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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147276
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060192
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 晃司
(72)【発明者】
【氏名】小田中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】梁 仙一
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA04
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB22
5F063CB27
5F063DD26
5F063DD42
5F063DD46
5F063DF04
5F063DF06
5F063DF19
(57)【要約】
【課題】プラズマエッチングにおいて加工品質を向上出来るウエーハの加工方法を提供すること。
【解決手段】ウエーハの加工方法は、ウエーハの表面に保護膜を形成する保護膜形成ステップ101と、分割予定ラインに沿って保護膜にレーザ光線を照射し、保護膜を除去し基板を露出させる第1加工溝を形成する第1加工溝形成ステップ102と、第1加工溝形成ステップ102の後に、保護膜の少なくとも一部を溶剤で液状化させ、第1加工溝の側壁を保護膜で被覆する第1加工溝被覆ステップ103と、第1加工溝被覆ステップ103の後に、第1加工溝の側壁が保護膜で被覆された状態で、保護膜をマスクにしてプラズマエッチングによって基板を加工するプラズマエッチングステップ104と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に複数の分割予定ラインによって区画されたデバイス領域が形成されたウエーハを該分割予定ラインに沿って加工するウエーハの加工方法であって、
該表面に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
該分割予定ラインに沿って該保護膜にレーザ光線を照射し、該保護膜を除去し基板を露出させる第1加工溝を形成する第1加工溝形成ステップと、
該第1加工溝形成ステップの後に、該保護膜の少なくとも一部を溶剤で液状化させ、該第1加工溝の側壁を該保護膜で被覆する第1加工溝被覆ステップと、
該第1加工溝被覆ステップの後に、該第1加工溝の側壁が該保護膜で被覆された状態で、該保護膜をマスクにしてプラズマエッチングによって基板を加工するプラズマエッチングステップと、
を備える事を特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
該第1加工溝被覆ステップにおいて、該第1加工溝の底面も該保護膜で被覆され、
該第1加工溝被覆ステップの後に、該第1加工溝にレーザ光線を照射して該第1加工溝よりも細い第2加工溝を形成し、該第1加工溝の側壁を被覆する該保護膜は残存させつつ、該第1加工溝の底面を被覆する該保護膜は除去して該基板を露出させる第2加工溝形成ステップをさらに備え、
該プラズマエッチングステップでは、第2加工溝に沿って基板を加工する事を特徴とする請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該第1加工溝被覆ステップにおいて、該溶剤は噴霧状で供給されることを特徴とする請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該第1加工溝被覆ステップにおいて、該ウエーハまたは該保護膜の少なくともいずれかを加温する事を特徴とする請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該第1加工溝被覆ステップにおいて、該保護膜に振動または圧力の少なくともいずれかの外力を付与して該第1加工溝への該保護膜の移動を促進する事を特徴とする請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを加工するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の表面に複数の分割予定ラインによって区画された複数のデバイス領域が形成されたウエーハをプラズマエッチングによって加工する加工方法が知られている。この加工方法では、表面に保護膜を被覆した後、レーザ光線の照射により保護膜を除去し基板を露出させる加工溝を形成し、保護膜をマスクとしてプラズマエッチングする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-052821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レーザ光線の照射により形成した加工溝の側面に凹凸があると、プラズマエッチングにより形成されるチップの側面品質が悪くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラズマエッチングにおいて加工品質を向上出来るウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法は、基板の表面に複数の分割予定ラインによって区画されたデバイス領域が形成されたウエーハを該分割予定ラインに沿って加工するウエーハの加工方法であって、該表面に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、該分割予定ラインに沿って該保護膜にレーザ光線を照射し、該保護膜を除去し基板を露出させる第1加工溝を形成する第1加工溝形成ステップと、該第1加工溝形成ステップの後に、該保護膜の少なくとも一部を溶剤で液状化させ、該第1加工溝の側壁を該保護膜で被覆する第1加工溝被覆ステップと、該第1加工溝被覆ステップの後に、該第1加工溝の側壁が該保護膜で被覆された状態で、該保護膜をマスクにしてプラズマエッチングによって基板を加工するプラズマエッチングステップと、を備える事を特徴とする。
