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特開2024-14731生体電極組成物、生体電極、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014731
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】生体電極組成物、生体電極、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/268 20210101AFI20240125BHJP
   A61B 5/265 20210101ALI20240125BHJP
   A61B 5/259 20210101ALI20240125BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61B5/268
A61B5/265
A61B5/259
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094462
(22)【出願日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2022116569
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 修
(72)【発明者】
【氏名】池田 譲
【テーマコード(参考)】
4C127
5G301
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127LL02
4C127LL22
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE01
(57)【要約】
【課題】導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがなく、柔らかく伸縮性と粘着性に優れる生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物、該生体電極組成物で生体接触層を形成した生体電極、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)成分として、イオン性の高分子材料を含有する生体電極組成物であって、前記(A)成分が、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位aと、シアノ基を有する繰り返し単位bとを有するポリマーを含有するものであることを特徴とする生体電極組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、イオン性の高分子材料を含有する生体電極組成物であって、
前記(A)成分が、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位aと、シアノ基を有する繰り返し単位bとを有するポリマーを含有するものであることを特徴とする生体電極組成物。
【請求項2】
前記繰り返し単位aが下記一般式(1)-1から(1)-4で示される構造を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の生体電極組成物。
【化1】
(一般式(1)-1中、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、酸素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rf及びRfが酸素原子である場合、Rf及びRfは、1つの炭素原子に結合してカルボニル基を形成する1つの酸素原子であり、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Rf~Rfのうち1つ以上はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。一般式(1)-2、一般式(1)-3及び一般式(1)-4中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ、フッ素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。一般式(1)-1~一般式(1)-4中、Mは、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。一般式(1)-2中、mは、1~4の整数である。)
【請求項3】
前記繰り返し単位aが、下記一般式(2)に記載の繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の生体電極組成物。
【化2】
(一般式(2)中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、R12、及びR14は、それぞれ独立に単結合、又は炭素数1~13の直鎖状、分岐状若しくは環状の炭化水素基である。前記炭化水素基は、エステル基、エーテル基、又はこれらの両方を有していてもよい。Rは、炭素数1~4の直鎖状、又は分岐状のアルキレン基であり、R中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X、X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、Xは、単結合、エーテル基、及びエステル基のいずれかである。Yは酸素原子、又は-NR19-基であり、R19は水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、Rとともに環を形成してもよい。Rf’及びRf’は、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。mは1~4の整数である。a1、a2、a3、a4、a5、a6、及びa7は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0≦a5<1.0、0≦a6<1.0、0≦a7<1.0であり、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7<1.0である。Mはアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。)
【請求項4】
前記一般式(2)に記載の前記繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上に加えて、下記一般式(4)に記載のシアノ基を有する繰り返し単位b1を共重合したポリマーを含有するものであることを特徴とする請求項3に記載の生体電極組成物。
【化3】
(一般式(4)中、R20は、水素原子、メチル基、又は炭素数1~6のアルキルエステル基であり、Xは単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、R21は単結合、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基であり、前記アルキレン基はヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、カーボネート基、アミド基、又は尿素結合を有していてもよい。nは1又は2、0<b1<1.0である。)
【請求項5】
前記(A)成分が、前記アンモニウム塩を構成するアンモニウムイオンとして、下記一般式(3)で示されるアンモニウムイオンを含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の生体電極組成物。
【化4】
(一般式(3)中、R101d、R101e、R101f、及びR101gはそれぞれ、水素原子、炭素数1~15の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルケニル基又はアルキニル基、又は炭素数4~20の芳香族基であり、エーテル基、カルボニル基、エステル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、ハロゲン原子、及び硫黄原子から選ばれる1種以上を有していてもよい。R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fはこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fは炭素数3~10のアルキレン基であるか、又は一般式(3)中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。)
【請求項6】
更に(B)成分として、樹脂を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の生体電極組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が、シリコーン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、及びウレタン樹脂から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の生体電極組成物。
【請求項8】
前記(B)成分が、粘着性を有しているものであることを特徴とする請求項6に記載の生体電極組成物。
【請求項9】
前記(B)成分が、RSiO(4-x)/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の一価炭化水素基、xは2.5~3.5の範囲である)及びSiO4/2単位を有するシリコーン樹脂を含有するものであることを特徴とする請求項6に記載の生体電極組成物。
【請求項10】
更に(C)成分として、カーボン材料及び/又は金属粉を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の生体電極組成物。
【請求項11】
前記カーボン材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又はその両方であることを特徴とする請求項10に記載の生体電極組成物。
【請求項12】
前記金属粉が、金、銀、白金、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、及びインジウムから選ばれる1種以上の金属粉であることを特徴とする請求項10に記載の生体電極組成物。
【請求項13】
前記金属粉が、銀粉であることを特徴とする請求項12に記載の生体電極組成物。
【請求項14】
更に(D)成分として有機溶剤を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の生体電極組成物。
【請求項15】
導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極であって、前記生体接触層が、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の生体電極組成物の硬化物であることを特徴とする生体電極。
【請求項16】
前記導電性基材が、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素、及び導電性ポリマーから選ばれる1種以上を含むものであることを特徴とする請求項15に記載の生体電極。
【請求項17】
導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極の製造方法であって、前記導電性基材上に、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の生体電極組成物を塗布し、硬化させることで前記生体接触層を形成することを特徴とする生体電極の製造方法。
【請求項18】
前記導電性基材として、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素、及び導電性ポリマーから選ばれる1種以上を含むものを用いることを特徴とする請求項17に記載の生体電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電極、及びその製造方法、並びに生体電極に好適に用いられる生体電極組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)の普及と共にウェアラブルデバイスの開発が進んでいる。インターネットに接続できる時計や眼鏡がその代表例である。また、医療分野やスポーツ分野においても、体の状態を常時モニタリングできるウェアラブルデバイスが必要とされており、今後の成長分野である。
【0003】
医療分野では、例えば電気信号によって心臓の動きを感知する心電図測定のように、微弱電流のセンシングによって体の臓器の状態をモニタリングするウェアラブルデバイスが検討されている。心電図の測定では、導電性ペーストを塗った電極を体に装着して測定を行うが、これは1回だけの短時間の測定である。これに対し、上記のような医療用のウェアラブルデバイスの開発が目指すのは、数週間連続して常時健康状態をモニターするデバイスの開発である。従って、医療用ウェアラブルデバイスに使用される生体電極には、長時間使用した場合にも導電性の変化がないことや肌アレルギーがないことが求められる。また、これらに加えて、軽量であること、低コストで製造できることも求められている。
【0004】
医療用ウェアラブルデバイスとしては、体に貼り付けるタイプと、衣服に組み込むタイプがあり、体に貼り付けるタイプとしては、上記の導電性ペーストの材料である水と電解質を含む水溶性ゲルを用いた生体電極が提案されている(特許文献1)。水溶性ゲルは、水を保持するための水溶性ポリマー中に、電解質としてナトリウム、カリウム、カルシウムを含んでおり、肌からのイオン濃度の変化を電気に変換する。一方、衣服に組み込むタイプとしては、PEDOT-PSS(Poly-3,4-ethylenedioxythiophene-Polystyrenesulfonate)のような導電性ポリマーや銀ペーストを繊維に組み込んだ布を電極に使う方法が提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、上記の水と電解質を含む水溶性ゲルを使用した場合には、乾燥によって水がなくなると導電性がなくなってしまうという問題があった。一方、銅等のイオン化傾向の高い金属を使用した場合には、人によっては肌アレルギーを引き起こすリスクがあるという問題があり、PEDOT-PSSのような導電性ポリマーを使用した場合にも、導電性ポリマーの酸性が強いために肌アレルギーを引き起こすリスクがあるという問題、洗濯中に繊維から導電性ポリマーが剥がれ落ちる問題があった。
【0006】
