(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146939
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】外周面の加工方法およびレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/352 20140101AFI20241004BHJP
【FI】
B23K26/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059038
(22)【出願日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2023057806
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安岡 知道
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】西井 諒介
(72)【発明者】
【氏名】梅野 和行
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4E168CB03
4E168CB04
4E168CB07
4E168CB08
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA43
4E168EA15
4E168EA17
4E168JA04
(57)【要約】
【課題】例えば、導体が絶縁体を貫通する部分において、所要の気密性あるいは液密性をより容易にあるいはより確実に確保できる導体の外周面を形成することができるような、改善された新規な外周面の加工方法およびレーザ加工装置を得る。
【解決手段】外周面の加工方法は、例えば、絶縁性の合成樹脂材料で作られた第一部材と、導電性の金属材料で作られ第一部材を第一方向に貫通した状態で当該第一部材と一体化された第二部材と、を備えた端子台の、第二部材の第一部材を貫通する部位の外周面の加工方法であって、外周面にレーザ光を照射することにより、当該外周面に周状の凹凸領域を形成する。外周面の加工方法では、外周面にレーザ光を間欠的に照射することにより、凹凸領域を複数の凹部が設けられたポーラス領域として形成してもよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の合成樹脂材料で作られた第一部材と、導電性の金属材料で作られ前記第一部材を第一方向に貫通した状態で当該第一部材と一体化された第二部材と、を備えた端子台の、前記第二部材の前記第一部材を貫通する部位の外周面の加工方法であって、
前記外周面にレーザ光を照射することにより、当該外周面に周状の凹凸領域を形成する、外周面の加工方法。
【請求項2】
前記外周面にレーザ光を間欠的に照射することにより、前記凹凸領域を複数の凹部が設けられたポーラス領域として形成する、請求項1に記載の外周面の加工方法。
【請求項3】
前記外周面の法線方向の反対方向と、前記レーザ光の照射方向との鋭角の角度差の絶対値が、6[deg]以下である、請求項1または2に記載の外周面の加工方法。
【請求項4】
前記レーザ光を間欠的に照射する周波数を、6[kHz]以上かつ100[kHz]以下に設定する、請求項2に記載の外周面の加工方法。
【請求項5】
前記レーザ光を間欠的に照射する周波数を、12.5[kHz]以上かつ50[kHz]以下に設定する、請求項2に記載の外周面の加工方法。
【請求項6】
前記レーザ光の1周期あたりの照射時間の比であるデューティ比を、12.5[%]以上50[%]未満に設定する、請求項4または5に記載の外周面の加工方法。
【請求項7】
前記レーザ光の1周期あたりの照射時間の比であるデューティ比を、25[%]以下に設定する、請求項6に記載の外周面の加工方法。
【請求項8】
前記外周面上で、前記レーザ光のスポットを走査する、請求項1または2に記載の外周面の加工方法。
【請求項9】
前記外周面上で、前記レーザ光のスポットを、互いに異なる複数の方向に走査する、請求項8に記載の外周面の加工方法。
【請求項10】
前記外周面上で、前記レーザ光のスポットを、互いに交差する複数の方向に走査する、請求項9に記載の外周面の加工方法。
【請求項11】
前記外周面上で、前記レーザ光のスポットを、前記第一方向に対して斜めに傾斜した方向に走査する、請求項1に記載の外周面の加工方法。
【請求項12】
前記外周面上に、前記凹部が形成されない非形成領域の周囲を取り囲むように前記ポーラス領域を形成する、請求項2に記載の外周面の加工方法。
【請求項13】
前記外周面の所定領域内に含まれる前記複数の凹部の全ての数に対する、互いに深さ方向の角度差が所定角度以内となる前記複数の凹部の数の比率が、50[%]以下となるように、前記ポーラス領域を形成する、請求項2に記載の外周面の加工方法。
【請求項14】
前記外周面の所定領域内に含まれる前記複数の凹部の全ての数に対する、互いに深さ方向が略同じである前記複数の凹部の数の比率が、50[%]以下となるように、前記ポーラス領域を形成する、請求項2に記載の外周面の加工方法。
【請求項15】
絶縁性の合成樹脂材料で作られた第一部材と、導電性の金属材料で作られ前記第一部材を第一方向に貫通した状態で当該第一部材と一体化された第二部材と、を備えた端子台の、前記第二部材の前記第一部材を貫通する部位の外周面にレーザ光を照射することにより周状の凹凸領域を形成するレーザ加工装置であって、