【0007】
該第1加工溝被覆ステップにおいて、該第1加工溝の底面も該保護膜で被覆され、該第1加工溝被覆ステップの後に、該第1加工溝にレーザ光線を照射して該第1加工溝よりも細い第2加工溝を形成し、該第1加工溝の側壁を被覆する該保護膜は残存させつつ、該第1加工溝の底面を被覆する該保護膜は除去して該基板を露出させる第2加工溝形成ステップをさらに備え、該プラズマエッチングステップでは、第2加工溝に沿って基板を加工してもよい。
【0008】
該第1加工溝被覆ステップにおいて、該溶剤は噴霧状で供給されてもよい。
【0009】
該第1加工溝被覆ステップにおいて、該ウエーハまたは該保護膜の少なくともいずれかを加温してもよい。
【0010】
該第1加工溝被覆ステップにおいて、該保護膜に振動または圧力の少なくともいずれかの外力を付与して該第1加工溝への該保護膜の移動を促進してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、第1加工溝の側壁を保護膜で被覆してから、第1加工溝の底面に露出した基板をエッチングするため、第1加工溝の側壁の凹凸よりも明らかに小さい保護膜の凹凸に沿って第1加工溝の底面に露出した基板をエッチングするので、エッチングの加工側面に発生する凹凸を抑制し、プラズマエッチングにおいて加工品質を向上出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の加工対象のウエーハを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示されたウエーハの要部を模式的に示す断面図である。
図3図3は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、図3に示されたウエーハの加工方法の保護膜形成ステップ後のウエーハの要部を模式的に示す断面図である。
図5図5は、図3に示されたウエーハの加工方法の第1加工溝形成ステップ後のウエーハの要部を模式的に示す断面図である。
図6図6は、図3に示されたウエーハの加工方法の第1加工溝被覆ステップ中のウエーハの要部を模式的に一部断面で示す図である。
図7図7は、図3に示されたウエーハの加工方法の第1加工溝被覆ステップの一例を模式的に一部断面で示す図である。
図8図8は、図3に示されたウエーハの加工方法の第1加工溝被覆ステップの別の一例を模式的に一部断面で示す図である。
図9図9は、図3に示されたウエーハの加工方法のプラズマエッチングステップ中のウエーハの要部を模式的に示す断面図である。
図10図10は、図3に示されたウエーハの加工方法の洗浄ステップ後のウエーハの要部を模式的に示す断面図である。
図11図11は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図12図12は、図10に示されたウエーハの加工方法の第1加工溝被覆ステップ中のウエーハの要部を模式的に一部断面で示す図である。
図13図13は、図10に示されたウエーハの加工方法の第2加工溝形成ステップ後のウエーハの要部を模式的に一部断面で示す図である。
図14図14は、図10に示されたウエーハの加工方法のプラズマエッチングステップ中のウエーハの要部を模式的に示す断面図である。
図15図15は、図10に示されたウエーハの加工方法の洗浄ステップ後のウエーハの要部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウエーハの加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の加工対象のウエーハ1を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示されたウエーハ1の要部を模式的に示す断面図である。図3は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0015】
(ウエーハ)
実施形態1に係るウエーハの加工方法は、図1に示すウエーハ1の加工方法である。実施形態1では、ウエーハ1は、シリコン、ガラス、SiC、サファイヤ、ガリウム砒素等を基板2とする円板状の半導体ウエーハ等のウエーハである。ウエーハ1は、図1に示すように、表面3に格子状に形成された複数の分割予定ライン4によって格子状に区画された領域にデバイス5が形成されている。以下において、ウエーハ1においてデバイス5が形成されている領域を、デバイス領域と称する。
【0016】
デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はメモリ(半導体記憶装置)等である。
【0017】
実施形態1において、ウエーハ1は、図1及び図2に示すように、基板2の表面に積層された機能層6を有している。機能層6は、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜又は炭素含有酸化シリコン(SiOCH)からなる低誘電率絶縁体被膜(以下、Low-k膜と呼ぶ)と、導電性の金属パターンや金属膜を含んで構成された回路層とを備える。