また、優れた導電性を有することから、金属ナノワイヤー、カーボンブラック、及びカーボンナノチューブ等を電極材料として使用することも検討されている(特許文献3、4、5)。金属ナノワイヤーはワイヤー同士の接触確率が高くなるため、少ない添加量で通電することができる。しかしながら、金属ナノワイヤーは先端が尖った細い材料であるため、肌アレルギー発生の原因となる。このように、そのもの自体がアレルギー反応を起こさなくても、材料の形状や刺激性によって生体適合性が悪化する場合があり、導電性と生体適合性を両立させることは困難であった。
【0007】
金属膜は導電性が非常に高いために優れた生体電極として機能すると思われるが、必ずしもそうではない。心臓の鼓動によって肌から放出されるのは微弱電流だけではなく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンである。このためイオンの濃度変化を電流に変える必要があるが、イオン化しづらい貴金属は肌からのイオンを電流に変える効率が悪い。よって貴金属を使った生体電極はインピーダンスが高く、肌との通電は高抵抗である。
【0008】
一方で、イオン性液体を添加したバッテリーが検討されている(特許文献6)。イオン性液体は熱的、化学的安定性が高く、導電性に優れる特徴を有しており、バッテリー用途への応用が広がっている。しかしながら、特許文献6に示されるような分子量が小さなイオン性液体は水に溶解するため、これが添加された生体電極を用いると、イオン性液体が肌からの汗によって抽出されることから、導電性が低下するだけでなく、これが肌に浸透して肌荒れの原因にもなる。
【0009】
また、ポリマー型スルホンイミドのリチウム塩を用いたバッテリーが検討されている(非特許文献1)。しかしながら、リチウムはイオン移動性が高いためにバッテリーへ応用されているが、これは生体適合性を有する材料ではない。更には、シリコーンにペンダントされたフルオロスルホン酸のリチウム塩も検討されている(非特許文献2)。
【0010】
ポリエーテルはイオンのホッピングにより高いイオン導電性が発現することが良く知られている。更にイオンバッテリーのイオン導電性を高めるために、シアノ基とエーテル基の両方を有するポリマーをバッテリーの電解質に用いることが提案されている(特許文献7、8)。
【0011】
生体電極は肌から離れると体からの情報を得ることができなくなる。更に、接触面積が変化しただけでも通電する電気量に変動が生じ、心電図(電気信号)のベースラインが変動する。従って、身体から安定した電気信号を得るために、生体電極には、常に肌に接触しており、その接触面積も変化しないことが必要である。そのためには、生体電極が粘着性を有していることが好ましい。また、肌の伸縮や屈曲変化に追随できる伸縮性やフレキシブル性も必要である。
【0012】
肌に接触する部分が塩化銀で、デバイスへの導通部分に銀を積層した生体電極が検討されている。固体の塩化銀は肌への粘着力が無く伸縮性もないため、特に人体が動いた時に生体信号の採取能力が低下する。そのため、塩化銀と銀の積層膜は、肌との間に水溶性ゲルを積層した生体電極として用いられている。この場合、前述のゲルの乾燥による劣化が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2013/039151号
【特許文献2】特開2015-100673号公報
【特許文献3】特開平05-095924号公報
【特許文献4】特開2003-225217号公報
【特許文献5】特開2015-019806号公報
【特許文献6】特表2004-527902号公報
【特許文献7】特開2006-307012号公報
【特許文献8】特開2008-277218号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J.Mater.Chem.A,2016,4,p10038-10069
【非特許文献2】J. of the Electrochemical Society, 150(8) A1090-A1094 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがなく、柔らかく伸縮性と粘着性に優れる生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物、該生体電極組成物で生体接触層を形成した生体電極、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明では、(A)成分として、イオン性の高分子材料を含有する生体電極組成物であって、
前記(A)成分が、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位aと、シアノ基を有する繰り返し単位bとを有するポリマーを含有するものである生体電極組成物を提供する。
【0017】
このような生体電極組成物であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがなく、柔らかく伸縮性と粘着性に優れる生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物となる。
【0018】
また、本発明では、前記繰り返し単位aが下記一般式(1)-1から(1)-4で示される構造を有するものであることが好ましい。
【化1】
(一般式(1)-1中、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、酸素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rf及びRfが酸素原子である場合、Rf及びRfは、1つの炭素原子に結合してカルボニル基を形成する1つの酸素原子であり、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Rf~Rfのうち1つ以上はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。一般式(1)-2、一般式(1)-3及び一般式(1)-4中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ、フッ素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。一般式(1)-1~一般式(1)-4中、Mは、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。一般式(1)-2中、mは、1~4の整数である。)
【0019】
繰り返し単位aがこのような構造を有するものであれば、導電性及び生体適合性により優れた生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0020】
また、本発明では、前記繰り返し単位aが、下記一般式(2)に記載の繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上を有するものであることが好ましい。
【化2】
(一般式(2)中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、R12、及びR14は、それぞれ独立に単結合、又は炭素数1~13の直鎖状、分岐状若しくは環状の炭化水素基である。前記炭化水素基は、エステル基、エーテル基、又はこれらの両方を有していてもよい。Rは、炭素数1~4の直鎖状、又は分岐状のアルキレン基であり、R中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X、X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、Xは、単結合、エーテル基、及びエステル基のいずれかである。Yは酸素原子、又は-NR19-基であり、R19は水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、Rとともに環を形成してもよい。Rf’及びRf’は、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。mは1~4の整数である。a1、a2、a3、a4、a5、a6、及びa7は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0≦a5<1.0、0≦a6<1.0、0≦a7<1.0であり、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7<1.0である。Mはアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。)
【0021】
繰り返し単位aがこのような構造を有するものであれば、導電性及び生体適合性に更に優れた生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0022】
この時、前記一般式(2)に記載の前記繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上に加えて、下記一般式(4)に記載のシアノ基を有する繰り返し単位b1を共重合したポリマーを含有するものであることが好ましい。
【化3】
(一般式(4)中、R20は、水素原子、メチル基、又は炭素数1~6のアルキルエステル基であり、Xは単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、R21は単結合、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基であり、前記アルキレン基はヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、カーボネート基、アミド基、又は尿素結合を有していてもよい。nは1又は2、0<b1<1.0である。)
【0023】
繰り返し単位b1がこのような構造を有するものであれば、分極性をさらに向上させることができる。
【0024】
また、本発明では、前記(A)成分が、前記アンモニウム塩を構成するアンモニウムイオンとして、下記一般式(3)で示されるアンモニウムイオンを含有するものであることが好ましい。
【化4】
(一般式(3)中、R101d、R101e、R101f、及びR101gはそれぞれ、水素原子、炭素数1~15の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルケニル基又はアルキニル基、又は炭素数4~20の芳香族基であり、エーテル基、カルボニル基、エステル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、ハロゲン原子、及び硫黄原子から選ばれる1種以上を有していてもよい。R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fはこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fは炭素数3~10のアルキレン基であるか、又は一般式(3)中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。)
【0025】
このようなアンモニウムイオンを含有する高分子化合物(A)を含むものであれば、導電性及び生体適合性に更に優れた生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0026】
また、本発明では、更に(B)成分として、樹脂を含有するものであることが好ましい。
【0027】
このような生体電極組成物であれば、(A)成分と相溶して塩の溶出を防ぐことができる。
【0028】
この時、前記(B)成分が、シリコーン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、及びウレタン樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0029】
生体接触層に付与しようとする特性に合わせて、生体電極組成物に含ませる(B)成分を選択することができる。
【0030】
この時、前記(B)成分が、粘着性を有しているものであることが好ましい。
【0031】
このような(B)成分であれば、生体電極組成物の粘着性をさらに向上させることができる。
【0032】
この時、前記(B)成分が、RSiO(4-x)/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の一価炭化水素基、xは2.5~3.5の範囲である)及びSiO4/2単位を有するシリコーン樹脂を含有するものであることが好ましい。
【0033】
このような(B)成分は、(A)成分と相溶して塩の溶出を防ぐことができるとともに、生体電極組成物により高い粘着性を付与できる。
【0034】
また、本発明では、更に(C)成分として、カーボン材料及び/又は金属粉を含有するものであることが好ましい。
【0035】
カーボン材料及び金属粉は、導電性向上剤として働き、生体電極組成物から形成される生体接触層に、より優れた導電性を付与できる。
【0036】
この時、前記カーボン材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又はその両方であることが好ましい。
【0037】
このようなカーボン材料を含ませることにより、より高い導電性を提供できる。
【0038】
この時、前記金属粉が、金、銀、白金、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、及びインジウムから選ばれる1種以上の金属粉であることが好ましい。
【0039】
このように、本発明の生体電極組成物では、様々な金属粉を用いることができる。
【0040】
この時、前記金属粉が、銀粉であることが好ましい。
【0041】
本発明の生体電極組成物では、導電性、価格、生体適合性の観点から総合的に銀粉が最も好ましい。
【0042】
また、本発明では、更に(D)成分として有機溶剤を含有するものであることが好ましい。
【0043】
有機溶剤を含む生体電極組成物は、高い塗布性を示すことができる。
【0044】
また、本発明では、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極であって、前記生体接触層が、上記に記載の生体電極組成物の硬化物である生体電極を提供する。
【0045】
本発明の生体電極は、上述の生体電極組成物の硬化物を含む生体接触層を有するので、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがなく、柔らかく伸縮性と粘着性に優れる。
【0046】
この時、前記導電性基材が、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素、及び導電性ポリマーから選ばれる1種以上を含むものであることが好ましい。
【0047】
このように、本発明の生体電極では、様々な導電性基材を用いることができる。
【0048】
また、本発明では、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極の製造方法であって、前記導電性基材上に、上記に記載の生体電極組成物を塗布し、硬化させることで前記生体接触層を形成する生体電極の製造方法を提供する。