レーザ光を出力するレーザ装置と、
前記レーザ装置から出力されたレーザ光を前記外周面に向けて照射する光学ヘッドと、
前記外周面を前記光学ヘッドに対して相対的に移動する相対移動機構と、
を備えた、レーザ加工装置。
【請求項16】
前記レーザ光を前記外周面上で走査する走査機構を備えた、請求項15に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面の加工方法およびレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂材料のような絶縁体で作られたベース部を導体で作られたバスバーが貫通した端子台が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の端子台では、導体が絶縁体を貫通する部分において、所要の気密性あるいは液密性を確保することが求められる。当該導体が絶縁体を貫通する部分において、より容易にあるいはより確実に所要の気密性あるいは液密性を確保することができれば、有益である。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、導体が絶縁体を貫通する部分において、所要の気密性あるいは液密性をより容易にあるいはより確実に確保できる導体の外周面を形成することができるような、改善された新規な外周面の加工方法およびレーザ加工装置を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の外周面の加工方法は、例えば、絶縁性の合成樹脂材料で作られた第一部材と、導電性の金属材料で作られ前記第一部材を第一方向に貫通した状態で当該第一部材と一体化された第二部材と、を備えた端子台の、前記第二部材の前記第一部材を貫通する部位の外周面の加工方法であって、前記外周面にレーザ光を照射することにより、当該外周面に周状の凹凸領域を形成する。
【0007】
前記外周面の加工方法では、前記外周面にレーザ光を間欠的に照射することにより、前記凹凸領域を複数の凹部が設けられたポーラス領域として形成してもよい。
【0008】
前記外周面の加工方法では、前記外周面の法線方向の反対方向と、前記レーザ光の照射方向との鋭角の角度差の絶対値が、6[deg]以下であってもよい。
【0009】
前記外周面の加工方法では、前記レーザ光を間欠的に照射する周波数を、6[kHz]以上かつ100[kHz]以下に設定してもよい。
【0010】
前記外周面の加工方法では、前記レーザ光を間欠的に照射する周波数を、12.5[kHz]以上かつ50[kHz]以下に設定してもよい。
【0011】
前記外周面の加工方法では、前記レーザ光の1周期あたりの照射時間の比であるデューティ比を、12.5[%]以上50[%]未満に設定してもよい。
【0012】
前記外周面の加工方法では、前記レーザ光の1周期あたりの照射時間の比であるデューティ比を、25[%]以下に設定してもよい。
【0013】
前記外周面の加工方法では、前記外周面上で、前記レーザ光のスポットを走査してもよい。
【0014】
前記外周面の加工方法では、前記外周面上で、前記レーザ光のスポットを、互いに異なる複数の方向に走査してもよい。
【0015】
前記外周面の加工方法では、前記外周面上で、前記レーザ光のスポットを、互いに交差する複数の方向に走査してもよい。
【0016】
前記外周面の加工方法では、前記外周面上で、前記レーザ光のスポットを、前記第一方向に対して斜めに傾斜した方向に走査してもよい。
【0017】
前記外周面の加工方法では、前記外周面上に、前記凹部が形成されない非形成領域の周囲を取り囲むように前記ポーラス領域を形成してもよい。
【0018】
前記外周面の加工方法では、前記外周面の所定領域内に含まれる前記複数の凹部の全ての数に対する、互いに深さ方向の角度差が所定角度以内となる前記複数の凹部の数の比率が、50[%]以下となるように、前記ポーラス領域を形成してもよい。
【0019】
前記外周面の加工方法では、前記外周面の所定領域内に含まれる前記複数の凹部の全ての数に対する、互いに深さ方向が略同じである前記複数の凹部の数の比率が、50[%]以下となるように、前記ポーラス領域を形成してもよい。
【0020】
本発明のレーザ加工装置は、例えば、絶縁性の合成樹脂材料で作られた第一部材と、導電性の金属材料で作られ前記第一部材を第一方向に貫通した状態で当該第一部材と一体化された第二部材と、を備えた端子台の、前記第二部材の前記第一部材を貫通する部位の外周面にレーザ光を照射することにより周状の凹凸領域を形成するレーザ加工装置であって、レーザ光を出力するレーザ装置と、前記レーザ装置から出力されたレーザ光を前記外周面に向けて照射する光学ヘッドと、前記外周面を前記光学ヘッドに対して相対的に移動する相対移動機構と、を備える。
【0021】
