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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147079
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】再加熱用麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20241008BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L7/109 E
A23L7/109 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059857
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】千葉 勇太
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA02
4B046LA03
4B046LA04
4B046LA05
4B046LA06
4B046LB04
4B046LB05
4B046LB09
4B046LB10
4B046LB20
4B046LC01
4B046LC20
4B046LE19
4B046LP41
4B046LP64
4B046LP69
4B046LP80
4B046LQ05
(57)【要約】
【課題】電子レンジ等による再加熱時に良好な食感を再現できる特徴を有する再加熱用麺類を提供する。
【解決手段】下記工程1及び2:
・工程1;α化されていない麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して、下記条件1を満たす加熱済み麺類を得る工程、
(条件1)前記α化されていない麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して喫食に適する状態にした際の至適水分含量に対する前記加熱済み麺類の相対水分含量Aが0.78以上である
・工程2;工程1で得られる加熱済み麺類に、2~30℃の水及び/又は2~30℃の調味液を吸収させて、下記条件2を満たす吸水済み麺類を得る工程
(条件2)前記α化されていない麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して喫食に適する状態にした際の至適水分含量に対する前記吸水済み麺類の相対水分含量Bが1.12以下であり、ただし、B-A>0.01である、
を含む、再加熱用麺類の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1及び2:
・工程1;α化されていない麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して、下記条件1を満たす加熱済み麺類を得る工程、
(条件1)前記α化されていない麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して喫食に適する状態にした際の至適水分含量に対する前記加熱済み麺類の相対水分含量Aが0.78以上である
・工程2;工程1で得られる加熱済み麺類に、2~30℃の水及び/又は2~30℃の調味液を吸収させて、下記条件2を満たす吸水済み麺類を得る工程
(条件2)前記α化されていない麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して喫食に適する状態にした際の至適水分含量に対する前記吸水済み麺類の相対水分含量Bが1.12以下であり、ただし、B-A>0.01である、
を含む、再加熱用麺類の製造方法。
【請求項2】
加熱済み麺類の相対水分含量Aが1.07以下である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
吸水済み麺類の相対水分含量Bが0.9以上である、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
0.30≧B-A>0.01である、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
麺類及びα化されていない当該麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して喫食に適する状態にした際の至適水分量が以下からなる群より選択される:
(1)スパゲッティ、60.0質量%、
(2)マカロニ、60.0質量%、
(3)乾燥そば、72.0質量%、
(4)そば、68.0質量%、
