(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146938
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241004BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20241004BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J7/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058924
(22)【出願日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2023058169
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】片倉 美樹
(72)【発明者】
【氏名】安井 未央
(72)【発明者】
【氏名】陳 俊達
【テーマコード(参考)】
2H149
4J004
【Fターム(参考)】
2H149AB19
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA13
2H149EA22
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA08X
2H149FA66
2H149FD18
2H149FD32
2H149FD35
2H149FD47
4J004AA10
4J004AA17
4J004AA18
4J004AB01
4J004AB06
4J004CA03
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC03
4J004DB02
4J004FA01
4J004FA08
(57)【要約】
【課題】耐溶剤性にすぐれ且つ高温高湿環境における反りを低減できる偏光板を提供する。
【解決手段】偏光板100は、(メタ)アクリル系樹脂フィルム10、第1接着剤層12、偏光子20、第2接着剤層14、保護フィルム30、及び、粘着剤層40をこの順に備える。(メタ)アクリル系樹脂フィルム10のマルテンス硬さが140N/mm
2以上であり、粘着剤層40の25℃且つ測定周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が1.5×10
5Pa以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系樹脂フィルム、第1接着剤層、偏光子、第2接着剤層、保護フィルム、及び、粘着剤層をこの順に備える偏光板であって、
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムのマルテンス硬さが140N/mm2以上であり、
前記粘着剤層の25℃且つ測定周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が1.5×105Pa以下である偏光板。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、
25℃におけるMD方向の引張弾性率をTMD(25℃)、80℃におけるMD方向の引張弾性率をTMD(80℃)、
25℃におけるTD方向の引張弾性率をTTD(25℃)、80℃におけるTD方向の引張弾性率をTTD(80℃)とする場合、
TMD(25℃)/TMD(80℃)およびTTD(25℃)/TTD(80℃)がいずれも2.0未満である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、
80℃且つ測定周波数10HzにおけるMD方向の貯蔵弾性率G’MD(80℃)と、80℃におけるMD方向の引張弾性率TMD(80℃)の比G’MD(80℃)/TMD(80℃)が、1.2未満である、請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、
80℃且つ測定周波数10HzにおけるMD方向の貯蔵弾性率をG’MD(80℃)、80℃且つ測定周波数10HzにおけるTD方向の貯蔵弾性率をG’TD(80℃)とすると、G’MD(80℃)/G’TD(80℃)が1.05以下である、請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、透湿度と厚みの積が2500(g/m2・24hr・μm)以下である請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項6】
前記偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムであって、ホウ素化合物を含み、ホウ素含有量が4.0wt%以下である、請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項7】
前記第1接着剤層が、(メタ)アクリル系接着剤の硬化物である、請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項8】
前記保護フィルムが環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである、請求項1又は2に記載の偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂フィルム/偏光子/シクロオレフィン系樹脂フィルムという構成の偏光板が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-200339号公報
【特許文献2】特開2017-204007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、当該偏光板は、ディスプレイパネルなどの基材フィルムに貼り付けられた状態で高温高湿環境に保管した際に反るという課題や耐溶剤性が十分でないという課題があった。
【0005】
本発明は、耐溶剤性にすぐれ且つ高温高湿環境における反りを低減できる偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1](メタ)アクリル系樹脂フィルム、第1接着剤層、偏光子、第2接着剤層、保護フィルム、及び、粘着剤層をこの順に備える偏光板であって、
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムのマルテンス硬さが140N/mm2以上であり、
前記粘着剤層の25℃且つ測定周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が1.5×105Pa以下である偏光板。
【0007】
[2]前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、
25℃におけるMD方向の引張弾性率をTMD(25℃)、80℃におけるMD方向の引張弾性率をTMD(80℃)、
25℃におけるTD方向の引張弾性率をTTD(25℃)、80℃におけるTD方向の引張弾性率をTTD(80℃)とする場合、
TMD(25℃)/TMD(80℃)およびTTD(25℃)/TTD(80℃)がいずれも2.0未満である、[1]に記載の偏光板。
【0008】
[3]前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、
80℃且つ測定周波数10HzにおけるMD方向の貯蔵弾性率G’MD(80℃)と、80℃におけるMD方向の引張弾性率TMD(80℃)の比G’MD(80℃)/TMD(80℃)が、1.2未満である、[1]又は[2]に記載の偏光板。
【0009】
[4]前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、
80℃且つ測定周波数10HzにおけるMD方向の貯蔵弾性率をG’MD(80℃)、80℃且つ測定周波数10HzにおけるTD方向の貯蔵弾性率をG’TD(80℃)とすると、G’MD(80℃)/G’TD(80℃)が1.05以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の偏光板。
【0010】
[5]前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、透湿度と厚みの積が2500(g/m2・24hr・μm)以下である[1]~[4]のいずれか一項に記載の偏光板。
【0011】
[6]前記偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムであって、ホウ素化合物を含み、ホウ素含有量が4.0wt%以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の偏光板。
【0012】
[7]前記第1接着剤層が、(メタ)アクリル系接着剤の硬化物である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の偏光板。
【0013】
[8]前記保護フィルムが環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の偏光板。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐溶剤性にすぐれ且つ高温高湿環境における反りを低減できる偏光板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る偏光板の断面の模式図である。
【
図2】湿熱反り試験の反り量の測定箇所を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(偏光板)
本発明の一実施形態に係る偏光板100は、
図1に示すように、(メタ)アクリル系樹脂フィルム10、第1接着剤層12、偏光子20、第2接着剤層14、保護フィルム30、及び、粘着剤層40をこの順に備える。
【0017】
((メタ)アクリル系樹脂フィルム10)
(メタ)アクリル系樹脂フィルム10は、(メタ)アクリル系樹脂を含むフィルムであり、偏光子20の保護フィルムとして機能する。
【0018】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル、中でも(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主な構造単位(全構造単位に対して50質量%以上)とする重合体である。この樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体でも、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルを用いた共重合体でもよく、さらに、(メタ)アクリル酸エステルとこれに共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。同様に、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステルの具体例を挙げると、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、及びアクリル酸ドデシルの如き、アクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルの如き、メタクリル酸アルキルエステルなどがある。
【0020】
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル部位に水酸基やハロゲン原子の如き任意の置換基を有していてもよい。そのような置換基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例を挙げると、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジルなどがある。
【0021】
これらの(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メタクリル酸メチルが、アクリル系樹脂の主原料として好適に用いられる。すなわち、後でも具体的に述べるように、メタクリル酸メチルの単独重合体、メタクリル酸メチルを主な構成モノマーとし、それと他の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸メチルを主な構成モノマーとし、それと(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体との共重合体、又はメタクリル酸メチルを主な構成モノマーとし、それと他の(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体との共重合体が、(メタ)アクリル系樹脂として好適である。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステルに共重合可能な単量体の例を挙げると、上述した(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、アルケニル芳香族化合物、共役ジエン、非共役ジエン、シアン化ビニル、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸アミド、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィンなどを挙げることができる。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステルの具体例として、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノブチルなどを挙げることができる。また、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸は、モノカルボン酸、多価カルボン酸、及び多価カルボン酸無水物のいずれでもよく、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などを挙げることができる。
