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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147248
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】組成物、硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/10 20060101AFI20241008BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08L83/10
C08K3/36
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060148
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】真田 美希
(72)【発明者】
【氏名】高木 厚志
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002DJ016
4J002GF00
(57)【要約】
【課題】本発明は、外観、防粉塵付着性、反射防止性に優れた硬化物を形成できる組成物
、前記組成物からなる硬化物、及び前記組成物からなる硬化物層を有する積層体を提供す
る。
【解決手段】シラン化合物及び/又はシラン化合物の部分加水分解縮合物からなる成分(A
)と、シリカ微粒子(B)とを含有する組成物であって、前記組成物を硬化させた硬化物
と粉塵とを接触させた前後でのヘイズ値の変化率が10%以下、かつ、全光線透過率の変
化が5%以下であることを特徴とする、宇宙空間で使用される組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン化合物及び/又はシラン化合物の部分加水分解縮合物からなる成分(A)と、シリ
カ微粒子(B)とを含有する組成物であって、前記組成物を硬化させた硬化物と粉塵とを
接触させた前後でのヘイズ値の変化率が10%以下、かつ、全光線透過率の変化が5%以
下であることを特徴とする、宇宙空間で使用される組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が、少なくとも1種の下記式(a)で表されるシラン化合物又はその部分
加水分解縮合物を含む、請求項1に記載の組成物。
1(4-n)Si(OR2)n ・・・(a)
(ただし、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、R2はアル
キル基又はフェニル基又は水素を表し、nは2~4の整数を表し、n個のR2は互いに異
なっていてもよく、nが2の場合、(4-n)個のR4は互いに異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記成分(A)が、少なくとも1種の前記シラン化合物の部分加水分解縮合物であって
、重量平均分子量が300~3,000である部分加水分解縮合物を、さらに触媒の存在
下にて加水分解縮合反応させたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記シリカ微粒子(B)の平均一次粒子径が3~100nmである請求項1に記載の組成
物。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の組成物の硬化物。
【請求項6】
基材と、請求項5に記載の硬化物からなる層とを有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、硬化物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
月面の太陽光強度は大気がほとんどないため、軌道上と同様と考える。しかし、月面は
軌道上と違う環境として、レゴリスと呼ばれる粉塵が表面を覆っている。レゴリスはいわ
ゆる月の砂といわれるもので、非常に細かい粒子であり、レンズ表面に付着し、探索機の
精度を低下させたり、機器や宇宙服の継ぎ目に侵入し、駆動系に対する障害を起こす可能
性がある。そのため、人工衛星、太陽系天体探査機、月面着陸機、有人宇宙往還機などの
宇宙機や、有人宇宙ステーションや軌道間輸送機などの宇宙構造体において、レゴリスの
付着を抑制する必要がある。しかしながら、宇宙空間で使用する制約から、使用可能な物
質として、高真空環境での脱ガスや物性変化が少ないこと、高温から低温まで幅広い温度
範囲での物性変化がないこと、長期のミッション期間にわたって、紫外線や宇宙放射線な
どが存在する宇宙環境に耐えること、などが要求される。
【0003】
基材表面への粉塵の付着を防止する方法として、帯電防止性をもつコーティング組成物
で基材表面をコーティングする方法や、基材表面に凹凸をつける方法が知られている。
特許文献1には、水性シリカゾル、水性シリカゾルと反応して化学複合体を形成する水
性官能基含有重合体及び界面活性剤で構成された帯電防止性組成物が提案されている。
特許文献2には、金属酸化粒子と重合体粒子を含み表面に凹凸を形成する組成物が提案
されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願平7-234232
【特許文献2】特願2016-123792
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載のコーティング組成物の帯電防
止性能は湿度の影響を受けて変動し、乾燥状態では効果を失う。そのため、宇宙空間での
使用には向かない手法である。また、特許文献2に記載の組成物の中には有機材料が含ま
れている。有機材料は、紫外線によって着色する問題があり、着色した硬化膜は、太陽光
の照射によってより高温となり、さらに熱劣化や高温で促進された紫外線劣化が進み易く
なる傾向がある。そのため、宇宙空間での使用には向かない手法である。
【0006】
本発明は、外観、防粉塵付着性、反射防止性に優れた硬化物を形成できる組成物、前記
組成物からなる硬化物、及び前記組成物からなる硬化物層を有する積層体を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] シラン化合物及び/又はシラン化合物の部分加水分解縮合物からなる成分(A)と、シ
リカ微粒子(B)とを含有する組成物であって、前記組成物を硬化させた硬化物と粉塵と
を接触させた前後でのヘイズ値の変化率が10%以下、かつ、全光線透過率の変化が5%
以下であることを特徴とする、宇宙空間で使用される組成物。
[2] 前記成分(A)が、少なくとも1種の下記式(a)で表されるシラン化合物又はその部
分加水分解縮合物を含む、[1]に記載の組成物。
1(4-n)Si(OR2)n ・・・(a)
(ただし、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、R2はアル
キル基又はフェニル基又は水素を表し、nは2~4の整数を表し、n個のR2は互いに異
なっていてもよく、nが2の場合、(4-n)個のR4は互いに異なっていてもよい。)
[3] 前記成分(A)が、少なくとも1種の前記シラン化合物の部分加水分解縮合物であっ
て、重量平均分子量が300~3,000である部分加水分解縮合物を、さらに触媒の存
在下にて加水分解縮合反応させたものである、[1]または[2]に記載の組成物。
[4] 前記シリカ微粒子(B)の平均一次粒子径が3~100nmである[1]~[3]の
いずれか一項に記載の組成物。
[5] [1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物の硬化物。
[6] 基材と、[5]に記載の硬化物からなる層とを有する積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外観、防粉塵付着性、反射防止性に優れた硬化物を形成できる組成物
、前記組成物からなる硬化物、及び前記組成物からなる硬化物層を有する積層体を提供で
きる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の
一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではな
い。
なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を
含む表現として用いるものとする。本明細書に開示の数値範囲は、その下限値および上限
値を任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
【0010】
本実施形態における「宇宙空間」は、地球低軌道(地球表面からの高度2000km以
下、好ましくは高度100kmから1000km)、及び上記地球低軌道より遠い空間の
すべてを含む。また、「宇宙空間」は、月のような衛星上の空間及び衛星内部の空間、並
びに金星や火星のような惑星上の空間及び惑星内部の空間も含む。さらに、「宇宙空間」
は、当該宇宙空間に存在する宇宙機(例えば、地球観測衛星、スペースシャトル、国際宇
宙ステーション等)の内部も含む。
【0011】
また、本実施形態における「宇宙空間」とは、原子状酸素が存在している空間をいう。
この宇宙空間には、さらに酸素イオンや原子状窒素等の活性ガスが存在していてもよく、
存在していなくてもよい。そして、本実施形態の組成物は、このような宇宙空間に晒され
る宇宙機構品(例えば、宇宙機の構成品)の材料として好適に用いられる。したがって、
本実施形態の組成物を、宇宙空間用組成物ということもできる。但し、本実施形態の組成
物は、宇宙空間に使用する場合における地球上での取扱い、打上げ又は宇宙運用時におけ
る汚染防止のための材料表面保護にも用いられる。
【0012】
本実施形態における「粉塵」は、無機粉塵、有機粉塵、混合粉塵、金属粉塵、鉱物粉塵