(5)乾燥うどん、70.0質量%、
(6)うどん、75.0質量%、
(7)乾燥中華麺、66.8質量%、
請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子レンジ等で再加熱して食する麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、茹でたての麺類は、麺外部が柔らかく、麺内部が弾力のある内外に食感差のあることが良いとされている。麺類は熱湯で茹でることでα化が急速に進行すると同時に、麺表面から吸水が進む。そのため、茹で上げ直後の麺類の表面と中心部には水分勾配があり、これが麺の内外の食感差を生み出し、食感に対する良い評価に繋がる。
しかし、加熱調理済みの状態で流通される麺類は大量調理マニュアルに従って、茹で後速やかに冷却する必要があるため、茹で後、冷水や冷風によって冷却され、保管される。茹で麺は調理から時間が経つと麺の表面と中心部の水分勾配が徐々に小さくなり、茹で伸び状態になってしまう。そのため、調理から喫食までの時間が長いと麺の内外の食感差が無くなり、麺類の食感に対する評価は茹でたての麺と比べ劣ったものとなる。これは、調理終了から喫食まで時間を要するお弁当をはじめとした総菜において重要な課題である。
上記問題を解決するために以下のような技術が提案されているが、更なる改良が求められていた。
特許文献1には、品温60℃以上の加熱調理した麺類に、40℃以上の溶液を付着させること、該溶液が付着した麺類を、気流により品温0~20℃まで冷却すること、及び該冷却した麺類を冷蔵又は冷凍することを含む調理済み麺類の製造方法が開示されており、冷蔵又は冷凍保存後に再加熱しても、茹でたての麺のような外観と食感を有する調理済麺類を得られることが記載されている。
特許文献2には、水分含量40~60%の半生パスタ又は半生麺をマイクロ波加熱して、茹で上げパスタ又は麺を調理する方法において加熱時に水(食用固化剤により固形化されていてもよい)を共存させる調理方法が開示されており、乾燥パスタを直接茹で上げたと同様の優れた食感をもつ調理済みパスタを製造できると記載されている。
特許文献3には、パスタを可食状態まで茹でた後、該パスタを冷却する前に温度150℃以上350℃以下の過熱蒸気で15秒間以上60秒間以下、又は温度160℃以上180℃以下の過熱蒸気で60秒間を超え270秒間以下加熱処理を行いその後、該パスタを冷却する調理済みチルドパスタの製造方法が開示されており、茹で後における食感の経時劣化が少ない調理済チルドパスタを得ることができると記載されている。
特許文献4には、乾燥パスタ又は乾麺を湿熱又は乾熱加熱して表層部をα化し、湿熱加熱の場合パスタ又は麺線表面を乾燥させた後、パスタ又は麺を水と共に密封容器に充填してシールし、次いで再度加熱する各工程から成る簡易調理パスタ又は麺の製造方法が開示されており、電子レンジ加熱により簡易的に調理でき、アルデンテ状態の茹でたてに近い麺が製造できることが記載されている。
何れも優れた技術ではあるが、更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-163545
【特許文献2】特開平10-295302
【特許文献3】特開2019-17279
【特許文献4】特開平11-000124
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電子レンジ等による再加熱時に良好な食感を再現できる特徴を有する再加熱用麺類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、α化されていない麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して、特定の水分量の加熱済み麺類を得て、その後、当該加熱済み麺類を一定温度の水及び/又は調味液を吸収させて特定の水分量の吸水済み麺類を得る工程を含む製造方法により、電子レンジ等による再加熱時に良好な食感を再現できる麺類を得ることができることを見いだした。
本発明は以下の態様を提供する。
〔1〕下記工程1及び2:
下記工程1及び2:
・工程1;α化されていない麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して、下記条件1を満たす加熱済み麺類を得る工程、
(条件1)前記α化されていない麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して喫食に適する状態にした際の至適水分含量に対する前記加熱済み麺類の相対水分含量Aが0.78以上である
・工程2;工程1で得られる加熱済み麺類に、2~30℃の水及び/又は2~30℃の調味液を吸収させて、下記条件2を満たす吸水済み麺類を得る工程