【0018】
Low-k膜は、回路層と積層されて、デバイス5を形成する。回路層は、デバイス5の回路を構成する。このために、デバイス5は、基板2上に積層された機能層6の互いに積層されたLow-k膜と、Low-k膜間に積層された回路層とによって構成される。分割予定ライン4では、機能層6は、基板2上に積層されたLow-k膜により構成される。
【0019】
Low-k膜のような機能層6は、ウエーハ1が表面3側から切削ブレードで切削されると、基板2から剥離しやすい。このように、実施形態1では、ウエーハ1は、基板2上に積層された機能層6によって表面3にデバイス5が形成されている。
【0020】
(ウエーハの加工方法)
実施形態1に係るウエーハの加工方法は、基板2の表面に積層された機能層6によって複数のデバイス5が形成されたウエーハ1を、複数のデバイス5を区画する分割予定ライン4に沿って加工する方法である。なお、実施形態1では、ウエーハの加工方法は、ウエーハ1を分割予定ライン4に沿って個々のデバイスチップ10(図1に示す)に分割(加工に相当)する方法でもある。なお、デバイスチップ10は、基板2の一部とデバイス5とを含む。なお全ての実施形態について基板2の表面に機能層6が積層された構成で記載しているが、機能層6が形成されていなくてもよい。
【0021】
ウエーハの加工方法は、図3に示すように、保護膜形成ステップ101と、第1加工溝形成ステップ102と、第1加工溝被覆ステップ103と、プラズマエッチングステップ104と、洗浄ステップ105とを備える。なお、実施形態1では、ウエーハの加工方法は、図1に示すように、表面3の裏側の裏面9にウエーハ1よりも大径な円板状のテープ11を貼着し、テープ11の外縁部に環状のフレーム12を貼着して、フレーム12で支持したウエーハ1を加工する。
【0022】
(保護膜形成ステップ)
図4は、図3に示されたウエーハの加工方法の保護膜形成ステップ101後のウエーハ1の要部を模式的に示す断面図である。保護膜形成ステップ101は、第1加工溝形成ステップ102の実施前に、ウエーハ1の表面3に保護膜13(図4に示す)を形成するステップである。
【0023】
実施形態1において、保護膜形成ステップ101では、図示しない樹脂被覆装置が、ウエーハ1の裏面9側をテープ11を介してスピンナテーブルの保持面に吸引保持し、フレーム12をクランプ部でクランプして、スピンナテーブルを軸心回りに回転するとともに、水溶性樹脂供給ノズルから液状の水溶性樹脂をウエーハ1の表面3の中央に滴下する。滴下された水溶性樹脂は、スピンナテーブルの回転により発生する遠心力によって、ウエーハ1の表面3上を中心側から外周側に向けて流れていき、ウエーハ1の表面3の全面に塗布される。なお全ての実施形態についてフレーム12を含む構成で記載しているが、フレーム12は用いなくてもよい。
【0024】
なお、水溶性樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)、又はポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)等の水溶性樹脂を含んでいる。保護膜形成ステップ101では、ウエーハ1の表面3の全面に塗布された水溶性樹脂を乾燥することによって、図4に示すように、ウエーハ1の表面3の全面を水溶性樹脂を含む保護膜13で被覆する。このように、実施形態1では、保護膜13は、水溶性樹脂からなる。また、保護膜13を構成する水溶性樹脂は、乾燥すると、プラズマエッチングステップ104において用いられるプラズマ化したエッチングガス18(図9に示す)に対して基板2よりもエッチングされるレートが低く、耐性を有するものである。
【0025】
保護膜形成ステップ101では、第1加工溝被覆ステップ103においてウエーハ1の表面3のデバイス領域上の保護膜13が薄くなっても、プラズマエッチングステップ104においてウエーハ1の表面3のデバイス領域上の保護膜13がマスクとして有効な厚みを有するように、ウエーハ1の表面3のデバイス領域上に十分な厚みの保護膜13を形成する。
【0026】
(第1加工溝形成ステップ)
図5は、図3に示されたウエーハの加工方法の第1加工溝形成ステップ102後のウエーハ1の要部を模式的に示す断面図である。第1加工溝形成ステップ102は、ウエーハ1の表面3から、分割予定ライン4に沿って図示しないレーザ光線を照射し、保護膜13を除去し、基板2を露出させる第1加工溝14(図5に示す)を形成するステップである。実施形態1において、第1加工溝形成ステップ102では、このレーザ光線の照射により、分割予定ライン4上に形成されている機能層6も合わせて除去する。
【0027】
実施形態1において、第1加工溝形成ステップ102では、図示しないレーザ加工装置が保持テーブルの保持面にウエーハ1の裏面9側をテープ11を介して吸引保持し、フレーム12をクランプ部でクランプする。実施形態1において、第1加工溝形成ステップ102では、レーザ加工装置が、ウエーハ1の表面3側を図示しない撮像ユニットで撮像して、分割予定ライン4を検出して、レーザ光線照射ユニットと分割予定ライン4とを位置合わせするアライメントを遂行する。
【0028】
実施形態1において、第1加工溝形成ステップ102では、レーザ加工装置は、分割予定ライン4に沿ってウエーハ1とレーザ光線照射ユニットとを相対的に移動させながら、レーザ光線照射ユニットからウエーハ1に対して吸収性を有する波長のレーザ光線を分割予定ライン4に沿ってウエーハ1に照射する。なお、実施形態1において、第1加工溝形成ステップ102では、レーザ加工装置がレーザ光線の集光点を保護膜13の表面または基板2の表面に設定して、レーザ光線を各分割予定ライン4に沿ってウエーハ1に照射する。