【0024】
アルケニル芳香族化合物の具体例として、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-2-,-3-又は-4-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。共役ジエンの具体例として、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、シクロペンタジエンなどを挙げることができる。非共役ジエンの具体例として、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどを挙げることができる。
【0025】
シアン化ビニルの具体例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリルなどを挙げることができる。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸アミドの具体例として、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドなどを挙げることができる。カルボン酸不飽和アルコールエステルの具体例として、酢酸ビニルなどを挙げることができる。オレフィンの具体例として、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどを挙げることができる。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体を共重合させる場合、(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体は1種類だけでもよいし、2種類以上を共重合させてもよい。このような(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体を共重合させる場合、(メタ)アクリル系樹脂中のそれら単量体に由来する構造単位の含有量は、全構成単位中好ましくは50重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0027】
本発明で使用するのに好ましい(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、ポリ(メタクリル酸メチル)、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチルの共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/スチレンの共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸ブチルの共重合体、メタクリル酸メチル/エチレンの共重合体などを挙げることができる。これらのうち、メタクリル酸メチルに由来する構造単位が、全構造単位中70重量%以上、さらには80重量%以上、とりわけ90重量%以上である重合体が好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリル系樹脂の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量で、例えば5万~50万程度である。重量平均分子量がこの範囲内にあると、溶融押出法によりフィルムを形成するときに均質なフィルムが得られやすい。
【0028】
(メタ)アクリル系樹脂がその主鎖に環構造を有する場合は、最終的に得られる(メタ)アクリル系樹脂フィルムの耐熱性及び硬度を向上させることができる。(メタ)アクリル系樹脂が主鎖に環構造を有する場合、当該樹脂における環構造の含有率は、一般には0.1~99質量%、1~95質量%、2~93質量%、あるいは、5~90質量%の範囲でありうるが、10~70重量%、さらには10~60重量%、とりわけ10~50質量%の範囲とするのが、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの延伸性やハンドリング性を適度に保ちながら、上の耐熱性や硬度を向上させるうえでは好ましい。環構造の含有率が過度に大きくなると、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの延伸性やハンドリング性が低下する。
【0029】
(メタ)アクリル系樹脂が主鎖に有していてもよい環構造として、例えば、グルタルイミド構造、ラクトン環構造、無水コハク酸構造、コハク酸イミド構造、などを挙げることができる。
【0030】
グルタルイミド構造は、好ましくは、下記一般式(1)で表される:
【0031】
【0032】
一般式(1)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~8のアルキル基を示し、R13は、炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、または炭素数6~10のアリール基を示す。一般式(1)において好ましくは、R11およびR12は、それぞれ独立して水素またはメチル基であり、R13は水素、メチル基、ブチル基またはシクロヘキシル基である。より好ましくは、R11はメチル基であり、R12は水素であり、R13はメチル基である。アクリル系樹脂には、単一のグルタルイミド単位のみが含まれていてもよく、上記一般式(1)におけるR11、R12およびR13が異なる複数のグルタルイミド構造が含まれていてもよい。グルタルイミド構造を有するアクリル系樹脂は、例えば、特開2006-309033号公報、特開2006-317560号公報、特開2006-328334号公報、特開2006-337491号公報、特開2006-337492号公報、特開2006-337493号公報、特開2006-337569号公報に記載されている。
【0033】
(メタ)アクリル系樹脂におけるグルタルイミド環含有率は0.1~20質量%とすることができ、1~10質量%であってもよい。
【0034】
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、市販されており、公知の方法により製造することもできる。
【0035】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムには、(メタ)アクリル系樹脂以外に、ゴム粒子が配合されていてもよい。配合しうるゴム粒子としては、アクリル酸エステルを主な構成モノマーとするゴム状重合体、ブタジエンを主な構成モノマーとするゴム状重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。中でも、アクリル酸エステルを主な構成モノマーとするゴム状重合体であるアクリルゴム粒子が好ましい。もちろん、アクリルゴム粒子と他のゴム粒子を併用してもよい。
【0036】
アクリルゴム粒子は、アクリル酸ブチルやアクリル酸2-エチルヘキシルの如き、アルキル基の炭素数が多い、例えば炭素数4~8程度のアクリル酸アルキルエステルを主な構成モノマーとするものであることができる。これらの中でも、アクリル酸ブチルを主な構成モノマーとする弾性重合体が好ましい。アクリル酸アルキルエステルを主な構成モノマーとする弾性重合体からなる単層構造のゴム粒子であってもよいが、当該弾性重合体の層を含む多層構造のゴム粒子も有効である。後者の代表例として、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルとスチレンとのグラフト化弾性重合体の如き、アクリル系弾性重合体の層と、メタクリル酸メチルを主な構成モノマーとする硬質重合体層とが、コア-シェル構造で層を形成しているゴム粒子が挙げられる。さらに具体的には、アクリル系弾性体の外側に上記の硬質重合体の層が形成された2層構造のものや、アクリル系弾性体の内側に上記の硬質重合体の層が形成され、アクリル系弾性体の外側にも上記の硬質重合体の層が形成された3層構造のものがある。
【0037】
特にこのような多層構造のアクリルゴム粒子を配合したものが、好適な例として挙げられる。多層構造のアクリルゴム粒子を配合すれば、(メタ)アクリル系樹脂のビカット軟化点を必要以上に低下させることなく引張破壊歪みの値を調節して、耐熱性を低下させることなくフィルム成型時の破断を防ぐことができる。
【0038】
ゴム粒子は、(メタ)アクリル系のベース樹脂中に分散した状態での数平均粒径が1,000nm以下、さらには100~1,000nmの範囲、とりわけ100~500nmの範囲にあることが好ましい。ゴム粒子の数平均粒径が大きいと、フィルムのヘイズ(曇り度)が大きくなりすぎて、光線透過率が低くなる。一方、数平均粒径が小さすぎると、フィルムの可撓性が低下する傾向にある。
【0039】
アクリル系弾性重合体を含有するアクリル系ゴム粒子の平均粒径は、次のようにして測定される。すなわち、このようなゴム粒子をアクリル系のベース樹脂に配合してフィルム化し、その断面を酸化ルテニウムの水溶液で染色すると、アクリル系弾性重合体の層だけが着色してほぼ円形状に観察され、母層のアクリル系樹脂は染色されない。そこで、このようにして染色されたフィルム断面から、ミクロトームなどを用いて薄片を調製し、これを電子顕微鏡で観察する。そして、無作為に100個の染色された弾性重合体粒子を抽出し、各々の粒子径を算出した後、その数平均値を平均粒径とする。このような方法で測定するため、ここで規定するゴム粒子の平均粒径は、数平均粒径となる。
【0040】
最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体であり、その中にアクリル系弾性重合体が包み込まれているゴム粒子を用いた場合、それをアクリル系の母体樹脂に混合すると、ゴム粒子の最外層がアクリル系の母体樹脂と混和する。そのため、その断面を酸化ルテニウムで染色し、電子顕微鏡で観察すると、そのゴム粒子が、最外層を除いた状態の粒子として観察される。具体的には、内層がアクリル系弾性重合体であり、外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質重合体である2層構造のゴム粒子を用いた場合には、内層のアクリル系弾性重合体部分が染色されて単層構造の粒子として観察され、また、最内層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質重合体であり、中間層がアクリル系弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質重合体である3層構造のゴム粒子を用いた場合には、最内層の粒子中心部分が染色されず、中間層のアクリル系弾性重合体部分のみが染色された2層構造の粒子として観察されることになる。
【0041】
(メタ)アクリル系のベース樹脂に対するゴム粒子の添加量は、ゴム粒子が配合された(メタ)アクリル系樹脂組成物全体の量を基準に、10~50重量%、さらには10~40重量%であることが好ましい。ゴム粒子の量が少なすぎると、フィルムの滑り性や可撓性が十分でなく、逆に多すぎると、フィルムの耐熱性が十分に実現されにくくなる。
【0042】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムにおいて、(メタ)アクリル系樹脂の量は全体に対して、10質量%以上でもよく、20質量%以上でもよく、40質量%以上でもよく、50質量%以上でもよく、80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、100質量%でもよい。
【0043】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含むことができる。紫外線吸収剤は、一般的な樹脂に配合されるものから選択すればよい。例えば、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物などがある。
【0044】
フィルムは公知の方法により製造できる。すなわち、(メタ)アクリル系樹脂を含む熱可塑性組成物を溶融混練し、Tダイから押し出してフィルム状に成形し、冷却すればよい。
【0045】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、非延伸フィルムであってもよく、一軸延伸フィルムであってもよく、2軸延伸フィルムであってもよい。延伸倍率は1.5~3.5とすることができる。
【0046】
(厚み)
(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚みに特に限定はないが、15μm以上であってよく、好ましくは30μm以上であってよく、65μm以下であってよく、好ましくは50μm以下であってよい。
【0047】
(マルテンス硬さ)
