0039】
上記した光重合開始剤以外にも、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物等を光重合開始剤として使用するができる。上記した中でも、深部硬化性の観点から、チオキサントン化合物および3級アミン化合物が好ましく、チオキサントン化合物がより好ましい。また、上記化合物2種以上を併用してもよい。なお、ここで例示した光重合開始剤は、これらのみを光重合開始剤として使用するよりも、上記した光重合開始剤と併用して、光重合開始助剤または増感剤として使用することが好ましい。
【0040】
感光性樹脂組成物における(B)光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。これにより、深部の硬化性を向上することができる。
【0041】
また、感光性樹脂組成物が、上記ベンゾイン化合物等を光重合開始助剤等として含む場合、その配合量は、固形分換算で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。これにより、深部の硬化性を向上することができる。
【0042】
<(C)黒色着色剤>
本発明による感光性樹脂組成物を構成する(C)黒色着色剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知の黒色着色剤を使用することができるが、好ましくは、可視光領域380~780nmにおいて、380~500nmに最小吸収値があり、500~780nmに最大吸収値があるような黒色着色剤が挙げられる。このような特定の黒色着色剤を使用することにより、黒色着色剤の含有量を増やしても、紫外線領域では透過度が高いため、OD値が高い黒色濃度であっても、優れた解像性を維持することができる。解像性の観点から、特に、最大吸収値の最小吸収値の差が20%以上であるような黒色着色剤を好ましく使用することができる。
【0043】
可視光領域380~780nmにおいて、380~500nmに最小吸収値があり、500~780nmに最大吸収値があるような黒色着色剤としては、黒色ペリレン系黒色顔料、窒化ジルコニウム粉末、窒化ジルコニウム粉末と窒化チタン粉末または酸窒化チタン粉末の混合物等が挙げられる。これらのなかでも、黒色ペリレン系黒色顔料、窒化ジルコニウム粉末をより好ましく使用することができる。また、黒色ペリレン系黒色顔料として、ピグメントブラック31、ピグメントブラック32や、近赤外線にも吸収帯域を持つ黒色ペリレン系黒色顔料として知られているBASF社のLumogen Black FK4280、同FK 4281等を好ましく使用することができる。
【0044】
(C)黒色着色剤の配合量は、可視光領域において、所望の高いOD値を得る観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体に対して、1.0~2.5質量%であることが好ましく、1.6~1.8質量%であることがより好ましい。
【0045】
<(D)青色着色剤>
本発明による感光性樹脂組成物を構成する(D)青色着色剤は、特に制限されるものではなく、従来公知の青色着色剤を使用することができるが、好ましくは、可視光領域380~780nmにおいて、380~600nmに最小吸収値があり、600~780nmに最大吸収値のある青色着色剤が挙げられる。このような青色着色剤を上記した黒色着色剤と併用することで、黒色着色剤の配合割合を増やしながら(すなわち、可視光領域での隠蔽性を向上させながら)、赤味が呈することを抑制することができる。
【0046】
上記のような吸収波長特性を有する青色着色剤であれば、特に制限なく使用することができ、有機系着色剤であっても無機系着色剤であってもよいが、有機系着色剤を好ましく使用することができる。
【0047】
有機系着色剤のなかでも、光硬化性、着色性および可視光領域の遮蔽性に優れているフタロシアニン系、ジオキサジン系、ペリレン系が好ましい。具体的に例えば、フタロシアニン系であればPigment Blue 15:3、15:4、15:6、ペリレン系であればLumogen Black FK4280、Lumogen Black FK4281、オキサジン系であればPigmentViolet 23、37が好ましく、これらのうちの1種を単独で、または、2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0048】
(D)青色着色剤の配合量は、a*値を所望の範囲とする観点から、(C)黒色着色剤に対して固形分換算で、15~25質量%であることが好ましく、23~27質量%であることがより好ましい。また、可視光領域において、所望の高いOD値を得る観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体に対して、0.2~0.9質量%であることが好ましく、0.2~0.5質量%であることがより好ましい。
【0049】
<(E)近赤外線吸収剤>
本発明による感光性樹脂組成物を構成する(E)近赤外線吸収剤としては、公知慣用のものが使用できるが、500~1000nmに吸収極大を有する色素を使用することが好ましく、最大吸収波長が800~1000nmであるものを使用することがより好ましい。このような色素としては、金属錯体色素および縮合多環系色素を用いることができ、具体的には例えば、フタロシアニン系色素、ポリフィリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、アゾ系、アミニウム系、アンスラキノン系、ジイモニウム系、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体色素、銅イオン系色素、ジチオール金属錯体、複素環系化合物等が挙げられる。この中でも、複素環系化合物、クアテリン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素等の可視光領域にも吸収があるものが好ましい。製品としては、FDN-003、FDN-004、FDN-005、FDN-006、FDN-007、FDN-008、FDN-009、FDN-010(何れも、山田化学工業株式会社製)等が挙げられる。また、上記波長範囲内に吸収極大があり、かつ、光を効率的に吸収し増感作用を持つ金属錯体を持つ色素が好ましい。これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0050】