前記レーザ加工装置では、前記レーザ光を前記外周面上で走査する走査機構を備えてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば、導体が絶縁体を貫通する部分において、所要の気密性あるいは液密性をより容易にあるいはより確実に確保できる導体の外周面を形成することができるような、改善された新規な外周面の加工方法およびレーザ加工装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態の端子台の例示的かつ模式的な側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の端子台の例示的かつ模式的な正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面を加工するレーザ加工装置の例示的な概略構成図である。
【
図5】
図5は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面を加工するレーザ加工装置の光学ヘッドの例示的な概略構成図である。
【
図6】
図6は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面の例示的かつ模式的な平面図であって、レーザ光の走査経路の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面の例示的かつ模式的な平面図であって、
図6の前または後におけるレーザ光の走査経路の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面近傍における断面の一例を示す写真画像である。
【
図9】
図9は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面を加工するレーザ加工装置から出力するパルス状のレーザ光の周波数およびデューティ比に応じた気密性の評価結果の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面の例示的かつ模式的な平面図であって、レーザ光の走査経路および照射位置の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、
図10に示される一つの走査経路上に設定される複数の照射位置に向けてレーザ光が照射される状態を示す例示的かつ模式的な側面図である。
【
図13】
図13は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面の例示的かつ模式的な平面図であって、レーザ光の走査経路の別の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面の例示的かつ模式的な平面図であって、レーザ光の走査経路のさらに別の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態の端子台に含まれるバスバーの外周面の一部の例示的かつ模式的な平面図であって、非形成領域が設けられた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0025】
本明細書において、序数は、方向や、部材、部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではないし、個数を限定するものでもない。
【0026】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表している。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに、互いに直交している。X方向は、貫通方向や、延方向、長手方向とも称され、Y方向は、短手方向とも称され、Z方向は、厚さ方向とも称される。
【0027】
[端子台]
図1は、端子台30の側面図であり、
図2は、端子台30の正面図である。
【0028】
図1,2に示されるように、端子台30は、ベース10と、バスバー20と、を備えている。ベース10は、絶縁性の合成樹脂材料で作られ、バスバー20は、導電性を有した金属材料で作られる。バスバー20を構成する金属材料は、例えば、無酸素銅や銅合金のような銅系材料であるが、これには限定されない。ベース10は、第一部材の一例であり、バスバー20は、第二部材の一例である。
【0029】
バスバー20は、四角形状の断面を有するとともにY方向における略一定の幅およびZ方向における略一定の厚さを有してX方向に延びた角棒状の形状を有し、ベース10をX方向に貫通している。本実施形態では、バスバー20の断面は、一例として、長方形状の形状を有しているが、これには限定されず、例えば、正方形状や、円形状のような、他の形状を有してもよい。また、断面が多角形状の形状を有する場合、角部は丸められていてもよい。
【0030】
バスバー20のX方向の端部21、およびX方向の反対方向の端部22は、それぞれ、ベース10から露出している。端部21および端部22は、それぞれ別の二つの導体と電気的に接続される。バスバー20は、それら二つの導体を電気的に接続する。
【0031】
バスバー20において、端部21と端部22との間の中間部位23は、ベース10内を貫通し、その周囲をベース10によって取り囲まれている。中間部位23において、バスバー20の外周面20aは、ベース10と接している。
【0032】
端部21および端部22のうち一方は、例えば、筐体(不図示)の外に位置し、他方は筐体の中に位置する。筐体の内側と外側との間で所要の気密性あるいは液密性を確保しなければならない場合、中間部位23の外周面20aとベース10との間でも、所要の気密性あるいは液密性を確保する必要がある。