(メタ)アクリル系樹脂フィルムのマルテンス硬さは、140N/mm2以上であり、145N/mm2以上であってよく、150N/mm2以上であってよく、また、300N/mm2以下であり、280N/mm2以下であってよく、250N/mm2以下であってよく、200N/mm2以下であってよい。
(メタ)アクリル樹脂フィルムを構成する(メタ)アクリル系樹脂の種類((メタ)アクリル系樹脂を構成する構造単位の種類、構造単位が複数ある場合はそれらの配合割合)、ガラス転移温度、立体規則性を調節することにより、所望のマルテンス硬さのフィルムを得ることができる。例えば、(メタ)アクリル系樹脂がその主鎖に環構造を有し、かつ当該樹脂における環構造の含有率を5質量%以上としたり、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高くしたり、(メタ)アクリル系樹脂の立体規則性(三連示表示のシンジオタクティシティ)を高くしたりすることにより、マルテンス硬さを高くできる傾向にある。また、(メタ)アクリル系樹脂を複数含む場合は、それらの配合割合を調節することにより、所望のマルテンス硬さのフィルムを得ることができる。さらに、(メタ)アクリル樹脂フィルム中に含まれる添加剤の種類や量によっても、マルテンス硬さを調節することができる。例えば、添加剤がゴム粒子である場合、その配合量を減らすことにより、マルテンス硬さを高くできる傾向にある。
【0048】
(透湿度と厚みの積)
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、透湿度と厚みの積が2500(g/m2・24hr・μm)以下であることが好適であり、2400(g/m2・24hr・μm)以下であってよく、1800(g/m2・24hr・μm)以上であってよく、2000(g/m2・24hr・μm)以上であってよい。
【0049】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、25℃におけるMD方向の引張弾性率をTMD(25℃)、80℃におけるMD方向の引張弾性率をTMD(80℃)、25℃におけるTD方向の引張弾性率をTTD(25℃)、80℃におけるTTD方向の引張弾性率をTTD(80℃)とする場合、TMD(25℃)/TMD(80℃)およびTTD(25℃)/TTD(80℃)がいずれも2.0未満であることが好適であり、1.9未満であってよく、1.85未満であってもよく、1.5以上であってもよい。この比が低いと、高温下での(メタ)アクリル系樹脂フィルムの硬さが維持され、湿熱反りの低減に寄与する。
【0050】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、80℃且つ測定周波数10HzにおけるMD方向の貯蔵弾性率G’MD(80℃)と、80℃におけるMD方向の引張弾性率TMD(80℃)の比G’MD(80℃)/TMD(80℃)が、1.2未満であることが好適であり、1.1未満でもよく、0.7以上であってもよい。この比が低いと、湿熱反りが低減するという効果がある。
【0051】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、80℃且つ測定周波数10HzにおけるMD方向の貯蔵弾性率をG’MD(80℃)、80℃且つ測定周波数10HzにおけるTD方向の貯蔵弾性率をG’TD(80℃)とすると、G’MD(80℃)/G’TD(80℃)が1.05以下であることが好適であり、1.00以下であってよく、0.7以上であってもよい。この比が低いと、湿熱反りが低減するという効果がある。
【0052】
なお、(メタ)アクリル系樹脂フィルムのMD方向とは、フィルム成形におけるダイからの機械流れ方向であり、TD方向とは、フィルム成形におけるダイからの機械流れ方向と垂直な幅方向である。
【0053】
(メタ)アクリル系樹脂フィルム10のMD方向と、偏光子20の吸収軸の方向との関係に特に限定はないが、互いに平行であることが好適である。
【0054】
(偏光子)
本発明において、偏光子は一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素(ヨウ素や二色性染料)が吸着配向し、ホウ酸やホウ砂などのホウ素化合物で架橋されているものである。
【0055】
偏光子中のホウ素含有量は、5.0質量%以下であってよく、4.2質量%以下であってよく、4.0質量%以下であることが好適である。また、偏光子中のホウ素含有量は、0.5質量%以上であってよく、1.0質量%以上であってよく1.5質量%以上であってよく、2.0質量%以上であることが好適である。
偏光子のホウ素含有量(質量%)は、偏光子0.2gを1.9重量%のマンニトール水溶液200gに溶解させ測定用サンプル溶液とし、この測定用サンプル溶液が中和点を迎えるまで、水酸化ナトリウム水溶液(1mol/L)を滴下し、その滴下量から算出することができる。
【0056】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、例えばポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものが挙げられる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。
【0057】
酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0058】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上である。
【0059】
ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等も使用し得る。
【0060】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100以上10000以下であり、より好ましくは1500以上8000以下であり、さらに好ましくは2000以上5000以下である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が上記範囲内である場合、偏光性能およびフィルム加工性に優れる傾向にある。
【0061】
偏光子は、原料のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(原反フィルム)を処理液に接触させる工程(以下、「処理工程」ともいう)によって製造することができる。処理液に接触させる方法は、処理槽に収容された処理液(以下、「処理浴」ともいう)にフィルムを浸漬させる方法や、噴霧、流下、滴下等により処理液をフィルム表面に付着させてフィルムを処理する方法であってもよい。処理工程が、フィルムを処理浴に浸漬させる方法によってなされる場合、一つの処理工程を行う処理浴は一つに限定されることはなく、二つ以上の処理浴にフィルムを順次浸漬させて一つの処理工程を完成させてもよい。
【0062】
上記処理液としては、膨潤液、染色液、架橋液、洗浄液等が例示される。そして、上記処理工程としては、原反フィルムに膨潤液を接触させて膨潤処理を行う膨潤工程と、膨潤処理後のフィルムに染色液を接触させて染色処理を行う染色工程と、染色処理後のフィルムに架橋液を接触させて架橋処理を行う架橋工程と、架橋処理後のフィルムに洗浄液を接触させて洗浄処理を行う洗浄工程とが例示される。また、これら一連の処理工程の間(すなわち、いずれか1以上の処理工程の前後及び/又はいずれか1以上の処理工程中)に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理を施す。必要に応じて他の処理工程を付加してもよい。
【0063】
膨潤工程は、原反フィルム表面の異物除去、原反フィルム中の可塑剤除去、易染色性の付与、原反フィルムの可塑化等の目的で行われる。膨潤液としては、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。
【0064】
架橋工程は、架橋による耐水化や色相調整などの目的で行う処理である。架橋液としては、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物が挙げられる。これらは一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。溶媒としては、例えば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでもよい。架橋液における架橋剤の濃度、架橋浴の温度、フィルムの浸漬時間、フィルムを浸漬させる架橋浴の数は特に限定されることはなく、これらを適宜選択することにより、ホウ素含有率が5.0質量%以下である偏光フィルムを得ることができる。架橋液は、染色処理で使用した二色性色素がヨウ素の場合、ホウ酸に加えてヨウ化物を含有することが好ましく、ヨウ化物の量は、水100重量部に対して、例えば1~30重量部とすることができる。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を共存させてもよい。架橋処理は複数回行ってもよく、通常2~5回行われる。この場合、使用する各架橋浴の組成及び温度は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0065】
洗浄工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的で行われる。洗浄工程は、例えば、架橋処理したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄液を含む洗浄浴に浸漬することによって行われる。なお、洗浄工程は、洗浄浴にフィルムを浸漬させる工程に代えて、フィルムに対して洗浄液をシャワーとして噴霧することにより、若しくは洗浄浴への浸漬と洗浄液の噴霧とを併用することによって行うこともできる。洗浄処理の条件(例えば、洗浄液に接触させる時間や洗浄液の温度)を調整することにより、最終的に得られる偏光子のホウ素含有量を調整することができる。
【0066】
上述のように原反フィルムは、上記一連の処理工程の間(すなわち、いずれか1以上の処理工程の前後及び/又はいずれか1以上の処理工程中)に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理される。一軸延伸工程は、原反フィルムから偏光子を得るまでの間に複数回にわたって実施することができる。
【0067】
偏光子の厚みは、通常65μm以下であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下でり、特に好ましくは20μm以下である。偏光子の厚みは、通常2μm以上であり、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。偏光子の厚みは、例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルムの選定、延伸倍率の調節等により制御することができる。
【0068】
(第1接着剤層及び第2接着剤層)
第1接着剤層12は、(メタ)アクリル系樹脂フィルム10と偏光子20とを接着し、第2接着剤層14は、保護フィルム30と偏光子20とを接着している。第1接着剤層12及び第2接着剤層14は硬化性(重合性)化合物を含む硬化性接着剤の硬化物であることが好適である。硬化性化合物は、加熱または紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤であることが好ましい。
重合性化合物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱により重合反応が進行し、硬化する化合物又はオリゴマーをいう。
【0069】
硬化性接着剤としては、エポキシ系接着剤、(メタ)アクリル系接着剤が挙げられる。
第1接着剤層及び第2接着剤層は互いに同一の接着剤の硬化物であってよく、互いに異なる接着剤の硬化物であってよい。
【0070】
(エポキシ系接着剤)
エポキシ系接着剤は重合性化合物としてエポキシ化合物を含む。エポキシ化合物とは、分子内に1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。エポキシ系接着剤は、重合性化合物として、さらにオキセタン化合物、ビニル化合物等を含んでいてもよい。
【0071】
エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等を挙げることができる。中でも、耐候性、硬化速度及び接着性の観点から、エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物や脂肪族エポキシ化合物を含むことが好ましく、脂環式エポキシ化合物を含むことがより好ましい。
【0072】
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物である。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下記式(2)で示される構造における橋かけの酸素原子-O-を意味する。下記式(2)中、mは2~5の整数である。
【0073】
【0074】
上記式(2)における(CH2)m中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。(CH2)m中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。
【0075】