また、可視光領域から近赤外領域の広い範囲において隠蔽性を向上させながら解像性も両立させる観点から、(E)近赤外線吸収剤は、(C)黒色着色剤に対して、固形分換算で、100~300質量%の割合で含まれることが好ましく、200~280質量%の割合で含まれることがより好ましく、235~255質量%の割合で含まれることがさらに好ましい。
【0051】
(E)近赤外線吸収剤の配合量は、可視光領域から近赤外領域の広い範囲において隠蔽性に優れる黒色を得る観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体に対して、1~6質量%であることが好ましく、3~5質量%であることがより好ましい。
【0052】
<光重合性モノマー>
本発明の感光性樹脂組成物は、光重合性モノマーを含んでもよい。光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、公知慣用のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート類;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキサイド誘導体のモノまたはジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのアルキレンオキサイド付加物あるいはε-カプロラクトン付加物等由来の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等のフェノール類またはこれらのアルキレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテル由来のアクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオール等のポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくともいずれか1種から適宜選択して用いることができる。このような光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。
【0053】
光重合性モノマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。光重合性モノマーの配合量は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、固形分換算で0.5~30質量部であることが好ましい。配合量が0.5質量部以上であると、光硬化性が良好であり、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像において、パターン形成がしやすい。また、配合量が30質量部以下であると、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られる。
【0054】
<熱硬化性成分>
本発明の感光性樹脂組成物は、上記した成分に加えて、熱硬化性成分が含まれていてもよい。熱硬化性成分としては、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用のものが挙げられる。これらの中でも好ましい熱硬化性成分は、エポキシ樹脂である。
【0055】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
市販されるエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
【0057】
感光性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂のエポキシ基の当量は、カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の当量1に対して、固形分換算で0.5~2.5であることが好ましい。0.5当量以上とすることで、硬化物におけるカルボキシル基の残存を防止して、良好な耐熱性や耐アルカリ性、電気絶縁性等を得ることができる。また、上記配合量を2.5当量以下とすることで、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することを防止して、硬化物の強度等を良好に確保することができる。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物に熱硬化性成分が含まれる場合は、熱硬化性成分の硬化を促進するための熱硬化触媒を含んでいてもよい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。
【0059】
上記した化合物に限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも何れか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
【0060】
熱硬化触媒は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化触媒の配合量は、樹脂組成物の保存安定性や硬化被膜の耐熱性の観点から、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して固形分換算で0.01~30質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましい。
【0061】
<その他の成分>
本発明による感光性樹脂組成物は、得られる硬化物の物理的強度を向上させたり表面のマット感を調整する観点から、感光性樹脂組成物には必要に応じてフィラーを配合することができる。フィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用できるが、特に、硫酸バリウム、球状シリカ、ハイドロタルサイトおよびタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を得るために金属酸化物や水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとして使用することができる。
【0062】
フィラーの配合量は特に限定されるものではないが、粘度、塗布性、成形性等の観点から、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して300質量部以下が好ましい。より好ましくは50~200質量部である。
【0063】
また、上記したフィラーは、感光性樹脂組成物中での分散性を高めるために表面処理されたものであってもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0064】