(条件2)前記α化されていない麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して喫食に適する状態にした際の至適水分含量に対する前記吸水済み麺類の相対水分含量Bが1.12以下であり、ただし、B-A>0.01である、
を含む、再加熱用麺類の製造方法。
〔2〕 加熱済み麺類の相対水分含量Aが1.07以下である、〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 吸水済み麺類の相対水分含量Bが0.9以上である、〔1〕又は〔2〕記載の製造方法。
〔4〕 0.30≧B-A>0.01である、〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔5〕 麺類及びα化されていない当該麺類を茹で処理及び/又は蒸し処理して喫食に適する状態にした際の至適水分量が以下からなる群より選択される:
(1)スパゲッティ、60.0質量%、
(2)マカロニ、60.0質量%、
(3)乾燥そば、72.0質量%、
(4)そば、68.0質量%、
(5)乾燥うどん、70.0質量%、
(6)うどん、75.0質量%、
(7)乾燥中華麺、66.8質量%、
〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電子レンジ等の再加熱時に良好な食感を再現できる再加熱用麺類を得られる。
特に本発明によれば、比較的容易な工程により、電子レンジ等で加熱した際に、茹であるいは蒸し調理直後の麺類と遜色ない良好な食感の麺類を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)麺類及び加熱済み麺類
本発明における麺類は特に限定されるものではなく、公知の麺類であれば生麺、半生麺、乾麺の何れも適用することができる。そのような麺類としては、スパゲッティ等のロングパスタ、マカロニ等のショートパスタ、中華麺、うどん、きし麺、冷や麦、素麺等が挙げられる。好ましくはパスタ、中華麺、うどんであり、より好ましくはロングパスタである。これらの麺類は、乾麺であっても、半生麺もしくは生麺であってもよい。
本発明において乾燥パスタとは、デュラムセモリナや普通小麦粉等の穀粉を主原料として、これに加水し混捏し生地を調製して圧延、押出し等により成形し乾燥した麺をいう。対して生パスタとは、前記乾燥パスタの製造工程から乾燥工程を経ないで完成したものをいう。
【0008】
(2)麺類の至適水分値
麺類の至適水分値は日本食品標準成分表2020年版(八訂)に記載されている、うどん、そうめん・ひやむぎ、中華麺類、生パスタ、スパゲッティ・マカロニ、そばについては、それらの茹で麺として記載されている水分値を至適水分値とした。以下例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0009】
(3)加熱済み麺類
前記α化されていない麺類を加熱処理により一定の水分量となるまで加熱調理したものを加熱済み麺類とする。このときの水分量を「加熱済み麺類水分量a」と呼ぶことがある。加熱の方法は、喫食に適する状態にある麺類の至適水分値(パスタの場合は水分値60.0質量%)を1.00としたときの相対水分含量A(Aは、加熱済み麺類水分量aを至適水分値で除した値である)が0.78以上であれば従来公知の方法で良く、例えば蒸し、茹で処理等が挙げられ、好ましくは茹で処理である。加熱済み麺類の相対水分含量が0.78より小さいと麺の食感が粉っぽくなるため好ましくない。相対水分量Aは、1.07以下であることが好ましく、1.07より大きいと歯ごたえが無くなり、好ましくない。相対水分量Aは、0.80以上が好ましく、0.90以上がより好ましい。上限値は、1.03以下がより好ましく、0.99以下がさらに好ましい。
【0010】
(4)吸水済み麺類
本発明における吸水済み麺類は、前記加熱済み麺類に、2~30℃の水及び/又は2~30℃の調味液を後述する一定水分量まで吸水させたものである。具体的には、例えば、加熱済み麺類を液体への浸漬処理又は/及びシャワー等の散水装置により冷却し、水又は/及び調味液を吸収させたものであり、吸水効率の観点から浸漬処理が好ましい。ここでの冷却とはα化の進行を止めることを目的とした冷却のことを指し、冷却時間はおおよそ30秒であり、その後吸水が進行する。
加熱済み麺類に吸収させる液体は、加熱済み麺類に吸水させられればよく、例えば水や食塩水、出汁、トマトソースなどの調味液が挙げられ、好ましくは水である。また、冷却と吸水工程はそれぞれ独立していても、連続していてもよい。そのため、これらを組み合わせてもよく、例えば一度水に浸漬して冷却した後、ソースを和えることで吸水させてもよい。本明細書において、「吸水済み麺類」の水分量(「吸水済み麺類水分量b」)は、加熱済み麺類の水分量(「加熱済み麺類水分量a」)に、冷却処理とその後の吸水処理により増加した水分量を足したものに等しい。