中でも、エポキシシクロペンタン構造〔上記式(2)においてm=3のもの〕や、エポキシシクロヘキサン構造〔上記式(2)においてm=4のもの〕を有する脂環式エポキシ化合物は、硬化物のガラス転移温度が高く、また偏光フィルムと保護フィルムの間の接着性の面でも有利である。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後、それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
【0076】
A:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、
E:ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15-ジエポキシ-7,11,18,21-テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-8,9-エポキシ-1,5-ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:リモネンジオキサイド、
L:ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイド。
【0077】
【0078】
【0079】
芳香族エポキシ化合物は、分子内に芳香族環とエポキシ基とを有する化合物である。その具体例は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物又はそのオリゴマー;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;2,2’,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル等の多官能型のエポキシ化合物;エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂を含む。
【0080】
水素化エポキシ化合物は、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルであり、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族ポリオールの具体例は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF、ビスフェノールS等のビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ポリビニルフェノール等の多官能型の化合物を含む。芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールにエピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。水素化エポキシ化合物の中でも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0081】
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環(3員の環状エーテル)を分子内に少なくとも1個有する化合物である。例えば、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等の単官能のエポキシ化合物;1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の2官能のエポキシ化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の3官能以上のエポキシ化合物;4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド等の、脂環式環に直接結合するエポキシ基1個と、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環とを有するエポキシ化合物等がある。中でも、偏光フィルムと保護フィルムの間の接着性の観点から、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に2個有する2官能のエポキシ化合物(脂肪族ジエポキシ化合物ともいう)が好ましい。かかる好適な脂肪族ジエポキシ化合物は、例えば、下記式(3)で表すことができる。
【0082】
【0083】
上記式(3)中のYは、炭素数2~9のアルキレン基、エーテル結合が介在している総炭素数4~9のアルキレン基、又は脂環構造を有する炭素数6~18の2価の炭化水素基である。
【0084】
上記式(3)で表される脂肪族ジエポキシ化合物は、具体的には、アルカンジオールのジグリシジルエーテル、繰り返し数4程度までのオリゴアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、又は脂環式ジオールのジグリシジルエーテルである。
【0085】
上記式(3)で表される脂肪族ジエポキシ化合物を形成し得るジオール(グリコール)の具体例を以下に掲げる。アルカンジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等がある。オリゴアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等がある。脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等がある。
【0086】
カチオン重合性化合物の1つであるオキセタン化合物は、分子内に1個以上のオキセタン環(オキセタニル基)を含有する化合物であり、その具体例は、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコールとも呼ばれる。)、2-エチルヘキシルオキセタン、1,4-ビス〔{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル〕ベンゼン(キシリレンビスオキセタンとも呼ばれる。)、3-エチル-3〔{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル〕オキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-(シクロヘキシルオキシ)メチル-3-エチルオキセタンを含む。オキセタン化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物と併用してもよい。オキセタン化合物を併用することで、硬化速度や接着性を向上できることがある。
【0087】
カチオン重合性化合物となり得るビニル化合物としては、脂肪族又は脂環式のビニルエーテル化合物が挙げられ、その具体例は、例えば、n-アミルビニルエーテル、i-アミルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、オレイルビニルエーテル等の炭素数5~20のアルキル又はアルケニルアルコールのビニルエーテル;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル、2-メチルシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等の脂肪族環又は芳香族環を有するモノアルコールのビニルエーテル;グリセロールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル等の多価アルコールのモノ~ポリビニルエーテル;ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルモノビニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノ~ジビニルエーテル;グリシジルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテルメタクリレート等のその他のビニルエーテルを含む。ビニル化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物、又はエポキシ化合物及びオキセタン化合物と併用してもよい。ビニル化合物を併用することで、硬化速度や接着剤の低粘度化を向上できることがある。
【0088】
カチオン重合性接着剤は、上記以外の他の硬化性化合物をさらに含むことができる。他の硬化性化合物は、その具体例は、ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物のような上記以外の他のカチオン重合性化合物である。
【0089】
エポキシ系接着剤において、偏光子20中からのヨウ素等の二色性色素の流出を抑制する観点から、接着剤に含まれる硬化性化合物の全量を100質量%とするとき、全重合性化合物の含有量は、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、100重量%であることがさらに好ましい。
【0090】
エポキシ系接着剤は、活性エネルギー線硬化性であってもよいし熱硬化性であってもよいが、好ましくは活性エネルギー線硬化性である。接着剤に活性エネルギー線硬化性を付与する場合には、当該接着剤に光カチオン重合開始剤を配合することが好ましい。光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン硬化性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、光カチオン硬化性化合物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体等を挙げることができる。
光カチオン重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。中でも、芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため好ましく用いられる。
【0091】
光カチオン重合開始剤の配合量は、カチオン重合性化合物100重量部に対して通常、0.5~10重量部であり、好ましくは6重量部以下である。光カチオン重合開始剤を0.5重量部以上配合することにより、カチオン重合性化合物を十分に硬化させることができ、得られる光学積層体に高い機械的強度と接着強度を与えることができる。一方で、その量が過度に多くなると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、偏光子の耐久性が低下する可能性がある。
【0092】
((メタ)アクリル系接着剤)
(メタ)アクリル系接着剤は重合性化合物として(メタ)アクリレート化合物を含む。
【0093】
((メタ)アクリレート化合物)
(メタ)アクリレート化合物は、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性化合物である。接着剤組成物は、(メタ)アクリレート化合物を1種又は2種以上含有することができる。
【0094】
(メタ)アクリレート化合物としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物、2官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物を、それぞれ、1種又は2種以上含有することができる。
【0095】
単官能(メタ)アクリレート化合物の一例は、アルキル(メタ)アクリレートである。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート等が挙げられる。
【0096】
単官能(メタ)アクリレート化合物の他の例としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート、並びに、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等のフェノキシ(メタ)アクリレート等の、エステル結合(-C(=O)-O-)の-O-に結合する基が芳香環を含む芳香族(メタ)アクリレート化合物; シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の、エステル結合(-C(=O)-O-)の-O-に結合する基が脂環式環を含む脂環式アルキル(メタ)アクリレート化合物;
N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート化合物;
ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の、エステル結合(-C(=O)-O-)の-O-に結合する基がエーテル結合を含む(メタ)アクリレート化合物であって、上記以外のもの等が挙げられる。
【0097】
単官能(メタ)アクリレート化合物のさらに他の例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の、エステル結合(-C(=O)-O-)の-O-に結合する基が水酸基を含む(メタ)アクリレート化合物; 2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノ(メタ)アクリレート、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]フタル酸、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヘキサヒドロフタル酸、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]コハク酸、4-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリメリット酸、N-(メタ)アクリロイルオキシ-N’,N’-ジカルボキシメチル-p-フェニレンジアミン等の、エステル結合(-C(=O)-O-)の-O-に結合する基がカルボキシル基を含む(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0098】