【0033】
バスバー20は、ベース10をX方向に貫通した状態で、当該ベース10と一体化されている。ベース10とバスバー20とは、インサート成形によって一体化される。すなわち、インサート部品としてのバスバー20を装着した金型に流動性を有した状態の合成樹脂材料を流し込み、当該合成樹脂材料を固化することにより、当該バスバー20と当該合成樹脂材料が固化されたベース10とを有した端子台30を得ることができる。
【0034】
図3は、バスバー20の一部である中間部位23の平面図である。中間部位23とベース10との間の気密性あるいは液密性は、当該中間部位23の全周に渡って確保する必要がある。本実施形態では、所要の気密性あるいは液密性をより確実に確保するため、
図3に示されるように、中間部位23には、その全周に渡ってX方向における所定の幅Wxで周状に延びたポーラス領域Apが形成されている。具体的に、本実施形態のバスバー20にあっては、四つの外周面20aの全てにおいて、X方向における同じ位置に、ポーラス領域Apが形成されている。
【0035】
ポーラス領域Apにおいて、中間部位23には、ベース10が少なくとも部分的に進入した複数の凹部(小孔)が設けられている。発明者らの鋭意研究により、このようなポーラス領域Apを形成した端子台30にあっては、ポーラス領域Apを形成しない端子台30に比べて、気密性あるいは液密性が高くなることが判明した。これは、凹部内にベース10の少なくとも一部が進入することにより、ベース10とバスバー20との間のシール長さが長くなるとともに、ベース10が凹部内に進入している部位においてベース10とバスバー20との間の面圧がより高くなることによるものと、推定される。なお、ポーラス領域Apにおいて、複数の凹部または凸部は、規則的に形成されてもよいし、ランダムに形成されてもよい。ポーラス領域Apは、凹凸領域の一例である。
【0036】
[レーザ加工装置]
図4は、本実施形態のレーザ加工装置100の概略構成を示す図である。レーザ加工装置100は、バスバー20の外周面20aに、レーザ光Lを照射することにより、上述した周状のポーラス領域Apを形成する。レーザ加工装置100は、レーザ表面処理装置とも称されうる。
【0037】
レーザ加工装置100は、光源装置110と、光学ヘッド120と、光ファイバケーブル130と、移動装置200と、回転支持装置300と、を備えている。
【0038】
光源装置110は、レーザ発振器を備えており、一例としては、数キロワットのパワーのレーザ光を出力できるよう構成されている。レーザ発振器は、レーザ装置の一例である。レーザ発振器が出力するレーザ光の波長は、例えば、400[nm]以上かつ1200[nm]以下である。
【0039】
光源装置110と光学ヘッド120とは、光ファイバケーブル130を介して、光学的に接続されている。光ファイバケーブル130は、コアおよび当該コアを取り囲むクラッドを有した光ファイバ131(
図5参照)を有している。光ファイバ131は、光源装置110から出力されたレーザ光を光学ヘッド120へ伝送する。
【0040】
移動装置200は、バスバー20に対する光学ヘッド120の位置や姿勢を変更可能とする装置であり、本実施形態では、例えば、ベース210と、可動アーム220と、を備えている。
【0041】
本実施形態では、一例として、可動アーム220は、ロボットアームとして構成されており、複数のアームが結節点を介して回動可能に接続された構成を有している。また、可動アーム220は、結節点を介してベース210に回動可能に接続されるとともに、結節点を介して光学ヘッド120にも回動可能に接続されている。したがって、結節点で接続される二つのアーム間、アームとベース210との間、およびアームと光学ヘッド120との間の、少なくともいずれか一つの角度を変更することにより、ベース210に対する光学ヘッド120の位置や姿勢を変更することができる。
【0042】
移動装置200は、ベース210に対する可動アーム220の位置、姿勢、および形状のうち少なくとも一つを変更可能に構成されている。移動装置200は、当該変更によって光学ヘッド120からバスバー20へのレーザ光Lの出力状態、すなわちバスバー20に対するレーザ光Lの照射位置や照射方向を変更する。移動装置200は、照射状態可変機構とも称されうる。なお、可動アーム220は、ロボットアームには限定されず、例えば、レールとスライダとの組み合わせを有した構成を備えてもよい。移動装置200は、外周面20aを光学ヘッド120に対して相対的に移動可能な相対移動機構の一例である。
【0043】
また、回転支持装置300は、電動モータのような回転装置を含むボディ310と、バスバー20を支持する支持部320と、ボディ310に対して回転軸Ax回りに回転可能に支持されるシャフト330と、を有している。支持部320は、バスバー20のX方向に延びる中心軸と、シャフト330の回転軸Axとが平行となり、好ましくは、当該バスバー20の中心軸とシャフト330の回転軸Axとが略一致する状態で、バスバー20を支持する。回転支持装置300は、シャフト330および支持部320を、ポーラス領域Apを形成する対象となる外周面20aが、それぞれ光学ヘッド120を向くように、バスバー20の回転姿勢を変更する。これにより、レーザ加工装置100は、全ての外周面20aにポーラス領域Apを形成することができ、その結果、バスバー20の複数の外周面20aにおいて、周状のポーラス領域Apを形成することができる。回転支持装置300は、外周面20aを光学ヘッド120に対して相対的に移動可能な相対移動機構の一例である。