、動物性粉塵、植物性粉塵、また、それらが集積し堆積した砂、砂鉄、レゴリス等の砕屑
物を含む。
【0013】
本実施形態の組成物は、従来の宇宙空間用組成物には見出されない特性である外観、防
粉塵付着性、反射防止性に優れる。本実施形態の組成物が、上記性能に優れる要因は、以
下のように考えられるが、要因はこれに限定されない。すなわち、従来の宇宙空間用組成
物では、有機材料からなる成分を添加する必要がある。これらに起因して、従来の宇宙空
間用組成物は、熱による黄変性に劣る傾向にある。これに対し、本実施形態の組成物は、
反応性の高いシラノールを多量に含有しているため、重合性基を導入したり、カチオン重
合開始剤又はラジカル重合開始剤等を使用したりしなくても、十分に硬化できる。このた
め、本実施形態の組成物は、宇宙空間においても耐熱黄変性等の外観変化がなく、多孔質
凹凸塗膜を形成できるため、粉塵との接触面積の低減および屈折率調整により、防粉塵付
着性と反射防止性にも優れた膜を形成できる。
【0014】
〔組成物〕
本発明の一態様に係る組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、シラン化合物又は
その部分加水分解縮合物からなる成分(A)とシリカ微粒子(B)とを含む。
本組成物は、必要に応じて、希釈剤をさらに含んでいてもよい。
本組成物は、必要に応じて、上記以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0015】
<シラン化合物又はその部分加水分解縮合物からなる成分(A)>
成分(A)は、少なくとも1種の下記式(a)で表されるシラン化合物(以下、「シラン
化合物(a)」とも記す。)又はその部分加水分解縮合物を含む。
1 4-nSi(OR2 ・・・(a)
ただし、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、R2はアル
キル基又はフェニル基を表し、nは2~4の整数を表し、n個のOR2は互いに異なって
いてもよく、nが2の場合、(4-n)個のR1は互いに異なっていてもよい。
【0016】
式(a)中、R1のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。アルキル基の炭素数は、
1~20が好ましく、1~4がより好ましい。アリール基としては、フェニル基、トルイ
ル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等
が挙げられる。
【0017】
2のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、加水分解速度の点から、直鎖状であ
ることが好ましい。アルキル基の炭素数は、加水分解速度の点から、1~5が好ましく、
1又は2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0018】
式(a)におけるnが4の場合のシラン化合物(以下、「シラン化合物(a1)」とも記
す。)は、下式(a1)で表される。
Si(OR3(OR4(OR5(OR6 ・・・(a1)
ただし、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、アルキル基又はフェニル基を表す。
a、b、c及びdは、0≦a≦4、0≦b≦4、0≦c≦4、0≦d≦4であって、且つ
a+b+c+d=4の条件を満たす整数である。
4、R5、R6及びR7は上記R2と同様である。
【0019】
式(a)におけるnが3の場合のシラン化合物(以下、「シラン化合物(a2)」とも記
す。)は、下記式(a2)で表される。
7Si(OR8(OR9(OR10 ・・・(a2)
ただし、R7は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R8、R9
及びR10はそれぞれ独立に、アルキル基又はフェニル基を表す。e、f、及びgは、0≦
e≦3、0≦f≦3、0≦g≦3であって、且つe+f+g=3の条件を満たす整数であ
る。
7は上記R1と同様である。R8、R9及びR10は上記R2と同様である。
【0020】
式(a)におけるnが2の場合のシラン化合物(以下、「シラン化合物(a3)」とも記
す。)は、下記式(a3)で表される。
1112Si(OR13(OR14 ・・・(a3)
ただし、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアラル
キル基を表す。R13及びR14はそれぞれ独立にアルキル基又はフェニル基を表す。h及び
iは、0≦h≦2、0≦i≦2であって、且つh+i=2の条件を満たす整数である。
11及びR12は上記R1と同様である。R13及びR14は上記R2と同様である。
【0021】
シラン化合物(a1)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラ
ン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テ
トラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシ
ラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメト
キシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフ
ェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラ
ン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノ
プロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン
、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシ
ラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエ
トキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキ
シモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエ
トキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシ
ラン等のテトラアルコキシシランが挙げられ、中でもテトラメトキシシラン、テトラエト
キシシランが好ましい。
【0022】
シラン化合物(a2)の具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、
トリプロポキシシラン、トリペンチルオキシシラン、トリフェニルオキシシラン、ジメト
キシモノエトキシシラン、ジエトキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシシ
ラン、ジプロポキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシルモノメトキシシラン、ジペ
ンチルオキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシモノプロポキシシラン、ジフェニル
オキシルモノメトキシシラン、ジフェニルオキシモノエトキシシラン、ジフェニルオキシ
モノプロポキシシラン、メトキシエトキシプロポキシシラン、モノプロポキシジメトキシ
シラン、モノプロポキシジエトキシシラン、モノブトキシジメトキシシラン、モノペンチ
ルオキシジエトキシシラン、及びモノフェニルオキシジエトキシシラン等のヒドロシラン
化合物;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン
、メチルトリペンチルオキシシラン、メチルトリフェニルオキシシラン、メチルモノメト
キシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジ
ペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエ
トキシプロポキシシラン、及びメチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等の
メチルシラン化合物;
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン
、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、エチルモノメト
キシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジ
ペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルメトキシエ
トキシプロポキシシラン、及びエチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等の
エチルシラン化合物;
プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシ
シラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、及びプロピルトリフェニルオキシシラン、
プロピルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プ
ロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシ
ラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びプロピルモノメトキシモノエト
キシモノブトキシシラン、等のプロピルシラン化合物;
ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン
、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、ブチルモノメト
キシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジブロポキシシラン、ブチルモノメトキシジ
ペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシエ
トキシプロポキシシラン、及びブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等の
ブチルシラン化合物;
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシ
シラン、フェニルトリペンチルオキシシラン、フェニルトリフェニルオキシシラン、フェ
ニルモノメトキシジエトキシシラン、フェニルモノメトキシジプロポキシシラン、フェニ
ルモノメトキシジペンチルオキシシラン、フェニルモノメトキシジフェニルオキシシラン
、フェニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びフェニルモノメトキシモノエトキシ
モノブトキシシラン等のフェニルシラン化合物;
ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、ヒドロキシフェニルトリエトキシシラン、ヒ
ドロキシフェニルトリプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルトリペンチルオキシシラン
、ヒドロキシフェニルトリフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジエ
トキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジプロポキシシラン、ヒドロキシフェニ
ルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジフェニルオ
キシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びヒドロキシフ
ェニルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のヒドロキシフェニルシラン化合
物;
ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリプロポキシ
シラン、ナフチルトリペンチルオキシシラン、ナフチルトリフェニルオキシシラン、ナフ
チルモノメトキシジエトキシシラン、ナフチルモノメトキシジプロポキシシラン、ナフチ
ルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ナフチルモノメトキシジフェニルオキシシラン
、ナフチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びナフチルモノメトキシモノエトキシ
モノブトキシシラン等のナフチルシラン化合物;
ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリプロポキシ
シラン、ベンジルトリペンチルオキシシラン、ベンジルトリフェニルオキシシラン、ベン
ジルモノメトキシジエトキシシラン、ベンジルモノメトキシジプロポキシシラン、ベンジ
ルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ベンジルモノメトキシジフェニルオキシシラン
、ベンジルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びベンジルモノメトキシモノエトキシ
モノブトキシシラン等のベンジルシラン化合物;
ヒドロキシベンジルトリメトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリエトキシシラン、ヒ
ドロキシベンジルトリプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルトリペンチルオキシシラン
、ヒドロキシベンジルトリフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジエ
トキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジプロポキシシラン、ヒドロキシベンジ
ルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジフェニルオ
キシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びヒドロキシベ
ンジルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のヒドロキシベンジルシラン化合
物が挙げられる。
【0023】
シラン化合物(a3)の具体例としては、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジプ
ロポキシシラン、ジペンチルオキシシラン、ジフェニルオキシシラン、メトキシエトキシ
シラン、メトキシプロポキシシラン、メトキシペンチルオキシシラン、メトキシフェニル
オキシシラン、エトキシプロポキシシラン、エトキシペンチルオキシシラン、及びエトキ
シフェニルオキシシラン等のヒドロシラン化合物;
メチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、
メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルエトキ
シプロポキシシラン、メチルジプロポキシシラン、メチルジペンチルオキシシラン、メチ
ルジフェニルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン等のメチルヒドロシラ
ン化合物;
エチルジメトキシシラン、エチルメトキシエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、
エチルメトキシプロポキシシラン、エチルメトキシペンチルオキシシラン、エチルエトキ
シプロポキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチ
ルジフェニルオキシシラン、エチルメトキシフェニルオキシシラン等のエチルヒドロシラ
ン化合物;
プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルジエトキシシ
ラン、プロピルメトキシプロポキシシラン、プロピルメトキシペンチルオキシシラン、プ
ロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジプロポキシシラン、プロピルジペンチルオ
キシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシフェニルオキシシラン
等のプロピルヒドロシラン化合物;
ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、
ブチルメトキシプロポキシシラン、ブチルメトキシペンチルオキシシラン、ブチルエトキ
シプロポキシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルジペンチルオキシシラン、ブチ
ルジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシフェニルオキシシラン等のブチルヒドロシラ
ン化合物;
フェニルジメトキシシラン、フェニルメトキシエトキシシラン、フェニルジエトキシシ
ラン、フェニルメトキシプロポキシシラン、フェニルメトキシペンチルオキシシラン、フ
ェニルエトキシプロポキシシラン、フェニルジプロポキシシラン、フェニルジペンチルオ
キシシラン、フェニルジフェニルオキシシラン、フェニルメトキシフェニルオキシシラン
等のフェニルヒドロシラン化合物;
ヒドロキシフェニルジメトキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシエトキシシラン、
ヒドロキシフェニルジエトキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシプロポキシシラン、
ヒドロキシフェニルメトキシペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルエトキシプロポ
キシシラン、ヒドロキシフェニルジプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルジペンチルオ
キシシラン、ヒドロキシフェニルジフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシ
フェニルオキシシラン等のヒドロキシフェニルヒドロシラン化合物;
ナフチルジメトキシシラン、ナフチルメトキシエトキシシラン、ナフチルジエトキシシ
ラン、ナフチルメトキシプロポキシシラン、ナフチルメトキシペンチルオキシシラン、ナ
フチルエトキシプロポキシシラン、ナフチルジプロポキシシラン、ナフチルジペンチルオ
キシシラン、ナフチルジフェニルオキシシラン、ナフチルメトキシフェニルオキシシラン
等のナフチルヒドロシラン化合物;
ベンジルジメトキシシラン、ベンジルメトキシエトキシシラン、ベンジルジエトキシシ
ラン、ベンジルメトキシプロポキシシラン、ベンジルメトキシペンチルオキシシラン、ベ
ンジルエトキシプロポキシシラン、ベンジルジプロポキシシラン、ベンジルジペンチルオ
キシシラン、ベンジルジフェニルオキシシラン、ベンジルメトキシフェニルオキシシラン
等のベンジルヒドロシラン化合物;
ヒドロキシベンジルジメトキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシエトキシシラン、
ヒドロキシベンジルジエトキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシプロポキシシラン、
ヒドロキシベンジルメトキシペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルエトキシプロポ
キシシラン、ヒドロキシベンジルジプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルジペンチルオ
キシシラン、ヒドロキシベンジルジフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシ
フェニルオキシシラン等のヒドロキシベンジルヒドロシラン化合物;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルメトキシプロ
ポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチル
ジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシ
ラン等のジメチルシラン化合物;
ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシエトキシシラン、ジエチルメトキシプロ
ポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジペンチルオキシシラン、ジエチル
ジフェニルオキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジエチルジプロポキシシ
ラン等のジエチルシラン化合物;
ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルメトキ
シプロポキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン
、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジプロピルエトキシプロポキシシラン、ジプロピ
ルジプロポキシシラン等のジプロポキシシラン化合物;
ジブチルジメトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロ
ポキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジペンチルオキシシラン、ジブチル
ジフェニルオキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシラン、ジブチルジプロポキシシ
ラン等のジブチルシラン化合物;
ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルメトキシエトキシシラン、ジフェニルメトキ
シプロポキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジペンチルオキシシラン
、ジフェニルジフェニルオキシシラン、ジフェニルエトキシプロポキシシラン、ジフェニ
ルジプロポキシシラン等のジフェニルシラン化合物;
ジ(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)メトキシエト
キシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシフェ
ニル)ジエトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、ジ(ヒド
ロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキ
シシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のジ(ヒドロキシフェニル)
シラン化合物;
ジナフチルジメトキシシラン、ジナフチルメトキシエトキシシラン、ジナフチルメトキ
シプロポキシシラン、ジナフチルジエトキシシラン、ジナフチルジペンチルオキシシラン
、ジナフチルジフェニルオキシシラン、ジナフチルエトキシプロポキシシラン、ジナフチ
ルジプロポキシシラン等のジナフチルシラン化合物;
ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルメトキシエトキシシラン、ジベンジルメトキ
シプロポキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、ジベンジルジペンチルオキシシラン
、ジベンジルジフェニルオキシシラン、ジベンジルエトキシプロポキシシラン、ジベンジ
ルジプロポキシシラン等のジベンジルシラン化合物;
ジ(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)メトキシエト
キシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシベン
ジル)ジエトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、ジ(ヒド
ロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキ
シシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のジ(ヒドロキシベンジル)
シラン化合物;
メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルメトキシエトキシシラン、メチルエチル
メトキシプロポキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジペンチルオ
キシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシ
ラン、メチルエチルジプロポキシシラン等のメチルエチルシラン化合物;
メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルメトキシエトキシシラン、メチルプ
ロピルメトキシプロポキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルプロピルジ
ペンチルオキシシラン、メチルプロピルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルエトキ
シプロポキシシラン、メチルプロピルジプロポキシシラン等のメチルプロピルシラン化合
物;
メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルメトキシエトキシシラン、メチルブチル
メトキシプロポキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジペンチルオ
キシシラン、メチルブチルジフェニルオキシシラン、メチルブチルエトキシプロポキシシ
ラン、メチルブチルジプロポキシシラン等のメチルブチルシラン化合物;
メチル(フェニル)ジメトキシシラン、メチル(フェニル)メトキシエトキシシラン、
メチル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、メチル(フェニル)ジエトキシシラン、
メチル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、メチル(フェニル)ジフェニルオキシシラ
ン、メチル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、メチル(フェニル)ジプロポキシシ
ラン等のメチル(フェニル)シラン化合物;
メチル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)メト
キシエトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、メチル
(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオ
キシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ヒドロキ
シフェニル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシ
ラン等のメチル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
メチル(ナフチル)ジメトキシシラン、メチル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、
メチル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ナフチル)ジエトキシシラン、
メチル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ナフチル)ジフェニルオキシシラ
ン、メチル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ナフチル)ジプロポキシシ
ラン等のメチル(ナフチル)シラン化合物;
メチル(ベンジル)ジメトキシシラン、メチル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、
メチル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ベンジル)ジエトキシシラン、
メチル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ベンジル)ジフェニルオキシシラ
ン、メチル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ベンジル)ジプロポキシシ