【0049】
このような製造方法によれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがなく、柔らかく伸縮性と粘着性に優れる生体電極を、低コストで容易に製造できる。
【0050】
この時、前記導電性基材として、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素、及び導電性ポリマーから選ばれる1種以上を含むものを用いることが好ましい。
【0051】
このように、本発明の生体電極の製造方法では、様々な導電性基材を用いることができる。
【発明の効果】
【0052】
以上のように、本発明の生体電極組成物、該生体電極組成物で生体接触層を形成した生体電極、及びその製造方法であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、長期間肌に貼り付けて入浴などで水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがなく生体信号を安定的に採取でき、柔らかく伸縮性と粘着性に優れ、肌から剥がした後も肌上に残渣がない生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物、該生体電極組成物で生体接触層を形成した生体電極、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の生体電極の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の生体電極を生体に装着した場合の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施例で作製した生体電極の印刷後の概略図である。
図4】本発明の実施例で作製した生体電極の1つを切り取って、粘着層と電線を取り付けた概略図である。
図5】本発明の実施例における生体信号の測定の際の、人体に対する電極及びアースの貼り付け場所を示す図である。
図6】本発明の実施例の生体電極を用いて得られる1つの心電図波形である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
上述のように、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、柔らかく伸縮性と粘着力があり、長期間肌に貼り付けて入浴などで水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物、該生体電極組成物で生体接触層を形成した生体電極、及びその製造方法の開発が求められていた。
【0055】
心臓の鼓動に連動して肌表面からナトリウム、カリウム、カルシウムイオンが放出される。生体電極は、肌から放出されたイオンの増減を電気信号に変換する必要がある。そのために、イオンの増減を伝達するためのイオン導電性に優れた材料が必要である。
【0056】
肌に貼り付けて安定的に生体信号を得るためには、生体電極膜として柔らかさや伸縮性、粘着性が必要である。表皮の角質は日々再生され、貼り付けた生体電極膜と皮膚との間に古い角質(垢)が蓄積される。古い角質は表皮から剥がれやすくなっているため、生体電極が剥がれることによって生体信号が採取できなくなる。このため、生体電極として、長期間貼り付けても粘着性が低下しないことが必要である。一方、長時間貼り付けて剥がした後に肌上に残渣があると発疹や肌荒れの原因となりかねない。
【0057】
中和塩を形成する酸の酸性度が高いとイオンが強く分極し、イオン導電性が向上する。リチウムイオン電池として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸やトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド酸のリチウム塩が高いイオン導電性を示すのはこのためである。一方、中和塩になる前の酸の状態で酸強度が高くなればなるほど、この塩は生体刺激性が強いという問題がある。つまり、イオン導電性と生体刺激性はトレードオフの関係である。しかしながら、生体電極に適用する塩では、高イオン導電特性と低生体刺激性が両立されなければならない。
【0058】
イオン化合物の分子量が大きくなればなるほど肌への浸透性が低下し、肌への刺激性が低下する特性がある。このことから、イオン化合物は高分子量のポリマー型が好ましい。そこで、本発明者らは、このイオン化合物を重合性二重結合を有する形態にしてポリマーとして重合することによって肌への刺激性の問題を回避した。
【0059】
イオンをポリマー化することによって肌への刺激性を回避することができたが、イオン導電性が低下するという問題が生じた。イオン導電性を上げるためには、ポリマー自身の分極を上げることが効果的である。分極性を上げるために、前述のバッテリー関連の公開特許に記載によればシアノ基を含有するポリマーが効果的であり、生体電極のイオンポリマーにシアノ基を導入する本発明の発想に至った。
【0060】
即ち、本発明は、(A)成分として、イオン性の高分子材料を含有する生体電極組成物であって、
前記(A)成分が、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位aと、シアノ基を有する繰り返し単位bとを有するポリマーを含有するものである生体電極組成物である。
【0061】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
<生体電極組成物>
本発明の生体電極組成物は、(A)成分として、イオン性の高分子材料を含有するものである。この他に(B)成分として、樹脂などを含有していてもよい。以下、各成分について、更に詳細に説明する。
【0063】
[(A)イオン性の高分子材料]
本発明の生体電極組成物は、(A)成分として、イオン性の高分子材料を含有することを特徴とする。前記(A)成分は、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位aと、シアノ基を有する繰り返し単位bとを有するポリマーを含有するものである。
【0064】
前記繰り返し単位aは、下記一般式(1)-1から(1)-4で示される構造を有するものであることが好ましい。
【化5】
(一般式(1)-1中、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、酸素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rf及びRfが酸素原子である場合、Rf及びRfは、1つの炭素原子に結合してカルボニル基を形成する1つの酸素原子であり、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Rf~Rfのうち1つ以上はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。一般式(1)-2、一般式(1)-3及び一般式(1)-4中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ、フッ素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。一般式(1)-1~一般式(1)-4中、Mは、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。一般式(1)-2中、mは、1~4の整数である。)
【0065】
上記繰り返し単位aが下記一般式(2)に記載の繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上を有するものであることが好ましい。
【化6】
(一般式(2)中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、R12、及びR14は、それぞれ独立に単結合、又は炭素数1~13の直鎖状、分岐状若しくは環状の炭化水素基である。前記炭化水素基は、エステル基、エーテル基、又はこれらの両方を有していてもよい。Rは、炭素数1~4の直鎖状、又は分岐状のアルキレン基であり、R中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X、X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、Xは、単結合、エーテル基、及びエステル基のいずれかである。Yは酸素原子、又は-NR19-基であり、R19は水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、Rとともに環を形成してもよい。Rf’及びRf’は、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。mは1~4の整数である。a1、a2、a3、a4、a5、a6、及びa7は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0≦a5<1.0、0≦a6<1.0、0≦a7<1.0であり、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7<1.0である。Mはアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。)
【0066】
上記一般式(2)で示される繰り返し単位a1~a7のうち、繰り返し単位a1~a5を得るためのフルオロスルホン酸塩モノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【0067】
【化7】
【0068】
【化8】
【0069】
【化9】
【0070】
【化10】
【0071】
【化11】
【0072】
【化12】
【0073】
【化13】
【0074】
【化14】
【0075】
【化15】
【0076】
【化16】
【0077】
【化17】
【0078】
【化18】
【0079】
【化19】
【0080】
【化20】
【0081】
【化21】
【0082】
【化22】
【0083】
【化23】
【0084】
【化24】
【0085】
【化25】
【0086】
【化26】
【0087】
【化27】
【0088】
上記一般式(2)で示される繰り返し単位a6を得るためのフルオロスルホンイミド塩モノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【0089】
【化28】
【0090】
【化29】
【0091】
【化30】
【0092】
【化31】
【0093】
【化32】
【0094】
上記一般式(2)で示される繰り返し単位a7を得るためのN-カルボニルフルオロスルホンアミド塩モノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【0095】
【化33】
【0096】
【化34】
(式中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は前述の通り。)
【0097】
また、(A)成分は、前記アンモニウム塩を構成するアンモニウムイオンとして、下記一般式(3)で示されるアンモニウムイオン(アンモニウムカチオン)を含有するものであることが好ましい。
【化35】
(一般式(3)中、R101d、R101e、R101f、及びR101gはそれぞれ、水素原子、炭素数1~15の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルケニル基又はアルキニル基、又は炭素数4~20の芳香族基であり、エーテル基、カルボニル基、エステル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、ハロゲン原子、及び硫黄原子から選ばれる1種以上を有していてもよい。R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fはこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fは炭素数3~10のアルキレン基であるか、又は一般式(3)中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。)
【0098】
上記一般式(3)で示されるアンモニウムイオンとして、具体的には、以下のものを例示することができる。
【0099】
【化36】
【0100】
【化37】
【0101】
【化38】
【0102】
【化39】
【0103】
【化40】
【0104】
【化41】
【0105】
【化42】
【0106】
【化43】
【0107】
【化44】
【0108】
【化45】
【0109】
【化46】
【0110】
【化47】
【0111】
【化48】
【0112】
【化49】
【0113】
【化50】
【0114】
【化51】
【0115】
上記一般式(3)で示されるアンモニウムイオンとしては、3級又は4級のアンモニウムイオンが特に好ましい。
【0116】
(繰り返し単位b1)
本発明の生体電極組成物としては、前記繰り返し単位aに加えて、シアノ基を有する繰り返し単位bとを有するポリマーを含有するものである。繰り返し単位bとしては、下記一般式(4)に記載のシアノ基を有する繰り返し単位b1が好ましい。
【化52】
(一般式(4)中、R20は、水素原子、メチル基、又は炭素数1~6のアルキルエステル基であり、Xは単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、R21は単結合、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基であり、前記アルキレン基はヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、カーボネート基、アミド基、又は尿素結合を有していてもよい。nは1又は2、0<b1<1.0である。)
【0117】
一般式(4)に記載の繰り返し単位b1を得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することが出来る。
【0118】
【化53】
【0119】
【化54】
【0120】
【化55】
【0121】
【化56】
(式中、R20は前述の通り。)
【0122】
(繰り返し単位c)
本発明の生体電極組成物の(A)成分には、上記の繰り返し単位a1~a7、b1に加えて、導電性を向上させるためにグライム鎖を有する繰り返し単位cを共重合することも出来る。グライム鎖を有する繰り返し単位cを得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することが出来る。グライム鎖を有する繰り返し単位cを共重合することによって、肌から放出されるイオンのドライ電極膜内での移動を助長し、ドライ電極の感度を高めることが出来る。
【0123】
【化57】
【0124】
【化58】
【0125】
【化59】
【0126】