【0029】
実施形態1において、第1加工溝形成ステップ102では、レーザ加工装置が各分割予定ライン4上の保護膜13、機能層6及び基板2にアブレーション加工を施して、これらの一部を除去して、図5に示すように、各分割予定ライン4に保護膜13及び機能層6を分断する第1加工溝14を形成する。
【0030】
なお、実施形態1において、第1加工溝形成ステップ102では、レーザ光線を各分割予定ライン4の幅方向の両縁に照射して、各分割予定ライン4の幅方向の両縁の保護膜13、機能層6及び基板2にアブレーション加工を施して加工溝を形成した後、レーザ光線を各分割予定ライン4の加工溝間に照射して、各分割予定ライン4の加工溝間の保護膜13、機能層6及び基板2にアブレーション加工を施して第1加工溝14を形成する。なお、実施形態1において、第1加工溝形成ステップ102では、波長が355nm(355nmに限らず機能層6と基板2とに対して吸収性を有する紫外線領域の波長が好ましい)であり、繰り返し周波数が200kHzから2000kHzのレーザ光線を照射する。
【0031】
また、実施形態1において、第1加工溝形成ステップ102では、レーザ光線を分岐し分割予定ライン4の幅方向の両縁に2本の両縁加工溝を形成し、アブレーション加工を施す際には、レーザ光線の平均出力を0.5Wとし、レーザ光線照射ユニットとウエーハ1との相対的な移動速度(以下、加工送り速度と記す)を100mm/秒から400mm/秒とし、レーザ光線の集光点のスポットを直径5μmの円形とする。実施形態1において、第1加工溝形成ステップ102では、分割予定ライン4の両縁加工溝間にアブレーション加工を施す際には、レーザ光線の平均出力を10.0Wとし、加工送り速度を200mm/秒から1000mm/秒とし、レーザ光線の集光点のスポットを幅60μmの矩形とする。
【0032】
実施形態1において、全ての第1加工溝14の幅14-1は全て同一である。
【0033】
(第1加工溝被覆ステップ)
図6は、図3に示されたウエーハの加工方法の第1加工溝被覆ステップ103中のウエーハ1の要部を模式的に一部断面で示す図である。第1加工溝被覆ステップ103は、第1加工溝形成ステップ102の後に、保護膜13の少なくとも一部を溶剤15(図6に示す)で液状化させ、第1加工溝14の内側の側壁14-2を保護膜13で被覆するステップである。
【0034】
実施形態1において、第1加工溝被覆ステップ103では、溶剤供給ノズル16が、保護膜13を液状化させる溶剤15をウエーハ1の表面3に供給する。供給された溶剤15は、ウエーハ1の表面3に形成された保護膜13の少なくとも一部を液状化させる。溶剤15により液状化した保護膜13の少なくとも一部は、第1加工溝14の側壁14-2を伝って流れる。第1加工溝被覆ステップ103では、第1加工溝14の側壁14-2を伝って流れた液状化した保護膜13を再び乾燥することによって、図6に示すように、第1加工溝14の側壁14-2を保護膜13で被覆する。第1加工溝被覆ステップ103では、ウエーハ1の表面3に形成された保護膜13の少なくとも一部が液状化して第1加工溝14の側壁14-2を伝って流れることにより、ウエーハ1の表面3のデバイス領域上の保護膜13は薄くなる。よって、保護膜形成ステップ101においては、第1加工溝被覆ステップ103によってデバイス領域上の保護膜13が薄くなっても、十分プラズマエッチングステップ104にてデバイス領域を露出させず保護できる厚みを計算して、その厚み以上に保護膜13が被覆される。
【0035】
なお、水溶性樹脂を含む保護膜13を液状化させる溶剤15は、実施形態1では、例えば、純水であるが、本発明ではこれに限定されず、純水と液状の保護膜13を混合した液体や、液状の保護膜13そのものであってもよい。
【0036】
実施形態1において、第1加工溝被覆ステップ103では、少量の溶剤15を噴霧状(ミスト状)でウエーハ1の表面3に供給して、少量の保護膜13を液状化させる。これにより、溶剤15を過剰に供給して溶剤15によりデバイス領域上の保護膜13を除去してしまう恐れを抑制し、また、溶剤15を過剰に供給して多量の保護膜13を液状化して液状化した保護膜13が第1加工溝14の底面14-3に付着することを抑制して、第1加工溝14の側壁14-2を覆いつつ、第1加工溝14の底面14-3の露出を維持する少量の保護膜13を液状化させる少量の溶剤15をウエーハ1の表面3に概ね均等に好適に供給できる。このため、再度レーザ光線を照射して第1加工溝14の底面14-3を露出させる必要がなく、プラズマエッチングステップ104で第1加工溝14の底面14-3に露出した基板2をエッチングできる。なお、第1加工溝14の側壁14-2を覆いつつ、第1加工溝14の底面14-3の露出を維持する少量の保護膜13を液状化させる溶剤15の量を検出するために、溶剤15の量を複数段階で変更して第1加工溝被覆ステップ103を実施し、第1加工溝14の被覆状態を確認して、最適な溶剤15の量を求める検出ステップを備えても良い。
【0037】
第1加工溝被覆ステップ103において、ウエーハ1または保護膜13の少なくともいずれかを加温することにより、溶剤15を供給して液状化した保護膜13の流動性を増加させて、液状化した保護膜13が容易に第1加工溝14の側壁14-2を伝って流れやすくすることができる。ウエーハ1または保護膜13の少なくともいずれかの加温は、例えば、ウエーハ1を保持する保持テーブル内に設けられたヒーターによる加温、ウエーハ1の表面3上に形成された保護膜13に対向する位置に設置された赤外線ヒーターや温風供給ユニットによる加温等である。
【0038】