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、あらかじめフィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、球状シリカ100質量部に対するカップリング剤の処理量は、0.5~10質量部であることが好ましい。
【0065】
また、本発明による感光性樹脂組成物には、上記した着色剤以外にも、必要に応じて他の着色剤が含まれていてもよい。着色剤としては、赤、緑、黄等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよいが、環境負荷の低減や人体への影響が少ない観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0066】
感光性樹脂組成物には、樹脂層を形成する際の調製のし易さや塗布性の観点から有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
感光性樹脂組成物における有機溶剤の配合量は、感光性樹脂組成物を構成する材料に応じ適宜変更することができ、例えば、アルカリ可溶性樹脂の固形分100質量部に対して30~300質量部とすることができる。
【0068】
感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じてエラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0069】
<ドライフィルム>
本発明の感光性樹脂組成物は、第一のフィルムと、当該第一のフィルム上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。本発明によるドライフィルムにおける第一のフィルムとは、基板等の基材上に、ドライフィルム上に形成された感光性樹脂組成物からなる樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には少なくとも樹脂層に接着しているものをいう。第一のフィルムは、ラミネート後の工程において、樹脂層から剥離しても良い。特に、本発明においては露光後の工程において、樹脂層から剥離することが好ましい。
【0070】
ドライフィルムを作製するには、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第一のフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、1~150μm、好ましくは10~60μmの範囲で適宜選択される。
【0071】
第一のフィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を第一のフィルムとして使用することもできる。
【0072】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0073】
第一のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0074】
第一のフィルム上に本発明の感光性樹脂組成物の樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な第二のフィルムを積層することが好ましい。本発明によるドライフィルムにおける第二のフィルムとは、基板等の基材上にドライフィルムの樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際、ラミネート前に樹脂層から剥離するものをいう。
【0075】
樹脂層から剥離可能な第二のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、第二のフィルムを剥離するときに樹脂層と第一のフィルムとの接着力よりも樹脂層と第二のフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0076】
第二のフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0077】
<硬化物>
本発明の硬化物は、上記した感光性樹脂組成物、または上記したドライフィルムの樹脂層を硬化して得られるものである。
【0078】
本発明の硬化物は、JIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したL*が、15以下であることが好ましい。具体的には、感光性樹脂組成物の塗布量を変えて銅箔上に厚さ20μmの硬化物が形成された基板を作製する以外は、前述したL*a*b*表色系のL*、a*およびb*の測定方法と同様にして測定することができる。
【0079】
本発明の硬化物は、波長500~800nmにおける透過率が5%以下であることが好ましい。具体的には、以下のように測定することができる。感光性樹脂組成物を、厚さ1mmのF-1ガラス基板(光透過率90%)にアプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥して、ガラス基板上に樹脂層を形成する。次いで、樹脂層に、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いて、露光を行い、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行う。得られた基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、150℃で60分加熱して樹脂層を硬化させて評価基板を作製する。得られた評価基板について、UV-VIS測定装置(V-670 EX、日本分光株式会社製)を用いて、波長500~800nmでの透過率を測定する。
【0080】
<プリント配線版>
本発明のプリント配線板は、本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の感光性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、第一のフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0081】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0082】