【化60】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基である。)
【0127】
(繰り返し単位d)
本発明の生体電極組成物の(A)成分には、上記の繰り返し単位a1~a7、b1、cに加えて、導電性を向上させるために、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アンモニウム塩、ベタイン、アミド基、ピロリドン、ラクトン環、ラクタム環、スルトン環、スルホン酸のナトリウム塩、スルホン酸のカリウム塩を有する親水性の繰り返し単位dを共重合することも出来る。親水性の繰り返し単位dを得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することが出来る。これらの親水性基を含有する繰り返し単位dを共重合することによって、肌から放出されるイオンの感受性を高め、ドライ電極の感度を高めることが出来る。
【0128】
【化61】
【0129】
【化62】
【0130】
【化63】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基である。)
【0131】
(繰り返し単位e)
本発明の生体電極組成物の(A)成分は、上記の繰り返し単位a1~a7、b1、c、dに加えて、粘着能を付与させる繰り返し単位eを有することが出来る。繰り返し単位eを得るためのモノマーは、具体的には下記のものを例示することができる。
【0132】
【化64】
【0133】
【化65】
【0134】
【化66】
【0135】
【化67】
【0136】
【化68】
【0137】
(繰り返し単位f)
本発明の生体電極組成物の(A)成分は、上記の繰り返し単位a1~a7、b1、c、d、eに加えて、架橋性の繰り返し単位fを共重合することも出来る。架橋性の繰り返し単位fはオキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位を挙げることが出来る。オキシラン環又はオキセタン環を有する架橋性の繰り返し単位fを得るためのモノマーは、具体的には下記に挙げることができる。
【0138】
【化69】
【0139】
【化70】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基である。)
【0140】
(繰り返し単位g)
本発明の生体電極組成物の(A)成分は、上記のa1~a7、b1、c~fから選ばれる繰り返し単位に加えて、珪素を有する繰り返し単位gを有することが出来る。具体的には、以下のものを例示することができる。
【0141】
【化71】
【0142】
【化72】
【0143】
(繰り返し単位h)
本発明の生体電極組成物の(A)成分は、上記のa1~a7、b1、c~gから選ばれる繰り返し単位に加えて、フッ素を有する繰り返し単位hを有することが出来る。フッ素を有する繰り返し単位hを得るためのモノマーは、具体的には、以下のものを例示することができる。
【0144】
【化73】
【0145】
【化74】
【0146】
【化75】
【0147】
【化76】
【0148】
【化77】
【0149】
【化78】
【0150】
【化79】
(式中、Rは水素原子、又はメチル基である。)
【0151】
(A)成分のイオン性の高分子材料を合成する方法の1つとして、繰り返し単位a1~a7、b1、c、d、e、f、g、hを与えるモノマーのうち所望のモノマーを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱重合し、共重合体のイオン性の高分子材料を得る方法を挙げることができる。
【0152】
重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。ラジカル重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示できる。加熱温度は、好ましくは50~80℃であり、反応時間は、好ましくは2~100時間、より好ましくは5~20時間である。
【0153】
ここで、(A)成分のイオン性の高分子材料中における繰り返し単位a1~a7、b1、c、d、e、f、g、hの割合は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0≦a5<1.0、0≦a6<1.0、0≦a7<1.0、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7<1.0、0<b1<1.0、0≦c<1.0、0≦d<1.0、0≦e<0.9、0≦f<0.9、0≦g<0.9、0≦h<0.9、好ましくは0≦a1≦0.9、0≦a2≦0.9、0≦a3≦0.9、0≦a4≦0.9、0≦a5≦0.9、0≦a6≦0.9、0≦a7≦0.9、0.01≦a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7≦0.99、0.01≦b1≦0.9、0≦c≦0.8、0≦d≦0.8、0≦e<0.8、0≦f<0.8、0≦g<0.8、0≦h<0.8、より好ましくは0≦a1≦0.8、0≦a2≦0.8、0≦a3≦0.8、0≦a4≦0.8、0≦a5≦0.8、0≦a6≦0.8、0≦a7≦0.8、0.02≦a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7≦0.95、0.05≦b1≦0.8、0≦c≦0.7、0≦d≦0.5、0≦e<0.3、0≦f<0.7、0≦g<0.7、0≦h<0.7である。
【0154】
なお、例えば、a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7+b1+c+d+e+f+g+h=1とは、繰り返し単位a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、b1、c、d、e、f、g、hを含む高分子化合物において、繰り返し単位a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、b1、c、d,e、f、g、hの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示し、a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7+b1+c+d+e+f+g+h<1とは、繰り返し単位a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、b1、c、d、e、f、g、hの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%未満でa1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、b1、c、d、e、f、g、h以外に他の繰り返し単位を有していることを示す。
【0155】
(A)成分のイオン性の高分子材料の分子量は、重量平均分子量として500以上が好ましく、より好ましくは1,000以上、1,000,000以下であり、更に好ましくは2,000以上、500,000以下である。また、重合後に(A)成分のイオン性の高分子材料に組み込まれていないイオン性モノマー(残存モノマー)が少量であれば、生体適合試験でこれが肌に染みこんでアレルギーを引き起こす恐れがなくなるため、残存モノマーの量は減らすのが好ましい。残存モノマーの量は、(A)成分のイオン性の高分子材料全体100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましい。また、(A)成分は、1種を単独で使用してもよいし、分子量や分散度、重合モノマーの異なる2種以上を混合で使用してもよい。
【0156】
(A)成分のイオン性の高分子材料としては、下記一般式(2)’に記載の前記繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上に加えて、シアノ基を有する繰り返し単位b1を共重合したポリマーを含有するものであることが好ましい。
【0157】
【化80】
(式中、R1~14、R20、R21、X1~8、a1~a7、b1、Rf’、Rf’、m、n、Mは上記と同じである。)
【0158】
本発明の生体電極組成物において、(A)成分の配合量は、後述する(B)成分100質量部に対して0.1~300質量部とすることが好ましく、1~200質量部とすることがより好ましい。また、(A)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合で使用してもよい。
【0159】
[(B)樹脂]
本発明の生体電極組成物には、更に(B)成分として、樹脂を含有することができる。本発明の生体電極組成物に配合される(B)樹脂は、上記の(A)イオン性の高分子材料(塩)と相溶して塩の溶出を防ぎ、金属粉、炭素粉、珪素粉、チタン酸リチウム粉等の導電性向上剤を保持し、粘着性を更に向上させるための成分である。(A)のイオン性の高分子材料が十分な粘着性を有している場合は、(B)樹脂は必ずしも必要ではない。なお、樹脂は、上述の(A)成分以外の樹脂であればよく、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂のいずれか、又はこれらの両方であることが好ましく、特には、シリコーン系、アクリル系、及びウレタン系の樹脂、即ちシリコーン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、及びウレタン樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。また、粘着性を有していることが好ましく、RSiO(4-x)/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の一価炭化水素基、xは2.5~3.5の範囲である)及びSiO4/2単位を有するシリコーン樹脂を含有することが好ましい。
【0160】
粘着性のシリコーン系の樹脂としては、付加反応硬化型又はラジカル架橋反応硬化型のものが挙げられる。付加反応硬化型としては、例えば、特開2015-193803号公報に記載の、アルケニル基を有するジオルガノシロキサン、RSiO1/2及びSiO4/2単位を有するMQレジン、SiH基を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金触媒、付加反応制御剤、及び有機溶剤を含有するものを用いることができる。また、ラジカル架橋反応硬化型としては、例えば、特開2015-193803号公報に記載の、アルケニル基を有していてもいなくてもよいジオルガノポリシロキサン、RSiO1/2及びSiO4/2単位を有するMQレジン、有機過酸化物、及び有機溶剤を含有するものを用いることができる。ここでRは炭素数1~10の置換又は非置換の一価の炭化水素基である。
【0161】
また、ポリマー末端や側鎖にシラノールを有するポリシロキサンと、MQレジンを縮合反応させて形成したポリシロキサン・レジン一体型化合物を用いることもできる。MQレジンはシラノールを多く含有するためにこれを添加することによって粘着力が向上するが、架橋性がないためにポリシロキサンと分子的に結合していない。上記のようにポリシロキサンとレジンを一体型とすることによって、粘着力を増大させることができる。
【0162】
また、シリコーン系の樹脂には、アミノ基、オキシラン基、オキセタン基、ポリエーテル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、メタクリル基、アクリル基、フェノール基、シラノール基、カルボン酸無水物基、アリール基、アラルキル基、アミド基、エステル基、ラクトン環から選ばれる基を有する変性シロキサンを添加することもできる。変性シロキサンを添加することによって、(A)成分のイオン性の高分子材料中での分散性が向上する。変性シロキサンはシロキサンの片末端、両末端、側鎖のいずれが変性されたものでも構わない。
【0163】
粘着性のアクリル系の樹脂としては、例えば、特開2016-011338号公報に記載の、親水性(メタ)アクリル酸エステル、長鎖疎水性(メタ)アクリル酸エステルを繰り返し単位として有するものを用いることができる。場合によっては、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルやシロキサン結合を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合してもよい。
【0164】
粘着性のウレタン系の樹脂としては、例えば、特開2016-065238号公報に記載の、ウレタン結合と、ポリエーテルやポリエステル結合、ポリカーボネート結合、シロキサン結合を有するものを用いることができる。
【0165】
また、生体接触層から(A)成分が脱落することによる導電性の低下を防止するために、本発明の生体電極組成物において、(B)樹脂は上述の(A)成分との相溶性が高いものであることが好ましい。また、導電性基材からの生体接触層の剥離を防止するために、本発明の生体電極組成物において、(B)樹脂は導電性基材に対する接着性が高いものであることが好ましい。樹脂を、導電性基材や塩との相溶性が高いものとするためには、極性が高い樹脂を用いることが効果的である。このような樹脂としては、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、及びチオール基から選ばれる1つ以上を有する樹脂、あるいはポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリチオウレタン樹脂等が挙げられる。また、一方で、生体接触層は生体に接触するため、生体からの汗の影響を受けやすい。従って、本発明の生体電極組成物において、(B)樹脂は撥水性が高く、加水分解しづらいものであることが好ましい。樹脂を、撥水性が高く、加水分解しづらいものとするためには、珪素を含有する樹脂を用いることが効果的である。
【0166】
珪素原子を含有するポリアクリル樹脂としては、シリコーンを主鎖に有するポリマーと珪素原子を側鎖に有するポリマーとがあるが、どちらも好適に用いることができる。シリコーンを主鎖に有するポリマーとしては、(メタ)アクリルプロピル基を有するシロキサンあるいはシルセスキオキサン等を用いることができる。この場合は、光ラジカル発生剤を添加することで(メタ)アクリル部分を重合させて硬化させることができる。
【0167】
珪素原子を含有するポリアミド樹脂としては、例えば、特開2011-079946号公報、米国特許5981680号公報に記載のポリアミドシリコーン樹脂等を好適に用いることができる。このようなポリアミドシリコーン樹脂は、例えば、両末端にアミノ基を有するシリコーン又は両末端にアミノ基を有する非シリコーン化合物と、両末端にカルボキシル基を有する非シリコーン又は両末端にカルボキシル基を有するシリコーンを組み合わせて合成することができる。
【0168】