【0044】
図5は、光学ヘッド120の概略構成図である。光学ヘッド120は、光源装置110から光ファイバ131を介して入力されたレーザ光を、バスバー20に向けて照射するための光学装置である。光学ヘッド120は、コリメートレンズ121と、ガルバノスキャナ126と、集光レンズ122と、を備えている。これらコリメートレンズ121、ガルバノスキャナ126、および集光レンズ122は、光学部品とも称されうる。
【0045】
コリメートレンズ121は、光ファイバ131を介して入力されたレーザ光をコリメートする。コリメートされたレーザ光は、平行光になる。
【0046】
コリメートレンズ121を経由したレーザ光は、ガルバノスキャナ126へ向かう。ガルバノスキャナ126は、2枚のミラー126a,126bを有しており、当該2枚のミラー126a,126bの角度を制御することで、バスバー20の表面上でのレーザ光Lの照射位置を移動し、当該表面上でレーザ光Lを走査することができる装置である。ミラー126a,126bの角度は、それぞれ、例えばモータを含む不図示のアクチュエータによって変更されうる。
【0047】
集光レンズ122は、ガルバノスキャナ126を経由したレーザ光を集光し、レーザ光L(出力光)として、バスバー20へ照射する。
【0048】
ガルバノスキャナ126は、光学ヘッド120からのレーザ光Lの出力方向を変更することができる。当該レーザ光Lの出力方向の変化により、当該レーザ光Lのバスバー20への照射位置や照射方向が変化する。ガルバノスキャナ126は、照射状態可変機構の一例である。
【0049】
レーザ加工装置100は、ガルバノスキャナ126および移動装置200のうち少なくとも一方の作動により、バスバー20の表面におけるレーザ光Lの照射位置や照射方向を変更することができる。
【0050】
また、レーザ加工装置100は、ガルバノスキャナ126および移動装置200のうち少なくとも一方の作動により、バスバー20の表面上で、レーザ光Lのスポットを走査することができる。ガルバノスキャナ126および移動装置200は、走査機構の一例である。
【0051】
光学ヘッド120から出力されたレーザ光Lは、外周面20a上で走査されながら、間欠的に照射される。これにより、外周面20a上には、レーザ光Lのスポットが走査された領域において、複数の凹部が形成され、当該走査された領域、言い換えると照射された領域が、ポーラス領域Apとなる。
【0052】
[走査経路]
図6は、外周面20a上でのレーザ光Lのスポットの走査経路Pt1を示す平面図である。
図6の走査経路Pt1による走査は、X方向と交差する方向の一方へ向かう走査と、他方へ向かう走査とが、X方向の反対方向に略等間隔でずれながら交互に行われるよう、設定されている。走査経路Pt1には、互いに反対方向へ向かう二つの走査経路が含まれている。
図6に含まれる二つの走査経路は、例えば、外周面20aの外で折り返すよう、設定される。
【0053】
図7は、外周面20a上でのレーザ光Lのスポットの走査経路Pt2を示す平面図である。
図7の走査経路Pt2による走査は、X方向へ向かう走査と、X方向の反対方向へ向かう走査とが、X方向と交差する一方向に略等間隔でずれながら交互に行われるよう、設定されている。走査経路Pt2には、互いに反対方向へ向かう二つの走査経路が含まれている。
図7に含まれる二つの走査経路の長さにより、X方向におけるポーラス領域Apの幅Wxが定まる。
【0054】
図7の走査経路Pt2におけるレーザ光Lのスポットの走査は、
図6の走査経路Pt1の走査経路Pt1におけるレーザ光Lのスポットの走査の前、または後に行われる。
図6の走査経路Pt1と
図7の走査経路Pt2とから明らかとなるように、
図6,7の走査経路Pt1,Pt2による走査が行われる場合、当該走査には、互いに交差する複数の走査経路が含まれることになる。
【0055】
図6に示される走査経路Pt1および
図7に示される走査経路Pt2を含むことにより、ポーラス領域Apにおいて、凹部の分布密度のばらつきを少なくし、ポーラス領域Apの場所による気密性あるいは液密性の低下を抑制し、ひいては、ポーラス領域Apの特定の箇所において気体や液体がリークしやすくなるのを抑制することができる。
【0056】
[断面形状]
図8は、バスバー20の外周面20a近傍における当該外周面20aと直交した断面の写真画像である。
図8に示されるように、レーザ光Lの間欠的な照射および走査により、外周面20a上には、複数の穴Hが形成される。穴Hは、直径Dhが30[μm]以上かつ200[μm]以下程度の小孔であり、有底凹部とも称されうる。穴Hは、凹部の一例である。
【0057】