ドライフィルムの形態である場合には、基材上への貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、基材表面に感光性樹脂組成物を塗布した後、揮発乾燥を行うことが好ましい。揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより基材に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0084】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。ドライフィルムの場合には、露光後、ドライフィルムから第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより、基材上にパターニングされた硬化物を形成する。なお、ドライフィルムの形態である場合、特性を損なわない範囲であれば、露光前にドライフィルムから第一のフィルムを剥離して、露出した樹脂層を露光および現像しても良い。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【0085】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0086】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0087】
上記のようにして基材上に硬化被膜を形成した後、基材上に電子素子等の部品がはんだリフロー処理により実装される。はんだリフロー処理は従来公知の方法により行うことができる。また、はんだリフローは、例えば245~260℃で5~10秒の処理条件により行うのが一般的である。
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムは、プリント配線板等の電子部品製造用として好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用される。その際、本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムを用いて、上記した方法等により硬化物を形成する。本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層が絶縁性である場合、好適には、ソルダーレジストまたはカバーレイまたは層間絶縁層を形成するために使用される。
【実施例0089】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0090】
<合成例 アルカリ可溶性樹脂の合成>
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート650質量部にオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g、アクリル酸360g、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。
次いで、トリフェニルフォスフィン4.3質量部を仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、更にトリフェニルフォスフィン1.6質量部を追加し、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。
得られた反応液に芳香族系炭化水素(株式会社スタンダード石油大阪発売所製、ティーソル150)525g、テトラヒドロ無水フタル酸608g(4.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行った。さらに、得られた反応液にグリシジルメタクリレート142.0gを仕込み、115℃で4時間反応を行った。
このようにして、固形分65%、固形分の酸価77mgKOH/gであるアルカリ可溶性樹脂の溶液を得た。
【0091】
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表1に記載の各成分を配合し、3本ロールミルを用いて室温にて混合することにより、同表に記載の各感光性樹脂組成物を得た。なお、表中の各数値は質量部を示し、溶剤以外は固形分換算量での値を示す。
【0092】
なお、下記表1中の各成分*1~*7は、以下のとおりである。
*1:合成例にて合成したアルカリ可溶性樹脂
*2:α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤(IGM Resins社製)
*3:下記式で表されるオキシムエステル系光重合開始剤
【化2】
*4:α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤(IGM Resins社製)
*5:ペリレンブラック(最小吸収波長400nm、最大吸収波長600nm、最大吸収値と最小吸収値との差50%)
*6:カーボンブラック(最小吸収波長780nm、最大吸収波長380nm、最大吸収値と最小吸収値との差20%未満)
*7:NITRBLACK UB-2(三菱マテリアル株式会社製、最小吸収波長350nm、最大吸収波長500nm、最大吸収値と最小吸収値との差20%)
*8:FASTOGEN BLUE FA5380(DIC株式会社、最小吸収波長510nm、最大吸収波長660nm)
*9:Cromophtal Violet D 5700(BASFジャパン株式会社製、最小吸収波長420nm、最大吸収波長560nm)
*10:ナフタロシアニン系色素(山田化学工業株式会社製、最大吸収波長853nm)
*11:ナフタロシアニン系色素(山田化学工業株式会社製、最大吸収波長992nm)
*12:LumogenIR 765(BASFジャパン株式会社製、最大吸収波長765nm)
*13:N-770(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製)
*14:jER 828(ビスフェノール型エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製)
*15:NC-3000-H(エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製)
*16:タルク(日本タルク株式会社製、平均粒子径0.85μm)
*17:硫酸バリウム(平均粒子径0.8μm)
*18:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0093】
<a*およびb*の測定>
35μm厚の銅箔を全面に貼合せた全面銅箔基板の銅箔面を、メック株式会社製のCZ-8101Bを用いてエッチングレート1μmで化学研磨(粗化処理)したプリント配線板を準備した。表面を化学研磨したプリント配線板の銅箔面に、上記のようにして得られた各感光性樹脂組成物をアプリケーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥して、樹脂層を形成した。