また、カルボン酸無水物とアミンを反応させて得られる、環化する前のポリアミド酸を用いてもよい。ポリアミド酸のカルボキシル基の架橋には、エポキシ系やオキセタン系の架橋剤を用いてもよいし、カルボキシル基とヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエステル化反応を行って、(メタ)アクリレート部分の光ラジカル架橋を行ってもよい。
【0169】
珪素原子を含有するポリイミド樹脂としては、例えば、特開2002-332305号公報に記載のポリイミドシリコーン樹脂等を好適に用いることができる。ポリイミド樹脂は粘性が非常に高いが、(メタ)アクリル系モノマーを溶剤かつ架橋剤として配合することによって低粘性にすることができる。
【0170】
珪素原子を含有するポリウレタン樹脂としては、ポリウレタンシリコーン樹脂を挙げることができ、このようなポリウレタンシリコーン樹脂では、両末端にイソシアネート基を有する化合物と末端にヒドロキシ基を有する化合物をブレンドして加熱することによってウレタン結合による架橋を行うことができる。なお、この場合、両末端にイソシアネート基を有する化合物か、末端にヒドロキシ基を有する化合物のいずれかあるいは両方に珪素原子(シロキサン結合)を含有する必要がある。あるいは、特開2005-320418号公報に記載されるように、ポリシロキサンにウレタン(メタ)アクリレートモノマーをブレンドして光架橋させることもできる。また、シロキサン結合とウレタン結合の両方を有し、末端に(メタ)アクリレート基を有するポリマーを光架橋させることもできる。特に、特開2018-123304号公報、同2019-070109号公報記載の側鎖にシリコーン鎖が付き主鎖がポリウレタンの材料が高強度で高伸縮な特性を有しているため好ましい。
【0171】
珪素原子を含有するポリチオウレタン樹脂は、チオール基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物の反応によって得ることができ、これらのうちいずれかが珪素原子を含有していればよい。また、末端に(メタ)アクリレート基を有していれば、光硬化させることも可能である。
【0172】
シリコーン系の樹脂において、上述のアルケニル基を有するジオルガノシロキサン、RSiO1/2及びSiO4/2単位を有するMQレジン、SiH基を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに加えて、アミノ基、オキシラン基、オキセタン基、ポリエーテル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、メタクリル基、アクリル基、フェノール基、シラノール基、カルボン酸無水物基、アリール基、アラルキル基、アミド基、エステル基、ラクトン環から選ばれる基を有する変性シロキサンを添加することによって上述の塩との相溶性が高まる。
【0173】
アルケニル基を有するジオルガノシロキサンと、SiH基を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、白金触媒による付加反応によって架橋させることができる。
【0174】
白金触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体等の白金系触媒、ロジウム錯体及びルテニウム錯体等の白金族金属系触媒などが挙げられる。また、これらの触媒をアルコール系、炭化水素系、シロキサン系溶剤に溶解・分散させたものを用いてもよい。
【0175】
なお、白金触媒の添加量は、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して5~2,000ppm、特には10~500ppmの範囲とすることが好ましい。
【0176】
本発明の生体電極組成物において、(B)成分の配合量は、(A)成分のイオン性の高分子材料100質量部に対して0~2000質量部とすることが好ましく、10~1000質量部とすることがより好ましい。また、(A)成分、(B)成分はそれぞれ、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合で使用してもよい。
【0177】
また、付加硬化型のシリコーン樹脂を用いる場合には、付加反応制御剤を添加してもよい。この付加反応制御剤は、溶液中及び塗膜形成後の加熱硬化前の低温環境下で、白金触媒が作用しないようにするためのクエンチャーとして添加するものである。具体的には、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0178】
付加反応制御剤の添加量は、(B)成分の樹脂100質量部に対して0~10質量部、特に0.05~3質量部の範囲とすることが好ましい。
【0179】
(B)成分にラジカル架橋可能な二重結合を有している場合は、ラジカル発生剤の添加が効果的である。ラジカル発生剤としては、光ラジカル発生剤と熱ラジカル発生剤がある。
【0180】
光ラジカル発生剤としては、アセトフェノン、4,4’-ジメトキシベンジル、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、4-ベンゾイル安息香酸、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-ベンゾイル安息香酸メチル、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノンを挙げることができる。
【0181】
熱分解型のラジカル発生剤を添加することによって硬化させることもできる。熱ラジカル発生剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルプロピオンアミジン)塩酸、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、ジメチル-2,2’-アゾビス(イソブチレート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジ-tert-アミルパーオキシド、ジ-n-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等を挙げることができる。
【0182】
なお、ラジカル発生剤の添加量は、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して0.1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0183】
なお、後述のように、生体接触層は生体電極組成物の硬化物である。硬化させることによって、肌と導電性基材の両方に対する生体接触層の接着性が良好なものとなる。なお、硬化手段としては、特に限定されず、一般的な手段を用いることができ、例えば、熱及び光のいずれか、又はその両方、あるいは酸又は塩基触媒による架橋反応等を用いることができる。架橋反応については、例えば、架橋反応ハンドブック 中山雍晴 丸善出版(2013年)第二章p51~p371に記載の方法を適宜選択して行うことができる。
【0184】
[イオン性ポリマー]
本発明の生体電極組成物には、(A)成分以外にイオン性のポリマーを添加することが出来る。イオン性のポリマーの繰り返し単位は上述の一般式(2)に記載のものを使うことが出来る。イオン性のポリマーの添加量は、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して0.1~100質量部の範囲とすることが好ましい。
【0185】
[(C)カーボン材料及び/又は金属粉]
本発明の生体電極組成物は、更に(C)成分として、カーボン材料及び/又は金属粉を含有することができる。
【0186】
[金属粉]
本発明の生体電極組成物には、電子導電性を高めるために、金属粉を添加することもできる。金属粉としては、金、銀、白金、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、及びインジウムから選ばれる1種以上の金属粉を添加することができる。金属粉の添加量は、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0187】
金属粉の種類として導電性の観点では金、銀、白金が好ましく、価格の観点では銀、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロムが好ましい。生体適合性の観点では貴金属が好ましく、これらの観点で総合的には銀が最も好ましい。
【0188】
金属粉の形状としては、球状、円盤状、フレーク状、針状を挙げることが出来るが、フレーク状の粉末を添加したときの導電性が最も高くて好ましい。金属粉のサイズは100μm以下、タップ密度が5g/cm以下、比表面積が0.5m/g以上の、比較的低密度で比表面積が大きいフレークが好ましい。金属粉のサイズは走査型顕微鏡(SEM)を用いて求めた。タップ密度はJIS Z 2512:2012に記載される方法を用いて求めた。比表面積はJIS Z 8830:2013に記載される方法を用いて求めた。
【0189】
[カーボン材料]
導電性向上剤として、カーボン材料を添加することができる。カーボン材料としては、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェン等を挙げることができる。カーボンナノチューブは単層、多層のいずれであってもよく、表面が有機基で修飾されていても構わない。カーボン材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又はその両方であることが好ましい。カーボン材料の添加量は、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0190】
[珪素粉]
本発明の生体電極組成物には、イオン受容の感度を高めるために、珪素粉を添加することが出来る。珪素粉としては、珪素、一酸化珪素、炭化珪素からなる粉体を挙げることが出来る。粉体の粒子径は100μmよりも小さい方が好ましく、より好ましくは1μm以下である。より細かい粒子の方が表面積が大きいために、たくさんのイオンを受け取ることが出来、高感度な生体電極となる。珪素粉の添加量は、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。粉体の粒子径はSEMを用いて求めた。
【0191】
[チタン酸リチウム粉]
本発明の生体電極組成物には、イオン受容の感度を高めるために、チタン酸リチウム粉を添加することが出来る。チタン酸リチウム粉としては、LiTiO、LiTiO、スピネル構造のLiTi12の分子式を挙げることが出来、スピネル構造品が好ましい。又、カーボンと複合化したチタン酸リチウム粒子を用いることも出来る。粉体の粒子径は100μmよりも小さい方が好ましく、より好ましくは1μm以下である。より細かい粒子の方が表面積が大きいために、たくさんのイオンを受け取ることが出来、高感度な生体電極となる。これらは炭素との複合粉であっても良い。チタン酸リチウム粉の添加量は、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0192】
[架橋剤]
本発明の生体電極組成物にはエポキシ系の架橋剤を添加することも出来る。この場合の架橋剤は、エポキシ基やオキセタン基を1分子内に複数有する化合物である。添加量としては、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して1~30質量部である。
【0193】
[架橋触媒]
本発明の生体電極組成物にはエポキシ基やオキセタン基を架橋するための触媒を添加することも出来る。この場合の触媒は、特表2019-503406号公報中、[0027]~[0029]段落に記載されているものを用いることが出来る。添加量としては、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して0.01~10質量部である。
【0194】
[イオン性添加剤]
本発明の生体電極組成物には、イオン導電性を上げるためのイオン性添加剤を添加することが出来る。生体適合性を考慮すると、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、サッカリンナトリウム塩、アセスルファムカリウム、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ベタイン、特開2018-044147号公報、同2018-059050号公報、同2018-059052号公報、同2018-130534号公報の塩を挙げることが出来る。添加量としては、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して0~10質量部である。
【0195】
[(D)有機溶剤]
また、本発明の生体電極組成物には、(D)成分として有機溶剤を添加することができる。