ラン等のメチル(ベンジル)シラン化合物;
メチル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)メト
キシエトキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、メチル
(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオ
キシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ヒドロキ
シベンジル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシ
ラン等のメチル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、エチルプ
ロピルメトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジエトキシシラン、エチルプロピルジ
ペンチルオキシシラン、エチルプロピルジフェニルオキシシラン、エチルプロピルエトキ
シプロポキシシラン、エチルプロピルジプロポキシシラン等のエチルプロピルシラン化合
物;
エチルブチルジメトキシシラン、エチルブチルメトキシエトキシシラン、エチルブチル
メトキシプロポキシシラン、エチルブチルジエトキシシラン、エチルブチルジペンチルオ
キシシラン、エチルブチルジフェニルオキシシラン、エチルブチルエトキシプロポキシシ
ラン、エチルブチルジプロポキシシラン等のエチルブチルシラン化合物;
エチル(フェニル)ジメトキシシラン、エチル(フェニル)メトキシエトキシシラン、
エチル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、エチル(フェニル)ジエトキシシラン、
エチル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、エチル(フェニル)ジフェニルオキシシラ
ン、エチル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、エチル(フェニル)ジプロポキシシ
ラン等のエチル(フェニル)シラン化合物;
エチル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)メト
キシエトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、エチル
(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオ
キシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ヒドロキ
シフェニル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシ
ラン等のエチル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
エチル(ナフチル)ジメトキシシラン、エチル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、
エチル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ナフチル)ジエトキシシラン、
エチル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ナフチル)ジフェニルオキシシラ
ン、エチル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ナフチル)ジプロポキシシ
ラン等のエチル(ナフチル)シラン化合物;
エチル(ベンジル)ジメトキシシラン、エチル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、
エチル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ベンジル)ジエトキシシラン、
エチル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ベンジル)ジフェニルオキシシラ
ン、エチル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ベンジル)ジプロポキシシ
ラン等のエチル(ベンジル)シラン化合物;
エチル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)メト
キシエトキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、エチル
(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオ
キシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ヒドロキ
シベンジル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシ
ラン等のエチル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルメトキシエトキシシラン、プロピル
ブチルメトキシプロポキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、プロピルブチルジ
ペンチルオキシシラン、プロピルブチルジフェニルオキシシラン、プロピルブチルエトキ
シプロポキシシラン、プロピルブチルジプロポキシシラン等のプロピルブチルシラン化合
物;
プロピル(フェニル)ジメトキシシラン、プロピル(フェニル)メトキシエトキシシラ
ン、プロピル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(フェニル)ジエトキシ
シラン、プロピル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(フェニル)ジフェニ
ルオキシシラン、プロピル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(フェニル
)ジプロポキシシラン等のプロピル(フェニル)シラン化合物;
プロピル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)
メトキシエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、
プロピル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジ
ペンチルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、プロ
ピル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル
)ジプロポキシシラン等のプロピル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
プロピル(ナフチル)ジメトキシシラン、プロピル(ナフチル)メトキシエトキシシラ
ン、プロピル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ナフチル)ジエトキシ
シラン、プロピル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ナフチル)ジフェニ
ルオキシシラン、プロピル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ナフチル
)ジプロポキシシラン等のプロピル(ナフチル)シラン化合物;
プロピル(ベンジル)ジメトキシシラン、プロピル(ベンジル)メトキシエトキシシラ
ン、プロピル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ベンジル)ジエトキシ
シラン、プロピル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ベンジル)ジフェニ
ルオキシシラン、プロピル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ベンジル
)ジプロポキシシラン等のプロピル(ベンジル)シラン化合物;
プロピル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)
メトキシエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、
プロピル(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジ
ペンチルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、プロ
ピル(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル
)ジプロポキシシラン等のプロピル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物が挙げられる。
【0024】
シラン化合物(a)は、1種を単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0025】
少なくとも1種のシラン化合物(a)の部分加水分解縮合物は、シラン化合物(a)又は
その2種以上の混合物を、公知の方法により加水分解縮合反応させることにより得られる

例えば、テトラメトキシシランのモノマーに所定量の水及び必要に応じて有機溶剤を加
え、触媒の存在下に、副生するアルコールを留去しながら通常、室温程度~100℃で反