2官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0099】
2官能(メタ)アクリレート化合物のより具体的な例を挙げれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ジオキサン-2,5-ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物〔化学名:2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート等である。
【0100】
2官能(メタ)アクリレートは、分子内に少なくとも1つの脂環式骨格、又は、少なくとも1つの芳香環を有することが好ましく、少なくとも1つの芳香環を有することがより好ましい。
【0101】
2官能(メタ)アクリレートは、硬化物の透湿性、後述する無水マレイン酸変性化合物との相溶性、樹脂フィルム(特に(メタ)アクリル系樹脂フィルム)との密着性の観点から、下記式(4)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0102】
【0103】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Xはエチレンオキサイド(-C2H4O-)、又はプロピレンオキサイド(-C3H6O-)を表し、nは1~20の整数を表し、mは1~20の整数を表す。)
Xは、エチレンオキサイドであることが好ましく、また、mとnとの合計の平均が2~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、4~13であることが特に好ましい。
【0104】
分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレート;
3官能以上のハロゲン置換ポリオールのポリ(メタ)アクリレート;
グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート;
1,1,1-トリス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ]プロパン;
トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0105】
アクリル系接着剤の粘度を低減させる観点、並びに偏光子20及びフィルム10,30に対するアクリル系接着剤の接着能力の観点から、(メタ)アクリレート化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0106】
アクリル系接着剤の粘度を低減させる観点、並びに偏光子20及びフィルム10,30に対する接着剤の接着能力の観点から、単官能(メタ)アクリレート化合物は、脂環式アルキル(メタ)アクリレート化合物及び芳香族(メタ)アクリレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。なかでも、アクリル系接着剤から形成される硬化膜の透湿度を低減させる(以下、低透湿性という場合がある。)観点で、脂環式アルキル(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。
【0107】
(メタ)アクリル系接着剤の全量を100質量%とするとき、(メタ)アクリレート化合物の含有量は、通常15質量%以上75質量%以下であり、偏光子20及びフィルム10,30に対する接着能力の観点から、好ましくは15質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上55質量%以下である。
【0108】
(メタ)アクリレート化合物の全量を100質量%とするとき、単官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は、通常60質量%以上であり、偏光子20及びフィルム10,30に対する接着能力の観点から、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。
【0109】
(メタ)アクリレート化合物の全量を100質量%とするとき、単官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は、100質量%であってもよいが、(メタ)アクリル系接着剤の硬化物の機械的強度、ひいては、接着剤を用いて作製される偏光板の機械的強度の観点から、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98質量%以下であり、90質量%以下であってもよい。
【0110】
単官能(メタ)アクリレート化合物の含有量が100質量%未満である場合、(メタ)アクリレート化合物の残部は、2官能(メタ)アクリレート化合物及び/又は多官能(メタ)アクリレート化合物であり、好ましくは2官能(メタ)アクリレート化合物を含む。
【0111】
(メタ)アクリレート化合物の全量を100質量%とするとき、2官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0112】
(無水マレイン酸変性化合物)
(メタ)アクリル系接着剤は、さらに、無水マレイン酸変性化合物を含むことが好適である。無水マレイン酸変性化合物は、無水マレイン酸構造を分子内に含む化合物である。(メタ)アクリル系接着剤は、1種の無水マレイン酸変性化合物を含んでいてもよいし、2種以上の無水マレイン酸変性化合物を含んでいてもよい。無水マレイン酸変性化合物としては、無水マレイン酸変性重合体が挙げられる。
【0113】
無水マレイン酸変性重合体は、無水マレイン酸構造が高分子の側鎖として導入されることによって変性された重合体である。接着剤組成物は、1種の無水マレイン酸変性重合体を含んでいてもよいし、2種以上の無水マレイン酸変性重合体を含んでいてもよい。
【0114】
上記の無水マレイン酸構造とは、下記式(5)の構造をいう。
【0115】
【0116】
無水マレイン酸変性重合体において、無水マレイン酸変性される重合体としては、ジエン系重合体、ポリオレフィン系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリスチレン系重合体、ポリエーテル系重合体等が挙げられる。これらの重合体は、1種のモノマーから構成される単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーから構成される共重合体であってもよい。
【0117】
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルからなる群より選択される少なくとも1種を表す。「(メタ)アクリロイル」及び「(メタ)アクリレート」等の表記についても同様である。
【0118】
無溶剤型で接着能力の良好な接着剤組成物を調製し得ることから、無水マレイン酸変性重合体は、液状であることが好ましい。液状とは、温度25℃において流動性を示すことをいう。
【0119】
液状の無水マレイン酸変性重合体の25℃における粘度は、塗工性が良好な接着剤組成物を得る観点から、好ましくは10Pa・sec以上10000Pa・sec以下であり、より好ましくは15Pa・sec以上7000Pa・sec以下であり、さらに好ましくは15Pa・sec以上300Pa・sec以下であり、特に好ましくは15Pa・sec以上100Pa・sec以下である。
【0120】
液状の無水マレイン酸変性重合体の好ましい例は、例えば、無水マレイン酸変性ポリブタジエンである。これらの重合体は、それぞれ、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよく、単独重合体であることが好ましい。
【0121】
無水マレイン酸変性重合体の数平均分子量は、通常500以上15000以下であり、粘度及び塗工性の観点から、好ましくは600以上12000以下であり、より好ましくは700以上10000以下であり、さらに好ましくは2000以上10000以下であり、特に好ましくは3500以上10000以下である。
【0122】
無水マレイン酸変性重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定することができる。
【0123】
無水マレイン酸変性重合体の酸価は、通常10KOHmg/g以上200KOHmg/g以下であり、保護フィルムに対する接着剤組成物の接着能力等の観点から、好ましくは15KOHmg/g以上150KOHmg/g以下であり、より好ましくは20KOHmg/g以上100KOHmg/g以下であり、さらに好ましくは30KOHmg/g以上100KOHmg/g以下であり、特に好ましくは45KOHmg/g以上100KOHmg/g以下である。酸価が該範囲にある無水マレイン酸変性重合体を使用することは、保護フィルムに対する接着剤組成物の接着能力を高めるうえで有利であり、とりわけ、偏光子としてポリビニルアルコール系偏光子を用いる場合において、ポリビニルアルコール系偏光子と熱可塑性樹脂フィルムとの間の密着性が高い接着剤組成物を提供するうえで有利である。
【0124】
無水マレイン酸変性重合体の酸価は、JIS K 0070:1992に従う、フェノールフタレインを指示薬とする中和滴定法によって測定される。
【0125】
(メタ)アクリル系接着剤の全量を100質量%とするとき、無水マレイン酸変性化合物の含有量は、通常3質量%以上40質量%以下であり、接着能力の観点、とりわけ、偏光子としてポリビニルアルコール系偏光子を用いる場合において、ポリビニルアルコール系偏光子とフィルム10,30との間の密着性を高める観点から、好ましくは5質量%以上35質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0126】
(光重合開始剤)
(メタ)アクリル系接着剤は、光重合開始剤を含有していることが好適である。光重合開始剤は、光の作用により活性ラジカル、酸等を発生し、(メタ)アクリレート化合物の重合を開始させ得る化合物であれば特に限定されない。
【0127】
接着剤組成物は、光重合開始剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。光重合開始剤としては、特に制限されないが、O-アシルオキシム化合物等のオキシム系化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0128】
O-アシルオキシム化合物は、下記式(6)で表される構造を有する化合物である。以下、*は結合手を表す。
【0129】
【0130】
O-アシルオキシム化合物としては、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミン、N-アセチルオキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエチルオキシ)フェニルスルファニルフェニル]プロパン-1-オン-2-イミン、N-アセチルオキシ-1-[4-(1-メチル-2-メトキシエトキシ)-2-メチルフェニル]-1-(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)メタン-1-イミン等が挙げられる。
【0131】
イルガキュア(商品名)OXE01、同OXE02、同OXE03(以上、BASF社製)、N-1919、NCI-930、NCI-831(以上、ADEKA社製)等の市販品を用いてもよい。
【0132】
アルキルフェノン化合物は、下記式(6a)で表される部分構造又は下記式(6b)で表される部分構造を有する化合物である。これらの部分構造中、ベンゼン環は置換基を有していてもよい。
【0133】
【0134】
式(6a)で表される構造を有する化合物としては、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0135】
Omnirad(商品名)369、同907、同379(以上、IGM Resins B.V.社製)等の市販品を用いてもよい。
【0136】
式(6b)で表される構造を有する化合物としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロペニルフェニル)プロパン-1-オンのオリゴマー、α,α-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0137】
Omnirad(商品名)184(IGM Resins B.V.社製)等の市販品を用いてもよい。
【0138】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド(例えば、商品名「Omnirad 819」(IGM Resins B.V.社製))、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0139】
光重合開始剤(C)のさらなる例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4’-ジ(N,N’-ジメチルアミノ)-ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;