有機溶剤としては、具体的には、トルエン、キシレン、クメン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、スチレン、αメチルスチレン、ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、2-エチル-p-キシレン、2-プロピルトルエン、3-プロピルトルエン、4-プロピルトルエン、1,2,3,5-テトラメチルトルエン、1,2,4,5-テトラメチルトルエン、テトラヒドロナフタレン、4-フェニル-1-ブテン、tert-アミルベンゼン、アミルベンゼン、2-tert-ブチルトルエン、3-tert-ブチルトルエン、4-tert-ブチルトルエン、5-イソプロピル-m-キシレン、3-メチルエチルベンゼン、tert-ブチル-3-エチルベンゼン、4-tert-ブチル-o-キシレン、5-tert-ブチル-m-キシレン、tert-ブチル-p-キシレン、1,2-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、1,3,5-トリエチルベンゼン等の芳香族系炭化水素系溶剤、n-ヘプタン、イソヘプタン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、1,6-ヘプタジエン、5-メチル-1-ヘキシン、ノルボルナン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1-メチル-1,4-シクロヘキサジエン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,3-ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1-メチル-1-シクロヘキセン、3-メチル-1-シクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、4-メチル-1-シクロヘキセン、2-メチル-1-ヘキセン、2-メチル-2-ヘキセン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、n-オクタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,4-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,3-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、3-エチル-2-メチルペンタン、3-エチル-3-メチルペンタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、イソプロピルシクロペンタン、2,2-ジメチル-3-ヘキセン、2,4-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-2-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、2-エチル-1-ヘキセン、2-メチル-1-ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、1,7-オクタジエン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチン、4-オクチン、n-ノナン、2,3-ジメチルヘプタン、2,4-ジメチルヘプタン、2,5-ジメチルヘプタン、3,3-ジメチルヘプタン、3,4-ジメチルヘプタン、3,5-ジメチルヘプタン、4-エチルヘプタン、2-メチルオクタン、3-メチルオクタン、4-メチルオクタン、2,2,4,4-テトラメチルペンタン、2,2,4-トリメチルヘキサン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,2-ジメチル-3-ヘプテン、2,3-ジメチル-3-ヘプテン、2,4-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-3-ヘプテン、3,5-ジメチル-3-ヘプテン、2,4,4-トリメチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、1-エチル-2-メチルシクロヘキサン、1-エチル-3-メチルシクロヘキサン、1-エチル-4-メチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチルシクロヘキサン、1,1,4-トリメチルシクロヘキサン、1,2,3-トリメチルシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、ヒドリンダン、1,8-ノナジエン、1-ノニン、2-ノニン、3-ノニン、4-ノニン、1-ノネン、2-ノネン、3-ノネン、4―ノネン、n-デカン、3,3-ジメチルオクタン、3,5-ジメチルオクタン、4,4-ジメチルオクタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、2-メチルノナン、3-メチルノナン、4-メチルノナン、tert-ブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、4-イソプロピル-1-メチルシクロヘキサン、ペンチルシクロペンタン、1,1,3,5-テトラメチルシクロヘキサン、シクロドデカン、1-デセン、2-デセン、3-デセン、4-デセン、5-デセン、1,9-デカジエン、デカヒドロナフタレン、1-デシン、2-デシン、3-デシン、4-デシン、5-デシン、1,5,9-デカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、リモネン、ミルセン、1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエン、α-フェランドレン、ピネン、テルピネン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン、1,4-デカジイン、1,5-デカジイン、1,9-デカジイン、2,8-デカジイン、4,6-デカジイン、n-ウンデカン、アミルシクロヘキサン、1-ウンデセン、1,10-ウンデカジエン、1-ウンデシン、3-ウンデシン、5-ウンデシン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-4-エン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、2-メチルウンデカン、3-メチルウンデカン、4-メチルウンデカン、5-メチルウンデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、1,3-ジメチルアダマンタン、1-エチルアダマンタン、1,5,9-シクロドデカトリエン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチルn-ペンチルケトン等のケトン系溶剤、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、ジ-sec-ペンチルエーテル、ジ-tert-アミルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤などを挙げることができる。
【0196】
なお、有機溶剤の添加量は、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して10~50,000質量部の範囲とすることが好ましい。
【0197】
また、本発明の生体電極組成物には、水を添加することができる。水の添加量は、(A)成分と(B)成分を合わせた樹脂100質量部に対して10~50,000質量部の範囲とすることが好ましい。
【0198】
[その他添加剤]
本発明の生体電極組成物には、シリカ粒子やポリエーテルシリコーン、ポリグリセリンシリコーンを混合することも出来る。シリカ粒子は表面が親水性であり、親水性のイオンポリマーやポリエーテルシリコーンやポリグリセリンシリコーンとのなじみが良く、疎水性のシリコーン粘着剤でのイオンポリマーやポリエーテルシリコーンやポリグリセリンシリコーンのシリコーン粘着剤での分散性を向上させることが出来る。シリカ粒子は乾式、湿式どちらでも好ましく用いることが出来る。
【0199】
[ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物]
本発明の生体電極組成物において、膜の保湿性を向上させて肌から放出されるイオンの感受性とイオン導電性を向上させるために、ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物を添加することも出来る。ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01~100質量部とすることが好ましく、0.5~60質量部とすることがより好ましい。また、ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合で使用してもよい。
【0200】
ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物は、下記一般式(4)’および(5)’で示されるものであることが好ましい。
【化81】
(式中、R’は、それぞれ独立であり、互いに同一であっても異なっていても良く、水素原子または炭素数1~50の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基であり、エーテル基を含有していても良く、一般式(6)’で示されるシリコーン鎖であってもよく、R’は一般式(4)’-1又は一般式(4)’-2で表されるポリグリセリン基構造を有する基であり、R’は、それぞれ独立であり、互いに同一であっても異なっていても良い、前記R’基又は前記R’基であり、R’は、それぞれ独立であり、互いに同一であっても異なっていても良い、前記R’基、前記R’基又は酸素原子である。R’が酸素原子である場合、2つのR’基は結合して1つのエーテル基となって、ケイ素原子とともに環を形成しても良い。a’は同一であっても異なっていても良く0~100であり、b’は0~100であり、a’+b’は0~200である。但し、b’が0の時はR’の少なくとも1つが前記R’基である。R’は炭素数2~10のアルキレン基又は炭素数7~10のアラルキレン基、R’、R’、R’は炭素数2~6のアルキレン基であり、R’はエーテル基であっても良く、c’は0~20、d’は1~20である。)
【0201】
このようなポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物としては、例えば以下を例示することができる。
【0202】
【化82】
【0203】
【化83】
【0204】
【化84】
【0205】
【化85】
【0206】
【化86】
【0207】
【化87】
【0208】
【化88】
【0209】
【化89】
【0210】
【化90】
【0211】
【化91】
(式中、a’、b’、c’及びd’は上記のとおりである)
【0212】
このようなポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物を含むものであれば、より優れた保湿性を示すことができ、その結果、肌から放出されるイオンに対してより優れた感度を示すことができる生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0213】
以上のように、本発明の生体電極組成物であれば、粘着性が高く、肌からはがして再度張り付けても十分な粘着性を有し、肌からの電気信号を効率良くデバイスに伝えることができ(即ち、導電性に優れ)、長期間肌に装着してもアレルギーを起こす恐れがなく(即ち、生体適合性に優れ)、軽量であり、低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない生体電極用の生体接触層を形成することができる生体電極組成物となる。また、カーボン材料を添加することによって一層導電性を向上させることができ、粘着性と伸縮性を有する樹脂と組み合わせることによって特に高粘着力で伸縮性が高い生体電極を製造することができる。更に、添加剤等により肌に対する伸縮性や粘着性を向上させることができ、樹脂の組成や生体接触層の厚さを適宜調節することで、伸縮性や粘着性を調整することもできる。
【0214】
<生体電極>
また、本発明では、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極であって、前記生体接触層が、上述の本発明の生体電極組成物の硬化物である生体電極を提供する。
【0215】
以下、本発明の生体電極について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0216】
図1は、本発明の生体電極の一例を示す概略断面図である。図1の生体電極1は、導電性基材2と該導電性基材2上に形成された生体接触層3とを有するものである。生体接触層3は本発明の生体電極組成物の硬化物からなる。生体接触層3は、例えばイオン性の高分子材料5と、T単位とQ単位を有するシリコーンの複合材料である。生体接触層3は、さらに前記イオン性の高分子材料5と、T単位とQ単位を有するシリコーンの複合材料以外の樹脂6、導電粉末4を含むことができる。以下図1、2を参照して、生体接触層3が、イオン性の高分子材料5と、T単位とQ単位を有するシリコーンの複合材料と、導電粉末4が樹脂6中に分散された層である場合について説明するが、本発明の生体電極はこの態様に限定されない。
【0217】
このような図1の生体電極1を使用する場合には、図2に示されるように、生体接触層3(即ち、イオン性の高分子材料5と、T単位とQ単位を有するシリコーンの複合材料と、導電粉末4が樹脂6中に分散された層)を生体7と接触させ、イオン性の高分子材料5と、T単位とQ単位を有するシリコーンの複合材料と、導電粉末4によって生体7から電気信号を取り出し、これを導電性基材2を介して、センサーデバイス等(不図示)まで伝導させる。このように、本発明の生体電極であれば、上述のイオン性の高分子材料と、T単位とQ単位を有するシリコーンの複合材料によって導電性及び生体適合性を両立でき、粘着性も有しているために肌との接触面積が一定で、肌からの電気信号を安定的に高感度で得ることができる。
【0218】
以下、本発明の生体電極の各構成材料について、更に詳しく説明する。
【0219】
[導電性基材]
本発明の生体電極は、導電性基材を有するものである。この導電性基材は、通常、センサーデバイス等と電気的に接続されており、生体から生体接触層を介して取り出した電気信号をセンサーデバイス等まで伝導させる。
【0220】
導電性基材としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素及び導電ポリマーから選ばれる1種以上を含むものとすることが好ましい。
【0221】
また、導電性基材は、特に限定されず、硬質な導電性基板等であってもよいし、フレキシブル性を有する導電性フィルムや導電性ペーストを表面にコーティングした布地や導電性ポリマーを練り込んだ布地であってもよい。導電性基材は平坦でも凹凸があっても金属線を織ったメッシュ状であってもよく、生体電極の用途等に応じて適宜選択すればよい。
【0222】
[生体接触層]
本発明の生体電極は、導電性基材上に形成された生体接触層を有するものである。この生体接触層は、生体電極を使用する際に、実際に生体と接触する部分であり、導電性及び粘着性を有する。生体接触層は、上述の本発明の生体電極組成物の硬化物であり、即ち、上述の(A)成分と、必要に応じて(B)成分、(C)成分、(D)成分、その他の成分を含有する組成物の硬化物からなる粘着性の樹脂層である。
【0223】
なお、生体接触層の粘着力としては、0.01N/25mm以上20N/25mm以下の範囲が好ましい。粘着力の測定方法は、JIS Z 0237に示される方法が一般的であり、基材としてはSUS(ステンレス鋼)のような金属基板やPET(ポリエチレンテレフタラート)基板を用いることができるが、人の肌を用いて測定することもできる。人の肌の表面エネルギーは、金属や各種プラスチックより低く、テフロン(登録商標)に近い低エネルギーであり、粘着しにくい性質である。
【0224】
生体電極の生体接触層の厚さは、1μm以上5mm以下が好ましく、2μm以上3mm以下がより好ましい。生体接触層が薄くなるほど粘着力は低下するが、フレキシブル性は向上し、軽くなって肌へのなじみが良くなる。粘着性や肌への風合いとの兼ね合いで生体接触層の厚さを選択することができる。
【0225】
また、本発明の生体電極では、従来の生体電極(例えば、特開2004-033468号公報に記載の生体電極)と同様、使用時に生体から生体電極が剥がれるのを防止するために、生体接触層上に別途粘着膜を設けてもよい。別途粘着膜を設ける場合には、アクリル型、ウレタン型、シリコーン型等の粘着膜材料を用いて粘着膜を形成すればよく、特にシリコーン型は酸素透過性が高いためこれを貼り付けたままの皮膚呼吸が可能であり、撥水性も高いため汗による粘着性の低下が少なく、更に、肌への刺激性が低いことから好適である。なお、本発明の生体電極では、上記のように、生体電極組成物に粘着性付与剤を添加したり、生体への粘着性が良好な樹脂を用いたりすることで、生体からの剥がれを防止することができるため、上記の別途設ける粘着膜は必ずしも設ける必要はない。