また、第1加工溝被覆ステップ103において、保護膜13に外力を付与することにより、液状化した保護膜13が第1加工溝14の側壁14-2を伝って流れることを促進することができる。保護膜13に付与する外力は、例えば、ウエーハ1を回転させることに伴って発生する遠心力、ウエーハ1の面方向または厚み方向または斜め方向に沿った振動、エアを吹き付けることによってもたらされる圧力、またウエーハ1を真空チャンバの中に収容しウエーハ1の上方がウエーハ1の下方より陽圧にすることで発生する保護膜13を下方向に押しつける圧力等である。なお、第1加工溝被覆ステップ103において、保護膜13に温風を吹き付けることにより、保護膜13を加温することによる効果と、外力である圧力を付与することによる効果との両方が得られる。
【0039】
図7は、図3に示されたウエーハの加工方法の第1加工溝被覆ステップ103の一例を模式的に一部断面で示す図である。実施形態1において、第1加工溝被覆ステップ103では、例えば、図7に示す溶剤供給装置20-1が、ウエーハ1の裏面9側をテープ11を介して保持テーブル21の保持面22に吸引保持し、保持テーブル21内に設けられたヒーター23によりウエーハ1及び保護膜13を加温しながら、保持テーブル21を軸心回りに回転するとともに、保持テーブル21の上方から溶剤供給ノズル16により溶剤15を噴霧状(ミスト状)でウエーハ1の表面3上に形成された保護膜13に供給してもよい。
【0040】
図8は、図3に示されたウエーハの加工方法の第1加工溝被覆ステップ103の別の一例を模式的に一部断面で示す図である。実施形態1において、第1加工溝被覆ステップ103では、例えば、図8に示す溶剤供給装置20-2が、ウエーハ1の裏面9側をテープ11を介して保持テーブル21の保持面22に吸引保持し、保持テーブル21内に設けられたヒーター23によりウエーハ1及び保護膜13を加温しながら、保持テーブル21を気体供給ユニット24に対して保持面22と平行な方向に沿って移動させるとともに、保持テーブル21の上方から溶剤供給ノズル16により溶剤15を噴霧状(ミスト状)でウエーハ1の表面3上に形成された保護膜13に供給し、保持テーブル21の上方から気体供給ユニット24によりエア25をウエーハ1の表面3上に形成された保護膜13に吹き付けてもよい。なお、気体供給ユニット24は、例えば保持テーブル21の保持面22に平行な一方向(図8の紙面に直交する方向)に沿って延びて、保持面22の直径よりも長く形成され、保持面22の上方に設けられる。
【0041】
(プラズマエッチングステップ)
図9は、図3に示されたウエーハの加工方法のプラズマエッチングステップ104中のウエーハ1の要部を模式的に示す断面図である。プラズマエッチングステップ104は、第1加工溝被覆ステップ103の後に、第1加工溝14の側壁14-2が保護膜13で被覆された状態で、保護膜13をマスクにしてプラズマエッチングによって基板2を加工するステップである。
【0042】
実施形態1において、プラズマエッチングステップ104では、図示しないプラズマエッチング装置が、保持テーブルの保持面にウエーハ1の裏面9側をテープ11を介して保持する。実施形態1において、プラズマエッチングステップ104では、上部電極にプラズマを作り維持する高周波電力を印加し、下部電極である保持テーブルにイオンを引き込むための高周波電力を印加しながらエッチングガス18をウエーハ1の表面3側に供給する。実施形態1において、プラズマエッチングステップ104では、エッチングガス18は、例えば、フッ素系ガスであるSFとCとである。
【0043】
すると、実施形態1において、プラズマエッチングステップ104では、プラズマエッチング装置が、保持テーブルと上部電極との間の空間のエッチングガス18がプラズマ化され、このプラズマ化されたエッチングガス18がウエーハ1側に引き込まれて、ウエーハ1のマスクである保護膜13に形成された第1加工溝14の底面14-3(図5及び図6に示す)に露出した基板2をエッチング(所謂プラズマエッチング)して、第1加工溝14をウエーハ1の裏面9に向かって進行させる。
【0044】
ここで、第1加工溝被覆ステップ103で溶剤15が供給された保護膜13は、従来の加工方法で使用されていた溶剤15が供給されていない保護膜13と同様に、プラズマエッチングにおいてマスクの役割を果たし、ウエーハ1の表面3のデバイス領域へのデブリ等の異物の付着を防止する効果を有する。このため、プラズマエッチングステップ104では、従来の加工方法で溶剤15が供給されていない保護膜13を使用した場合と同様に、プラズマエッチング後の加工品質の劣化は見受けられず、デバイス領域へのデブリ等の異物の付着は見られなかった。
【0045】
なお、実施形態1において、プラズマエッチングステップ104では、プラズマエッチング装置が、図9に示すように、第1加工溝14が裏面9側に開口して、ウエーハ1をデバイスチップ10に分割するまで、ウエーハ1をプラズマエッチングする。こうして、実施形態1では、プラズマエッチングステップ104において、ウエーハ1を分割し、複数のデバイスチップ10を製造することとなる。
【0046】
(洗浄ステップ)
図10は、図3に示されたウエーハの加工方法の洗浄ステップ105後のウエーハ1の要部を模式的に示す断面図である。洗浄ステップ105は、プラズマエッチングステップ104の実施後に、保護膜13を洗浄して除去するステップである。
【0047】