2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のキサントン化合物;
9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン等のアントラセン化合物;
9,10-フェナンスレンキノン、2-エチルアントラキノン、カンファーキノン等のキノン化合物;
ベンジル、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等が挙げられる。
【0140】
(メタ)アクリル系接着剤組成物の全量を100質量%とするとき、光重合開始剤の含有量は通常、0.1質量%以上20質量%以下であり、(メタ)アクリル系接着剤の硬化性の観点及び偏光子20及びフィルム10,30に対する接着能力の観点から、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下(例えば8質量%以下)である。
【0141】
(メタ)アクリレート化合物の全量を100質量部とするとき、光重合開始剤の含有量は通常、0.1質量部以上30質量部以下であり、(メタ)アクリル系接着剤の硬化性の観点及び偏光子20及びフィルム10,30に対する接着能力の観点から、好ましくは0.5質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上10質量部以下である。
【0142】
(石油樹脂)
アクリル系接着剤は、さらに、石油樹脂を含むことができる。(メタ)アクリル系接着剤組成物が石油樹脂をさらに含むことにより、硬化膜の透湿度を低減させることができる。低透湿性の硬化膜を形成することができる接着剤は、該硬化膜を介した水分の出入りを抑制することが求められる用途に好適である。例えば、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して保護フィルムが積層されている偏光板又はこれを含む画像表示パネルにおいて、該接着剤層が低透湿性であると、水分の出入りに起因する偏光板又は画像表示パネルのカール(反り)を抑制することが可能となる。
【0143】
(メタ)アクリル系接着剤が石油樹脂をさらに含むことは、偏光子と熱可塑性樹脂フィルムとの密着性を向上させるうえでも有利となり得る。
【0144】
石油樹脂としては、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、環式脂肪族系石油樹脂、脂肪族・芳香族石油樹脂、クマロン系樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂を水素添加したもの等も挙げられる。
【0145】
芳香族系石油樹脂は、芳香族炭化水素に由来する構成単位を1種又は2種以上含む樹脂であり、該樹脂を水素添加したもの、又は、該樹脂を変性したものであってもよい。
【0146】
芳香族系石油樹脂は、好ましくはC9系石油樹脂である。C9系石油樹脂は、C9留分を共重合することにより得られる樹脂であり、該樹脂を水素添加したもの、又は、該樹脂を変性したものであってもよい。
【0147】
C9系石油樹脂は、C9留分と他のモノマー成分とを共重合することにより得られる樹脂であってもよく、該樹脂を水素添加したもの、又は、該樹脂を変性したものであってもよい。他のモノマー成分としては、C5留分が挙げられる。
【0148】
C9留分としては、例えば、スチレン、アルキルスチレン、ビニルトルエン、1-メチル-1-フェニルエチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個程度の石油留分が挙げられる。
【0149】
C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、ピペリレン等の炭素数4~5個程度の石油留分が挙げられる。
【0150】
また、石油樹脂は、上述したC5留分を共重合することにより得られるC5系石油樹脂、該C5系石油樹脂を水素添加したもの、又は、該樹脂を変性したものであってもよい。
さらに、C5留分を環化二量体化した後に重合させた脂環式炭化水素系樹脂であってもよい。脂環式炭化水素系樹脂としては、ジシクロペンタジエン由来の構成単位を含む重合体等が挙げられる。
【0151】
石油樹脂の重量平均分子量は、通常500以上10000以下であり、接着剤組成物から形成される硬化膜の透湿度を低減させる観点、及び、保護フィルム(又は層)に対する接着剤組成物の接着能力の観点から、好ましくは500以上7000以下であり、より好ましくは600以上5000以下であり、さらに好ましくは60以上3000以下であり、特に好ましくは600以上1500以下である。
【0152】
石油樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定することができる。
【0153】
アクリル系接着剤組成物が石油樹脂を含む場合において、接着剤の全量を100質量%とするとき、石油樹脂の含有量は、硬化膜の透湿度を低減させる観点、及び、保護フィルムに対する接着剤組成物の接着能力の観点、とりわけ、偏光子としてポリビニルアルコール系偏光子を用いる場合において、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとの間の密着性を高める観点から、好ましくは20質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上65質量%以下である。
【0154】
アクリル接着剤が単官能(メタ)アクリレート化合物及び石油樹脂を含む場合において、これらの質量比(単官能(メタ)アクリレート化合物/石油樹脂)は、接着剤組成物から形成される硬化膜の透湿度を低減させる観点、及び、保護フィルムに対する接着剤組成物の接着能力の観点、とりわけ、偏光子としてポリビニルアルコール系偏光子を用いる場合において、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとの間の密着性を高める観点から、好ましくは0.5以上3.0以下であり、より好ましくは0.7以上2.0以下であり、さらに好ましくは0.9以上1.5以下であり、なおさらに好ましくは1.0以上1.3以下である。
【0155】
(添加剤)
第1接着剤及び/又は第2接着剤は、必要に応じて、その他の添加剤を含むことができる。添加剤の具体例は、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、重合促進剤(ポリオール等)、増感剤、増感助剤、光安定剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、色素、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱重合開始剤を含む。なお、熱重合開始剤は、熱硬化性接着剤を調製する場合に、光重合開始剤の代わりに用いられる。イオントラップ剤としては粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられ、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0156】
第1接着剤層150及び第2接着剤層160の厚さは、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましく、5μm以下であってもよく、また、0.05μm以上であり、0.5μm以上であってもよい。
【0157】
(保護フィルム30)
保護フィルム30は、透明な光学フィルムであれば特に限定されない。例えば、保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのような酢酸セルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のフィルムであってよい。
【0158】
特に、保護フィルム30は環状ポリオレフィン系樹脂フィルムであることが好適である。
【0159】
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。
【0160】
環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物である。
中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのようなノルボルネン系モノマーを重合したノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0161】
保護フィルム30の厚みは、薄型化の観点から、通常100μm以下であり、80μm以下であることが好ましく、65μm以下であることがさらに好ましく、また、通常15μm以上であり、20μm以上であることが好ましい。保護フィルム30は、位相差を有していてもよい。
【0162】
保護フィルム30が位相差フィルムである場合に、保護フィルム30のフィルム成形におけるダイからの機械流れ方向(MD方向)と偏光子20の吸収軸の方向とに特に限定はないが、互いに平行であることが好適である。
【0163】
(粘着剤層40)
保護フィルム30の外表面には、粘着剤層40が貼り付けられている。この粘着剤層40は、偏光板100を表示素子(例えば液晶セル)や他の光学部材に貼合するために用いることができる。この粘着剤層40の下面上には、剥離フィルムが積層されることも好ましい。
【0164】
粘着剤層40の材料に特に限定はない。粘着剤層は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。
【0165】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。
【0166】
極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0167】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが例示される。
中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0168】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤組成物である。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。さらに必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を含有させることもできる。
【0169】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、帯電防止剤、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0170】
粘着剤層40の厚みは、通常1~40μmであるが、光学シートの薄膜化の観点、及び良好な加工性を保ちつつ偏光板100の寸法変化を抑制する観点から、3~25μm(例えば3~20μm、さらには3~15μm)とすることが好ましい。
【0171】
(貯蔵弾性率)
粘着剤層40の25℃且つ測定周波数1Hzにおける貯蔵弾性率は1.5×105Pa以下であり、1.3×105Pa以下でもよく、1.0×105Pa以下でもよく、5.0××104Pa以下でもよい。また、粘着剤層40の25℃且つ測定周波数1Hzにおける貯蔵弾性率は5.0×103Pa以上であってよく、1.0×104Pa以上でもよい。粘着剤層の25℃且つ測定周波数1Hzにおける貯蔵弾性率は、レオメーターで測定することができる。例えば、粘着剤層を200μmになるように積み重ねて測定用サンプルとし、レオメーター(Anton Parr社製「MCR-301」(商品名)、パラレルプレートはPP25を使用)を用いて、歪1%及び周波数1Hzで10℃/分で昇温させて貯蔵弾性率を測定し、25℃における貯蔵弾性率の値を読み取ることで得ることができる。
粘着剤層40の25℃且つ測定周波数1Hzにおける貯蔵弾性率は、例えば、粘着剤組成物の主成分の樹脂の種類(例えば、樹脂の構成モノマーの種類、構成モノマーが複数ある場合はその配合割合)、分子量(重量平均分子量や数平均分子量)、ガラス転移温度や、粘着剤組成物中の架橋剤の種類や配合量などを調節することによって、所望の値にすることができる。また、粘着剤層40が活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成される場合は、上記した樹脂や架橋剤の調節に加えて、活性エネルギー線重合性化合物の種類や配合量を調節することによって、所望の貯蔵弾性率にすることができる。
【0172】
(作用効果)
(メタ)アクリル系樹脂フィルム10がある程度硬いと、(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の組織が緻密となることなどにより耐溶剤性に優れるようになると考えられる。また、(メタ)アクリル系樹脂保護フィルム10がある程度硬く、かつ、粘着剤層40がある程度柔らかいと、基材などに貼り付けられた偏光板100が高温高湿環境下に置かれた場合に、偏光子20が収縮しても、粘着剤層40が変形して応力を吸収するため、偏光板100及び基材(液晶パネルなど)を含むデバイス全体が反りにくくなる。
【0173】