次いで、樹脂層に、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いて、露光を行い、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行った。得られた基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、170℃で60分加熱して樹脂層を硬化させて、銅箔上に厚さ10μmの硬化物が形成された基板を作製した。
次いで、上記のようにして得られた基板の硬化物表面を、分光光度計(コニカミノルタ株式会社製、CM-2600d)を用いて、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にてL*a*b*表色系のa*およびb*を測定した。
なお、銅箔表面を化学研磨した銅厚35μmの全面銅箔基板の表面を、分光光度計(コニカミノルタ株式会社製、CM-2600d)を用いて、JIS Z 8729に準拠して全反射光込みの条件にてL*a*b*表色系のL*、a*およびb*を測定したところ、L*=62、a*=20.8、b*=25.4であった。
【0094】
また、感光性樹脂組成物の塗布量を変えて銅箔上に厚さ30μmの硬化物が形成された基板を作製した以外は上記と同様にして、L*a*b*表色系のa*およびb*を測定した。
【0095】
得られた各a*およびb*から色差Δa*およびΔb*を算出した。結果は、表1に示されるとおりであった。
【0096】
<L*の測定>
感光性樹脂組成物の塗布量を変えて銅箔上に厚さ20μmの硬化物が形成された基板を作製した以外は上記<a*およびb*の測定>と同様にして、L*a*b*表色系のL*を測定した。測定結果は、表1に示されるとおりであった。
【0097】
<光透過性の評価>
各感光性樹脂組成物を、厚さ1mmのF-1ガラス基板(光透過率90%)にアプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥して、ガラス基板上に樹脂層を形成した。
次いで、樹脂層に、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載の露光装置を用いて、露光を行い、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行った。得られた基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、150℃で60分加熱して樹脂層を硬化させて評価基板とした。
【0098】
上記のようにして得られた評価基板について、UV-VIS測定装置(V-670 EX、日本分光株式会社製)を用いて、波長500~800nmでの透過率を測定し、下記の評価基準により光透過性の評価を行った。
○:透過率が5%以下である
×:透過率が5%超である
評価結果は下記の表1に示されるとおりであった。
【0099】
<解像性の評価>
上記のようにして得られた各感光性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて第一のフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム(T-60、東レ株式会社製、厚さ38μm)の表面に乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥して樹脂層を形成し、樹脂層上に第二のフィルムとしてポリプロピレンフィルム(OPP-FOA、フタムラ株式会社製、厚さ18μm)を貼合することでドライフィルムを作製した。
【0100】
次いで、FR-4銅張積層板(100mm×150mm×0.8mmt、両面銅箔、銅箔の厚みは両面ともに18μm)の銅箔表面をメック株式会社製のCZ-8101Bを用いてエッチングレート1μmで化学研磨を行い、化学研磨された銅箔表面に、上記のようにして得られた各ドライフィルムから第二のフィルムを剥離して露出したドライフィルムの樹脂層の露出面を貼り合わせ、続いて、真空ラミネーター(株式会社名機製作所製 MVLP-500)を用いて加圧度:0.8Mpa、70℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネートして、基板と樹脂層とを密着させて試験基板を得た。
次いで、ショートアーク型高圧水銀灯搭載の平行光露光装置を用いて、露光マスクを介して、第一のフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム面側から、SRO(ソルダーレジスト開口部)200μmとなるように設計したネガパターンを用いて露光をそれぞれした後、第一のフィルムを手で約1秒で剥離して樹脂層を露出させた。なお、露光量は、感光性フィルムに接する第一のフィルム上から、Stouffer41段を用いて露光した際に7段となる露光量とした。その後、露出した感光性フィルムの露出表面に対し、1重量%NaCO水溶液を用いて、30℃、スプレー圧2kg/cmの条件で90秒現像を行い、パターニングした。続いて、高圧水銀灯を備えたUVコンベア炉にて1000mJ/cmの露光量でパターニングされた感光性フィルムに照射した後、150℃で60分加熱して追加硬化されて硬化被膜を形成し、基板上に硬化被膜が形成された試験基板を作製した。各試験基板の開口径100μmの開口部をSEMにより観察し、トップとボトムの開口部の大きさの差を評価した。解像性は以下の基準にて評価した。
○:トップとボトムで差が30μm以下である
×:トップとボトムで差が30μm超である
評価結果は下記の表1に示されるとおりであった。
【0101】
【表1】
【0102】
表1からも明らかなように、特定の黒色着色剤と特定の青色着色剤とを併用し、さらに近赤外線吸収剤を含む感光性組成物(実施例1~5)は、可視光領域から近赤外領域の広い範囲において隠蔽性に優れる黒色を有しながらも、解像性にも優れることがわかる。
一方、特定の黒色着色剤、特定の青色着色剤、および近赤外線吸収剤のいずれかを含まない感光性樹脂組成物(比較例1~3、5)では、解像性には優れるものの隠蔽性に優れる黒色の観点から不十分であるといえる。また、黒色着色剤および青色着色剤を併用しさらに近赤外線吸収剤を含む感光性樹脂組成物(比較例4)であっても、黒色着色剤および青色着色剤の吸収特性によっては、解像性と隠蔽性とを両立できないことがわかる。