実施形態1において、洗浄ステップ105では、図示しない洗浄装置が、ウエーハ1の裏面9側をテープ11を介してスピンナテーブルの保持面に吸引保持し、フレーム12をクランプ部でクランプして、スピンナテーブルを軸心回りに回転させた状態で、洗浄水供給ノズルから純水または界面活性材を含む純水からなる洗浄水をウエーハ1の表面3の中央に供給する。ウエーハ1の表面3に供給された洗浄水が、スピンナテーブルの回転により発生する遠心力によって、ウエーハ1の表面3上を中心側から外周側に向けて流れてウエーハ1の表面3を洗浄して、図10に示すように、デブリ等の異物とともに水溶性樹脂を含む保護膜13をウエーハ1の表面3上から除去する。
【0048】
従来の加工方法は、第1加工溝14の底面14-3の基板2をプラズマエッチングする場合、保護膜13及び機能層6を除去して、第1加工溝14を形成するため、大きな出力のレーザ光線の照射が必要となり、機能層6の熱ダメージも大きく、第1加工溝14の内側の側壁14-2の特に機能層6に凹凸が生じる。このために、従来の加工方法は、第1加工溝14の底面14-3の基板2をプラズマエッチングする場合、第1加工溝14の内側の側壁14-2の特に機能層6の凹凸に沿って基板2がエッチングされてしまい、デバイスチップ10の側面に凹凸が発生してしまい、デバイスチップ10の抗折強度が低下してしまったり、デバイスチップ10の外観の劣化が発生してしまったりする。
【0049】
このような従来の加工方法に比べ、以上説明した実施形態1に係るウエーハの加工方法は、第1加工溝14の内側の側壁14-2を保護膜13で被覆してから、第1加工溝14の底面14-3に露出した基板2をエッチングする。このために、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、第1加工溝14の内側の側壁14-2の機能層6の凹凸よりも明らかに小さい保護膜13の凹凸に沿って第1加工溝14の底面14-3に露出した基板2をエッチングするので、デバイスチップ10の側面に発生する凹凸を抑制し、これによりデバイスチップ10の抗折強度の低下を抑制できるという作用効果を奏する。このように、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、プラズマエッチングにおいて加工品質を向上出来る。
【0050】
また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、液状化した保護膜13が第1加工溝14の底面14-3に付着しないように、第1加工溝14の内側の側壁14-2を保護膜13で被覆してから、第1加工溝14の底面14-3に露出した基板2をエッチングする。このために、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、再度レーザ光線を照射して第1加工溝14の底面14-3を露出させる必要がなく、プラズマエッチングステップ104で第1加工溝14の底面14-3に露出した基板2をエッチングできる。
【0051】
また、実施形態1に係るウエーハの加工方法において、第1加工溝被覆ステップ103以降の処理に代えて、機能層を除去する第1加工溝を形成した際の保護膜を洗浄し、再度保護膜を被覆し、第1加工溝より幅の狭い第2加工溝を形成するという2度の保護膜形成を含む方法が考えられるが、この方法では、第2加工溝を形成するために、保護膜を洗浄し再度被覆すると、保護膜の使用量が増えるという問題があった。しかしながら、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、第1加工溝14を形成した際の保護膜13を第1加工溝被覆ステップ103で溶剤15を供給することにより好適に再利用するので、保護膜形成ステップ101で形成する保護膜13を厚くし過ぎない限り、すなわち前述の2度の保護膜形成を含む方法と比較して2倍以上の厚さの保護膜13を形成しない限り、前述の2度の保護膜形成を含む方法に対して保護膜13の使用量を低減できるという作用効果を奏する。
【0052】
また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、第1加工溝被覆ステップ103において、溶剤15が噴霧状で供給されてもよい。この場合、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、溶剤15を過剰に供給して溶剤15により保護膜13を洗浄して除去してしまう恐れを抑制し、また、溶剤15を過剰に供給して多量の保護膜13を液状化して液状化した保護膜13が第1加工溝14の底面14-3に付着することを抑制して、第1加工溝14の側壁14-2を覆いつつ、第1加工溝14の底面14-3の露出を維持する適量の保護膜13を液状化させる適量の溶剤15をウエーハ1の表面3に概ね均等に好適に供給できる。
【0053】
また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、第1加工溝被覆ステップ103において、ウエーハ1または保護膜13の少なくともいずれかを加温してもよい。この場合、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、溶剤15を供給して液状化した保護膜13の流動性を増加させて、液状化した保護膜13が容易に第1加工溝14の側壁14-2を伝って流れやすくすることができる。
【0054】
また、実施形態1に係るウエーハの加工方法は、第1加工溝被覆ステップ103において、保護膜13に振動または圧力の少なくともいずれかの外力を付与してもよく、この場合、第1加工溝14への保護膜13の移動を促進することができる。
【0055】
〔実施形態2〕