このような偏光板は、通常の液晶表示装置だけでなく、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置等の各種画像表示装置に適用可能である。
【実施例0174】
[(メタ)アクリル系樹脂フィルムIの作製]
グルタルイミド環含有率5%のポリメタクリル酸メチル(Mw=48×103、Mw/Mn=2.0)を含むペレットを、押出機にて245℃で溶融混練し、設定温度245℃のTダイに供給した。Tダイから押し出したフィルム状の溶融樹脂を、対向配置した第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、第3冷却ロールに巻き掛けて成形・冷却し、樹脂フィルムを得た。
このフィルムのガラス転移温度を測定した結果、115.0℃であった。
上記フィルムを用いて逐次二軸延伸を実施した。ガラス転移温度より20℃高い温度にて、縦方向に1.8倍に延伸して縦延伸フィルムを得た。ついで、ガラス転移温度より20℃高い温度にて、横方向に1.8倍に延伸して厚み40μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0175】
[(メタ)アクリル系樹脂フィルムIIの作製]
グルタルイミド環含有率5%のポリメタクリル酸メチル(Mw=48×103、Mw/Mn=2.0)を含むペレットを、押出機にて245℃で溶融混練し、設定温度245℃のTダイに供給した。Tダイから押し出したフィルム状の溶融樹脂を、対向配置した第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、第3冷却ロールに巻き掛けて成形・冷却し、樹脂フィルムを得た。
このフィルムのガラス転移温度を測定した結果、115.4℃であった。
上記フィルムを用いて逐次二軸延伸を実施した。ガラス転移温度より20℃高い温度にて、縦方向に2.0倍に延伸して縦延伸フィルムを得た。ついで、ガラス転移温度より20℃高い温度にて、横方向に2.0倍に延伸して厚み40μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0176】
[(メタ)アクリル系樹脂フィルムIIIの作製]
メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=98.6/1.4(質量比)の(メタ)アクリル樹脂(Mw=107×103、Mw/Mn=2.6)72質量部と、スチレン/無水マレイン酸=18/82(質量比)の共重合体(SMA700、Jiaxing Huawen Chemical Co.社製)8質量部と、三層構造からなる(メタ)アクリル系多層重合体である(メタ)アクリル系ゴム粒子(一層目(最内層):メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとメタクリル酸アリルとの共重合体(質量比93.8/6.0/0.2)/二層目:アクリル酸ブチルとスチレンとメタクリル酸アリルとの共重合体(質量比80.6/17.4/2.0)/三層目(最外層):メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとの共重合体(質量比94/6))20質量部を含むペレットを、押出機にて245℃で溶融混練し、設定温度245℃ のTダイに供給した。Tダイから押し出したフィルム状の溶融樹脂を、対向配置した第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、第3冷却ロールに巻き掛けて成形・冷却し、厚み70μmの未延伸フィルムを得た。
このフィルムのガラス転移温度を測定した結果、102.8℃であった。
【0177】
[(メタ)アクリル系樹脂フィルムIVの作製]
メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=98.6/1.4(質量比)の(メタ)アクリル樹脂(Mw=107×103、Mw/Mn=2.6)64質量部と、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が76%であるメタクリル樹脂(メタクリル酸メチルの単独重合体、Mw=69×103、Mw/Mn=1.1)16質量部と、三層構造からなる(メタ)アクリル系多層重合体である(メタ)アクリル系ゴム粒子(一層目(最内層):メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとメタクリル酸アリルとの共重合体(質量比93.8/6.0/0.2)/二層目:アクリル酸ブチルとスチレンとメタクリル酸アリルとの共重合体(質量比80.6/17.4/2.0)/三層目(最外層):メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとの共重合体(質量比94/6))20質量部を含むペレットを、押出機にて245℃で溶融混練し、設定温度245℃のTダイに供給した。Tダイから押し出したフィルム状の溶融樹脂を、対向配置した第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、第3冷却ロールに巻き掛けて成形・冷却し、厚み60μmの未延伸フィルムを得た。
このフィルムのガラス転移温度を測定した結果、104.0℃であった。
【0178】
[(メタ)アクリル系樹脂フィルムVの作製]
メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=97.2/2.8(質量比)の(メタ)アクリル樹脂(Mw=111×103、Mw/Mn=2.0)70質量部と、三層構造からなる(メタ)アクリル系多層重合体である(メタ)アクリル系ゴム粒子(一層目(最内層):メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとメタクリル酸アリルとの共重合体(質量比93.8/6.0/0.2)/二層目:アクリル酸ブチルとスチレンとメタクリル酸アリルとの共重合体(質量比80.6/17.4/2.0)/三層目(最外層):メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとの共重合体(質量比94/6))30質量部を含むペレットを、押出機にて245℃で溶融混練し、設定温度245℃ のTダイに供給した。Tダイから押し出したフィルム状の溶融樹脂を、対向配置した第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、第3冷却ロールに巻き掛けて成形・冷却し、厚み60μmの未延伸フィルムを得た。
このフィルムのガラス転移温度を測定した結果、98.9℃であった。
【0179】
[硬化性接着剤組成物A(エポキシ系)]
硬化性接着剤組成物Aは、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製の商品名「セロキサイド2021P」)20質量部、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、商品名「EX-211L」)70質量部、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(日本カーバイド製、商品名「HBVE」)2質量部、メタクリル酸メチル-メタクリル酸グリジジルエーテル共重合体(カチオン重合性ポリマー)(日油製、商品名「マープルーフG-01100」)8質量部、光重合開始剤(サンアプロ株式会社製の商品名「CPI-100P」)の固形分2.25質量部を混合、脱泡して調製した。
【0180】
[硬化性接着剤組成物B(エポキシ系)]
硬化性接着剤組成物Bは、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製の商品名「セロキサイド2021P」)70質量部、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製の商品名「EX-211」)20質量部、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製の商品名「EX-121」)10質量部、及び、光重合開始剤(サンアプロ株式会社製の商品名「CPI-100P」)の固形分2.8質量部を混合、脱泡して調製した。
【0181】
[硬化性接着剤組成物C((メタ)アクリル系)]
硬化性接着剤組成物Cは、無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン(Synthomer社製の商品名「Lithene ultra N4-5000-10MA」、数平均分子量:5500、25℃における粘度:25~60Pa・sec、酸価:54KOHmg/g)17質量部、ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成株式会社製の商品名「FA-513AS」)34質量部、ステアリルアクリレート(大阪有機化学株式会社製の商品名「STA」)12部、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業株式会社製の商品名「A-BPE-10」、EO 10モル)2質量部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製の商品名(A-DCP))5.0
質量部、石油樹脂(JXTGエネルギー株式会社製の商品名「T-REZ HA105」、水添樹脂(ジシクロペンタジエンをモノマー成分とする脂環族飽和炭化水素樹脂)、軟化点(公称値):104.5℃、重量平均分子量(公称値):610)30質量部を混合し、総重量100質量部に対してフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製の商品名「Omnirad 819」)3.0質量部添加し混合後脱泡して調製した。
【0182】
実施例1
[偏光板の作製]
(メタ)アクリル系樹脂フィルムIの表面(巻内側)にコロナ処理を施し、そのコロナ処理面に、接着剤塗工装置を用いて硬化性接着剤組成物Aを塗工した。得られた塗工層と厚み23μm、ホウ素含有量4.2質量%のポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光子Iとをニップロールを用いて積層し、(メタ)アクリル系樹脂フィルムI付偏光子を得た。(メタ)アクリル系樹脂フィルムI付偏光子において、(メタ)アクリル系樹脂フィルムIの機械流れ方向(MD方向)と偏光子の吸収軸とは平行である。
【0183】
次いで、環状ポリオレフィン系樹脂からなる厚み50μmの位相差フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名「ZEONOR」〕の表面にコロナ処理を施し、そのコロナ処理面に、硬化性接着剤組成物Bを接着剤塗工装置を用いて塗工した。得られた塗工層と(メタ)アクリル系樹脂フィルムI付偏光子の偏光子面とをニップロールを用いて積層して積層体を得た。該積層体において、位相差フィルムの機械流れ方向(MD方向)と偏光子の吸収軸とは平行である。
【0184】
この積層体における位相差フィルム側から、総積算光量(波長320~400nmの波長領域における光照射強度の積算量)が約200mJ/cm2(測定器:FusionUV社製UV Power PuckIIによる測定値)の紫外線(UVB)を照射することにより硬化性接着剤組成物Bの層及び硬化性接着剤組成物Aの層を硬化させて、偏光板を作製した。なお、硬化性接着剤組成物Aの硬化層の厚みは約3μmであり、硬化性接着剤組成物Bの硬化層の厚みは約3μmであった。
【0185】
作製した偏光板の環状ポリオレフィン系フィルム側に、厚み25μm、25℃における貯蔵弾性率2.5×104Pa(測定周波数1Hz)の(メタ)アクリル系粘着剤層Aを積層した。作製した粘着剤層付き偏光板の粘着剤層側を150mm×90mmの大きさに裁断し、粘着剤層付き側で無アルカリガラス基板(厚み:0.7mm)に貼合し、積層体を得た。
【0186】
実施例2
硬化性接着剤組成物Aの代わりに、硬化性接着剤組成物Cを用い、硬化性接着剤組成物Cの硬化層の厚みを10μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0187】
実施例3
ポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光子Iの代わりに、厚み18μm、ホウ素含有量3.9質量%のポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光子IIを用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0188】
実施例4
硬化性接着剤組成物Aの代わりに、硬化性接着剤組成物Cを用い、硬化性接着剤組成物Cの硬化層の厚みを10μmとしたこと以外は実施例3と同様にして偏光板を作製した。
【0189】
実施例5
(メタ)アクリル系樹脂フィルムIの代わりに、(メタ)アクリル系樹脂フィルムIIを用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0190】
実施例6
硬化性接着剤組成物Aの代わりに、硬化性接着剤組成物Cを用い、硬化性接着剤組成物Cの硬化層の厚みを10μmとしたこと以外は実施例5と同様にして偏光板を作製した。
【0191】
実施例7
ポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光子Iの代わりに、厚み18μm、ホウ素含有量3.9質量%のポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光子IIを用いたこと以外は実施例5と同様にして偏光板を作製した。