応させる。これにより、テトラメトキシシランの加水分解及び縮合が進行して、液状のテ
トラメトキシシラン部分加水分解縮合物(平均重合度は通常2~8程度、大部分は3~7
)が生成する。液状のテトラメトキシシラン部分加水分解縮合物は、例えば、CHO-
(Si(OCH-O)-CHで表される。sは平均重合度を表す2~8の数で
ある。加水分解の程度は、使用する水の量により適宜調節することができる。
上記のようにして得られた液状のテトラメトキシシラン部分加水分解縮合物をさらに加
水分解縮合反応させてもよい。液状のテトラメトキシシラン部分加水分解縮合物をさらに
加水分解縮合反応させる方法は、後述する一次反応物を二次反応物とする方法と同様であ
る。
テトラメトキシシラン以外のシラン化合物(a)の場合も同様にして部分加水分解縮合
物とすることができる。2種以上のシラン化合物(a)の混合物を部分加水分解縮合物と
してもよい。
【0026】
触媒としては、例えば、塩酸、酢酸、硝酸、ギ酸、硫酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、
酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイ
ン酸などの有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア
等のアルカリ触媒、有機金属、金属アルコキシド、例えばジブチルスズジラウリレート、
ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、アルミニ
ウムトリス(アセチルアセトネート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)
、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプ
ロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネ
ート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)及びジルコニウム
ビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等の金属キレート化合物、ホウ酸
ブトキシド、ホウ酸等のホウ素化合物等が挙げられる。この中でも特に二次反応物の製造
には、有機酸又は金属キレート化合物が好ましく、マレイン酸又は金属アセチルアセトネ
ートが特に好ましい。
酸触媒の使用量は、触媒としての機能を発揮し得る量であれば特に制限されるものでは
ないが、通常、シラン化合物(a)100質量部に対し、0.001~10質量部程度の
範囲から選択され、好ましくは0.003~5質量部である。
【0027】
成分(A)は、反応性の観点から、式(a1)中のR3、R4、R5及びR6がアルキル基で
あるシラン化合物(a1)、すなわちテトラアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合
物を含むことが好ましく、テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物を含むことがよ
り好ましく、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物を含むことが特に好ましい。
【0028】
成分(A)のMwは、硬化物の外観の観点から、500以上が好ましく、600以上が
より好ましい。成分(A)のMwの上限は、例えば10,000である。成分(A)のMw
は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される標準ポリスチレ
ン換算の値である。
【0029】
成分(A)は、反応性の観点から、少なくとも1種のシラン化合物(a)の部分加水分解
縮合物であってMwが300~3,000である部分加水分解縮合物(以下、「一次反応
物」とも記す。)を、触媒の存在下に加水分解縮合反応させたもの(以下、「二次反応物
」とも記す。)であることが好ましい。
成分(A)として二次反応物を用いることで、本組成物の硬化性、硬化物の外観を高め
ることができる。その理由は明らかではないが、以下のことが考えられる。二次反応物に
おいては、加水分解が促進されているため、一次反応物に比べ、シラノール基(Si-O
H)が多量に存在する。シラノール基はSi-ORに比べて反応性が高いので、硬化性
が向上する。また、縮合反応が促進されるので分子量が大きくなりクラックを抑制するた
め外観を向上することができる。
【0030】
一次反応物のMwが300以上であれば、硬化物の外観が良好となり、3,000以下
であれば、反応性が良好となる傾向がある。一次反応物のMwは、400~2,000が
好ましく、500~1,000がより好ましい。
一次反応物を形成するシラン化合物(a)としては、硬化物の硬度の観点から、シラン
化合物(a1)が好ましく、テトラアルコキシシランであることがより好ましく、テトラ
メトキシシランであることがさらに好ましい。
一次反応物は、前記したように、シラン化合物(a)又はその2種以上の混合物を加水
分解縮合反応させることにより得られる。
尚、一次反応物は市販のものを使用することもでき、例えば三菱ケミカル製のMS51
、MS53、MS57、MS56S、コルコート製のエチルシリケート40、エチルシリ
ケート48、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、EMS-485等が挙げ
られる。
一次反応物を触媒の存在下に加水分解縮合反応させる方法としては、一次反応物に水、
触媒及び溶剤を添加し25℃で1日以上攪拌する方法が挙げられる。更に一次反応物を加
熱することで反応の進行を促進することができ、その場合は例えば30℃~100℃で1
時間以上攪拌する方法も取ることができる。
二次反応物のMwは、本発明者らの検討のなかでの経験的な温度や反応時間から、40
0~50,000が好ましく、600~30,000がより好ましく、800~10,0
00がさらに好ましく、900~5,000が特に好ましく、1,000~2,000が
最も好ましい。
【0031】
なお、二次反応物は、経時で反応が進行するので、Mw以外に、その構造や特性(例え
ば半径等の大きさ、水酸基価等)を一般的な分析手法により特定することが困難である。
Mwは測定可能であるが、成分(A)として一次反応物を用いた場合と二次反応物を用い
た場合とでは、本組成物の反応性や硬化物の外観が異なる。すなわち、二次反応物をその
構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではないとい
う事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって二次反応物は「少なくとも1種
のシラン化合物(a)の部分加水分解縮合物であってMwが300~3,000である部
分加水分解縮合物を、さらに触媒の存在下にて加水分解縮合反応させた」と規定すること
がより適切とされる。
【0032】
<希釈剤>
本組成物が希釈剤を含むと、本組成物を基材に塗工する際の塗工作業性、形成される塗
膜及びその硬化膜の平滑性及び均一性、並びに硬化膜の基材に対する密着性が向上する。
希釈剤としては、水、有機溶剤等が挙げられ、有機溶剤が好ましい。
成分(A)がシラン化合物(a)の加水分解縮合物である場合、希釈剤は、シラン化合物
(a)を加水分解縮合反応させるために配合された水を含んでいてもよい。
【0033】
有機溶剤としては、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル
系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤等が挙げられる。アルコール系溶剤としては、メ
タノール、エタノール、イソプロピルアルコール、nブタノール、イソブタノール、オク
タノール、n-プロピルアルコール、アセチルアセトンアルコール等が挙げられる。グリ
コール系溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル
、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテ
ル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテ
ル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチル
エーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレン
グリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、ベ
ンゼン、ケロシン、トルエン、キシレン等が挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸
メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる
。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ア
セチルアセトン等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、エチルエーテル、ブチルエー
テル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン
等が挙げられる。有機溶剤は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
希釈剤としては、取扱い容易であり、液での保存安定性がよく、また得られる硬化物の
特性が優れていることから、アルコール系溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、n