吸水済み麺類の至適水分値を1.00としたときの相対水分含量Bが1.12より大きいと歯ごたえが無くなり、好ましくない。相対水分量Bは、麺の食感(粉っぽさ)の観点から、0.90以上が好ましく、0.95以上がより好ましく、0.97以上がさらに好ましく、1.01以上がよりさらに好ましい。上限値は、1.09以下がより好ましく、1.04以下がよりさらに好ましい。
【0011】
相対水分含量Bと相対水分含量Aとの差「B-A」は0.01より大きい。通常、吸水処理を行わず、単に加熱した麺類を短時間冷却水あるいは流水を用いて冷却した場合、冷却により吸水された水分量から計算される喫食に適する状態にある麺類の至適水分値(パスタの場合は水分値60質量%)を1.00としたときの相対水分含量Cと相対水分量Aの差「C-A」は、実験的に0.01以下であるから、本明細書では至適水分値を1.00としたときの冷却により増加した水分量を含む相対水分含量Cと相対水分量Aの差「C-A」を0.01以下として取り扱う。
相対水分含量Bと相対水分含量Aとの差「B-A」は0.02以上であることが好ましく、さらに0.02を越えることが好ましく、0.03以上であることがよりさらに好ましい。また上限は0.30以下であることが好ましい。0.03~0.20であることも好ましい。
【0012】
(5)再加熱処理及び用途
本発明の製造方法により製造される麺類は、再加熱して食されることを予定している麺類である。再加熱方法は、電子レンジあるいは湯煎が挙げられる。好ましくは電子レンジである。
また、本発明で得られる吸水済み麺類は、特に用途が限定されることはなく、公知の喫食時に電子レンジ等で再加熱する食品、例えば、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等で常温や冷蔵温度帯で流通、販売されるお弁当や、冷凍食品であれば、何れも適用することができる。
【実施例0013】
<製造例 容器入り再加熱用麺類の製造>
【0014】
<評価例 容器入り再加熱用麺の食感評価>
製造例で得られた冷蔵保存後の容器入り再加熱用麺の帯シュリンクを取り除き、上蓋をしたまま電子レンジに投入し、500Wで1分間加熱した。10名の熟練パネラーにより下記官能評価表に従って評価し、平均点を求めた。
【0015】
評価基準表1
【0016】
評価基準表2
【0017】
<試験例1 従来技術の確認>
従来技術として、日本食品標準成分表2020年版(八訂)に記載されているスパゲッティの水分値である60質量%になるように、製造例に従って加熱済み麺を製造し、冷却せず、すぐに評価例の評価基準表1に従って喫食評価した(参考例1)。この時の歯ごたえの評価を5.0点、粉っぽさを5.0点の基準点として以降の評価を行った。
表1記載の加熱済み麺の水分値になるように乾燥パスタを茹でた以外は製造例に従って加熱済み麺を製造し、室温(25℃)の水に浸漬後、加熱済み麺が冷却されると直ちに水から引き揚げ、評価基準表1に従って麺の食感を評価した(参考例2~8)。このとき、麺の水分値は茹で直後の水分値より0.5%増加していた。また、特許文献4に倣って、水分値60質量%となるように茹で上げた麺を70℃の熱水に1分間浸漬した(参考例9)。さらに茹で後に蒸して、水分値60%になるよう加熱した麺を25℃の水で冷却した(参考例10)。
保管時に水分勾配が失われ、歯ごたえがなくなることを見越して加熱済み麺の水分値を低めに製造する技術は従来から知られているが、加熱済み麺の水分値が低いと、麺が硬すぎで、粉っぽさがあり(参考例2~4)、反対に水分値が高いと粉っぽくはないが食感差がなく(参考例7~8)、不適であった。
また、加熱済み麺を70℃の熱水に浸漬したものに関しても、食感差がなく不適であった(参考例9)。
さらに、茹で後に蒸すといった方法で加熱し、冷却した麺に関しても食感差がなく不適であった(参考例10)。
【0018】
表1
【0019】
<試験例2 加熱済み麺類の水分値の検討>
最適な加熱済み麺の水分値を検証するため、吸水済み麺の水分値を65質量%に固定し、表2記載の加熱済み麺の水分値になるように乾燥パスタを茹でた以外は製造例に従って吸水済み麺を製造し、評価基準表1に従って麺の食感を評価した。結果を表2に示す。
比較例1は吸水処理を行っても目標の歩留に達しなかったため記録なし(“-”で表記)。
結果は加熱済み麺類の相対水分含量は0.78以上が好ましかった(実施例1~6)。
【0020】
表2