【0226】
本発明の生体電極をウェアラブルデバイスとして使用する際の、生体電極とセンサーデバイスの配線や、その他の部材については、特に限定されるものではなく、例えば、特開2004-033468号公報に記載のものを適用することができる。
【0227】
以上のように、本発明の生体電極であれば、上述の本発明の生体電極組成物の硬化物で生体接触層が形成されるため、肌からの電気信号を効率良くデバイスに伝えることができ(即ち、導電性に優れ)、長期間肌に装着してもアレルギーを起こす恐れがなく(即ち、生体適合性に優れ)、軽量であり、低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない生体電極となる。また、導電粉末を添加することによって一層導電性を向上させることができ、粘着性と伸縮性を有する樹脂と組み合わせることによって特に高粘着力で伸縮性が高い生体電極を製造することができる。更に、添加剤等により肌に対する伸縮性や粘着性を向上させることができ、樹脂の組成や生体接触層の厚さを適宜調節することで、伸縮性や粘着性を調整することもできる。従って、このような本発明の生体電極であれば、医療用ウェアラブルデバイスに用いられる生体電極として、特に好適である。
【0228】
<生体電極の製造方法>
また、本発明では、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極の製造方法であって、前記導電性基材上に、上述の本発明の生体電極組成物を塗布し、硬化させることで前記生体接触層を形成する生体電極の製造方法を提供する。
【0229】
なお、本発明の生体電極の製造方法に使用される導電性基材等は、上述のものと同様でよい。
【0230】
導電性基材上に生体電極組成物を塗布する方法は、特に限定されないが、例えばディップコート、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、フローコート、ドクターコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の方法が好適である。
【0231】
樹脂の硬化方法は、特に限定されず、生体電極組成物に使用する(A)、(B)成分によって適宜選択すればよいが、例えば、熱及び光のいずれか、又はこれらの両方で硬化させることが好ましい。また、上記の生体電極組成物に酸や塩基を発生させる触媒を添加しておいて、これによって架橋反応を発生させ、硬化させることもできる。
【0232】
なお、加熱する場合の温度は、特に限定されず、生体電極組成物に使用する(A)、(B)成分によって適宜選択すればよいが、例えば50~250℃程度が好ましい。
【0233】
また、加熱と光照射を組み合わせる場合は、加熱と光照射を同時に行ってもよいし、光照射後に加熱を行ってもよいし、加熱後に光照射を行ってもよい。また、塗膜後の加熱の前に溶剤を蒸発させる目的で風乾を行ってもよい。
【0234】
硬化後の膜表面に水滴を付けたり、水蒸気やミストを吹きかけると肌とのなじみが向上し、素早く生体信号を得ることが出来る。水蒸気やミストの水滴のサイズを細かくするためにアルコールと混合した水を用いることも出来る。水を含んだ脱脂綿や布と接触させて膜表面を濡らすことも出来る。
【0235】
硬化後の膜表面を濡らす水は塩を含んでいても良い。水と混合させる水溶性塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ベタインから選ばれる。
【0236】
前記水溶性塩は、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、サッカリンナトリウム塩、アセスルファムカリウム、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ベタインから選ばれる塩であることができる。なお、上述の(A)成分は、前記水溶性塩に含まれない。
【0237】
より具体的には、上記の他に酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ピバル酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、吉草酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、エナント酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、ペラルゴン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ウンデシル酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、トリデシル酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ペンタデシル酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、マルガリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アジピン酸二ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、フタル酸二ナトリウム、2-ヒドロキシ酪酸ナトリウム、3-ヒドロキシ酪酸ナトリウム、2-オキソ酪酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタンスルホン酸ナトリウム、1-ノナンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、1-ウンデカンスルホン酸ナトリウム、ココイルセチオン酸ナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウミドプロピルベタイン、イソ酪酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ピバル酸カリウム、グリコール酸カリウム、グルコン酸カリウム、メタンスルホン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、グリコール酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、3-メチル-2-オキソ酪酸カルシウム、メタンスルホン酸カルシウムが挙げられる。ベタインは分子内塩の総称で、具体的にはアミノ酸のアミノ基に3個のメチル基が付加した化合物であるが、より具体的にはトリメチルグリシン、カルニチン、プロリンベタインを挙げることが出来る。
【0238】
前記水溶性塩は、さらに炭素数1~4の1価アルコール又は多価アルコールを含有することができ、前記アルコールがエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物から選ばれるものであることが好ましく、前記ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物が上記一般式(4)’~(5)’で示されるものであることがより好ましい。
【0239】
水溶性塩含有水溶液による前処理方法は、硬化後の生体電極膜上に噴霧法、水滴ディスペンス法等で生体電極膜を濡らすことが出来る。サウナのように高温高湿状態で濡らすことも出来る。濡らした後は乾燥を防止するために、浸透層の上に、さらに保護フィルムを積層することで覆うことも出来る。保護フィルムは肌に貼り付ける直前に剥がす必要があるので、剥離剤がコートされているか、剥離性のフッ素樹脂フィルムが用いられることができる。剥離フィルムで覆われたドライ電極は、長期間の保存のためにはアルミニウムなどでカバーされた袋で封止されることが好ましい。アルミニウムでカバーされた袋の中での乾燥を防止するためには、この中に水分を封入しておくことが好ましい。
【0240】
本発明の生体電極を肌に貼り付ける前に、肌側を水やアルコール等で湿らせたり、水やアルコール等を含有する布や脱脂綿で肌を拭いたりすることも出来る。水やアルコール中に前述の塩を含有させることも出来る。
【0241】
以上のように、本発明の生体電極の製造方法であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない本発明の生体電極を、低コストで容易に製造することができる。
【実施例0242】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0243】
生体電極溶液にイオン性材料(導電性材料)として配合したイオン性ポリマー1~21は、以下のようにして合成した。各モノマーの30質量%シクロペンタノン溶液を反応容器に入れて混合し、反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマー全体1モルに対して0.02モル加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。得られたポリマーの組成は、溶剤を乾燥後、H-NMRにより確認した。また、得られたポリマーの分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により確認した。このようにして合成したシアノ基を有するイオン性ポリマー1~21を以下に示す。
【0244】
イオン性ポリマー1
Mw=18,400
Mw/Mn=1.92
【化92】
【0245】
イオン性ポリマー2
Mw=21,600
Mw/Mn=1.93
【化93】
【0246】
イオン性ポリマー3
Mw=23,600
Mw/Mn=1.99
【化94】
【0247】
イオン性ポリマー4
Mw=21,500
Mw/Mn=2.03
【化95】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0248】
イオン性ポリマー5
Mw=23,400
Mw/Mn=2.04
【化96】
【0249】
イオン性ポリマー6
Mw=21,600
Mw/Mn=1.69
【化97】
【0250】
イオン性ポリマー7
Mw=24,300
Mw/Mn=1.91
【化98】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0251】
イオン性ポリマー8
Mw=28,400
Mw/Mn=1.98
【化99】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0252】
イオン性ポリマー9
Mw=17,700
Mw/Mn=1.77
【化100】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0253】
イオン性ポリマー10
Mw=25,100
Mw/Mn=1.94
【化101】
【0254】
イオン性ポリマー11
Mw=23,600
Mw/Mn=1.88
【化102】
【0255】
イオン性ポリマー12
Mw=14,700
Mw/Mn=1.79
【化103】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0256】
イオン性ポリマー13
Mw=24,300
Mw/Mn=1.92
【化104】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0257】
イオン性ポリマー14
Mw=31,100
Mw/Mn=2.03
【化105】
【0258】
イオン性ポリマー15
Mw=23,600
Mw/Mn=1.83
【化106】
【0259】
イオン性ポリマー16
Mw=20,300
Mw/Mn=1.74
【化107】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0260】
イオン性ポリマー17
Mw=18,300
Mw/Mn=1.74
【化108】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0261】
イオン性ポリマー18
Mw=13,100
Mw/Mn=1.70
【化109】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0262】
イオン性ポリマー19
Mw=12,900
Mw/Mn=1.72
【化110】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0263】
イオン性ポリマー20
Mw=17,500
Mw/Mn=1.79
【化111】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0264】
イオン性ポリマー21
Mw=7,500
Mw/Mn=1.64
【化112】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0265】
ブレンドイオン性ポリマー1、比較例用の比較イオン性ポリマー1、2を以下に示す。
【0266】
ブレンドイオン性ポリマー1
Mw=39,100
Mw/Mn=1.91
【化113】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0267】
比較イオン性ポリマー1
Mw=26,900
Mw/Mn=1.99
【化114】
【0268】
比較イオン性ポリマー2
Mw=22,400
Mw/Mn=1.89
【化115】
【0269】
生体電極溶液にシリコーン系の樹脂として配合したシロキサン化合物1~4を以下に示す。
(シロキサン化合物1)
30%トルエン溶液での粘度が27,000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMeVi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサンをシロキサン化合物1とした。
(シロキサン化合物2)
MeSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなるMQレジンのポリシロキサン(MeSiO1/2単位/SiO4/2単位=0.8)の60%トルエン溶液をシロキサン化合物2とした。
(シロキサン化合物3)
30%トルエン溶液での粘度が42,000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がOHで封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40質量部、MeSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなるMQレジンのポリシロキサン(MeSiO1/2単位/SiO4/2単位=0.8)の60%トルエン溶液100質量部、及びトルエン26.7質量部からなる溶液を乾留させながら4時間加熱後、冷却して、MQレジンにポリジメチルシロキサンを結合させたものをシロキサン化合物3とした。