プロパノール、イソプロパノール、nブタノール及びイソブタノールがより好ましい。
【0034】
<シリカ微粒子(B)>
本組成物中のシリカ微粒子(B)は、平均一次粒子径が3~100nmであることが好ま
しい。平均一次粒子径が3nm以上であると、微粒子同士の空隙の体積を大きくし、屈折
率を小さくすることができる。4nm以上がより好ましく、5nm以上がさらに好ましく
、10nm以上が特に好ましく、12nm以上が最も好ましい。一方、100nm以下で
あると、膜表面の粗さや光の散乱を低くし、ヘイズを小さくすることができる。平均一次
粒子径は90nm以下がより好ましく、70nm以下がさらに好ましく、50nm以下が
特に好ましく、30nm以下が最も好ましい。
【0035】
シリカ微粒子としては、特に制限されず、凝集シリカ微粒子または非凝集シリカ微粒子
のいずれでもよいが、例えば、平均粒子径3~100nmの非凝集シリカ微粒子、平均粒
子径3~100nmの中空状非凝集シリカ微粒子、平均一次粒径3~100nmの鎖状凝
集シリカ微粒子の少なくとも一種からなるシリカ微粒子などが挙げられる。これらは、形
成される多孔質酸化ケイ素膜の目的に応じて適宜選択される。シリカ微粒子(B)は1種
単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0036】
凝集シリカ微粒子の具体例としては、日産化学工業株式会社製の「スノーテックス(登
録商標)-OUP」(平均長さ:40~100nm)、「スノーテックス(登録商標)-
UP」(平均長さ:40~100nm)、「スノーテックス(登録商標)PS-M」(平
均長さ:80~150nm)、「スノーテックス(登録商標)PS-MO」(平均長さ:
80~150nm)、「スノーテックス(登録商標)PS-S」(平均長さ:80~12
0nm)、「スノーテックス(登録商標)PS-SO」(平均長さ:80~120nm)
、「IPA-ST-UP」(平均長さ:40~100nm)、「MEK-ST-UP」(
平均長さ:40~100nm)、「PGME-ST-UP」(平均長さ:40~100n
m)、日本国触媒化成工業株式会社製の「ファインカタロイドF-120」等が挙げられ
る。尚、平均長さは、平均二次粒子径ともいう。
【0037】
球状非凝集シリカ微粒子の具体例としては、日産化学工業株式会社製の「スノーテック
ス(登録商標)-O」、「スノーテックス(登録商標)-O-40」、「スノーテックス
(登録商標)-OL」、扶桑化学工業製の「クォートロン(登録商標)-PL-1」、「
クォートロン(登録商標)-PL-3」、「クォートロン(登録商標)-PL-7」等が
挙げられる。
【0038】
<他の成分>
他の成分としては、例えば、触媒、光酸発生材、熱酸発生材、光塩基発生材、熱塩基発
生材、重合体、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、金属微粒子、酸化防止
剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、
帯電防止剤及び防曇剤等が挙げられる。
【0039】
<各成分の含有量>
成分(A)の含有量は、組成物中の不揮発成分の合計100質量%に対し、20~70
質量%が好ましく、20~65質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好まし
く、30~60質量%が特に好ましく、30~50質量%が最も好ましい。成分(A)の
含有量が上記下限値以上であれば、硬化物の機械的強度がより優れ、上記上限値以下であ
れば、硬化物の防粉塵付着性や反射防止性がより優れる。
【0040】
シリカ微粒子(B)の含有量は、組成物中の不揮発分の合計100質量%に対し、30
~80質量%が好ましく、35~80質量%がより好ましく、40~80質量%がさらに
好ましく、40~70質量%が特に好ましく、50~70質量%が最も好ましい。シリカ
微粒子(B)の含有量が上記下限値以上であれば、硬化物の防粉塵付着性や反射防止性が
より優れ、上記上限値以下であれば、基材との密着性や膜の機械的強度がより向上する。
尚、不揮発成分とは、有機溶剤と水を除いた成分を表す。
【0041】
本組成物が希釈剤を含む場合、本組成物中の不揮発成分の濃度は、塗工方法により適し
た濃度であればよく、特に限定されない。不揮発成分の濃度が低いほど、形成される塗膜
やその硬化膜(硬化物層)の均一性、基材と硬化膜との密着性が良好となる傾向があり、
不揮発成分の濃度が高いほど、本組成物を基材に塗工する際のタレ抑制効果が良好となる
傾向がある。
【0042】
組成物全体に対する不揮発成分の濃度は特に制限はないが、好ましくは80質量%以下
、より好ましくは0.1~60質量%、さらに好ましくは0.5~40質量%、特に好ま
しくは0.5~30質量%、最も好ましくは1~20質量%の範囲である。上記範囲で使
用することで塗工性に優れた組成物とすることができる。
【0043】
本組成物を基材の上にスプレー塗工し、硬化させて形成される硬化膜(初期の硬化膜)
の表面に粉塵を吹き付けた前後でのヘイズ変化は、10%以下が好ましく、8%以下がよ
り好ましく、5%以下がさらに好ましく、3%以下が特に好ましい。ヘイズ変化が上記上
限値以下であれば、粉塵の付着防止に効果的である。
【0044】
本組成物を基材の上にスプレー塗工し、硬化させて形成される硬化膜(初期の硬化膜)
の表面に粉塵を吹き付けた前後での全光線透過率の変化は、5%以下が好ましく、3%以
下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1.5%以下が特に好ましい。ヘイズ変
化が上記上限値以下であれば、粉塵の付着防止に効果的である。
【0045】
<組成物の製造方法>
本組成物は、成分(A)、シリカ微粒子(B)、必要に応じて希釈剤、他の成分を混合
することにより製造できる。
希釈剤が水を含む場合、水は、シラン化合物(a)の加水分解縮合物の調製時に配合さ
れてもよく、本組成物の製造時に配合されてもよく、シラン化合物(a)の加水分解縮合
物の調製時及び本組成物の製造時の両方で配合されてもよい。
【0046】
以上説明した本組成物にあっては、成分(A)とシリカ微粒子(B)とを含むので、外
観、防粉塵付着性、反射防止性に優れる硬化物を形成できる。
【0047】
<用途>
本組成物の用途としては、例えば、宇宙空間における、太陽光反射材、太陽電池、アン
テナ、カメラ、カメラレンズ、モニタ、照明及びそれらの保護カバー(例えば、電波透過
レードーム等)、ロボットアーム、宇宙服、月及び惑星上宇宙基地、探査機、探査車、探
査衛星建造物及びそれらの設置される窓等のコーティング材として使用できる。
さらに、本実施形態の組成物は、上記用途に使用する場合における地球上での取扱い、
打上げ又は宇宙運用時における汚染防止のための材料表面保護にも用いられる。
【0048】
<硬化物>
本発明の一態様に係る硬化物(以下、「本硬化物」とも記す。)は、本組成物の硬化物
である。
本硬化物は本組成物を硬化することにより得られる。
硬化方法としては、加熱により硬化する方法、空気中の湿気を利用して硬化する方法、
本組成物に活性エネルギー線を照射する方法、等が挙げられ、生産性の観点から、加熱に
より硬化する方法が好ましい。加熱の方法としては例えば、近赤外線ランプによる照射、
温風の循環等によって行うことができる。
【0049】
さらに、加熱により硬化した後に活性エネルギー線照射処理を施してもよい。活性エネ
ルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられる。容易に利用できる点と重合性に優れ
る点から、紫外線が好ましい。
紫外線照射によって本組成物を硬化する場合、光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧
水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV-LED、低圧水銀灯、キセノンエキシマラン
プ等を用いることができる。波長150~420nmに最大照射強度を示す光源を用いる
ことが好ましい。
また、紫外線の積算照射量は、50~3000mJ/cmが好ましく、100~20
00mJ/cmがより好ましい。
活性エネルギー線は、空気雰囲気中で照射してもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガ
ス雰囲気中で照射してもよい。活性エネルギー線の照射による処理をして得られた硬化物
は、プラスチック基材への密着性が良好になる傾向がある。
【0050】
<屈折率>
本発明の組成物を塗工して得られる硬化物の屈折率は通常1.15以上1.40以下で
あり、用途に応じて適宜選択して用いられる。ガラスやプラスチック基材の反射防止に用
いる場合、屈折率は1.20以上1.35以下が好ましい。多孔質膜を単層で反射防止膜
を形成する場合、基材の屈折率に応じて多孔質膜の屈折率を選択することで、最小反射率
を限りなく0%に近づけることができる。全反射膜に用いる場合、屈折率は1.25以下
が好ましく、1.20以下がより好ましく、1.18以下が特に好ましい。
屈折率は低いほど基材と硬化物との界面で全反射させる光の割合を増加させることがで
きて好ましいが、一方で硬化物の空隙率が増加するため、硬化物の機械的強度が低下する
可能性がある。
【0051】
<構造>
本硬化物の構造は特に制限はないが、通常多孔質構造をとる。その空孔は、通常、トン
ネル状や、独立空孔がつながった連結孔であるが、詳細な空孔の構造にも特に制限はない
。また、空孔サイズや空隙率を調整することで、屈折率、誘電率、密度を調整することが
でき、それらを調整することで、光学用途のほかにも、様々な用途に応用することができ
る。空孔サイズや空隙率は、後述の組成及び塗工方法により調整することができる。
【0052】
本発明の多孔質膜の空孔サイズには特に制限はないが、空孔サイズは通常0.1~50