実施形態2に係るウエーハの加工方法を図面に基づいて説明する。図11は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。図12は、図10に示されたウエーハの加工方法の第1加工溝被覆ステップ103中のウエーハ1の要部を模式的に一部断面で示す図である。図13は、図10に示されたウエーハの加工方法の第2加工溝形成ステップ106後のウエーハ1の要部を模式的に一部断面で示す図である。図14は、図10に示されたウエーハの加工方法のプラズマエッチングステップ104中のウエーハ1の要部を模式的に示す断面図である。図15は、図10に示されたウエーハの加工方法の洗浄ステップ105後のウエーハ1の要部を模式的に示す断面図である。なお、図11図12図13図14及び図15は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
実施形態2に係るウエーハの加工方法は、図11に示すように、実施形態1に係るウエーハの加工方法において、第1加工溝被覆ステップ103以降を変更し、さらに、第1加工溝被覆ステップ103の後でかつプラズマエッチングステップ104の前に第2加工溝形成ステップ106をさらに備えるように変更したものである。
【0057】
実施形態2における第1加工溝被覆ステップ103は、実施形態1における第1加工溝被覆ステップ103において、第1加工溝14の底面14-3も保護膜13で被覆されるように変更したものである。
【0058】
実施形態2において、第1加工溝被覆ステップ103では、溶剤供給ノズル16が、保護膜13を液状化させる溶剤15をウエーハ1の表面3に供給する。供給された溶剤15は、ウエーハ1の表面3に形成された保護膜13の少なくとも一部を液状化させる。溶剤15により液状化した保護膜13の少なくとも一部は、第1加工溝14の側壁14-2を伝って流れ、さらに一部の液状化した保護膜13は、第1加工溝14の底面14-3に流れる。第1加工溝被覆ステップ103では、第1加工溝14の側壁14-2を伝って流れた液状化した保護膜13を再び乾燥することによって、図12に示すように、第1加工溝14の側壁14-2及び底面14-3を保護膜13で被覆する。
【0059】
実施形態2において、第1加工溝被覆ステップ103では、図12に示すように第1加工溝14内を保護膜13で充填してもよいし、第1加工溝14内を保護膜13で充填せずに第1加工溝14の側壁14-2及び底面14-3が被覆されていてもよい。
【0060】
実施形態2において、第1加工溝被覆ステップ103では、適量の溶剤15を噴霧状(ミスト状)でウエーハ1の表面3に供給して、適量の保護膜13を液状化させる。これにより、溶剤15を過剰に供給して溶剤15により保護膜13を洗浄して除去してしまう恐れを抑制して、第1加工溝14の側壁14-2及び底面14-3を覆う適量の保護膜13を液状化させる適量の溶剤15をウエーハ1の表面3に概ね均等に好適に供給できる。
【0061】
(第2加工溝形成ステップ)
第2加工溝形成ステップ106は、第1加工溝被覆ステップ103の後に、第1加工溝14に沿ってレーザ光線を照射して第1加工溝14より細い(幅19-1が小さい)第2加工溝19(図13に示す)を形成し、第1加工溝14の側壁14-2を被覆する保護膜13は残存させつつ、第1加工溝14の底面14-3を被覆する保護膜13は除去して、第2加工溝19に沿って基板2を露出させるステップである。
【0062】
実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106では、図示しないレーザ加工装置が保持テーブルの保持面にウエーハ1の裏面9側をテープ11を介して吸引保持し、フレーム12をクランプ部でクランプする。実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106では、レーザ加工装置が、ウエーハ1の表面3側を図示しない撮像ユニットで撮像して、分割予定ライン4を検出して、レーザ光線照射ユニットと分割予定ライン4とを位置合わせするアライメントを遂行する。
【0063】
実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106では、レーザ加工装置は、分割予定ライン4に沿ってウエーハ1とレーザ光線照射ユニットとを相対的に移動させながら、レーザ光線照射ユニットからウエーハ1に対して吸収性を有する波長のレーザ光線を分割予定ライン4に沿ってウエーハ1に照射する。なお、実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106では、レーザ加工装置がレーザ光線の集光点を保護膜13または基板2の表面に設定して、レーザ光線を各分割予定ライン4に形成された第1加工溝14に沿ってウエーハ1に照射する。
【0064】
実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106では、レーザ加工装置が各分割予定ライン4に形成された第1加工溝14の底面14-3上の保護膜13及び基板2にアブレーション加工を施して、これらの一部を除去して、図13に示すように、各分割予定ライン4に機能層6を分断した第1加工溝14の底面14-3に第1加工溝14よりも幅19-1が小さい第2加工溝19を形成する。
【0065】
なお、実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106では、レーザ光線を各分割予定ライン4に形成された第1加工溝14の幅方向の中央に照射して、第1加工溝14の底面14-3上の保護膜13及び基板2にアブレーション加工を施して第2加工溝19を形成する。なお、実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106では、波長が355nm(355nmに限らず紫外線領域の波長が好ましい)であり、繰り返し周波数が200kHzから1000kHzのレーザ光線を照射する。