図8に示されるように、直径Dhは、穴Hの外周面20a上の開口端hoでの直径とする。穴Hの深さDpは、法線方向Dn(またはその反対方向Do、以下単に反対方向Doと記す)における外周面20aと穴Hの最深点p2との間の距離とする。互いに隣接する複数の穴Hの開口端ho間の距離は、diとする。開口端hoの中心p1は、外周面20aを反対方向Doに見た場合の穴Hの幾何中心とする。中心p1と穴Hの最深点p2とを結ぶ仮想線VLと反対方向Doとの間の鋭角の角度差をθとする。なお、角度差θは、仮想線VLと法線方向Dnとの間の鋭角の角度差と同じである。また、仮想線VLは、レーザ光Lの照射方向とみなすことができる。よって、角度差θは、レーザ光Lの照射方向と反対方向Doとの間の角度差とみなすことができる。
【0058】
[加工条件]
発明者らは、鋭意研究により、以下の(1)~(11)のような条件を満たすような加工を行うことにより、所要の気密性あるいは液密性が得られる好適なポーラス領域Apを得られるという知見を得た。
【0059】
(1)複数の穴Hの50[%]以上において、仮想線VLと法線方向Dnとの間の角度差θの絶対値を、6[deg]以下にする。
(2)反対方向Doと、レーザ光Lの照射方向との鋭角の角度差θの絶対値を、6[deg]以下にする。
角度差θが大きすぎると、インサート成形時に流動性を有した合成樹脂材料が穴H内に進入し難くなり、所要の気密性あるいは液密性が得られ難くなることが判明した。このような観点から、上記(1)、(2)を満たすのが好ましいことが判明した。
【0060】
(3)開口端ho間の距離diを、10[μm]以上かつ100[μm]以下にする。
(4)ポーラス領域Apにおける穴Hの外周面20aの1[mm2]あたりの数(以下、これを密度Deとする)を、100以上かつ10000以下とする。
距離diが短いほど、あるいは密度Deが高いほど、隣接した穴H同士が一体化して大きな穴になる確率が高まる。穴Hが大きすぎる場合には、ポーラス領域Apにおける穴Hの数が減り、これに伴いポーラス領域Ap全体でのシール長が短くなり、所要の気密性あるいは液密性が得られ難くなることが判明した。他方、距離diが長い、あるいは密度Deが低くなり過ぎた場合も、ポーラス領域Ap全体でのシール長が短くなり、所要の気密性あるいは液密性が得られ難くなることが判明した。このような観点から、上記(3)、(4)を満たすのが好ましいことが判明した。
【0061】
(5)複数の穴Hの50[%]以上において、直径Dhが、30[μm]以上かつ100[μm]以下である。
直径Dhが大きすぎると、ポーラス領域Ap全体でのシール長が短くなり、所要の気密性あるいは液密性が得られ難くなることが判明した。他方、直径Dhが小さすぎると、インサート成形時に流動性を有した合成樹脂材料が穴H内に進入し難くなり、所要の気密性あるいは液密性が得られ難くなることが判明した。このような観点から、上記(5)を満たすのが好ましいことが判明した。また、穴Hの開口端hoでの開口面積をA、円周率をπとした場合、当該穴Hの相当直径dは、次の式(1)
d=2√(A/π) ・・・(1)
で表すことができる。上記(5)の条件は、相当直径dで表現してもよい。すなわち、上記(5)は、複数の穴Hの50[%]以上において、相当直径dが、30[μm]以上かつ100[μm]以下である、としてもよい。
【0062】
(6)複数の穴Hの50[%]以上において、アスペクト比Rが、1以上かつ10以下である。アスペクト比Rは、次の式(2)で表すことができる。
R=Dp/(2√(A/π)) ・・・(2)
ここに、Aは、穴Hの開口端hoの開口面積、πは、円周率である。
アスペクト比Rが大きすぎると、インサート成形時に流動性を有した合成樹脂材料が穴H内に進入し難くなり、所要の気密性あるいは液密性が得られ難くなることが判明した。他方、アスペクト比Rが小さくなりすぎると、ポーラス領域Ap全体でのシール長が短くなり、所要の気密性あるいは液密性が得られ難くなることが判明した。このような観点から、上記(6)を満たすのが好ましいことが判明した。
【0063】
(7)ポーラス領域Apの幅Wxが、3[mm]以上である。
ポーラス領域Apの幅Wxが狭すぎると、ポーラス領域Ap全体でのシール長が短くなり、所要の気密性あるいは液密性が得られ難くなることが判明した。このような観点から、上記(7)を満たすのが好ましいことが判明した。
【0064】
図9は、レーザ加工装置100から出力するパルス状のレーザ光Lの周波数およびデューティ比に応じた気密性の評価結果の一例を示すグラフである。
図9の評価は、実際に樹脂で加工部を覆い水中に沈め気密性の確認とその際の気泡の発生確認を実施した結果であり、◎(最良)は、所定の条件で気密性が確認出来て気泡が発生しなかった場合を示し、○(良好)は、気密性が確認できたが気泡が発生した場合を示し、×(不良)は、気密性も確認できなかったうえに気泡が発生した場合を示す。
図9から明らかとなるように、以下の(8)、(9)の条件を満たすのが好ましく、以下の(10)、(11)の条件を満たすのがより好ましいことが判明した。
(8)レーザ光を間欠的に照射する周波数を、6[kHz]以上かつ100[kHz]以下にする。
(9)レーザ光の1周期あたりの照射時間の比であるデューティ比を、12.5[%]以上50[%]未満にする。
(10)レーザ光を間欠的に照射する周波数を、12.5[kHz]以上かつ50[kHz]以下にする。
(11)レーザ光の1周期あたりの照射時間の比であるデューティ比を、25[%]以下にする。