nmが好ましく、1~20nmがより好ましく、2~10nmが特に好ましい。上限値以
上の場合、表面凹凸が大きくなることで光が散乱しヘイズが大きくなることがある。また
、機械的強度が低下する。
【0053】
本硬化物の空隙率は、10~70%が好ましい。20~70%がより好ましく、30~
70%が特に好ましい。上記下限値以上であれば、反射防止性が良好となり、上記上限値
以下であれば機械的強度、外観がより良好となる。
【0054】
本硬化物の空孔サイズは、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SE
M)による観察像の解析により測定される。
【0055】
また、本発明の空隙率はローレンツ・ローレンツの式による空隙率及び屈折率の関係式
により求めることができる。
(ローレンツ・ローレンツの式)
空隙率(%)=(シリカ微粒子(B)の屈折率―成分(A)の屈折率)/0.46
【0056】
本硬化物の膜厚は、10~4,000nmが好ましく、20~3,000nmがより好
ましく、20~2,000nmが特に好ましい。上記下限値以上であれば、硬化物の防粉
塵付着性が良好な傾向があり、上記上限値以下であれば硬化物の基材への密着性が良好な
傾向がある。
【0057】
<積層体>
本発明の一態様に係る積層体(以下、「本積層体」とも記す。)は、基材と、前記硬化
物からなる層(以下、「硬化物層」とも記す。)とを有する。硬化物層は、本積層体の最
表層に位置することが好ましい。基材と硬化物層との間に中間層を有していてもよい。
【0058】
基材としては、ガラス基材;亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、
錫メッキ鋼板等の金属基材;ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ
エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、PET樹脂、ポリアミド樹脂、
ポリアリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニル樹脂、トリアセチルセルロース、ポ
リメタクリルイミド樹脂及びポリアリルジグリコールカーボネート樹脂等の樹脂基材が挙
げられる。基材は、樹脂の他に、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤
、補強材、充填剤、着色剤、滑剤、発泡剤、易滑剤、硬化触媒等の添加剤を含んでいても
よい。
必要に応じて、基材上に密着性の向上等のために中間層が存在していてもよいし、基材
の硬化物層が存在する側とは反対側に粘着層等の機能層を有することも可能である。
【0059】
<積層体の製造方法>
本積層体は、例えば、基材に本組成物を塗工し、硬化させることにより製造できる。本
組成物を塗工する前に、基材にプライマーを塗工してもよい。
塗工方法としては、ハケ塗り、グラビアコーター法、ダイコーター法、バーコーター法
、スプレーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法及びカーテン
コート法等の公知の方法を用いることができる。
硬化方法としては、前記と同様の方法が挙げられ、本組成物を加熱して硬化する方法が
好ましい。
以上説明した本積層体にあっては、硬化物層が、成分(A)とシリカ微粒子(B)とを
含む組成物の硬化物からなるので、外観、防粉塵付着性、反射防止性に優れる。
【実施例0060】
以下に実施例及び比較例を掲げ、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこ
れらに限定されるものではない。説明中の「部」は「質量部」を表す。測定及び評価は以
下の方法で行った。
【0061】
<膜厚>
評価サンプルの膜厚は、フィルメトリクス社製「干渉式膜厚測定装置F20」により得
られる反射率スペクトルから算出した。
【0062】
<外観>
評価サンプルの外観は、JIS K7136:2000に準拠し、ヘイズメーター(H
M-65W、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定したヘイズ値(Hz)[%]により
評価した。判定基準は次のとおりである。
A:Hzが1%以下
B:Hzが5%以下
C:Hzが5%以上
【0063】
<反射防止性>
評価サンプルの反射防止性は、全光線透過率によって評価した。AOPTEK製分光透
過率計ST-100を用いて380~1100nmの全光線透過率を測定した。判定基準
は次のとおりである。
(判定基準)
A:コーティング膜のない試験板(ガラスまたはポリカーボネート)の全光線透過率に対
し、2.0%以上全光線透過率が高い。
B:コーティング膜のない試験板(ガラスまたはポリカーボネート)の全光線透過率に
対し、1.0%以上全光線透過率が高い。
C:コーティング膜のない試験板(ガラスまたはポリカーボネート)の全光線透過率に
対し、全光線透過率の変動が1.0%以下。
尚、コーティング膜のない試験版の全光線透過率は以下の通りであった。
ガラス:90.66%
ポリカーボネート:89.68%
【0064】
<防粉塵付着性>
評価サンプルの防粉塵付着性は、模擬月土(清水建設社製、FJS-1)または8種関東ロ
ーム(JIS Z 8901)を硬化物表面に5mm以上堆積するように隙間なく振り掛けた後、試
験板を垂直に立て、5~10回底面に打ち付けて粉塵を落とした後のヘイズ変化(ΔHz)
及び全光線透過率変化(ΔT.T.)を比較することにより、評価した。判定基準は次のとお
りである。
(判定基準)
A:ΔHzが3%以下かつΔT.T.が1.5%以下
B:ΔHzが10%以下かつΔT.T.が5%以下
C:ΔHzが10%超過またはΔT.T.が5%超過
[略号]
以下において使用される略号の意味は以下のとおりである。
・成分(A-1):後述する合成例1で得たアルコキシシランアルコキシシラン加水分解
縮合物
・成分(A-2):コルコート社製「HAS-6」
・シリカ微粒子(B-1):日産化学社製「スノーテックス ST-OXS」
・シリカ微粒子(B-2):日産化学社製「スノーテックス ST-O」
・シリカ微粒子(B-3):日産化学社製「スノーテックス ST-OL」
・シリカ微粒子(B-4):日産化学社製「スノーテックス ST-OYL」
・シリカ微粒子(B-5):日産化学社製「スノーテックス ST-OUP」
【0065】
<合成例1:成分(A-1)の調整>
2Lのジャケット付き反応器に、信越シリコーン社製の商品「KBM22」(ジメチル
メトキシシラン含量99重量%)50質量部、三菱ケミカル社製商品「シリケートMS5
1」(平均多量化度n:7、メチルシリケートオリゴマー含量99.8重量%)200質
量部、エタノール500質量部を仕込み、反応上限温度を40℃に設定し、攪拌条件下、
0.007重量%の塩酸水溶液330質量部を10分かけて滴下した。この時、発熱反応
により5~10℃反応温度が上昇した。反応温度が5~10℃低下するまで撹拌を続行し
た。なお、2官能の加水分解性シラン化合物中の多量体の割合(「KBM22」と「シリ
ケートMS51」の合計量に対するシリケートMS51の割合)は80重量%である。
塩酸水溶液滴下後、撹拌条件下、30分かけて60℃に昇温し、60℃で30分間保持
した。その後、室温まで冷却した。
冷却後、エタノール1,100質量部を混合し、30分攪拌することにより、アルコキ
シシラン組成物2,180質量部を得た。
前記で得られたアルコキシラン組成物2,180質量部に、さらにエタノール12,0
00質量部を加え、30分攪拌することにより、アルコキシシラン組成物(A-1)14
,180質量部を得た。
【0066】
<希釈溶剤の調整>
イソプロピルアルコールとn-プロパノールを重量比で1:1となるように混ぜ合わせ、
希釈溶剤を得た。
【0067】
[実施例1]
<組成物の調整>
成分(A-1)の10部と、成分(B-5)の6.4部とを混合し、さらに希釈溶剤に
て不揮発分が1.0%となるようにして組成物を調整した。
【0068】
<評価サンプルの作製>
得られた組成物を、厚さ2mmのガラス板(大塚硝子社製)の表面に、乾燥後の膜厚が1
00nmとなるようにスプレー塗装した後、予め100℃に加熱した熱風乾燥機内で1分
間加熱して硬化膜を得た。次いで、硬化後の塗膜に対し、高圧水銀灯(アイグラフィック
製、USX5-0902)を用いて400mJ/cm(波長340~380nmにおけ
る積算照射量を、紫外線光量計UV-351(オーク製作所製)を用いて測定)の紫外線
を照射して、ガラス板上に組成物の硬化膜が積層された評価サンプルを得た。
【0069】
<評価>
得られた組成物について、外観、反射防止性、防粉塵付着性を評価した。結果を表1に
示した。
【0070】
[実施例2~11、比較例1~2]
組成物に配合する成分の種類と配合量(部)を表1に示すようにした以外は実施例1と
同様にして、組成物を調製し、評価サンプルを作製した。組成物及び評価サンプルの評価
結果を表1に示した。
【0071】
[実施例12]
組成物に配合する成分の種類と配合量(部)を表1に示すようにした以外は実施例1と
同様にして、組成物を調製した。この組成物を用い、基材をガラスからポリカーボネート
板(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、Iupilon ML300)に変更し
た以外は実施例1と同様にして、評価サンプルを作製した。組成物及び評価サンプルの評
価結果を表1に示した。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すように、実施例1~12の組成物は、外観、反射防止性、防粉塵付着性に優
れていた。
一方、比較例1の組成物は、シリカ微粒子(B)を含まず、防粉塵付着性が低位であっ
た。比較例2はコーティングをしなかったため、反射防止性と防粉塵付着性が低位であっ
た。