【0066】
また、実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106では、レーザ光線の平均出力を1.0Wとし、加工送り速度を200mm/秒とし、レーザ光線の集光点のスポットを直径25μmから40μmの円形とする。実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106では、レーザ光線の平均出力が第1加工溝形成ステップ102の加工溝間に照射されるレーザ光線の平均出力よりも低ければ良い。このように、実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106は、第1加工溝形成ステップ102よりも、照射するレーザ光線の出力が小さい。または実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106で照射されるレーザ光線の1スポットのエネルギー密度が、第1加工溝形成ステップ102で照射されるレーザ光線の1スポットのエネルギー密度よりも低い。また、実施形態2において、全ての第2加工溝19の幅19-1は全て同一である。
【0067】
第1加工溝形成ステップ102では、高い平均出力のレーザ光線を必要とする機能層6を除去する必要がある一方で、第2加工溝形成ステップ106では、低い平均出力のレーザ光線で加工できる保護膜13を除去できれば十分である。このため、実施形態2において、第2加工溝形成ステップ106では、レーザ光線の平均出力が第1加工溝形成ステップ102の加工溝間に照射されるレーザ光線の平均出力よりも低くすることができるので、保護膜13の側壁14-2における凹凸を、機能層6の側壁14-2における凹凸よりも明らかに小さくすることができる。
【0068】
実施形態2におけるプラズマエッチングステップ104は、実施形態1におけるプラズマエッチングステップ104において、第2加工溝形成ステップ106で形成した第2加工溝19に沿って基板2を加工するように変更したものである。実施形態2において、プラズマエッチングステップ104では、実施形態1におけるプラズマエッチングステップ104と同様に、第1加工溝14の側壁14-2が保護膜13で被覆された状態で、保護膜13をマスクにしてプラズマエッチングによって基板2を加工する。
【0069】
実施形態2において、プラズマエッチングステップ104では、プラズマ化されたエッチングガス18がウエーハ1側に引き込まれて、ウエーハ1のマスクである保護膜13に形成された第2加工溝19の底面に露出した基板2をプラズマエッチングして、第2加工溝19をウエーハ1の裏面9に向かって進行させる。
【0070】
実施形態2における洗浄ステップ105は、実施形態1における洗浄ステップ105において、洗浄対象が変更されたものである。実施形態2において、洗浄ステップ105では、実施形態1と同様に、ウエーハ1の表面3に供給された洗浄水が、スピンナテーブルの回転により発生する遠心力によって、ウエーハ1の表面3上を中心側から外周側に向けて流れてウエーハ1の表面3を洗浄して、図15に示すように、デブリ等の異物とともに水溶性樹脂を含む保護膜13をウエーハ1の表面3上から除去する。
【0071】
以上のような構成を有する実施形態2に係るウエーハの加工方法は、実施形態1に係るウエーハの加工方法において、第1加工溝被覆ステップ103において、第1加工溝14の底面14-3も保護膜13で被覆されるように変更され、第1加工溝被覆ステップ103の後に、第1加工溝14にレーザ光線を照射して第1加工溝14よりも細い第2加工溝19を形成し、第1加工溝14の側壁14-2を被覆する保護膜13は残存させつつ、第1加工溝14の底面14-3を被覆する保護膜13は除去して基板2を露出させる第2加工溝形成ステップ106をさらに備え、プラズマエッチングステップ104において、第2加工溝19に沿って基板2を加工するように変更したものである。このため、実施形態2に係るウエーハの加工方法は、第1加工溝被覆ステップ103において液状化した保護膜13が第1加工溝14の底面14-3に付着しないように実施して第1加工溝14の底面14-3の露出を維持することによるものを除き、実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0072】
なお、第1加工溝14の形成後に、保護膜13を洗浄せずに再度保護膜13を被覆し、第1加工溝14より幅の狭い第2加工溝19を形成し、再度被覆した保護膜13をマスクとして第2加工溝19に対してプラズマエッチングステップ104を実施しても良い。この方法では、第2加工溝19を形成するために、保護膜13を洗浄する工数がなくなるため、保護膜13を洗浄して再度被覆する場合と比べて、保護膜13の使用量を減らす事ができる。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 ウエーハ
2 基板
3 表面
4 分割予定ライン
5 デバイス
10 デバイスチップ
13 保護膜
14 第1加工溝
14-1 幅
14-2 側壁
14-3 底面
15 溶剤
19 第2加工溝
19-1 幅
101 保護膜形成ステップ
102 第1加工溝形成ステップ
103 第1加工溝被覆ステップ
104 プラズマエッチングステップ
105 洗浄ステップ
106 第2加工溝形成ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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