(シロキサン化合物4)
メチルハイドロジェンシリコーンオイルとして、信越化学工業製 KF-99を用いた。
【0270】
生体電極溶液に配合したシリコーンペンダントウレタン(メタ)アクリレート1を以下に示す。
【化116】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0271】
生体電極溶液にアクリル系の樹脂として配合したアクリルポリマー1を以下に示す。
【0272】
アクリルポリマー1
Mw=129,000
Mw/Mn=2.45
【化117】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0273】
ポリグリセリンシリコーン化合物1を以下に示す。
【0274】
【化118】
【0275】
生体電極溶液に配合した有機溶剤を以下に示す。
EDE:ジエチレングリコールジエチルエーテル
アイソパーG:イソパラフィン系溶剤 スタンダード石油製
アイソパーM:イソパラフィン系溶剤 スタンダード石油製
【0276】
生体電極溶液に添加剤として配合したチタン酸リチウム粉、銀フレーク、ラジカル発生剤、白金触媒、導電性向上剤(カーボンブラック、多層カーボンナノチューブ、グラファイト)を以下に示す。
チタン酸リチウム粉、スピネル:Sigma-Aldrich社製 サイズ200nm以下
銀フレーク:Sigma-Aldrich社製 平均サイズ10μm
ラジカル発生剤:BASF社製 イルガキュアTPO
白金触媒:信越化学工業製 CAT-PL-50T
カーボンブラック:デンカ社製 デンカブラックLi-400
多層カーボンナノチューブ:Sigma-Aldrich社製 直径110~170nm、長さ5~9μm
グラファイト:Sigma-Aldrich社製 直径20μm以下
【0277】
[実施例1~21、比較例1、2]
表1~表3に記載の組成で、イオン性ポリマー、樹脂、有機溶剤、及び添加剤(ラジカル発生剤、白金触媒、導電性向上剤)をブレンドし、生体電極溶液(生体電極溶液1~21、比較生体電極溶液1、2)を調製した。
【0278】
【表1】
【0279】
【表2】
【0280】
【表3】
【0281】
(粘着性評価)
生体電極溶液7以外の生体電極溶液および比較生体電極溶液1、2を、アプリケーターを用いて厚さ100μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)基板上に塗布し、室温で30分風乾後、オーブンを用いて窒素雰囲気下120℃で10分間ベークにより硬化させて、粘着フィルムを作製した。生体電極溶液7は、塗布、風乾、ベーク後に、窒素雰囲気下1,000Wのキセノンランプで500mJ/cmの光を照射して組成物塗布膜を硬化させた。
【0282】
この粘着フィルムから25mm幅のテープを切り取り、これをステンレス板(SUS304)に圧着させ、室温で20時間放置した後、引っ張り試験機を用い角度180度、300mm/分の速度で生体電極が付いたテープをステンレス板から引きはがすのに要する力(N/25mm)を測定した。結果を表4に示す。
【0283】
(生体接触層の厚さ測定)
上記の粘着性評価試験で作製した生体電極において、生体接触層の厚さをマイクロメーターを用いて測定した。結果を表4に示す。
【0284】
(生体信号評価)
図3のように、ビーマス(Bemis)社の熱可塑性ウレタン(TPU)フィルム20のST-604上に、スクリーン印刷によって藤倉化成製の導電ペースト、ドータイトFA-333をコートし、120℃で10分間オーブン中でベークして円の直径が2cmの鍵穴状の導電パターンを印刷した。その上の円形部分に重ねて、表1~3に記載の生体電極溶液をスクリーン印刷で塗布し、室温で10分風乾した後、オーブンを用いて125℃で10分間ベークして溶剤を蒸発させ硬化させ、生体電極1を作製した。各生体電極1は、導電性基材2と、導電性基材2の円形部分上に重ねて形成された生体接触層3とを含んでいた。生体電極が印刷された熱可塑性ウレタンフィルム20を切り取って、両面テープ21を貼り付けて、1つの生体電極溶液につき生体電極サンプル10を3個作製した(図4)。
【0285】
(生体シグナルの測定)
生体電極の導電ペーストによる導電配線パターンとオムロンヘルスケア(株)製携帯心電計HCG-901とを導電線で結び、心電計のプラス電極を図5中の人体のLAの場所、マイナス電極をLLの場所、アースをRAの場所に貼り付けた。貼り付け直後に心電図の測定を開始し、図6に示されるP、Q、R、S、T波からなる心電図波形が現れるまでの時間を計測した。結果を表4に示す。
【0286】
【表4】
【0287】
表4に示されるように、シアノ基を含有するユニットを共重合したイオンポリマーを配合した本発明の生体電極組成物を用いて生体接触層を形成した実施例1~21では、粘着性に優れ、身体に貼り付け後短時間で生体シグナルを得ることが出来た。一方、特定の構造のイオン成分を含有しない比較例2の場合は生体信号を得ることが出来ず、シアノ基を含有しない比較例1の場合は肌に貼り付けてから生体信号が発現するまでの時間が長かった。
【0288】
本明細書は以下の態様を包含する。
[1]:(A)成分として、イオン性の高分子材料を含有する生体電極組成物であって、
前記(A)成分が、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位aと、シアノ基を有する繰り返し単位bとを有するポリマーを含有するものであることを特徴とする生体電極組成物。
[2]:前記繰り返し単位aが下記一般式(1)-1から(1)-4で示される構造を有するものであることを特徴とする上記[1]の生体電極組成物。
【化119】
(一般式(1)-1中、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、酸素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rf及びRfが酸素原子である場合、Rf及びRfは、1つの炭素原子に結合してカルボニル基を形成する1つの酸素原子であり、Rf及びRfは、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、Rf~Rfのうち1つ以上はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。一般式(1)-2、一般式(1)-3及び一般式(1)-4中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ、フッ素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。一般式(1)-1~一般式(1)-4中、Mは、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。一般式(1)-2中、mは、1~4の整数である。)
[3]:前記繰り返し単位aが、下記一般式(2)に記載の繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上を有するものであることを特徴とする上記[1]又は上記[2]の生体電極組成物。
【化120】
(一般式(2)中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、R12、及びR14は、それぞれ独立に単結合、又は炭素数1~13の直鎖状、分岐状若しくは環状の炭化水素基である。前記炭化水素基は、エステル基、エーテル基、又はこれらの両方を有していてもよい。Rは、炭素数1~4の直鎖状、又は分岐状のアルキレン基であり、R中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X、X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、Xは、単結合、エーテル基、及びエステル基のいずれかである。Yは酸素原子、又は-NR19-基であり、R19は水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、若しくは分岐状のアルキル基であり、Rとともに環を形成してもよい。Rf’及びRf’は、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。mは1~4の整数である。a1、a2、a3、a4、a5、a6、及びa7は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦a4<1.0、0≦a5<1.0、0≦a6<1.0、0≦a7<1.0であり、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7<1.0である。Mはアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び銀イオンから選択されるイオンである。)
[4]:前記一般式(2)に記載の前記繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上に加えて、下記一般式(4)に記載のシアノ基を有する繰り返し単位b1を共重合したポリマーを含有するものであることを特徴とする上記[3]の生体電極組成物。
【化121】
(一般式(4)中、R20は、水素原子、メチル基、又は炭素数1~6のアルキルエステル基であり、Xは単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、及びアミド基のいずれかであり、R21は単結合、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基であり、前記アルキレン基はヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、カーボネート基、アミド基、又は尿素結合を有していてもよい。nは1又は2、0<b1<1.0である。)
[5]:前記(A)成分が、前記アンモニウム塩を構成するアンモニウムイオンとして、下記一般式(3)で示されるアンモニウムイオンを含有するものであることを特徴とする上記[1]から上記[4]のいずれか1つの生体電極組成物。
【化122】
(一般式(3)中、R101d、R101e、R101f、及びR101gはそれぞれ、水素原子、炭素数1~15の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数2~12の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルケニル基又はアルキニル基、又は炭素数4~20の芳香族基であり、エーテル基、カルボニル基、エステル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、ハロゲン原子、及び硫黄原子から選ばれる1種以上を有していてもよい。R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fはこれらが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101d及びR101e、又はR101d、R101e及びR101fは炭素数3~10のアルキレン基であるか、又は一般式(3)中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を形成する。)
[6]:更に(B)成分として、樹脂を含有するものであることを特徴とする上記[1]から上記[5]のいずれか1つの生体電極組成物。
[7]:前記(B)成分が、シリコーン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、及びウレタン樹脂から選ばれる1種以上であることを特徴とする上記[6]の生体電極組成物。
[8]:前記(B)成分が、粘着性を有しているものであることを特徴とする上記[6]又は上記[7]の生体電極組成物。
[9]:前記(B)成分が、RSiO(4-x)/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の一価炭化水素基、xは2.5~3.5の範囲である)及びSiO4/2単位を有するシリコーン樹脂を含有するものであることを特徴とする上記[6]から上記[8]のいずれか1つの生体電極組成物。
[10]:更に(C)成分として、カーボン材料及び/又は金属粉を含有するものであることを特徴とする上記[1]から上記[9]のいずれか1つの生体電極組成物。
[11]:前記カーボン材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又はその両方であることを特徴とする上記[10]の生体電極組成物。
[12]:前記金属粉が、金、銀、白金、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、及びインジウムから選ばれる1種以上の金属粉であることを特徴とする上記[10]又は上記[11]の生体電極組成物。
[13]:前記金属粉が、銀粉であることを特徴とする上記[12]の生体電極組成物。
[14]:更に(D)成分として有機溶剤を含有するものであることを特徴とする上記[1]から上記[13]のいずれか1つの生体電極組成物。
[15]:導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極であって、前記生体接触層が、上記[1]から上記[14]のいずれか1つの生体電極組成物の硬化物であることを特徴とする生体電極。
[16]:前記導電性基材が、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素、及び導電性ポリマーから選ばれる1種以上を含むものであることを特徴とする上記[15]の生体電極。
[17]:導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極の製造方法であって、前記導電性基材上に、上記[1]から上記[14]のいずれか1つの生体電極組成物を塗布し、硬化させることで前記生体接触層を形成することを特徴とする生体電極の製造方法。
[18]:前記導電性基材として、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素、及び導電性ポリマーから選ばれる1種以上を含むものを用いることを特徴とする上記[17]の生体電極の製造方法。
【0289】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0290】
1…生体電極、 2…導電性基材、 3…生体接触層、
4…導電粉末、 5…イオン性の高分子材料、 6…樹脂、
7…生体、 10…生体電極サンプル、 20…熱可塑性ウレタンフィルム、
21…両面テープ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6