*吸水処理を行っていないため、冷却処理後の水分値(質量%)に基づく相対水分含量Cの値である。
【0021】
<試験例3 吸水済み麺類の水分値の検証>
加熱済み麺の水分値が異なる場合の最適な吸水済み麺の水分値を検証するため、表3~5記載の加熱済み麺の水分値になるように乾燥パスタを茹で、もしくは蒸した以外は製造例に従って吸水済み麺を製造し、評価基準表1に従って麺の食感を評価した。結果を表3~表5に示す。比較例3は吸水処理を行っても目標の歩留に達しなかったため記録なし(“-”で表記)。
【0022】
吸水処理を行わず、吸水済み麺の相対水分含量Bが十分ではない場合には麺が硬すぎて、かつ粉っぽく不適だった(参考例2)。吸水処理を行い、吸水済み麺の相対水分含量が1.12以下では麺の食感は問題なく、あまり粉っぽさも感じなかった(実施例7~11及び実施例1)。吸水済み麺の相対水分含量が1.17では、麺の外側と内側の食感差がなく、不適であった(比較例2)。
吸水処理を行わない場合には、麺の内外食感差の評価が不十分であった(参考例4)。吸水済み麺の相対水分含量が1.12では麺の食感は問題なく、粉っぽさも感じなかった(実施例12~14及び実施例3)。吸水済み麺の相対水分含量が1.17では、麺の外側と内側の食感差がなく、不適であった(比較例3)。
また、茹で後蒸すといった方法で加熱し、冷却後吸水処理を行った麺の食感は問題なく、粉っぽさも感じなかった(実施例15)。
【0023】
表3

*吸水処理を行っていないため、冷却処理後の水分値(質量%)に基づく相対水分含量Cの値である。
【0024】
表4

*吸水処理を行っていないため、冷却処理後の水分値(質量%)に基づく相対水分含量Cの値である。
【0025】
表5
【0026】
<試験例4 吸水済み麺類の浸漬温度の検証>
吸水済み麺の最適な浸漬温度(冷却水の温度)を検証するため、表6記載の冷却水の温度で加熱済み麺を冷却した以外は製造例に従って吸水済み麺を製造し、評価基準表1に従って麺の食感を評価した。結果を表6に示す。
結果は、冷却水の温度が2~30℃で麺の内外食感差、粉っぽさ共に評価が高かった(実施例16、17、13)。浸漬温度(冷却水の温度)が40℃以上では、麺の内外食感差が無くなってしまい、不適であった(比較例4)。
【0027】
表6
【0028】
<試験例5 吸水済み麺類の保存方法の検証>
吸水済み麺の保存方法を検証するため、表7記載の保存方法で保存した以外は製造例に従って吸水済み麺を製造し、評価基準表1に従って麺の食感を評価した。結果を表7に示す。
結果は、保存方法をレトルト後常温保存又は冷凍保存した麺の内外食感差、粉っぽさ共に評価が高かった(実施例18、19)。
【0029】
表7
【0030】
<試験例6 麺の種類の検証>
麺の種類が異なる場合の最適な加熱済み麺、及び吸水済み麺の水分値を検証した。検証には乾燥そば(藪そば、(株)ニップン)、マカロニ(REGALO ペンネリガーテ、(株)ニップン)、乾燥うどん(讃岐うどん、(株)高原通商店)、乾燥中華麺(マルタイラーメン、(株)マルタイ)、生パスタ、半生パスタ(生パスタ フェットチーネ、(株)ニップン)を使用した。生パスタはカナダ産デュラム小麦から挽いたデュラムセモリナ粉(「ジョーカーA(株式会社ニップン製)」)を原料粉として以下の手順で作製した。原料粉100質量部に水を29質量部加え、麺用ミキサーで10分間ミキシングして水和生地を得た。水和生地を約80kPaの真空度に減圧しつつ、マカロニ類成形機にて押出して1.9mmの麺の形状に成形し、生パスタ麺線を得た。
従来技術の確認として、これらの麺を至適水分値となるよう製造例に従って加熱済み麺を製造した。その後、冷却せずにすぐに評価例の評価基準表1又は2に従って喫食評価し、それぞれの評価を5.0点として以降の評価を行った。乾燥そば、マカロニ、乾燥うどん、乾燥中華麺は評価基準表1、生パスタ、半生パスタは評価基準表2に従って評価した。なお、それぞれの至適水分値は日本食品標準成分表2020年版(八訂)に記載されている水分値の通り、乾燥そばが72.0質量%、そばが68.0質量%、マカロニが60.0質量%、乾燥うどんが70.0質量%、うどんが75.0質量%、乾燥中華麺が66.8質量%、生パスタと半生パスタはスパゲッティ・マカロニの水分値を適用し、60.0質量%とした。
加熱済み麺の相対水分含量を0.95、吸水済み麺の相対水分含量を1.02とした以外は製造例に従って各種麺の容器入り再加熱用麺を製造し、乾燥そば、マカロニ、乾燥うどん、乾燥中華麺は評価基準表1、生パスタ、半生パスタは評価基準表2に従って喫食評価した結果を表8に示した。
いずれの麺の種類であっても、食感差や粉っぽさ又は弾力は高評価であり、麺の種類を限定せずに適用可能であった。
【0031】
表8