これは、パルス周波数が低すぎる場合、およびデューティ比が大きすぎる場合には、穴Hが大きくなり、これに伴い、ポーラス領域Ap全体でのシール長が短くなり、所要の気密性あるいは液密性が得られ難くなるからであると、推定できる。また、パルス周波数が高すぎる場合、およびデューティ比が小さすぎる場合には、穴Hが小さくなり、これに伴い、インサート成形時に流動性を有した合成樹脂材料が穴H内に進入し難くなり、所要の気密性あるいは液密性が得られ難くなるからであると、推定できる。
【0065】
[穴の深さ方向の分散]
図10は、外周面20aに対するガルバノスキャナ126によるレーザ光Lの走査経路および照射位置を示す平面図であって、外周面20a上の点Oを、法線方向Dnの反対方向に見た場合の図である。
図10において、矢印付きの線は、それぞれ、走査経路Pt3および当該走査経路Pt3における走査方向を示し、線上の各点は、レーザ光の外周面20aにおける照射位置Phを示す。照射位置Phは、穴Hの開口の位置に相当する。
【0066】
図10の例では、複数の走査経路Pt3は、いずれも、点Oを中心とした放射方向に沿うとともに、互いに異なる方向である。また、この例では、周方向に互いに隣り合う二つの走査経路Pt3間の角度間隔(
図10に定義される角度αの間隔)は、略一定(例えば、22.5deg)に設定されている。ただし、これには限定されず、当該角度間隔は異なる値であってもよいし、略一定でなくてもよい。
【0067】
各走査経路Pt3について、複数の照射位置Phが設定されている。照射位置Phは、穴Hの開口位置となる。
図10の例では、互いに隣り合う二つの照射位置Phの間隔は、略一定に設定されている。ただし、これには限定されず、間隔はより長くても短くてもよいし、略一定でなくてもよい。なお、
図10の例では、照射位置Phは、外周面20a上で複数の走査経路Pt3が交わる点Oから離れるように設定される。すなわち、点Oは、照射位置Phとしては設定されていない。これは、複数の走査経路Pt3について、点Oに照射位置Phが設定されると、当該点Oにレーザ光が複数回照射されることとなり、当該点Oにおいて、穴Hが深くなったり大きくなったりする虞があるからである。ただし、一つあるいは少ない数の走査経路Pt3についてのみ、点Oに照射位置Phが設定されてもよい。
【0068】
このような走査経路Pt3、走査方向、および照射位置Phの設定により、外周面20a上で、複数の照射位置Phを分散して配置することができる。
【0069】
図11は、ガルバノスキャナ126上の出射点PrからX方向に沿う走査経路Pt3に沿って走査される場合に出力される複数のレーザ光の方向を示す側面図であって、Y方向に見た図である。出射点Prは、点Oに対して法線方向Dnに所定距離だけ離れている。また、
図12は、一つの照射位置Phに対応した
図11の拡大図である。
図11に示されるように、一つの出射点Prから異なる複数の照射位置Phに向けてレーザ光Lが照射される場合、走査経路Pt3に沿って各照射位置Phに対応して設けられる複数の穴Hの深さ方向は、
図11中に二点鎖線で示されるように、互いに異なる方向となる。また、
図12に示されるように、各穴Hについて、深さ方向Drdは、出射点Prからのレーザ光Lの照射方向Drlと同じになるとともに、法線方向Dnの反対方向に沿う方向成分Drz(以下、これを垂直方向成分Drzと称する)と、法線方向Dnと交差した方向成分Dri(以下、これを面内方向成分Driと称する)とを有することになる。
図11のような照射が行われる場合、面内方向成分Driは、走査方向または走査方向の反対方向であって、点Oから離れる方向となる。また、この場合、照射位置Phが点Oに近いほど、深さ方向Drdの法線方向Dnの反対方向に対する角度δは小さくなり、当該深さ方向Drdは、法線方向Dnの反対方向に近付くとともに、面内方向成分Driの大きさは小さくなる。すなわち、
図10~12のようなレーザ光Lの照射により、互いに深さ方向Drdが異なる複数の穴Hを形成することができる。この例では、
図10に示される全ての照射位置Phに開口する穴Hについて、深さ方向Drdが互いに異なることになる。
【0070】
複数の穴Hの深さ方向Drdを分散することにより、バスバー20とベース10との間に、法線方向Dnと交差する任意の方向に相対力が作用した場合について、いずれかの穴Hにおいて、ベース10の当該穴H内に進入した部位がより深く進入する状態(食い込む状態)を得ることができ、バスバー20とベース10とが外周面20aに沿う方向にずれにくくなる。また、バスバー20とベース10との間に、法線方向Dnまたは法線方向Dnの反対方向に相対力が作用した場合についても、ベース10の当該穴H内に進入した部位が面内方向成分Driを有して延びる分、ベース10が外周面20aから離隔し難くなっている。よって、このような構成によれば、ベース10とバスバー20との密着強度について、方向に応じた密着強度のばらつきを減らすことができる。
【0071】
複数の穴Hの深さ方向Drdの分散は、
図10~12以外の方法によっても得ることができる。複数の穴Hの形成方法によらず、所定領域に開口する複数の穴Hに対して、互いに深さ方向Drdの角度差が所定角度(例えば5°)以内となる複数の穴H、または互いに深さ方向Drdが略同じである複数の穴Hを、同じ群として設定した場合において、当該群に含まれる複数の穴Hの数の、所定領域内に含まれる全ての穴Hの数に対する比率を、50[%]以下となるようにしてもよい。これにより、複数の穴Hの深さ方向Drdを分散することができ、方向に応じた密着強度のばらつきを減らすことができる。なお、所定領域は、例えば、内側に凹まない外縁を有するような円形または四角形状のような連続領域とすることができる。所定領域は、例えば、ポーラス領域Apの全体であってもよいし、一部であってもよい。