【0192】
実施例8
硬化性接着剤組成物Aの代わりに、硬化性接着剤組成物Cを用い、硬化性接着剤組成物Cの硬化層の厚みを10μmとしたこと以外は実施例7と同様にして偏光板を作製した。
【0193】
実施例9
(メタ)アクリル系樹脂フィルムIの代わりに、(メタ)アクリル系樹脂フィルムIIIを用いたこと以外は実施例3と同様にして偏光板を作製した。
【0194】
実施例10
硬化性接着剤組成物Aの代わりに、硬化性接着剤組成物Cを用い、硬化性接着剤組成物Cの硬化層の厚みを10μmとしたこと以外は実施例9同様にして偏光板を作製した。
【0195】
実施例11
(メタ)アクリル系樹脂フィルムIの代わりに、(メタ)アクリル系樹脂フィルムIVを用いたこと以外は実施例3と同様にして偏光板を作製した。
【0196】
実施例12
硬化性接着剤組成物Aの代わりに、硬化性接着剤組成物Cを用い、硬化性接着剤組成物Cの硬化層の厚みを10μmとしたこと以外は実施例11同様にして偏光板を作製した。
【0197】
実施例13~実施例20
(メタ)アクリル系粘着剤層Aの代わりに、厚み20μm、25℃における貯蔵弾性率1.5×104Pa(測定周波数1Hz)の(メタ)アクリル系粘着剤層Bを用いたこと以外は実施例1~8同様にして偏光板を作製した。
【0198】
実施例21~実施例28
(メタ)アクリル系粘着剤層Aの代わりに、厚み5μm、貯蔵弾性率1.1×105Pa(測定周波数1Hz)の(メタ)アクリル系粘着剤層Cを用いたこと以外は実施例1~8同様にして偏光板を作製した。
【0199】
比較例1
(メタ)アクリル系樹脂フィルムIの代わりに、(メタ)アクリル系樹脂フィルムVを用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0200】
比較例2
硬化性接着剤組成物Aの代わりに、硬化性接着剤組成物Cを用い、硬化性接着剤組成物Cの硬化層の厚みを10μmとしたこと以外は比較例1と同様にして偏光板を作製した。
【0201】
比較例3
ポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光子Iの代わりに、厚み18μm、ホウ素含有量3.9質量%のポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光子IIを用いたこと以外は比較例1と同様にして偏光板を作製した。
【0202】
比較例4
硬化性接着剤組成物Aの代わりに、硬化性接着剤組成物Cを用い、硬化性接着剤組成物Cの硬化層の厚みを10μmとしたこと以外は比較例3と同様にして偏光板を作製した。
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
<測定及び評価>
マルテンス硬さ
(メタ)アクリル系樹脂フィルムを30mm×30mmに切り出し、厚み25μm、25℃における貯蔵弾性率2.5×104Pa(測定周波数1Hz)のアクリル系粘着剤を用いて、無アルカリガラス基板(厚み:0.7mm)に貼り付け、測定用サンプルを得た。温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下において、測定用サンプルの表面に対し、超微小硬さ試験機(FISCHERSCOPE HM2000:(株)フィッシャーインストルメンツ製)を用いて加圧速度10mN/5sにて荷重を印加後、クリープ時間(10mNの荷重を維持する時間)を5sとしてマルテンス硬さHM(N/mm2)を測定した。
【0208】
ガラス転移温度(Tg)
DSC装置(EXSTAR6000、セイコーインスツル株式会社製)を用いて、JIS K7121:1987に基づく示差走査熱量分析法に従い、窒素流量40mL/分において(メタ)アクリル系フィルムを降温速度10℃/分で-80℃まで降温し、10分間保持した後、昇温速度10℃/分で160℃まで昇温し、10分間保持した。次いで、降温速度10℃/分で、160℃から-80℃まで降温し、10分間保持した後、昇温速度10℃/分で160℃まで昇温し、開始点ガラス転移温度(Tg)を求め、これをガラス転移温度とした。この値が大きいほど、耐熱性が高いことを示す。
【0209】
MD方向の引張弾性率T
MD
(25℃及び80℃)
(メタ)アクリル系樹脂フィルムを長さ70mm×幅10mmの長方形に切り出した。該試験片の長さ方向は、樹脂フィルムのMD方向であり、幅方向は、樹脂フィルムのTD方向(MD方向と直交する方向)である。次いで、引張試験機(オートグラフ AG-1S試験機、株式会社島津製作所製)の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が5cmとなるように上記試験片の長さ方向(樹脂フィルムのMD方向)両端部を挟み、80℃及び25℃の環境下、引張速度50mm/分で試験片を長さ方向(樹脂フィルムのMD方向)に引っ張り、得られる応力-ひずみ曲線における初期の直線の傾きから、80℃及び25℃での樹脂フィルムのMD方向の引張弾性率(MPa)を算出した。
【0210】
TD方向の引張弾性率T
TD
(25℃及び80℃)
(メタ)アクリル系樹脂フィルムを長さ70mm×幅10mmの長方形に切り出した。該試験片の長さ方向は、樹脂フィルムのTD方向であり、幅方向は、樹脂フィルムのMD方向(TD方向と直交する方向)である。次いで、引張試験機(オートグラフ AG-1S試験機、株式会社島津製作所製)の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が5cmとなるように上記試験片の長さ方向(樹脂フィルムのTD方向)両端部を挟み、80℃及び25℃の環境下、引張速度50mm/分で試験片を長さ方向(樹脂フィルムのTD方向)に引っ張り、得られる応力-ひずみ曲線における初期の直線の傾きから、80℃及び25℃での樹脂フィルムのTD方向の引張弾性率(MPa)を算出した。
【0211】
MD方向の貯蔵弾性率G’
MD
(80℃)
(メタ)アクリル系樹脂フィルムを長さ30mm×幅5mmの長方形に切り出した。該試験片の長さ方向は、樹脂フィルムのMD方向であり、幅方向は、樹脂フィルムのTD方向(MD方向と直交する方向)である。次いで、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA-220」のつかみ具で、つかみ具の間隔が2cmとなるように上記試験片の長さ方向(樹脂フィルムのMD方向)両端部を挟み、引張りと収縮の周波数を10Hz、昇温速度を10℃/分に設定して、温度80℃における樹脂フィルムのMD方向の貯蔵弾性率を求めた。
【0212】
TD方向の貯蔵弾性率G’
TD
(80℃)
(メタ)アクリル系樹脂フィルムを長さ30mm×幅5mmの長方形に切り出した。該試験片の長さ方向は、樹脂フィルムのTD方向であり、幅方向は、樹脂フィルムのMD方向(TD方向と直交する方向)である。次いで、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA-220」のつかみ具で、つかみ具の間隔が2cmとなるように上記試験片の長さ方向(樹脂フィルムのTD方向)両端部を挟み、引張りと収縮の周波数を10Hz、昇温速度を10℃/分に設定して、温度80℃における樹脂フィルムのTD方向の貯蔵弾性率を求めた。
【0213】
透湿度
JIS Z 0208に規定されるカップ法により、温度40℃、相対湿度90%における(メタ)アクリル系樹脂フィルムの透湿度(g/(m2・24hr))を測定した。
【0214】
内部ヘイズ
30mm×30mmに切り出した(メタ)アクリル系樹脂フィルムの表裏にフタル酸ジメチルをたらし、PMMA板(スミペックスE00 1.0mm)ではさみ、ヘーズメーター(HM―150N、(株)村上色彩技術研究所製)を用い、JIS K7136に準拠して測定した。
【0215】
耐薬性試験のサンプル作製
(メタ)アクリル系樹脂フィルムを長さ80mm×幅80mmの正方形に切り出し、厚み25μmのアクリル系粘着剤を用いて、樹脂フィルムを無アルカリガラス基板(厚み:0.7mm)に貼り付け、耐薬性試験用のサンプル(耐薬性試験前のサンプル)を準備した。このサンプルを80℃条件下に5分間静置し、23℃/55%RH条件下へ取り出した直後に、樹脂フィルムの表面に1.5mLのエタノールと水の混合溶媒(99.5%エチルアルコール富士フィルム和光純薬(株)製/純水=9/1、重量比))を滴下した。
その後、クリーンワイパー(CFW8009L、CHANG-FONG TEXTILE TECHNOLOGY CO.、LTD製)で覆った重さ0.6kg、直径5.5cmの円柱状の重りを、円柱の底面が混合溶媒の液滴と接触するように樹脂フィルム上に載せ、30秒間静置した。次いで、円柱後の重りをフィルム上から除き、耐薬性試験後のサンプルとした。耐薬性試験前のサンプルと耐薬性試験後のサンプルに対して、以下の評価を行った。
【0216】
耐薬性試験
(1)外観評価
耐薬性試験前後のサンプルの外観を目視で確認し、以下の基準で評価を行った。
〇:耐薬性試験の前後で外観に変化がない
×:耐薬性試験後に、フィルムの表面が白濁し、クラックが生じた
(2)ΔHaze (耐薬性)評価
耐薬性試験前のサンプルおよび耐薬性試験後のサンプルのヘイズ値を、ヘーズメーター(HM―150N、(株)村上色彩技術研究所製)を用い、JIS K7136に準拠して測定した。耐薬性試験後のサンプルのヘイズ値から、耐薬性試験前のサンプルのヘイズ値を差し引いた値をΔHaze(耐薬性)とし、耐薬性の指標とした。ΔHaze(耐薬性)は、値が小さい方がアルコール接触による変化が小さく、耐薬性が良好であることを示す。
(3)Sa(試験後)/Sa(試験前)評価
耐薬性試験前のサンプルおよび耐薬性試験後のサンプルの表面粗さをレーザー顕微鏡(LEXT OLS5000、OLYMPUS社製)にて評価した。表面粗さの指標には算術平均高さSaの値を使用した。耐薬性試験前のサンプルのSa値(Sa(試験前))と耐薬性試験後のサンプルのSa値(Sa(試験後))の比であるSa(試験後)/Sa(試験前)を耐薬性の指標とした。Sa(試験後)/Sa(試験前)は、値が小さい方がアルコール接触による変化が小さく、耐薬性が良好であることを示す。
【0217】
湿熱反り
粘着剤層付き偏光板を長さ150mm(偏光子の吸収軸と平行な方向)×幅90mm(偏光子の吸収軸と直交する方向)の長方形に切り出し、長さ160mm×幅102mmの無アルカリガラス基板(厚み:0.2mm)の中央に位置するように貼り付け、湿熱反り試験用のサンプルを準備した。このサンプルを、30℃、湿度95%の環境下に75時間静置した。試験槽から積層体を取り出し25℃、相対湿度50%環境下で2hr静置後、前面側偏光板が上側となるよう、二次元測定器(株式会社ニコン製、NEXIV(登録商標) MR-12072)の測定台上に置いた。次いで、測定台の表面に焦点を合わせ、そこを基準とし、ガラスサンプル面上の25点にそれぞれ焦点を合わせ、基準とした焦点からの高さを測定した。25点の測定点における高さの最大値と最小値との差を反り量とした。具体的には、
図2に示す点50を測定点とした。
図2で示される25個の点は、偏光板の端部から5mm内側の領域における点であり、短辺方向は約20mm間隔で、長辺方向は約35mm間隔で設けられた。
【0218】
GPC分析条件
・測定装置:東ソー(株)製 HLC-8320GPC
・カラム構成:
サンプルカラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M 2本とTSKguardColmn SuperMP(HZ)-M 1本を直列に接続
リファレンスカラム:TSKgel Super H―RC 2本を直列に接続
・検出器:RI(示差屈折)検出器
・計算方法:分子量計算
・内部標準:クロロホルムを内部標準として用いた。
・内部標準ピークの許容時間:0.15分
・内部標準ピークの溶出時間:検量線用標準サンプルを測定した際のクロロホルムの溶出時間を設定した。
・リファレンス試料:THF(特級、富士フィルム和光純薬(株)製)
・測定試料:THF(特級、富士フィルム和光純薬(株)製)に内部標準としてクロロホルム(富士フィルム和光純薬(株)製)を0.04vol%となるように溶解させたTHF/クロロホルム溶液5mLに、(メタ)アクリル樹脂25mgを十分に溶解させて測定試料を調製した。
・カラム温度:40℃
・注入量:10μL
・サンプル側ポンプ流速:0.35ml/分
・リファレンス側ポンプ流量:0.60ml/分
【0219】
上記のGPC分析条件で、(メタ)アクリル樹脂の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。検量線用標準サンプルとして、単分散の質量平均分子量が既知で分子量の異なる以下の7種類のメタクリル樹脂(Shodex STANDARD M-75 昭和電工(株)製)を用いた。
ピーク分子量
・標準試料1:1,050,000
・標準試料2:569,000
・標準試料3:211,000
・標準試料4:68,800
・標準試料5:18,500
・標準試料6:7,360
・標準試料7:3,070
【0220】
検量線用標準サンプルを(メタ)アクリル樹脂と同様の条件に測定し、各標準試料のピークトップの溶出時間を求めた。得られた溶出時間とピーク分子量の結果から、下記に示す3次の近似式を求め、(メタ)アクリル樹脂の測定結果を解析する際のキャリブレーション式とした。
・Log M(分子量)=At3+Bt2+Ct+D
・A,B,C,D:変数
・t:溶出時間
(メタ)アクリル樹脂を上記のGPC測定で分析し、MwおよびMnを得た。