【0072】
[複数の穴の並び方向(走査経路)]
図13は、外周面20a上でのレーザ光Lのスポットの走査経路Pt4,Pt5を示す平面図である。
図13の走査経路Pt4による走査は、X方向と交差する方向の一方へ向かう走査と、他方へ向かう走査とが、X方向に略等間隔でずれながら交互に行われるよう、設定されている。また、走査経路Pt5による走査は、X方向へ向かう走査と、X方向の反対方向へ向かう走査とが、X方向と交差する方向に略等間隔でずれながら交互に行われるよう、設定されている。走査経路Pt4と走査経路Pt5とは、互いに異なるとともに互いに交差した方向である。複数の穴Hは、走査経路Pt4,Pt5に沿って所定間隔で設けられるため、互いに交差する複数の走査経路Pt4,Pt5で走査される場合にあっては、穴Hの列として並び方向が互いに交差した複数の列が設けられることになる。この場合、ベース10の穴Hに進入する部位の列として並び方向が互いに交差した複数の列が設けられることになる。よって、ベース10とバスバー20との間に作用する外周面20aに沿う複数の方向の相対力に対して、ベース10とバスバー20とが互いにずれにくくなるという効果が得られる。
【0073】
図14は、外周面20a上でのレーザ光Lのスポットの走査経路Pt6を示す平面図である。
図14の走査経路Pt6による走査は、X方向に対して斜めに傾斜した方向に走査が行われる。この場合、X方向に対して傾斜した方向に並ぶ複数の穴Hの列が設けられ、これに対応して、ベース10の穴Hに進入する部位がX方向に対して傾斜した方向に並ぶ列が設けられることになる。よって、ベース10とバスバー20との間に作用する外周面20aに沿う相対力であってX方向に対して斜めに傾斜した方向の相対力に対して、ベース10とバスバー20とが互いにずれにくくなるという効果が得られる。また、この例でも、走査経路Pt6は、互いに交差した二つの方向へ向かう走査を含むため、穴Hの列として並び方向が互いに交差した複数の列が設けられることになる。よって、ベース10とバスバー20との間に作用する外周面20aに沿う複数の方向の相対力に対して、ベース10とバスバー20とが互いにずれにくくなるという効果が得られる。
【0074】
[非処理領域]
図15は、バスバー20の一部である中間部位23の平面図である。
図15に示されるように、
図15の例では、ポーラス領域Apに囲まれた非処理領域Anが設けられている。非処理領域Anは、レーザ光Lが照射されず、穴Hが形成されない領域、すなわちポーラス領域Apとならない領域であり、非形成領域の一例である。非処理領域Anでは、ポーラス領域Apに比べてバスバー20とベース10との間の摩擦力が低くなるため、ベース10とバスバー20とが相対的にずれる(滑る)ことができる。これにより、例えば、温度変化に応じた熱膨張係数の差による歪みを吸収して局所的に応力が高くなるのを抑制できる場合がある。また、非処理領域Anは、ポーラス領域Apで囲まれているため、当該非処理領域Anが気体や液体のリーク経路となってシール性が低下するのを抑制することができる。なお、
図15の例では、非処理領域Anは、1箇所だけであるが、複数箇所に分けて設けられてもよい。
【0075】
以上、説明したように、本実施形態によれば、バスバー20(第二部材)のうちベース10(第一部材)を貫通する中間部位23の外周面20aに、周状の凹凸領域としてのポーラス領域Apを設けることにより、当該中間部位23において、所要の気密性あるいは液密性をより容易にあるいはより確実に確保することが可能となるような、改善された新規な端子台を得ることができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0077】
凹凸領域あるいはレーザ加工の条件は、上記(1)~(11)を満たせばよく、上記実施形態には限定されない。
【符号の説明】
【0078】
10…ベース(第一部材)
20…バスバー(第二部材)
20a…外周面
21…端部
22…端部
23…中間部位
30…端子台
100…レーザ加工装置
110…光源装置
120…光学ヘッド
121…コリメートレンズ
122…集光レンズ
126…ガルバノスキャナ(走査機構)
126a,126b…ミラー
130…光ファイバケーブル
131…光ファイバ
200…移動装置(相対移動機構、走査機構)
210…ベース
220…可動アーム
300…回転支持装置(相対移動機構)
310…ボディ
320…支持部
330…シャフト
A…開口面積
Ap…ポーラス領域(凹凸領域)
An…非処理領域(非処理領域)
Ax…回転軸
De…密度
Dh…直径
Dn…法線方向
Do…反対方向
Dp…深さ
Drd…深さ方向
Drl…照射方向
Dri…(深さ方向の)面内方向成分
Drz…(深さ方向の)垂直方向成分
d…相当直径
di…距離
H…穴(凹部)
ho…開口端
L…レーザ光
O…点
Pt1~Pt6…走査経路
Ph…照射位置
Pr…出射点
p1…中心(幾何中心)
p2…最深点
R…アスペクト比
VL…仮想線
Wx…幅
X…方向(第一方向)
Y…方向
Z…方向
α…角度
δ…角度
θ…角度差